AvoraRecords
2019年09月24日
インド北東部にJ-Popバンドがいた!? ミゾラム州のAvora Records!
今回は久しぶりにインド北東部のバンドを紹介します。
これまで何度も紹介してきた通り、モンゴロイド系の民族が暮らす北東部は、キリスト教などの欧米から伝わった文化の影響が強く、インドのなかではかなり以前からロックミュージックが盛んだった土地だ。
今回紹介するのは、インド北東部のなかではいちばん南、ミャンマーとバングラデシュに挟まれたミゾラム州の州都Aizawl(アイゾール)出身のポップロックバンド、Avora Records.
彼らのことを知ったのは、昨年のZiro Festivalのラインナップでその名前を見かけた時だった。
それ以来、彼らの確かなポップセンスがずっと気になっていたのだ。
彼らが昨年リリースした"Sunday"という曲を聴いてみよう。
いきなり出てくる「日曜日」という漢字にまずびっくり。
さらに、少しチープでカラフルなミュージックビデオからは、どことなく90年代の日本のバンドのような雰囲気が感じられ、自然と親しみがわいてしまう。
北東部出身の彼らの見た目が我々日本人に似ていることもあって、彼らに対しては、「インド人だけどどこか日本のバンドっぽいバンド」という印象を持っていた。
それから約1年。
最近になって、Avora Recordsについて書かれたインドの記事を読んで、非常にびっくりすることがあった。
彼らは、なんと「J-Popバンド」だったというのだ。
例えば、インド北東部のカルチャーを紹介するウェブサイト、Roots And Leisureの記事にはこんなふうに書かれている。
インドの大規模フェス'NH7 Weekender'のFacebookでも、こんなふうに紹介されている。
いったいこれはどういうことだろう?
彼らは、純然たるインドのバンドにもかかわらず、なぜかインドのメディアで「J-Popバンド」として紹介されている。
アニメ・ミュージックというのはよく意味が分からないが、「日本=アニメ」という印象なのだろうか。
それにしても、これは非常に面白い解釈だ。
J-Popというのは、日本人がやってるポップミュージックのことだとばっかり思っていた。
ところが、インドでは(少なくともインド北東部では)、インド人が演奏していても、歌詞が英語でも、日本のポップミュージックっぽい雰囲気があれば、J-Popなのだ。
彼らの楽曲"23:00"は、なんとApple MusicでもJ-Popのカテゴリーで登録されている。
これは日本人としてはちょっと誇らしいことではないだろうか。
かつて、マージービートやウエストコーストロックやレゲエのような、特定の国や地域に根ざした欧米の音楽が日本のミュージシャンに大きな影響を与えたように、日本のJ-Popという音楽が、インド北東部にまで影響を及ぼしているというのだ。
例えばこの"23:00"のビデオを見てほしい。
ミュージックビデオの映像も、どことなく渋谷系のころの日本のバンドのプロモビデオを思い出させるところがある。
(光のあて方や色彩のせいだと思っていたが、モンゴロイド系のお洒落な女の子が出てくることが渋谷系っぽく見える最大の理由かもしれない)
メロウでスローテンポな曲調ながら、グルーヴ感をキープした演奏からは、彼らの高い実力を感じることもできる。
先日リリースされた新曲、長いタイトルの"If You're Not Sweating To This Then Honey You're Not 90's"は、ファンキーな曲調の90年代へのトリビュートだ。
英語詞であるせいもあって、欧米のバンドっぽい印象もあるが、楽曲のキャッチーさや、かっちりとしたアレンジは、やはりどこか日本のバンドを思い起こさせるところがある。
あと関係ないけど、サムネイルにも出てくる、ビデオの後半に登場する女の子、ものすごくかわいくないですか?
日本で女優をやっていても違和感がないくらいの美人。
インドにこういう日本的なかわいさの女の子がいるっていうのはあんまり想像したことがなかった。
"23:00"に出てきた娘もかわいかったし、ミゾの女の子、インド北東部の中でも美人が多いのかもしれない。
というわけで、謎が謎を呼ぶAvora Recordsにメールでインタビューを申し込んでみたところ、さっそく返信が来たので紹介します!
