ThirdSovereign
2018年06月27日
メタルdeクッキング!メキシコ料理編(しかも健康に良い) Demonic Resurrection!
ここのところちょっと重めの(内容の濃い)記事が続いたので、今回は軽めの内容で行きたいと思います。
軽めといっても音楽的には重め!
今回は北東部ミゾラム州のデスメタルバンド、我らが Third Sovereignが出演している謎の音楽番組を紹介します!
Third Sovereignに関しては、こちらの彼らへのインタビュー記事をどうぞ。
デスメタルというコアな音楽性ながら、このブログ史上最多の「いいね!」を獲得した人気記事となっております。
インドの音楽シーンを見ていくうえで非常に大事なことを語っているので、メタルなんか聴かないよという人も是非ご一読を!
さて、本日紹介する番組は、その名も「Headbanger's Kitchen」
内容はというと、「ヘビーメタル・クッキングショー」という、かなりシュールというか意味不明なもので、メタラーっぽい料理人が大真面目に料理の作り方を披露するという訳のわからなさ。
毎回インド国内や海外のいろんなミュージシャンを招いて料理とメタルを紹介するという、おそらく世界でも唯一無二の番組だ。
インドでも、メタルという過激で暴力的な音楽を、料理という日常的で家庭的なものと対比させて面白がる、っていうメタ的な楽しみ方が成立するほどに、音楽の聴き方が成熟しているってわけだ。
Third Sovereignがゲストとして出演しているこの回で紹介される料理は「Necro Chili Con Carne」(暗黒チリ・コン・カルネ)とのこと。
なんじゃいそりゃ、と思うけど、その模様はこちらからどうぞ。
見てもらうと分かるが、このネクロ・チリ・コン・カルネ、別にThird Sovereignにちなんだ料理というわけでもなく、バンドのメンバーがいっしょに料理をするというわけでもなく、もっぱら司会の男性が一人で進行。
意外にも料理のコーナーはこれといったおふざけもなく、肝心のメタルの要素もないまま極めてまっとうに進んでゆく。
で、料理のコーナーが終わると今度はいよいよ司会の男性によるThird Sovereignへのインタビューが始まる(11:05頃から)のだが、このインタビューも、作った料理を食べながらするわけでもなく、好きな食べ物の話題が出るでもなく、今度は料理のことなんか忘れてしまったかのように普通のインタビューが始まり、ますますわけのわからなさが募る展開となっている。
インタビューでいちばん右に座っているインド訛りの少ない流暢な英語を話している男性が、このサイトでインタビューさせてもらったVedant.
この映像を見て、アタクシのインタビューのときは分かりやすいようにずいぶんゆっくり話をしてくれていたんだなあ、と再認識した。
彼はそういう気配りがさりげなくできる男です。
気になって調べてみたところ、この司会の男性はなんとムンバイのシンフォニック・デスメタルバンド、Demonic Resurrectionのヴォーカリストを務めるSahilという人物だということが判明!
Demonic Resurrectionはなかなか個性的なバンドで「いつか紹介したいアーティスト」のリストに入れていたのだけど、こんなところでこんな形で会ってしまうとは…。
でもせっかくなので紹介すると、彼らはドイツの有名なメタル系フェス、ヴァッケン・オープンエアにも出たことがあり、この5月にも英国ツアーを成功させた国際的にも高く評価されているバンドだ。
ヴァッケン出演時の模様がこちら。
この番組紹介の映像で、「キート、キート(Keto)」と連呼しているので何かと思って調べてみたら、どうやらこれは日本では「ケトン食」と呼ばれている健康食のことらしい。
「ケトン食」とは、もともと小児難治性てんかんの治療のために開発された食事法で、糖や炭水化物の摂取を大きく制限してエネルギーの多くを脂肪やたんぱく質から取るというもの。
日本でも流行った「低炭水化物ダイエット」「ロカボ」にも似たもののようだが、検索すると、日本でも「ケトン食ががんを消す」とか、「奇跡の食事療法」といった本も出版されており、世界中に熱心なファンがいる健康法のようだ。
で、その熱心なファンのインド代表がこのDemonic ResurrectionのヴォーカリストのSahilということのようで、この番組は単なるメタルと料理のミスマッチを狙ったバラエティー番組ではなく、このケトン料理のレシピを視聴者の健康のために紹介するという、非常に真面目な使命を持ったもの(にメタルアーティストのインタビューも入っている)なのだ。
インド料理はチャパティーや米、ジャガイモなどで炭水化物過多になりやすいと言われているのだが、まさかデスメタルバンドのヴォーカリストが食事療法を通してインドの健康状況改善に取り組んでいるとは思わなかった。
インドのデスメタルシーン、奥が深すぎる…。
さらに謎なのは、Sahilが紹介しているレシピがチリ・コン・カルネだということ。
チリ・コン・カルネは米南部テキサス州からメキシコあたりで食べられている、いわゆる「テックスメックス」料理で、英語風にチリ・コン・カンと呼ばれることもある。
そのメキシコ料理(と番組では紹介されている)のチリ・コン・カルネを、サヒールさん、インドでは手に入りづらいと言いながらアボカドを使ったワカモレを作ったり、かなり本格的な作り方でクッキングしているではないか。
食に関しては一様に保守的と言われているインドで、何故に遠く離れたメキシコの料理なのか。
謎を解くカギは、「新版 インドを知る辞典」(山下博司・岡光信子著)という本の中に見つかった。
この本の中の最近のインドの夕食事情についての記述で、こんなことが書かれていた。
「都会の裕福な家庭では、インド料理だけでなく、時には中華料理、メキシコ料理、タイ料理、西洋料理なども並べられる」
なんと、家庭でよく食べられる外国料理の2番目にメキシコ料理が来ているではないか!
1番目が地理的にも近く、世界的にも美食とされている中華料理なのは分かるとして、その次に遠く離れたメキシコ料理。
これは日本でいうとイタリア料理あたりのポジションということだろうか。
でもよく考えてみたらインド料理で欠かせない唐辛子も、サモサ等でよく使われるジャガイモも、もともとは中南米原産。
香辛料をたくさん使うという共通点もあるし、メキシコ料理はじつはインド人にとってかなり馴染みやすいものなんじゃないだろうか。
と思ってデリーやムンバイのメキシカンレストランをググってみたら、あるわあるわ。
しかも、メキシコ料理専門店だけじゃなくて、「インド料理とメキシコ料理」とか、「イタリアンとメキシコ料理」みたいなお店がたくさんヒットする。
ムンバイに暮らすインド人の友人に聞いてみたところ、「ナチョスやケサディーヤ、タコスやブリトーは一般的だよ。インド風に料理されたものだけどね。裕福な人は専門店で本物のメキシコ料理を食べてるんじゃないかなあ」とのこと。
おお!インド風にアレンジまでされているなんて、まさに日本でいうところのイタリアン、たらこスパゲッティーやナポリタンを彷彿とさせるじゃないか!
ちなみに大航海時代に中南米原産の唐辛子(チリ)がインドに渡ってきて料理が発展していった様子は「インドカレー伝」(リジー・コリンガム著、東郷えりか訳)という本に詳しい。
食に関しては戒律や浄・不浄の概念のせいで保守的と言われるインド人だが、じつはとっくの昔に食のグローバリゼーションを成し遂げていた、とも言えるわけだ。
さらに余談だが、メキシコで伝統的なコーヒーの飲み方の「カフェ・デ・オジャ」といえば、コーヒーにシナモンを入れたもののことを指す。
シナモンは南アジア原産の香辛料。
中南米原産の唐辛子がインドの料理で、南アジア原産のシナモンがメキシコの飲み物でそれぞれ欠かせないものになっている、っていうものなかなかに面白い話なのではないかと思う。
話を番組に戻すと、もうひとつ驚いたのは、このレシピに牛肉が使われていること。
ご存知のとおり、インドでは人口の8割がヒンドゥー教を信仰している。
ヒンドゥー教において牛は「聖なる動物」とされており、殺したり食べたりすることに対する忌避意識は相当に強いものがある。
とくに、ヒンドゥーナショナリズム的な傾向が高まっている昨今では、牛の屠殺を禁じる法律が州議会で可決されたり、牛肉を所持していたイスラム教徒が集団リンチにあったりするという事件も起きている。
田舎だけではなく、Demonic Resurrectionの本拠地、大都会のムンバイでも起きていることだ。
その中で、あえて(それもさも普通のことのようにしれっと)牛肉を使った料理を紹介するっていうのは、じつはすごく勇気がいることなんじゃないだろうか。
この「チリ・コン・カルネ(chili con carne)」はもともとはスペイン語で、conは英語のwith、carneはmeatを意味している。
このカルネは本場メキシコやテキサスでも必ずしも牛肉である必要はなく、鶏肉でも良いとされている。
何故そこを、あえてそこを牛肉で行くのか?
