PrabhDeep

2019年08月19日

Sarathy Korwarの"More Arriving"はとんでもない傑作なのかもしれない

イギリス在住のタブラプレイヤー/ジャズパーカッショニストのSarathy Korwarのセカンドアルバム"More Arriving"が素晴らしい。
すでに先日の記事でも、このアルバムからムンバイの先鋭的ヒップホップグループSwadesiが参加した楽曲"Mumbay"を紹介させてもらったが、改めてアルバム全体を聴いて、その強烈な内容に衝撃を受けた。

タイトルで、とんでもない作品「かもしれない」と書いたのは、内容に対する疑問ではない。
内容は文句なしに素晴らしいのだが、このジャンル不明の大傑作が、世界的にはニッチな存在となっている(世界中の南アジア系住民以外にはなかなか届かない)'Desi Music'の枠を超えた、現代ジャズの名盤として歴史に名を残す可能性があるのではないか、という気持ちを込めたものだ。
個人的には、この作品はKamasi Wahingtonあたりと同等の評価を受けるに値する内容のものだと考えている。

改めて、ここで"Mumbay"を紹介する。


アメリカで生まれ、インド(アーメダーバードとチェンナイ)で育ったSarathy Korwarは、10代からタブラの練習を始め、ほどなくコルトレーンらのスピリチュアル・ジャズにも興味を持つようになった。
その後もタブラの修行とジャズの追求を続け、進学のために移ったプネーでドラムを始めると、セッションミュージシャンとして音楽の道を目指すようになる。
その後、より本格的にタブラを追求するためにイギリスに渡り、SOAS(東洋アフリカ研究学院)のSanju Sahaiに師事。
ジャズミュージシャンとしてのキャリアも続け、2016年にクラブ・ミュージックの名門レーベルNinja Tuneからファーストアルバム"Day To Day"をリリースした。

彼の音楽性をごく簡単に説明すれば、「ジャズとインド古典音楽の融合」ということになるだろう。
これまでもジャズとインド音楽の融合は、東西のさまざまなアーティストが試みているが(例えばジョン・マクラフリンとザキール・フセインらによるプロジェクト'Shakti'や、ドキュメンタリー映画"Song of Lahore"にもなったパキスタンのSachal Jazz Ensembleなど)、いずれもが異なる音楽的要素を混合することによる、純粋な音響的な表現の追求にとどまるものだった。
つまり、実験的で純音楽的な試みではあっても、その時代の最先端のロックやヒップホップのような、同時代的なものではなかったということだ。
Sarathy Korwarのファースト・アルバムも、こうした枠のなかの作品のひとつとして捉えられるものだった。 
(もちろん、それでもここに挙げたアルバムが普遍的な音楽作品として十分に素晴らしいことは言うまでもない。また、それぞれのプロジェクトには社会的・時代的な必然性があったというのも事実だが、少なくとも同時代へのメッセージ性を強く持ったものではなかった)


ところが、The Leaf Label(これまでに、Four TetやAsa-Chang&巡礼の作品を取り扱っているヨークシャーのレーベル)からリリースされた彼のセカンドアルバム"More Arriving"は、こうした作品群とは全く違う次元のものだった。
Sarathyは、このアルバムに、SwadesiやPrabh Deepらの発展著しいインドのヒップホップ勢を参加させることで、インドの古典音楽とジャズという、「あまりにも様式として完成されてしまっているが故に、決して現代的にはなり得ない音楽ジャンル」に、極めて今日的な緊張感と魅力を付与することに成功した

このアルバムで、Sarathyは 2019年のセンスでジャズを解体再構築している。
いや、というよりも、むしろ2019年のセンスでジャズ本来の精神を解放しているといったほうが良いかもしれない。
つまり、都会の不穏さと快楽を音楽に閉じ込めるとともに、音そのもので、抑圧的な社会からの魂の自由を表現しているのだ。
それも、タブラプレイヤーでもあるインド系ジャズパーカッショニストだけができるやり方で。