凡平「Avora Recordsについて教えてください。いつ、どんなふうに結成されたんですか?」
AR「2016年にバンドを結成したんだ。Avora Recordsっていうのは僕らがたむろしてたスタジオの名前だよ。僕らはヴォーカルのStephen, ドラムスのSanga, ベースのCK, ギターのRuataとKhosの5人組だ。
最初は、友達の何人かと2013年ごろにホームスタジオでデモを作ったりしていたんだ。正式に今のラインナップになったのが2016年で、それからライブをするようになった。」
彼らはまだ20代前半で、大学生のメンバーもいるみたいだから、ハイスクールの頃に結成されたバンドということのようだ。
凡平「インターネットの記事で、Avora RecordsがJ-Popバンドと言われていて驚きました。私もあなたがたのサウンドはちょっと日本のバンドっぽいなって感じてます。J-Popとかアニメみたいな日本のカルチャーだとか、K-Popみたいな東アジアの文化から影響を受けているのでしょうか?」
AR「僕たちはK-PopからJ-Popやインディーロックまで、様々な音楽を聴いてるよ。だから僕らはそれらのほとんど全部から影響を受けている。俺たちの音楽の基本的な部分に影響を与えたのは、僕らが育ってきた環境やカルチャーやルーツだね。
僕らは日本の信じられないほど素晴らしいJ-Popのバンドやアーティストをリスペクトしてるから、自分たちで自身をJ-Popとカテゴライズしたことはない。それに僕たちの音楽は、ローカルの要素や欧米の要素が多いから、J-Popという呼び方は合わないと思う。でも日本のカルチャーは僕らにとって馴染み深いものだよ。僕ら『ドラゴンボールZ』とか、『ポケモン』、『デジモン』、『ふしぎ遊戯』や『烈火の炎』みたいなクラシックな日本のアニメを見て育ってきた。ギタリストの二人は、今でもツアー中もポケモンのゲームをやっているよ」
確かに彼らの音楽は、洋楽風に聴こえる部分も大きく、日本のバンドっぽく思えたのは、彼らの見た目やミュージックビデオに出てくる女の子たちの印象が強かったからかもしれない。
ただ、いずれにしても、彼らが相当に日本のアニメに詳しいことは間違いないみたいだ。
恥ずかしながら『ふしぎ遊戯』と『烈火の炎』(それぞれ英語で"Curious Play","Flame of Recca"と書いていた)という作品は聞いたことがなかった。
以前ナガランドのアニメオタクについて書いたことがあったが、インド北東部で日本のカルチャーがそれなりに存在感を保っていることは間違いないのだろう。
結局、なぜ彼らがJ-Popと呼ばれているのかは最後まで分からなかったが、モンゴロイド系の民族が演奏しているクールでポップなバンドがJ-Popと呼ばれるのは、日本人としては素直にうれしい。(彼らはちょっと不本意なのかもしれないが)
日本の音楽をどうやって知ったのかと聞いたところ、YoutubeやSpotifyのレコメンドを手がかりにしているとのことだった。
彼らのポップでソリッドなバンドサウンドは、北東部のみならずインド全体を見ても、非常にユニークなものだ。
インド全体を見渡せば、ポピュラーなロックを奏でるバンドは、おしゃれインディーバンドのParekh and Singh(コルカタ)、英国フォーク色の強いWhen Chai Met Toast(コチ)、レイドバックしたEasy Wanderlings(プネー), ヒンディー語で歌うThe Local Train(デリー)などがいるが、ロックバンド色の強いAvora Recordsの個性とポップセンスは、こうしたバンドと比べてもまったく遜色がない。
彼らはインド北東部やインドという枠を超えて、もっともっと知られてほしいバンドだ。
10月にはデビューアルバムをリリース予定だそうで、日本でのプロモーションにも興味があるとのこと。
日本の各種媒体のみなさん、Avora Recordsの音楽はいかがですか?
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凡平自選の2018年度のおすすめ記事はこちらからどうぞ!
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これまで何度も紹介してきた通り、モンゴロイド系の民族が暮らす北東部は、キリスト教などの欧米から伝わった文化の影響が強く、インドのなかではかなり以前からロックミュージックが盛んだった土地だ。
今回紹介するのは、インド北東部のなかではいちばん南、ミャンマーとバングラデシュに挟まれたミゾラム州の州都Aizawl(アイゾール)出身のポップロックバンド、Avora Records.