もちろん、牛肉のほうが美味しい(少なくとも、Sahilにとっては)ということなのだろうが、本当にそれだけだろうか。
これは完全に想像だが、Third SovereignのVedant がインタビューで言っていたように、彼らメタルミュージシャンにとってはヘヴィーメタルこそが宗教というか信念の拠り所であって、既存の宗教による規範になんてとらわれねえぞ!という意識が働いているの可能性はないだろうか。
Sahilが所属するDemonic Resurrectionの曲の中には、こんなふうに冒頭で神の実在や慈悲を否定しているものもある。
(男塾の民明書房風に書くと、この曲はマツヤというタイトルだが、牛丼をテーマにした歌ではなく、だから番組でも牛肉を食べているのでないことは言うまでもない)
冒頭の語りに続いて始まるシタールとメタルサウンドの融合がシビれる!
しかもそれが単なる意外性だけで終わらずに、ドラマチックな曲調の中で非常にうまく使われているのが印象的だ。
冒頭で神の権威を否定している一方で、歌詞にはヒンドゥー教的な単語もずいぶん出てくる。
が、大事なのはダルマ(Dharma=法、理ことわり)であって、様々な神々はその多様な側面を表したものに過ぎない、というのもまたインドの哲学の一部。
これはこれで非常にインド的なメタルと言えるのではないだろうか。
また別の曲では、ヒンドゥーの神々がばんばん出てきて、もう完全にヴェーディックメタル!
(ヴェーディックメタルについてはこちらをどうぞ)
デス声以外の部分も多く、ドラマティックにインド神話の世界創造を歌った壮大すぎるテーマのメタル組曲だ。
思うに、彼らは曲を書くにあたって、ヘヴィーメタルにふさわしい題材として、インドの伝統であるヒンドゥーの神話世界を扱ってはいるものの、ヒンドゥー教という宗教を生活の規範にしようというつもりはさらさらない、というスタンスで活動しているのではないだろうか。
それから、つい歌詞や背景の分析が長くなってしまったけど、ブルータルだったりテクニカルだったりするデスメタルバンドが多いインドのメタルバンドの中で、Demonic Resurrectionのドラマチックかつシンフォニックなサウンドは非常に個性的で面白い。
楽曲もよくできていて、演奏レベルも非常に高く、欧米でツアーができるほどに人気があるのもうなづける。
日本でももっと人気が出てよいタイプのサウンドじゃないだろか。
それにしても、この動画のトップ画像を見ていたら、最近ちょっと太り気味のアタクシもケトン食やってみようかな…という気持ちになってきてしまった(内容は、体重の数字だけじゃなくて、トータルの健康に気を配れ、っていうみんなが言うやつなんだけど)。
糖質や炭水化物の摂取をやめると初めのうちはイライラすると聞くが、そんなときに彼らのデスメタルを聴けば気分もすっきりするかもしれない。
余計怒りが込み上げてきて何かを破壊したくなるかもしれないが。
ああ、今回も軽い話題のつもりがずいぶん長くなってしまった。
楽しんで読んでもらえたら良いのだけど。
それでは今日はこのへんで!
軽めといっても音楽的には重め!
今回は北東部ミゾラム州のデスメタルバンド、我らが Third Sovereignが出演している謎の音楽番組を紹介します!
Third Sovereignに関しては、こちらの彼らへのインタビュー記事をどうぞ。
デスメタルというコアな音楽性ながら、このブログ史上最多の「いいね!」を獲得した人気記事となっております。
インドの音楽シーンを見ていくうえで非常に大事なことを語っているので、メタルなんか聴かないよという人も是非ご一読を!
さて、本日紹介する番組は、その名も「Headbanger's Kitchen」
内容はというと、「ヘビーメタル・クッキングショー」という、かなりシュールというか意味不明なもので、メタラーっぽい料理人が大真面目に料理の作り方を披露するという訳のわからなさ。
毎回インド国内や海外のいろんなミュージシャンを招いて料理とメタルを紹介するという、おそらく世界でも唯一無二の番組だ。
インドでも、メタルという過激で暴力的な音楽を、料理という日常的で家庭的なものと対比させて面白がる、っていうメタ的な楽しみ方が成立するほどに、音楽の聴き方が成熟しているってわけだ。
Third Sovereignがゲストとして出演しているこの回で紹介される料理は「Necro Chili Con Carne」(暗黒チリ・コン・カルネ)とのこと。
なんじゃいそりゃ、と思うけど、その模様はこちらからどうぞ。
見てもらうと分かるが、このネクロ・チリ・コン・カルネ、別にThird Sovereignにちなんだ料理というわけでもなく、バンドのメンバーがいっしょに料理をするというわけでもなく、もっぱら司会の男性が一人で進行。
意外にも料理のコーナーはこれといったおふざけもなく、肝心のメタルの要素もないまま極めてまっとうに進んでゆく。
で、料理のコーナーが終わると今度はいよいよ司会の男性によるThird Sovereignへのインタビューが始まる(11:05頃から)のだが、このインタビューも、作った料理を食べながらするわけでもなく、好きな食べ物の話題が出るでもなく、今度は料理のことなんか忘れてしまったかのように普通のインタビューが始まり、ますますわけのわからなさが募る展開となっている。
インタビューでいちばん右に座っているインド訛りの少ない流暢な英語を話している男性が、このサイトでインタビューさせてもらったVedant.
この映像を見て、アタクシのインタビューのときは分かりやすいようにずいぶんゆっくり話をしてくれていたんだなあ、と再認識した。
彼はそういう気配りがさりげなくできる男です。
気になって調べてみたところ、この司会の男性はなんとムンバイのシンフォニック・デスメタルバンド、Demonic Resurrectionのヴォーカリストを務めるSahilという人物だということが判明!
Demonic Resurrectionはなかなか個性的なバンドで「いつか紹介したいアーティスト」のリストに入れていたのだけど、こんなところでこんな形で会ってしまうとは…。
でもせっかくなので紹介すると、彼らはドイツの有名なメタル系フェス、ヴァッケン・オープンエアにも出たことがあり、この5月にも英国ツアーを成功させた国際的にも高く評価されているバンドだ。
ヴァッケン出演時の模様がこちら。
この番組紹介の映像で、「キート、キート(Keto)」と連呼しているので何かと思って調べてみたら、どうやらこれは日本では「ケトン食」と呼ばれている健康食のことらしい。
「ケトン食」とは、もともと小児難治性てんかんの治療のために開発された食事法で、糖や炭水化物の摂取を大きく制限してエネルギーの多くを脂肪やたんぱく質から取るというもの。
日本でも流行った「低炭水化物ダイエット」「ロカボ」にも似たもののようだが、検索すると、日本でも「ケトン食ががんを消す」とか、「奇跡の食事療法」といった本も出版されており、世界中に熱心なファンがいる健康法のようだ。
で、その熱心なファンのインド代表がこのDemonic ResurrectionのヴォーカリストのSahilということのようで、この番組は単なるメタルと料理のミスマッチを狙ったバラエティー番組ではなく、このケトン料理のレシピを視聴者の健康のために紹介するという、非常に真面目な使命を持ったもの(にメタルアーティストのインタビューも入っている)なのだ。
インド料理はチャパティーや米、ジャガイモなどで炭水化物過多になりやすいと言われているのだが、まさかデスメタルバンドのヴォーカリストが食事療法を通してインドの健康状況改善に取り組んでいるとは思わなかった。
インドのデスメタルシーン、奥が深すぎる…。
さらに謎なのは、Sahilが紹介しているレシピがチリ・コン・カルネだということ。
チリ・コン・カルネは米南部テキサス州からメキシコあたりで食べられている、いわゆる「テックスメックス」料理で、英語風にチリ・コン・カンと呼ばれることもある。
そのメキシコ料理(と番組では紹介されている)のチリ・コン・カルネを、サヒールさん、インドでは手に入りづらいと言いながらアボカドを使ったワカモレを作ったり、かなり本格的な作り方でクッキングしているではないか。
食に関しては一様に保守的と言われているインドで、何故に遠く離れたメキシコの料理なのか。
謎を解くカギは、「新版 インドを知る辞典」(山下博司・岡光信子著)という本の中に見つかった。
この本の中の最近のインドの夕食事情についての記述で、こんなことが書かれていた。
「都会の裕福な家庭では、インド料理だけでなく、時には中華料理、メキシコ料理、タイ料理、西洋料理なども並べられる」
なんと、家庭でよく食べられる外国料理の2番目にメキシコ料理が来ているではないか!
