Swarathma
2022年01月07日
Rolling Stone Indiaが選んだ2021年のベストシングル10曲!
あけましておめでとうございます。
気がつけば2021年も終わり、2022年が始まってしまいましたが、例によって、昨年末、Rolling Stone Indiaによるインドの音楽シーンの年間ベストシングル10曲が発表されたので、今年も紹介してみたいと思います。
前回は、わたくし軽刈田が選出した年間10選をお届けしているので、外国人目線の10選と、インドの都市の若者向けカルチャー誌の10曲を聴き比べてみるのも面白いはず。
いつもながら、Rolling Stone India誌のセレクトは洋楽的な洗練を志向した楽曲が多く、インドの都市の若者文化を牽引するメディアならではのセンスが楽しめます。
それではさっそくチェックしてみましょう!
1. Vasundhara Vee “Run”
ムンバイのR&B/ソウル/ジャズシンガー。
オリジナル曲はまだこの"Run"しかリリースしていないようだが、彼女の実力を示すには、
この一曲で十分だったようだ。
イントロのアカペラの堂々たる歌いっぷりを聴けば、高い評価の理由は簡単に理解できるだろう。
こういうタイプの本格的なジャズやソウルが歌えるシンガーはこれまでインドにいなかった。
決して派手な音楽性ではなく、トレンドを追うようなタイプでも無さそうだが、これから先インド国内や海外でどのような受け入れられ方をしてゆくのだろうか。
例えばエイミー・ワインハウスみたいな「危なっかしい魅力」があれば、大きな注目を集めることもできそうだが、どちらかというと彼女は堅実なタイプのようだ。
いずれにしても、今後非常に気になる存在である。
2. Sunflower Tape Machine “Sophomore Sweetheart”
Sunflower Tape MachineはチェンナイのアーティストAryaman Singhのソロプロジェクト。
基本的には電子音楽アーティストとして活動しつつ、この曲のようにバンドを交えた形態で楽曲をリリースすることもあるようだ。
サイケデリックでレトロな質感のエレクトロニック・ポップは、こちらもまた別の意味でインドらしからぬ音楽性。
ミュージックビデオを見る限り、彼の音楽性と同様に、無国籍的な都会生活をしている人物のようだ。(ビデオの最初の方に、寿司を食べる様子も出てくる)
それにしても、近年インドのインディーミュージックシーンで80年代的な映像をやたらと目にするようになった。
80年代のインドは経済解放政策を取り入れる前で、例えば家庭用ビデオカメラなどは極めて入手しづらい時代だった。
実際は、こうした懐古的な映像で表されるような80年代はインドにはほとんど存在しなかったと言っていい。
だからこそというべきか、持ち得なかった過去への架空のノスタルジーとしての80年代ブームが来ているのかもしれない。
日本でも90年代に、60年代や70年代の洋楽的なサウンドがもてはやされたりしたことがあったが、それと同じような現象とも言えるだろうか。
3. Hanumankind “Genghis”
ベンガルールのアンダーグラウンド・ラッパーが3位にランクイン。
これまで、日本のアニメを題材にするなど、かなりサブカル寄りなラップをリリースしていたHanumankindが化けた。
(過去のHanumankindについてはこちらから)
ソリッドなビートに、確実に言葉をビートに乗せてゆくラップ。
技巧にも音響にも走らずに、まるで詩人のようにリリックを紡いでゆくその姿勢は、インドの英語ラッパーではかなり珍しい部類に入る。
今年は同郷のSmokey the Ghostも充実した作品を数多くリリースしていた。
これまで、インドのヒップホップシーンはムンバイやデリーのヒンディー語(あるいはパンジャービー語)ラッパーが牽引してきたように思うが、ここに来てベンガルールの英語ラップシーンも燃え上がりつつあるようだ。
4. The Lightyears Explode – “Nostalgia 99”
4位はムンバイのロックバンドThe Lightyear Explode.
かつてはパンク的なアティテュードを感じさせる楽曲が多かったが、ここ最近は明確にレトロ調のダンスポップを意識した曲作りを行っている。
それが単に懐古趣味によるものなのか、ヴェイパーウェイヴのようなある種の批評性を持ったものなのかは今ひとつ分かりづらいが、いずれにしてもこうしたサウンドが今のインドで「クールなもの」として受け入れられているというのは確かなようだ。
この曲も1999年頃を懐かしむ内容の歌詞に反して、サウンドはかなり80's的。
5. Swarathma “Dus Minute Aur”
5位にようやく英語以外のインドの言語で歌う楽曲がランクイン。
Swarathmaはベンガルールのフォークロックバンド。
インドには、自国の伝統音楽と西洋のロックを融合した「フュージョン・ロック」バンドが数多くいるが、彼らがユニークなのは、いわゆる宮廷音楽的な古典音楽ではなく、より土着的な民謡をロックと融合しているところ。
70年代のイギリスのロックで例えると、クラシックの影響を受けたリッチー・ブラックモア(Deep Purple, Rainbow)や、オペラとロックの融合を試みたQueenではなく、イギリスやアイルランドの民謡を現代風に演奏したPentangleやFairport Conventionに近いと言えるかもしれない(と書いても一部のおっさんしか分からないが)。
他の古典音楽系のフュージョンロックバンド(例えばこの記事を参照)と比べると、その歌い回しは実に独特で、正直に言うと、日本人のロックリスナーの耳で聴いて、かっこいいと思えるかどうかは微妙なところだ。
この曲はオリジナル曲で、睡眠の大切さを訴える内容だという。
なんだかますます分からなくなってきたが、Rolling Stone Indiaからの評価は高く、2018年にも彼らのアルバム"Raah e Fakira"がベストアルバムの一枚に選ばれている。
なんにせよ、都会の若者向けの媒体で、欧米風の音楽だけでなく、伝統文化の要素を色濃く残した音楽がきちんと評価されているっていうのは喜ばしいことだと思う。
改めて聴くと、ポストロック的に始まってハードロック的に展開し、美しいハーモニーも入って来るアレンジがなかなかに秀逸。
ちなみに彼らがカバーする伝統音楽はインド各地におよび、ベンガルの大詩人タゴールの曲もカバーしている。
6. Jaden Maskie “Rhythm Of My Heart”
ゴアを拠点に活動するシンガーソングライターによるR&B風味の楽曲。
5位のSwarathmaとはうってかわって、いかにもRolling Stone Indiaが選びそうな曲だ。
キャッチーなメロディーとダンサブルなアレンジはいかにも現代のグローバルなポップミュージックで、ちょっとK-Popっぽくもあるけれどそう聞こえないのは、憂いを帯びた彼の声のせいだろう。
それにしても、こう言ってはなんだが、冴えない理系の大学生みたいな見た目の彼がこんな気の利いたポップスを歌うなんて、インドも変わったものだとつくづく思わされる。
7. Karshni “daddy hates second place”
Karshniはプネーのシンガーソングライター。
ピアノの伴奏で美しく歌う内容は、子どもに期待しすぎるあまり、一位以外は認めなくなってしまっている父親についてとのこと。
今のインドに、英語で歌う弾き語り系のシンガーソングライターは本当に多いが、リスナー層が厚いジャンルではないので、一部を除いてそこまで多くのリスナーを獲得しているとは言い難い状況だ。
