EchoOfEarth
2022年11月13日
2022-23年 超充実!インド、冬のフェス情報!
日本で音楽フェスというと夏の印象があるが、インドのフェスティバル・シーズンは11〜2月頃。
インドのミュージックシーンでもコロナ禍は完全に過去のものとなり、この冬もさまざまなフェスが行われる。(日本でもほぼ通常通りフェスが戻ってきているのだから、当然と言えば当然の話だが)
'Happiest Music Festival'のキャッチコピーで知られるNH7 Weekenderは、インド最大規模の音楽フェスだ。
13年目となる今年は11月25〜27日にかけてプネーで開催。
3日間にわたって、5つのステージで国内外合わせた40以上のアーティストが出演する。
イギリスのフォークロックバンドLumineersとアメリカのラッパーJID、スウェーデンのファンクバンドDirty Loopsがヘッドライナーとして出演。
インド国内からは、Bloodywood(インド風メタル)、The F16s(ロック)、Parekh & Singh(ドリームポップ)らがラインナップされている。
当ブログで取り上げたアーティストでは、他にもEasy Wanderlings(ドリームポップ), Gouri & Aksha(ドリームポップ), Gutslit(デスメタル), Kraken(プログレッシブメタル/マスロック), Pacifist(パンク), Sanjeeta Bhattacharya(ポップ/R&B), SEZ & MVMNT(ヒップホップ), Shashwat Bulusu(オルタナティブ・ロック)らが出演予定(アルファベット順)で、ジャンルを問わず魅力的な顔ぶれが揃っている。
フライヤーのフォントの大きさからインド国内での彼らの位置付けが分かるのも面白い。

気になるのが、中くらいの字の2番目に書かれた、Berklee Indian Ensembleだ。
彼らはボストンの名門バークリー音楽大学を卒業したインド系ミュージシャンを中心とした古典音楽フュージョンのグループ。
フュージョンのなかでもかなり古典音楽の要素が強いスタイルだが、欧米風の音楽を好んで聴いているであろうインドの若者たちが、この逆輸入グループにどんなリアクションを示すのか、かなり興味がある。
例年NH7 Weekenderはいくつかの都市を巡回するサマソニ型(もとを辿ればレディング&リーズ型)のフェスだったのだが、今年は調べた限りではプネー以外での開催は不明。
過去に行われた北東部メガラヤ州の会場は非常に雰囲気があって素晴らしかった。
(以下のリンク参照)
また情報が入ったら紹介してみたい。
タール砂漠が広がるラージャスターンのかつての王宮、Alsisar Mahalで行われるMagnetic Fields Festivalは、異国情緒あふれる会場の魅力を存分に活かしたエレクトロニック系中心のフェスティバルで、今年は12月9〜11日にかけて開催される。
こちらは2022年の予告映像。
イギリスのフォークトロニカ・アーティストFour Tetプレゼンツのステージには、ニューヨークのAnthony Naples, UKのChroe Robinson、そしてインドからHamza Rahimtulaが出演。
他のステージでは、Ben UFO, Pearson Sound, Pangaeaらの海外勢を、Kohra, Chrms, Kiss Nukaらの国内のエレクトロニカ/ダンス系
アーティストたちが迎え撃つ。
非エレクトロニック系(主にバンド)のインド勢も面白く、T.ill Apes(ヒップホップバンド), Dohnraj(80年代風ロック), Ranj + Clifr(女性ヴォーカルR&B/ラップ)らのセンスの良い(日本でいうと往年の渋谷系的な)アクトが出演する。
2019年のダイジェスト映像を見れば、期待はさらに高まるばかりだ。
かつて出演したDaisuke Tanabe氏に会場の様子を聞いてみたところ、客層は富裕層が多く、バックステージのホスピタリティも欧米のフェスと全く遜色のなかったとのこと。
古くて新しいインドが味わえる、ぜひ足を運びたいフェスのひとつだ。
1月には、アメリカ発祥のオルタナティブ・ロックの祭典Lollapaloozaがインドで初めて開催される。
会場はムンバイの競馬場Mahalaxmi Race Course.
2日間にわたって4つのステージで40のアーティストが出演する。
こちらは開催が決定した時に作られたプロモーション動画。

メインアクトはおそらくImagine Dragonesと、今年のフジロックでもトリを務めたThe Strokes.
このフェスもインド勢のセレクトのセンスが非常によく、Prateek Kuhad(シンガーソングライター)、DIVINE(ラッパー)、Aswekeepsearching(ポストロック)、そしてここにもBloodywood(インド風メタル)、The F16s(ロック)、Easy Wanderlings(ドリームポップ)、T.ill Apes(ヒップホップバンド)が出演する。
やはりここでもフライヤーの記載順が興味深い。
北米ツアーから帰ってきたPrateek Kuhadやインディアン・ヒップホップの雄DIVINEは、アメリカのJapanese Breakfast(ややこしい表現だな)よりも前にラインナップされている。
(そのわりに、フジロックをはじめ世界中のフェスを荒らしまくっているBloodywoodがかなり後ろのほうなのは何故だろう?)
こちらもぜひチェックしてみたいフェスだ。
すでに開催済みのものでは、11月にMahindra Independence Rockというフェスが行われた。
こちらはインド国内のメタル勢を中心に据えたかなり汗臭い(褒め言葉)顔ぶれ。