1番目が地理的にも近く、世界的にも美食とされている中華料理なのは分かるとして、その次に遠く離れたメキシコ料理。
これは日本でいうとイタリア料理あたりのポジションということだろうか。
でもよく考えてみたらインド料理で欠かせない唐辛子も、サモサ等でよく使われるジャガイモも、もともとは中南米原産。
香辛料をたくさん使うという共通点もあるし、メキシコ料理はじつはインド人にとってかなり馴染みやすいものなんじゃないだろうか。
と思ってデリーやムンバイのメキシカンレストランをググってみたら、あるわあるわ。
しかも、メキシコ料理専門店だけじゃなくて、「インド料理とメキシコ料理」とか、「イタリアンとメキシコ料理」みたいなお店がたくさんヒットする。
ムンバイに暮らすインド人の友人に聞いてみたところ、「ナチョスやケサディーヤ、タコスやブリトーは一般的だよ。インド風に料理されたものだけどね。裕福な人は専門店で本物のメキシコ料理を食べてるんじゃないかなあ」とのこと。
おお!インド風にアレンジまでされているなんて、まさに日本でいうところのイタリアン、たらこスパゲッティーやナポリタンを彷彿とさせるじゃないか!
ちなみに大航海時代に中南米原産の唐辛子(チリ)がインドに渡ってきて料理が発展していった様子は「インドカレー伝」(リジー・コリンガム著、東郷えりか訳)という本に詳しい。
食に関しては戒律や浄・不浄の概念のせいで保守的と言われるインド人だが、じつはとっくの昔に食のグローバリゼーションを成し遂げていた、とも言えるわけだ。
さらに余談だが、メキシコで伝統的なコーヒーの飲み方の「カフェ・デ・オジャ」といえば、コーヒーにシナモンを入れたもののことを指す。
シナモンは南アジア原産の香辛料。
中南米原産の唐辛子がインドの料理で、南アジア原産のシナモンがメキシコの飲み物でそれぞれ欠かせないものになっている、っていうものなかなかに面白い話なのではないかと思う。
話を番組に戻すと、もうひとつ驚いたのは、このレシピに牛肉が使われていること。
ご存知のとおり、インドでは人口の8割がヒンドゥー教を信仰している。
ヒンドゥー教において牛は「聖なる動物」とされており、殺したり食べたりすることに対する忌避意識は相当に強いものがある。
とくに、ヒンドゥーナショナリズム的な傾向が高まっている昨今では、牛の屠殺を禁じる法律が州議会で可決されたり、牛肉を所持していたイスラム教徒が集団リンチにあったりするという事件も起きている。
田舎だけではなく、Demonic Resurrectionの本拠地、大都会のムンバイでも起きていることだ。
その中で、あえて(それもさも普通のことのようにしれっと)牛肉を使った料理を紹介するっていうのは、じつはすごく勇気がいることなんじゃないだろうか。
この「チリ・コン・カルネ(chili con carne)」はもともとはスペイン語で、conは英語のwith、carneはmeatを意味している。
このカルネは本場メキシコやテキサスでも必ずしも牛肉である必要はなく、鶏肉でも良いとされている。
何故そこを、あえてそこを牛肉で行くのか?
もちろん、牛肉のほうが美味しい(少なくとも、Sahilにとっては)ということなのだろうが、本当にそれだけだろうか。
これは完全に想像だが、Third SovereignのVedant がインタビューで言っていたように、彼らメタルミュージシャンにとってはヘヴィーメタルこそが宗教というか信念の拠り所であって、既存の宗教による規範になんてとらわれねえぞ!という意識が働いているの可能性はないだろうか。
Sahilが所属するDemonic Resurrectionの曲の中には、こんなふうに冒頭で神の実在や慈悲を否定しているものもある。
(男塾の民明書房風に書くと、この曲はマツヤというタイトルだが、牛丼をテーマにした歌ではなく、だから番組でも牛肉を食べているのでないことは言うまでもない)
冒頭の語りに続いて始まるシタールとメタルサウンドの融合がシビれる!
しかもそれが単なる意外性だけで終わらずに、ドラマチックな曲調の中で非常にうまく使われているのが印象的だ。
冒頭で神の権威を否定している一方で、歌詞にはヒンドゥー教的な単語もずいぶん出てくる。
が、大事なのはダルマ(Dharma=法、理ことわり)であって、様々な神々はその多様な側面を表したものに過ぎない、というのもまたインドの哲学の一部。
これはこれで非常にインド的なメタルと言えるのではないだろうか。
また別の曲では、ヒンドゥーの神々がばんばん出てきて、もう完全にヴェーディックメタル!
(ヴェーディックメタルについてはこちらをどうぞ)
デス声以外の部分も多く、ドラマティックにインド神話の世界創造を歌った壮大すぎるテーマのメタル組曲だ。
思うに、彼らは曲を書くにあたって、ヘヴィーメタルにふさわしい題材として、インドの伝統であるヒンドゥーの神話世界を扱ってはいるものの、ヒンドゥー教という宗教を生活の規範にしようというつもりはさらさらない、というスタンスで活動しているのではないだろうか。
それから、つい歌詞や背景の分析が長くなってしまったけど、ブルータルだったりテクニカルだったりするデスメタルバンドが多いインドのメタルバンドの中で、Demonic Resurrectionのドラマチックかつシンフォニックなサウンドは非常に個性的で面白い。
楽曲もよくできていて、演奏レベルも非常に高く、欧米でツアーができるほどに人気があるのもうなづける。
日本でももっと人気が出てよいタイプのサウンドじゃないだろか。
それにしても、この動画のトップ画像を見ていたら、最近ちょっと太り気味のアタクシもケトン食やってみようかな…という気持ちになってきてしまった(内容は、体重の数字だけじゃなくて、トータルの健康に気を配れ、っていうみんなが言うやつなんだけど)。
糖質や炭水化物の摂取をやめると初めのうちはイライラすると聞くが、そんなときに彼らのデスメタルを聴けば気分もすっきりするかもしれない。
余計怒りが込み上げてきて何かを破壊したくなるかもしれないが。
ああ、今回も軽い話題のつもりがずいぶん長くなってしまった。
楽しんで読んでもらえたら良いのだけど。
それでは今日はこのへんで!
goshimasayama18 at 23:11|Permalink│Comments(0)
2018年02月25日
インドNo.1デスメタルバンド Third Sovereignへのインタビュー
ども、軽刈田凡平です。
さて、前回お届けした通り、今回はインド北東部ミゾラム州のデスメタルバンド、Third Sovereignへのインタビューの模様をお届けします。
今回インタビューに答えてくれたのはヴォーカリストのVedant.
彼もまたすっごくいい奴で、同い年ということも分かり、お互いが聴いてきた音楽の話からインドのメタルシーンまで、いろんな話題が出たインタビューになりました!