とくに、冒頭の"Mumbay"から"Coolie"(デリーのラッパーPrabh Deepとレゲエシンガー&DJのDelhi Sultanateが参加)、そして"Bol"(アメリカ在住のカルナーティック・フュージョンのシンガーAditya Prakashと、インド系イギリス人でポエトリー・スラムのアーティストZia Ahmedが参加)に繋がる流れは素晴らしい。
"Bol"では、インドの伝統音楽が、ほぼそのままの形を保ちながら、すべて生音であるにもかかわらず、恐ろしいほど現代的に表現されている。
しかも、ここまでヘヴィに、緊張感を保ったままでだ。

"Bol"というタイトルは「発言」や「会話」という意味。
歌詞にもビデオにも、今日の英国社会での南アジア系住民へのステレオタイプな偏見に対する皮肉を含んだメッセージが込められている。
この動画は4分程度のシングル・バージョンだが、9分以上あるアルバム・バージョンはさらに素晴らしい。


アルバム全体もYoutubeで公開されているので、紹介しておく。
コンセプトや構成がしっかりしたアルバムなので、ぜひ通しで聴いてもらいたい。

"More Arriving"には、他にもムンバイのラッパーのTRAP POJU(a.k.a. Poetik Justis)やカルカッタの女性古典(ヒンドゥスターニー)シンガーのMirande, さらには在外インド人作家のDeepak Unnikrishnanなど、多彩なメンバーが参加している。

最後に、このアルバムへのSarathyのコメントやレーベルからの紹介文と、各メディアによる評価を紹介したい。

「このアルバムには、たくさんのラッパーや詩人などが参加していて、南アジアの様々な声をフィーチャーすることを目指しているんだ。それは単一のものではなく、ブラウン(南アジア系の人々)の多様なストーリーやナラティブによって成り立っているっていうことを強調しておくよ。"More Arriving"というタイトルは、人々の移動(ムーブメント)を表している。この言い回しは、恐怖や、望まざる競争、歓迎せざる気持ちなどがより多くやってくるという今日の状況を取り巻くものなんだ。」
(Sarathy Korwarのウェブサイトhttp://www.sarathykorwar.comより)

「我々は分断の時代を生きている。多文化主義(multiculturalism)は人種間の緊張と密接な関係があり、政治家は人々の耳に複雑なメッセージを届けることすらできないほどに無力だ。別な視点を持つべき時がやってきた。
このアルバムで、Sarahty Korwarは彼自身の鮮やかで多元的な表現を、世界に向けて撃ち放った。これは必ずしも調和(unity)のレコードではない。分断したイギリス社会でインド人として生きるKorwarの経験を率直に反映したものだ。イギリスとインドで2年半にわたってレコーディングされ、ムンバイとニューデリーの新しいラップシーンと、彼自身のインド古典音楽とジャズの楽器が取り入れられている。これは、対立から生まれた、対立の時代のためのレコードだ。」

(The Leaf Labelのウェブサイトhttp://www.theleaflabel.com/en/news/view/653/DMより)

「稀有な才能… 彼のリズムの激しさ、魅惑的なビジョンは、インドとジャズの融合の歴史に新しいスピンを加えた。★★★★★」(MOJO)

「絶対的な瞬間。民族的アイデンティティーを扱った、サイケデリックで、強烈なジャズのオデッセイ。素晴らしい。★★★★」(Guardian)

「2019年を定義するアルバムのうちのひとつ。Sarathyのニューアルバムはここ1年でもっともエキサイティングなもの…カゥワーリーからモダンジャズ、ムンバイ・ヒップホップ、インド古典音楽にいたるまでのワイルドな相乗効果だ。だがこれは、まさに今イギリスで起こっていることに関するレコードでもある」(Pete Paphides, Needle Mythology podcast)

「素晴らしい… アドレナリンに溢れ、パーカッションに導かれた、意識(consciousness)を高めるスリリングな冒険」(Electronic Music)

「アジア系ラッパーや詩人をフィーチャーしたインド音楽とジャズのスリリングな融合であり、いいかげんなステレオタイプや、東西文化のナラティブを変える必要性などのテーマに取り組んでいる。これは分断の時代のタイムリーなサウンドトラックだ」(Songlines)

