RhythmShaw
2019年07月05日
大注目レーベル NRTYAの多彩すぎるアーティストたち
突然だが、これまでこのブログで紹介して来たアーティストの中でも、とくに面白い何人かをピックアップしてみる。
- ムンバイのキャリアウーマンのブルースを歌う、カルナーティックの素養を持つジャズ/ソウルシンガーAditi Ramesh.
- 凄腕ギタリストにして、タブラでも少年時代から天才的な腕前を持っていたコルカタ出身のマルチプレイヤー、Rhythm Shaw.
- インドの中でも後進的なジャールカンド州からユニークなサウンドを発信するヒップホップアーティストTre Essと、彼の相棒でブルースからエレクトロニカまで変幻自在のギタリストThe Mellow Turtle.
- バンガロールのテクノ/ドラムンベースアーティストで、日本人にはびっくりのアーティスト名を持つWatashi.
(もちろん、インド人のインディーミュージシャンだということ以外でだ)
NRTYAは2017年の発足以来、ものすごい勢いで作品をリリースしており、これまでに扱ったアーティストは70近く、200曲以上のトラックをSoundcloudなどのメディアで発表している。
カバーするジャンルは電子音楽を中心に多岐にわたり、これまでテクノ、アンビエント、トリップホップ、ヒップホップ、アシッドジャズ、メタルなどの作品をリリースしてきた。
また、Aditi Ramesh, Rhytm Shaw, The Mellow Turtle, Tre Ess, Easy Wanderlingsといったアーティストのマネジメントも担当しており、作品のリリースだけでなく、所属アーティストによるイベントを各地で企画するなど、インドのインディーミュージックシーンを活性化すべく様々な活動を行なっている。
NRTYAにはインド全土からアーティストの音源が送られてきており、その中で優れたものを世に出しているそうだ。
みなさんも、「インドの最新の面白い音楽を紹介してほしい」と聞かれることがあったら(あんまりないとは思うけど)、まずはこのレーベルをチェックしてみることをお勧めする。
それでは!
凡平自選の2018年度のおすすめ記事はこちらからどうぞ!
それは、ムンバイを拠点とする新進レーベル"NRTYA"から楽曲をリリースしているということ。
このNRTYAは、インドのインディー音楽界のいたるところでその名前を目にする、今インドでもっとも注目すべきレーベルだ。
今回は、この新進レーベルNRTYAについて紹介します。
NRTYAは、Raghu Vamshi, Sharan Punjabi, Parth Tacoの3名によって2017年に立ち上げられた、まだ新しいレーベルだ。
VamshiとPunjabiの二人は、自身もTansane名義でエレクトロニカ・アーティストとしても活動しており、Tacoは音楽プログラマーとしても活躍している。
根っからの音楽好きでもあり、自身も表現者として、また制作者として音楽に関わっている人たちが運営するレーベルなのだ。
根っからの音楽好きでもあり、自身も表現者として、また制作者として音楽に関わっている人たちが運営するレーベルなのだ。
NRTYAは2017年の発足以来、ものすごい勢いで作品をリリースしており、これまでに扱ったアーティストは70近く、200曲以上のトラックをSoundcloudなどのメディアで発表している。
カバーするジャンルは電子音楽を中心に多岐にわたり、これまでテクノ、アンビエント、トリップホップ、ヒップホップ、アシッドジャズ、メタルなどの作品をリリースしてきた。
また、Aditi Ramesh, Rhytm Shaw, The Mellow Turtle, Tre Ess, Easy Wanderlingsといったアーティストのマネジメントも担当しており、作品のリリースだけでなく、所属アーティストによるイベントを各地で企画するなど、インドのインディーミュージックシーンを活性化すべく様々な活動を行なっている。
これは私の企業秘密なのだが、インドのインディー音楽で面白いアーティストを探そうと思ったら、まずこのレーベルをチェックすれば必ず誰か見つかるという、インド音楽を紹介する自分にとって非常にありがたい存在でもある。
あまりにも多すぎるリリース作品の中から、これまで紹介して来たアーティストを含めて、何人かを紹介してみたい。
ジャズ/ブルースシンガーのAditi Rameshは女性のみで結成されたバンドLadies Compartmentの一員としても活躍している。
あまりにも多すぎるリリース作品の中から、これまで紹介して来たアーティストを含めて、何人かを紹介してみたい。
ジャズ/ブルースシンガーのAditi Rameshは女性のみで結成されたバンドLadies Compartmentの一員としても活躍している。
最新の音源ではジャズと古典音楽を自在に息器するヴォーカリゼーションを聴かせてくれた。
エレクトロニカ・アーティストのPurva Ashadha and Fuegoによるこのアンビエントの清冽さはどうだ。
Mohit RaoのトラックにTre Essのラップを乗せたこの楽曲は、インドのアンダーグラウンドヒップホップのサウンド面の追求のひとつの到達点と言えるか。
古典音楽の要素を現代風にアレンジした楽曲もちらほら。ジャールカンドのThe Mellow Turtleの"Laced".