だが、彼ら/彼女たちの多くは、商業的な成功よりもアーティストとしての表現を重視しているようで、彼女のように優れた才能も少なからず存在するので見逃せない。
8. Adrian D’souza, Neuman Pinto “Never Let it Go”
ムンバイのドラマーとシンガーソングライターのコラボレーションによる、さわやかなシティポップ風の楽曲。
名前を見る限り、どちらもクリスチャンのようだ。
D'souzaもPintoもインドのクリスチャンに多い姓で、音楽界では、やはりムンバイを拠点にセンスの良い楽曲を作っているNikhil D'souzaというシンガーもいる。
インド洋を望むマリン・ドライブあたりを運転しながら聴いたら最高の気分が味わえるだろう。
9. Albatross "Neptune Murder"
ムンバイのAlbatrossは、かなりドラマティックな構成の楽曲を特徴とするメタルバンド。
2008年結成というから、インドではなかなか古株のバンドということになる。
プログレッシブ・メタル的な部分もあるが、過剰なテクニカルさはなく、芝居がかったクセの強いヴォーカルの印象が強い。
全体的な雰囲気は、欧米のバンドで言うとデンマーク出身のKing Diamondに似ている。
2021年にこういうサウンドを奏でるバンドも、2021年にこの曲をベスト9に選出するRolling Stone Indiaも、個人的には決して嫌いではない。
10. Krishna.K, AKR "Butterflies"
チェンナイのシンガーソングライターKrishna.KとプロデューサーのAKRのコラボレーション。
アコースティックで軽やかなサウンドに絡むサイケデリックなシンセが印象的なドリームポップ的な曲。
Rolling Stone Indiaによると、「今なお求められている、そよ風のように心地よいオールドスクールなポップのアレンジによる現実逃避」とのこと。
“A thousand butterflies could fly us away on a chariot of gold through the mystic galaxy.”という歌い出しのフレーズがインド的(神話的)に聞こえるような気がしなくもない。
というわけで、今回はいかにもRolling Stone Indiaっぽい英語ポップスを中心に、インドのインディペンデント・シーンに特徴的な80年代テイストを感じさせる楽曲が目立つ結果となった。
Swarathma以外は、言われなければインドのアーティストだと分からない楽曲ばかりで、いわゆる洋楽ポップス的なセンスの良さが年々進化していることが一目瞭然だ。
Albatross以外は、オシャレな服屋とかカフェでかかっていても違和感なく聴けるレベルに達していると思うが、それは同時にグローバルな市場で圧倒的な差別化ができる個性の欠如ということでもあり、その殻をどこまで破れるかが、今後のインドのアーティストの課題となってくるのかもしれない。
いずれにしても、変わり続けるインドの都市部のカルチャーがリアルに伝わってくる面白い選曲であることは確かで、こうしたインドのステレオタイプから大きく外れた音楽シーンはますます拡大してゆくことになるだろう。
一昨年2020年のRolling Stone Indiaが選んだベストシングル10選はこちら
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goshimasayama18 at 21:35|Permalink│Comments(0)
2020年06月07日
6/7(日)『タゴール・ソングス』オンライントークご報告!
というわけで、先ほどポレポレ東中野さんで『タゴール・ソングス』佐々木監督とのトークイベントを行ってきました。
このご時世なので私、軽刈田はオンラインで画面上に登場してお話させてもらいました。
(まさか自分の人生で、映画館のスクリーンに映されることがあるとは思わなかった…)
トークのなかで紹介した曲の動画をご案内します。
まずは、タゴール・ソングのさまざまなカバーバージョンから。
最初に紹介するのは、ムンバイの4人組ポップロックバンド、Sanamが演奏する"Tumi Robe Nirobe".
この曲は、『タゴール・ソングス』の中では『あなたが居る』という翻訳で歌われている曲ですが、インドの極甘イケメン風バンドが演奏するとこんなふうになります。
SanamはYouTubeにアップした動画がきっかけで人気を得たという現代的なバンドですが、オリジナル曲だけでなく、懐メロのカバーにも積極的に取り組んでいます。
インド人の懐メロといえば、それは当然、往年の名作映画を彩った劇中歌。
そうした名曲を現代風にアップデートした彼らのカバーバージョンは、YouTubeで大人気となり、中には1億回を超える再生回数のものもあります。
そんな彼らは、映画音楽だけでなく、こうしてタゴール・ソングもカバーしているのです。
このご時世なので私、軽刈田はオンラインで画面上に登場してお話させてもらいました。
(まさか自分の人生で、映画館のスクリーンに映されることがあるとは思わなかった…)
トークのなかで紹介した曲の動画をご案内します。
まずは、タゴール・ソングのさまざまなカバーバージョンから。
最初に紹介するのは、ムンバイの4人組ポップロックバンド、Sanamが演奏する"Tumi Robe Nirobe".
この曲は、『タゴール・ソングス』の中では『あなたが居る』という翻訳で歌われている曲ですが、インドの極甘イケメン風バンドが演奏するとこんなふうになります。
SanamはYouTubeにアップした動画がきっかけで人気を得たという現代的なバンドですが、オリジナル曲だけでなく、懐メロのカバーにも積極的に取り組んでいます。
インド人の懐メロといえば、それは当然、往年の名作映画を彩った劇中歌。
そうした名曲を現代風にアップデートした彼らのカバーバージョンは、YouTubeで大人気となり、中には1億回を超える再生回数のものもあります。
そんな彼らは、映画音楽だけでなく、こうしてタゴール・ソングもカバーしているのです。
このことからも、大文学者タゴールが作った曲が、インドのエンターテインメントの王道である映画の名曲と同じように親しまれているということがよく分かります。
この"Tumi Robe Nirobe"は4,000万回を超える再生回数を叩き出して、まるで現代のヒットソングのよう。
この"Tumi Robe Nirobe"は4,000万回を超える再生回数を叩き出して、まるで現代のヒットソングのよう。
彼らは他にも"Boro Asha Kore Easechi"や"Noy Noy Modhur Khela"といったタゴール・ソングをカバーしています。
興味のある方はYouTubeで検索してみてください。
続いて紹介したのは、バンガロールのフュージョンロックバンドSwarathmaが、ベンガルの放浪詩人「バウル」と共演した"Ekla Cholo Re".
「バウル」とは、ベンガル地方(インドの西ベンガル州およびバングラデシュ)に何百年も前から存在している行者とも詩人とも言える人たちのことです。
ヒンドゥーやイスラームの信仰を超えた存在である彼らは、タゴールにも大きな影響を与えていると言われていますが、ここでは逆にそのバウルがタゴール作の歌"Ekla Chalo Re"(映画の中でも何度も登場している『ひとりで進め』)を歌っています。
歌っているのはLakhan Das Baul.
