WackenOpenAir
2020年03月05日
インドのメタル系フェスの最高峰!Bangalore Open Air
たびたびこのブログでも書いている通り、インドでは多くの音楽フェスティバルが開催されている。
もともとお祭り好き、踊り好き、音楽好きの多い国民性に加えて、インターネットの発展にともなって多様なジャンルのリスナーが育ってきたこと、経済成長によって欧米の人気アーティストを招聘できるようになったこと、自国のインディーミュージシャンが増えてきたことなどが、インドのフェス文化隆盛の理由と言えるだろう。
これまでに紹介してきたNH7 WeekenderやZiro Festivalのように、さまざまなジャンルのアーティストが出演するフェスもあれば、大規模EDMフェスのSunburnや古城を舞台にしたMagnetic Fieldsのように、エレクトロニック系に特化したものもある。
さて、インドで根強い人気を誇っている音楽ジャンルとして、忘れてはならないのがヘヴィメタルだ。
ヘヴィメタルに熱狂するインド人を見たのは、この2007年のIron Maidenのバンガロール公演が最初だった。
彼らの全盛期だった80年代にはまったくロックが浸透していなかったにも関わらず、これだけたくさんのMaidenのファンがインドにいることに、ずいぶん驚いたものだった。
インドのメタルファンたちは、海外のバンドに熱狂するだけではない。
ムンバイやバンガロールのような大都市は言うに及ばず、キリスト教徒が多く、欧米の文化への親和性の高い南部ケーララ州やインド北東部にも、数多くのヘヴィメタルバンドが存在しているのだ。
その中には、GutslitやAmorphiaのように、小規模ながらも来日公演を行ったバンドもいるし、Demonic ResurrectionやAgainst Evilといったヨーロッパツアーを成功させているバンドもいる。
そんな知られざるヘヴィメタル大国であるインドには、当然メタル系のフェスも存在していて、その頂点に君臨しているフェスが、今回紹介するBangalore Open Air(BOA)なのである。
このBOAは2012年にドイツの大御所スラッシュメタルバンド、Kreatorをヘッドライナーに第1回が行われ、以降、毎年Iced Earth, Destruction, Napalm Death, Vader, Overkillといった海外のベテランバンドをヘッドライナーに、インドのバンドも多数参加して、大いに盛り上がっている。
これはDestructionがトリを務めた2014年のフェスの様子。
インドからも、シッキム州のハードロックバンドGirish and Chroniclesや、正統派メタルサウンドにスラッシュメタル風のヴォーカルが乗るKryptosらが参加。
ときにモッシュピットも巻き起こるほどに盛り上がっている。
昨年のBOAの様子を見ると、5年間で会場の規模もぐっと大きくなっているのがわかる。
さて、このフェスの'Open Air'という名称にピンと来たあなたは、結構なメタルヘッズですね。
そう、このBOAでは、ヘヴィメタルの本場のひとつ、ドイツで行われている超巨大メタルフェス、Wacken Open Air(通称ヴァッケン、またはW:O:A)に参加するための南アジアのバンドのコンテストであるWacken Metal Battleの南アジアの決勝戦も行われているのだ。
BOA開催に先駆けた2011年から、インドからは毎年W:O:Aにバンドを送り込んでいる。
というわけで、ここではこれまでW:O:Aに参加したインドのバンドたちを紹介してみたい。
(デスメタルばかりなので食傷気味になるかもしれない)
まずは2011年にW:O:Aにインドから初参加を果たしたバンガロールのデス/メタルコアバンド、Eccentric Pendulum.
彼らは2018年にもW:O:A参戦を果たしている。
2012年に参加したのはムンバイのスラッシュ/グルーヴメタルバンドZygnema.