音が徐々に重なってゆき、魔法のようなハーモニーを奏でるドリームポップ。Topsheの"1,000 AQI".
このチープなビデオに出てくる、インドのどこにでといそうな兄ちゃんがこの素晴らしい音楽を作っていると思うと、インドの奥深さを改めて感じる。
NRTYAに所属する天才プレイヤーRhythm Shaw. 今回はマヌーシュ・スウィングスタイルのギターでお父さんのNepal Shawと共演する動画を紹介。
エレクトロニカ・アーティストのPurva Ashadha and Fuegoによるこのアンビエントの清冽さはどうだ。
Mohit RaoのトラックにTre Essのラップを乗せたこの楽曲は、インドのアンダーグラウンドヒップホップのサウンド面の追求のひとつの到達点と言えるか。
古典音楽の要素を現代風にアレンジした楽曲もちらほら。ジャールカンドのThe Mellow Turtleの"Laced".
音が徐々に重なってゆき、魔法のようなハーモニーを奏でるドリームポップ。Topsheの"1,000 AQI".
このチープなビデオに出てくる、インドのどこにでといそうな兄ちゃんがこの素晴らしい音楽を作っていると思うと、インドの奥深さを改めて感じる。
NRTYAに所属する天才プレイヤーRhythm Shaw. 今回はマヌーシュ・スウィングスタイルのギターでお父さんのNepal Shawと共演する動画を紹介。
彼の多才っぷりを見るたびに、インドの音楽英才教育の恐ろしさを感じる。
なんとも形容しがたい音楽性の4人組バンドApe Echoes(しいて言えばフューチャー・ファンクか)のサウンドは完全に無国籍なセンスの良さ。
センスの良いミュージックビデオは、ジャイプル出身の人気シンガーソングライターPrateek Kuhadが昨年リリースした"Cold/Mess"と同じウクライナ人監督監督Dar Gaiとインド人俳優Jim Sarbhによるものだ。
バンガロールのテクノアーティストWatashiによるハードな質感のこの楽曲。テクノは扱ってもEDMは扱わないところに、インディーレーベルとしての矜持のようなものを感じる。
創設者2人によるTansaneがトラックメーカーとなって、Aditi RameshのスキャットとラッパーThe Accountantをフィーチャーした"Campus Recruitment"はインドの大学での就職活動をテーマにした楽曲。
なんとも形容しがたい音楽性の4人組バンドApe Echoes(しいて言えばフューチャー・ファンクか)のサウンドは完全に無国籍なセンスの良さ。
センスの良いミュージックビデオは、ジャイプル出身の人気シンガーソングライターPrateek Kuhadが昨年リリースした"Cold/Mess"と同じウクライナ人監督監督Dar Gaiとインド人俳優Jim Sarbhによるものだ。
バンガロールのテクノアーティストWatashiによるハードな質感のこの楽曲。テクノは扱ってもEDMは扱わないところに、インディーレーベルとしての矜持のようなものを感じる。
創設者2人によるTansaneがトラックメーカーとなって、Aditi RameshのスキャットとラッパーThe Accountantをフィーチャーした"Campus Recruitment"はインドの大学での就職活動をテーマにした楽曲。
Tansaneの名前は16世紀のインドの大音楽家Tansenから取ったものだろうか。
NRTYAからのリリースではないが、The Mellow TurtleとTre Essのジャールカンド州の2人は、盲目の少年シンガーDheeraj Kumar Guptaをフィーチャーした楽曲"Dil Aziz"をプロデュースした。
作曲は同じ盲学校に通う14歳少年Subhash Kumar.
イノセントさと深みを兼ね備えた歌声が素晴らしい。
NRTYAからのリリースではないが、The Mellow TurtleとTre Essのジャールカンド州の2人は、盲目の少年シンガーDheeraj Kumar Guptaをフィーチャーした楽曲"Dil Aziz"をプロデュースした。
作曲は同じ盲学校に通う14歳少年Subhash Kumar.