彼らのことを知ったのは、昨年のZiro Festivalのラインナップでその名前を見かけた時だった。
それ以来、彼らの確かなポップセンスがずっと気になっていたのだ。
彼らが昨年リリースした"Sunday"という曲を聴いてみよう。
いきなり出てくる「日曜日」という漢字にまずびっくり。
さらに、少しチープでカラフルなミュージックビデオからは、どことなく90年代の日本のバンドのような雰囲気が感じられ、自然と親しみがわいてしまう。
北東部出身の彼らの見た目が我々日本人に似ていることもあって、彼らに対しては、「インド人だけどどこか日本のバンドっぽいバンド」という印象を持っていた。
それから約1年。
最近になって、Avora Recordsについて書かれたインドの記事を読んで、非常にびっくりすることがあった。
彼らは、なんと「J-Popバンド」だったというのだ。
例えば、インド北東部のカルチャーを紹介するウェブサイト、Roots And Leisureの記事にはこんなふうに書かれている。
An all-boy band creating quite the rave with their fun, upbeat J-Pop/rock and Indie music, this local-gig-favorite band from Aizawl, Mizoram, has shown the crowd that they are here to stay.
楽しげでアップビートなJ-Pop/Rockやインディーミュージックで高い評価を受け、地元のライブシーンでも人気のあるこのミゾラム州アイゾール出身の男性バンドは、彼らがまさにここにいるという存在感を大衆に示した。
インドの大規模フェス'NH7 Weekender'のFacebookでも、こんなふうに紹介されている。
J-Popとアニメ・ミュージックをお届けするミゾラム州のAvora Recordsが、この11月に(フェスの会場となるメガラヤ州シロンの)丘を盛り上げる。
いったいこれはどういうことだろう?
彼らは、純然たるインドのバンドにもかかわらず、なぜかインドのメディアで「J-Popバンド」として紹介されている。
アニメ・ミュージックというのはよく意味が分からないが、「日本=アニメ」という印象なのだろうか。
それにしても、これは非常に面白い解釈だ。
J-Popというのは、日本人がやってるポップミュージックのことだとばっかり思っていた。
ところが、インドでは(少なくともインド北東部では)、インド人が演奏していても、歌詞が英語でも、日本のポップミュージックっぽい雰囲気があれば、J-Popなのだ。
彼らの楽曲"23:00"は、なんとApple MusicでもJ-Popのカテゴリーで登録されている。
これは日本人としてはちょっと誇らしいことではないだろうか。
かつて、マージービートやウエストコーストロックやレゲエのような、特定の国や地域に根ざした欧米の音楽が日本のミュージシャンに大きな影響を与えたように、日本のJ-Popという音楽が、インド北東部にまで影響を及ぼしているというのだ。
例えばこの"23:00"のビデオを見てほしい。
ミュージックビデオの映像も、どことなく渋谷系のころの日本のバンドのプロモビデオを思い出させるところがある。
(光のあて方や色彩のせいだと思っていたが、モンゴロイド系のお洒落な女の子が出てくることが渋谷系っぽく見える最大の理由かもしれない)
メロウでスローテンポな曲調ながら、グルーヴ感をキープした演奏からは、彼らの高い実力を感じることもできる。
先日リリースされた新曲、長いタイトルの"If You're Not Sweating To This Then Honey You're Not 90's"は、ファンキーな曲調の90年代へのトリビュートだ。
英語詞であるせいもあって、欧米のバンドっぽい印象もあるが、楽曲のキャッチーさや、かっちりとしたアレンジは、やはりどこか日本のバンドを思い起こさせるところがある。
あと関係ないけど、サムネイルにも出てくる、ビデオの後半に登場する女の子、ものすごくかわいくないですか?
日本で女優をやっていても違和感がないくらいの美人。
インドにこういう日本的なかわいさの女の子がいるっていうのはあんまり想像したことがなかった。
"23:00"に出てきた娘もかわいかったし、ミゾの女の子、インド北東部の中でも美人が多いのかもしれない。
というわけで、謎が謎を呼ぶAvora Recordsにメールでインタビューを申し込んでみたところ、さっそく返信が来たので紹介します!