1998年結成のバンガロールのベテランKryptosは、2013年と2017年にW:O:A参戦を果たしている。
2014年のW:O:AにはムンバイのシンフォニックデスメタルバンドDemonic Resurrecrtionと北東部メガラヤ州シロンのPlague Throatの2バンドがインドから参加している。
2015年には同じく北東部から紅茶で有名なダージリンのデスメタルバンドSycoraxが出演。
2018年にはハイデラバードのGodlessが、2019年にはニューデリー出身のパロディバンド的な要素もあるBloodywoodがW:O:Aに参戦している。
同じようなメタルバンドがたくさん出演するフェスだからだと思うが、やはり類型的なデスメタルやメタルコアよりも、インドの要素が入った個性的なバンドの方が受け入れられやすいようで、オーディエンスの反応はBloodywoodが群を抜いて盛り上がっている。
インド国内のメタルファンは、自国の代表として正統派のメタルバンドを推したいのかもしれないが、海外のオーディエンスからすると、いかにもインドらしいバンドのほうが個性的で魅力的に感じられるというミスマッチがあるようにも思えるが、どうだろう。
2020年のBangalore Open Airは3月21日に開催され、スウェーデンのブラックメタルバンドMardukがヘッドライナーを務めるようだ。
インドからはDown Troddenceが出演する。
BOAに先立って、19日にはWacken Metal Battleのインド地区の決勝が、そして20日にはインド亜大陸の決勝が行われる。
果たして今年はどんなバンドがW:O:Aへのチケットを手に入れるのだろうか。
インドでも新型コロナウイルスの感染者が出てきており、デリーではホーリーに合わせて行われるフェスが中止になったりしているが、インドではフェスシーズンの大詰め。
BOAをはじめとするフェスが無事に行われることを願っている。
関連記事:
インドらしいメタルサウンドといえば、シタール・メタルやPineapple ExpressあたりもW:O:Aに出演したら盛り上がると思うんだけど。
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もともとお祭り好き、踊り好き、音楽好きの多い国民性に加えて、インターネットの発展にともなって多様なジャンルのリスナーが育ってきたこと、経済成長によって欧米の人気アーティストを招聘できるようになったこと、自国のインディーミュージシャンが増えてきたことなどが、インドのフェス文化隆盛の理由と言えるだろう。
これまでに紹介してきたNH7 WeekenderやZiro Festivalのように、さまざまなジャンルのアーティストが出演するフェスもあれば、大規模EDMフェスのSunburnや古城を舞台にしたMagnetic Fieldsのように、エレクトロニック系に特化したものもある。
さて、インドで根強い人気を誇っている音楽ジャンルとして、忘れてはならないのがヘヴィメタルだ。
ヘヴィメタルに熱狂するインド人を見たのは、この2007年のIron Maidenのバンガロール公演が最初だった。
彼らの全盛期だった80年代にはまったくロックが浸透していなかったにも関わらず、これだけたくさんのMaidenのファンがインドにいることに、ずいぶん驚いたものだった。
インドのメタルファンたちは、海外のバンドに熱狂するだけではない。
ムンバイやバンガロールのような大都市は言うに及ばず、キリスト教徒が多く、欧米の文化への親和性の高い南部ケーララ州やインド北東部にも、数多くのヘヴィメタルバンドが存在しているのだ。
(詳しくは、このカテゴリーで紹介している)
その中には、GutslitやAmorphiaのように、小規模ながらも来日公演を行ったバンドもいるし、Demonic ResurrectionやAgainst Evilといったヨーロッパツアーを成功させているバンドもいる。
そんな知られざるヘヴィメタル大国であるインドには、当然メタル系のフェスも存在していて、その頂点に君臨しているフェスが、今回紹介するBangalore Open Air(BOA)なのである。
このBOAは2012年にドイツの大御所スラッシュメタルバンド、Kreatorをヘッドライナーに第1回が行われ、以降、毎年Iced Earth, Destruction, Napalm Death, Vader, Overkillといった海外のベテランバンドをヘッドライナーに、インドのバンドも多数参加して、大いに盛り上がっている。
これはDestructionがトリを務めた2014年のフェスの様子。
インドからも、シッキム州のハードロックバンドGirish and Chroniclesや、正統派メタルサウンドにスラッシュメタル風のヴォーカルが乗るKryptosらが参加。
ときにモッシュピットも巻き起こるほどに盛り上がっている。
昨年のBOAの様子を見ると、5年間で会場の規模もぐっと大きくなっているのがわかる。
さて、このフェスの'Open Air'という名称にピンと来たあなたは、結構なメタルヘッズですね。
そう、このBOAでは、ヘヴィメタルの本場のひとつ、ドイツで行われている超巨大メタルフェス、Wacken Open Air(通称ヴァッケン、またはW:O:A)に参加するための南アジアのバンドのコンテストであるWacken Metal Battleの南アジアの決勝戦も行われているのだ。
BOA開催に先駆けた2011年から、インドからは毎年W:O:Aにバンドを送り込んでいる。
というわけで、ここではこれまでW:O:Aに参加したインドのバンドたちを紹介してみたい。
(デスメタルばかりなので食傷気味になるかもしれない)
まずは2011年にW:O:Aにインドから初参加を果たしたバンガロールのデス/メタルコアバンド、Eccentric Pendulum.
彼らは2018年にもW:O:A参戦を果たしている。
2012年に参加したのはムンバイのスラッシュ/グルーヴメタルバンドZygnema.