映画にも同名のバウルが登場しますが、このLakhanは映画に出てきたのとは別の人物です。
ここまで紹介した2組は、ベンガルではなく、それぞれインド西部のムンバイと南部のバンガロールのバンド(Lakhan Das Baulはベンガルのバウルですが)、つまり、ベンガル語を母語としない人たちです。
映画では、タゴールがベンガルの人々にいかに身近に愛されているかが綴られていましたが、ベンガル以外の人々にとっても、タゴールは深く敬愛されているのでしょう。
興味のある方はYouTubeで検索してみてください。
続いて紹介したのは、バンガロールのフュージョンロックバンドSwarathmaが、ベンガルの放浪詩人「バウル」と共演した"Ekla Cholo Re".
「バウル」とは、ベンガル地方(インドの西ベンガル州およびバングラデシュ)に何百年も前から存在している行者とも詩人とも言える人たちのことです。
ヒンドゥーやイスラームの信仰を超えた存在である彼らは、タゴールにも大きな影響を与えていると言われていますが、ここでは逆にそのバウルがタゴール作の歌"Ekla Chalo Re"(映画の中でも何度も登場している『ひとりで進め』)を歌っています。
歌っているのはLakhan Das Baul.
映画にも同名のバウルが登場しますが、このLakhanは映画に出てきたのとは別の人物です。
ここまで紹介した2組は、ベンガルではなく、それぞれインド西部のムンバイと南部のバンガロールのバンド(Lakhan Das Baulはベンガルのバウルですが)、つまり、ベンガル語を母語としない人たちです。
映画では、タゴールがベンガルの人々にいかに身近に愛されているかが綴られていましたが、ベンガル以外の人々にとっても、タゴールは深く敬愛されているのでしょう。
アカペラ・グループのPenn Masalaが、インドの各言語を代表する名曲をメドレーにした動画があるのですが、その動画でも、ほとんどの言語の曲が映画音楽だったのに対して、ベンガル語からはタゴール・ソング(この"Ekla Chalo Re")が選ばれていました。
(グジャラーティー、ヒンディーに続いてベンガル語で歌われる2曲めが"Ekla Chalo Re".一瞬ですが)
同じ"Ekla Cholo Re"をコルカタのロックバンドOporinotoが壮大なアレンジでカバーしているのがこちら。
同じ『ひとりで歩け』でもアレンジ次第でいろんな印象になるということが分かります。
タゴール・ソングは、このように様々な現代的なアレンジがされている一方で、正統派の歌い方というものがはっきりと確立されている音楽でもあります。
映画の中で、オミテーシュさんとプリタさんの師弟が歌っているのが正統派のタゴール・ソングです。
ベンガルには、新しいアレンジが施されたタゴール・ソングは邪道と考え、正統派の歌のみを愛してやまないリスナーもたくさんいます。
このへんは、歌舞伎や落語のような日本の古典芸能にも近い感覚かもしれません。
ところで、これを言ってはおしまいなんですが、ベンガル語が全くわからない我々にとって、ここまで紹介してきたカバーバージョンは、あまり魅力的に響かなかったのではないでしょうか。
それはなぜかと言うと、「歌詞がわからないから」ということに尽きると思います。
そもそもロックのアレンジと、4拍子ではなく、とらえどころのないタゴール・ソングのメロディーの相性があんまりよくないということもあるのですが、その最大の原因は、タゴール・ソングのなによりの魅力である歌詞が伝わってこない事でしょう。
何が歌われているか分からないと、タゴール・ソングの良さは、ほとんど伝わらないのではないでしょうか。
仮に、タゴール・ソングのCDを買ってきて、歌詞の対訳を読みながら聴いたとしても、歌われているのがどの部分の歌詞なのかが分からないと、やっぱり良さはあまり伝わらないはずです。
その点、歌にあわせて字幕を出すことのできる「映画」という表現方法は、我々のようにベンガル語が分からない人々にタゴール・ソングを紹介するのにはぴったりです。
歌を聴きながら歌詞を読むことで、たとえば「ひとりで歩け」という歌詞が、メロディーによって、寂しげに聞こえたり、奮い立たせるように聞こえたりすることが分かります。
そういう意味でも、映画という形でタゴール・ソングを紹介してくれた佐々木監督の発想は素晴らしかったと言えるでしょう。
これはタゴール・ソングではありませんが、"Ekla Cholo Re"というタイトルを借用したラップの曲。
映画の中にもバングラデシュのラッパーが出てきましたが、南アジアではここ最近ヒップホップの人気が非常に高まっており、どこの街にもラッパーがいて、その街のリアルな様子をラップしています。
これはUndergrount AuthorityというコルカタのラップメタルバンドのヴォーカリストであるEPRというラッパーのソロ作品で、厳しい生活を余儀なくされ、死を選ぶしか道のない農村の人々の辛さを訴えた曲です。
こちらもタゴールとは直接関係ありませんが、Purna Das Baulというバウルがボブ・ディランをカバーした楽曲で、"Mr. Tambourine Man".
このPurna Das Baulはディランと親交があり、彼の音楽にも大きな影響を与えた人物です。
バウルはタゴールとボブ・ディランという二人のノーベル文学賞受賞者に影響を与えているということになるのです。
と、まあこんな感じでポップミュージックの視点から、タゴール・ソングとベンガルの音楽をほんの少し紹介させてもらいました。
本日は、30分という限られた時間のなかで、トークのみでのご案内でしたが、実際にみなさんを前に佐々木監督とトークしながらミュージックビデオをごらんいただくイベントの開催が決まりました!
6月20日(土)ポレポレ東中野1階の「space & cafe ポレポレ坐」にて、夕方〜夜にかけて開催予定です。
正式に決まり次第、改めてご案内します!
というわけで、本日はお越しいただいた方も、お読みいただいた方も、ありがとうございましたー!
