NH7Weekender
2024年10月31日
2024年秋〜冬 インドの音楽フェス事情
日本ではフェスといえば夏の印象が強いけれど、インドではおもに秋〜冬が音楽フェスの季節。
12月から1月にかけてチェンナイで行われる古典音楽の祭典「チェンナイ・ミュージック・シーズン」のようなインドならではのフェスももちろんあるが、このブログでは今回も近年ますます盛り上がりを見せているヒップホップ/エレクトロニック/ロックなどのフェスを特集する。
この週末には、DIVINE率いるムンバイのクルー/レーベルのGully Gangが主催するその名もGULLY FESTが開催された。
ムンバイを中心にインドのヒップホップ全体に目配せしたかなり面白いラインナップが出演している。
初日の10月26日のヘッドライナーは、DIVINEとNetflix映画『ザ・ホワイトタイガー』の主題歌"Jungle Mantra"で共演したアメリカのPusha T.
USの人気ラッパーの一人ではあるが、2日間を通じて唯一の非インド系出演者となる。
インドで国内とUSのヒップホップリスナーがどれくらい重なるのか、興味深いところではあるが、なにしろインドなのでそのへんはあまり関係なく盛り上がるような気がする。
デリーのPrabh Deepはアーティスティックな音作りと深い声が特徴的なパンジャービー・シクのラッパー。
9月にリリースしたアルバム"DSP"も優れた作品だった。
Prabh Deep "8-FIGGAAH!"(feat. GD47)
Lisa Mishraはインド東部のオディア州にルーツを持つアメリカ人のシンガーソングライターで、映画のプレイバックシンガーとしても活躍するかたわら、BadshahやDIVINE、KR$NAらラッパーとの共演も多い。
男性ラッパー中心の出演者のなか、ヒップホップに近い部分を持ちつつもかなりポップな存在で、こういうアーティストをちゃんと入れてくるところに主催者のセンスを感じる。
他には地元ムンバイのGravityやThe Siege、ケーララのVedanといったラッパーが出演し、初日はインドのヒップホップの地域的多様性が感じられるラインナップとなっている。
一方で、2日目は地元ムンバイ(あるいは広くマハーラーシュトラ州)出身者を中心に固めたラインナップだ。
トリはもちろんDIVINE.
ヘッドライナーの次に名前が挙がっているSambataはプネー出身。昨年Gully Gangとも関わりの深いDef Jam Indiaからデビューアルバムをリリースした注目のマラーティー語/ヒンディー語ラッパーだ。
DIVINE feat. Armani White "Baazigar"
Sambata & Riar Saab "Hoodlife"
ターバンを巻いてないほうがSambata.
Public Enemy、2Pac、Kendrick Lamerらをフェイバリットに挙げているブーンバップ的なセンスと現代的な感覚をあわせ持ったラッパー。
ここにめきめき人気を上げつつあるYashraj、ケニア出身のBobkat率いるレゲエバンドBombay Bassment、ビートボクサーBeatrawとD-Cypherなどの地元勢が集結し、北東部出身のフィメール・ラッパーRebleが新鮮な風を吹き込んでいる。
インドそしてムンバイのヒップホップの層の厚さが存分に感じられるフェスと言えるだろう。
9月にはDIVINEはじめGully Gang勢との共演も多いビートメーカー/DJのKaran Kanchanが主宰するビートメーカー集団Neckwreck CrewによるフェスWreckfest '24が開催されている。
ヘヴィなトラップ/ベースミュージックをルーツに持ちながらも多様なサウンドをプロデュースするKaran Kanchanとポップなインド風EDM(印DM)のRitvizのB2Bがヘッドライナーに据えられ、デリーの若手注目ラッパーChaar Diwaariらが出演。
過去5年にわたってクラブ(antiSOCIALあたり)で開催されていたパーティーを今年は大会場のNESCO Hallで行い、めちゃくちゃ盛り上がったようだ。
12月14〜15日にプネーで行われるインド屈指の大規模音楽フェスNH WeekenderはイギリスのR&B系シンガーソングライターJorja Smithがヘッドライナー。
「洋楽勢」としては、他にアメリカのヒップホップDJのCraze、多彩な楽器やサンプリングを駆使してダンスミュージックを作り上げるイギリスのYoungrが出演する。
かつてはラム酒のバカルディが冠スポンサーについていたが、今はインドのウイスキーブランドMr. Dwell'sがスポンサーを務めているようで、やはり音楽フェスはインドの若い客層を取り入れたい酒造メーカーの格好のプロモーションの場にもなっているようだ。
今年のNH7 Weekenderで面白いのは、インディーズ的趣味の洋楽や国内勢に加えて、Amit Trivediや、超ベテランプレイバックシンガーのUsha Uthup(今76歳!)らの映画音楽勢がラインナップということ。
Amit Trivediは映画音楽とは別にCoke Studio Indiaで洋楽的センスと伝統音楽の融合を試みていたりもするし、Usha Uthupはかなり早くからロックやディスコやラテンポップ風の曲を歌っていたシンガーということで、インディーズ的な感覚でもクールな存在なのだろう。
他には、インドでは珍しいK-POPにインスパイアされたようなスタイルのガールズヴォーカルグループのW.I.S.H.もフォントは小さめだがラインナップされていて、インドでもジャンルの壁がどんどん低くなってきていることを感じる。
世界的に見ても、もともとオルタナティブ系のフェスとして始まったコーチェラやロラパルーザやボナルーなども今では軒並みメインストリーム化してきているし、日本のサマソニやRock In Japanは完全にポピュラー音楽全般を扱うフェスになってきている。
遠く離れたインドの音楽シーンも、こうした世界的なフェスの潮流と無縁ではないようだ。
NH7 Weekenderで日本人としてもうひとつ押さえておきたいのは、日本のインストメタルバンドASTERISMが出演するということ。
私が知る限りではこのフェスへの日本人アーティストの出演は初めてで、どんな爪あとを残してくれるのか楽しみだ。
ASTERISM "unravel"
ヒップホップ勢では、若手人気ラッパー/シンガーのKINGとRAFTARと若手注目株のChaar Diwaariが出演。
それぞれフォントの大きさは「中」と「小」で、音楽シーン全体で見た時の注目度が分かって興味深い。
NH7 Weekenderのような多彩なアーティストが出演するフェスが注目を集めている一方で、ジャンルを絞ったシブいフェスも行われている。
ブルース系のフェスティバルなども開催しているMahindra(自動車メーカー)主宰のMahindra Independence Rockはインドのハードロック/ヘヴィメタル系バンドが勢揃いしている。
エクストリーム系のメタルではなく、古式ゆかしいハードロック系の、それもかなりベテランのバンドが多数出演しているのがこのフェスの特徴で、トップに名前が書かれている13ADはなんと1977年から活動しているケーララ州のバンドだ(このフライヤーはアルファベット順なのでヘッドライナーというわけではないようだが)。
他にも、北東部ナガランド出身で日本でも根強いファンを持つメロディック・ハードロックのAbout Usや、昨年の単独来日公演も大盛況だったBloodywoodといった最近のバンドと並んで、Indus Creed(前身バンドRock Machineは1984年結成)、Motherjane(1996年結成)、Skrat(2006年結成)、Girish and the Chronicles(2009年結成)といった大御所も健在。
こういう年齢層高めのフェスも開かれるようになったところに、インドの音楽シーンの成熟を感じる。
他にジャンルを絞ったフェスとしては、ムンバイとベンガルールで先日開催されたK-Wave Festivalが挙げられる。
その名の通りK-POPのフェスで、もしJ-POPのフェスが行われたらJ-WAVEという名前になるんだろうか。
ExoのメンバーのSuhoとシンガーソングライターのHyeolyn(元SISTARというグループの一員)が出演し、こちらもY大いに盛り上がったようだ。
このブログでも何度も書いている通り、インド北東部もかなり面白いフェス(例えばZiro Festival )がたくさん開催されている要注目エリアだ。
北東部はインドの大部分とは異なる文化を持ち、欧米の宣教師が持ち込んだキリスト教の信者が多いためか、古くからロックなどの欧米の音楽が受容されてきた土地で、80年代や90年代の懐かしいアーティストがトリを務めるフェスがいくつも開催されている。
メガラヤ州のシロンで行われる「晩秋の桜祭り」Cherry Blossom Festivalでは、なんとあのBoney M.がヘッドライナーを務めている。
「あのBonny M.」と言って今どれくらいの人に伝わるのかちょっと不安だが、彼らは"Rasputin"などのヒット曲を持つドイツ出身のディスコポップバンドで、70〜80年代に世界的な人気を博した。
2日目のヘッドライナーには、かつてボリウッドのサウンドトラックにも参加していたことがあるR&BシンガーのAkonで、これもまたシブいところ呼ぶなあー、というラインナップだ。
QueenとKornのカバーバンドが出演するのも盛り上がりそうだし、日本のポップカルチャーの人気が高いインド北東部らしく、コスプレのイベントも行われる。
これはこれでかなり面白そうなフェスだ。
ちなみに同じメガラヤ州で11月末に行われるMe:Gong Festivalのトリは、あの"Final Countdown"のEuropeで、これまたシブすぎるラインナップだ。
まだだいぶ先の話になるが、来年3月にはインドで3回めとなるLollapaloozaが開催されることが発表されている。
トリはインドでは初めてのパフォーマンスとなるGreen Dayと、ポップシンガーのShawn Mendes.
他にもオルタナからダンス系までセンスの良いラインナップが並んでいて、インド人でもっともフォントが大きいのはHanumankind.
彼はベンガルールの通好みなラッパーだったが、"Big Dawgs"の世界的ヒットで一躍人気者となった。
デリーのベテランRaftaarとKR$NAよりも大きく名前が出ているのは、Lollapaloozaという洋楽系のフェスならではだろう。
他にインド国内からは、パンジャービーの覆面ラッパーTalwiinder, グジャラート語ラップのDhanji、元The Local TrainのフロントマンRaman Negi、シンガーソングライターのRaghav Meattleらが出演する。
各フェスのオーガナイザーたちはそれぞれにセンスが良くアンテナが高いので、フェスの出演者を片っ端からチェックすると、かなり効率よく面白いアーティストを探すことができたりもする。
今回の記事はかなり盛りだくさんな内容になってしまったが、じつはこれでも結構厳選した情報を載せているつもりで、書ききれていないフェスがまだたくさんある。
ジャンル、国籍、世代といった障壁や、メジャーとインディーの垣根を乗り越えてますます盛り上がっているインドのフェス事情については、また改めて紹介する機会を持ちたい。
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2023年10月07日
フェスでも躍進!在外南アジア系アーティストたち
以前このブログでも特集したインド各地で開催される大規模フェス、'NH7 Weekender'の最新のラインナップが面白い。
各地で開催といっても、このフェスはサマソニみたいに同じ日程に複数会場で開催して同じアーティストが出演するわけではなく、ばらばらな日程でいろんなな都市で開催される。
出演するラインナップも各会場まったく別だったりするので、イベント名は品質を保証するブランドみたいなものなのだろう。
こういうタイプのフェスは日本にはないような気がする。
このNH7 Weekender、現時点では、12月1〜3日にかけてインド西部の学園都市プネーで開催されることがアナウンスされていて、出演アーティストは以下のフライヤーの通り。
以前は、Mark Ronson, Flying Lotus, Mogwai, Basement Jaxx, Steve Vai, Megadethといった世界的ビッグネーム(ジャンルはばらばらだが)をヘッドライナーに据えて、いつもこのブログで紹介しているようなインド国内のインディペンデント系アーティストが脇を固める、といった感じのラインナップが多かったのだが、今回はかなり様子が異なっている。
ヘッドライナーや大文字で紹介される位置に、在外南アジア系のアーティストが多くラインナップされているのだ。
前回の記事でも書いた通り、インドの音楽シーンはシームレスに在外インド人と繋がっている。
このプネーのNH7 Weekednerは、インドのみならず周辺諸国にゆかりのある在外アーティストが勢揃いで、世界の南アジア系ポピュラー音楽の祭典としても楽しめそうだ。
トップに名前が上がっているのはM.I.A.