1998年結成のバンガロールのベテランKryptosは、2013年と2017年にW:O:A参戦を果たしている。
2014年のW:O:AにはムンバイのシンフォニックデスメタルバンドDemonic Resurrecrtionと北東部メガラヤ州シロンのPlague Throatの2バンドがインドから参加している。
2015年には同じく北東部から紅茶で有名なダージリンのデスメタルバンドSycoraxが出演。
2018年にはハイデラバードのGodlessが、2019年にはニューデリー出身のパロディバンド的な要素もあるBloodywoodがW:O:Aに参戦している。
同じようなメタルバンドがたくさん出演するフェスだからだと思うが、やはり類型的なデスメタルやメタルコアよりも、インドの要素が入った個性的なバンドの方が受け入れられやすいようで、オーディエンスの反応はBloodywoodが群を抜いて盛り上がっている。
インド国内のメタルファンは、自国の代表として正統派のメタルバンドを推したいのかもしれないが、海外のオーディエンスからすると、いかにもインドらしいバンドのほうが個性的で魅力的に感じられるというミスマッチがあるようにも思えるが、どうだろう。
2020年のBangalore Open Airは3月21日に開催され、スウェーデンのブラックメタルバンドMardukがヘッドライナーを務めるようだ。
インドからはDown Troddenceが出演する。
BOAに先立って、19日にはWacken Metal Battleのインド地区の決勝が、そして20日にはインド亜大陸の決勝が行われる。
果たして今年はどんなバンドがW:O:Aへのチケットを手に入れるのだろうか。
インドでも新型コロナウイルスの感染者が出てきており、デリーではホーリーに合わせて行われるフェスが中止になったりしているが、インドではフェスシーズンの大詰め。
BOAをはじめとするフェスが無事に行われることを願っている。
関連記事:
インドらしいメタルサウンドといえば、シタール・メタルやPineapple ExpressあたりもW:O:Aに出演したら盛り上がると思うんだけど。
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goshimasayama18 at 20:17|Permalink│Comments(0)
2019年08月04日
世界に進出するインドのメタルバンド!
前回の記事で、ケーララ州のスラッシュメタルバンドAmorphiaの日本ツアーの話題をお届けした。
7月5日付の'Rolling Stone India'電子版の記事によると、今年(2019年)はインドのメタルバンドが今までになく国際的に大活躍している年だそうで、9月までに9つのバンドの海外ツアーが行われるという。
2月のAmorphiaの日本ツアーに続いて、3〜4月には、ムンバイのメタルバンドZygnemaが東欧からフランスまでヨーロッパ9か国、16都市を巡るツアーを敢行した。
Zygnemaは2006年に結成されたスラッシュ/グルーヴメタルバンドで、これまでにもドイツ(メタル系の巨大フェスティバルWacken Open Airへの出演)やノルウェー、タイ、ドバイなどへのツアー経験がある。
2013年のWackenでのライブ映像
セパルトゥラやパンテラといった大御所バンドを思わせるサウンドで、メタルの本場のオーディエンスを盛り上げている。
新曲の"I Am Nothing"は女性への性暴力を告発した内容。
社会派バンドとしての側面もある。
ところでこのZygnemaというバンド名、重々しくていかにもメタルバンドらしい響きだけど、どんな意味だろうと思って調べてみたら、「ホシミドロ」っていう藻みたいな植物の名前だった。
藻っていうのはどうなんだろうね、メタルのバンド名として。
ムンバイのスラッシュメタルバンド、Systemhouse 33は、イスラエルのバンドOrphaned Landと西ヨーロッパ7か国20都市を4月にツアーした。
彼らもまた2003年に結成された老舗バンドで、ボーカリストのSamron Jodeは、以前このブログでも紹介したシタールをフィーチャーしたエレクトロニックメタルバンドParatraのギタリストとしても昨年秋にヨーロッパツアーをしたばかり。
Systemhouse 33はピュアなメタルバンドだが、Paratraではかなりダンスミュージック寄りの全く異なるアプローチを聴かせている。
(参考記事:「混ぜるな危険!(ヘヴィーメタルとインド古典音楽を) インドで生まれた新ジャンル、シタール・メタルとは一体何なのか」)
昨年来日した黒ターバンのベーシストGurdip Singh Narangが率いるムンバイのブルータルデスメタルバンドGutslitは、アメリカのベテランバンドDying Fetusのサポート公演を含むドイツや東欧を中心としたツアーを7月に行ったばかり。
王道のデスメタルサウンドを演奏しつつも、見た目に分かりやすいインド人の要素もある(メタルだけにターバンの色は必ず黒!)彼らは、ビジュアル戦略にも非常に長けたバンドだ。
彼らは典型的なメタルバンドの枠に収まらないかなりユニークなセンスを持っていて、例えば彼らの新しいビジュアルイメージは、ピンク色を基調にしたメルヘンチックなテイストの、ツノがチェーンソーになったかわいらしくも残酷なユニコーンのイラストだ。
デザインしたのはドラマーのAaron Pinto.
かつてこのバンドのスタイリッシュなカートゥーン調のミュージックビデオを手がけたこともある、稀有なセンスの持ち主である。
バンガロールで1998年に結成されたベテランバンドKryptosは、7月にいくつかの野外フェスティバルへの出演を含めたドイツツアーを実施。
彼らも2013年と2017年にWacken Open Airに出演したことがある。
彼らのサウンドは、1980年代を彷彿させるのオールドスクールなメタルサウンドに、デス/スラッシュメタル的なヴォーカルが乗ったもの。
こちらは今年発売のアルバム。
意図的にB級感を狙ったこのアルバムジャケットは彼らのサウンドにぴったりで、彼らもなかなかのビジュアルセンスを持っているようだ。
南インドの伝統音楽とメタルを融合したプログレッシブ・カルナーティック・フュージョンを掲げるProject Mishramは、7月にイギリス公演を行ったばかり。
彼らはツインギターにフルートとバイオリン奏者を含むバンガロール出身の7人組バンドだ。
ラップメタル的に始まる楽曲だが、古典声楽風のボーカルが入ってくると空気感が一変して、一気にインドの大地に連れて行かれてしまう。
変拍子や複雑なキメの多いインド古典音楽は、プログレッシブ・メタルとの親和性が高く、彼らの他にもParadigm Shift, Agam, Pineapple Expressらがフュージョン・メタルの世界で活躍している。
ボリウッドをもじったバンド名のBloodywoodsはWacken Open Airでの公演を含むツアーを7月〜8月にかけて実施。
ドイツ、イギリス、フランス、ロシアを巡るこのツアータイトルは、その名もRaj Against The Machine.