凡平「Avora Recordsについて教えてください。いつ、どんなふうに結成されたんですか?」
AR「2016年にバンドを結成したんだ。Avora Recordsっていうのは僕らがたむろしてたスタジオの名前だよ。僕らはヴォーカルのStephen, ドラムスのSanga, ベースのCK, ギターのRuataとKhosの5人組だ。
最初は、友達の何人かと2013年ごろにホームスタジオでデモを作ったりしていたんだ。正式に今のラインナップになったのが2016年で、それからライブをするようになった。」
彼らはまだ20代前半で、大学生のメンバーもいるみたいだから、ハイスクールの頃に結成されたバンドということのようだ。
凡平「インターネットの記事で、Avora RecordsがJ-Popバンドと言われていて驚きました。私もあなたがたのサウンドはちょっと日本のバンドっぽいなって感じてます。J-Popとかアニメみたいな日本のカルチャーだとか、K-Popみたいな東アジアの文化から影響を受けているのでしょうか?」
AR「僕たちはK-PopからJ-Popやインディーロックまで、様々な音楽を聴いてるよ。だから僕らはそれらのほとんど全部から影響を受けている。俺たちの音楽の基本的な部分に影響を与えたのは、僕らが育ってきた環境やカルチャーやルーツだね。
僕らは日本の信じられないほど素晴らしいJ-Popのバンドやアーティストをリスペクトしてるから、自分たちで自身をJ-Popとカテゴライズしたことはない。それに僕たちの音楽は、ローカルの要素や欧米の要素が多いから、J-Popという呼び方は合わないと思う。でも日本のカルチャーは僕らにとって馴染み深いものだよ。僕ら『ドラゴンボールZ』とか、『ポケモン』、『デジモン』、『ふしぎ遊戯』や『烈火の炎』みたいなクラシックな日本のアニメを見て育ってきた。ギタリストの二人は、今でもツアー中もポケモンのゲームをやっているよ」
確かに彼らの音楽は、洋楽風に聴こえる部分も大きく、日本のバンドっぽく思えたのは、彼らの見た目やミュージックビデオに出てくる女の子たちの印象が強かったからかもしれない。
ただ、いずれにしても、彼らが相当に日本のアニメに詳しいことは間違いないみたいだ。
恥ずかしながら『ふしぎ遊戯』と『烈火の炎』(それぞれ英語で"Curious Play","Flame of Recca"と書いていた)という作品は聞いたことがなかった。
以前ナガランドのアニメオタクについて書いたことがあったが、インド北東部で日本のカルチャーがそれなりに存在感を保っていることは間違いないのだろう。
結局、なぜ彼らがJ-Popと呼ばれているのかは最後まで分からなかったが、モンゴロイド系の民族が演奏しているクールでポップなバンドがJ-Popと呼ばれるのは、日本人としては素直にうれしい。(彼らはちょっと不本意なのかもしれないが)
日本の音楽をどうやって知ったのかと聞いたところ、YoutubeやSpotifyのレコメンドを手がかりにしているとのことだった。
彼らのポップでソリッドなバンドサウンドは、北東部のみならずインド全体を見ても、非常にユニークなものだ。
インド全体を見渡せば、ポピュラーなロックを奏でるバンドは、おしゃれインディーバンドのParekh and Singh(コルカタ)、英国フォーク色の強いWhen Chai Met Toast(コチ)、レイドバックしたEasy Wanderlings(プネー), ヒンディー語で歌うThe Local Train(デリー)などがいるが、ロックバンド色の強いAvora Recordsの個性とポップセンスは、こうしたバンドと比べてもまったく遜色がない。
彼らはインド北東部やインドという枠を超えて、もっともっと知られてほしいバンドだ。
10月にはデビューアルバムをリリース予定だそうで、日本でのプロモーションにも興味があるとのこと。
日本の各種媒体のみなさん、Avora Recordsの音楽はいかがですか?
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「軽刈田 凡平(かるかった ぼんべい)のアッチャーインディア 読んだり聞いたり考えたり」
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goshimasayama18 at 20:35|Permalink│Comments(0)
2018年08月20日
日本や海外のアーティストも出演!Ziro Festival!
夏といえば、日本の音楽好きにとってはなんといってもフェスティバルのシーズン。
ご存知の通り、フジロック、サマソニ、ロックインジャパン、ライジングサンなどの大きいものから、地方色の強いかなり小規模なものまで、あらゆるフェスが毎週のように行われている。
海外でも、それぞれフジロックやサマソニの原型になったとされるイギリスのグラストンベリーやレディング/リーズなどは毎年夏に開催されているし、暑い時期に(今年はちょっと暑すぎだけど)外で音楽を聴く気持ちよさは万国共通ってことなんだろう。
さて、インドに音楽フェスがあるのかと聞かれたなら、答えはYes.