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(グジャラーティー、ヒンディーに続いてベンガル語で歌われる2曲めが"Ekla Chalo Re".一瞬ですが)
同じ"Ekla Cholo Re"をコルカタのロックバンドOporinotoが壮大なアレンジでカバーしているのがこちら。
同じ『ひとりで歩け』でもアレンジ次第でいろんな印象になるということが分かります。
タゴール・ソングは、このように様々な現代的なアレンジがされている一方で、正統派の歌い方というものがはっきりと確立されている音楽でもあります。
映画の中で、オミテーシュさんとプリタさんの師弟が歌っているのが正統派のタゴール・ソングです。
ベンガルには、新しいアレンジが施されたタゴール・ソングは邪道と考え、正統派の歌のみを愛してやまないリスナーもたくさんいます。
このへんは、歌舞伎や落語のような日本の古典芸能にも近い感覚かもしれません。
ところで、これを言ってはおしまいなんですが、ベンガル語が全くわからない我々にとって、ここまで紹介してきたカバーバージョンは、あまり魅力的に響かなかったのではないでしょうか。
それはなぜかと言うと、「歌詞がわからないから」ということに尽きると思います。
そもそもロックのアレンジと、4拍子ではなく、とらえどころのないタゴール・ソングのメロディーの相性があんまりよくないということもあるのですが、その最大の原因は、タゴール・ソングのなによりの魅力である歌詞が伝わってこない事でしょう。
何が歌われているか分からないと、タゴール・ソングの良さは、ほとんど伝わらないのではないでしょうか。
仮に、タゴール・ソングのCDを買ってきて、歌詞の対訳を読みながら聴いたとしても、歌われているのがどの部分の歌詞なのかが分からないと、やっぱり良さはあまり伝わらないはずです。
その点、歌にあわせて字幕を出すことのできる「映画」という表現方法は、我々のようにベンガル語が分からない人々にタゴール・ソングを紹介するのにはぴったりです。
歌を聴きながら歌詞を読むことで、たとえば「ひとりで歩け」という歌詞が、メロディーによって、寂しげに聞こえたり、奮い立たせるように聞こえたりすることが分かります。
そういう意味でも、映画という形でタゴール・ソングを紹介してくれた佐々木監督の発想は素晴らしかったと言えるでしょう。
これはタゴール・ソングではありませんが、"Ekla Cholo Re"というタイトルを借用したラップの曲。
映画の中にもバングラデシュのラッパーが出てきましたが、南アジアではここ最近ヒップホップの人気が非常に高まっており、どこの街にもラッパーがいて、その街のリアルな様子をラップしています。
これはUndergrount AuthorityというコルカタのラップメタルバンドのヴォーカリストであるEPRというラッパーのソロ作品で、厳しい生活を余儀なくされ、死を選ぶしか道のない農村の人々の辛さを訴えた曲です。
こちらもタゴールとは直接関係ありませんが、Purna Das Baulというバウルがボブ・ディランをカバーした楽曲で、"Mr. Tambourine Man".
このPurna Das Baulはディランと親交があり、彼の音楽にも大きな影響を与えた人物です。
バウルはタゴールとボブ・ディランという二人のノーベル文学賞受賞者に影響を与えているということになるのです。
と、まあこんな感じでポップミュージックの視点から、タゴール・ソングとベンガルの音楽をほんの少し紹介させてもらいました。
本日は、30分という限られた時間のなかで、トークのみでのご案内でしたが、実際にみなさんを前に佐々木監督とトークしながらミュージックビデオをごらんいただくイベントの開催が決まりました!
6月20日(土)ポレポレ東中野1階の「space & cafe ポレポレ坐」にて、夕方〜夜にかけて開催予定です。
正式に決まり次第、改めてご案内します!
というわけで、本日はお越しいただいた方も、お読みいただいた方も、ありがとうございましたー!
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goshimasayama18 at 23:25|Permalink│Comments(0)
2020年04月10日
バウルとインドのポピュラーミュージック
前回の記事では、ベンガルの漂泊の歌い人であるバウルがボブ・ディランに影響を与えたと言われる説の真相を紹介した。
かつては「歌う賎民」のように扱われていたバウルは、タゴールによる再評価やディランへの影響、そして2008年にUNESCOの無形文化遺産に登録されたことにより、ベンガルの伝統文化の担い手として脚光を浴びるようになった。
さて、これまで何度もこのブログで紹介してきた通り、インドは、欧米からやってきたポピュラー・ミュージックとローカルの伝統音楽との融合が盛んに行われている国だ。
ロックに古典声楽の歌い回しを取り入れたり、ヒップホップのトラックに伝統的なリズムを引用したり、プログレッシブ・メタルに古典音楽の変拍子を導入したりしているアーティストが数多く存在しているのだ。
バウルの音楽は、本来は商業的で大衆的なポップミュージックとは対極にあるものだが、前述のようなバウルの再評価にともなって、バウル音楽もまたロックやヒップホップとの融合が試みられている。
考えてみれば、既存の価値観にとらわれず、アウトサイダーとして音楽に生きるというバウルの思想は、もともとロックのようなジャンルとの親和性が高いとも言える。
自国の文化に誇りを持つインドやバングラデシュのミュージシャンが、欧米のロックスターに憧れるのと同じようにバウルに憧れを抱くとしても、なんら不自然なことではないのだ。
まずは、バンガロールを拠点に活動するフュージョン・ロックバンドSwarathmaとLakhan Das Baulとの共演を紹介する。
(一部訂正しました。バウルにお詳しい方からコメント欄にてご指摘いただき、このLakhan Das Baulは映画『タゴール・ソングス』に出演していた人物とは別人とのこと。Bong Khepaさん、ありがとうございました!)
曲は、有名なタゴール・ソングの"Ekla Chalo Re"(ひとりで進め)。
前回の記事で、タゴールがバウルからの影響を受けているということに触れたが、今では逆にバウルがタゴールの作った歌を歌うことも珍しくないようだ。
演奏しているSwarathmaがベンガルではなく南部のバンガロール出身のフュージョン・バンド。
インド音楽で「フュージョン」といった場合、それは伝統音楽と西洋の音楽との融合を意味している。
ヒンドゥスターニーやカルナーティックといったかつての宮廷音楽や寺院音楽を取り入れるフュージョン・バンドが多い中、このSwarathmaはインド各地のフォークソング(土着の民謡)とブルースやレゲエとの融合に取り組んでいる異色のバンドである。
その高い音楽性から、Rolling Stone India等の音楽メディアでも頻繁に取り上げられている注目のグループだ。
続いては、1998年に結成されたコルカタのハードロックバンドFossilsが、ディランに影響を与えたバウルとして有名なPurna Das Baulと共演した"Je Jon Premer Bhaab Jane Na"を紹介する。
Purna Das Baulの歌声は2:50あたりから。
このPurna Das Baul, アルバート・グロスマンに見出されたことをきっかけに、ディランだけではなく、ボブ・マーリー、ミック・ジャガー、ティナ・ターナー、マヘリア・ジャクソン、ジョーン・バエズらとも共演したことがあるようで「最も国際的なバウル・スター」と呼んでもさしつかえないだろう。