言うまでもなく、これは90年代から活躍するアメリカの政治的ラップメタルバンドRage Against The Machineのパロディーだ。
これはインドのフォーク(民謡)メタルを標榜する彼らが、春の訪れとともに色粉をぶっかけあうお祭り「ホーリー」をテーマにした楽曲。
当初はインドの要素を取り入れたパロディ/コミックバンド的なイメージで活動していたが、思いのほか本格的なサウンドが評価されてしまい(日本でもすでにいくつかのブログやメディアで紹介されている)、最近ではメンタルヘルスをテーマにしたシリアスな楽曲も発表している。
インド南東部アーンドラ・プラデーシュ州の港町Visakhapatnam出身の正統派パワーメタルバンドAgainst Evilは、ドイツのDoc Gator Recordsと契約し、8月にドイツ、オーストリア、ベルギー、スイスを巡るツアーを実施する。
このツアーは、おもにドイツのメタルファンによるクラウドファンディングによって実現することになったもので、国境を超えたメタルコミュニティーのサポート力を感じさせられる。
お隣テランガナ州の州都ハイデラバードのデスメタルバンドGodlessは9月にドイツのバンドDivideとともにヨーロッパ8カ国を回るツアーを実施。
彼らも昨年、Wacken Open Airへの出演を果たしている。
と、2019年はこれだけのヘヴィーメタルバンドが海外に飛躍する年になった。
記事にも書いたように、インドのメタルバンドの海外進出は急に始まったものではなく、これまでもフェスティバルへの出演などを含めたヨーロッパツアーはいくつものバンドが行なっている。
2008年にはすでにRolling Stone India紙でインドのメタルシーンの興隆についての特集記事が掲載されており、インドでのヘヴィーメタルブームは一過性のものではなく、完全に定着していると言えるだろう。
世界的には「知られざるメタル大国」だったインドのバンドの実力に、徐々に世界中が気づいて来ているのだ。
今回同誌に紹介されていた以外にも、これまでに海外ツアーを実施したバンドは複数おり、ムンバイのシンフォニック・デスメタルバンド、Demonic Resurrectionは、2014年にWacken, 2018年にイギリスのBloodstock Festivalに出演しており、今年も8月から9月にかけてイギリスツアーを行うなど積極的に海外で活動している。
世界最大級のメタル系フェスティバルであるドイツのWacken Open Airに出演したインドのバンドは多く、バンガロールのEc{c}entric Pendulumや北東部メガラヤ州のPlague Throat(ともにデスメタル)もそれぞれ2011年と2014年に同フェスへの参加を果たしている。
また、インド系アメリカ人を含むSkyharborは、昨年、Babymetalのサポートに起用され、アメリカをともにツアーした。
フェスティバルのヘッドライナーを務めるような大物バンドはまだインドから出て来ていないが、どのバンドも演奏能力が高く、各ジャンルの特徴を余すところなく表現できている。
インドのメタルバンドのポテンシャルは想像以上に高いということがお分かりいただけるだろう
以前、映画『ガリーボーイ』をきっかけに、ストリートのラッパーたちがメジャーシーンでも注目されるようになり、インドのヒップホップシーンが大いに活性化してきていることを紹介した。
これまで夢や希望が持てなかったスラムに暮らす若者たちが、ヒップホップを通して名を挙げ、スターになることすらできる時代がやってきたのだ。
前回も書いたように、ヘヴィーメタルはヒップホップに比べて、言語よりもサウンドが重視されるため、優れた楽曲と演奏能力さえあれば、インド国内のみならず海外での評価もされやすいジャンルだ。
スラム出身でも、ラッパーとして評価されればインドのスターになれるように、ヘヴィーメタルバンドとして評価されれば、国籍に関係なく世界をツアーできる時代がやってきた。
新たにバンドを結成するインドの若者たちにとっても、これは嬉しいニュースだろう。
インドのヘヴィーメタルの勢いは、まだまだ続きそうだ。
凡平自選の2018年度のおすすめ記事はこちらからどうぞ!
