Aswekeepsearching
2021年01月02日
Rolling Stone Indiaが選ぶ2020年ベストアルバム10選!
あけましておめでとうございます!
毎年新年に紹介しているRolling Stone Indiaが選ぶ年間ベスト紹介シリーズ、今回はベストアルバム部門の紹介!
(元の記事はこちら↓)
面白いもので、これが昨年末に紹介した軽刈田セレクトの年間ベストとは1作しか重なっていない!
それだけインドのインディーシーンの多様化が進んでいる証拠とも言えそうだけど、Rolling Stone Indiaの年間ベストも数人のジャーナリストだけで選出しているようなので、単に音楽の好みや注目するポイントの違いなのかもしれない。
(私の選んだ年間ベスト10はこちら↓。ただし、アルバムに限らず、楽曲やミュージックビデオも含めた10作品の選出)
私のTop10は「2020年にその音が鳴らされる必然性」を重視して選出したつもりだったけど、Rolling Stone Indiaは、毎年ながら同時代性を全く無視したセレクトになっていて、これはこれで面白いランキングになっている。
今年はいつになく前時代的なロックバンドが多い印象で、また違った「インド音楽」が楽しめると思います。
それではさっそく!
1. Thermal And A Quarter "A World Gone Mad"
Thermal and a Quarterは96年に結成されたベンガルールのベテランロックバンド。
このアルバムのサウンドを簡単に説明するなら、「ピンク・フロイド的な詩情と70年代ハードロック的なダイナミズムの融合」ということになる。
要はクラシックなプログレッシブ・ロックで、曲によっては90年代USのグランジっぽく聴こえることもある。
プログレといっても、個々のプレイヤーの技巧ではなく、ヴォーカルハーモニーを含めたバンドのアンサンブルで聴かせるタイプの作品なので、聴いていて疲れないのも◎。
とはいえ、この作品が2020年のインドのインディーミュージックの最高到達点を示すものかと言われると、個人的にはちょっと疑問符を付けたくなる。
インドのインディー音楽のリスナーは「インテリっぽいロック」を好む傾向があって、このランキングにもそうした好みが反映されている可能性がある。
以下、その点に留意して聴いてみてください。
2. Soulmate "Give Love"
Soulmateはインド北東部のメガラヤ州シロンを拠点に活動する2003年結成のベテランブルースロックバンド。
インド北東部はこのブログでも何度も紹介している通り、キリスト教信仰の影響もあって、かなり古い時代からロック等の欧米の音楽が受け入れられてきた。
このアルバムも彼ららしいハードなブルースが堪能できる作品で、とくに女性ヴォーカリストTipriti Kharbangarのソウルフルな歌い回しと、Rudy Wallangのツボを抑えたギタープレイ(チョーキングのトーンコントロールが素晴らしい)は絶品。
やはり2020年らしさは皆無なサウンドだが、この手の音楽の愛好家は世界中にいるはずなので、もっと多くの国で評価されてもいいはずだ。
3. Saby Singh "Yahaan"
これまで全くノーチェックだったカシミール出身のシク教徒のシンガー・ソングライター。
Rolling Stone Indiaの記事によると、前作の"Ouroboros"は実験的な電子音楽だったようだが(奇妙なことに、この作品は現在YouTubeでも音楽ストリーミングサービスでも聴くことができない)、今作はシンプルなギターの弾き語りとなっている。
こういう音楽は歌詞が分からないとしんどいが、深みと表現力のある歌声は聴きごたえがある。
ときに情感過多で演歌っぽい歌い回しになってしまうのは、シク/パンジャービーのルーツゆえか。
4. aswekeepsearching "sleep"
この作品が唯一、私が選んだ年間トップ10と重なっていた。
海外のレーベルからアルバムをリリースしたこともあるポストロックバンドによるアンビエント作品。
インド西部グジャラート州のアーメダーバード出身で、ベンガルールを拠点していると思っていたのだが、Rolling Stone Indiaによると、現在はムンバイで活動しているらしい。
Rolling Stone Indiaは、この作品の楽曲を「催眠術的(hypnotic)」("How I Suppose to Know")、「瞑想的(meditative)」("Let Us Try")、「平和的(peaceful)」("Sleep Again")、「未来的(futuristic)」("Glued")、「アコースティックギターが傑出(acoustic guitar prominence)」("Dreams are Real")、「憂鬱(melancholy)」("Sleep Now")と評している。
5. Lojal "Phase"
メガラヤ州シロンのMartin J. Haokipによるソロ・プロジェクト。
どこか近未来的なトラックにR&B的なコーラスやラップが乗る。
感情を抑えたヴォーカルは、雰囲気で聴かせるところもあるが、2020年のインドを感じさせるサウンドではある。
Frank Ocean, Bon Iver, Kanye Westの影響を受けているとのこと。
このランキングで「今っぽさ」を感じさせられるのは4位のaswekeepsearchingと、このLojalくらい。
6. The Earth Below "Nothing Works Vol. 2: Hymns for Useless Gods"
これまたノーチェックなアーティストだったが、ベンガルール出身で、ムンバイを拠点に活動しているドラマー兼ヴォーカリストのDeepak Raghuを中心としたバンドのようだ。