(参考サイト:https://www.getbengal.com/details/purna-das-baul-the-man-who-took-bengals-baul-songs-to-the-global-stage)
こちらもコルカタ出身のBolepur Bluezは、「本物」のバウルをヴォーカリストに迎えた「バウル・ロック・フュージョン・バンド」で、オーディション番組'India's Got Talent'でも高い評価を得たという。
初代ヴォーカリストはKartick Das Baul、のちに2代目ヴォーカルとしてRaju Das Baulという人物が加入したようで、「ロックバンドで歌うバウル」が何人もいるということに驚かされる。
この"Hridh Majare Rakhbo"は、ここまで紹介したなかではいちばんヘヴィでロック色の強い仕上がりになっている。
バウル音楽と西洋音楽との融合は、ロックに限らない。
コルカタ出身のラッパーFeyagoは自らのルーツをたどるため、シャンティニケタン(タゴールが大学を作った街として知られる)を訪ね、バウルとのコラボレーションを行なっている。
この取り組みはインドのウェブメディア、'101 India'が制作した"Hip Hop Homeland"というプログラムのウエストベンガル編として行われた企画で、かなり面白いコラボレーションになっている。
「かつてこの街で、チャンドラ・ボースは詩(ポエトリー)を抵抗の手段に使ったんだ。音楽で言えば、ヒップホップさ」とFeyagoはコルカタの歴史とヒップホップの共通点を指摘する。
「苦しみや悩みからの慰めを音楽の中に見出す」というテーマを古いバウル・ソングとヒップホップに見出したFeyagoは、シャンティニケタンのメラ(祭礼)で出会ったTarak Das Baulに、楽曲のコンセプトを語りかける。
「俺たち若者は、自分たちの母語も、バウル音楽も忘れてしまっている。だから新しい世代のビートと、伝統的なバウルのフォークミュージックを融合してみたいんだ」
そうして完成したのが、この'Baul Folk Hip Hop'だ。
ラップのリリックにボブ・ディランが出てくるところも実にベンガル的。
Tarak Das Baulも新しいリズムのうえで、のびのびと歌を披露している。
ちなみに、バウルには'Das Baul'(ダシュ・バウル)という名を持つものが多いが、Dasは「(神の)しもべ」を意味する言葉で、この名を持つバウルが必ずしも親戚関係にあるというわけではない。
カーストとも既存の宗教とも距離を置く彼らは、バウルになるとともにもともと持っていた姓(インドの姓名は、たいていが宗教やカーストと結びついている)を捨て、新しい名を名乗るのだ。
Das Baulはバウルたちが好んでつける名前のひとつである。
今回紹介したような新しいタイプのバウル・ソングを「伝統から外れたもの」として退けることもできるが、変わりゆく時代の中で、バウルの持つ魅力や受け入れられ方が多様化しているからこそ生まれた音楽として、ポジティブに捉えたほうが面白い。
こうした新しい取り組みがあってこそ、本来のバウルの伝統もその価値をいっそう増すはずだ。
それにしても、何百年も前からこのさすらいの歌い人たちを受け入れ、今ではその生き方にロックミュージシャンやラッパーまでも憧れているという、このベンガル文化の懐の広さはいったい何なのだろう。
コルカタやバングラデシュは、ながく貧困や難民のイメージを持たれてきた土地でもある。
かつては「歌う賎民」のように扱われていたバウルは、タゴールによる再評価やディランへの影響、そして2008年にUNESCOの無形文化遺産に登録されたことにより、ベンガルの伝統文化の担い手として脚光を浴びるようになった。
それに加えて、物質的な社会に背を向けて生きるバウルは、南アジアでも資本主義的な価値観が加速してゆくにつれて、そうした風潮に違和感を感じる人々から、ある種の憧れの対象として見られるようになっていった。
一方で、バウルたちを取り巻く環境も、大きく変わっている。
従来、バウルは「マドゥコリ」と呼ばれる村の家々を回る托鉢によって生活していたが、物価の高騰や人々の価値観の変化によって、こうした伝統的な方法で暮らしてゆくことが困難になってきたのだ。
このような様々な背景から、バウルたちの生き方もまた多様化してゆくことになる。
本来は俗世を捨てて修行と歌と托鉢に生きるべきバウルだが、現在では、出家せずに、ウィークデーは働き、週末のみ師匠のもとに通う「在家」のバウルも増えつつあるという。
なかには、かつてのようなマドゥコリではなく、音楽愛好家の富裕層や観光客を相手に演奏したり、コンサートで歌ったりして収入を得るバウルも現れている。
また、修行生活を送ることなくバウル・ソングを歌う、非バウルのシンガーも出てきているようだ。
そうした者たちについて、「本物のバウルではない」とか「バウルではなくて単なる歌手だ」という意見もあるようだが、このようなバウルの「ポピュラー化」もまた、変わりゆく時代のなかで、今なおバウルという存在が魅力的でありつづけている証拠と見ることができるだろう。
一方で、バウルたちを取り巻く環境も、大きく変わっている。
従来、バウルは「マドゥコリ」と呼ばれる村の家々を回る托鉢によって生活していたが、物価の高騰や人々の価値観の変化によって、こうした伝統的な方法で暮らしてゆくことが困難になってきたのだ。
このような様々な背景から、バウルたちの生き方もまた多様化してゆくことになる。
本来は俗世を捨てて修行と歌と托鉢に生きるべきバウルだが、現在では、出家せずに、ウィークデーは働き、週末のみ師匠のもとに通う「在家」のバウルも増えつつあるという。
なかには、かつてのようなマドゥコリではなく、音楽愛好家の富裕層や観光客を相手に演奏したり、コンサートで歌ったりして収入を得るバウルも現れている。
また、修行生活を送ることなくバウル・ソングを歌う、非バウルのシンガーも出てきているようだ。
そうした者たちについて、「本物のバウルではない」とか「バウルではなくて単なる歌手だ」という意見もあるようだが、このようなバウルの「ポピュラー化」もまた、変わりゆく時代のなかで、今なおバウルという存在が魅力的でありつづけている証拠と見ることができるだろう。
さて、これまで何度もこのブログで紹介してきた通り、インドは、欧米からやってきたポピュラー・ミュージックとローカルの伝統音楽との融合が盛んに行われている国だ。
ロックに古典声楽の歌い回しを取り入れたり、ヒップホップのトラックに伝統的なリズムを引用したり、プログレッシブ・メタルに古典音楽の変拍子を導入したりしているアーティストが数多く存在しているのだ。
バウルの音楽は、本来は商業的で大衆的なポップミュージックとは対極にあるものだが、前述のようなバウルの再評価にともなって、バウル音楽もまたロックやヒップホップとの融合が試みられている。
考えてみれば、既存の価値観にとらわれず、アウトサイダーとして音楽に生きるというバウルの思想は、もともとロックのようなジャンルとの親和性が高いとも言える。
自国の文化に誇りを持つインドやバングラデシュのミュージシャンが、欧米のロックスターに憧れるのと同じようにバウルに憧れを抱くとしても、なんら不自然なことではないのだ。
まずは、バンガロールを拠点に活動するフュージョン・ロックバンドSwarathmaとLakhan Das Baulとの共演を紹介する。
(一部訂正しました。バウルにお詳しい方からコメント欄にてご指摘いただき、このLakhan Das Baulは映画『タゴール・ソングス』に出演していた人物とは別人とのこと。Bong Khepaさん、ありがとうございました!)