このタミル系スリランカ人の両親のもとに生まれたUKのラッパー/シンガーのことは、ご存知の方もおおいだろう。
彼女の父はスリランカでは少数派であるタミル人の政治活動家で、母と共に11歳のときにイギリスに亡命。
M.I.A.というステージネームは、Missing In Actionの略で、戦闘中に行方不明になった父に向けたメッセージだとなかば伝説的に語られている(実際行方不明になったのは父ではなく従兄弟らしいが)。
彼女はダンスホールレゲエやヒップホップ、電子音楽を融合した斬新かつ強烈なサウンドを特徴としていて、’00年代にはミッシー・エリオットやマドンナと共演するなど、音楽業界内でも高い評価を受けた。
M.I.A. "Paper Planes"
2007年のアルバム"Kala"の収録曲"Paper Planes"は翌年の映画『スラムドッグ$ミリオネア』にも使用され、世界的なヒットを記録した。
YouTubeでの再生回数は2700万回を超えている。
歌詞では欧米社会で移民として暮らす途上国出身者の率直な心情が表現されており、こうした鋭く批評的なテーマ設定が、ポストヒップホップ的な文脈での評価にも繋がっていたように思う。
最近の曲ではSNS映えを意識する風潮を皮肉っぽく取り上げていて、一時期に比べて注目度は高くはないものの、このミュージックビデオは1年で130万回程の再生回数となっている。
M.I.A "Popular"
イギリス系ジャズグループのEzra Collectiveの次にラインナップされているJai Wolfはニューヨーク在住のバングラデシュ系電子音楽アーティスト。
2015年にリリースされたIndian Summerで注目を集め、アメリカのコーチェラ・フェスティバルへの出演も果たしている。
Jai Wolf "Indian Summer"
どこか柔らかいポップさのあるEDMサウンドが魅力のアーティストだ。
彼のスタイルは、ゴリゴリのダンスサウンドからポップな方向に舵を切ったインドのEDMリスナーとも共鳴することだろう。
続いてクレジットされているPriya Raguはスイス生まれのタミル系(M.I.A.同様にルーツはスリランカ)R&Bシンガー。
もうちょっと下に名前のあるCartel Madrasはカナダのカルガリーを拠点とする姉妹ラッパーデュオで、その名の通りチェンナイにルーツを持っている(つまり彼女たちもタミル系)。
彼女たちはここ数年の間に注目を集めるようになった新進南アジア系アーティストだ。
Priya Ragu "Good Love 2.0"
Cartel Madras "Goonda"
Cartel Madrasについては、姉妹ともに性的マイノリティであることをカミングアウトしているクィア・ラッパーだということにも触れておきたい。
インドでは性的マイノリティに対する差別や偏見も根強いが、こうした音楽フェスに来るような若者は概してリベラルな考え方を持っている。
在外インド系ミュージシャンは、これまでも音楽スタイルや価値観で国内の音楽シーンをリードしてきており、彼女たちもその系譜に連なる存在と考えることもできそうだ。
東京を舞台にした(という設定の)こんな曲もリリースしていた。
Cartel Madras and Tyris White "Lavender Nightz"
彼女たちはあのシアトルの名門レーベルSubpopと契約しており、これから世界的な注目を集めることもあるかもしれない。
在外インド系アーティストといえば、イギリスやカナダを拠点に活動するパンジャーブ系のラッパーやシンガーも多いが、今回は南のタミル系(スリランカ・ルーツを含む)が多いラインナップがなかなか面白い。
バングラーなどのパンジャービー音楽は今も北インドを中心に根強い人気を持っているが、パンジャーブ系住民が多くはないプネーという土地柄がアーティストの人選に影響しているのかもしれない。
意地悪な見方をすれば、南アジアにルーツを持つ人気のピークを過ぎたアーティストと世界的にはまだ無名な若手が、成熟してきたインドの音楽シーンに照準を合わせてきていると見えなくもないが、こうした傾向からどんな化学反応が起きるのか、楽しみでもある。
タミル系といえば、マレーシアあたりの在外タミル系音楽シーンも面白そうなので、近々特集してみたいです。
それでは今回はこのへんで。
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2022年11月13日
2022-23年 超充実!インド、冬のフェス情報!
日本で音楽フェスというと夏の印象があるが、インドのフェスティバル・シーズンは11〜2月頃。
インドのミュージックシーンでもコロナ禍は完全に過去のものとなり、この冬もさまざまなフェスが行われる。(日本でもほぼ通常通りフェスが戻ってきているのだから、当然と言えば当然の話だが)
'Happiest Music Festival'のキャッチコピーで知られるNH7 Weekenderは、インド最大規模の音楽フェスだ。
13年目となる今年は11月25〜27日にかけてプネーで開催。
3日間にわたって、5つのステージで国内外合わせた40以上のアーティストが出演する。
イギリスのフォークロックバンドLumineersとアメリカのラッパーJID、スウェーデンのファンクバンドDirty Loopsがヘッドライナーとして出演。
インド国内からは、Bloodywood(インド風メタル)、The F16s(ロック)、Parekh & Singh(ドリームポップ)らがラインナップされている。
当ブログで取り上げたアーティストでは、他にもEasy Wanderlings(ドリームポップ), Gouri & Aksha(ドリームポップ), Gutslit(デスメタル), Kraken(プログレッシブメタル/マスロック), Pacifist(パンク), Sanjeeta Bhattacharya(ポップ/R&B), SEZ & MVMNT(ヒップホップ), Shashwat Bulusu(オルタナティブ・ロック)らが出演予定(アルファベット順)で、ジャンルを問わず魅力的な顔ぶれが揃っている。
フライヤーのフォントの大きさからインド国内での彼らの位置付けが分かるのも面白い。
気になるのが、中くらいの字の2番目に書かれた、Berklee Indian Ensembleだ。
彼らはボストンの名門バークリー音楽大学を卒業したインド系ミュージシャンを中心とした古典音楽フュージョンのグループ。
フュージョンのなかでもかなり古典音楽の要素が強いスタイルだが、欧米風の音楽を好んで聴いているであろうインドの若者たちが、この逆輸入グループにどんなリアクションを示すのか、かなり興味がある。
例年NH7 Weekenderはいくつかの都市を巡回するサマソニ型(もとを辿ればレディング&リーズ型)のフェスだったのだが、今年は調べた限りではプネー以外での開催は不明。
過去に行われた北東部メガラヤ州の会場は非常に雰囲気があって素晴らしかった。
(以下のリンク参照)
また情報が入ったら紹介してみたい。
タール砂漠が広がるラージャスターンのかつての王宮、Alsisar Mahalで行われるMagnetic Fields Festivalは、異国情緒あふれる会場の魅力を存分に活かしたエレクトロニック系中心のフェスティバルで、今年は12月9〜11日にかけて開催される。
こちらは2022年の予告映像。
イギリスのフォークトロニカ・アーティストFour Tetプレゼンツのステージには、ニューヨークのAnthony Naples, UKのChroe Robinson、そしてインドからHamza Rahimtulaが出演。
他のステージでは、Ben UFO, Pearson Sound, Pangaeaらの海外勢を、Kohra, Chrms, Kiss Nukaらの国内のエレクトロニカ/ダンス系
アーティストたちが迎え撃つ。
非エレクトロニック系(主にバンド)のインド勢も面白く、T.ill Apes(ヒップホップバンド), Dohnraj(80年代風ロック), Ranj + Clifr(女性ヴォーカルR&B/ラップ)らのセンスの良い(日本でいうと往年の渋谷系的な)アクトが出演する。
2019年のダイジェスト映像を見れば、期待はさらに高まるばかりだ。
かつて出演したDaisuke Tanabe氏に会場の様子を聞いてみたところ、客層は富裕層が多く、バックステージのホスピタリティも欧米のフェスと全く遜色のなかったとのこと。
古くて新しいインドが味わえる、ぜひ足を運びたいフェスのひとつだ。
1月には、アメリカ発祥のオルタナティブ・ロックの祭典Lollapaloozaがインドで初めて開催される。
会場はムンバイの競馬場Mahalaxmi Race Course.
2日間にわたって4つのステージで40のアーティストが出演する。
こちらは開催が決定した時に作られたプロモーション動画。
メインアクトはおそらくImagine Dragonesと、今年のフジロックでもトリを務めたThe Strokes.
このフェスもインド勢のセレクトのセンスが非常によく、Prateek Kuhad(シンガーソングライター)、DIVINE(ラッパー)、Aswekeepsearching(ポストロック)、そしてここにもBloodywood(インド風メタル)、The F16s(ロック)、Easy Wanderlings(ドリームポップ)、T.ill Apes(ヒップホップバンド)が出演する。
やはりここでもフライヤーの記載順が興味深い。
北米ツアーから帰ってきたPrateek Kuhadやインディアン・ヒップホップの雄DIVINEは、アメリカのJapanese Breakfast(ややこしい表現だな)よりも前にラインナップされている。
(そのわりに、フジロックをはじめ世界中のフェスを荒らしまくっているBloodywoodがかなり後ろのほうなのは何故だろう?)
こちらもぜひチェックしてみたいフェスだ。
すでに開催済みのものでは、11月にMahindra Independence Rockというフェスが行われた。
こちらはインド国内のメタル勢を中心に据えたかなり汗臭い(褒め言葉)顔ぶれ。
この味わい深いプロモーション動画を見よ!
インドのメタル/ハードロック界の大御所Indus Creed, Pentagram, Parikramaと、そしてここにもBloodywoodが出演。
他にもケーララのAvialやThaikkudam Bridge、タミルのThe F16s(彼らも引く手数多!)などの中堅勢が脇を固め、このラインナップのなかではちょっと異色なポストロックのAswekeepsearchingが華を添える。
ロックよりもヒップホップやEDMが強い印象があるインドのインディーズシーンのなかで、ヘヴィメタルは安定した人気を保ってきたジャンルだ。
近年では、デスメタル等のエクストリーム・メタルや、テクニカルなプログレッシブ・メタル系のバンドが多い印象だが、このフェスではオールドスクール〜フュージョン(インド古典音楽との融合)系のバンドが目立っている。
年季の入ったメタルヘッズが集まりそうな感じだが、会場はどんな雰囲気だったのだろうか。
この時期のインドは他にも面白そうなフェスが目白押しで、以前も記事で紹介したベンガルールのEchoes of Earthは12月3〜4日に開催。
UKのThe Yussef Dayes Experience,スペインの Henry Saiz & The Bandといったジャムバンド、エレクトロニック系をはじめとする個性派アーティストが揃っている。
このフェスも会場の雰囲気が独特で、ぜひ一度生で体験してみたいと思っている。
年末にはEDM系のビッグフェスであるSunburnがゴアで開催される。
世界屈指のダンス系フェスティバルの名前に恥じず、今年もビッグネームが名前を連ねている。
かつては「世界で3番目のEDM系フェス」を謳っていたが、今年の告知動画によると、「アジア最大の音楽フェス」とのこと。
11月にはここ最近毎年のようにインドでプレイしているDJ SNAKEのインドツアーも行われ、インドでのEDM人気の高さはまだまだ続きそうだ。
インドの冬フェス、まだまだあるのだけど、今日はこのへんで。
本当はひとつひとつのフェスごと1本ずつ記事を書きたいくらいなのだが、あまりにもボリュームが多いので、まとめて紹介させてもらった。
こうしたビッグイベントをきっかけに、インドのインディペンデント・ミュージシャンたちにもぜひ注目が集まってほしいと思っている。
現地にいる方は、もし参加したらどんなだったかぜひ教えてください。
関連記事:
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2022年04月18日
インドに音楽フェスが帰ってきた!