サウンドは90年代のグランジ/オルタナティブ・ヘヴィロックの影響を強く感じさせるもので、歪んだギターと憂鬱さを帯びたヴォーカルが虚無的な情熱とでも呼ぶべき感情を喚起する。
"Come to Me"のような曲のメロディーセンスもとても良い。
アルバムタイトルに"Vol.2"とあるが、"Vol.1"は検索してもどこにも見当たらないのが謎。
虚無感をテーマにした曲が多いようで、アルバムの副題からも、我々がよく知る信仰心に厚くバイタリティーあふれるインドとはかけ離れているが、これもまた現代のインドのリアル。
7. Serpents of Pakhangba "Serpents of Pakhangba"
おそらくこのランキング中最大の問題作がこのアルバムだろう。
ムンバイのマルチプレイヤーVishal J. Singh(プログレッシブ・メタルバンドAmogh Symphonyの中心人物としても有名)が率いるSerpents of Pakhangbaの音楽性は、単純に言えばやはりプログレということになるのだろうが、エキセントリックな女性ヴォーカル(伝統音楽に由来しているのか?)、メタル、ジャズ、アンビエント的なサウンドを内包した実験的なもので、なんとも形容し難い。
ものすごい作品のような気もするし、単にとっ散らかっているようにも聴こえるが、アルバム全体を通して異常な緊張感が張りつめており、演奏力も高くて飽きさせない。
バンド名はインドの蛇神ナーガの北東部マニプル州のメイテイ族に伝わる呼び名で、Vishal J. Singhのルーツにも関わっているようだ。
なんと彼らへのインタビューを日本語で紹介しているウェブサイトを見つけたので(さすが日本が誇るメタルマガジン'Burrn!')、詳しくはこちらを参照してほしい。
8. Swadesi "Chetavni"
Rolling Stone Indiaが2020年のヒップホップを代表する作品として選んだのがこの作品。
Swadesiはムンバイを拠点に活動する多言語ラッパー集団で、これまでも古典音楽/伝統音楽との融合などを試みつつ、さまざまな社会問題や政治問題を扱った作品をリリースしてきた。
今回は伝統音楽の要素はあまり入れずに、オールドスクールっぽいフロウのラップを聞かせてくれている。
サウンドや内面的な表現ではなく、社会的な要素を重視しての選出だったようで、そうなるとリリックが分からないのが非常にもどかしい。
意外なことにこの作品がデビューアルバム。
9. Girish And The Chronicles "Rock the Highway"
Girish And The Chroniclesは、インド北東部シッキム州出身のヘヴィーメタルバンド。
ヴォーカリストのGirish Pradhanは、Chris Adler (ex. Megadeth)らとのプロジェクトFirstBorurneでも知られている実力派。
これもまた2020年らしさの全くないヘヴィ・ロックンロールで、彼らが時代に関係なく、本当に好きな音楽を追求しているのだということが分かるサウンド。
13曲入りというのも聴きごたえがある。
アップテンポでもヘヴィなグルーヴを失わないリズムセクションと、確かな腕を持っているギタリストを擁していて、楽曲のクオリティーも高い(曲によっては、Sammy Hager在籍時のVan Halenを思わせる)。
35年前のアメリカでこの音を鳴らしていたら、世界的に評価されていたかもしれない。
10. Protocol "Friar’s Lantern"
ムンバイ出身のプログレッシブロックバンド。
これまた2020年らしからぬサウンドで、ヘヴィな要素もあるが、欧風のフォークミュージックっぽい雰囲気も濃厚。
女性ヴォーカリストの表現力がもう少しあると良いのだが…。
というわけで、全10枚を紹介してみました。
今年は例年になく70〜90年代風のヘヴィ・ロックが目立つ結果となった。
おそらくだが、インドのインディー・ミュージック界は、日本でいうとバンドブーム〜渋谷系の時代なのだろう。
何が言いたいのかというと、同時代的な表現や新しい音を追求することよりも、過去の音楽を咀嚼して、あるときはお手本に忠実に、またあるときはそれを自分なりのセンスで表現した音楽が好まれる傾向があるのではないか、ということだ。
もちろん彼らが単なるコピーだと言いたいわけではない。
Soulmateにしろ、Girish and the Chroniclesにしろ、Serpents of Pakhanbaにしろ、それぞれのジャンルの紛れもない「本物」だし、とくに英語詞での表現については、日本のアーティストよりもずっと「本場」に近いところにいる。
まあ、単に選者の好みなのかもしれないけれども。
いずれにしても、このサブスク全盛で、1曲が2分台の曲が多いこのご時世に、Thermal and a Quarter, Serpents of Pakhangba, Protocolのように1曲が6分以上あるようなアルバムを平気で選んでくるセンスは結構好きだ。
また、Soulmate, Lojal, Girish and the Chroniclesのような北東部のアーティストが目立っているのも印象的。
おそらくは評価基準の一つになっている「欧米的な音楽」をやらせたら、やはり一日の長がある地域なのだろう。
これまで知らなかった面白いアーティストも知れたし、なかなか興味深いランキングでした!
次回はRolling Stone Indiaが選ぶミュージックビデオTop10を紹介したいと思います。
あ、正月ということで、以前書いたガネーシャと正月をテーマにした落語も貼り付けておきます!
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毎年新年に紹介しているRolling Stone Indiaが選ぶ年間ベスト紹介シリーズ、今回はベストアルバム部門の紹介!