曲は、有名なタゴール・ソングの"Ekla Chalo Re"(ひとりで進め)。
前回の記事で、タゴールがバウルからの影響を受けているということに触れたが、今では逆にバウルがタゴールの作った歌を歌うことも珍しくないようだ。
演奏しているSwarathmaがベンガルではなく南部のバンガロール出身のフュージョン・バンド。
インド音楽で「フュージョン」といった場合、それは伝統音楽と西洋の音楽との融合を意味している。
ヒンドゥスターニーやカルナーティックといったかつての宮廷音楽や寺院音楽を取り入れるフュージョン・バンドが多い中、このSwarathmaはインド各地のフォークソング(土着の民謡)とブルースやレゲエとの融合に取り組んでいる異色のバンドである。
その高い音楽性から、Rolling Stone India等の音楽メディアでも頻繁に取り上げられている注目のグループだ。
続いては、1998年に結成されたコルカタのハードロックバンドFossilsが、ディランに影響を与えたバウルとして有名なPurna Das Baulと共演した"Je Jon Premer Bhaab Jane Na"を紹介する。
Purna Das Baulの歌声は2:50あたりから。
このPurna Das Baul, アルバート・グロスマンに見出されたことをきっかけに、ディランだけではなく、ボブ・マーリー、ミック・ジャガー、ティナ・ターナー、マヘリア・ジャクソン、ジョーン・バエズらとも共演したことがあるようで「最も国際的なバウル・スター」と呼んでもさしつかえないだろう。
(参考サイト:https://www.getbengal.com/details/purna-das-baul-the-man-who-took-bengals-baul-songs-to-the-global-stage)
こちらもコルカタ出身のBolepur Bluezは、「本物」のバウルをヴォーカリストに迎えた「バウル・ロック・フュージョン・バンド」で、オーディション番組'India's Got Talent'でも高い評価を得たという。
初代ヴォーカリストはKartick Das Baul、のちに2代目ヴォーカルとしてRaju Das Baulという人物が加入したようで、「ロックバンドで歌うバウル」が何人もいるということに驚かされる。
この"Hridh Majare Rakhbo"は、ここまで紹介したなかではいちばんヘヴィでロック色の強い仕上がりになっている。
バウル音楽と西洋音楽との融合は、ロックに限らない。
コルカタ出身のラッパーFeyagoは自らのルーツをたどるため、シャンティニケタン(タゴールが大学を作った街として知られる)を訪ね、バウルとのコラボレーションを行なっている。
この取り組みはインドのウェブメディア、'101 India'が制作した"Hip Hop Homeland"というプログラムのウエストベンガル編として行われた企画で、かなり面白いコラボレーションになっている。
「かつてこの街で、チャンドラ・ボースは詩(ポエトリー)を抵抗の手段に使ったんだ。音楽で言えば、ヒップホップさ」とFeyagoはコルカタの歴史とヒップホップの共通点を指摘する。
「苦しみや悩みからの慰めを音楽の中に見出す」というテーマを古いバウル・ソングとヒップホップに見出したFeyagoは、シャンティニケタンのメラ(祭礼)で出会ったTarak Das Baulに、楽曲のコンセプトを語りかける。
「俺たち若者は、自分たちの母語も、バウル音楽も忘れてしまっている。だから新しい世代のビートと、伝統的なバウルのフォークミュージックを融合してみたいんだ」
そうして完成したのが、この'Baul Folk Hip Hop'だ。
ラップのリリックにボブ・ディランが出てくるところも実にベンガル的。
Tarak Das Baulも新しいリズムのうえで、のびのびと歌を披露している。
ちなみに、バウルには'Das Baul'(ダシュ・バウル)という名を持つものが多いが、Dasは「(神の)しもべ」を意味する言葉で、この名を持つバウルが必ずしも親戚関係にあるというわけではない。
カーストとも既存の宗教とも距離を置く彼らは、バウルになるとともにもともと持っていた姓(インドの姓名は、たいていが宗教やカーストと結びついている)を捨て、新しい名を名乗るのだ。
Das Baulはバウルたちが好んでつける名前のひとつである。
今回紹介したような新しいタイプのバウル・ソングを「伝統から外れたもの」として退けることもできるが、変わりゆく時代の中で、バウルの持つ魅力や受け入れられ方が多様化しているからこそ生まれた音楽として、ポジティブに捉えたほうが面白い。
こうした新しい取り組みがあってこそ、本来のバウルの伝統もその価値をいっそう増すはずだ。
それにしても、何百年も前からこのさすらいの歌い人たちを受け入れ、今ではその生き方にロックミュージシャンやラッパーまでも憧れているという、このベンガル文化の懐の広さはいったい何なのだろう。
コルカタやバングラデシュは、ながく貧困や難民のイメージを持たれてきた土地でもある。
だが、彼らが持つ伝統やことばの豊饒さを考えるとき、彼らと我々のいったいどちらが本当に豊かと言えるのか、だんだん分からなくなってくる。
しかも、ベンガルの場合、宮廷や富裕層ではなく、宗教もカーストも超越した放浪のアウトサイダーたちが、豊かな歌とことばの文化を受け継いでいるというところに、底知れぬ奥深さを感じてしまう。
ここのところベンガル料理が注目され始めているようだけど(とても美味しい!)、ベンガルの豊かさは料理のみにあらず。
バウルたちやタゴールが培ってきたベンガルの歌とことばの文化から、いまの我々が得られるものは、あまりにも大きいように感じている。
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凡平自選の2019年のおすすめ記事はこちらから!
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しかも、ベンガルの場合、宮廷や富裕層ではなく、宗教もカーストも超越した放浪のアウトサイダーたちが、豊かな歌とことばの文化を受け継いでいるというところに、底知れぬ奥深さを感じてしまう。
ここのところベンガル料理が注目され始めているようだけど(とても美味しい!)、ベンガルの豊かさは料理のみにあらず。
バウルたちやタゴールが培ってきたベンガルの歌とことばの文化から、いまの我々が得られるものは、あまりにも大きいように感じている。
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goshimasayama18 at 00:58|Permalink│Comments(3)
2019年01月16日
Rolling Stone Indiaが選ぶ2018年のベストアルバムTop10!
前回、Rolling Stone India誌が選ぶ2018年のベストシングルを紹介したけど、今回は同誌が選ぶベストアルバムを紹介!
はっきりいって今回のほうがシングルよりもずっと面白くてかっこいい!
まだあまり知られていないグッドミュージックを探している人は是非ともチェックすべき10枚をご案内します。
こちらも順位はつけられていなかったので、ひとまず同誌サイトで紹介されている順に書いていきます。
アーティスト名とアルバム名のところにアルバム全体が聴けるサイトへのリンクになっていて、収録曲のYoutubeも貼っておいたので聴きながらお楽しみください。
それでは!
Rainburn, "Insignify"
イントロが結構長くて、曲が始まるのは1:53から。
選者の趣味なのだろうが、いきなりコテコテのメタルが出てくるところにこのセレクトの面白さを感じる。
今作はバンガロールを拠点に活動するプログレッシブメタルバンドのデビューアルバム。
インドではDream Theaterの影響下にあるようなこの手の音楽はかなり人気があり、多くのバンドが存在している(詳細後述)が、彼らはその中でもかなりレベルの高いバンドと言えるだろう。
2曲めの"Merchant of Dreams"(1:53〜)の途中にブルース風の進行が出てきたり、6曲めにアカペラ曲の"Purpose"(24:35〜)が収録されているあたりが個性だろうか。
The Local Train, "Vaaqif"
The Local Trainは2008年にインド北部チャンディーガルで結成され、現在はデリーを拠点に活動するヒンディーロックバンド。
はっきりいって今回のほうがシングルよりもずっと面白くてかっこいい!