春の訪れとともに、インドに音楽フェスが帰ってきた。
思えば二年前の今頃、インドは新型コロナウイルスによるロックダウンの真っ最中だった。
長かったコロナ禍は昨年5月ごろにピークに達し、多くの人が亡くなった。
とくにデリーの状況は深刻で、現地に家族が暮らしているインド人の知人も、何人もの親類を失ったと嘆いていた。
そして2022年、春。
世界はまだまだ新型コロナウイルスを克服したとは言えないが、それでもインドに音楽フェスが戻ってきた。
2022年3月2日にインド政府が新型コロナウイルス流行にともなう規制を全面的に撤廃。
春の訪れを告げる「色彩の祭」ホーリーでは、コロナ禍前から近年の定番となっているEDMに合わせて色のついた粉をぶっかけあうスタイルのフェスティバルがいくつも開催された。
その中でもっとも華やかだったのが、インド系アメリカ人のEDM界のスーパースター、KSHMRを招聘してバンガロール、デリー、ゴア、プネーの4都市で行われたSunburn Festivalだろう。
(2022年4月24日追記。Sunburn Holiのオフィシャル・アフタームービーがYouTubeにアップされたので貼っておく。この映像ではKSHMRがインド人シンガーArmaan MalikとK-PopシンガーのErik Namと共作した"Echo"が使われている)
ワクチン接種や健康状態の確認など、一応の感染防止対策は行われていたようだが、会場の様子は完全にコロナ前同様!
ゴアのステージには、3月にリリースした"Lion Heart"でコラボレーションしたDIVINEとの共演も実現して、大いに盛り上がったようだ。
そして、都市巡回型フェスティバルNH7 WEEKENDERも、この春から各地で再開。
プネー、ゴア、ハイデラーバード、ジャイプル、ベンガルール、チャンディーガル、チェンナイ、シロン、グワハティ、コルカタ、ムンバイの各地で久しぶりの音楽フェスが行なわれた(いくつかの会場は、これからの開催)。
下の動画は、プネー会場のアフタームービー。
こちらもすっげえ楽しそう。
出演は、Prateek Kuhad, Raja Kumari, Ritviz, Seedhe Maut, When Chai Met Toast, Kayan, Lifafaら、インドのインディーズ・シーンを代表するアーティストたち。
このNH7 Weekenderは、コロナ禍前なら海外のビッグネームも招聘されていたフェスだが、昨今の状況から、今年は2021年の日本のフジロック同様、国内のアーティストのみで開催された。
やむを得ない事情とはいえ、インドでも国内のインディーズ系アクトだけでこの規模のフェスが開催できるようになったと思うと感慨深いものがある。
(インドにおける「インディペンデント」の定義は難しいが、ひとまずは映画音楽を主戦場にしていないという意味に捉えてほしい)
2日間にわたって開催されたプネー会場は5つのステージで構成され、うち1つはコメディアンが出演するステージなので、音楽系は4つ。
両日ともトリの時間帯には2つのステージが同時並行で行われ、初日のトリはシンガーソングライターのPrateek KuhadとデリーのラップデュオSeedhe Maut, 2日目のトリは「印DM」のRitvizとシンガーのAnkur Tewari(彼だけはボリウッドでの活躍も目立つアーティストだが)が努めた。
初日のトリのPrateek Kuhadはオーディエンスも大合唱。
映画音楽じゃない歌でここまで盛り上がっているインド人を見るのは意外かもしれないが、インドの音楽マーケットは確実に新しい時代に突入しつつあることを感じさせられる。
ケーララのフォークポップバンド、When Chai Met Toastのステージも大いに盛り上がっている
渋いところでは、ムンバイMahindra Blues Festivalも今年は国内のアーティストのみで開催。
かつてはバディ・ガイやジョス・ストーンらのビッグネームが出演したこのフェスも今年は国内勢のみでの開催で、メガラヤ州シロンのSoulmateやコルカタのArinjoy Sarkarらがインドのブルース・シーンの底力を見せつけた。
インドのブルースシーンについては、この記事で詳しく紹介している。
最近のインドのいろいろな映像を見る限り、フェスだけでなく、コロナ前の日常が完全に戻ってきているようだ。
日本みたいにまだまだマスクをして気を遣いながら生活をするのが正しいのか、それともインドみたいに割り切って何事もなかったように暮らすのが正解なのか、絶対的な答えは誰にも出すことができないが、二年前の状況を思うと、インドの人たちがここまで思いっきり楽しめるようになったということになんだかぐっと来てしまう。
命を大事に、というが、英語のLifeは命だけじゃなくて人生や生活という意味もある。
感染防止ばかりに気を取られて、生活を楽しむことや一度きりの人生の貴重な時間を無為に過ごすのも考えものだと思う。
(ところで、インドの諸言語だと命と人生と生命は同じ言葉なのだろうか、違うのだろうか)
ここまで振り切って楽しむことができるインド人が正直ちょっとうらやましく思えてしまうのは私だけではないだろう。
ああー、余計なこと考えずに、音楽を思いっきり楽しみてえなあー。
インドの音楽フェス事情はこちらの記事もご参照ください。
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思えば二年前の今頃、インドは新型コロナウイルスによるロックダウンの真っ最中だった。
長かったコロナ禍は昨年5月ごろにピークに達し、多くの人が亡くなった。
とくにデリーの状況は深刻で、現地に家族が暮らしているインド人の知人も、何人もの親類を失ったと嘆いていた。
そして2022年、春。
世界はまだまだ新型コロナウイルスを克服したとは言えないが、それでもインドに音楽フェスが戻ってきた。
2022年3月2日にインド政府が新型コロナウイルス流行にともなう規制を全面的に撤廃。
春の訪れを告げる「色彩の祭」ホーリーでは、コロナ禍前から近年の定番となっているEDMに合わせて色のついた粉をぶっかけあうスタイルのフェスティバルがいくつも開催された。
その中でもっとも華やかだったのが、インド系アメリカ人のEDM界のスーパースター、KSHMRを招聘してバンガロール、デリー、ゴア、プネーの4都市で行われたSunburn Festivalだろう。
Throwback to colorful and flavorful Holi celebrations at @SunburnFestival with @KSHMRmusic across Bangalore, Delhi, Goa and Pune.#MakePlayWithFlavors pic.twitter.com/xZ4DyY7pFG
— Bira 91 (@bira91) March 31, 2022
(2022年4月24日追記。Sunburn Holiのオフィシャル・アフタームービーがYouTubeにアップされたので貼っておく。この映像ではKSHMRがインド人シンガーArmaan MalikとK-PopシンガーのErik Namと共作した"Echo"が使われている)
ワクチン接種や健康状態の確認など、一応の感染防止対策は行われていたようだが、会場の様子は完全にコロナ前同様!
ゴアのステージには、3月にリリースした"Lion Heart"でコラボレーションしたDIVINEとの共演も実現して、大いに盛り上がったようだ。
そして、都市巡回型フェスティバルNH7 WEEKENDERも、この春から各地で再開。
プネー、ゴア、ハイデラーバード、ジャイプル、ベンガルール、チャンディーガル、チェンナイ、シロン、グワハティ、コルカタ、ムンバイの各地で久しぶりの音楽フェスが行なわれた(いくつかの会場は、これからの開催)。
下の動画は、プネー会場のアフタームービー。
こちらもすっげえ楽しそう。
出演は、Prateek Kuhad, Raja Kumari, Ritviz, Seedhe Maut, When Chai Met Toast, Kayan, Lifafaら、インドのインディーズ・シーンを代表するアーティストたち。
このNH7 Weekenderは、コロナ禍前なら海外のビッグネームも招聘されていたフェスだが、昨今の状況から、今年は2021年の日本のフジロック同様、国内のアーティストのみで開催された。
やむを得ない事情とはいえ、インドでも国内のインディーズ系アクトだけでこの規模のフェスが開催できるようになったと思うと感慨深いものがある。
(インドにおける「インディペンデント」の定義は難しいが、ひとまずは映画音楽を主戦場にしていないという意味に捉えてほしい)
2日間にわたって開催されたプネー会場は5つのステージで構成され、うち1つはコメディアンが出演するステージなので、音楽系は4つ。
両日ともトリの時間帯には2つのステージが同時並行で行われ、初日のトリはシンガーソングライターのPrateek KuhadとデリーのラップデュオSeedhe Maut, 2日目のトリは「印DM」のRitvizとシンガーのAnkur Tewari(彼だけはボリウッドでの活躍も目立つアーティストだが)が努めた。
Last Saturday was a fun night at @NH7 . Thanks for singing along and making the night special ♥️ pic.twitter.com/pQ92dFl66S
— Prateek Kuhad (@prateekkuhad) April 2, 2022
初日のトリのPrateek Kuhadはオーディエンスも大合唱。
映画音楽じゃない歌でここまで盛り上がっているインド人を見るのは意外かもしれないが、インドの音楽マーケットは確実に新しい時代に突入しつつあることを感じさせられる。
ケーララのフォークポップバンド、When Chai Met Toastのステージも大いに盛り上がっている
渋いところでは、ムンバイMahindra Blues Festivalも今年は国内のアーティストのみで開催。
かつてはバディ・ガイやジョス・ストーンらのビッグネームが出演したこのフェスも今年は国内勢のみでの開催で、メガラヤ州シロンのSoulmateやコルカタのArinjoy Sarkarらがインドのブルース・シーンの底力を見せつけた。
インドのブルースシーンについては、この記事で詳しく紹介している。
最近のインドのいろいろな映像を見る限り、フェスだけでなく、コロナ前の日常が完全に戻ってきているようだ。
日本みたいにまだまだマスクをして気を遣いながら生活をするのが正しいのか、それともインドみたいに割り切って何事もなかったように暮らすのが正解なのか、絶対的な答えは誰にも出すことができないが、二年前の状況を思うと、インドの人たちがここまで思いっきり楽しめるようになったということになんだかぐっと来てしまう。
命を大事に、というが、英語のLifeは命だけじゃなくて人生や生活という意味もある。
感染防止ばかりに気を取られて、生活を楽しむことや一度きりの人生の貴重な時間を無為に過ごすのも考えものだと思う。
(ところで、インドの諸言語だと命と人生と生命は同じ言葉なのだろうか、違うのだろうか)
ここまで振り切って楽しむことができるインド人が正直ちょっとうらやましく思えてしまうのは私だけではないだろう。
ああー、余計なこと考えずに、音楽を思いっきり楽しみてえなあー。
インドの音楽フェス事情はこちらの記事もご参照ください。
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goshimasayama18 at 21:36|Permalink│Comments(0)
2019年08月31日
インド北東部のロック・フェスティバルは、懐かしのメタル天国だった!
先日、インド北東部アルナーチャル・プラデーシュ州の辺境で行われる究極の音楽フェス、Ziro Festival of Musicについて紹介した。
インド北東部は一般の旅行者があまり足を踏み入れることの少ないエリアではあるが、じつは、Ziro以外にも数多くのロック系フェスティバルが行われるフェス天国なのである。
まずはインド北東部の地理的なおさらいから。インド北東部は一般の旅行者があまり足を踏み入れることの少ないエリアではあるが、じつは、Ziro以外にも数多くのロック系フェスティバルが行われるフェス天国なのである。
この地図で赤く塗られている部分に注目してほしい。
インド主要部と北東部との間の、南からえぐられているように見える場所にはバングラデシュがあり、北から押しつぶされているように見える場所はブータン、そしてすぐ西にはネパールが位置している。
インド北東部とは、この地図に書かれた7つの州(7 Sisters States)に、ブータンとネパールに挟まれたシッキム州を含めた地域のことだ。
インド北東部には、インドの大部分とは異なりモンゴロイド系の民族が多く暮らしている。
北東部は典型的なインド文化(ヒンドゥー/イスラーム系統の文化)の影響が薄く、クリスチャンの割合が多いこともあって、欧米文化の受容が進んでおり、かなり早くからロックミュージックが人気となっていた地域でもある。
今回は、ここ北東部で行われる音楽フェスティバルが、予想のかなり斜め上をゆく実態だったので、その様子をお伝えしたい。
ほんの数十年前まで首狩りが行われていた秘境、ナガランド州では、毎年12月にHornbill International Music Festivalが開催されている。
これは、ナガランド独自の豊かな文化を継承し広めてゆくことを目的に開催されるHornbill Festivalの一部として行われるもので、毎年多くの観客を集めている。
ちなみにHornbillとは、ナガランドの象徴である大きなクチバシとツノのような突起を持つ鳥「サイチョウ」のこと。
このHornbill International Music Festivalは、地元のアーティストの演奏だけでなく、K-Popアイドルのライブ(3:52〜)や、なんと珍しいBlues Night(8:32〜)なども行われており、外国籍を含めた多彩なアーティストが出演している辺境らしからぬフェスだ。
他の州にも注目すべきフェスはある。
インド北東部最北端のアルナーチャル・プラデーシュ州Dambukでは、毎年12月にOrange Festival of Adventure & Musicが行われている。
このフェスは、「インドで最初のアドベンチャーと音楽の祭典」と言われており、一時休止していたものの2015年から再び開催されるようになった。
このイベントも、単なる音楽フェスではなく、地元文化の紹介や、さまざまなアウトドア体験なども行われる多彩な内容のものだ。
「アドベンチャーと音楽のフェスティバル」だけあって、ライブの模様の紹介は3:00頃から。
このOrange Festivalにも地元のバンドから海外勢まで、多彩なミュージシャンが出演して大いに盛り上がっているようだ。
「インドのロックの首都」と呼ばれるメガラヤ州のシロンでは、全国のさまざまな主要都市で開催されている音楽フェスのNH7 Weekenderの北東部版が行われている。
このNH7 Weekenderは、他の都市ではサマーソニックのような都市型フェスとして行われているが、ここシロンではフジロックのように山岳部の豊かな自然のなかで開催されている。
'The happiest music festival'のキャッチコピーの通り、こちらもかなり楽しそうな様子のフェスだ。
それぞれのフェスについてはまた改めて紹介しようと思っているのだが、今回注目したいのは、これらのフェスで招聘されている欧米のアーティストについてだ。
まずHornbill Festivalから見ていこう。
このフェスの2015年のヘッドライナーは、なんとジャーマン・メタルの代表的バンドHelloween!