(元の記事はこちら↓)
面白いもので、これが昨年末に紹介した軽刈田セレクトの年間ベストとは1作しか重なっていない!
それだけインドのインディーシーンの多様化が進んでいる証拠とも言えそうだけど、Rolling Stone Indiaの年間ベストも数人のジャーナリストだけで選出しているようなので、単に音楽の好みや注目するポイントの違いなのかもしれない。
(私の選んだ年間ベスト10はこちら↓。ただし、アルバムに限らず、楽曲やミュージックビデオも含めた10作品の選出)
私のTop10は「2020年にその音が鳴らされる必然性」を重視して選出したつもりだったけど、Rolling Stone Indiaは、毎年ながら同時代性を全く無視したセレクトになっていて、これはこれで面白いランキングになっている。
今年はいつになく前時代的なロックバンドが多い印象で、また違った「インド音楽」が楽しめると思います。
それではさっそく!
1. Thermal And A Quarter "A World Gone Mad"
Thermal and a Quarterは96年に結成されたベンガルールのベテランロックバンド。
このアルバムのサウンドを簡単に説明するなら、「ピンク・フロイド的な詩情と70年代ハードロック的なダイナミズムの融合」ということになる。
要はクラシックなプログレッシブ・ロックで、曲によっては90年代USのグランジっぽく聴こえることもある。
プログレといっても、個々のプレイヤーの技巧ではなく、ヴォーカルハーモニーを含めたバンドのアンサンブルで聴かせるタイプの作品なので、聴いていて疲れないのも◎。
とはいえ、この作品が2020年のインドのインディーミュージックの最高到達点を示すものかと言われると、個人的にはちょっと疑問符を付けたくなる。
インドのインディー音楽のリスナーは「インテリっぽいロック」を好む傾向があって、このランキングにもそうした好みが反映されている可能性がある。
以下、その点に留意して聴いてみてください。
2. Soulmate "Give Love"
Soulmateはインド北東部のメガラヤ州シロンを拠点に活動する2003年結成のベテランブルースロックバンド。
インド北東部はこのブログでも何度も紹介している通り、キリスト教信仰の影響もあって、かなり古い時代からロック等の欧米の音楽が受け入れられてきた。
このアルバムも彼ららしいハードなブルースが堪能できる作品で、とくに女性ヴォーカリストTipriti Kharbangarのソウルフルな歌い回しと、Rudy Wallangのツボを抑えたギタープレイ(チョーキングのトーンコントロールが素晴らしい)は絶品。
やはり2020年らしさは皆無なサウンドだが、この手の音楽の愛好家は世界中にいるはずなので、もっと多くの国で評価されてもいいはずだ。
3. Saby Singh "Yahaan"
これまで全くノーチェックだったカシミール出身のシク教徒のシンガー・ソングライター。
Rolling Stone Indiaの記事によると、前作の"Ouroboros"は実験的な電子音楽だったようだが(奇妙なことに、この作品は現在YouTubeでも音楽ストリーミングサービスでも聴くことができない)、今作はシンプルなギターの弾き語りとなっている。
こういう音楽は歌詞が分からないとしんどいが、深みと表現力のある歌声は聴きごたえがある。
ときに情感過多で演歌っぽい歌い回しになってしまうのは、シク/パンジャービーのルーツゆえか。
4. aswekeepsearching "sleep"
この作品が唯一、私が選んだ年間トップ10と重なっていた。
海外のレーベルからアルバムをリリースしたこともあるポストロックバンドによるアンビエント作品。
インド西部グジャラート州のアーメダーバード出身で、ベンガルールを拠点していると思っていたのだが、Rolling Stone Indiaによると、現在はムンバイで活動しているらしい。
Rolling Stone Indiaは、この作品の楽曲を「催眠術的(hypnotic)」("How I Suppose to Know")、「瞑想的(meditative)」("Let Us Try")、「平和的(peaceful)」("Sleep Again")、「未来的(futuristic)」("Glued")、「アコースティックギターが傑出(acoustic guitar prominence)」("Dreams are Real")、「憂鬱(melancholy)」("Sleep Now")と評している。
5. Lojal "Phase"
メガラヤ州シロンのMartin J. Haokipによるソロ・プロジェクト。
どこか近未来的なトラックにR&B的なコーラスやラップが乗る。
感情を抑えたヴォーカルは、雰囲気で聴かせるところもあるが、2020年のインドを感じさせるサウンドではある。
Frank Ocean, Bon Iver, Kanye Westの影響を受けているとのこと。
このランキングで「今っぽさ」を感じさせられるのは4位のaswekeepsearchingと、このLojalくらい。
6. The Earth Below "Nothing Works Vol. 2: Hymns for Useless Gods"
これまたノーチェックなアーティストだったが、ベンガルール出身で、ムンバイを拠点に活動しているドラマー兼ヴォーカリストのDeepak Raghuを中心としたバンドのようだ。
サウンドは90年代のグランジ/オルタナティブ・ヘヴィロックの影響を強く感じさせるもので、歪んだギターと憂鬱さを帯びたヴォーカルが虚無的な情熱とでも呼ぶべき感情を喚起する。
"Come to Me"のような曲のメロディーセンスもとても良い。
アルバムタイトルに"Vol.2"とあるが、"Vol.1"は検索してもどこにも見当たらないのが謎。