「Korwarは、公民権を剥奪された人々の声という、ジャズの政治的でラディカルな歴史を取り入れ、それを現代イギリスにおけるインド人ディアスポラの体験に応用している」(The Vinyl Factory)

(以上、各媒体からのコメントは、The Leaf Labelのウェブサイトhttp://www.theleaflabel.com/en/news/view/653/DMから引用)


近年、独自の発展を続けてきた在外インド系アーティストと、急速に進化しているインド国内のアーティストの共演が盛んに行われているが、またしても、国境も、ジャンルも超えた名盤が誕生した。
"Sarathy Korwar"の"More Arriving"は、インド系ディアスポラとインド本国から誕生した、極めて普遍的かつ現代的な、もっと聴かれるべき、もっと評価されるべき作品だ。

インドの作品にしては珍しく、フィジカルでのリリース(CD、レコード)もされるようなので、ぜひ実際に手に取って聴いてみたいアルバムである。


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goshimasayama18 at 15:31|PermalinkComments(0)

2019年08月16日

インドのヒップホップをネクストレベルに押し上げるデリーの新進レーベル、Azadi Records

これまで何度も紹介しているように、現在のインドのヒップホップの中心地は、間違いなくムンバイだ。
しかし、インドのヒップホップ人気はムンバイだけでなくすでに全国に達しており、当然ながら首都デリーにも、ストリートのリアルを体現した独自のシーンがある。
今回は、インドのアンダーグラウンド・ヒップホップの最重要レーベルと言っても過言ではない、デリーのAzadi Recordsを紹介する。

Azadi Recordsは2017年に発足した新しいレーベルだ。
創設者はイギリスで長く音楽業界に関わっていたMo JoshiとジャーナリストのUday Kapur.
Joshiはイギリスで最初期のヒップホップグループの一員として音楽キャリアをスタートさせ(このグループについては詳細な情報は得られなかった)、その後音楽フェス関連の仕事や、Joss Stoneなどの有名ミュージシャンとの仕事をしたのち、2014年にインドに帰国。
国内外のインド系ヒップホップアーティストを扱うウェブサイト、DesiHipHop.comでの勤務を経て、2017年にKapurとAzadi Recordsを立ち上げた。
国内外のヒップホップを知り尽くした二人が、満を持して発足したレーベルが、このAzadi Recordsというわけだ。

Azadi Recordsの記念すべき最初のリリースは、デリーのシク教徒のラッパー、Prabh Deepの"Kal".

パンジャービー系ながら、バングラー的なパーティーラップではなく、抑制の効いたディープなトラックに乗せてリアルなストリートの生活をラップするPrabh Deepは、あっという間に注目を集める存在となった。
(これまで、シク教徒を中心とするパンジャーブ系のラッパーは、伝統音楽バングラーのリズムにヒップホップやEDMを融合した派手なパーティースタイルのラップをすることが多かった。詳しくはこの記事を参照してほしい「Desi Hip HopからGully Rapへ インドのヒップホップの歴史」)

トラックを手がけているのは同じくデリー出身のSez on the Beat.
彼は、映画『ガリーボーイ』にもフィーチャーされたDIVINEとNaezyの"Mere Gully Mein"やDIVINEの"Jungli Sher"などにも携わっており、アグレッシブな典型的ガリーラップサウンドを作り上げた立役者でもある。
昨今ではより抑制的なビートとユニークな音響重視のトラックを作っており、インドのヒップホップの新しい局面を切り開いている。
Azadi Recordsがサウンド面でも高い評価を得ている理由は、このSezによるところも大きい。

"Kal"に続いてAzadi RecordsからリリースされたPrabh Deepのファースト・アルバム"Class-Sikh"は、Rolling Stone Indiaの2017年度最優秀アルバムに輝くなど、幾多の高評価を受け、文字通りインドのヒップホップのクラシックとなった。
同アルバムから"Suno"('Listen'という意味)