この味わい深いプロモーション動画を見よ!
インドのメタル/ハードロック界の大御所Indus Creed, Pentagram, Parikramaと、そしてここにもBloodywoodが出演。
他にもケーララのAvialやThaikkudam Bridge、タミルのThe F16s(彼らも引く手数多!)などの中堅勢が脇を固め、このラインナップのなかではちょっと異色なポストロックのAswekeepsearchingが華を添える。
ロックよりもヒップホップやEDMが強い印象があるインドのインディーズシーンのなかで、ヘヴィメタルは安定した人気を保ってきたジャンルだ。
近年では、デスメタル等のエクストリーム・メタルや、テクニカルなプログレッシブ・メタル系のバンドが多い印象だが、このフェスではオールドスクール〜フュージョン(インド古典音楽との融合)系のバンドが目立っている。
年季の入ったメタルヘッズが集まりそうな感じだが、会場はどんな雰囲気だったのだろうか。
この時期のインドは他にも面白そうなフェスが目白押しで、以前も記事で紹介したベンガルールのEchoes of Earthは12月3〜4日に開催。
UKのThe Yussef Dayes Experience,スペインの Henry Saiz & The Bandといったジャムバンド、エレクトロニック系をはじめとする個性派アーティストが揃っている。
このフェスも会場の雰囲気が独特で、ぜひ一度生で体験してみたいと思っている。

年末にはEDM系のビッグフェスであるSunburnがゴアで開催される。
世界屈指のダンス系フェスティバルの名前に恥じず、今年もビッグネームが名前を連ねている。

かつては「世界で3番目のEDM系フェス」を謳っていたが、今年の告知動画によると、「アジア最大の音楽フェス」とのこと。
11月にはここ最近毎年のようにインドでプレイしているDJ SNAKEのインドツアーも行われ、インドでのEDM人気の高さはまだまだ続きそうだ。
インドの冬フェス、まだまだあるのだけど、今日はこのへんで。
本当はひとつひとつのフェスごと1本ずつ記事を書きたいくらいなのだが、あまりにもボリュームが多いので、まとめて紹介させてもらった。
こうしたビッグイベントをきっかけに、インドのインディペンデント・ミュージシャンたちにもぜひ注目が集まってほしいと思っている。
現地にいる方は、もし参加したらどんなだったかぜひ教えてください。
関連記事:
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goshimasayama18 at 20:14|Permalink│Comments(0)
2019年09月18日
バンガロールのエコ・フレンドリーなフェス Echoes of Earth
インドでは、経済成長と音楽の趣味の多様化にともない、ここ10年ほどで急速に音楽フェス文化が発展している。
ゴアで始まったSunburnのようにとにかく大規模で派手なもの、ラージャスターンのMagnetic Fieldsのように異国情緒を全面に押し出したセレブ路線のもの(この2つはEDM/エレクトロニック系のフェスティバル)から、ムンバイのControl ALT DeleteやアルナーチャルのZiro Festival(この2つはどちらかというとロック中心)のようにインディーであることにこだわったマニアックなものまで、インドでは様々なタイプの音楽フェスが楽しめる。
今回紹介するのは、バンガロール郊外で12月に行われる'Echoes of Earth'.
ゴアで始まったSunburnのようにとにかく大規模で派手なもの、ラージャスターンのMagnetic Fieldsのように異国情緒を全面に押し出したセレブ路線のもの(この2つはEDM/エレクトロニック系のフェスティバル)から、ムンバイのControl ALT DeleteやアルナーチャルのZiro Festival(この2つはどちらかというとロック中心)のようにインディーであることにこだわったマニアックなものまで、インドでは様々なタイプの音楽フェスが楽しめる。
今回紹介するのは、バンガロール郊外で12月に行われる'Echoes of Earth'.
音楽だけでなく、環境問題にも焦点を当てた、非常にユニークなフェスティバルだ。
Echoes of EarthのFacebookページによると、このフェスは「音楽と大地の祭典」であり、「持続的な生活が必要であるということへの気づきを促すためのフェスティバル」で、「インドで最も環境に優しいフェスであり続けている」という。
国内外40以上のアーティストが出演するこのフェスでは、運営側はリユース、リデュース、リサイクルを心がけ、痕跡を残さないことをポリシーにしているそうだ。
Echoes of EarthのFacebookページによると、このフェスは「音楽と大地の祭典」であり、「持続的な生活が必要であるということへの気づきを促すためのフェスティバル」で、「インドで最も環境に優しいフェスであり続けている」という。
国内外40以上のアーティストが出演するこのフェスでは、運営側はリユース、リデュース、リサイクルを心がけ、痕跡を残さないことをポリシーにしているそうだ。
このフェスティバルは、Swordfish Events & Entertainmentという地元のプロモーターと、Watson'sというパブが共同で運営しており、2016年以降、毎年11月または12月の2日間にわたって開催されている。
ご覧いただいて分かるとおり、アメリカの「バーニング・マン」のような、ヒッピームーブメントの流れをくむアート系のフェスティバルの雰囲気を持っている。
ステージや会場じゅうの巨大なモニュメントがとても印象的だが、これらのうち80%がリサイクル品や不要品によって作られているという。
また、会場全体でプラスチックの使用を禁止しており、ステージの電力もソーラーでまかなっているというから本格的だ。
出演アーティストはロック、ジャズ、エレクトロニック、ポップ、フュージョン、テクノ、伝統音楽と幅広く、音楽だけではなく、アートやローカル文化のショーケースや様々なワークショップなどが行われる、複合的なフェスのようだ。
2018年はフランスのマルチ・インストゥルメンタリストFKJを筆頭に、カナダのTennyson、イギリスのIglooghost、 LAのDJのAwesome Tapes of Africaといった海外勢に加えて、When Chai Met Toast、Ape Echoes、Aditi Ramesh、Duelist Inquiry、Malfnktionらの上質で先鋭的な国内アーティストも出演しており、毎年非常にセンスが良いラインナップを揃えている。