虚無感をテーマにした曲が多いようで、アルバムの副題からも、我々がよく知る信仰心に厚くバイタリティーあふれるインドとはかけ離れているが、これもまた現代のインドのリアル。
7. Serpents of Pakhangba "Serpents of Pakhangba"
おそらくこのランキング中最大の問題作がこのアルバムだろう。
ムンバイのマルチプレイヤーVishal J. Singh(プログレッシブ・メタルバンドAmogh Symphonyの中心人物としても有名)が率いるSerpents of Pakhangbaの音楽性は、単純に言えばやはりプログレということになるのだろうが、エキセントリックな女性ヴォーカル(伝統音楽に由来しているのか?)、メタル、ジャズ、アンビエント的なサウンドを内包した実験的なもので、なんとも形容し難い。
ものすごい作品のような気もするし、単にとっ散らかっているようにも聴こえるが、アルバム全体を通して異常な緊張感が張りつめており、演奏力も高くて飽きさせない。
バンド名はインドの蛇神ナーガの北東部マニプル州のメイテイ族に伝わる呼び名で、Vishal J. Singhのルーツにも関わっているようだ。
なんと彼らへのインタビューを日本語で紹介しているウェブサイトを見つけたので(さすが日本が誇るメタルマガジン'Burrn!')、詳しくはこちらを参照してほしい。
8. Swadesi "Chetavni"
Rolling Stone Indiaが2020年のヒップホップを代表する作品として選んだのがこの作品。
Swadesiはムンバイを拠点に活動する多言語ラッパー集団で、これまでも古典音楽/伝統音楽との融合などを試みつつ、さまざまな社会問題や政治問題を扱った作品をリリースしてきた。
今回は伝統音楽の要素はあまり入れずに、オールドスクールっぽいフロウのラップを聞かせてくれている。
サウンドや内面的な表現ではなく、社会的な要素を重視しての選出だったようで、そうなるとリリックが分からないのが非常にもどかしい。
意外なことにこの作品がデビューアルバム。
9. Girish And The Chronicles "Rock the Highway"
Girish And The Chroniclesは、インド北東部シッキム州出身のヘヴィーメタルバンド。
ヴォーカリストのGirish Pradhanは、Chris Adler (ex. Megadeth)らとのプロジェクトFirstBorurneでも知られている実力派。
これもまた2020年らしさの全くないヘヴィ・ロックンロールで、彼らが時代に関係なく、本当に好きな音楽を追求しているのだということが分かるサウンド。
13曲入りというのも聴きごたえがある。
アップテンポでもヘヴィなグルーヴを失わないリズムセクションと、確かな腕を持っているギタリストを擁していて、楽曲のクオリティーも高い(曲によっては、Sammy Hager在籍時のVan Halenを思わせる)。
35年前のアメリカでこの音を鳴らしていたら、世界的に評価されていたかもしれない。
10. Protocol "Friar’s Lantern"
ムンバイ出身のプログレッシブロックバンド。
これまた2020年らしからぬサウンドで、ヘヴィな要素もあるが、欧風のフォークミュージックっぽい雰囲気も濃厚。
女性ヴォーカリストの表現力がもう少しあると良いのだが…。
というわけで、全10枚を紹介してみました。
今年は例年になく70〜90年代風のヘヴィ・ロックが目立つ結果となった。
おそらくだが、インドのインディー・ミュージック界は、日本でいうとバンドブーム〜渋谷系の時代なのだろう。
何が言いたいのかというと、同時代的な表現や新しい音を追求することよりも、過去の音楽を咀嚼して、あるときはお手本に忠実に、またあるときはそれを自分なりのセンスで表現した音楽が好まれる傾向があるのではないか、ということだ。
もちろん彼らが単なるコピーだと言いたいわけではない。
Soulmateにしろ、Girish and the Chroniclesにしろ、Serpents of Pakhanbaにしろ、それぞれのジャンルの紛れもない「本物」だし、とくに英語詞での表現については、日本のアーティストよりもずっと「本場」に近いところにいる。
まあ、単に選者の好みなのかもしれないけれども。
いずれにしても、このサブスク全盛で、1曲が2分台の曲が多いこのご時世に、Thermal and a Quarter, Serpents of Pakhangba, Protocolのように1曲が6分以上あるようなアルバムを平気で選んでくるセンスは結構好きだ。
また、Soulmate, Lojal, Girish and the Chroniclesのような北東部のアーティストが目立っているのも印象的。
おそらくは評価基準の一つになっている「欧米的な音楽」をやらせたら、やはり一日の長がある地域なのだろう。
これまで知らなかった面白いアーティストも知れたし、なかなか興味深いランキングでした!
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goshimasayama18 at 19:42|Permalink│Comments(0)
2020年06月06日
ロックダウン中に発表されたインドの楽曲(その3) 驚異の「オンライン会議ミュージカル」ほか
先日、「ロックダウン中に発表されたインドの楽曲(その1)」と「その2」という記事を書いたが、その後もいろんなミュージシャンが、この未曾有の状況に音楽を通してメッセージを発信したり、今だからこそできる表現に挑戦したりしている。
今回は、さらなるロックダウンソングス(そんな言葉はないけど)を紹介します!
(面白いものを見つけたら、今後も随時追加してゆくつもり)
まず紹介したいのは、政治的・社会的なトピックを取り上げてきたムンバイのラップグループSwadesiによる"Mahamaari".