イノセントさと深みを兼ね備えた歌声が素晴らしい。
シンプルながらも古典的なものを古く聴こえさせないトラック、そしてソウルフルなギターソロもさすがだ。
インディーのNRTYAではなく、インドの大手音楽配信サイトJioSaavnからのリリースなのは、少しでも多くの人の耳に届くようにという親心か。
これは以前The Mellow Turtleがインタビューで語っていた、ソーシャルワーカーとしての盲学校で音楽を教える活動が形になったもので、すでに各種サイトで多くの再生回数を集め、高い評価を得ているようだ。
(「The Mellow Turtleインタビュー!驚異の音楽性の秘密とは?」)
インディーのNRTYAではなく、インドの大手音楽配信サイトJioSaavnからのリリースなのは、少しでも多くの人の耳に届くようにという親心か。
これは以前The Mellow Turtleがインタビューで語っていた、ソーシャルワーカーとしての盲学校で音楽を教える活動が形になったもので、すでに各種サイトで多くの再生回数を集め、高い評価を得ているようだ。
(「The Mellow Turtleインタビュー!驚異の音楽性の秘密とは?」)
NRTYAにはインド全土からアーティストの音源が送られてきており、その中で優れたものを世に出しているそうだ。
ジャールカンドのようなインディーミュージックが盛んでない地域からも、The Mellow TurtleとTre Essのような優れた才能を発掘し、彼らがまた次の才能を育てて世の中に送り出すという好循環が生まれている。
こんなふうに、音楽の分野だけにとどまらない才気と気概を感じさせられるアーティストが多いのも、インドの音楽シーンの素晴らしいところだ。
ちなみにレーベル名の5文字のアルファベット"NRTYA"、覚えにくいなと思っていたのだが、これはPunjabiによると、「永遠のエネルギーの5つの元素、すなわち想像、維持、破壊、幻影、解放を含む宇宙の舞踊」を意味しているという(と言われてもよくわからないが)。
こんなふうに、音楽の分野だけにとどまらない才気と気概を感じさせられるアーティストが多いのも、インドの音楽シーンの素晴らしいところだ。
ちなみにレーベル名の5文字のアルファベット"NRTYA"、覚えにくいなと思っていたのだが、これはPunjabiによると、「永遠のエネルギーの5つの元素、すなわち想像、維持、破壊、幻影、解放を含む宇宙の舞踊」を意味しているという(と言われてもよくわからないが)。
おそらく読み方は「ヌルティヤ」でよいのだと思うが、私はCharがやってる江戸屋レーベルみたいに「成田屋」と読んでいる。
この成田屋、もといNRTYA、現代インドの音楽シーンの多様性と勢いをもっとも象徴するレーベルである。みなさんも、「インドの最新の面白い音楽を紹介してほしい」と聞かれることがあったら(あんまりないとは思うけど)、まずはこのレーベルをチェックしてみることをお勧めする。
それでは!
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goshimasayama18 at 22:31|Permalink│Comments(0)
2018年05月21日
説明不要!新世代の天才!Rhythm Shaw他若き才能たち!
インドのコンテンポラリー・ミュージックを聴いているといろいろな意味で驚かされることが多いのだけど、その驚きは大きく分けて2つの種類に分けられる。
ひとつ目は「さすがインド!こんなふうにインドの要素を入れてきたか!」っていうタイプのもの。
今まで紹介してきた中だと、Brodha VとかAnand Bhaskar Collectiveなんかがこれにあたる。
二つ目は「国籍とか関係なく、単純にスゲエ!」というタイプのもの。
インドのデスメタルやポストロックのレベルの高さは今まで紹介してきた通りだ。
今回紹介するのは典型的な後者!
インドの若手凄腕ミュージシャンを紹介します。
最初に紹介するのはウエストベンガル州コルカタ出身、若干 22歳のギタリスト、その名もRhythm Shaw.
まずはそのプレイを聴いてみてください。
この若さにしてアコギもエレキも信じられない上手さ!
しかも凄いのはこれだけではない。
ギタリストと紹介したけど彼は実はマルチプレイヤーで、一人で全パートをプレイしているセッションなんかも凄い(ドラムだけはサンプリングパッドを叩いているが)。
彼のプロフィールを見てみると、影響を受けたミュージシャンとしてスティーヴ・ヴァイらと並んでNepal Shawという名前が出てくるが、調べてみたところこれは彼のお父さんらしく、幼少期からタブラをはじめとする各種楽器の英才教育を受けてきたようだ。
わずか11歳のときのタブラの演奏の様子がこれ。
地元のテレビ番組に出た時の映像で、演奏は25秒くらいから。スゲー!
こっちはお父さんとの共演!
最初は古典的なスタイルで叩いているが、後半でお父さんのギターがスタイルを変えると、それに合わせていろんな叩き方を披露する器用さもすでに身につけている!