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7月5日付の'Rolling Stone India'電子版の記事によると、今年(2019年)はインドのメタルバンドが今までになく国際的に大活躍している年だそうで、9月までに9つのバンドの海外ツアーが行われるという。
2月のAmorphiaの日本ツアーに続いて、3〜4月には、ムンバイのメタルバンドZygnemaが東欧からフランスまでヨーロッパ9か国、16都市を巡るツアーを敢行した。
Zygnemaは2006年に結成されたスラッシュ/グルーヴメタルバンドで、これまでにもドイツ(メタル系の巨大フェスティバルWacken Open Airへの出演)やノルウェー、タイ、ドバイなどへのツアー経験がある。
2013年のWackenでのライブ映像
セパルトゥラやパンテラといった大御所バンドを思わせるサウンドで、メタルの本場のオーディエンスを盛り上げている。
新曲の"I Am Nothing"は女性への性暴力を告発した内容。
社会派バンドとしての側面もある。
ところでこのZygnemaというバンド名、重々しくていかにもメタルバンドらしい響きだけど、どんな意味だろうと思って調べてみたら、「ホシミドロ」っていう藻みたいな植物の名前だった。
藻っていうのはどうなんだろうね、メタルのバンド名として。
ムンバイのスラッシュメタルバンド、Systemhouse 33は、イスラエルのバンドOrphaned Landと西ヨーロッパ7か国20都市を4月にツアーした。
彼らもまた2003年に結成された老舗バンドで、ボーカリストのSamron Jodeは、以前このブログでも紹介したシタールをフィーチャーしたエレクトロニックメタルバンドParatraのギタリストとしても昨年秋にヨーロッパツアーをしたばかり。
Systemhouse 33はピュアなメタルバンドだが、Paratraではかなりダンスミュージック寄りの全く異なるアプローチを聴かせている。
(参考記事:「混ぜるな危険!(ヘヴィーメタルとインド古典音楽を) インドで生まれた新ジャンル、シタール・メタルとは一体何なのか」)
昨年来日した黒ターバンのベーシストGurdip Singh Narangが率いるムンバイのブルータルデスメタルバンドGutslitは、アメリカのベテランバンドDying Fetusのサポート公演を含むドイツや東欧を中心としたツアーを7月に行ったばかり。
王道のデスメタルサウンドを演奏しつつも、見た目に分かりやすいインド人の要素もある(メタルだけにターバンの色は必ず黒!)彼らは、ビジュアル戦略にも非常に長けたバンドだ。
彼らは典型的なメタルバンドの枠に収まらないかなりユニークなセンスを持っていて、例えば彼らの新しいビジュアルイメージは、ピンク色を基調にしたメルヘンチックなテイストの、ツノがチェーンソーになったかわいらしくも残酷なユニコーンのイラストだ。
デザインしたのはドラマーのAaron Pinto.
かつてこのバンドのスタイリッシュなカートゥーン調のミュージックビデオを手がけたこともある、稀有なセンスの持ち主である。
バンガロールで1998年に結成されたベテランバンドKryptosは、7月にいくつかの野外フェスティバルへの出演を含めたドイツツアーを実施。
彼らも2013年と2017年にWacken Open Airに出演したことがある。
彼らのサウンドは、1980年代を彷彿させるのオールドスクールなメタルサウンドに、デス/スラッシュメタル的なヴォーカルが乗ったもの。
こちらは今年発売のアルバム。
意図的にB級感を狙ったこのアルバムジャケットは彼らのサウンドにぴったりで、彼らもなかなかのビジュアルセンスを持っているようだ。
南インドの伝統音楽とメタルを融合したプログレッシブ・カルナーティック・フュージョンを掲げるProject Mishramは、7月にイギリス公演を行ったばかり。
彼らはツインギターにフルートとバイオリン奏者を含むバンガロール出身の7人組バンドだ。
ラップメタル的に始まる楽曲だが、古典声楽風のボーカルが入ってくると空気感が一変して、一気にインドの大地に連れて行かれてしまう。
変拍子や複雑なキメの多いインド古典音楽は、プログレッシブ・メタルとの親和性が高く、彼らの他にもParadigm Shift, Agam, Pineapple Expressらがフュージョン・メタルの世界で活躍している。
ボリウッドをもじったバンド名のBloodywoodsはWacken Open Airでの公演を含むツアーを7月〜8月にかけて実施。
ドイツ、イギリス、フランス、ロシアを巡るこのツアータイトルは、その名もRaj Against The Machine.