パンデミックへの対応に失敗したモディ政権への批判と、それでも政権に従わざるを得ない一般大衆についてラップしたものだという。
MC Mawaliのヴァースには「資本主義こそ本当のパンデミック」というリリックが含まれているようだ。
これまでも積極的に伝統音楽の要素を導入してきた彼ららしく、このトラックでも非常にインド的なメロディーのサビが印象的。
ムンバイのシンガーソングライターTejas Menonは、仲間のミュージシャンたちとロックダウン中ならではのオンライン会議をテーマにした「ロック・オペラ」を発表した。
これはすごいアイデア!
オンライン会議アプリを利用したライブや演劇は聞いたことがあるが、ミュージカルというのは世界的に見ても極めて珍しいんじゃないだろうか。
アーティスト活動をしながら在宅でオフィスワークをしている登場人物たちが、会議中に突然心のうちを発散させるという内容は、定職につきながら音楽活動に励むミュージシャンが多いインドのインディーシーンならではのもの。
この状況ならではのトピックを、若干の批評性をともなうエンターテインメントに昇華させるセンスには唸らされる。
恋人役として出演している美しい女性シンガーは、「その1」でも紹介したMaliだ。
アメリカのペンシルバニア大学出身のインド系アカペラグループ、Penn MasalaはJohn Mayerの"Waiting on the World to Change"と映画『きっと、うまくいく』("3 Idiots")の挿入歌"Give Me Some Sunshine"のカバー曲をオンライン上のコラボレーションで披露。
しばらく見なかったうちになんかメンバーが増えているような気がする…。
(追記:詳しい方に伺ったところ、Penn Masalaはペンシルバニア大学に在籍している学生たちで結成されているため、卒業や入学にともなって、メンバーが脱退・加入する仕組みになっているとのこと。歌の上手い南アジア系の人って、たくさんいるんだなあ)
以前このブログでも取り上げたグジャラート州アーメダーバード出身のポストロックバンドAswekeepsearchingは、アンビエントアルバム"Sleep"を発表。
以前の記事で紹介したアルバム"Zia"に続く"Rooh"がロック色の強い作品だったが、今回はうって変わって静謐な音像の作品となっている。
制作自体はロックダウン以前に行われていたそうだが、家の中で穏やかに過ごすのにぴったりのアルバムとなっている。
音色ひとつひとつの美しさや存在感はあいかわらず素晴らしく、夜ランニングしながらイヤホンで聴いていたら、まったく激しさのない音楽にもかかわらず脳内麻薬が分泌されまくった。
ムンバイのヒップホップシーンの兄貴的存在であるDivineのレーベル'Gully Gang'からは、コロナウイルスの蔓延が報じられたインド最大のスラム、ダラヴィ出身のラッパーたち(MC Altaf, 7Bantaiz, Dopeadelicz)による"Stay Home Stay Safe"がリリースされた。
このタイトルは、奇しくも「その1」で紹介したやはりムンバイのベテランラッパーAceによる楽曲と同じものだが、いずれも同胞たちに向けて率直にメッセージを届けたいという気持ちがそのまま現れた結果なのだろう。
アクチュアルな社会問題に対して、即座に音楽を通したメッセージを発表するインドのラッパーたちの姿勢からは、学ぶべきところが多いように思う。
タミル系が多いダラヴィの住民に向けたメッセージだからか、最後のヴァースをラップするDopeadeliczのStony Psykoはタミル語でラップしており、ムンバイらしいマルチリンガル・ラップとなっている。
ムンバイのヒップホップシーンからもう1曲。
昨年リリースしたファーストアルバム"O"が高い評価を受けたムンバイのラッパーTienasは、早くもセカンドアルバムの"Season Pass"を発表。
彼が「ディストピア的悪夢」と呼ぶ社会的かつ内省的なリリックは、コロナウイルスによるロックダウン下の状況にふさわしい内容のものだ。
この"Fubu"は、歪んだトラックに、オールドスクールっぽいラップが乗るTienasの新しいスタイルを示したもの。
トラックはGhzi Purなる人物によるもので、リリックには、かつてAzadi Recordsに所属していた名トラックメーカーSez on the Beatへの訣別とも取れる'I made it without Sez Beat, Bitch'というラインも含まれている。
直後に'I don't do beef'(争うつもりはない)というリリックが来るが、その真意はいかに。
今作も非常に聞き応えがあり、インドの音楽情報サイトWild Cityでは「Kendrick LamarやVince Staples, Nujabesが好きなら、間違いなく気にいる作品」と評されている。
ムンバイのエレクトロニック系トラックメーカーMalfnktionは、地元民に捧げる曲として"Rani"を発表。
いかにもスマホで取り急ぎ撮影したような縦長画面の動画にDIY感覚を感じる。
世界的にも厳しい状況が続きそうですが、インドの音楽シーンからはまだまだこの時期ならではの面白い作品が出てきそうな予感。
引き続き、注目作を紹介してゆきたいと思います!
