Nagaland
2020年09月25日
インドの秘境ナガランドの音楽やコスプレのオンライン・イベントのご案内!
彼の知人だという女性から詳細を教えてもらったところ、その企画は、'Magnum Opus'という名称で、ナガランドの'Act of Kindness'という団体が企画しているものだそうだ。
ナガランドといえば、かつては首狩りの風習があったことでも知られているミャンマーと国境を接するインド北東部の土地。
昨年公開された、田園地帯で歌われる美しい労働歌を描いたドキュメンタリー映画『あまねき旋律』でご存知の方も多いだろう。
もともとは異なる文化や言語を持つ16もの部族が暮らすナガランドは、住民のほとんどがキリスト教に改宗し、激しい独立運動を経て、そしてなぜか今では日本のアニメのコスプレが大流行しているという非常にユニークな土地だ。
ご覧の通り、ナガランドに住んでいるのは、典型的なインド人のイメージとは異なるモンゴロイド系の民族。
民族衣装を着ていなければ(とくにコスプレをしていると)日本人と間違えてしまいそうである。
今回案内のあったMagnum Opusは、10月25日の「世界芸術の日(International Artist Day)」に合わせて開催されているアートと音楽の祭典で、今年で6回目を数える。
絵画、写真、オリジナル楽曲、短編ストーリーなどと並んで、「コスプレ部門」があるというのがいかにもナガランドらしい。
すごいぞ、ナガランド。
こちらは2年前に行われたイベントの様子。
コスプレ部門の様子は1:30頃から出てくる。
インドの山奥の地方都市とは思えないコスプレっぷりに驚かされるだろう。
ナガランドの人々のジャパニーズ・カルチャーへの情熱には驚かされるばかり。
この動画は、先述の'Cosfest'を取り上げたドキュメンタリー映画だ。
38:20頃から、ナガの人々が日本への思いを告白する部分がある。
なんだか日本人として、こそばゆいような気持ちになるが、ここまで日本のカルチャーに情熱を傾けてくれている人々に、日本のコスプレイヤーの皆さんには是非とも応えてほしい。
エントリー費用はたったの150ルピー(215円程度)。
賞金もベスト・コスチューム賞が10,000ルピー(14,000円程度)、ベスト・パフォーマンスなどの各賞が5,000ルピー(7,000円程度)とごく少額だが、オンラインとはいえ、旅行でもなかなか行けない地域のイベントに参加することは、プライスレスな経験になること間違いなし。
コスプレ部門の審査員はNaga Anime Junkiesの優勝者らが務めるそうだ。
評価の対象は、コスチュームのディテールやパフォーマンス、オリジナリティーとのこと。
(詳細はこちら)
このRegistrationを10月15日までに以下のメールアドレス宛に送り、参加費をGoogle Payで振り込んだうえで、動画や画像を10月20日までに送ればエントリー完了。
(送付先のメールアドレスは、actofkindness.dimapur@gmail.com)
これらの部門の詳細や審査方法については、上記のメールアドレス宛に気軽に問い合わせてほしい。
それぞれ、ナガランドで活躍しているアーティストが審査を行うようだ。
コスプレイヤーをはじめ、アーティストのみなさんはコロナ禍でなかなかリアルでのイベントに参加できない日々が続いていると思うが、こんな時だからこそ、普段はなかなか接する機会がない地域の人々とも繋がってもらえたらと思う。
日本からの入賞者の知らせを聞くことを、心待ちにしています。
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2018年02月10日
秘境ナガランドの“We are the World”
今回紹介するのは「ナガランド」。
例のインド北東部7州「セブン・シスターズ」の中のひとつだ。
州の名前の「ナガ」とは、インドとミャンマーの国境付近に広がる山岳密林地帯に暮らす民族の名前で、ほんの数十年前まで、部族間の抗争や成人の儀式として「首狩り」の風習が行われていたことでも知られている。
かつてはインド、ミャンマーの両国を相手にした武装独立闘争が展開されており、ナガランド州もインド政府によって長らく外国人の訪問が制限されていた。