言うまでもなく、これは90年代から活躍するアメリカの政治的ラップメタルバンドRage Against The Machineのパロディーだ。
これはインドのフォーク(民謡)メタルを標榜する彼らが、春の訪れとともに色粉をぶっかけあうお祭り「ホーリー」をテーマにした楽曲。
当初はインドの要素を取り入れたパロディ/コミックバンド的なイメージで活動していたが、思いのほか本格的なサウンドが評価されてしまい(日本でもすでにいくつかのブログやメディアで紹介されている)、最近ではメンタルヘルスをテーマにしたシリアスな楽曲も発表している。
インド南東部アーンドラ・プラデーシュ州の港町Visakhapatnam出身の正統派パワーメタルバンドAgainst Evilは、ドイツのDoc Gator Recordsと契約し、8月にドイツ、オーストリア、ベルギー、スイスを巡るツアーを実施する。
このツアーは、おもにドイツのメタルファンによるクラウドファンディングによって実現することになったもので、国境を超えたメタルコミュニティーのサポート力を感じさせられる。
お隣テランガナ州の州都ハイデラバードのデスメタルバンドGodlessは9月にドイツのバンドDivideとともにヨーロッパ8カ国を回るツアーを実施。
彼らも昨年、Wacken Open Airへの出演を果たしている。
と、2019年はこれだけのヘヴィーメタルバンドが海外に飛躍する年になった。
記事にも書いたように、インドのメタルバンドの海外進出は急に始まったものではなく、これまでもフェスティバルへの出演などを含めたヨーロッパツアーはいくつものバンドが行なっている。
2008年にはすでにRolling Stone India紙でインドのメタルシーンの興隆についての特集記事が掲載されており、インドでのヘヴィーメタルブームは一過性のものではなく、完全に定着していると言えるだろう。
世界的には「知られざるメタル大国」だったインドのバンドの実力に、徐々に世界中が気づいて来ているのだ。
今回同誌に紹介されていた以外にも、これまでに海外ツアーを実施したバンドは複数おり、ムンバイのシンフォニック・デスメタルバンド、Demonic Resurrectionは、2014年にWacken, 2018年にイギリスのBloodstock Festivalに出演しており、今年も8月から9月にかけてイギリスツアーを行うなど積極的に海外で活動している。
世界最大級のメタル系フェスティバルであるドイツのWacken Open Airに出演したインドのバンドは多く、バンガロールのEc{c}entric Pendulumや北東部メガラヤ州のPlague Throat(ともにデスメタル)もそれぞれ2011年と2014年に同フェスへの参加を果たしている。
また、インド系アメリカ人を含むSkyharborは、昨年、Babymetalのサポートに起用され、アメリカをともにツアーした。
フェスティバルのヘッドライナーを務めるような大物バンドはまだインドから出て来ていないが、どのバンドも演奏能力が高く、各ジャンルの特徴を余すところなく表現できている。
インドのメタルバンドのポテンシャルは想像以上に高いということがお分かりいただけるだろう
以前、映画『ガリーボーイ』をきっかけに、ストリートのラッパーたちがメジャーシーンでも注目されるようになり、インドのヒップホップシーンが大いに活性化してきていることを紹介した。
これまで夢や希望が持てなかったスラムに暮らす若者たちが、ヒップホップを通して名を挙げ、スターになることすらできる時代がやってきたのだ。
前回も書いたように、ヘヴィーメタルはヒップホップに比べて、言語よりもサウンドが重視されるため、優れた楽曲と演奏能力さえあれば、インド国内のみならず海外での評価もされやすいジャンルだ。
スラム出身でも、ラッパーとして評価されればインドのスターになれるように、ヘヴィーメタルバンドとして評価されれば、国籍に関係なく世界をツアーできる時代がやってきた。
新たにバンドを結成するインドの若者たちにとっても、これは嬉しいニュースだろう。
インドのヘヴィーメタルの勢いは、まだまだ続きそうだ。
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goshimasayama18 at 14:16|Permalink│Comments(0)
2018年07月15日
Demonic Resurrectionの欧州ツアー日記と驚愕のコンセプトアルバム!
先日紹介した、驚愕のヘヴィーメタル料理番組(しかも炭水化物を控えた「ケトン食」)の進行役、Sahil.
その記事でも書いた通り、彼のもう一つの顔は、ムンバイのシンフォニックデスメタルバンド、Demonic Resurrectionのヴォーカリストだ(ステージネームはDemonstealer!)。
先日の記事を書いた後、いつもしている通り、Twitterでブログ更新を呟いたら、 なんとSahil本人がそれを見つけてくれてリツイートしてくれた。
そこで、どうしても気になっていた点を本人に直接聞いてみた。
いったいどうしてあなたは料理番組をやっているのか?栄養士か何かなのか?と。
Sahilによると、
「俺は単に料理が好きだからこの番組を始めたんだ。それが、時間が経つにつれてだんだん変わってきて、ケトン食(keto)のビデオを作ったらすごく人気が出てきたんだよ。だからプロってわけでも栄養士でもないよ」
とのこと。
Demonic Resurrectionは2014年にドイツの有名なメタル系フェス、「ヴァッケン・オープンエア(Wacken Open Air)」への出演を果たしており、昨年もイギリスツアーを行うなど、インドのメタルシーンでは数少ない、国外でも高い評価を得ているバンドだ。
今回はSahilことDemonstealerが語ってくれたヴァッケン・オープンエア、そしてイギリスツアーの思い出を紹介します!
まずは2014年のヴァッケンから!