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goshimasayama18 at 12:00|Permalink│Comments(0)
2019年08月13日
ここ最近の面白い新曲を紹介!Karsh Kale feat. Komorebi, Aswekeepsearching, Swarthy Korwar feat. MC Mawaliほか
ここ最近、以前紹介したアーティストを中心に面白いリリースが相次いでいるので、今回はまとめて紹介してみます。
以前「インドのインディーズシーンの歴史的名曲レビュー」でも取り上げたタブラプレイヤー兼フュージョン・エレクトロニックの大御所Karsh Kaleは、日本のカルチャーの影響を受けた女性エレクトロニカアーティストKomorebiをフィーチャーした新曲をリリース。
Karsh Kale feat. Komorebi "Disappear"
両方のアーティストの良さが活きた素晴らしい出来栄えの楽曲。
Komorebiはここ1〜2年でどんどん評価を上げており、ついにフュージョン音楽(ここで言うフュージョンはインド伝統音楽と現代音楽の融合のこと)のパイオニアの一人で、メインストリームの映画音楽でも活躍するKarsh Kaleに抜擢されるまでになった。
映像から音作りまで、非常にアーティスティックな彼女が今後どのような受け入れられ方をするのか、注目して見守りたい。
バンガロールを拠点に活躍するポストロックのAswekeepsearchingは、よりロック色の強い新曲"Rooh"(ウルドゥー語で「精神」という意味の単語か)をリリース。
今作では、ひとつ前のアルバム"Zia"で見られたエレクトロニックの要素は見られず、よりロック的な音作りの楽曲となっているが、演奏はともかくヴォーカルがLUNA SEAの河村隆一っぽく聴こえるところが好みが分かれそうだ。
彼らは新曲と同名のニューアルバムを準備中とのこと。
インドのポストロックシーンの代表格である彼らが、どんな新しいサウンドを届けてくれるのだろうか。
アメリカ出身のインド系女性シンガーMonica Dograは、フュージョンヒップホップ的な楽曲"Jungli Warrior"をリリース。
Divineらのガリー・ラップ以降、なんの変哲も無いインドの日常風景やそこらへんのオヤジをかっこよく撮るのが流行っているようだが、このビデオでもボート漕ぎのおっさんが非常にクールな質感で映されている。
オシャレで絵になるもののみを映すのではなく、日常を「リアルでかつクールなもの」として再定義するこの傾向は、かっこいいし面白いし個人的にも大好きだ。
タイトルはの"Jungli Warrior"は「ワイルドな戦士」といった意味。
余談だが英語でも日本語でも通じる"Jungle"はインド由来の言葉である。
在英インド系タブラ奏者/ジャズ・パーカッショニストのSarathy Korwarは、ムンバイのアンダーグラウンドヒップホップクルーSwadesiのMC Mawaliをフィーチャーした"Mumbay"をリリース。
ひたすらムンバイの街と人々を映した映像は、まさに日常をクール化する作風の具体例と言っていいだろう。
ムンバイの映像に合わせて、もろジャズなトラックに、ラップと呼ぶにはインド的過ぎるMawaliの語りが乗ると、まるでニューヨークあたりのように、不穏かつスタイリッシュに映るのが不思議だ。
冒頭に映画『ガリーボーイ』で有名になったフレーズ'Apna Time Aayega'がプリントされたTシャツや、ダラヴィのラッパーたちが少しだが映っている。
音楽的には変拍子が入ったノリにくいリズムが、不思議な緊張感を醸し出していて、大都会ムンバイの雰囲気が伝わってくるかのような楽曲に仕上がっている。
Sarathy Korwarは、2016年に名門Ninja Tuneから、デビュー・アルバム"Day to Day"をリリースしたアーティスト。
ジャズにインドに暮らすアフリカ系少数民族Siddi族の音楽を取り入れた音楽性がジャイルス・ピーターソンやフォー・テットにも高い評価を受け、その後はカマシ・ワシントンらのオープニング・アクトを務めるなどヨーロッパを中心に活躍している。
"Mumbay"は彼のセカンド・アルバム"More Arriving"からの楽曲。
Sarathyは「これまでにイギリスで考えられてきた典型的なインドのサウンドではなくて、本国とディアスポラ双方の2019年の新しい音楽のショーケースを見せたかったんだ」と述べている。
アルバムの他の楽曲にはデリーの大注目ラッパーPrabh Deepや闘争のレゲエ・アーティストDelhi Sultanateも参加している。
新しい世代の在外インド人系フュージョン・アーティストとして要注目だ。
この"Mumbay"という楽曲は、「ムンバイ(ボンベイ)という都市へのラブレターのようなもの」で、この街の二重性や相反する物語を表すもの」だそう。
(https://www.vice.com/en_in/article/xwndb7/stream-sarathy-korwars-new-single-mumbay-ft-mc-mawali-of-swadesi)
以前紹介したDIVINEの"Yeh Mera Bombay"とも似たテーマを扱っているようにも思える。
ちなみにムンバイの老舗ヒップホップクルー、Mumbai's Finestによると「ムンバイは名前で、ボンベイは感情だ。同じように聴こえるかもしれないけど、ボンベイには意味があるんだ(欠点もね)」(Mumbai is the name and Bombay is a feeling, It may sound the same, but Bombay is the meaning (demeaning)!)とのこと。
この街の文化的な豊かさやいびつさが、今後ますます素晴らしい作品を生むことになりそうだ。
今回紹介したアーティストを過去に取り上げた記事はこちらから。