まだあまり知られていないグッドミュージックを探している人は是非ともチェックすべき10枚をご案内します。
こちらも順位はつけられていなかったので、ひとまず同誌サイトで紹介されている順に書いていきます。
アーティスト名とアルバム名のところにアルバム全体が聴けるサイトへのリンクになっていて、収録曲のYoutubeも貼っておいたので聴きながらお楽しみください。
それでは!
Rainburn, "Insignify"
イントロが結構長くて、曲が始まるのは1:53から。
選者の趣味なのだろうが、いきなりコテコテのメタルが出てくるところにこのセレクトの面白さを感じる。
今作はバンガロールを拠点に活動するプログレッシブメタルバンドのデビューアルバム。
インドではDream Theaterの影響下にあるようなこの手の音楽はかなり人気があり、多くのバンドが存在している(詳細後述)が、彼らはその中でもかなりレベルの高いバンドと言えるだろう。
2曲めの"Merchant of Dreams"(1:53〜)の途中にブルース風の進行が出てきたり、6曲めにアカペラ曲の"Purpose"(24:35〜)が収録されているあたりが個性だろうか。
The Local Train, "Vaaqif"
The Local Trainは2008年にインド北部チャンディーガルで結成され、現在はデリーを拠点に活動するヒンディーロックバンド。
ヒンディーロックとは何ぞやというと、文字どおりヒンディー語で歌われるロックのことだが、このバンドの場合、ヒンディーで歌ってもいかにもインド的な歌い回しは出てこず、完全に洋楽ロック的なメロディーとアレンジになっているのが良さでもあるし、少しもったいなく感じる部分でもある。
(ヒンディー語以外のマーケットにはなかなか届かないだろうから)
Dhruv Visvanath, "The Lost Cause"
ニューデリーで活動するシンガーソングライターで、アメリカのAcoustic Guitar Magazineで30歳以下の偉大なギタリスト30名に選ばれたこともあるというDhruv Visvanath。
このアルバムでも、ほぼアコースティックギターとヴォーカルハーモニーだけでドラマティックな楽曲を構成することに成功している。
Paradigm Shift, "Sammukh"
また出た!プログレッシブ・メタル・バンド!
彼らは最近日本でも注目されているPineapple Express同様、伝統音楽の要素(声楽やバイオリン)を大胆に取り入れた音楽性のバンドだ。
この手のプログレ・ミーツ・インディアなバンドは数多いが、変拍子や複雑なフレーズを駆使するプログレとインドの古典音楽にそれだけ親和性があるということなのだろう(他に注目株としてはタミルのAgam、もう少しグランジっぽいところでデリーのAnand Bhaskar Collectiveなど)。
Enkore, "Bombay Soul"
ムンバイのバイリンガルラッパー(英語とヒンディー)Enkoreが、このブログでも何度も名前が出て来ているデリーの鬼才トラックメイカーSez on the Beatのプロデュースでリリースしたアルバム。
Sezはいつものトラップ色の強いトラックではなく、スムースでチルな質感の音作りを意識している。
ギターを中心にしたメロウなトラックにところどころ顔を出すインド風味が心地よい。
Skyharbor, "Sunshine Dust"
アメリカ在住(インド系米国人?)のメンバーを含むSkyharborは、日本のBabymetalの全米ツアーのオープニングアクトを任されるなど人気上昇中のメタルバンドだ。
このブログではついついデスメタル、スラッシュメタル、正統派ヘヴィーメタルなどのオールドスクールなメタルバンドを中心に紹介してしまっているが、こういった現代的な音像のメタルバンドも多いので、いつかまとめて紹介したいところ。
Swarathma, "Raah-E-Fakira"
インドの伝統音楽とロックを融合したバンガロールのバンドの3枚目のアルバム。
これまで、Anand Bhaskar CollectiveやPineapple ExpressやPakhseeなど、インドの古典声楽とロックを融合したバンドはいくつも紹介してきたけど、このバンドはより土着的・大衆的なインドのフォーク(民謡)とロックとの融合!
朗々としつつも繊細なニュアンスのある古典声楽と違って、骨太で素朴な歌声のインド民謡とロックの組み合わせは、これまた非常に面白い仕上がりになっている。
ロックの部分がけっこう練られたアレンジになっているので、朴訥としたヴォーカルが入ってくると、その落差にずっこけつつも、だんだん「これはこれでアリかも…」と思わされてくるから不思議だ。
ヴォーカリストは同じくインド民謡歌手のRaghu Dixitの弟、Vasu Dixit.
インドでは古典と現代音楽との融合が当たり前のように行われていて、またそれが普通にリスナーに受け入れられてもいる。
(ヒンディー語以外のマーケットにはなかなか届かないだろうから)
Dhruv Visvanath, "The Lost Cause"
ニューデリーで活動するシンガーソングライターで、アメリカのAcoustic Guitar Magazineで30歳以下の偉大なギタリスト30名に選ばれたこともあるというDhruv Visvanath。
このアルバムでも、ほぼアコースティックギターとヴォーカルハーモニーだけでドラマティックな楽曲を構成することに成功している。
Paradigm Shift, "Sammukh"
また出た!プログレッシブ・メタル・バンド!
彼らは最近日本でも注目されているPineapple Express同様、伝統音楽の要素(声楽やバイオリン)を大胆に取り入れた音楽性のバンドだ。
この手のプログレ・ミーツ・インディアなバンドは数多いが、変拍子や複雑なフレーズを駆使するプログレとインドの古典音楽にそれだけ親和性があるということなのだろう(他に注目株としてはタミルのAgam、もう少しグランジっぽいところでデリーのAnand Bhaskar Collectiveなど)。
Enkore, "Bombay Soul"
ムンバイのバイリンガルラッパー(英語とヒンディー)Enkoreが、このブログでも何度も名前が出て来ているデリーの鬼才トラックメイカーSez on the Beatのプロデュースでリリースしたアルバム。
Sezはいつものトラップ色の強いトラックではなく、スムースでチルな質感の音作りを意識している。
ギターを中心にしたメロウなトラックにところどころ顔を出すインド風味が心地よい。
Skyharbor, "Sunshine Dust"
アメリカ在住(インド系米国人?)のメンバーを含むSkyharborは、日本のBabymetalの全米ツアーのオープニングアクトを任されるなど人気上昇中のメタルバンドだ。
このブログではついついデスメタル、スラッシュメタル、正統派ヘヴィーメタルなどのオールドスクールなメタルバンドを中心に紹介してしまっているが、こういった現代的な音像のメタルバンドも多いので、いつかまとめて紹介したいところ。
Swarathma, "Raah-E-Fakira"
インドの伝統音楽とロックを融合したバンガロールのバンドの3枚目のアルバム。
これまで、Anand Bhaskar CollectiveやPineapple ExpressやPakhseeなど、インドの古典声楽とロックを融合したバンドはいくつも紹介してきたけど、このバンドはより土着的・大衆的なインドのフォーク(民謡)とロックとの融合!
朗々としつつも繊細なニュアンスのある古典声楽と違って、骨太で素朴な歌声のインド民謡とロックの組み合わせは、これまた非常に面白い仕上がりになっている。
ロックの部分がけっこう練られたアレンジになっているので、朴訥としたヴォーカルが入ってくると、その落差にずっこけつつも、だんだん「これはこれでアリかも…」と思わされてくるから不思議だ。
ヴォーカリストは同じくインド民謡歌手のRaghu Dixitの弟、Vasu Dixit.
