HaikuLikeImagination

2019年04月06日

インドのマスロックバンドHaiku-Like Imaginationの楽曲に日本人ギタリストが参加!

以前、「日本語の名前を持つインドのアーティスト特集」で紹介したバンガロールを拠点に活動するエクスペリメンタル・マスロック/ポストハードコアバンドのHaiku-Like Imaginationがデビュー曲となる"Hey, Dynamics!"をRolling Stone Indiaのウェブサイトで独占公開した。
「ワタシ?キモチヨウカイ?俳句のような想像力?日本語の名前を持つインドのアーティストたち!」
スクリーンショット 2019-04-06 10.40.54
http://rollingstoneindia.com/exclusive-stream-haiku-like-imaginations-hyper-playful-hey-dynamics/


(2019.4.13追記 Rolling Stone Indiaでの先行公開を経てYoutubeにも音源がアップされていたので貼り付けておく)

これは近日発売予定のフルアルバム"Eat, Lead, Motherbuzzer"からの先行シングルということになるらしい。

マスロック(math-rock:変拍子や変則的なリズムを特徴とするポストハードコアの一ジャンル)特有の鋭角的なサウンドと複雑な構成の楽曲だが、ヘヴィーでテクニカルなだけでなく、ツインリードのリフや急に飛び出すポップなコーラスが強烈な印象を残す素晴らしい仕上がりだ。
もう一つ聴き逃せないのが、この曲でギターソロを弾いているのが日本のプログレッシブ・メタルバンドCyclamenのギタリスト高尾真之だということだ。
4:15頃から始まる美しいトーンのソロに注目!

高尾氏に参加の経緯を聞いてみたところ、バンドのメンバーから直接依頼があったということのようだ。
Haiku-Like Imaginationのメンバーは日本のマスロックをかなり掘り下げ聴いており、日本でCyclamenのライブを見たこともあるというから相当なものだ。
以前からインスタグラムを通して高尾氏のギタープレイへのリアクションもあったという。

そういえば、以前Haiku-Like Imaginationというバンド名の由来を聞くために彼らにコンタクトしたとき、ギタリストのSuchethから日本のマスロック系フェスティバルであるBahamas Festを見に来日する予定だと聞いていた。(彼らの不思議なバンド名の由来はこの記事から)
どうやらCyclamenのライブもBahamas Festで見たようで、それが今回のギターソロの依頼につながった模様。 
それにしても、海外から日本のマスロック系フェスを見るために来日するって、彼らがアーティストとしてだけではなく、ファンとしてもかなりハードコアな姿勢でマスロックに入れ込んでいることが分かる。
高尾氏曰く、ソロの依頼が来たときは直接の面識は無かったそうだが、ネットを介して音源のやりとりをしながらソロをレコーディングしていったとのこと。

この"Hey, Dynamics"のマスタリングはマスロック/ポストハードコアのジャンルで評価の高いカリフォルニアのDance Gavin DanceやソルトレークシティのEidolaなどを手がけたKris Crummet.

ゲスト参加したギタリスト高尾真之が在籍するCyclamenはもともとはヴォーカルの今西義人を中心にイギリスのレディングで結成されたバンドで、国際的な人気も高い。

こんな楽曲もやっている。

CyclamenがタイのシンガーStamp Apiwatをフィーチャーした"The Least".

話をHaiku-Like Imaginationに戻すと、彼らは2017年に結成され、この曲がレコーディング音源としては初めてのリリースだという新人バンドだが、新人にしてこの国際性。
このブログでも何度も書いている通り、コアなジャンルになればなるほど国境や国籍は全く意味をなさなくなる。
彼らについても、もはやインドのバンドだとか考えることにあまり意味はないのかもしれない。
以前来日したデスメタルバンドのGutslitのようにHaiku-Like Imaginationが来日公演をしたり、インドのフェスでライブしたmonoのようにCyclamenがインドでライブを行ったりということも十分にありうることなのだ。


(2019.4.15追記 ついにHaiku Like Imaginationのデビューアルバム"Eat Lead, Motherbuzzer"が全曲リリースとなった。こちらのBandcampから全曲再生&ダウンロード購入可能!奇妙で複雑で激しくて美しい、マスロック/ポストハードコアの名盤!)
https://haiku-likeimagination.bandcamp.com/releases


インドのこのジャンルのバンドとしては、日本文化からの影響を全面に出したデリーKrakenも活躍している。
 (彼らのことを紹介した記事はこちら「日本の文化に影響を受けたインド人アーティスト! ロックバンド編 Kraken」)

以前北東部アルナーチャル・プラデーシュ州のデスメタルミュージシャンTana Doniから紹介してもらった同郷のマスロックバンドSky Levelも先ごろデビューアルバムをリリースした。


こうした世界的にもメインストリームとは言えないコアなジャンルでも、レベルの高いバンドが各地にいるのがインドの音楽シーンの底力だ。
次回は、また別の日本との繋がりのあるミュージシャンの続報と、インディーミュージシャンの苦労について書いてみたいと思います。
それでは!