このアルバムの成功によって、Azadi Recordsは一躍インドのヒップホップシーンの台風の目となる。
レーベル名の'Azadi'は「自由」を意味するヒンディー語。
レーベルのFacebookページによると、彼らは「現代の差し迫った問題に批判的に関与し、意見を述べる、先進的で政治的意識の高い(consciousな)音楽をリリースするためのプラットフォームを南アジアのアーティストに提供する」ことを目的としており、「アンダーグラウンドであることを目指すのではなく、メインストリームによって無視されがちなストーリーに注目し」「世界中の多様なコミュニティ間の対話を始めるための新しいサウンドやビジュアルを探求する」という趣旨のもと活動しているという。
https://www.facebook.com/pg/azadirecords/about/

Prabh Deepに続いてAzadi Recordsがリリースしたのは、デリーのラッパーデュオSeedhe Maut.
トラックを手がけているのはやはりSez.


Seedhe Mautによる"Shaktimaan"というインドの特撮ヒーローをタイトルにした楽曲。


最近では、ジャンムー・カシミール州スリナガル出身のラッパーAhmerとSezによるアルバム"Little Kid, Big Dreams"をリリース。
Prabh Deepも参加したこの"Elaan"では、紛争の地カシミールに生まれたがために、自由や命の保証すらない現実と、それに対するフラストレーションがリアルにラップされている。
 

分離独立やパキスタンとの併合を求める運動が絶えないカシミールでは、先日のインド中央政府による強権的な自治権剥奪にともない、通信が遮断され、集会が制限されるなど、緊張状態が続いている。
この緊迫した状況下で故郷スリナガルに帰るAhmerのメッセージを、つい先日レーベルのアカウントがリツイートした。

「故郷に帰る。今日から封鎖の中に行くから、存在しなくなるのも同じさ。カシミールのみんなと同じように、包囲の中、暴力的な体制の中、専制の中、抑圧の中で過ごすんだ。自分の家族が無事でいるかどうか分からない。そうであってほしいけど。カシミールの外にいるみんな、無事でいてくれ。俺たちは奴らには負けない」
「明日から俺は存在しなくなる。生きているかどうか、誰にも分からないだろう」

無事を伝える通信手段すら確保できない故郷に、それでも帰る彼の気持ちはいかばかりだろうか。
Ahmerの無事を祈らずにはいられない。
(カシミールのリアルを伝えるラッパーには、他にMC Kashがいる。彼らについてはこちらの記事から「バジュランギおじさん/ヒンドゥー・ナショナリズム/カシミール問題とラッパーMC Kash(後半)」)

こうしたアーティストの楽曲のリリースは、まさに「メインストリームによって無視されがちなストーリーに注目し」「現代の差し迫った問題に批判的に関与し、意見を述べる、先進的で政治的意識の高い(consciousな)音楽をリリースする」というこのレーベルの目的に合致したものと言えるだろう。

Azadi Recordsは、通常のインドのレーベルでは売り上げの4〜7%しかアーティストが得られない契約であることに対して、アーティストとレーベルとで50%ずつの取り分としており、また大手レーベルが最大で30年間保有する著作権を、5年間のみの保有とするなど、アーティストの権利を尊重した契約をすることにしているという。

Mo Joshiは、現在のインドのエンターテインメントシーンについてこう語っている。
「ヒップホップはカルチャーなんだ。単にラップをしているだけはヒップホップとは言えない。ボリウッドにはラップこそあるけど、ヒップホップは存在していないよ」。
https://www.musicplus.in/all-things-hip-hop-with-mo-joshi-co-founder-azadi-records/) 
これは今年2月にインドで『ガリーボーイ』が公開された以降のインタビューだから、当然この映画の成功を意識した上での発言だろう。
インドのヒップホップシーンが『ガリーボーイ』に概ね好意的な反応を示しているなかで、かなり手厳しい意見だが、それだけピュアなアティテュードを持ったレーベルということなのだ。
 
Azadi Recordsの最新のリリースは、Prabh Deep feat. Hashbass & Tansoloの"KING"という楽曲。

インドのヒップホップにかなり早い時期から注目していた鈴木妄想さんをして「Prabh Deepの新曲が凄い。不穏な始まりからアブストラクトで浮遊感あるブリッジを経て、メロウな歌モノに展開。この人のトラックメイキングほんとに凄い。間違いなく俺の好きなヒップホップはこういう音だよ。」と言わしめた完成度(鈴木妄想さんのTwitterより。この楽曲を完璧に表現していて、もう何も付け加える言葉がない!)。
 