メタル系に絞ったフェスでもないのに、Helloweenがトリを務めるっていうのはちょっとすごいことだ。
その前年には、ヴィニー・ムーア(マイケル・シェンカーが在籍していたことで有名なUFOの現リードギタリスト)を招聘しているというから、これまた驚かされる。
その前年には、ヴィニー・ムーア(マイケル・シェンカーが在籍していたことで有名なUFOの現リードギタリスト)を招聘しているというから、これまた驚かされる。
さらに、アルナーチャルのOrange Festivalでは、2016年には、元祖ネオクラシカル系速弾きギタリストの「王者」ことイングヴェイ・マルムスティーンを、2017年には元Poison、元Mr.Bigのギタリストのリッチー・コッツェンをトリに据えている。
北東部はそんなにメタル/ハードロック系ギタリストが好きなんだろうか。
それだけではない。
シロンのNH7 Weekenderでは、2015年にはアメリカの'スラッシュメタル四天王'のひとつメガデスを、2017年にこちらも天才ギタリストのスティーヴ・ヴァイをヘッドライナーにしているというから、もう筋金入りである。
シンコーミュージックの「ヤングギター」(メタル系ギタリストがよく掲載されているギター教則雑誌)が後援で、ウドー音楽事務所が仕切っているんじゃないかというラインナップだ。
フェス以外でインド北東部でのライブを行った海外のアーティストも強烈だ。
年代順にアーティスト名とライブを行った土地を書いてゆくと、
2004年
Firehouse(アメリカのポップなハードロックバンド):メガラヤ州シロン、ナガランド州ディマプル、ミゾラム州アイゾール
2007年
エリック・マーティン(Mr.Bigのヴォーカリスト):シロン、ディマプル
Scorpions(ドイツの大御所ハードロックバンド):シロン
2008年
White Lion(アメリカのメタルバンド):シロン
2009年
Mr.Big(アメリカの技巧派揃いのハードロックバンド):シロン、ディマプル
2012年
Firehouse(2004年に続いて):ディマプル、マニプル州インパール
Stryper(アメリカのクリスチャン・メタルバンド):ナガランド州ディマプル、同州コヒマ
2013年
Hoobastank(アメリカのロックバンド):シロン
みなさん、このバンドたちをご存知だろうか?
いずれも1980年代〜90年代に活躍した往年のメタルバンドで、ついてこれるのはアラフォーの元メタル好きだけなのではないかと思う。(唯一、Hoobastankだけは21世紀のバンド)
インド北東部の人たちは"Burrn!"(日本が誇るヘヴィメタル雑誌。欧米での人気に関わらず、日本での人気の高いバンドを中心に取り上げる)を熟読しているんじゃないかっていうラインナップだ。
っていうか、自分も高校生の頃にBurrn!を読んでなかったら分からない顔ぶればかり。
北東部のロックファンは、FirehouseやWhite Lionの曲をちゃんと知っていて、ライブで盛り上がれるのだろうか。
ライブで客席に聖書を投げることで有名な'クリスチャン・メタルバンド'Stryperが入っているのは、キリスト教徒が多い土地柄を反映しているものと思われ、2019年にはWhitecrossというまた別のアメリカのクリスチャン・メタルバンドもディマプルとシロンでライブを行っている。
興味深いのは、これらのバンドがムンバイやデリーといった大都市をツアーしたついでにインド北東部に来ているのではなく、むしろインド北東部をツアーするためだけにインドに来ている例がほとんどだということである。
FirehouseやStryperはインド主要部の大都市には目もくれずに北東部のみをツアーしているし、日本でも人気の高いMr.Bigも、ムンバイにもデリーにも寄らずに、バンガロールと北東部のみでライブを行っている。
つまり、北東部は、インドのなかでもそれだけ音楽の趣味が特殊ということなのだ。
最後に、北東部でのメタル系アーティストのライブの様子をお届けすることとしたい。
まずは、Hornbill FestivalでのHelloweenのライブ。
不安定なオーディエンス・ショットだが、その分観客の盛り上がりがダイレクトに伝わってくる。
ナガランドのメタルファンたちも『守護神伝 第二章』、聴き込んでるみたいだ。
別の動画だと、"I Want Out"で盛り上がっている様子も撮影されていて、インド中央政府から抑圧的な扱いをされ続けているナガの人々が、彼らの曲に自分たちの境遇を重ね合わせているのかもなあ、としみじみ思ったりもした。
続いてはアルナーチャル・プラデーシュ州のOrange Festivalでの王者イングヴェイのライブ。
こちらもかなりたくさんの人が集まって盛り上がっている。
へー、今キーボードの人がヴォーカル兼任なんだな。
どうでもいいけど、キーボードを弾きながら歌うメタルのヴォーカリストって初めて見た。
久しぶりに見た王者は一時期に比べてずいぶんシェイプアップしていて、ギタープレイも絶好調!
「インドのロックの首都」メガラヤ州シロンでのメガデスのライブも大盛り上がり!
Steve Vaiのライヴには、最近B'zのツアーメンバーとしても活躍しているインド出身の女性バカテクベーシスト、Mohini Deiがゲスト出演している。
ナガランド州ディマプルでのMr.Bigのライブから、"To Be With You"での大合唱の様子。
より知名度が落ちるはずのStryperでもこの盛り上がり!
1986年リリースのこの曲をリアルタイムで聴いているとは思えない若いお客さんが多いが、この人気はいったいどこからやってくるのだろう。
Firehouseのバラード"I Live My Life For You"もほとんどのオーディエンスはばっちり歌えるようだ。
Wikipediaによると、彼らは全米での人気が失速した後も、日本、タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア、シンガポールなどアジア諸国では高い人気を保っているそうなので、こうしたキャッチーな曲調が東アジア人の琴線に触れるのかもしれない。
MCのときの声色もジョン・ボンジョヴィそっくりなBon Giovi.
完コピ!これはこれで見て見たいかも。
女性コピーバンドのIron Maidensは演奏はいまいちだが、この盛り上がり。
実際にインドでは、Girish and ChroniclesやPerfect Strangersのような実力派バンドによる有名バンドのトリビュートイベント(要は、ひたすらカバー曲を演奏する)も頻繁に行われているのだが、やはり本場の欧米から来たバンドは本物っぽさが違うということなのだろう。
このあたりのロックとの距離感は、我々日本人にとってもなんとなく共感できるものだ。
インド北東部の人たちは"Burrn!"(日本が誇るヘヴィメタル雑誌。欧米での人気に関わらず、日本での人気の高いバンドを中心に取り上げる)を熟読しているんじゃないかっていうラインナップだ。
っていうか、自分も高校生の頃にBurrn!を読んでなかったら分からない顔ぶればかり。
北東部のロックファンは、FirehouseやWhite Lionの曲をちゃんと知っていて、ライブで盛り上がれるのだろうか。
ひょっとしたらインド北東部では伊藤政則(日本が誇るヘヴィメタル評論家)のラジオ番組が聴けるのかもしれない。
ライブで客席に聖書を投げることで有名な'クリスチャン・メタルバンド'Stryperが入っているのは、キリスト教徒が多い土地柄を反映しているものと思われ、2019年にはWhitecrossというまた別のアメリカのクリスチャン・メタルバンドもディマプルとシロンでライブを行っている。
興味深いのは、これらのバンドがムンバイやデリーといった大都市をツアーしたついでにインド北東部に来ているのではなく、むしろインド北東部をツアーするためだけにインドに来ている例がほとんどだということである。
FirehouseやStryperはインド主要部の大都市には目もくれずに北東部のみをツアーしているし、日本でも人気の高いMr.Bigも、ムンバイにもデリーにも寄らずに、バンガロールと北東部のみでライブを行っている。
つまり、北東部は、インドのなかでもそれだけ音楽の趣味が特殊ということなのだ。
メタルに関して言えば、インド主要部では、デスメタルのような、よりヘヴィなバンドが人気だが、インド北東部は日本同様に、メロディックでポップなメタルバンドが根強い人気のようで、モンゴロイド系民族としての共通点を感じさせられる。
こうした「旬を過ぎた」バンドが北東部のみを回るツアーをしている一方で、Iron MaidenやBon Joviのような超ビッグネームのバンドは、ムンバイなどの主要部の大都市だけをツアーしており、おそらくギャラやスケジュールの都合だと思うが、北東部には来てくれていない。
それにしても、既視感のある光景だ。
90年代のグランジ/オルタナティブブーム以降、欧米では人気のなくなったメタルバンドが、まだ人気を保っていた日本によくツアーに来ていたものだが、それと同じような現象が、いまインド北東部で起きているのだ。
かつて、日本でのみ人気のあった外国のバンドが'big in Japan'などと呼ばれて揶揄されていたが、それと同じようなことも起きているのかもしれない。
2018年のHornbill Festivalでは、韓国ではまだデビュー前のアイドルグループMONTがコンサートを行ったが、それはもう大変な歓迎っぷりと盛り上がりだった。
北東部の人たちは、国際的に有名かどうかにかかわらず、外国からくる華やかなアーティストにとにかく飢えているのだろう。
このへんも、往年の日本を思わせるような状況だ。
(よく知られているように、QueenやBon Jovi, Cheap Trickなどの世界的人気バンドは、最初は日本から人気に火がついた)
メタル以外の招聘アーティストもなかなかに香ばしい。
Hornbillでは2017年にドイツのディスコ・グループBonny M(「ラスプーチン」などのヒット曲で有名。彼らの「バハマ・ママ」は日本の一部の地域の盆踊りにも使われている)を呼んでいるし、Orange Festivalも同じ年にドイツの電子音楽グループTangerine Dreamを招聘している。
メタルではないが、2015年のHornbillではABBAのトリビュートバンドを呼んでいるのも面白い。
かつて、日本でのみ人気のあった外国のバンドが'big in Japan'などと呼ばれて揶揄されていたが、それと同じようなことも起きているのかもしれない。
2018年のHornbill Festivalでは、韓国ではまだデビュー前のアイドルグループMONTがコンサートを行ったが、それはもう大変な歓迎っぷりと盛り上がりだった。
北東部の人たちは、国際的に有名かどうかにかかわらず、外国からくる華やかなアーティストにとにかく飢えているのだろう。
このへんも、往年の日本を思わせるような状況だ。
(よく知られているように、QueenやBon Jovi, Cheap Trickなどの世界的人気バンドは、最初は日本から人気に火がついた)
メタル以外の招聘アーティストもなかなかに香ばしい。
Hornbillでは2017年にドイツのディスコ・グループBonny M(「ラスプーチン」などのヒット曲で有名。彼らの「バハマ・ママ」は日本の一部の地域の盆踊りにも使われている)を呼んでいるし、Orange Festivalも同じ年にドイツの電子音楽グループTangerine Dreamを招聘している。
メタルではないが、2015年のHornbillではABBAのトリビュートバンドを呼んでいるのも面白い。
こうした「旬を過ぎた」バンドが北東部のみを回るツアーをしている一方で、Iron MaidenやBon Joviのような超ビッグネームのバンドは、ムンバイなどの主要部の大都市だけをツアーしており、おそらくギャラやスケジュールの都合だと思うが、北東部には来てくれていない。
そのため、北東部の人たちは、代わりにわざわざ欧米からコピーバンドを呼んで、これまた大いに盛り上がっている。
Hornbill Festivalでは2014年にBon JoviのトリビュートバンドBon Gioviを、Orange Festivalでは2018年にメンバーが全員女性のIron MaidenのトリビュートバンドIron Maidensを呼んでいる。
Hornbill Festivalでは2014年にBon JoviのトリビュートバンドBon Gioviを、Orange Festivalでは2018年にメンバーが全員女性のIron MaidenのトリビュートバンドIron Maidensを呼んでいる。
最後に、北東部でのメタル系アーティストのライブの様子をお届けすることとしたい。
まずは、Hornbill FestivalでのHelloweenのライブ。
不安定なオーディエンス・ショットだが、その分観客の盛り上がりがダイレクトに伝わってくる。
ナガランドのメタルファンたちも『守護神伝 第二章』、聴き込んでるみたいだ。
別の動画だと、"I Want Out"で盛り上がっている様子も撮影されていて、インド中央政府から抑圧的な扱いをされ続けているナガの人々が、彼らの曲に自分たちの境遇を重ね合わせているのかもなあ、としみじみ思ったりもした。
続いてはアルナーチャル・プラデーシュ州のOrange Festivalでの王者イングヴェイのライブ。
こちらもかなりたくさんの人が集まって盛り上がっている。
へー、今キーボードの人がヴォーカル兼任なんだな。
どうでもいいけど、キーボードを弾きながら歌うメタルのヴォーカリストって初めて見た。
久しぶりに見た王者は一時期に比べてずいぶんシェイプアップしていて、ギタープレイも絶好調!