インタビューはWhatsappっていうアプリの通話機能で行ったんだけど、彼のアイコンは奥さん(美人!)と一緒に写ってるやつで、デス声で死や厭世的な内容を歌っている人とはとても思えなかったよ。
凡「はじめまして。今日は時間を取ってくれてありがとう」
V「こちらこそ。聞きたいことはなんでも聞いてくれ」
凡「まずはインド北東部、とくにミゾラム州のメタルシーンについて教えて」
V「 ここ3〜5年くらい、メタルバンドはすっごく増えてきてるよ。Third Sovereignは2003年にBassのJonahとReubenが始めたバンドなんだ。もともと二人はCarpathiaっていうバンドをやっていて、ジャムセッションしながら曲を作っていったんだ」
凡「そのころのメタルシーンはどうだったの?」
V「その前はComoraとか、いくつかのバンドしかいなかった。彼らは2000年ごろから活動しているミゾのカルチャーをテーマにしたバンドだよ」
Comoraは以前、インド北東部のメタルについて書いたときにも触れたバンドだ。そんなに長くやってるバンドだったとは。
V「インド全体でも、そのころはデスメタルバンドはそんなにいなかった。当時からやっているバンドで今も現役のバンドは他にいないかな。
2003年の結成当時はMalaっていうヴォーカリストとJasonっていうギタリストがいたんだけど、何度かメンバーチェンジがあって、2005年にはAnshumanっていうギタリストが加入した。俺が加入したのは2006年だ。ベースのJonahが学校の後輩で、誘われたんだ。俺も2010年に一旦バンドをやめたときがあって、そのときはDevRajというヴォーカリストが代わりに入ったんだ。設立メンバーのJonahも仕事の都合で一回バンドを離れたことがある」
凡「仕事って?」
V「彼のお父さんが小学校を経営してるんだ」
なんと、デスメタルバンドのメンバーがお父さんが経営している小学校で働くとは。これまたデスメタルのイメージと違う。
V「一回バンドはデリーに出たんだけど、デリーのスタジオが火事にあって、いろんなマテリアルが焼失しちゃったんで、またミゾラムに戻ってきた。今のメンバーはベースのJonah、ドラムのReuben、ギターのBenjaminにヴォーカルの俺」
凡「 メンバーはみんなミゾ人なの?」
V「もともとはミゾで結成されたバンドだった。でも俺はアッサム人だし、元メンバーのDevRajはシッキム人、Anshumanやヴィッキーはデリー出身のメンバーだった」
凡「なるほど。インターナショナルっていうかインターステイトバンドなんだね。メンバーのコミュニケーションは英語で?」
V「俺はミゾ語が少し分かるんだ。あとは英語だよ」
凡「ミゾのバンドとしてのアイデンティティーが曲にも生かされている?例えばブラジルのセパルトゥラは伝統的なリズムを取り入れたり、北欧のメタルバンドも伝統的なメロディーを取り入れたりしているよね」
V「 俺たちも"Sakei Ai Hla / Grave of Humanity"という曲でミゾのフォークロアを使っている。山猫を殺した男の物語だ。他にもミゾの暮らしで感じたことや考えたことが曲に生かされているよ」
確かに、言葉は分からないなりにも「土着の不気味さ」みたいなものがうまく取り入れられた曲だ。
凡「ところで、初めてメタルを聞いたのはいつだったの?」
V「90年代から00年代くらいかな。初めはグランジを聴いていた。Sound Garden, Nirvana, Alice in Chainsとかかな。あとはもっとクラシックなタイプのメタル。Skid Rowとか」
凡「ちょっと待って、歳、同じくらいじゃない?」
ここで同い年であることが判明。
凡「90年代後半にインドを旅行したんだけど、デリーとかアーグラーとかじゃロックなんて誰も聴いてなかったよ。いったいどこで聴いてたの?」
V「そうだよね、分かるよ。その頃プネーにいたんだ。だからいろんな音楽が聴けた。IITグワハティ校でも聴いてたよ」
なんと、彼はMITを超えるとも称されるインド工科大学、IIT出身のエリートだった!
グワハティは北東部のアッサム州の州都で、このあたりは以前から書いている通り、インドの中心部よりも欧米文化の影響が強いエリアだ。
ここでなら、欧米のエクストリームミュージックに触れる機会があったとしても全く不思議ではない。
また、ムンバイと同じマハーラーシュトラ州にあるプネーも多くの大学が集まる学園都市で、ここも以前から若者文化が非常に盛んな街だ。他の大都市と比べても、ロックやメタルに触れる機会は多かったのだろう。
V「その後、2000年代に入ってから友達に借りてメタルを聴き始めた。最初はIron Maidenの"X factor"、次にMegadethの"Youthanasia"、そこからPanteraの"Cowboys from Hell"、"Vulgar Display of Power"...Iron Maidenは新しいアルバムのBook of Soulsも良かったよ」
アラフォーの元メタルヘッズには懐かしいアルバムが並んでるんじゃないだろうか。
凡「そこからだんだんヘヴィーな音楽を聴くようになっていったわけ?」
V「そういうわけでもなくて、アコースティックなものとか、NirvanaやAlice in Chainsは今でも好きだし、リラックスしたいときはブルースも聴くよ」
凡「影響を受けたバンドは?」
V「もう長くやっているし、直接的に影響を受けるってことはあんまり無いんだけど、デスメタルで好きなバンドを挙げるとしたら、Cannibal Corpse、Morbid Angel、Suffocation、Deathとかフロリダのデスメタルバンドかな」
凡「ツアーについて教えて。アルバムのPerversion Swallowing SanityのあとのBlood and Rootsツアーではインドの9都市を回ったんだって?」
V「その予定だったんだけど、実は北東部の数都市しか回れなかった。主に経済的な問題と、チェンナイで大洪水が起きて、交通上の問題もあった。インドでは都市間の距離が離れているから、ツアーするのはとても難しいんだ。日本はどう?」
凡「日本だったら東京〜大阪間は新幹線で3時間くらいだから、かなりツアーはしやすい環境と言えるね」
インドに行ったことがある人なら分かると思うが、インドでは都市間の移動は近距離でも夜行列車で1泊くらいするのはざらで、こういったコアな音楽のファンが多いであろう大都市のデリー、ムンバイ、バンガロール、チェンナイ、コルカタ間を移動するなら、鉄道で2、3泊しながら移動することになる。
バンドにとって、楽器や機材を運びながらの移動は非常に困難なものになるのは想像に難くない。
V「それにメタルバンドをサポートしてくれるスポンサーや会場を探すのも難しいんだ。メタルファンはライブ会場にとっても、たくさんドリンクを注文してくれるいいお客さんってわけじゃないからね。グワハティのDavid KochやバンガロールのSalman U. Syedといった数少ないオーガナイザーがサポートしてくれている。」
凡「名前からするとDavidはクリスチャンでSalmanはムスリムなの?いろんなバックグラウンドの人が関わってるんだね」
V「Davidはヒンドゥーで、本名はDwep Jyotiっていうんだ。」
なぜさっきからバンドメンバーの出身地やプロモーターの宗教を気にしているかというと、インドのインディーズミュージックシーンに興味を持ってから、ひとつ確信を持ったことがあるからだ。
その答えは、やがてVedantによって明らかになる。
V「かつてはデリーにAmit Saigalっていう素晴らしいプロモーターがいて、彼はG.I.R.(Great Indian Rock) Festivalというイベントを主催していたんだ。Third Sovereignも出演したことがあって、ヘッドライナーはノルウェーのブラックメタルバンドのEnslavedだった」
なんと。Enslavedはアタクシも名前くらい聞いたことがあるビッグネームだ。
凡「Enslavedがインドでライブをやったの?信じられないよ」
V「ああ。2007年のことだ。Amitは素晴らしいプロモーターだった。メタルだけじゃなくて、オルタナティブとか、あらゆるスタイルのロックをサポートしていた。でも残念ながら彼は2012年に海で溺れて亡くなったんだ。彼がいた頃はロックの黄金時代だった。」
まだまだメタルやロックのマーケットが小さいインドでは、サポートしてくれる人材も不足している状況にあるようだ。
凡「メガラヤ州のPlague Throatはドイツのヴァッケン・オープンエア・フェスティヴァル(大規模なメタル系フェス)でも演奏したみたいだけど、Third Sovereignも海外でライブをやってもいいくらいの素晴らしいバンドだよね」
V「ありがとう。日本でもプレイしてみたいし、メタルの盛んなチェコでもライブがしたい。そのために、アーティストのサポートをしてくれる政府機関のICCR(Indian Council for Cultural Relations)と接触しつづけているんだ」
凡「え?政府の機関がデスメタルバンドのサポートをしてくれるの?」
V「ハハハ、普通はそんなことないんだけど、中にはメタルに理解のあるスタッフもいてね」
凡「Third Sovereignのライブにはいつも何人くらい集まるの?」
V「300〜400くらいかな。会場にもよるけど」
この音楽性でこれだけの集客、アンダーグラウンドとはいえ、かなりの人気バンドじゃないか
V「そういえば、日本のデスメタルバンドのDefiledや兀突骨(Gotsu-Totsu-Kotsu)もインドをツアーしていたよ。DefiledはコルカタのDeath Festというイベントに出演したし、兀突骨はシッキム州のガントクとか、バンガロールでもライブをしたはずだ」
またしてもびっくり!まさか日本のデスメタルバンドもインドに進出していたとは!