Azadi Recordsが取り上げるアーティストはデリーだけに止まらない。
ムンバイを拠点に政治的かつ社会的なラップを発表してきたユニットSwadesiも、Azadi Recordsと契約し、独特のアートで知られる先住民族ワールリーの立場を代弁する楽曲を発表している。


ムンバイで、ガリーラップとは一線を画すメランコリックなスタイルの楽曲を発表していたTienasも、Azadi Recordsから新曲"Juju"を発表したばかり。


他にも、Azadi Recordsはムンバイ在住のタミル語ラッパーRak, バンガロールを拠点に活動する英語とカンナダ語のバイリンガルのフィーメイル・ラッパーSiri, 北東部メガラヤ州のR&BユニットForeign Flowzらと契約を交わしており、首都デリーにとどまらず、インド全土の才能を世に出してゆくようだ。



(これらの楽曲は、以前のリリースであり、Azadi Recordsからのリリースではない。彼らはAzadiとの契約にサインしているが、楽曲のリリースはまだのようだ)

数々の楽曲のリリースのみならず、Mo Joshiは、DivineとRaja Kumariがコラボレーションした楽曲"Roots"のリリックに対して「カースト差別的である」との指摘をするなど、単に音楽業界のいちレーベルに止まらないご意見番としての役割を果たしているようだ。

おそらくは、この楽曲のなかの'Untouchable with brahmin flow from the mother land'(母なる大地から生まれたバラモンのフロウには触れることすらできない)というリリックを、バラモン(ブラーミン)を最も清浄な存在とし、最下層の人々を汚れた「不可触民」(Untouchable)としてきた歴史を肯定的に捉えたものと解釈して批判したものと思われる。

アメリカで生まれ育ったフィーメイル・ラッパーのRaja Kumariは、自身のルーツを示すものとしてヒンドゥー的な表現をよく使用しているが、この指摘は、インドにおける新しい価値観であるべきヒップホップが、旧弊な価値観を引き継いでいることに対する、目ざとい批判と言ってよいだろう。

インドのヒップホップシーンの成長と変化は驚くべきスピードで進んでいる。
これまで、ソニーと契約しているDIVINEらの一部の有名ラッパーを除いて、ほとんどのラッパーが自主的に音源をリリースしていたが、『ガリーボーイ』の主演俳優ランヴィール・シンが'IncInk'レーベルの発足を発表したり、DIVINEもまた新レーベルGully Gang Entertainmentを設立するなど、才能あるアーティストのためのプラットフォームが急速に整いつつある。

そのなかでも、このAzadi Recordsはピュアなアティテュードと感性で、アンダーグラウンドのリアルなヒップホップを取り扱うことで、非常に大きな存在感を示している。
今後の活動がますます注目されるレーベルである。


その他参考とした記事:
https://allaboutmusic.in/mo-joshi/
http://www.thewildcity.com/features/6357-azadi-records-are-taking-no-prisoners
https://scroll.in/magazine/893004/indias-most-exciting-music-label-doesnt-want-to-produce-hits-and-thats-a-good-thing




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goshimasayama18 at 14:22|PermalinkComments(0)

2018年08月20日

日本や海外のアーティストも出演!Ziro Festival!

夏といえば、日本の音楽好きにとってはなんといってもフェスティバルのシーズン。
ご存知の通り、フジロック、サマソニ、ロックインジャパン、ライジングサンなどの大きいものから、地方色の強いかなり小規模なものまで、あらゆるフェスが毎週のように行われている。
海外でも、それぞれフジロックやサマソニの原型になったとされるイギリスのグラストンベリーやレディング/リーズなどは毎年夏に開催されているし、暑い時期に(今年はちょっと暑すぎだけど)外で音楽を聴く気持ちよさは万国共通ってことなんだろう。