「インドのロックの首都」メガラヤ州シロンでのメガデスのライブも大盛り上がり!
Steve Vaiのライヴには、最近B'zのツアーメンバーとしても活躍しているインド出身の女性バカテクベーシスト、Mohini Deiがゲスト出演している。
ナガランド州ディマプルでのMr.Bigのライブから、"To Be With You"での大合唱の様子。
より知名度が落ちるはずのStryperでもこの盛り上がり!
1986年リリースのこの曲をリアルタイムで聴いているとは思えない若いお客さんが多いが、この人気はいったいどこからやってくるのだろう。
Firehouseのバラード"I Live My Life For You"もほとんどのオーディエンスはばっちり歌えるようだ。
Wikipediaによると、彼らは全米での人気が失速した後も、日本、タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア、シンガポールなどアジア諸国では高い人気を保っているそうなので、こうしたキャッチーな曲調が東アジア人の琴線に触れるのかもしれない。
MCのときの声色もジョン・ボンジョヴィそっくりなBon Giovi.
完コピ!これはこれで見て見たいかも。
女性コピーバンドのIron Maidensは演奏はいまいちだが、この盛り上がり。
実際にインドでは、Girish and ChroniclesやPerfect Strangersのような実力派バンドによる有名バンドのトリビュートイベント(要は、ひたすらカバー曲を演奏する)も頻繁に行われているのだが、やはり本場の欧米から来たバンドは本物っぽさが違うということなのだろう。
このあたりのロックとの距離感は、我々日本人にとってもなんとなく共感できるものだ。
インド北東部、やっぱりものすごく面白い。
それではみなさんまた来週。
それではみなさんまた来週。
See ya!
(高校生のころ聴いていた伊藤政則のラジオはいつもこんなふうに締められていたのを思い出したもので、つい)
(この後、2019.9.14加筆)
続きを読むgoshimasayama18 at 12:41|Permalink│Comments(0)
2019年04月09日
ただただ上質で心地よいメロディーとハーモニー! Easy Wanderlings
インドっぽいサウンドやテーマのミュージシャンを紹介することが多いこのブログだが、インドには、インドらしさの全くない無国籍でオシャレなサウンドを追求しているアーティストもたくさんいる。
しかしながら、彼らの音楽を欧米のトップミュージシャンたちと比較すると、まだまだ匹敵するクオリティーのものは少ないのもまた事実。
結果的に、インドらしさのある音楽のほうが、日本に住む我々から見るとユニークだったりかっこよかったりするので、どうしても紹介するアーティストの多くがインドっぽい要素を持つ人たちになってしまうのだ。
そんな中、今回紹介するアーティストは、インドらしさ皆無にして、同時に素晴らしく質の高いポップミュージックを作っている。
そのバンドの名前は、Easy Wanderlings.
バンドのFacebookによると、マハーラーシュトラ州の学園都市プネーを拠点に活動するドリームポップ/インディー/ソウルバンドとある。
さっそくその音楽を聴いてみよう。
彼らが2017年にリリースしたアルバム"As Written in the Stars"から、"Enjoy It While It Lasts"
どうだろう。
まるで淡い水彩画のような美しい音楽。
シンプルなようでいてじつに緻密に、必要な音が必要な場所に、過剰な主張をせずに置かれている。
同じアルバムから"Dream To Keep Us Going".
このビデオは、彼らの地元プネーで行われたNH7 Weekender Festivalのドキュメンタリーを兼ねた作りになっている。
静かなイントロから温かい音色のエレキギターのフレーズが始まり、男女のヴォーカルの掛け合いやハーモニーが続くドラマティックな構成の曲だが、聴き心地はあくまでもメロウでソフト。
音が余計な邪魔をしない、居心地の良いカフェのような音楽だ。
彼らは、自分たちの音楽を「1日の仕事を終えた後のような、日曜日にのんびりと窓の外を眺めているような、あるいは真夜中の散歩をしているときのような気分を作るもの」と語っているが、まさにそんな時間に聴くのにぴったりのすばらしいサウンドだ。
私も最近は、帰りに一駅分夜道を歩きながら聴いたり、車窓の風景をぼんやりと眺めながら聴いたりしているが、そうすると日常を流れる時間の心地よさがぐっと増すような、そんな不思議な魅力が彼らの音楽にはある。
Easy Wanderlingsの音楽を紹介する記事には、ソウルフル、ドリーミー、ソフト、ポップといった言葉が並ぶ。
彼らの音楽はインドでも高い評価を得ていて、まだ活動開始後間もないにも関わらず、VIMA Music AwardsのChill Song of the Yearや、Beehype Magazineの2017年ベストアルバムなど、数々の賞を受賞している。
この叙情的でありながらも押し付けがましさの全くない音楽には、 彼らの独特の哲学が反映されているようだ。
彼らは「音楽こそが主役であり、表現者が注目を集めるべきではない」という思想のもとに活動しているらしく、その哲学に関しては、Facebookのページにもメンバー名すら載せていないほどの徹底ぶりだ。
(同じようなコンセプトに基づいて作られた名盤といえば、イギリスのロックバンドTravisが2001年に発表した"Invisible Band"を思い出す。Travisのほうがサウンドはよりロックだが、聴き心地の良さの質感はEasy Wanderlingsともよく似ているように思う)
そんな彼らなので、ウェブ上で得られた情報は非常に少なかったのだが、どうやらEasy Wanderlingsはフルートやバイオリンを含めた8人組のバンドのようだ。
彼らは2015年にサンフランシスコでギターのSanyanthとベースのMalayによって結成され、現在はプネーを拠点に活動を続けているらしい。
ただ、コロンビアのボゴタに滞在していた時に作った曲や、海外を拠点にしているメンバーもいるという情報もあり、単にインドのバンドという一言では片付けられない一面もある。
そのボゴタで作ったという曲。
個人的であると同時に共感を覚えることができる歌詞は、彼らのサウンド同様に、エモーショナルだが、やわらかく、あたたかい。
さらにはアコーディオンの音色が印象的なこんな曲もある。
バラエティーに富んだ上質なポップミュージックを生み出すEasy Wanderingsとは、いったいどんなグループなのか。
彼らの結成の経緯について、音楽の秘密について、現在の活動について、メールでバンドの創設者Sanyanthに聞いてみた。
凡平「サンフランシスコでSanyanthとMalayでバンドを結成したと聞いたんですが、どんなふうに音楽を始めたんですか?」
Sanyanth「僕がサンフランシスコで社会起業論(social entrepreneurship)の修士課程にいた頃、Malayはインドにいて、Satyajit Ray Film and Television Instituteで音響を学んでいたんだ。その頃はミュージシャンになるつもりなんてなかったんだけど、サンフランシスコにいた最後の数ヶ月に、ちょっと曲を書いてみようかなと思って試してみた。そうしたらルームメイトがその曲を聴いて、これはリリースすべきだって言ったんだ。それからインドに戻って、ずっと親友だったMalayに会ったら、彼はこの曲を僕たちでレコーディングして世に出すべきだって言った。そういうわけで2015年の中頃にEasy Wanderlingsを結成したんだ。彼は僕にシンガーのPratika(女性ヴォーカル)を紹介してくれて、別の友達を通して他のメンバーもみんな集まって、音楽を作ってゆくことになったんだよ」
凡平「Easy Wanderlingsはバンドというよりも、理想の音楽を演奏するためのプロジェクトに近いと書かれている記事を読んだのですが、あなたたちは固定メンバーで活動するバンドですか、それともプロジェクト的なものですか?」
Sanyanth「はっきりとバンドだと言えるよ。ここ3年の間、メンバーは増え続けていて、今は8人の放浪者たちがいるんだ(註:Sanyanthはメンバーのことを「放浪者たち(wanderlings)」と呼んでいる)彼らは他のプロジェクトもやっているから、全員でパフォーマンスできないこともあるけど、できるだけ8人でステージに立てるようにしてる。たまには他のミュージシャンや友達とステージで共演することもあるよ。
これが今のメンバー8人だ。
凡平「ずいぶんいろんなタイプの曲を書いていますが、曲作りはどうやって?」
Sanyanth「単に人生経験をもとに曲を書いているんだ。会話したこととか、見たこととか。人生にはいろんなことがあるから、僕たちはいつもいろんなことを話しているし、音楽的にも特定の雰囲気にこだわるつもりはない。曲作りのプロセスは、だいたい僕が作曲して歌詞を書いて、それから残りの放浪者たちで演奏するんだ。みんなからのフィードバックをもとに、メンバーといっしょにいい感じになるまで一音づつ作っていくんだよ。
曲作りのインスピレーションは、注意を払ってさえいればどこにでもある。それは心の中でどう感じるかということとも関係がある。人生に夢中になって、興味のあることや好きなことをすればするほど、想像力を刺激する新鮮な気持ちでいられるよ。」
凡平「コロンビアのボゴタにいたと伺いましたが」
Sanyanth「うん。ボゴタには友達を訪ねに行ったんだ。それからしばらく学校で社会革新(social innovation)について教えたり、社会起業家と働いたりしていたよ」
凡平「プネー、チェンナイ、コペンハーゲン、バレンシアにも仲間がいると伺いました。今も演奏するために世界中から集まってくるのですか?」
Sanyanth「コペンハーゲンの友人Vilhelm Juhlerがプネーで学んでいた時に、一緒にステージに立ったり、アルバムで演奏してもらったりしたよ。キーボードのNitin MuralikrishnaはバレンシアのBerlkee College of Musicで音楽制作、テクノロジー、イノベーションの修士号を取ったんだ。アルバムをレコーディングのときは、彼のパートはそこでレコーディングして送ってもらったんだよ。今は彼はインドに戻ってきて、プネーのGrey Spark Audioっていうスタジオでチーフエンジニアとして働いている。面白いミュージシャンに出会ったら、いつも一緒にやってみて、彼らがテーブルに何をもたらすことができるのか、そしてそれが音楽にどんなスパイスを加えてくれるか試してみるんだ。本当にわくわくするよ。
僕たちはアートワークのためにも多くのアーティストとコラボレーションをしている。それから#iwandereasyっていう楽しみも始めた。インスタグラムで僕らとみんなのお気に入りのふらっとでかけている(wander)時間を共有するために、世界中の人たちに呼びかけているんだ。僕らのファンが送ってくれる美しい場所やすばらしい瞬間を見るのはすごく素敵なことだよ。」
(その様子は彼らのウェブサイトhttps://easywanderlings.com/%23iwandereasyで見ることができる)
凡平「アーティストではなく、音楽そのものにフォーカスする姿勢だそうですね。でも、あなたたちの美しい音楽を聴いたら、どんな人が作っているのか気になってしまうと思うんです」
Sanyanth「僕たちが音楽に焦点をあてたかったのは、みんなに音楽の質について判断してもらうべきだと考えたからなんだ。僕らのことがもっと知りたかったら、いつでもメールをくれたりライブを見にきたりして構わないよ。
日本にも近いうちに演奏しに行けたらいいなあ。ぜひバンドと一緒に行ってみたい国のひとつなんだよ。」
自分たちの存在よりも音楽そのものを重視する彼らは、決して頑固なわけではなく、純粋に音楽を大事にするアーティストたちだった。
彼らの音楽同様に興味深いのはそのバックグラウンドだ。
南アジア系の人々が海外で欧米の文化を取り入れ、グローバルなネットワークで作り出した音楽といえば、90年代には自身のルーツに根ざしたバングラ・ビートやエイジアン・アンダーグラウンドがあった。
それが2010年代も後半になると、インドのグローバル化を反映するかのように、インドのルーツから遠く離れた、こうした普遍的で非常に質の高いポップミュージックまでもが生み出されるようになったというわけだ。
個人的な感想だが、今はインディペンデントシーンで活動している彼らだが、その美しく映像的な音楽は、近年の垢抜けた作風のインド映画にもぴったりだと思う。
しかしながら、彼らの音楽を欧米のトップミュージシャンたちと比較すると、まだまだ匹敵するクオリティーのものは少ないのもまた事実。
結果的に、インドらしさのある音楽のほうが、日本に住む我々から見るとユニークだったりかっこよかったりするので、どうしても紹介するアーティストの多くがインドっぽい要素を持つ人たちになってしまうのだ。
そんな中、今回紹介するアーティストは、インドらしさ皆無にして、同時に素晴らしく質の高いポップミュージックを作っている。
そのバンドの名前は、Easy Wanderlings.