このジャンルの国際化は思ったより進んでいるみたいだ。
ライブはいったいどんな様子だったんだろう。機会があったらぜひ話を聞いてみたいものだ。
凡「へえ!彼らはインドで人気があるの?」
V「オーディエンスにすごくいい印象を与えたと思うよ」
凡「インドでのメタルのライブはどう?ヘッドバンギングとか、モッシュ(観客同士が激しく体をぶつけあう)とかするの?」
V「ああ、そうだよ。たまにはボディービルやってるような連中がモッシュからケンカを始めたりね。日本はどう?」
凡「デスメタルはあんまり分からないけど、ハードコアとかだとみんなモッシュしてるよ。もう少しクラシックなタイプのメタルだとみんなヘッドバンギングしてる」
V「日本でメタルといえば、俺はX Japanの大ファンなんだ。あと俺は黒澤明の映画も大ファンで、羅生門や七人の侍は何度も見てるよ」
ミゾラム州でもX JAPANは有名だった。
日本では、存在が大きくなりすぎてヘヴィーメタルという枠組みで語られることは少ないが、やはり日本で最も有名なメタルバンドといえばX以外には考えられないのだろう。
そしてここでクロサワの名前が出てくるとは。
正直、アタクシはあんまり彼の映画を見たことがないので、あまり反応できずになんか申し訳ない気分になる。
凡「ところで、VedantはThird Sovereignの音楽をどんなふうにカテゴライズする?デスメタル?ブラックメタル?」(※ブラックメタルはより反宗教的、悪魔主義的な傾向が強いサブジャンル)
V「デスメタルでも、ブラックメタルでも、好きなように呼んでくれて構わないよ」
ここで、確信をついた質問をしてみた。
凡「なんで聞いたかっていうと、インド北東部はクリスチャンの割合が非常に高いよね。ブラックメタルはもともと反キリスト教的な傾向のある音楽だから、そういった社会の状況と関係があるのかどうか知りたかったんだ。ヨーロッパのブラックメタルバンドの中には、教会に放火したりとか、非常にアンチ・キリスト教色の強いバンドもいたよね。北東部のブラックメタルもそういう過激なアティテュードを持っているの?それとも、いわゆるフィクション的なものとして演奏してるの?」
V「そうだな。知ってのとおり、インドの社会にはいろいろな問題がある。宗教と宗教が対立したりとか、地域やコミュニティーの対立とか。そういう社会問題が曲のテーマになることもある。俺たちは、反宗教というより、宗教同士、コミュニティー同士の対立にうんざりしているんだ。ブラックメタルやヘヴィーメタルはそれ自身がひとつの宗教みたいな感じだ。そういった様々な違いや対立にこだわるんじゃなくて、音楽は個人のバックグラウンドに関係なく夢中になることができる。アーティストはそういう表現のひとつとしてブラックメタルを演奏しているんだ」
そう。大国であるがゆえに宗教、言語、民族、貧富、カースト、地域と様々な多様性を抱えたインドは、対立する要素にも事欠かない。実際に、ヒンドゥーナショナリズムの台頭やイスラム過激派によるテロ、新しい州を求める独立運動や権利拡大運動など、様々な紛争が発生している。
紛争とまで行かなくても、基本的に所属しているコミュニティーが違えば、伝統的な社会の中ではお互いにあまり干渉しあわないのが常とされてきた。
でも、例えばヒップホップシーンでは、クリスチャンのDIVINEも、ムスリムのNaezyも、シク教徒のPrabh Deepも、北東部のBKも、共演したりもするし、その背景に関係なくリスナーの支持を受けている。
音楽の力による対立の超克。いや、そんな難しい事ではなく、誰がやっていようが素晴らしいものは素晴らしい。
こういう部分こそ、インドの音楽シーンの最も愛すべきところだと思う。
もちろん音楽そのものの素晴らしさもあるが、音楽という新しい価値観によって、伝統的な相違がいとも簡単に乗り越えられてくということ。
それこそが、アタクシがインドの音楽シーンに非常に魅力を感じる最大の理由のひとつだ。
インドでは、エンターテインメントの本流であるボリウッド映画の世界でも、20年以上トップスターの座を維持しているシャー・ルク、アミール、サルマンのいわゆる「三大カーン」はインドでは少数派のムスリムだが、宗教感情に関係なく国民的な人気を得ているし。
そんな内容をVedantに伝えると、
V「ああ。宗教や文化や、あらゆる違いを乗り越えられるのが音楽の素晴らしいところだ。俺は今こうして遠く離れた東京にいる君と話をしている。そんなことができるのも、俺が音楽を演奏してきたからだ。自分がメタルをやってきたことで、いろんな文化のいろんな人たちとコミュニケートできる。こんなに素晴らしいことはないよ」
ありがとう。
その言葉をミュージシャン本人から聞けただけでも、インドの音楽についてのブログをやってて良かったと思えるよ。
宗教、文化、思想、地域。あらゆるものを乗り越える音楽の力を改めて感じさせられたインタビューになった。
彼らの音楽はデスメタル。
歌詞を調べてみると、死、絶望、憎悪、そんなのばっかりだ。
曲のタイトルも"Living This Hate"とかね(とてもかっこいい曲だけどね)。
でも、こういう極端な音楽のファンがインド中、世界中にいて、あらゆる差異を超えて繋がれるというのは本当に素晴らしいことだと思う。
世の中に絶望を感じて、こういう詞世界に魅力を感じている若者にとってみたら、こういった音楽をプレイするバンドがアメリカやヨーロッパだけじゃなくて、インドのすみっこの北東部にもいるってことが、とてもうれしいと感じるはずだもの。
Vedantは、「北欧のバンドの中には過激な行動をした奴らもいたけど、彼らも音楽自体は非常に素晴らしいと思うよ。大事なのはどんな人が演奏しているかじゃなくて、音楽それ自体なんだ」とも語っていた。
非常に成熟した芸術への接し方であるように思う。
ここ日本では、昨今、アーティストのちょっとした不祥事にも非常に過敏になる風潮があるが、こうした姿勢はアタクシ達日本人も大いに見習うべきところがあるだろう。
最後に、彼らが契約しているレーベルについて。
彼らの現時点での最新アルバム「Pervertion Swallowing Sanity」は、ムンバイの「Transcending Obscurity」というレーベルから発売されている。
このレーベルはKunal Choksiという人物によって運営されていて、このダウンロードや定額聴き放題全盛の時代に、世界中のアンダーグラウンドなエクストリームメタル音楽の膨大タイトルのCDをプレスしまくっているという、非常に酔狂かつ情熱的なレーベルだ。
いつかこのレーベルについても取り上げてみたいと思っている。
このレーベルからリリースされたThird SovereignのCDは、日本でもdiskunion で入手できるようなので、興味のある人は是非チェックを!
初めは興味本位で調べ始めたインドのデスメタル。
知れば知るほど深くてグッとくるなあー。
それではまた!
さて、前回お届けした通り、今回はインド北東部ミゾラム州のデスメタルバンド、Third Sovereignへのインタビューの模様をお届けします。
今回インタビューに答えてくれたのはヴォーカリストのVedant.