さて、インドに音楽フェスがあるのかと聞かれたなら、答えはYes.
インドの大都市をツアーするロックフェスNH7 Weekenderや、リゾート地ゴアで行われるEDMのSunburn Festivalなど、かなり規模の大きいものがいくつもの都市でたくさん行われている。
大都市以外でも、独特の文化を持つ北東部(7 Sisters States)はフェス文化が盛んだし、砂漠が広がるラージャスタン州でも地域色の強い音楽フェスが開催されている。
これらのフェスにはインドの音楽ソフトの売り上げの大部分を占める映画音楽のシンガーは参加しておらず、海外のアーティストやこのブログで紹介しているようなインディーミュージシャンのみが出演しているのだが(ひと昔前まで日本のフェスにアイドル系が出なかったようなものだろう)、それでも多くのイベントが万単位の観客を集めており、インドの音楽カルチャーの成長ぶりが分かろうというものだ。
また、デリーではジャズの、ムンバイではブルースのフェスなどもあり、インドのフェス文化は我々が思っている以上に成熟している。

そんな中で、今回紹介するのは、インド北東部アルナーチャル・プラデーシュ州で毎年開催されているZiro Festival of Music.
これだけ多くのフェスが開催されるインドにおいて、最高とも究極とも評価されているフェスティバルだ。
まずは、アルナーチャル・プラデーシュ州の場所をおさらいしてみましょう。
arunachalmap
西をブータン、北を中国、東をミャンマーと接するインド北東部で最も北に位置するのがこのアルナーチャル・プラデーシュ州で、今回紹介するフェスの舞台となる村、Ziro Valleyはこんな感じのところだ。

zirofeature2
出典:https://www.beyondindiatravels.com/blog/ziro-town-travel-guide/より引用)

山あいのなんとものどかな農村地帯。
緑豊かな日本を思わせる風景は、インドでは北東部独特のものと言える。

apatani
(出典:http://www.dailymail.co.uk/news/article-3164012/The-worst-place-world-catch-cold-Indian-tribe-woman-nose-plugs-fitted-mark-adults.htmlより引用)

Ziro Valleyは少数民族「アパタニ」の人々が暮らす土地としても知られている。
アパタニの女性達は、美しさゆえに他の部族にさらわれてしまうことを防ぐために、あえて醜くするために「ノーズプラグ」を嵌める習慣があった(今ではお年寄りのみしかしていないようだが)。
なんだか凄いところでしょう。

このZiro Valley、行くまでが大変で、飛行機で行けるのはお隣アッサム州の州都グワハティまで。
そこから鉄道に7時間40分揺られると、アルナーチャル・プラデーシュ州のヒマラヤのふもとの町、Naharlagunに到着する。
そこからジープで山道を3時間半かけて、ようやくフェスの会場であるZiro Valleyに到着することができる(とwikipediaには書かれているが、実際にはもっと近くの空港を利用する方法もあるようだ)。
その前に、3カ国と国境を接したアルナーチャル・プラデーシュ州に行くためにはinner line permmitという特別な許可を得ることも必要だ。

そこまでして行く価値があるのかどうか、と思う向きも多いと思うが、映像を見れば、究極の大自然型フェス、Ziro Festivalの良さが必ず分かってもらえるはずだ。

まずはZiro Festival of Music 2018のプロモーション動画


2015年のフェスをまとめた動画


こちらは2017年のフェスの様子のドキュメンタリー


ね?行きたくなったでしょう。
単なる野外コンサートではなく、大自然の中の会場の雰囲気や地元の文化を含めて、そこでの体験全てが特別なものになるようなフェスティバルだということがお分かりいただけると思う。
自然の中のピースフルな雰囲気は、日本のフェスだとちょっと朝霧jamに似ていると言えるかもしれない。

主催者によると、4日間にわたり、2つのステージに40組のアーティストが出演し、6000人の観客を集めるという。
来場者はキャンプサイトのテントに泊まりながら、24時間フェスの環境を楽しむことができ、フェスの音楽だけでなく、この地域の文化や自然が楽しめるプログラムも用意されているようだ。
この酔狂の極みとも言える究極の辺境系フェスの主催者は、地元アルナーチャルのプロモーターBobby HanoとデリーのベテランインディーロックバンドMenwhopauseのメンバー。
2012年から国内外のアーティストを招聘してこのZiro Festival of Musicを開催しており、今ではインド随一のフェスとの評価を得ることも多くなっている。