彼らにとって、ドイツの超大型メタルフェス出演はどんな経験だったのだろうか。
「ヴァッケン・オープンエアは信じられない体験だったよ。俺たちはただ演奏しただけじゃなくて、3日間に渡ってフェスティバルに参加したんだ。インドから来た俺たちは、あんなでかいフェスは経験したことがなかったし、超ビッグなバンドを生で見られるってことも、全体の雰囲気も、すべてが信じられなかったよ」
ヴァッケンは大ベテランから新鋭、ポップなハードロックからエクストリーム系まで、150以上(!)ものメタルバンドが参加する世界最大級のメタル系フェスティバルだ。
彼らが出演した2014年の様子はこんな感じ。
(これはノルウェーの大御所ブラックメタルバンド、Emperorのライブ。この手の音楽でヴォーカルがメガネをかけているというのが斬新だ)
朝から晩まで、ひたすらあらゆる種類のヘヴィーメタルを聴くことができるという、メタル好きには天国のような(そしてそれ以外の人にはたぶん地獄のような)フェスティバルだ。
インドでも欧米の大御所バンドのライブには数千人単位の集客があるようだが、さすがにこの規模のフェスっていうのは、本場ヨーロッパ以外ではあり得ないように思う。
そんなフェスのステージで演奏した感想は?
「ステージでのパフォーマンスは最高に楽しかったよ。お客さんは少なかったけど熱狂的だった。俺たちが演奏したのは最終日の明け方で、Sodom(ドイツの伝説的スラッシュメタルバンド)とArch Enemy(スウェーデンのベテランメロディック・デスメタルバンド)のちょうど間だった。彼らとライブの時間が少し重なってしまっていたんだ(だからお客が少なかったということだろう)。でも、それを考えてもかなり良かったよ」
ヴァッケンでも、他のフェス同様にいくつものステージが同時進行する。
人気のある大御所バンドと時間帯が重なってしまったのはアンラッキーだった。
確かに彼らのライブ映像を見ると、そこまでオーディエンスは多くないようだけど、そういう事情があったのか。
続いて、今年行われたUKツアーについても聞いてみた。
「今年のUKツアーもすごく楽しかったよ。どのライブもイギリスでやった中では今までで最高だった。いくつかの新しい場所にも行けたし、新しいファンも獲得できた。ツアーのハイライトはIncineration Festivalだな。満員の観客にガツンと喰らわせて、でかいモッシュピットができたんだ。グッズもたくさん売れたよ。Wretched Soul(イギリスのスラッシュ/デスメタルバンド)とツアーできたのも楽しかったし、すべての経験がすばらしかったよ」
これがそのジョイントツアーのフライヤー。
どうやらDemonic Resurrectionがヘッドライナーで、Wretched Soulは前座という扱いのようだ。
ヘッドライナーでイギリスツアーなんてすごいじゃん。
ちょっと見づらいが、3公演目のロンドンがそのIncineration Festivalだったようだ。
Incinerationという単語は初めて見たので辞書を引いてみたら、「火葬」だって。
なんつうフェスのタイトルだ。
そのフェスティヴァルでのライブの模様がこちら。
当然ながらヴァッケンと比べるとずいぶん小さな規模で、他の出ているバンドも聴いたことがないバンドばかりのようだが、それだけにコアなオーディエンスが集まったイベントだったのだろう。
それにしても、なぜ彼らはこんなふうにヨーロッパでのツアーができたのか、仕切ってるのはインドのエージェントなのかと聞いてみた。
「俺たちにはイギリスのエージェントがいるんだ。2017年の12月にイギリスツアーを計画したんだけど、2018年の5月のIncineration Festivalに出演できるチャンスが巡ってきたから、ほかのライブはその前後に入れることにしたんだ。そのほうが意味があるからね」
上のフライヤーにある、UKツアーのタイトルにもなっているDashavatarというのは彼らが昨年リリースしたアルバムの名前なんだが、改めてそのアルバムをチェックしてみて、このアルバムが、あるとんでもない秘密があることに気がついた。
これぞまさに、ヴェーディック・メタルの最高峰と呼ぶべきコンセプト・アルバムだったのだ。
Youtubeで個別に曲を聴いていた時はまったく気がつかなかった。
アルバムには、前回紹介した以外にも、たとえばこんな曲が入っている。
"Kurma"
"Vamana"
"Rama"
いずれも、インド古典音楽の要素が入っていたり、クリーンヴォイスのパートが入っていたりと凝った展開と大仰なアレンジが特徴的だ。
これらの曲を聴いただけで(あるいはタイトルだけで)このアルバムの「秘密」に気がついた人は、なかなかのインド好きかインド神話通!
その詳細は次回!
その記事でも書いた通り、彼のもう一つの顔は、ムンバイのシンフォニックデスメタルバンド、Demonic Resurrectionのヴォーカリストだ(ステージネームはDemonstealer!)。
先日の記事を書いた後、いつもしている通り、Twitterでブログ更新を呟いたら、 なんとSahil本人がそれを見つけてくれてリツイートしてくれた。
そこで、どうしても気になっていた点を本人に直接聞いてみた。
いったいどうしてあなたは料理番組をやっているのか?栄養士か何かなのか?と。
Sahilによると、
「俺は単に料理が好きだからこの番組を始めたんだ。それが、時間が経つにつれてだんだん変わってきて、ケトン食(keto)のビデオを作ったらすごく人気が出てきたんだよ。だからプロってわけでも栄養士でもないよ」
とのこと。
Demonic Resurrectionは2014年にドイツの有名なメタル系フェス、「ヴァッケン・オープンエア(Wacken Open Air)」への出演を果たしており、昨年もイギリスツアーを行うなど、インドのメタルシーンでは数少ない、国外でも高い評価を得ているバンドだ。
今回はSahilことDemonstealerが語ってくれたヴァッケン・オープンエア、そしてイギリスツアーの思い出を紹介します!