インドの大都市をツアーするロックフェスNH7 Weekenderや、リゾート地ゴアで行われるEDMのSunburn Festivalなど、かなり規模の大きいものがいくつもの都市でたくさん行われている。
大都市以外でも、独特の文化を持つ北東部(7 Sisters States)はフェス文化が盛んだし、砂漠が広がるラージャスタン州でも地域色の強い音楽フェスが開催されている。
これらのフェスにはインドの音楽ソフトの売り上げの大部分を占める映画音楽のシンガーは参加しておらず、海外のアーティストやこのブログで紹介しているようなインディーミュージシャンのみが出演しているのだが(ひと昔前まで日本のフェスにアイドル系が出なかったようなものだろう)、それでも多くのイベントが万単位の観客を集めており、インドの音楽カルチャーの成長ぶりが分かろうというものだ。
また、デリーではジャズの、ムンバイではブルースのフェスなどもあり、インドのフェス文化は我々が思っている以上に成熟している。
そんな中で、今回紹介するのは、インド北東部アルナーチャル・プラデーシュ州で毎年開催されているZiro Festival of Music.
これだけ多くのフェスが開催されるインドにおいて、最高とも究極とも評価されているフェスティバルだ。
まずは、アルナーチャル・プラデーシュ州の場所をおさらいしてみましょう。
西をブータン、北を中国、東をミャンマーと接するインド北東部で最も北に位置するのがこのアルナーチャル・プラデーシュ州で、今回紹介するフェスの舞台となる村、Ziro Valleyはこんな感じのところだ。
(出典:https://www.beyondindiatravels.com/blog/ziro-town-travel-guide/より引用)
山あいのなんとものどかな農村地帯。
緑豊かな日本を思わせる風景は、インドでは北東部独特のものと言える。
(出典:http://www.dailymail.co.uk/news/article-3164012/The-worst-place-world-catch-cold-Indian-tribe-woman-nose-plugs-fitted-mark-adults.htmlより引用)
Ziro Valleyは少数民族「アパタニ」の人々が暮らす土地としても知られている。
アパタニの女性達は、美しさゆえに他の部族にさらわれてしまうことを防ぐために、あえて醜くするために「ノーズプラグ」を嵌める習慣があった(今ではお年寄りのみしかしていないようだが)。
なんだか凄いところでしょう。
このZiro Valley、行くまでが大変で、飛行機で行けるのはお隣アッサム州の州都グワハティまで。
そこから鉄道に7時間40分揺られると、アルナーチャル・プラデーシュ州のヒマラヤのふもとの町、Naharlagunに到着する。
そこからジープで山道を3時間半かけて、ようやくフェスの会場であるZiro Valleyに到着することができる(とwikipediaには書かれているが、実際にはもっと近くの空港を利用する方法もあるようだ)。
その前に、3カ国と国境を接したアルナーチャル・プラデーシュ州に行くためにはinner line permmitという特別な許可を得ることも必要だ。
そこまでして行く価値があるのかどうか、と思う向きも多いと思うが、映像を見れば、究極の大自然型フェス、Ziro Festivalの良さが必ず分かってもらえるはずだ。
まずはZiro Festival of Music 2018のプロモーション動画
2015年のフェスをまとめた動画
こちらは2017年のフェスの様子のドキュメンタリー
ね?行きたくなったでしょう。
単なる野外コンサートではなく、大自然の中の会場の雰囲気や地元の文化を含めて、そこでの体験全てが特別なものになるようなフェスティバルだということがお分かりいただけると思う。
自然の中のピースフルな雰囲気は、日本のフェスだとちょっと朝霧jamに似ていると言えるかもしれない。
主催者によると、4日間にわたり、2つのステージに40組のアーティストが出演し、6000人の観客を集めるという。
来場者はキャンプサイトのテントに泊まりながら、24時間フェスの環境を楽しむことができ、フェスの音楽だけでなく、この地域の文化や自然が楽しめるプログラムも用意されているようだ。