彼もまたすっごくいい奴で、同い年ということも分かり、お互いが聴いてきた音楽の話からインドのメタルシーンまで、いろんな話題が出たインタビューになりました!
インタビューはWhatsappっていうアプリの通話機能で行ったんだけど、彼のアイコンは奥さん(美人!)と一緒に写ってるやつで、デス声で死や厭世的な内容を歌っている人とはとても思えなかったよ。
凡「はじめまして。今日は時間を取ってくれてありがとう」
V「こちらこそ。聞きたいことはなんでも聞いてくれ」
凡「まずはインド北東部、とくにミゾラム州のメタルシーンについて教えて」
V「 ここ3〜5年くらい、メタルバンドはすっごく増えてきてるよ。Third Sovereignは2003年にBassのJonahとReubenが始めたバンドなんだ。もともと二人はCarpathiaっていうバンドをやっていて、ジャムセッションしながら曲を作っていったんだ」
凡「そのころのメタルシーンはどうだったの?」
V「その前はComoraとか、いくつかのバンドしかいなかった。彼らは2000年ごろから活動しているミゾのカルチャーをテーマにしたバンドだよ」
Comoraは以前、インド北東部のメタルについて書いたときにも触れたバンドだ。そんなに長くやってるバンドだったとは。
V「インド全体でも、そのころはデスメタルバンドはそんなにいなかった。当時からやっているバンドで今も現役のバンドは他にいないかな。
2003年の結成当時はMalaっていうヴォーカリストとJasonっていうギタリストがいたんだけど、何度かメンバーチェンジがあって、2005年にはAnshumanっていうギタリストが加入した。俺が加入したのは2006年だ。ベースのJonahが学校の後輩で、誘われたんだ。俺も2010年に一旦バンドをやめたときがあって、そのときはDevRajというヴォーカリストが代わりに入ったんだ。設立メンバーのJonahも仕事の都合で一回バンドを離れたことがある」
凡「仕事って?」
V「彼のお父さんが小学校を経営してるんだ」
なんと、デスメタルバンドのメンバーがお父さんが経営している小学校で働くとは。これまたデスメタルのイメージと違う。
V「一回バンドはデリーに出たんだけど、デリーのスタジオが火事にあって、いろんなマテリアルが焼失しちゃったんで、またミゾラムに戻ってきた。今のメンバーはベースのJonah、ドラムのReuben、ギターのBenjaminにヴォーカルの俺」
凡「 メンバーはみんなミゾ人なの?」
V「もともとはミゾで結成されたバンドだった。でも俺はアッサム人だし、元メンバーのDevRajはシッキム人、Anshumanやヴィッキーはデリー出身のメンバーだった」
凡「なるほど。インターナショナルっていうかインターステイトバンドなんだね。メンバーのコミュニケーションは英語で?」
V「俺はミゾ語が少し分かるんだ。あとは英語だよ」
凡「ミゾのバンドとしてのアイデンティティーが曲にも生かされている?例えばブラジルのセパルトゥラは伝統的なリズムを取り入れたり、北欧のメタルバンドも伝統的なメロディーを取り入れたりしているよね」
V「 俺たちも"Sakei Ai Hla / Grave of Humanity"という曲でミゾのフォークロアを使っている。山猫を殺した男の物語だ。他にもミゾの暮らしで感じたことや考えたことが曲に生かされているよ」
確かに、言葉は分からないなりにも「土着の不気味さ」みたいなものがうまく取り入れられた曲だ。
凡「ところで、初めてメタルを聞いたのはいつだったの?」
V「90年代から00年代くらいかな。初めはグランジを聴いていた。Sound Garden, Nirvana, Alice in Chainsとかかな。あとはもっとクラシックなタイプのメタル。Skid Rowとか」
凡「ちょっと待って、歳、同じくらいじゃない?」
ここで同い年であることが判明。
凡「90年代後半にインドを旅行したんだけど、デリーとかアーグラーとかじゃロックなんて誰も聴いてなかったよ。いったいどこで聴いてたの?」
V「そうだよね、分かるよ。その頃プネーにいたんだ。だからいろんな音楽が聴けた。IITグワハティ校でも聴いてたよ」
なんと、彼はMITを超えるとも称されるインド工科大学、IIT出身のエリートだった!
グワハティは北東部のアッサム州の州都で、このあたりは以前から書いている通り、インドの中心部よりも欧米文化の影響が強いエリアだ。
ここでなら、欧米のエクストリームミュージックに触れる機会があったとしても全く不思議ではない。
また、ムンバイと同じマハーラーシュトラ州にあるプネーも多くの大学が集まる学園都市で、ここも以前から若者文化が非常に盛んな街だ。他の大都市と比べても、ロックやメタルに触れる機会は多かったのだろう。
V「その後、2000年代に入ってから友達に借りてメタルを聴き始めた。最初はIron Maidenの"X factor"、次にMegadethの"Youthanasia"、そこからPanteraの"Cowboys from Hell"、"Vulgar Display of Power"...Iron Maidenは新しいアルバムのBook of Soulsも良かったよ」
アラフォーの元メタルヘッズには懐かしいアルバムが並んでるんじゃないだろうか。
凡「そこからだんだんヘヴィーな音楽を聴くようになっていったわけ?」
V「そういうわけでもなくて、アコースティックなものとか、NirvanaやAlice in Chainsは今でも好きだし、リラックスしたいときはブルースも聴くよ」
凡「影響を受けたバンドは?」
V「もう長くやっているし、直接的に影響を受けるってことはあんまり無いんだけど、デスメタルで好きなバンドを挙げるとしたら、Cannibal Corpse、Morbid Angel、Suffocation、Deathとかフロリダのデスメタルバンドかな」
凡「ツアーについて教えて。アルバムのPerversion Swallowing SanityのあとのBlood and Rootsツアーではインドの9都市を回ったんだって?」
V「その予定だったんだけど、実は北東部の数都市しか回れなかった。主に経済的な問題と、チェンナイで大洪水が起きて、交通上の問題もあった。インドでは都市間の距離が離れているから、ツアーするのはとても難しいんだ。日本はどう?」
凡「日本だったら東京〜大阪間は新幹線で3時間くらいだから、かなりツアーはしやすい環境と言えるね」
インドに行ったことがある人なら分かると思うが、インドでは都市間の移動は近距離でも夜行列車で1泊くらいするのはざらで、こういったコアな音楽のファンが多いであろう大都市のデリー、ムンバイ、バンガロール、チェンナイ、コルカタ間を移動するなら、鉄道で2、3泊しながら移動することになる。
バンドにとって、楽器や機材を運びながらの移動は非常に困難なものになるのは想像に難くない。
V「それにメタルバンドをサポートしてくれるスポンサーや会場を探すのも難しいんだ。メタルファンはライブ会場にとっても、たくさんドリンクを注文してくれるいいお客さんってわけじゃないからね。グワハティのDavid KochやバンガロールのSalman U. Syedといった数少ないオーガナイザーがサポートしてくれている。」
凡「名前からするとDavidはクリスチャンでSalmanはムスリムなの?いろんなバックグラウンドの人が関わってるんだね」
V「Davidはヒンドゥーで、本名はDwep Jyotiっていうんだ。」
なぜさっきからバンドメンバーの出身地やプロモーターの宗教を気にしているかというと、インドのインディーズミュージックシーンに興味を持ってから、ひとつ確信を持ったことがあるからだ。
その答えは、やがてVedantによって明らかになる。
V「かつてはデリーにAmit Saigalっていう素晴らしいプロモーターがいて、彼はG.I.R.(Great Indian Rock) Festivalというイベントを主催していたんだ。Third Sovereignも出演したことがあって、ヘッドライナーはノルウェーのブラックメタルバンドのEnslavedだった」
なんと。Enslavedはアタクシも名前くらい聞いたことがあるビッグネームだ。
凡「Enslavedがインドでライブをやったの?信じられないよ」
V「ああ。2007年のことだ。Amitは素晴らしいプロモーターだった。メタルだけじゃなくて、オルタナティブとか、あらゆるスタイルのロックをサポートしていた。でも残念ながら彼は2012年に海で溺れて亡くなったんだ。彼がいた頃はロックの黄金時代だった。」
まだまだメタルやロックのマーケットが小さいインドでは、サポートしてくれる人材も不足している状況にあるようだ。
凡「メガラヤ州のPlague Throatはドイツのヴァッケン・オープンエア・フェスティヴァル(大規模なメタル系フェス)でも演奏したみたいだけど、Third Sovereignも海外でライブをやってもいいくらいの素晴らしいバンドだよね」
V「ありがとう。日本でもプレイしてみたいし、メタルの盛んなチェコでもライブがしたい。そのために、アーティストのサポートをしてくれる政府機関のICCR(Indian Council for Cultural Relations)と接触しつづけているんだ」
凡「え?政府の機関がデスメタルバンドのサポートをしてくれるの?」
V「ハハハ、普通はそんなことないんだけど、中にはメタルに理解のあるスタッフもいてね」
凡「Third Sovereignのライブにはいつも何人くらい集まるの?」
V「300〜400くらいかな。会場にもよるけど」
この音楽性でこれだけの集客、アンダーグラウンドとはいえ、かなりの人気バンドじゃないか
V「そういえば、日本のデスメタルバンドのDefiledや兀突骨(Gotsu-Totsu-Kotsu)もインドをツアーしていたよ。DefiledはコルカタのDeath Festというイベントに出演したし、兀突骨はシッキム州のガントクとか、バンガロールでもライブをしたはずだ」
またしてもびっくり!まさか日本のデスメタルバンドもインドに進出していたとは!