凡平自選の2018年度のおすすめ記事はこちらからどうぞ!
ジャンル別記事一覧!
ご覧いただいて分かるとおり、アメリカの「バーニング・マン」のような、ヒッピームーブメントの流れをくむアート系のフェスティバルの雰囲気を持っている。
ステージや会場じゅうの巨大なモニュメントがとても印象的だが、これらのうち80%がリサイクル品や不要品によって作られているという。
また、会場全体でプラスチックの使用を禁止しており、ステージの電力もソーラーでまかなっているというから本格的だ。
出演アーティストはロック、ジャズ、エレクトロニック、ポップ、フュージョン、テクノ、伝統音楽と幅広く、音楽だけではなく、アートやローカル文化のショーケースや様々なワークショップなどが行われる、複合的なフェスのようだ。
2018年はフランスのマルチ・インストゥルメンタリストFKJを筆頭に、カナダのTennyson、イギリスのIglooghost、 LAのDJのAwesome Tapes of Africaといった海外勢に加えて、When Chai Met Toast、Ape Echoes、Aditi Ramesh、Duelist Inquiry、Malfnktionらの上質で先鋭的な国内アーティストも出演しており、毎年非常にセンスが良いラインナップを揃えている。

2000年頃の、会場が苗場に移ったころのフジロック(もしくは朝霧JAM)のような、自然の中でピースフルな雰囲気が楽しめるフェスのようで、その点は以前紹介した北東部アルナーチャル・プラデーシュ州のZiro Festivalにも似ているかもしれない。
2018年のEcho of Earthから、インドのエレクトロニック・バンド、Duelist Inquiryのライブの様子。
2018年のアフタームービー。
どう見たって、これ、最高じゃないか。
2018年のEcho of Earthから、インドのエレクトロニック・バンド、Duelist Inquiryのライブの様子。
2018年のアフタームービー。
どう見たって、これ、最高じゃないか。
インドのフェス文化は、中産階級が趣味にお金を使えるようになったことで発展した典型的な消費文化という側面が強いが、それだけではなく、こうした社会への問題意識やメッセージ性を持ったイベントもあるというのは素晴らしい。
インドの場合、社会意識の高いインディーアーティストも多く、60年代の欧米のように、音楽がカウンターカルチャーとしての使命感をいまだに持っているようだ(世界中の他の地域と同様に、商業主義の音楽は思いっきり商業主義だが)。
インドの場合、社会意識の高いインディーアーティストも多く、60年代の欧米のように、音楽がカウンターカルチャーとしての使命感をいまだに持っているようだ(世界中の他の地域と同様に、商業主義の音楽は思いっきり商業主義だが)。
また、これまでにも紹介してきたように、例えば、ヒップホップやヘヴィメタルのように、ひとつのジャンルのもとに、さまざまな宗教やコミュニティの人々が、垣根を超えてシーンを形作っているというのもインドのシーンの美しいところだ。
資本主義の歯止めが効かなくなり、分断が進む今日のインド(というか、世界)の中で、音楽を通してひとつの理想的なコミュニティーが形成されていると言ったら、ロマンチストすぎるだろうか。
いずれにしても、フェスは、そうした新しい価値観を持つ人々の祝祭の場でもあるのだろう。
またひとつ、行きたいインドのフェスが増えた。
1年くらい休みを取って、インドじゅうのフェスを回ったりできたら最高なんだけどなあ。
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資本主義の歯止めが効かなくなり、分断が進む今日のインド(というか、世界)の中で、音楽を通してひとつの理想的なコミュニティーが形成されていると言ったら、ロマンチストすぎるだろうか。
いずれにしても、フェスは、そうした新しい価値観を持つ人々の祝祭の場でもあるのだろう。
またひとつ、行きたいインドのフェスが増えた。
1年くらい休みを取って、インドじゅうのフェスを回ったりできたら最高なんだけどなあ。
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