バンドのFacebookによると、マハーラーシュトラ州の学園都市プネーを拠点に活動するドリームポップ/インディー/ソウルバンドとある。
さっそくその音楽を聴いてみよう。
彼らが2017年にリリースしたアルバム"As Written in the Stars"から、"Enjoy It While It Lasts"
どうだろう。
まるで淡い水彩画のような美しい音楽。
シンプルなようでいてじつに緻密に、必要な音が必要な場所に、過剰な主張をせずに置かれている。
同じアルバムから"Dream To Keep Us Going".
このビデオは、彼らの地元プネーで行われたNH7 Weekender Festivalのドキュメンタリーを兼ねた作りになっている。
静かなイントロから温かい音色のエレキギターのフレーズが始まり、男女のヴォーカルの掛け合いやハーモニーが続くドラマティックな構成の曲だが、聴き心地はあくまでもメロウでソフト。
音が余計な邪魔をしない、居心地の良いカフェのような音楽だ。
彼らは、自分たちの音楽を「1日の仕事を終えた後のような、日曜日にのんびりと窓の外を眺めているような、あるいは真夜中の散歩をしているときのような気分を作るもの」と語っているが、まさにそんな時間に聴くのにぴったりのすばらしいサウンドだ。
私も最近は、帰りに一駅分夜道を歩きながら聴いたり、車窓の風景をぼんやりと眺めながら聴いたりしているが、そうすると日常を流れる時間の心地よさがぐっと増すような、そんな不思議な魅力が彼らの音楽にはある。
Easy Wanderlingsの音楽を紹介する記事には、ソウルフル、ドリーミー、ソフト、ポップといった言葉が並ぶ。
彼らの音楽はインドでも高い評価を得ていて、まだ活動開始後間もないにも関わらず、VIMA Music AwardsのChill Song of the Yearや、Beehype Magazineの2017年ベストアルバムなど、数々の賞を受賞している。
この叙情的でありながらも押し付けがましさの全くない音楽には、 彼らの独特の哲学が反映されているようだ。
彼らは「音楽こそが主役であり、表現者が注目を集めるべきではない」という思想のもとに活動しているらしく、その哲学に関しては、Facebookのページにもメンバー名すら載せていないほどの徹底ぶりだ。
(同じようなコンセプトに基づいて作られた名盤といえば、イギリスのロックバンドTravisが2001年に発表した"Invisible Band"を思い出す。Travisのほうがサウンドはよりロックだが、聴き心地の良さの質感はEasy Wanderlingsともよく似ているように思う)
そんな彼らなので、ウェブ上で得られた情報は非常に少なかったのだが、どうやらEasy Wanderlingsはフルートやバイオリンを含めた8人組のバンドのようだ。
彼らは2015年にサンフランシスコでギターのSanyanthとベースのMalayによって結成され、現在はプネーを拠点に活動を続けているらしい。
ただ、コロンビアのボゴタに滞在していた時に作った曲や、海外を拠点にしているメンバーもいるという情報もあり、単にインドのバンドという一言では片付けられない一面もある。
そのボゴタで作ったという曲。
I'm 25 tomorrow, should I be worried?
明日で僕は25歳になる 僕は悩むべきなんだだろうか
明日で僕は25歳になる 僕は悩むべきなんだだろうか
Half my life is gone past, incomplete resolutions
人生の半分が過ぎても、分からないことだってまだまだある
人生の半分が過ぎても、分からないことだってまだまだある
Tired of fighting myself, it's together from now on.
自分との戦いにはもううんざりだ これからは自分と仲良くやってゆくよ
自分との戦いにはもううんざりだ これからは自分と仲良くやってゆくよ
I’m getting off this treadmill and walk the stony road.
ランニングマシンを降りて、石造りの道を歩くんだ
ランニングマシンを降りて、石造りの道を歩くんだ
個人的であると同時に共感を覚えることができる歌詞は、彼らのサウンド同様に、エモーショナルだが、やわらかく、あたたかい。
さらにはアコーディオンの音色が印象的なこんな曲もある。
バラエティーに富んだ上質なポップミュージックを生み出すEasy Wanderingsとは、いったいどんなグループなのか。
彼らの結成の経緯について、音楽の秘密について、現在の活動について、メールでバンドの創設者Sanyanthに聞いてみた。
凡平「サンフランシスコでSanyanthとMalayでバンドを結成したと聞いたんですが、どんなふうに音楽を始めたんですか?」
Sanyanth「僕がサンフランシスコで社会起業論(social entrepreneurship)の修士課程にいた頃、Malayはインドにいて、Satyajit Ray Film and Television Instituteで音響を学んでいたんだ。その頃はミュージシャンになるつもりなんてなかったんだけど、サンフランシスコにいた最後の数ヶ月に、ちょっと曲を書いてみようかなと思って試してみた。そうしたらルームメイトがその曲を聴いて、これはリリースすべきだって言ったんだ。それからインドに戻って、ずっと親友だったMalayに会ったら、彼はこの曲を僕たちでレコーディングして世に出すべきだって言った。そういうわけで2015年の中頃にEasy Wanderlingsを結成したんだ。彼は僕にシンガーのPratika(女性ヴォーカル)を紹介してくれて、別の友達を通して他のメンバーもみんな集まって、音楽を作ってゆくことになったんだよ」
凡平「Easy Wanderlingsはバンドというよりも、理想の音楽を演奏するためのプロジェクトに近いと書かれている記事を読んだのですが、あなたたちは固定メンバーで活動するバンドですか、それともプロジェクト的なものですか?」
Sanyanth「はっきりとバンドだと言えるよ。ここ3年の間、メンバーは増え続けていて、今は8人の放浪者たちがいるんだ(註:Sanyanthはメンバーのことを「放浪者たち(wanderlings)」と呼んでいる)彼らは他のプロジェクトもやっているから、全員でパフォーマンスできないこともあるけど、できるだけ8人でステージに立てるようにしてる。たまには他のミュージシャンや友達とステージで共演することもあるよ。
これが今のメンバー8人だ。
Sanyanth Naroth – Composer/ Songwriter / Vocalist
Sharad Rao - Electric Guitar / Vocalist
Malay Vadalkar - Bass
Pratika Gopinath - Female Vocalist
Nitin Muralikrishna - Keyboard
Siya Ragade - Flute
Shardul Bapat- Violin
Abraham Zachariah - Drums 」凡平「ずいぶんいろんなタイプの曲を書いていますが、曲作りはどうやって?」
Sanyanth「単に人生経験をもとに曲を書いているんだ。会話したこととか、見たこととか。人生にはいろんなことがあるから、僕たちはいつもいろんなことを話しているし、音楽的にも特定の雰囲気にこだわるつもりはない。曲作りのプロセスは、だいたい僕が作曲して歌詞を書いて、それから残りの放浪者たちで演奏するんだ。みんなからのフィードバックをもとに、メンバーといっしょにいい感じになるまで一音づつ作っていくんだよ。
曲作りのインスピレーションは、注意を払ってさえいればどこにでもある。それは心の中でどう感じるかということとも関係がある。人生に夢中になって、興味のあることや好きなことをすればするほど、想像力を刺激する新鮮な気持ちでいられるよ。」
凡平「コロンビアのボゴタにいたと伺いましたが」
Sanyanth「うん。ボゴタには友達を訪ねに行ったんだ。それからしばらく学校で社会革新(social innovation)について教えたり、社会起業家と働いたりしていたよ」
凡平「プネー、チェンナイ、コペンハーゲン、バレンシアにも仲間がいると伺いました。今も演奏するために世界中から集まってくるのですか?」
Sanyanth「コペンハーゲンの友人Vilhelm Juhlerがプネーで学んでいた時に、一緒にステージに立ったり、アルバムで演奏してもらったりしたよ。キーボードのNitin MuralikrishnaはバレンシアのBerlkee College of Musicで音楽制作、テクノロジー、イノベーションの修士号を取ったんだ。アルバムをレコーディングのときは、彼のパートはそこでレコーディングして送ってもらったんだよ。今は彼はインドに戻ってきて、プネーのGrey Spark Audioっていうスタジオでチーフエンジニアとして働いている。面白いミュージシャンに出会ったら、いつも一緒にやってみて、彼らがテーブルに何をもたらすことができるのか、そしてそれが音楽にどんなスパイスを加えてくれるか試してみるんだ。本当にわくわくするよ。
僕たちはアートワークのためにも多くのアーティストとコラボレーションをしている。それから#iwandereasyっていう楽しみも始めた。インスタグラムで僕らとみんなのお気に入りのふらっとでかけている(wander)時間を共有するために、世界中の人たちに呼びかけているんだ。僕らのファンが送ってくれる美しい場所やすばらしい瞬間を見るのはすごく素敵なことだよ。」
(その様子は彼らのウェブサイトhttps://easywanderlings.com/%23iwandereasyで見ることができる)
凡平「アーティストではなく、音楽そのものにフォーカスする姿勢だそうですね。でも、あなたたちの美しい音楽を聴いたら、どんな人が作っているのか気になってしまうと思うんです」
Sanyanth「僕たちが音楽に焦点をあてたかったのは、みんなに音楽の質について判断してもらうべきだと考えたからなんだ。僕らのことがもっと知りたかったら、いつでもメールをくれたりライブを見にきたりして構わないよ。
日本にも近いうちに演奏しに行けたらいいなあ。ぜひバンドと一緒に行ってみたい国のひとつなんだよ。」
自分たちの存在よりも音楽そのものを重視する彼らは、決して頑固なわけではなく、純粋に音楽を大事にするアーティストたちだった。
彼らの音楽同様に興味深いのはそのバックグラウンドだ。
南アジア系の人々が海外で欧米の文化を取り入れ、グローバルなネットワークで作り出した音楽といえば、90年代には自身のルーツに根ざしたバングラ・ビートやエイジアン・アンダーグラウンドがあった。
それが2010年代も後半になると、インドのグローバル化を反映するかのように、インドのルーツから遠く離れた、こうした普遍的で非常に質の高いポップミュージックまでもが生み出されるようになったというわけだ。
個人的な感想だが、今はインディペンデントシーンで活動している彼らだが、その美しく映像的な音楽は、近年の垢抜けた作風のインド映画にもぴったりだと思う。
昨今インドでは映画音楽とインディーズシーンの距離がますます縮まっており、インドのエンターテインメントのメインストリームである映画業界からのオファーが来る可能性も高いのではないだろうか。
日本でのライブもぜひ実現してもらいたい。
インドのアーティストの来日公演は、まだまだ古典音楽やコアなジャンル(昨年来日したデスメタルバンドのGutslitとか)に限られているが、もうじき彼らのようなインド産の上質なポップアーティストが日本で見られる日が来るかもしれない。
まずはフジロックあたりで呼んでくれないかな。
苗場の自然の中で彼らの音楽が聴けたらさぞ気持ちいいと思うんだけど。
インドの音楽シーンはますます豊かに、面白くなってゆくばかりだ。
凡平自選の2018年度のおすすめ記事はこちらからどうぞ!