インドでは古典と現代音楽との融合が当たり前のように行われていて、またそれが普通にリスナーに受け入れられてもいる。
日本で同じようなことをしたら完全にイロモノだし、クールなものとして聴かれることもないだろう。
インド社会は急速に西欧化(ニアリーイコール資本主義化)しつつあるが、その根っこの部分には自分たちの文化や伝統の確固たる基盤があるのだ。
DCF_Shapes, "Live Vol.1"
インドの音楽シーンで活躍する一流プレイヤーによって構成されたファンクバンドのライブアルバムで、これが非常にかっこいい!
終始ファンキーなグルーヴにデジタル的な要素もうまくはまっていて、とにかく聴かせる、踊らせる。
ぜひライブで見てみたいバンドだ。
ちょっと渋さ知らズオーケストラみたいに聴こえるジャジーなところも気持ちいい。
ドラムにバンド名にもなっているDCFの別名を持つムンバイのセッションドラマーLindsey D'mello(2014年にDark Circle Factory名義で出したアルバムもかっこいい。DCFはその略称のようだ).
ギターにムンバイのインダストリアル・メタルバンドPentagramのRandolph.
サックスにインドを代表するジャズ・プレイヤーのRhys Sebastian D'souza.
'Funktastic'でラップを披露しているのはムンバイの老舗ヒップホップ・グループBombay Bassmentのメンバーでケニア出身のアフリカンであるBob katことBob Omulo.
ところで、インドのインディーズシーンの「ベテラン」である彼らの名前を見ると、英語のファーストネームやポルトガル語の苗字がずらり。インドのインディー音楽シーン創成期にクリスチャンのミュージシャンが果たした役割の大きさを再認識させられる。
Gabriel Daniel, "Conflicting"
バンガロールを拠点に活躍するオルタナティヴ系シンガー・ソングライターが、ドラマーとベースのサポートを加えて作ったアルバム。
いかにもシンガー・ソングライターといった叙情的な作風に、ところどころでポストロック的な要素やマスロックっぽい要素が光る。
Raghav Meattle, "Songs From Matchbox"
デリー出身のさわやか系シンガー・ソングライターのデビュー・アルバム。
60年代っぽくも聴こえるし、ちょっとジャック・ジョンソンみたいなサーフ系や西海岸系フォークを思わせる雰囲気もある楽曲は、どこか懐かしくて、そして完成度もとても高い。
インド社会は急速に西欧化(ニアリーイコール資本主義化)しつつあるが、その根っこの部分には自分たちの文化や伝統の確固たる基盤があるのだ。
DCF_Shapes, "Live Vol.1"
インドの音楽シーンで活躍する一流プレイヤーによって構成されたファンクバンドのライブアルバムで、これが非常にかっこいい!
終始ファンキーなグルーヴにデジタル的な要素もうまくはまっていて、とにかく聴かせる、踊らせる。
ぜひライブで見てみたいバンドだ。
ちょっと渋さ知らズオーケストラみたいに聴こえるジャジーなところも気持ちいい。
ドラムにバンド名にもなっているDCFの別名を持つムンバイのセッションドラマーLindsey D'mello(2014年にDark Circle Factory名義で出したアルバムもかっこいい。DCFはその略称のようだ).
ギターにムンバイのインダストリアル・メタルバンドPentagramのRandolph.
サックスにインドを代表するジャズ・プレイヤーのRhys Sebastian D'souza.
'Funktastic'でラップを披露しているのはムンバイの老舗ヒップホップ・グループBombay Bassmentのメンバーでケニア出身のアフリカンであるBob katことBob Omulo.
ところで、インドのインディーズシーンの「ベテラン」である彼らの名前を見ると、英語のファーストネームやポルトガル語の苗字がずらり。インドのインディー音楽シーン創成期にクリスチャンのミュージシャンが果たした役割の大きさを再認識させられる。
Gabriel Daniel, "Conflicting"
バンガロールを拠点に活躍するオルタナティヴ系シンガー・ソングライターが、ドラマーとベースのサポートを加えて作ったアルバム。
いかにもシンガー・ソングライターといった叙情的な作風に、ところどころでポストロック的な要素やマスロックっぽい要素が光る。
Raghav Meattle, "Songs From Matchbox"
デリー出身のさわやか系シンガー・ソングライターのデビュー・アルバム。
60年代っぽくも聴こえるし、ちょっとジャック・ジョンソンみたいなサーフ系や西海岸系フォークを思わせる雰囲気もある楽曲は、どこか懐かしくて、そして完成度もとても高い。
インドのミュージシャンでここまでアメリカっぽい空気を感じさせる人は珍しい。
と、ざっと10枚を紹介してみた。
メタル、ロック、ヒップホップ、ファンク、SSWとジャンルも多岐にわたり、それぞれかなり聴き応えのある作品が揃っているのが分かるだろう。
シングル10選のときは、オシャレ感重視の雰囲気ものが多かった印象だが、このアルバム10選ではよりアーティストの個性が強く出た作品がピックアップされている。
Paradigm ShiftやSwarathmaみたいにいかにもインドといった要素が入ったバンドも面白いし、SkyharborやDCF_Shapesは国籍に関係なくかっこいい音楽を作っている。
Raghav Meattleの普遍的なグッドメロディーを作曲する才能も覚えておきたい。
「音楽とインド」というテーマで記事を書くことが多いため、ついついインドならではの音楽性や背景のあるアーティストを取り上げることが多いのだけど、こんなふうに純粋に優れた音楽を作っているミュージシャンたちもかなり高いレベルにいることが改めて分かるアルバムたちだった。
気に入ったアーティストがいたら、ぜひみなさんのプレイリストに加えてみてください。
2017年のベストアルバムtop10と聴き比べて見るのも一興です。
それではまた!
★1月27日(日)ユジク阿佐ヶ谷にて「あまねき旋律」上映後にインド北東部ナガランド州の音楽シーンを語るトークイベントを行います
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メタル、ロック、ヒップホップ、ファンク、SSWとジャンルも多岐にわたり、それぞれかなり聴き応えのある作品が揃っているのが分かるだろう。
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Paradigm ShiftやSwarathmaみたいにいかにもインドといった要素が入ったバンドも面白いし、SkyharborやDCF_Shapesは国籍に関係なくかっこいい音楽を作っている。
Raghav Meattleの普遍的なグッドメロディーを作曲する才能も覚えておきたい。
「音楽とインド」というテーマで記事を書くことが多いため、ついついインドならではの音楽性や背景のあるアーティストを取り上げることが多いのだけど、こんなふうに純粋に優れた音楽を作っているミュージシャンたちもかなり高いレベルにいることが改めて分かるアルバムたちだった。
気に入ったアーティストがいたら、ぜひみなさんのプレイリストに加えてみてください。
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goshimasayama18 at 23:18|Permalink│Comments(0)