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以前「インドのインディーズシーンの歴史的名曲レビュー」でも取り上げたタブラプレイヤー兼フュージョン・エレクトロニックの大御所Karsh Kaleは、日本のカルチャーの影響を受けた女性エレクトロニカアーティストKomorebiをフィーチャーした新曲をリリース。
Karsh Kale feat. Komorebi "Disappear"
両方のアーティストの良さが活きた素晴らしい出来栄えの楽曲。
Komorebiはここ1〜2年でどんどん評価を上げており、ついにフュージョン音楽(ここで言うフュージョンはインド伝統音楽と現代音楽の融合のこと)のパイオニアの一人で、メインストリームの映画音楽でも活躍するKarsh Kaleに抜擢されるまでになった。
映像から音作りまで、非常にアーティスティックな彼女が今後どのような受け入れられ方をするのか、注目して見守りたい。
バンガロールを拠点に活躍するポストロックのAswekeepsearchingは、よりロック色の強い新曲"Rooh"(ウルドゥー語で「精神」という意味の単語か)をリリース。
今作では、ひとつ前のアルバム"Zia"で見られたエレクトロニックの要素は見られず、よりロック的な音作りの楽曲となっているが、演奏はともかくヴォーカルがLUNA SEAの河村隆一っぽく聴こえるところが好みが分かれそうだ。
彼らは新曲と同名のニューアルバムを準備中とのこと。
インドのポストロックシーンの代表格である彼らが、どんな新しいサウンドを届けてくれるのだろうか。
アメリカ出身のインド系女性シンガーMonica Dograは、フュージョンヒップホップ的な楽曲"Jungli Warrior"をリリース。
Divineらのガリー・ラップ以降、なんの変哲も無いインドの日常風景やそこらへんのオヤジをかっこよく撮るのが流行っているようだが、このビデオでもボート漕ぎのおっさんが非常にクールな質感で映されている。
オシャレで絵になるもののみを映すのではなく、日常を「リアルでかつクールなもの」として再定義するこの傾向は、かっこいいし面白いし個人的にも大好きだ。
タイトルはの"Jungli Warrior"は「ワイルドな戦士」といった意味。
余談だが英語でも日本語でも通じる"Jungle"はインド由来の言葉である。
在英インド系タブラ奏者/ジャズ・パーカッショニストのSarathy Korwarは、ムンバイのアンダーグラウンドヒップホップクルーSwadesiのMC Mawaliをフィーチャーした"Mumbay"をリリース。
ひたすらムンバイの街と人々を映した映像は、まさに日常をクール化する作風の具体例と言っていいだろう。
ムンバイの映像に合わせて、もろジャズなトラックに、ラップと呼ぶにはインド的過ぎるMawaliの語りが乗ると、まるでニューヨークあたりのように、不穏かつスタイリッシュに映るのが不思議だ。
冒頭に映画『ガリーボーイ』で有名になったフレーズ'Apna Time Aayega'がプリントされたTシャツや、ダラヴィのラッパーたちが少しだが映っている。
音楽的には変拍子が入ったノリにくいリズムが、不思議な緊張感を醸し出していて、大都会ムンバイの雰囲気が伝わってくるかのような楽曲に仕上がっている。
Sarathy Korwarは、2016年に名門Ninja Tuneから、デビュー・アルバム"Day to Day"をリリースしたアーティスト。
ジャズにインドに暮らすアフリカ系少数民族Siddi族の音楽を取り入れた音楽性がジャイルス・ピーターソンやフォー・テットにも高い評価を受け、その後はカマシ・ワシントンらのオープニング・アクトを務めるなどヨーロッパを中心に活躍している。
"Mumbay"は彼のセカンド・アルバム"More Arriving"からの楽曲。
Sarathyは「これまでにイギリスで考えられてきた典型的なインドのサウンドではなくて、本国とディアスポラ双方の2019年の新しい音楽のショーケースを見せたかったんだ」と述べている。
アルバムの他の楽曲にはデリーの大注目ラッパーPrabh Deepや闘争のレゲエ・アーティストDelhi Sultanateも参加している。
新しい世代の在外インド人系フュージョン・アーティストとして要注目だ。
この"Mumbay"という楽曲は、「ムンバイ(ボンベイ)という都市へのラブレターのようなもの」で、この街の二重性や相反する物語を表すもの」だそう。
(https://www.vice.com/en_in/article/xwndb7/stream-sarathy-korwars-new-single-mumbay-ft-mc-mawali-of-swadesi)
以前紹介したDIVINEの"Yeh Mera Bombay"とも似たテーマを扱っているようにも思える。
ちなみにムンバイの老舗ヒップホップクルー、Mumbai's Finestによると「ムンバイは名前で、ボンベイは感情だ。同じように聴こえるかもしれないけど、ボンベイには意味があるんだ(欠点もね)」(Mumbai is the name and Bombay is a feeling, It may sound the same, but Bombay is the meaning (demeaning)!)とのこと。
この街の文化的な豊かさやいびつさが、今後ますます素晴らしい作品を生むことになりそうだ。
今回紹介したアーティストを過去に取り上げた記事はこちらから。
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goshimasayama18 at 23:28|Permalink│Comments(0)
2018年03月26日
春の訪れをインドのポストロックで Aswekeepsearching
ども、凡平です。
桜もだいぶ咲いてきて、もうすっかり春ですなあ。
ほぼ毎回どこかしらインド色の濃いアーティストを紹介してきたこのブログだけど、今日は、「え? これもインドのバンド?」っていうポストロックバンドを紹介します。
彼らの名前は、Aswekeepsearching.