日本でのライブもぜひ実現してもらいたい。
インドのアーティストの来日公演は、まだまだ古典音楽やコアなジャンル(昨年来日したデスメタルバンドのGutslitとか)に限られているが、もうじき彼らのようなインド産の上質なポップアーティストが日本で見られる日が来るかもしれない。
まずはフジロックあたりで呼んでくれないかな。
苗場の自然の中で彼らの音楽が聴けたらさぞ気持ちいいと思うんだけど。
インドの音楽シーンはますます豊かに、面白くなってゆくばかりだ。
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「軽刈田 凡平(かるかった ぼんべい)のアッチャーインディア 読んだり聞いたり考えたり」
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goshimasayama18 at 20:57|Permalink│Comments(0)
2018年12月17日
インドの音楽シーンと企業文化! 酒とダンスとスニーカー、そしてデスメタルにG-Shock!
これまでこのブログでいくつかのインドのフェスを取り上げてきて、ひとつ気づいたことがある。
それは、様々なイベントで、お酒を扱うグローバル企業がスポンサーになっているケースがやたらと多いということ。
以前記事にした'Badardi NH7 Weekender'は、ラムで有名なバカルディが冠スポンサーについているし、先日紹介した超巨大EDMフェス'Sunburn'については、2007年の第1回はスミノフ、2008年はカールスバーグ、2009年にはインドのキングフィッシャー、2010年にはデンマークのビール会社Tuborgと、毎年酒造メーカーのスポンサーがついて実施されている。
他にも大規模フェスのVH1 Supersonicはバドワイザー、先日紹介したDJ NOBUが出演したムンバイの'Far Out Left'はスミノフとハイネケンがスポンサーについている。
というわけで、今回は酒造メーカーをはじめとするいろんな企業とインドの音楽シーンとの関わりについて紹介してみたいと思います。
それは、様々なイベントで、お酒を扱うグローバル企業がスポンサーになっているケースがやたらと多いということ。
以前記事にした'Badardi NH7 Weekender'は、ラムで有名なバカルディが冠スポンサーについているし、先日紹介した超巨大EDMフェス'Sunburn'については、2007年の第1回はスミノフ、2008年はカールスバーグ、2009年にはインドのキングフィッシャー、2010年にはデンマークのビール会社Tuborgと、毎年酒造メーカーのスポンサーがついて実施されている。
他にも大規模フェスのVH1 Supersonicはバドワイザー、先日紹介したDJ NOBUが出演したムンバイの'Far Out Left'はスミノフとハイネケンがスポンサーについている。
というわけで、今回は酒造メーカーをはじめとするいろんな企業とインドの音楽シーンとの関わりについて紹介してみたいと思います。
今日ではいろんなアルコール飲料の会社が音楽フェスをサポートするようになっているのだけれど、飲酒という行為はインド文化の中では長らく悪徳とされてきた。
長らくインドを支配していたイスラム教ではもちろんアルコールはご法度だし、人口の8割を占めるヒンドゥー教でも、飲酒は戒めるべきものという扱いだ。
今日でも、グジャラート州のような保守的な州(Dry Stateと呼ばれる)では公の場での飲酒が禁止されているし、それ以外の州でもヒンドゥー教の祝日などには酒類の提供が禁止されていたりもする(Dry Dayという)。
インドの保守的な社会では、飲酒は後ろめたいことであり、「酒好き」は不名誉な称号。
インドの酒飲みたちにとって、酒は味わうものではなく、手っ取り早く酔っ払って憂さを忘れるためのものであり、味はともかく度数の高い強い酒ほどありがたがられてきた。
そんなだからよけい酒飲みのイメージが悪くなるっていう悪循環とも言える状況がインド社会のアルコール事情だ。
ところがそんなインドでも、ここにきて少しずつアルコールのイメージが変わりつつある。
経済成長や欧米文化からの影響で、飲酒が肯定的でお洒落な文化に変わりつつあるのだ。
13億の人口(例え富裕層がそのうちの1割程度だとしても)を抱え、発展を続けるインドを世界の酒造会社が放っておくはずがない。
「酔うためのお酒」ではなく「飲むことがかっこいいお酒」へ。
新しい音楽を楽しめるセンスと経済的余裕のある若者たちが集まる音楽フェスは、お洒落で現代的な、新しいアルコールのイメージにぴったりなのだろう。
インドの音楽フェスへの酒造メーカーの手厚いサポートは、こうした背景が大きく影響している。
インド国内の酒造産業もこうした流れと無関係ではなく、日本のインド料理屋でもよく見かけるインド産ワインメーカーの'Sula'は、自分たちのワイナリーで独自のフェスティバル、その名も'Sula Fest'を開催している。
ご覧の通り、かなり本格的なフェスで、2018年はインドのエミネムことBrodha V、インディアン・ロックの大御所Indian Ocean、インド音楽とダンスミュージックの融合の第一人者Nucleyaなどの国内の人気アーティストに加え、海外のバンドも招聘して開催しており、相当な力の入れようであることが分かる。
お酒の会社以外で音楽シーンとの関わりが目立つのは、スポーツ関連の会社だ。
例えばこちらの'Suede Gully'という曲。
ムンバイのDivine、デリーのPrabh Deep、北東部メガラヤ州のKhasi Bloodz、タミルのMadurai Souljourと、まさにインドじゅうのヒップホップの実力派アーティストが集まったこの曲は、ご覧のようにPumaが全面的なバックアップをしている。
白シャツのボタンを上まで留めて、ターバン姿でアグレッシブなパフォーマンスを見せるPrabh Deepがかっこいい!
ラップ、ダンス、グラフィティとヒップホップの様々な要素が詰まったこのビデオは、Pumaのスニーカーを新しいカルチャーの象徴として印象づけるに十分なものだ。
続いて、ミュージックビデオではないがNikeのインド向けプロモーション動画。
インドのトップアスリート達が出演しているこのビデオからは、スポーツを単なる競技以上のカルチャーというかライフスタイルとして定着させようという意図が感じられる。
インドは人口のわりにオリンピックのような国際大会でめったに名前を聞かないことからも分かる通り、スポーツ文化の未成熟な国だが、ここにもまた伸びしろがあるということなのだろう。
'Da Da Ding'というこの楽曲は、インド人ではなくフランス人プロデューサーのGener8ionとアメリカ人ラッパーGizzleによるものだが、スポーツにもとづく新しいライフスタイルの一部として、音楽もまた印象的な使われ方をしているのが分かるだろう。
続いて紹介するのは、Prabh Deepと同じAzadi Recordsに所属するムンバイのラッパー、Tienasの曲、その名も'Fake Adidas'.
偽物のアディダスと安物の服しかないとラップするこの曲は、逆説的に本物のヒップホップのフィーリングを間違いなく持っている。
インドらしからぬセンスのトラックからも新しい世代のラッパーの矜持がうかがえるというものだ。
スニーカーがヒップホップの象徴的なファッションアイテムとしてインドでも浸透していることがよく分かる楽曲だ。
このRaja Kumariのビデオでも、彼女がAdidasを履きこなしているのが分かる(1:40あたりから)。
本場カリフォルニア育ちの彼女が履いているのはフェイクではなくもちろん本物。
ここまでヒップホップとスニーカーの関係を紹介してきたが、スニーカーメーカーがサポートしているのはヒップホップだけではない。
先日の記事で紹介した少年ナイフが出演したゴアのインディーロックフェスはVansが冠スポンサーとなったものだった。
インドで靴といえば、伝統的なもの以外は、長らくビジネススーツと合わせるドレスシューズかサンダルかという状況だった。
それが、ごらんの通り、ヒップホップなどの人気が高まってきたことに合わせて、スニーカーは単なる機能的な運動靴からお洒落アイテムとしての地位を獲得することになった。
ここでも、インドの経済成長と市場規模を見越したグローバル企業の戦略が働いていることは言うまでもないだろう。
フェスに酒造会社、ヒップホップにスニーカーの会社と、ここまではまあ想像の通りかもしれないが、個人的にすごく気に入っているのがコレ。
このブログでも紹介したDemonic Resurrectionや、先日来日公演を行ったGutslitも出演するエクストリームメタル系のフェス、Fireballの冠スポンサーは、なんと我らがカシオのG-Shock!
フェスに酒、ヒップホップにスニーカー、そしてデスメタルにG-Shock.
G-Shockの不必要なほどの頑丈さをファッションとして受け入れてもらうために選んだのがデスメタルというのがなかなかに味わい深い。
どんなに激しくモッシュしても壊れないってことだろうか。
このFireball、共演のZygnemaも2006年結成のムンバイのベテランバンドで、出演バンド数こそ少ないものの、北東部以外の実力派バンドが揃ったイベントだ。
そういえば、インドの航空会社のJet Airwaysが「シンガポールでのJudas Priestのライブのチケットが当たる!」という謎のキャンペーンをやっていたこともあった(ちなみのそのライブの前座はBabymetal)。
日本や欧米では邪悪で悪趣味なイメージのヘヴィーメタルが企業のキャンペーンに使われることはほとんどないが、インドではメタルもクールで先鋭的な音楽のひとつ、ということのようだ。
というわけで、今回はインドの音楽シーンと企業との関係についてざっと紹介してみました。
映画音楽に比べるとまだまだ非主流のロックやヒップホップとはいえ、これだけのサポートが各企業から得られているというのは、こうした音楽の愛好家がそれだけの経済力・購買力のある層と重なっているということの証左でもあるのだろう。
それでは!
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続きを読む今日でも、グジャラート州のような保守的な州(Dry Stateと呼ばれる)では公の場での飲酒が禁止されているし、それ以外の州でもヒンドゥー教の祝日などには酒類の提供が禁止されていたりもする(Dry Dayという)。
インドの保守的な社会では、飲酒は後ろめたいことであり、「酒好き」は不名誉な称号。
インドの酒飲みたちにとって、酒は味わうものではなく、手っ取り早く酔っ払って憂さを忘れるためのものであり、味はともかく度数の高い強い酒ほどありがたがられてきた。
そんなだからよけい酒飲みのイメージが悪くなるっていう悪循環とも言える状況がインド社会のアルコール事情だ。
ところがそんなインドでも、ここにきて少しずつアルコールのイメージが変わりつつある。
経済成長や欧米文化からの影響で、飲酒が肯定的でお洒落な文化に変わりつつあるのだ。
13億の人口(例え富裕層がそのうちの1割程度だとしても)を抱え、発展を続けるインドを世界の酒造会社が放っておくはずがない。
「酔うためのお酒」ではなく「飲むことがかっこいいお酒」へ。
新しい音楽を楽しめるセンスと経済的余裕のある若者たちが集まる音楽フェスは、お洒落で現代的な、新しいアルコールのイメージにぴったりなのだろう。
インドの音楽フェスへの酒造メーカーの手厚いサポートは、こうした背景が大きく影響している。
インド国内の酒造産業もこうした流れと無関係ではなく、日本のインド料理屋でもよく見かけるインド産ワインメーカーの'Sula'は、自分たちのワイナリーで独自のフェスティバル、その名も'Sula Fest'を開催している。
ご覧の通り、かなり本格的なフェスで、2018年はインドのエミネムことBrodha V、インディアン・ロックの大御所Indian Ocean、インド音楽とダンスミュージックの融合の第一人者Nucleyaなどの国内の人気アーティストに加え、海外のバンドも招聘して開催しており、相当な力の入れようであることが分かる。
お酒の会社以外で音楽シーンとの関わりが目立つのは、スポーツ関連の会社だ。
例えばこちらの'Suede Gully'という曲。
ムンバイのDivine、デリーのPrabh Deep、北東部メガラヤ州のKhasi Bloodz、タミルのMadurai Souljourと、まさにインドじゅうのヒップホップの実力派アーティストが集まったこの曲は、ご覧のようにPumaが全面的なバックアップをしている。
白シャツのボタンを上まで留めて、ターバン姿でアグレッシブなパフォーマンスを見せるPrabh Deepがかっこいい!