この酔狂の極みとも言える究極の辺境系フェスの主催者は、地元アルナーチャルのプロモーターBobby HanoとデリーのベテランインディーロックバンドMenwhopauseのメンバー。
2012年から国内外のアーティストを招聘してこのZiro Festival of Musicを開催しており、今ではインド随一のフェスとの評価を得ることも多くなっている。
出演者のラインナップはインド各地のインディーミュージシャンが中心だが、ロック、ラップ、レゲエなどのジャンルを問わず優れたアーティストが名を連ねている。
シーンの大御所もいれば、まだ無名ながらも先鋭的な音楽をプレイしているバンド、はたまた伝統音楽や民謡の歌手やプレイヤーまで、非常に多岐にわたるのが特長だ。
海外から招聘するアーティストもセンスが良く、いままでSonic YouthのLee Ranald and Steve Shelley、元Canのダモ鈴木らが出演している。
(ダモ鈴木については、ジャーマンロックバンドCanに在籍していた奇人ヴォーカリストというくらいの知識しかなかったのだが、改めて調べてみたら今更ながらすごく面白かった。 wikipediaの記載が充実しているので興味のある方は是非ご一読を)
今年は9月27日〜30日までの4日間にわたって開催され、先ごろ出演アーティスト第一弾が発表された。
なんと、日本のポストロックバンドのmonoがヘッドライナーとして出演することが発表された。
monoについてよく知らない人もいるかもしれないが、日本より海外での評価の高いバンドで、その活動についてはこちらのサイトに詳しい。
いくら海外でも人気とはいっても、インドでも知られてるの?と正直私もちょっと疑問に思っていたのだが、以前このサイトでもインタビューさせてもらったアルナーチャル在住のデスメタルバンドのメンバーは「畜生!あのmonoが地元に来るのにその時ケララに行ってて見れないんだ!なんてこった!」というコメントをしていたので、インドでもコアなロック好きの間では評価が高いようだ。
他の国外アーティストは、Madou Sidiki Diabateはマリのコラ奏者、MALOXはイスラエルのエクスペリメンタルなジャズ/ファンクバンド。
極上のナチュラル・チルアウトからスリリングなジャムまで、よくもまあ世界中の面白いアーティストを探してくるものだ。
インド国内のアーティストも、Prabh Deepのような今をときめくラッパーから、まだまだ無名だが面白い音楽性のバンド、伝統音楽のミュージシャンまで、インディーズシーンを網羅したラインナップだ。
なかでも、インド北東部からは、7sisters statesのうちトリプラ州を除く6つの州から1バンドずつが出演する充実ぶり。
ウエストベンガル州カリンポン出身の伝統音楽アーティストGauley Bhaiも北東部に極めて近いエリアの出身であることを考えると、さながら伝統音楽から現代音楽まで、北東部の音楽カルチャーの見本市のようなフェスでもあるというわけだ。
彼らの中でとくに興味深いアーティストをいくつか見てみると、こんな感じ。
アッサム州グワハティ出身のONE OK ROCKならぬWINE O'CLOCKはシンセ・ファンクとでも呼べばいいのか、なんとも形容不能なバンド。
メガラヤ州のBlue Temptationは外で聴いたら絶対に気持ちよさそうなレニー・クラヴィッツみたいなアメリカン・ロック。
ミゾラム州のAvora Recordsはオシャレなポップロック。
北東部なので顔立ちやファッションが日本人そっくりな女の子が出てくるので、聴いているうちにどこの国の音楽か分からなくなってくる。
いずれもインドらしからぬサウンドを鳴らしているバンドだが、ここに各地の伝統音楽のミュージシャンや海外のバンドたちが彩りを加えるというわけだ。
ヒッピー系ジャムバンドやEDMのようなフェスにつきもののジャンルをあえて呼ばず、面白さや多様性を重視したラインナップに主催者の心意気を感じる。
このZiro Festival、参加者した人の声を聞いても、時代や地理的な差異を超えてユニークなアーティストを大自然の中で聴ける、天国のようなフェスであるとのこと。
いつか行ってみたいんだよなあ。
どなたか行ったことがある方がいたらぜひ話を聴かせてください。
それでは今日はこのへんで!