このジャンルの国際化は思ったより進んでいるみたいだ。
ライブはいったいどんな様子だったんだろう。機会があったらぜひ話を聞いてみたいものだ。
凡「へえ!彼らはインドで人気があるの?」
V「オーディエンスにすごくいい印象を与えたと思うよ」
凡「インドでのメタルのライブはどう?ヘッドバンギングとか、モッシュ(観客同士が激しく体をぶつけあう)とかするの?」
V「ああ、そうだよ。たまにはボディービルやってるような連中がモッシュからケンカを始めたりね。日本はどう?」
凡「デスメタルはあんまり分からないけど、ハードコアとかだとみんなモッシュしてるよ。もう少しクラシックなタイプのメタルだとみんなヘッドバンギングしてる」
V「日本でメタルといえば、俺はX Japanの大ファンなんだ。あと俺は黒澤明の映画も大ファンで、羅生門や七人の侍は何度も見てるよ」
ミゾラム州でもX JAPANは有名だった。
日本では、存在が大きくなりすぎてヘヴィーメタルという枠組みで語られることは少ないが、やはり日本で最も有名なメタルバンドといえばX以外には考えられないのだろう。
そしてここでクロサワの名前が出てくるとは。
正直、アタクシはあんまり彼の映画を見たことがないので、あまり反応できずになんか申し訳ない気分になる。
凡「ところで、VedantはThird Sovereignの音楽をどんなふうにカテゴライズする?デスメタル?ブラックメタル?」(※ブラックメタルはより反宗教的、悪魔主義的な傾向が強いサブジャンル)
V「デスメタルでも、ブラックメタルでも、好きなように呼んでくれて構わないよ」
ここで、確信をついた質問をしてみた。
凡「なんで聞いたかっていうと、インド北東部はクリスチャンの割合が非常に高いよね。ブラックメタルはもともと反キリスト教的な傾向のある音楽だから、そういった社会の状況と関係があるのかどうか知りたかったんだ。ヨーロッパのブラックメタルバンドの中には、教会に放火したりとか、非常にアンチ・キリスト教色の強いバンドもいたよね。北東部のブラックメタルもそういう過激なアティテュードを持っているの?それとも、いわゆるフィクション的なものとして演奏してるの?」
V「そうだな。知ってのとおり、インドの社会にはいろいろな問題がある。宗教と宗教が対立したりとか、地域やコミュニティーの対立とか。そういう社会問題が曲のテーマになることもある。俺たちは、反宗教というより、宗教同士、コミュニティー同士の対立にうんざりしているんだ。ブラックメタルやヘヴィーメタルはそれ自身がひとつの宗教みたいな感じだ。そういった様々な違いや対立にこだわるんじゃなくて、音楽は個人のバックグラウンドに関係なく夢中になることができる。アーティストはそういう表現のひとつとしてブラックメタルを演奏しているんだ」
そう。大国であるがゆえに宗教、言語、民族、貧富、カースト、地域と様々な多様性を抱えたインドは、対立する要素にも事欠かない。実際に、ヒンドゥーナショナリズムの台頭やイスラム過激派によるテロ、新しい州を求める独立運動や権利拡大運動など、様々な紛争が発生している。
紛争とまで行かなくても、基本的に所属しているコミュニティーが違えば、伝統的な社会の中ではお互いにあまり干渉しあわないのが常とされてきた。
でも、例えばヒップホップシーンでは、クリスチャンのDIVINEも、ムスリムのNaezyも、シク教徒のPrabh Deepも、北東部のBKも、共演したりもするし、その背景に関係なくリスナーの支持を受けている。
音楽の力による対立の超克。いや、そんな難しい事ではなく、誰がやっていようが素晴らしいものは素晴らしい。
こういう部分こそ、インドの音楽シーンの最も愛すべきところだと思う。
もちろん音楽そのものの素晴らしさもあるが、音楽という新しい価値観によって、伝統的な相違がいとも簡単に乗り越えられてくということ。
それこそが、アタクシがインドの音楽シーンに非常に魅力を感じる最大の理由のひとつだ。
インドでは、エンターテインメントの本流であるボリウッド映画の世界でも、20年以上トップスターの座を維持しているシャー・ルク、アミール、サルマンのいわゆる「三大カーン」はインドでは少数派のムスリムだが、宗教感情に関係なく国民的な人気を得ているし。
そんな内容をVedantに伝えると、
V「ああ。宗教や文化や、あらゆる違いを乗り越えられるのが音楽の素晴らしいところだ。俺は今こうして遠く離れた東京にいる君と話をしている。そんなことができるのも、俺が音楽を演奏してきたからだ。自分がメタルをやってきたことで、いろんな文化のいろんな人たちとコミュニケートできる。こんなに素晴らしいことはないよ」
ありがとう。
その言葉をミュージシャン本人から聞けただけでも、インドの音楽についてのブログをやってて良かったと思えるよ。
宗教、文化、思想、地域。あらゆるものを乗り越える音楽の力を改めて感じさせられたインタビューになった。
彼らの音楽はデスメタル。
歌詞を調べてみると、死、絶望、憎悪、そんなのばっかりだ。
曲のタイトルも"Living This Hate"とかね(とてもかっこいい曲だけどね)。
でも、こういう極端な音楽のファンがインド中、世界中にいて、あらゆる差異を超えて繋がれるというのは本当に素晴らしいことだと思う。
世の中に絶望を感じて、こういう詞世界に魅力を感じている若者にとってみたら、こういった音楽をプレイするバンドがアメリカやヨーロッパだけじゃなくて、インドのすみっこの北東部にもいるってことが、とてもうれしいと感じるはずだもの。
Vedantは、「北欧のバンドの中には過激な行動をした奴らもいたけど、彼らも音楽自体は非常に素晴らしいと思うよ。大事なのはどんな人が演奏しているかじゃなくて、音楽それ自体なんだ」とも語っていた。
非常に成熟した芸術への接し方であるように思う。
ここ日本では、昨今、アーティストのちょっとした不祥事にも非常に過敏になる風潮があるが、こうした姿勢はアタクシ達日本人も大いに見習うべきところがあるだろう。
最後に、彼らが契約しているレーベルについて。
彼らの現時点での最新アルバム「Pervertion Swallowing Sanity」は、ムンバイの「Transcending Obscurity」というレーベルから発売されている。
このレーベルはKunal Choksiという人物によって運営されていて、このダウンロードや定額聴き放題全盛の時代に、世界中のアンダーグラウンドなエクストリームメタル音楽の膨大タイトルのCDをプレスしまくっているという、非常に酔狂かつ情熱的なレーベルだ。
いつかこのレーベルについても取り上げてみたいと思っている。
このレーベルからリリースされたThird SovereignのCDは、日本でもdiskunion で入手できるようなので、興味のある人は是非チェックを!