ラップ、ダンス、グラフィティとヒップホップの様々な要素が詰まったこのビデオは、Pumaのスニーカーを新しいカルチャーの象徴として印象づけるに十分なものだ。
続いて、ミュージックビデオではないがNikeのインド向けプロモーション動画。
インドのトップアスリート達が出演しているこのビデオからは、スポーツを単なる競技以上のカルチャーというかライフスタイルとして定着させようという意図が感じられる。
インドは人口のわりにオリンピックのような国際大会でめったに名前を聞かないことからも分かる通り、スポーツ文化の未成熟な国だが、ここにもまた伸びしろがあるということなのだろう。
'Da Da Ding'というこの楽曲は、インド人ではなくフランス人プロデューサーのGener8ionとアメリカ人ラッパーGizzleによるものだが、スポーツにもとづく新しいライフスタイルの一部として、音楽もまた印象的な使われ方をしているのが分かるだろう。
続いて紹介するのは、Prabh Deepと同じAzadi Recordsに所属するムンバイのラッパー、Tienasの曲、その名も'Fake Adidas'.
偽物のアディダスと安物の服しかないとラップするこの曲は、逆説的に本物のヒップホップのフィーリングを間違いなく持っている。
インドらしからぬセンスのトラックからも新しい世代のラッパーの矜持がうかがえるというものだ。
スニーカーがヒップホップの象徴的なファッションアイテムとしてインドでも浸透していることがよく分かる楽曲だ。
このRaja Kumariのビデオでも、彼女がAdidasを履きこなしているのが分かる(1:40あたりから)。
本場カリフォルニア育ちの彼女が履いているのはフェイクではなくもちろん本物。
ここまでヒップホップとスニーカーの関係を紹介してきたが、スニーカーメーカーがサポートしているのはヒップホップだけではない。
先日の記事で紹介した少年ナイフが出演したゴアのインディーロックフェスはVansが冠スポンサーとなったものだった。
インドで靴といえば、伝統的なもの以外は、長らくビジネススーツと合わせるドレスシューズかサンダルかという状況だった。
それが、ごらんの通り、ヒップホップなどの人気が高まってきたことに合わせて、スニーカーは単なる機能的な運動靴からお洒落アイテムとしての地位を獲得することになった。
ここでも、インドの経済成長と市場規模を見越したグローバル企業の戦略が働いていることは言うまでもないだろう。
フェスに酒造会社、ヒップホップにスニーカーの会社と、ここまではまあ想像の通りかもしれないが、個人的にすごく気に入っているのがコレ。
このブログでも紹介したDemonic Resurrectionや、先日来日公演を行ったGutslitも出演するエクストリームメタル系のフェス、Fireballの冠スポンサーは、なんと我らがカシオのG-Shock!
フェスに酒、ヒップホップにスニーカー、そしてデスメタルにG-Shock.
G-Shockの不必要なほどの頑丈さをファッションとして受け入れてもらうために選んだのがデスメタルというのがなかなかに味わい深い。
どんなに激しくモッシュしても壊れないってことだろうか。
このFireball、共演のZygnemaも2006年結成のムンバイのベテランバンドで、出演バンド数こそ少ないものの、北東部以外の実力派バンドが揃ったイベントだ。
そういえば、インドの航空会社のJet Airwaysが「シンガポールでのJudas Priestのライブのチケットが当たる!」という謎のキャンペーンをやっていたこともあった(ちなみのそのライブの前座はBabymetal)。
日本や欧米では邪悪で悪趣味なイメージのヘヴィーメタルが企業のキャンペーンに使われることはほとんどないが、インドではメタルもクールで先鋭的な音楽のひとつ、ということのようだ。
というわけで、今回はインドの音楽シーンと企業との関係についてざっと紹介してみました。
映画音楽に比べるとまだまだ非主流のロックやヒップホップとはいえ、これだけのサポートが各企業から得られているというのは、こうした音楽の愛好家がそれだけの経済力・購買力のある層と重なっているということの証左でもあるのだろう。
それでは!
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goshimasayama18 at 23:15|Permalink│Comments(2)
2018年09月06日
インドで最大のロックフェス!NH7 Weekender!
先日、あまりにも面白いネタだったので、インド辺境の超通好みなフェス、Ziro Festivalを紹介してしまったが、よく考えたらいきなりダモ鈴木が出演する山奥のフェスティバルを取り上げるより先に、これがインドの盛り上がってる大規模都市型フェスですよ、っていうのを紹介するべきだった。
というわけで、今回はインドの大都市を巡って開催される大型フェス、NH7 Weekenderを紹介します。
このNH7 Weekenderは、イベントプロモーターOnly Much Louder の代表、Vijay Nairがイギリスのグラストンベリーのような音楽イベントをインドでも開催したいと思ったことがきっかけで始まったフェスティバル。
第1回目は2010年にマハーラーシュトラ州プネーで開催され、そのときからグローバル洋酒企業のBacardiが冠スポンサーとなってサポートしている。
マハーラーシュトラ州はインド最大の都市ムンバイを擁する州で、プネーはムンバイから車や鉄道で4時間弱の距離にある学園都市。
学生や若者が多く、独自の音楽シーンもあるこの街は、インドでフェスを行うのにぴったりの場所だろう。
第1回は37組のアーティストが出演し、海外からはイギリスのポップロックバンドThe Magic NumbersとUKインディアンによるAsian Dub Fundation(フジロックでもおなじみ)が参加した。
その時の様子がこちら。
ちょっと戸惑いながらも盛り上がるオーディエンスが微笑ましい。
その後、毎年の開催ごとに規模を拡大してゆき、プネー以外にもデリー(郊外のノイダ)、バンガロール、コルカタ、シロンなどでも開催されるようになった。
インドを代表する都市に加え、ここでも何度もこのブログで紹介している独自の文化を持った「インド北東部」メガラヤ州の州都シロンが入っていることに、北東部の音楽カルチャーの強さをあらためて感じる。
これまでに参加した海外のアーティストは、主なものだけでMark Ronson、Mutemath、Flying Lotus、Mogwai、Basement Jaxx、Imogen Heap、Steve Vai、Megadethなど。
ジャンルも年代も非常に多様性に富んだ顔ぶれだ。
いわゆるワールドミュージック的なジャンルからも、Wailers、Rodrigo y Gabriela、Seun Kutiなどのツボを押さえたアーティストを招聘しており、さらにはTalvin SinghやTrilok Gurtu、Karsh Kaleといった海外のシーンでも活躍しているインド系アーティストも多数出演している。
もちろん、出演者の大半を占めるのはインドのアーティストで、このブログで今まで紹介してきた中でも、Su Real、Demonic Ressurection、Blackstratblues、Reggae Rajahs、Ska Vengers、Agam、Sandunes、Tejas、Rhythm Shaw、Divine、Parekh and Singh、Aditi Rameshら、多くの実力派アーティストたちがパフォーマンスした。
2017年にはコメディアンが出演するステージも設けられ、Kunal Raoも出演したようだ。
最近のフェスの様子はこんな感じ。
規模もぐっと大きくなって、オーディエンスの盛り上がりっぷりも板についてきた。
メガラヤ州シロンでは、同じイベントでも大きく雰囲気を変えて、自然の中でのビッグフェスとなる。
これ、インド版のフジロックだなあ!行きたい。。。
この様子を見る限り、インドの音楽シーンはいつまでたっても映画音楽の一強だとか言われているけれど、インディーズシーンも十分に盛り上がってるじゃないですか。
これはおそらく、日本で洋楽聴いている人があんまりいないとはいってもフジロックやサマソニのような洋楽系フェスには大勢人が集まる、みたいなのと似ている状況なんじゃないだろうか。
そう考えてみると、ドメスティックな商業的音楽シーンがメインストリームでありながらも、サブカル的シーンにも根強いファンがいる日本とインドの音楽シーンって、結構似ているような気もする。
インドにはまだまだ素晴らしいフェスティバルがたくさんあるので、また改めて紹介します!
それでは!
というわけで、今回はインドの大都市を巡って開催される大型フェス、NH7 Weekenderを紹介します。
このNH7 Weekenderは、イベントプロモーターOnly Much Louder の代表、Vijay Nairがイギリスのグラストンベリーのような音楽イベントをインドでも開催したいと思ったことがきっかけで始まったフェスティバル。
第1回目は2010年にマハーラーシュトラ州プネーで開催され、そのときからグローバル洋酒企業のBacardiが冠スポンサーとなってサポートしている。
マハーラーシュトラ州はインド最大の都市ムンバイを擁する州で、プネーはムンバイから車や鉄道で4時間弱の距離にある学園都市。
学生や若者が多く、独自の音楽シーンもあるこの街は、インドでフェスを行うのにぴったりの場所だろう。
第1回は37組のアーティストが出演し、海外からはイギリスのポップロックバンドThe Magic NumbersとUKインディアンによるAsian Dub Fundation(フジロックでもおなじみ)が参加した。
その時の様子がこちら。
ちょっと戸惑いながらも盛り上がるオーディエンスが微笑ましい。
その後、毎年の開催ごとに規模を拡大してゆき、プネー以外にもデリー(郊外のノイダ)、バンガロール、コルカタ、シロンなどでも開催されるようになった。
インドを代表する都市に加え、ここでも何度もこのブログで紹介している独自の文化を持った「インド北東部」メガラヤ州の州都シロンが入っていることに、北東部の音楽カルチャーの強さをあらためて感じる。
これまでに参加した海外のアーティストは、主なものだけでMark Ronson、Mutemath、Flying Lotus、Mogwai、Basement Jaxx、Imogen Heap、Steve Vai、Megadethなど。
ジャンルも年代も非常に多様性に富んだ顔ぶれだ。
いわゆるワールドミュージック的なジャンルからも、Wailers、Rodrigo y Gabriela、Seun Kutiなどのツボを押さえたアーティストを招聘しており、さらにはTalvin SinghやTrilok Gurtu、Karsh Kaleといった海外のシーンでも活躍しているインド系アーティストも多数出演している。
もちろん、出演者の大半を占めるのはインドのアーティストで、このブログで今まで紹介してきた中でも、Su Real、Demonic Ressurection、Blackstratblues、Reggae Rajahs、Ska Vengers、Agam、Sandunes、Tejas、Rhythm Shaw、Divine、Parekh and Singh、Aditi Rameshら、多くの実力派アーティストたちがパフォーマンスした。
2017年にはコメディアンが出演するステージも設けられ、Kunal Raoも出演したようだ。
最近のフェスの様子はこんな感じ。
規模もぐっと大きくなって、オーディエンスの盛り上がりっぷりも板についてきた。
メガラヤ州シロンでは、同じイベントでも大きく雰囲気を変えて、自然の中でのビッグフェスとなる。
これ、インド版のフジロックだなあ!行きたい。。。
この様子を見る限り、インドの音楽シーンはいつまでたっても映画音楽の一強だとか言われているけれど、インディーズシーンも十分に盛り上がってるじゃないですか。
これはおそらく、日本で洋楽聴いている人があんまりいないとはいってもフジロックやサマソニのような洋楽系フェスには大勢人が集まる、みたいなのと似ている状況なんじゃないだろうか。
そう考えてみると、ドメスティックな商業的音楽シーンがメインストリームでありながらも、サブカル的シーンにも根強いファンがいる日本とインドの音楽シーンって、結構似ているような気もする。
インドにはまだまだ素晴らしいフェスティバルがたくさんあるので、また改めて紹介します!
それでは!
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