ギターとベースとキーボードだけでも十分びっくりなのに、そこに古典のセンスや技量が入ってくるともう誰も太刀打ちできない領域だ。
あとどうでもいいけど、小さい頃からRhythmと名乗っているところを見ると、どうやらリズムって本名(!)みたい。お父さんのネパールっていう国名が名前なのもびっくりしたけど(インドだと自然な名前なんだろうか)、珍名親子か。
他にもインドの若手天才プレイヤーは数多く、例えば若干21歳のベーシストMohini Dey.
スティーヴ・ヴァイとの共演も(演奏は1:00あたりから)!
こちらは24歳のフィンガースタイル・ギター(とこういうのを言うらしい)の気鋭Manan Gupta.
ニューアルバムでは歌も披露。インドのラウル・ミドンか。
彼らはいずれもプレイヤーとしては超一級品だが、その高すぎる技量ゆえに、テクニックばかりに耳を奪われてしまって、表現者・アーティストとしての評価には少し時間がかかるかもしれない。
ただいずれにせよ、彼らが若くしてその類い稀な才能を開花させていることに疑いの余地はない。
ふと思ったけど、タブラの超大御所ザキール・フセインのお父さんもまたタブラ・プレイヤーだし、シタールのシャンカール一家も然りだし、インドって子どもの頃からの音楽英才教育の伝統があるのかもしれないね。
それが古典音楽のみならず、現代音楽の世界にも広がってきているとも考えられる。
そのうちIT産業がそうなったみたいに、世界の音楽シーンのバックミュージシャンがほとんどインド人なんてことになるのかも。
それでは今日はこのへんで!
ひとつ目は「さすがインド!こんなふうにインドの要素を入れてきたか!」っていうタイプのもの。
今まで紹介してきた中だと、Brodha VとかAnand Bhaskar Collectiveなんかがこれにあたる。
二つ目は「国籍とか関係なく、単純にスゲエ!」というタイプのもの。
インドのデスメタルやポストロックのレベルの高さは今まで紹介してきた通りだ。
今回紹介するのは典型的な後者!
インドの若手凄腕ミュージシャンを紹介します。
最初に紹介するのはウエストベンガル州コルカタ出身、若干 22歳のギタリスト、その名もRhythm Shaw.
まずはそのプレイを聴いてみてください。
この若さにしてアコギもエレキも信じられない上手さ!
しかも凄いのはこれだけではない。
ギタリストと紹介したけど彼は実はマルチプレイヤーで、一人で全パートをプレイしているセッションなんかも凄い(ドラムだけはサンプリングパッドを叩いているが)。
彼のプロフィールを見てみると、影響を受けたミュージシャンとしてスティーヴ・ヴァイらと並んでNepal Shawという名前が出てくるが、調べてみたところこれは彼のお父さんらしく、幼少期からタブラをはじめとする各種楽器の英才教育を受けてきたようだ。
わずか11歳のときのタブラの演奏の様子がこれ。
地元のテレビ番組に出た時の映像で、演奏は25秒くらいから。スゲー!
こっちはお父さんとの共演!
最初は古典的なスタイルで叩いているが、後半でお父さんのギターがスタイルを変えると、それに合わせていろんな叩き方を披露する器用さもすでに身につけている!
ギターとベースとキーボードだけでも十分びっくりなのに、そこに古典のセンスや技量が入ってくるともう誰も太刀打ちできない領域だ。
あとどうでもいいけど、小さい頃からRhythmと名乗っているところを見ると、どうやらリズムって本名(!)みたい。お父さんのネパールっていう国名が名前なのもびっくりしたけど(インドだと自然な名前なんだろうか)、珍名親子か。
他にもインドの若手天才プレイヤーは数多く、例えば若干21歳のベーシストMohini Dey.
スティーヴ・ヴァイとの共演も(演奏は1:00あたりから)!
こちらは24歳のフィンガースタイル・ギター(とこういうのを言うらしい)の気鋭Manan Gupta.
ニューアルバムでは歌も披露。インドのラウル・ミドンか。
彼らはいずれもプレイヤーとしては超一級品だが、その高すぎる技量ゆえに、テクニックばかりに耳を奪われてしまって、表現者・アーティストとしての評価には少し時間がかかるかもしれない。
ただいずれにせよ、彼らが若くしてその類い稀な才能を開花させていることに疑いの余地はない。
ふと思ったけど、タブラの超大御所ザキール・フセインのお父さんもまたタブラ・プレイヤーだし、シタールのシャンカール一家も然りだし、インドって子どもの頃からの音楽英才教育の伝統があるのかもしれないね。
それが古典音楽のみならず、現代音楽の世界にも広がってきているとも考えられる。
そのうちIT産業がそうなったみたいに、世界の音楽シーンのバックミュージシャンがほとんどインド人なんてことになるのかも。
それでは今日はこのへんで!
goshimasayama18 at 00:14|Permalink│Comments(0)