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凡平自選の2018年度のおすすめ記事はこちらからどうぞ! 

goshimasayama18 at 16:42|PermalinkComments(0)

2018年11月18日

ワタシ?キモチヨウカイ?俳句のような想像力?日本語の名前を持つインドのアーティストたち!

これまでにこのブログでは、スタジオジブリなどの日本文化に影響を受けたエレクトロニカ・アーティストのKomorebiや、日本のカルト映画「鉄男」の名を冠したトラックをリリースしたコルカタのテクノ・ユニットHybrid Protokol、日本文化への造詣が深すぎるロックバンドのKrakenを紹介してきた。
北東部ナガランドでは日本のアニメやコスプレが大人気だというのも先日書いた通りだ。
とはいえ、欧米文化や韓流アーティストに比べると、インドでは日本文化はまだまだマイナーな存在。
インドの音楽シーンを扱う媒体でも、欧米の人気アーティストやK-Popの話題はよく目にするが、日本の音楽シーンについてのニュースは全く見たことがない。
(ドラえもんのような子ども向けアニメはかなり人気があるようだが)
そんなインドにもかかわらず、またしても日本語のバンド名を持つ面白いアーティストを発見したので、今回は3組まとめて紹介します! 

まず紹介するのは、バンガロールのドラムンベースアーティスト、その名もWatashi.
ワタシ。
そう「私」だ。
なんという斬新なアーティスト名。
つい先ごろ大注目レーベルのNRTYAから発表したばかりの新曲、'In-A-Morato-Rium'を発表したばかりなのだが、Soundcloudの貼り付け方が分からないので、こちらから別のサイトに飛んで聞いてみてほしい。
https://soundcloud.com/nrtya/watashi-in-a-morato-rium

曲もかなりかっこいい!
こちらはバンガロールのクラブ、Kitty Koでの今年1月のDJの様子。
動画で見る限り、けっこうイケメンなWatashiなのだった(いや、だから、私じゃなくてWatashiのことです)。

このWatashiという(日本人にとっては)不思議なアーティスト名は、本人に聞いてみたところ、もともとは彼のメールアドレスであった'Watashi Wa Yogi San'から取ったものらしく、さすがに長くて覚えにくいので、'Watashi'に省略したとのこと。
子どもの頃にたくさんのアニメからの影響を受けたという'Watashi'.
早くフルアルバムが聴いてみたいアーティストの一人です。


続いて紹介するアーティストは、ムンバイ出身の5人組バンド、Kimochi Youkai.
自分たちの音楽をヒップホップ、ジャズ、R&Bと自称しているが、聴く限りではロックやレゲエやジャムバンド的な要素も感じられる音楽性だ。
彼らもSoundcloudにはまだこの1曲しかアップしていないが、なかなかの心地よいグルーヴを聴かせてくれている。
アメリカのヒップホップグループBlack Streetが1996年に発表した'No Diggity'のレゲエカバーを聴いてみてください。
https://soundcloud.com/user-186337827

ライブの様子はこちらから。

彼らのFacebookによると、Kimochi Youkaiは'feel good demons'という意味とのこと。
うーん、ちょっと惜しいかな(笑)
Kimochi Youkaiは、音楽を通じて人々をいい気持ちにさせることを唯一の目的としたグループだそうで、彼らが言いたいのは「気持ち(Kimochi)」じゃなくて「気持ちいい」なのかもしれない。
いずれにしても、彼らのサウンドを聴く限り、人々をいい気分にさせるっていう目的はほぼ達成されているように思える。
彼らもまたフルアルバムが待たれるアーティストだ。

最後に紹介するのは、KrakenPineapple Expressとも共演経験のあるバンド、Haiku Like Imagination.
「俳句のような想像力」とはこれいかに。
バンガロールのマスロック/ポストハードコアバンドである彼らのサウンドはこんな感じ!

これまたかっこいい!
彼らにバンド名の由来を聞いてみたところ、5拍子や7拍子といった、奇数の変拍子を使うことが多いマスロックを演奏しているので、五七五の「俳句」をバンド名に取り入れたとのこと。
なるほど!よく考えたなあ。
彼らはデビュー音源を現在作成中で、なんとその後は日本ツアーも企画しているとのこと。
またしてもなんとも楽しみなアーティストだ。

今回紹介した3組はいずれもまだ新人ミュージシャンではあるけれども、徐々にメディアの露出に取り上げられるようになってきた有望株。
そして3組とも名前こそ日本語だけど、音楽性は三者三様で、そして音楽面からはこれといって日本の影響を感じないのがまた不思議だ。 
日本語の響きが、英語でもインド風でもない、独特な雰囲気を醸し出しているのだろうか。

そういえば、90年代にイギリスにUrusei Yatsuraっていうバンドがいたのを思い出した。
確か彼らは著作権だかの問題で、Yatsuraと名前を変えさせられたうえに、大して売れることもなく解散してしまったように記憶している。
今回紹介した3組には、願わくば末長く活動してもらって、そしてできればここ日本で彼らのパフォーマンスが見てみたいものだ。 
がんばれよ!




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goshimasayama18 at 00:23|PermalinkComments(0)