出演者のラインナップはインド各地のインディーミュージシャンが中心だが、ロック、ラップ、レゲエなどのジャンルを問わず優れたアーティストが名を連ねている。
シーンの大御所もいれば、まだ無名ながらも先鋭的な音楽をプレイしているバンド、はたまた伝統音楽や民謡の歌手やプレイヤーまで、非常に多岐にわたるのが特長だ。
海外から招聘するアーティストもセンスが良く、いままでSonic YouthのLee Ranald and Steve Shelley、元Canのダモ鈴木らが出演している。
(ダモ鈴木については、ジャーマンロックバンドCanに在籍していた奇人ヴォーカリストというくらいの知識しかなかったのだが、改めて調べてみたら今更ながらすごく面白かった。 wikipediaの記載が充実しているので興味のある方は是非ご一読を)

今年は9月27日〜30日までの4日間にわたって開催され、先ごろ出演アーティスト第一弾が発表された。
ziro2018

なんと、日本のポストロックバンドのmonoがヘッドライナーとして出演することが発表された。
monoについてよく知らない人もいるかもしれないが、日本より海外での評価の高いバンドで、その活動についてはこちらのサイトに詳しい。

いくら海外でも人気とはいっても、インドでも知られてるの?と正直私もちょっと疑問に思っていたのだが、以前このサイトでもインタビューさせてもらったアルナーチャル在住のデスメタルバンドのメンバーは「畜生!あのmonoが地元に来るのにその時ケララに行ってて見れないんだ!なんてこった!」というコメントをしていたので、インドでもコアなロック好きの間では評価が高いようだ。
他の国外アーティストは、Madou Sidiki Diabateはマリのコラ奏者、MALOXはイスラエルのエクスペリメンタルなジャズ/ファンクバンド。


極上のナチュラル・チルアウトからスリリングなジャムまで、よくもまあ世界中の面白いアーティストを探してくるものだ。

インド国内のアーティストも、Prabh Deepのような今をときめくラッパーから、まだまだ無名だが面白い音楽性のバンド、伝統音楽のミュージシャンまで、インディーズシーンを網羅したラインナップだ。

なかでも、インド北東部からは、7sisters statesのうちトリプラ州を除く6つの州から1バンドずつが出演する充実ぶり。
ウエストベンガル州カリンポン出身の伝統音楽アーティストGauley Bhaiも北東部に極めて近いエリアの出身であることを考えると、さながら伝統音楽から現代音楽まで、北東部の音楽カルチャーの見本市のようなフェスでもあるというわけだ。
彼らの中でとくに興味深いアーティストをいくつか見てみると、こんな感じ。

アッサム州グワハティ出身のONE OK ROCKならぬWINE O'CLOCKはシンセ・ファンクとでも呼べばいいのか、なんとも形容不能なバンド。


メガラヤ州のBlue Temptationは外で聴いたら絶対に気持ちよさそうなレニー・クラヴィッツみたいなアメリカン・ロック。
 

ミゾラム州のAvora Recordsはオシャレなポップロック。
北東部なので顔立ちやファッションが日本人そっくりな女の子が出てくるので、聴いているうちにどこの国の音楽か分からなくなってくる。


いずれもインドらしからぬサウンドを鳴らしているバンドだが、ここに各地の伝統音楽のミュージシャンや海外のバンドたちが彩りを加えるというわけだ。
ヒッピー系ジャムバンドやEDMのようなフェスにつきもののジャンルをあえて呼ばず、面白さや多様性を重視したラインナップに主催者の心意気を感じる。

このZiro Festival、参加者した人の声を聞いても、時代や地理的な差異を超えてユニークなアーティストを大自然の中で聴ける、天国のようなフェスであるとのこと。
いつか行ってみたいんだよなあ。
どなたか行ったことがある方がいたらぜひ話を聴かせてください。

それでは今日はこのへんで! 


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