Animesh

2021年05月10日

次世代の主流になりうるか? インドの「アンダーグラウンド・メインストリーム・ポップ」!


ご存知の通り、インドのポピュラーミュージックの主流は映画音楽である。

ところが、21世期に入った頃から、少しずつ状況が変わり始めた。
インドの経済成長による衛星放送の普及、そしてインターネットの発展にともなって、人々が様々な音楽を聴く機会が増えてきたのだ。
2010年代になると、そうした音楽を好む若者たちのなかから、多くのラッパーやロックバンドや電子音楽アーティストが登場した…というのは、いつもこのブログで紹介している通りである。

とはいえ、インド全体の音楽シーンのなかでインディペンデント・ミュージックが占める割合はまだまだ少ない。
都市部の若者を中心にファンやリスナーを獲得しているものの、圧倒的な規模や予算で市場を席巻する映画音楽には遠く及ばない。
やはり、いまでもインドの音楽シーンは、映画音楽を中心に回っているのだ。

それでも、桁違いの人口規模を誇るインドのインディーミュージックシーンはびっくりするほど多様だ。
なかには、インドらしさをまったく感じさせない、アメリカやイギリスのチャートの上位を賑わせそうなポップサウンドを作っているアーティストたちもいる。
いわば彼らは「世界のメインストリームの音楽を作っているインドのアンダーグラウンド・アーティスト」というわけだ。

今のところ、彼らの音楽はまだポピュラリティを獲得しているとは言い難いが、質の高い音楽を作っているアーティストも多い。
といわうけで、今回はそんなアーティストたちを紹介したいと思います。


手始めに、先日紹介した「日本語で歌うインド在住のインド人シンガー」Drish Tとも共演していたAnimeshの"Pressure on It"を聴いてみて欲しい。
ファンキーなリズムに乗ったキャッチーなメロディーは、ちょっとBruno Marsのアップテンポな曲を思わせるところもある。
ヴォーカルのFranz Dowlingはオーストラリアのブリスベン在住のシンガーだそうで、国籍を超えたコラボレーションであるという点もとても今っぽい。
AnimeshはDrish Tと同じチェンナイのKM Music Conservatory(A.R.ラフマーンが作った音楽学校)に通う学生とのことで、彼女と同年代なら、まだ20歳くらいということになる。
これから洗練されてゆけば、かなり面白い存在になりそうだ。


続いて紹介するのは、同じくチェンナイのポップアーティストKevin Fernandoが、プロデューサーのAshwin Vinayagamoorthyと女性シンガーのNivedita Lakraと共演した"Foxy".
Kevin Fernandoという欧米風の名前は、おそらく彼がクリスチャンの家庭に生まれたことによるものだろう。
プロデューサーのAshwin Vinayagamoorthyは、ふだんはタミル語映画の音楽を手掛けている人物のようだ。
ラフマーンも然り、いつもは地元のマーケットを意識した音楽を作っていても、こういう欧米ポップス的な引き出しも当然のように持っているというのが現代インドの商業音楽家の強みだろう。


3月にデビュー曲の"Summer Nights"をリリースしたばかりのAneeshは、ムンバイのエレクトロニック・ミュージックのプロデューサー。
ちょっとラテンっぽいリズムを取り入れた楽曲は今の気分にぴったり。
AneeshはAviciiやJonas Blue, KSHMRなどのEDMアーティストの影響を受けているという。
この曲のヴォーカルは、テキサス在住のシンガーソングライターBrandon Chaseで、ここでも国境を超えたコラボレーションが行われている。
インドのインディペンデントシーンには、欧米での生活や留学を経験したアーティストも多く、英語圏のシーンとの心理的・言語的な距離は我々が想像するよりもずっと近い。
他のアジア圏のアーティストと比較して、彼らのこうした点もグローバルな成功へのアドバンテージとなるはずだ。