まずは2014年のヴァッケンから!
彼らにとって、ドイツの超大型メタルフェス出演はどんな経験だったのだろうか。
「ヴァッケン・オープンエアは信じられない体験だったよ。俺たちはただ演奏しただけじゃなくて、3日間に渡ってフェスティバルに参加したんだ。インドから来た俺たちは、あんなでかいフェスは経験したことがなかったし、超ビッグなバンドを生で見られるってことも、全体の雰囲気も、すべてが信じられなかったよ」
ヴァッケンは大ベテランから新鋭、ポップなハードロックからエクストリーム系まで、150以上(!)ものメタルバンドが参加する世界最大級のメタル系フェスティバルだ。
彼らが出演した2014年の様子はこんな感じ。
(これはノルウェーの大御所ブラックメタルバンド、Emperorのライブ。この手の音楽でヴォーカルがメガネをかけているというのが斬新だ)
朝から晩まで、ひたすらあらゆる種類のヘヴィーメタルを聴くことができるという、メタル好きには天国のような(そしてそれ以外の人にはたぶん地獄のような)フェスティバルだ。
インドでも欧米の大御所バンドのライブには数千人単位の集客があるようだが、さすがにこの規模のフェスっていうのは、本場ヨーロッパ以外ではあり得ないように思う。
そんなフェスのステージで演奏した感想は?
「ステージでのパフォーマンスは最高に楽しかったよ。お客さんは少なかったけど熱狂的だった。俺たちが演奏したのは最終日の明け方で、Sodom(ドイツの伝説的スラッシュメタルバンド)とArch Enemy(スウェーデンのベテランメロディック・デスメタルバンド)のちょうど間だった。彼らとライブの時間が少し重なってしまっていたんだ(だからお客が少なかったということだろう)。でも、それを考えてもかなり良かったよ」
ヴァッケンでも、他のフェス同様にいくつものステージが同時進行する。
人気のある大御所バンドと時間帯が重なってしまったのはアンラッキーだった。
確かに彼らのライブ映像を見ると、そこまでオーディエンスは多くないようだけど、そういう事情があったのか。
続いて、今年行われたUKツアーについても聞いてみた。
「今年のUKツアーもすごく楽しかったよ。どのライブもイギリスでやった中では今までで最高だった。いくつかの新しい場所にも行けたし、新しいファンも獲得できた。ツアーのハイライトはIncineration Festivalだな。満員の観客にガツンと喰らわせて、でかいモッシュピットができたんだ。グッズもたくさん売れたよ。Wretched Soul(イギリスのスラッシュ/デスメタルバンド)とツアーできたのも楽しかったし、すべての経験がすばらしかったよ」
これがそのジョイントツアーのフライヤー。
どうやらDemonic Resurrectionがヘッドライナーで、Wretched Soulは前座という扱いのようだ。
ヘッドライナーでイギリスツアーなんてすごいじゃん。
ちょっと見づらいが、3公演目のロンドンがそのIncineration Festivalだったようだ。
Incinerationという単語は初めて見たので辞書を引いてみたら、「火葬」だって。
なんつうフェスのタイトルだ。
そのフェスティヴァルでのライブの模様がこちら。
当然ながらヴァッケンと比べるとずいぶん小さな規模で、他の出ているバンドも聴いたことがないバンドばかりのようだが、それだけにコアなオーディエンスが集まったイベントだったのだろう。
それにしても、なぜ彼らはこんなふうにヨーロッパでのツアーができたのか、仕切ってるのはインドのエージェントなのかと聞いてみた。
「俺たちにはイギリスのエージェントがいるんだ。2017年の12月にイギリスツアーを計画したんだけど、2018年の5月のIncineration Festivalに出演できるチャンスが巡ってきたから、ほかのライブはその前後に入れることにしたんだ。そのほうが意味があるからね」
上のフライヤーにある、UKツアーのタイトルにもなっているDashavatarというのは彼らが昨年リリースしたアルバムの名前なんだが、改めてそのアルバムをチェックしてみて、このアルバムが、あるとんでもない秘密があることに気がついた。
これぞまさに、ヴェーディック・メタルの最高峰と呼ぶべきコンセプト・アルバムだったのだ。
Youtubeで個別に曲を聴いていた時はまったく気がつかなかった。
アルバムには、前回紹介した以外にも、たとえばこんな曲が入っている。
"Kurma"
"Vamana"
"Rama"
いずれも、インド古典音楽の要素が入っていたり、クリーンヴォイスのパートが入っていたりと凝った展開と大仰なアレンジが特徴的だ。
これらの曲を聴いただけで(あるいはタイトルだけで)このアルバムの「秘密」に気がついた人は、なかなかのインド好きかインド神話通!
その詳細は次回!
goshimasayama18 at 00:01|Permalink│Comments(0)