ご存知の通り、フジロック、サマソニ、ロックインジャパン、ライジングサンなどの大きいものから、地方色の強いかなり小規模なものまで、あらゆるフェスが毎週のように行われている。
海外でも、それぞれフジロックやサマソニの原型になったとされるイギリスのグラストンベリーやレディング/リーズなどは毎年夏に開催されているし、暑い時期に(今年はちょっと暑すぎだけど)外で音楽を聴く気持ちよさは万国共通ってことなんだろう。
さて、インドに音楽フェスがあるのかと聞かれたなら、答えはYes.
インドの大都市をツアーするロックフェスNH7 Weekenderや、リゾート地ゴアで行われるEDMのSunburn Festivalなど、かなり規模の大きいものがいくつもの都市でたくさん行われている。
大都市以外でも、独特の文化を持つ北東部(7 Sisters States)はフェス文化が盛んだし、砂漠が広がるラージャスタン州でも地域色の強い音楽フェスが開催されている。
これらのフェスにはインドの音楽ソフトの売り上げの大部分を占める映画音楽のシンガーは参加しておらず、海外のアーティストやこのブログで紹介しているようなインディーミュージシャンのみが出演しているのだが(ひと昔前まで日本のフェスにアイドル系が出なかったようなものだろう)、それでも多くのイベントが万単位の観客を集めており、インドの音楽カルチャーの成長ぶりが分かろうというものだ。
また、デリーではジャズの、ムンバイではブルースのフェスなどもあり、インドのフェス文化は我々が思っている以上に成熟している。
そんな中で、今回紹介するのは、インド北東部アルナーチャル・プラデーシュ州で毎年開催されているZiro Festival of Music.
これだけ多くのフェスが開催されるインドにおいて、最高とも究極とも評価されているフェスティバルだ。
まずは、アルナーチャル・プラデーシュ州の場所をおさらいしてみましょう。
西をブータン、北を中国、東をミャンマーと接するインド北東部で最も北に位置するのがこのアルナーチャル・プラデーシュ州で、今回紹介するフェスの舞台となる村、Ziro Valleyはこんな感じのところだ。
(出典:https://www.beyondindiatravels.com/blog/ziro-town-travel-guide/より引用)
山あいのなんとものどかな農村地帯。
緑豊かな日本を思わせる風景は、インドでは北東部独特のものと言える。
(出典:http://www.dailymail.co.uk/news/article-3164012/The-worst-place-world-catch-cold-Indian-tribe-woman-nose-plugs-fitted-mark-adults.htmlより引用)
Ziro Valleyは少数民族「アパタニ」の人々が暮らす土地としても知られている。
アパタニの女性達は、美しさゆえに他の部族にさらわれてしまうことを防ぐために、あえて醜くするために「ノーズプラグ」を嵌める習慣があった(今ではお年寄りのみしかしていないようだが)。
なんだか凄いところでしょう。
このZiro Valley、行くまでが大変で、飛行機で行けるのはお隣アッサム州の州都グワハティまで。
そこから鉄道に7時間40分揺られると、アルナーチャル・プラデーシュ州のヒマラヤのふもとの町、Naharlagunに到着する。
そこからジープで山道を3時間半かけて、ようやくフェスの会場であるZiro Valleyに到着することができる(とwikipediaには書かれているが、実際にはもっと近くの空港を利用する方法もあるようだ)。
その前に、3カ国と国境を接したアルナーチャル・プラデーシュ州に行くためにはinner line permmitという特別な許可を得ることも必要だ。
そこまでして行く価値があるのかどうか、と思う向きも多いと思うが、映像を見れば、究極の大自然型フェス、Ziro Festivalの良さが必ず分かってもらえるはずだ。
まずはZiro Festival of Music 2018のプロモーション動画
2015年のフェスをまとめた動画
こちらは2017年のフェスの様子のドキュメンタリー
ね?行きたくなったでしょう。
単なる野外コンサートではなく、大自然の中の会場の雰囲気や地元の文化を含めて、そこでの体験全てが特別なものになるようなフェスティバルだということがお分かりいただけると思う。
自然の中のピースフルな雰囲気は、日本のフェスだとちょっと朝霧jamに似ていると言えるかもしれない。
主催者によると、4日間にわたり、2つのステージに40組のアーティストが出演し、6000人の観客を集めるという。