初めは興味本位で調べ始めたインドのデスメタル。
知れば知るほど深くてグッとくるなあー。
それではまた!
goshimasayama18 at 02:45|Permalink│Comments(0)
2018年02月23日
インドNo.1デスメタルバンド 北東部ミゾラム州のThird Sovereign
以前、インドのデスメタルバンドTop10のうち半数がインド北東部の「セブン・シスターズ」出身だという記事を書いた。
根拠となったYouTubeはこちら。
突然ではありますが、この度、このランキングで見事1位に輝いたデスメタルバンド、やはり北東部のミゾラム州出身のThird Sovereignにインタビューをすることになったので、直前特集をお届けします。
ミゾラム州の場所はこちら。
以前インタビューしたTanaのいるAlien Godsのアルナーチャル・プラデーシュ州は北東部の最北部、ブータンや中国に接する地域だが、ミゾラム州は北東部の最南端、東をミャンマー、西をバングラデシュに接する山間の森林地帯だ。
「ミゾ」はこの地域に暮らす先住民「ラム」は土地を表し、つまり「ミゾ人の土地」という意味の州ってわけだ。
で、なんでそのインドいちのデスメタルバンドにインタビューすることになったかっていうと、ちょうど1ヶ月ほど前、アタクシは、この記事でも書いた通り、なぜインドの中でも辺境とされる北東部にこんなにたくさんのデスメタルバンドがいるのか、知りたくて知りたくてたまらなかったんである。
そこで、 いくつかの北東部出身のバンドにSNSを通じてメッセージを送った。
なぜ複数のバンドにメッセージを送ったか。
それは、以前とあるミュージシャン(まだこのブログには取り上げていない)に取材依頼をしたところ、まったく音沙汰がなく記事にできなかったことがあり、今回はそんなことがないようにと4つのバンドにメッセージを送ったんである。
そしたら、先日記事にした通り、Alien Gods(Sacred Secrecy)のTanaがさっそく返事をしてくれて、いやな顔ひとつせずに(顔は合わせてないからわからないけど)インタビューに答えてくれた。
本当にいいやつだ。
こういうコアな音楽に国境は無いんだということもあらためて感じた。良かった。
ああ、よかった。
これでインド北東部のメタルミュージシャンの記事が書ける。
やっぱり何人か連絡すれば一人くらいリアクションくれるものなんだな。
という微妙なタイミングの時に、Third Sovereignのメンバーから連絡が来た。
「やあ。インタビューに協力できたらうれしいよ」
お、おう。
ちょっと遅かったけど、せっかくだからいろんなバンドに話を聞かせてもらいたい。
さっそくインタビューの日時を設定。
指定の時間にメッセージを送ってみたけど、あれ?返事がない…。
どうしたんだろう…と思っていたら、その日の夜になって「ゴメン!出かけてた。今からやろう」との連絡が。
北東部とはいえさすがインド人、そういうこともあるよな…。
ずいぶん遅い時間だったので、「俺もう寝るからまたにしよう」って伝えて、すっかりそのままになっていたのだが、先日久しぶりに連絡があった。
「こないだはゴメン、で、インタビューだけどいつにする?」って。
というわけで、今週末、あらためてインタビューの機会を設けることになりました。
さて、前置きが長くなったけど、Third Sovereignの音楽、聴いてみてください。"Sarcofaga"
なんかどういうことになっているんだか分からないけど、ジャケがすごいな…。
おお!
Alien Godsのミドルテンポ主体のグルーヴィーなスタイルもかっこいいが、速くて激しくてタイト!さすがインドNo.1デスメタルバンド!
そして演奏が滅茶苦茶上手い!
この曲では、イントロにミゾラム州の昔話の語りが入ってる!
他の媒体のインタビューによると、音楽性にミゾ人としてのルーツも関わっているみたいで、これはなにやら面白そう!
トレモロリフが入るところがブラックメタル風でもあるし、ドラムの固く締まったサウンドはパンテラのヴィニー・ポールみたいな音像で、いろんなヘヴィーミュージックの要素が詰まっている。
というわけで、最近は久しぶりにこういう音楽にどっぷり浸かっているのです。
インタビューの模様は次回でお届けします。
お楽しみに!
根拠となったYouTubeはこちら。
突然ではありますが、この度、このランキングで見事1位に輝いたデスメタルバンド、やはり北東部のミゾラム州出身のThird Sovereignにインタビューをすることになったので、直前特集をお届けします。
ミゾラム州の場所はこちら。
以前インタビューしたTanaのいるAlien Godsのアルナーチャル・プラデーシュ州は北東部の最北部、ブータンや中国に接する地域だが、ミゾラム州は北東部の最南端、東をミャンマー、西をバングラデシュに接する山間の森林地帯だ。
「ミゾ」はこの地域に暮らす先住民「ラム」は土地を表し、つまり「ミゾ人の土地」という意味の州ってわけだ。
で、なんでそのインドいちのデスメタルバンドにインタビューすることになったかっていうと、ちょうど1ヶ月ほど前、アタクシは、この記事でも書いた通り、なぜインドの中でも辺境とされる北東部にこんなにたくさんのデスメタルバンドがいるのか、知りたくて知りたくてたまらなかったんである。
そこで、 いくつかの北東部出身のバンドにSNSを通じてメッセージを送った。
なぜ複数のバンドにメッセージを送ったか。
それは、以前とあるミュージシャン(まだこのブログには取り上げていない)に取材依頼をしたところ、まったく音沙汰がなく記事にできなかったことがあり、今回はそんなことがないようにと4つのバンドにメッセージを送ったんである。
そしたら、先日記事にした通り、Alien Gods(Sacred Secrecy)のTanaがさっそく返事をしてくれて、いやな顔ひとつせずに(顔は合わせてないからわからないけど)インタビューに答えてくれた。
本当にいいやつだ。
こういうコアな音楽に国境は無いんだということもあらためて感じた。良かった。
ああ、よかった。
これでインド北東部のメタルミュージシャンの記事が書ける。
やっぱり何人か連絡すれば一人くらいリアクションくれるものなんだな。
という微妙なタイミングの時に、Third Sovereignのメンバーから連絡が来た。
「やあ。インタビューに協力できたらうれしいよ」
お、おう。
ちょっと遅かったけど、せっかくだからいろんなバンドに話を聞かせてもらいたい。
さっそくインタビューの日時を設定。
指定の時間にメッセージを送ってみたけど、あれ?返事がない…。
どうしたんだろう…と思っていたら、その日の夜になって「ゴメン!出かけてた。今からやろう」との連絡が。
北東部とはいえさすがインド人、そういうこともあるよな…。
ずいぶん遅い時間だったので、「俺もう寝るからまたにしよう」って伝えて、すっかりそのままになっていたのだが、先日久しぶりに連絡があった。
「こないだはゴメン、で、インタビューだけどいつにする?」って。
というわけで、今週末、あらためてインタビューの機会を設けることになりました。
さて、前置きが長くなったけど、Third Sovereignの音楽、聴いてみてください。"Sarcofaga"
なんかどういうことになっているんだか分からないけど、ジャケがすごいな…。
おお!
Alien Godsのミドルテンポ主体のグルーヴィーなスタイルもかっこいいが、速くて激しくてタイト!さすがインドNo.1デスメタルバンド!
そして演奏が滅茶苦茶上手い!
この曲では、イントロにミゾラム州の昔話の語りが入ってる!
他の媒体のインタビューによると、音楽性にミゾ人としてのルーツも関わっているみたいで、これはなにやら面白そう!
トレモロリフが入るところがブラックメタル風でもあるし、ドラムの固く締まったサウンドはパンテラのヴィニー・ポールみたいな音像で、いろんなヘヴィーミュージックの要素が詰まっている。
というわけで、最近は久しぶりにこういう音楽にどっぷり浸かっているのです。
インタビューの模様は次回でお届けします。
お楽しみに!
goshimasayama18 at 00:04|Permalink│Comments(0)