グジャラート州の州都、アーメダーバード出身のポストロックバンドだ。
まず紹介する曲のタイトルは"And Then Came Spring"
この季節にぴったりのタイトルじゃあないですか!
繊細にして壮大、叙情的かつ映像的なサウンドは、インド感ゼロ!
後半で入ってくるヴォーカルはヒンディー語だけど、歌い回しは全然インドっぽくなくて、むしろヴォーカルが英語じゃない分だけ無国籍感が一層際立つ効果を生み出している。
ヒンディーが分かる人にとってはそうじゃないのかもしれないけど。
いつも、ついつい 「音楽とインド社会の関わり」みたいな切り口で書いてしまっているけど、インドには、インドらしさとかそういったことに関係なく素晴らしいアーティストがたくさんいるのもまた事実。
とくに、かつて紹介したデスメタルがそうであったように、ポストロックとかエレクトロニカみたいなコアなジャンルにその傾向が顕著だ。
どうです、人気の少ない夜の桜並木を歩きながら聴いたら最高の気分だろうなあ、って感じの音楽じゃないですか。
彼らが2017年にリリースしたアルバム、"Zia"から、旅立ちの時期にふさわしいタイトルの曲をもうひとつ。
解き放たれる希望。
"Hope Unfolds"
不思議なバンド名は、ベーシストがなかなか見つからず、探し続けていたことにちなんでいるそうだ(今ではちゃんとメンバーがいる)。
彼らの出身のグジャラート州はインドの国父、マハートマー・ガーンディーの故郷としても知られている保守的な土地で(ちなみに現首相のモディの地元もグジャラートで、彼は元州知事)、飲酒が違法とされているドライ・ステイトとしても有名。
どうしてそんな保守的な土地でこういう音楽性が育まれたのか、非常に気になるところではある。
インタビューによると、影響を受けたバンドはCaspian, 65daysofstatic, This Will Destroy You, Tychoというマニアックっぷり。
彼らのアルバムはFlower blossoms in the Spaceというロシアのレーベル(ポストロック中心)からリリースされていて、改めてコアなジャンルの国境の無さを感じさせられる。
ロックがある程度の「上流階級の音楽」であるインドでは、パンクやロックンロールみたいな初期衝動の美学みたいなバンドは少なくて、逆にテクニカルなメタルや耽美的なポストロックのレベルが非常に高いという印象がある。
たまには素敵でしょ、こういうのも。
それでは。
桜もだいぶ咲いてきて、もうすっかり春ですなあ。
ほぼ毎回どこかしらインド色の濃いアーティストを紹介してきたこのブログだけど、今日は、「え? これもインドのバンド?」っていうポストロックバンドを紹介します。
彼らの名前は、Aswekeepsearching.
グジャラート州の州都、アーメダーバード出身のポストロックバンドだ。
まず紹介する曲のタイトルは"And Then Came Spring"
この季節にぴったりのタイトルじゃあないですか!
繊細にして壮大、叙情的かつ映像的なサウンドは、インド感ゼロ!
後半で入ってくるヴォーカルはヒンディー語だけど、歌い回しは全然インドっぽくなくて、むしろヴォーカルが英語じゃない分だけ無国籍感が一層際立つ効果を生み出している。
ヒンディーが分かる人にとってはそうじゃないのかもしれないけど。
いつも、ついつい 「音楽とインド社会の関わり」みたいな切り口で書いてしまっているけど、インドには、インドらしさとかそういったことに関係なく素晴らしいアーティストがたくさんいるのもまた事実。
とくに、かつて紹介したデスメタルがそうであったように、ポストロックとかエレクトロニカみたいなコアなジャンルにその傾向が顕著だ。
どうです、人気の少ない夜の桜並木を歩きながら聴いたら最高の気分だろうなあ、って感じの音楽じゃないですか。
彼らが2017年にリリースしたアルバム、"Zia"から、旅立ちの時期にふさわしいタイトルの曲をもうひとつ。
解き放たれる希望。
"Hope Unfolds"
不思議なバンド名は、ベーシストがなかなか見つからず、探し続けていたことにちなんでいるそうだ(今ではちゃんとメンバーがいる)。
彼らの出身のグジャラート州はインドの国父、マハートマー・ガーンディーの故郷としても知られている保守的な土地で(ちなみに現首相のモディの地元もグジャラートで、彼は元州知事)、飲酒が違法とされているドライ・ステイトとしても有名。
どうしてそんな保守的な土地でこういう音楽性が育まれたのか、非常に気になるところではある。
インタビューによると、影響を受けたバンドはCaspian, 65daysofstatic, This Will Destroy You, Tychoというマニアックっぷり。
彼らのアルバムはFlower blossoms in the Spaceというロシアのレーベル(ポストロック中心)からリリースされていて、改めてコアなジャンルの国境の無さを感じさせられる。
ロックがある程度の「上流階級の音楽」であるインドでは、パンクやロックンロールみたいな初期衝動の美学みたいなバンドは少なくて、逆にテクニカルなメタルや耽美的なポストロックのレベルが非常に高いという印象がある。
たまには素敵でしょ、こういうのも。
それでは。
goshimasayama18 at 23:20|Permalink│Comments(0)