来場者はキャンプサイトのテントに泊まりながら、24時間フェスの環境を楽しむことができ、フェスの音楽だけでなく、この地域の文化や自然が楽しめるプログラムも用意されているようだ。
この酔狂の極みとも言える究極の辺境系フェスの主催者は、地元アルナーチャルのプロモーターBobby HanoとデリーのベテランインディーロックバンドMenwhopauseのメンバー。
2012年から国内外のアーティストを招聘してこのZiro Festival of Musicを開催しており、今ではインド随一のフェスとの評価を得ることも多くなっている。
出演者のラインナップはインド各地のインディーミュージシャンが中心だが、ロック、ラップ、レゲエなどのジャンルを問わず優れたアーティストが名を連ねている。
シーンの大御所もいれば、まだ無名ながらも先鋭的な音楽をプレイしているバンド、はたまた伝統音楽や民謡の歌手やプレイヤーまで、非常に多岐にわたるのが特長だ。
海外から招聘するアーティストもセンスが良く、いままでSonic YouthのLee Ranald and Steve Shelley、元Canのダモ鈴木らが出演している。
(ダモ鈴木については、ジャーマンロックバンドCanに在籍していた奇人ヴォーカリストというくらいの知識しかなかったのだが、改めて調べてみたら今更ながらすごく面白かった。 wikipediaの記載が充実しているので興味のある方は是非ご一読を)
今年は9月27日〜30日までの4日間にわたって開催され、先ごろ出演アーティスト第一弾が発表された。
なんと、日本のポストロックバンドのmonoがヘッドライナーとして出演することが発表された。
monoについてよく知らない人もいるかもしれないが、日本より海外での評価の高いバンドで、その活動についてはこちらのサイトに詳しい。
いくら海外でも人気とはいっても、インドでも知られてるの?と正直私もちょっと疑問に思っていたのだが、以前このサイトでもインタビューさせてもらったアルナーチャル在住のデスメタルバンドのメンバーは「畜生!あのmonoが地元に来るのにその時ケララに行ってて見れないんだ!なんてこった!」というコメントをしていたので、インドでもコアなロック好きの間では評価が高いようだ。
他の国外アーティストは、Madou Sidiki Diabateはマリのコラ奏者、MALOXはイスラエルのエクスペリメンタルなジャズ/ファンクバンド。
極上のナチュラル・チルアウトからスリリングなジャムまで、よくもまあ世界中の面白いアーティストを探してくるものだ。
インド国内のアーティストも、Prabh Deepのような今をときめくラッパーから、まだまだ無名だが面白い音楽性のバンド、伝統音楽のミュージシャンまで、インディーズシーンを網羅したラインナップだ。
なかでも、インド北東部からは、7sisters statesのうちトリプラ州を除く6つの州から1バンドずつが出演する充実ぶり。
ウエストベンガル州カリンポン出身の伝統音楽アーティストGauley Bhaiも北東部に極めて近いエリアの出身であることを考えると、さながら伝統音楽から現代音楽まで、北東部の音楽カルチャーの見本市のようなフェスでもあるというわけだ。
彼らの中でとくに興味深いアーティストをいくつか見てみると、こんな感じ。
アッサム州グワハティ出身のONE OK ROCKならぬWINE O'CLOCKはシンセ・ファンクとでも呼べばいいのか、なんとも形容不能なバンド。
メガラヤ州のBlue Temptationは外で聴いたら絶対に気持ちよさそうなレニー・クラヴィッツみたいなアメリカン・ロック。
ミゾラム州のAvora Recordsはオシャレなポップロック。
北東部なので顔立ちやファッションが日本人そっくりな女の子が出てくるので、聴いているうちにどこの国の音楽か分からなくなってくる。
いずれもインドらしからぬサウンドを鳴らしているバンドだが、ここに各地の伝統音楽のミュージシャンや海外のバンドたちが彩りを加えるというわけだ。
ヒッピー系ジャムバンドやEDMのようなフェスにつきもののジャンルをあえて呼ばず、面白さや多様性を重視したラインナップに主催者の心意気を感じる。
このZiro Festival、参加者した人の声を聞いても、時代や地理的な差異を超えてユニークなアーティストを大自然の中で聴ける、天国のようなフェスであるとのこと。
いつか行ってみたいんだよなあ。
どなたか行ったことがある方がいたらぜひ話を聴かせてください。
それでは今日はこのへんで!
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