そのせいもあって、このあたりはごく最近まで『アジア最後の秘境』と呼ばれていた。
最近では、外国人観光客にも解放されていて、他のインド北東部の諸州と同じく非インド的な方向に発展してきているようで、北東部名物デスメタルバンド*もちゃんといる。
*クリックするとナガランドのデス/ブラックメタルバンドAguaresの曲、その名も“Storm of Satanic Cult”(中二っぽいかわいいタイトル!)が聴けます。
このナガランド、いつも「首狩り」とか「秘境」とか、見世物的好奇心を煽るフレーズでばかり紹介されているのが正直ちょっと気の毒だなって思うのと、そこに輪をかけてアタクシもデスメタルバンドなんかを紹介してしまったところなので、今回は、ナガランドの美しく調和した姿を感じられる曲を紹介させてもらいます。
本日紹介するのは、“Voice of Naga”というグループ(プロジェクト?)の“As One”という曲。
この曲、何が面白いって、あの“We are the World”のように、ナガランドに暮らすさまざまなコミュニティーが、それぞれ個性的な服装、歌唱方法、振り付けで1フレーズずつ歌ってるっていうこと。
「ナガ族」は、単一の文化のもとに暮らしているのではなく、異なる習俗、言語、服装を持った16の「部族」(Angami, Ao, Chakhesang, Chang, Kachari, Khiamniungan, Konyak, Kuki, Lotha, Phom, Pochury, Rengma, Sangtam, Sumi, Yimchunger, Zeme-Liangmai)の総称(と、英語版Wikipediaをはじめいろんなサイトに書いてあった)とされている。
この曲では、ナガの16部族にインド各州からの移民の人々なども加わって、個性を競いつつナガランドの調和が歌われており(多分)、この曲を聴けば、ナガランドでどんな人々が暮らしているかっていうのが自ずと分かるようになっているってわけだ。
モンゴロイド系のナガの人々のなかに、インドのいわゆるメインランドの人たち(テルグーとかパンジャーブとかビハールとか)が出てくると、歌い回しも顔立ちもぐっと濃くなるのがちょっと面白い。
あと、イスラム教徒の人たちに関しては、民族名や出身地ではなくて「ムスリム」とざっくりひとまとめにされているところも趣深い(歌い出しはやっぱり「アッラー」)。民族的な相違に関わらず、ムスリムはひとつのコミュニティーという扱いなのだろう。
それにしてもよくこれだけいろんな部族から歌の上手い人集めてきたよなあ。
この中からさらに選抜したメンバーで「India’s Got Talent」っていう全国区のオーディション番組にも出たようだ。
そのときに歌った曲は「Dil Hai Hindustani」。
これは「わたしの心はインド人」という意味で、「北東部出身のわてら、顔かたちや服装は一般的なインド人と違うかもしれへんけど、国を愛するれっきとしたインド人なんでっせ。忘れないでおくんなまし」といった意味もあっての選曲なのだろう。
今回紹介した「As One」、つっこみ所を探せば、なんかユニセフ的な毒気のなさっていうか善良さが鼻につくとか、最後の方で真ん中に座ってる政治家っぽいオッサンが気になるとか(みんなに慕われている立派な人なのかもしれないけど)、茶髪の女の子はきっとふだんは民族衣装着てないよね、とか(日本でいう花火大会の浴衣みたいなもんかね)、途中で出てくる部族のダンスの映像がなんか観光客向けのっぽいとか(別にいいけど)、映像を見ないで曲だけ聴くとけっこうつまらないとか(それを言っちゃあおしめえよ)いろいろあるのだけれども、コンセプトの面白さと完成度の高さは素直に素晴らしいと思う。
A.R.ラフマーンあたりに、インド全国版のこういう曲を作ってもらえたら、是非聴いてみたいなあ。
と思ったら、この曲の最後のクレジットの「アドバイザー」としてA.R.ラフマーンの名前が!やっぱり絡んでいたのか。
でもナガランドの文化を網羅しただけで曲の長さが8分超で、まさに長(なが)ランド(すいません)。
もしインド全国版を作ったら、いったいどれくらいの長さになるのか想像もつかないですなあ。
魅力の尽きぬインド北東部、今回はナガランドからのお届けでした。