Chirag Todiはインド西部グジャラート州アーメダーバードのプログレッシブロックバンドHeat Sinkのギタリスト。
ソロ作品の"Desire"ではファンキーな心地よいグルーヴを聴かせてくれている。
男性ヴォーカルはムンバイのバンドSecond SightのPushkar Srivatsar, 女性ヴォーカルはデリーのTania Nambier.
この曲はRolling Stone Indiaが選ぶ2020年のベストシングルにも選ばれていて、こうしたファンキーかつクールなグルーヴはインドの音楽好きに好まれているようだ。


もっとローカルなところだと、例えばこのAdhiraj Mathur.
まだ無名なミュージシャンで、情報はほとんど無いのだが、この曲は「シャワーを浴びているときに思いついて、ベッドルームでミキシングとマスタリングして、iPhoneでミュージックビデオを撮影した作品とのこと。
アナログビデオ風の映像の加工も最近インドのミュージックビデオでよく見られる傾向。
こうした映像が撮れるビデオカメラの時代には生まれていなかった若い世代が、アナログ的な要素を積極的に取り入れているのが興味深い(そもそも、もし生まれていたとしても、当時のインドにはこうした家庭用の映像機材はほとんど出回っていなかったはずだ)。
渋谷系の日本のミュージシャンが60年代や70年代の洋楽の影響を強く受けていたように、自分たちが持ち得なかった過去へのあこがれがひとつの原動力になっているのだろうか。


ムンバイのエレクトロニック系プロデューサーChaitxnyaの"You Broke Me First Flip"は女性ヴォーカルもの。
アーティスト名は'Chaitanya'と読むのだと思うが、おそらくは同名異人との混同を避けるために、名前を独特の綴りにするというのは、インドの有名人によく見られる手法だ。


ここまで紹介したアーティストたちは、インドのなかでもまだまだ無名で、YouTubeの再生回数も数百回から数千回、もっとも多いChirag Todiでもせいぜい15,000回程度の、ごくマイナーな存在に過ぎない。
オリジナリティーあふれるサウンドで、インドのインディペンデントシーンでより高い評価を確立しているアーティストたちも、コアなジャンルではなく、現代メインストリーム的な楽曲を手掛けている例が散見される。

例えば、日本にも存在しない和風のトラップ・ミュージックである'J-Trap'というジャンルを開拓し、最近ではヒップホップのビートメーカーとしても大活躍しているKaran Kanchan.
DIVINEのようなビッグネームとのコラボレーションでは、YouTubeで1,000万回を超える再生回数を叩き出している彼は、R&BシンガーRamya Pothuriとコラボレーションして、こんなキャッチーな曲をリリースしている。
ぶっといビートのイメージが強かったKanchanが、ここまでスムースかつポップな曲を手がけるのは非常に新鮮!
彼のビートメーカーとしての引き出しは非常に多く、最近ではDIVINEがコロナ禍で奮闘する人々に捧げた"Salaam"でのメロウなサウンドや、Shah RuleがMass Appeal Indiaからリリースした"Clap Clap"でのピアノを導入したビートが印象に残っている。


インディペンデント・シーンでの評価の高いムンバイのシンガーソングライターTejasは、この"Down and Out"でAviciiの"Wake Me Up"を思わせるカントリーっぽいメロディーと四つ打ちのビートの融合を試みている。
このブログでもこれまでにPrateek KuhadRaghav Meattleといった才能あふれるアーティストを紹介してきたが、彼の楽曲からもインドのシンガーソングライターのレベルの高さを改めて感じさせられる。


今回紹介したような「アンダーグラウンド・メインストリーム・ポップ」はまだ小さな潮流だが、彼らのポップセンスと、英詞での表現が得意という特性がうまく化ければ、インド国内のみならず、グローバルな市場で幅広いリスナーを獲得することも夢ではないように思う。
インドのインディー音楽に注目する立場としては、インドならではのユニークなサウンドを作っているアーティストも大好きが、こうした世界に通用するサウンドを作ろうとしているアーティストたちも応援したい。

彼らの今後の活躍に期待!




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goshimasayama18 at 20:14|PermalinkComments(0)

2021年04月12日

インドで発見!日本語で歌うシンガーソングライター Drish T

日本人にとってうれしいことに、アニメや漫画といった日本のカルチャーは、インドのインディー音楽シーンでも一定の存在感を放っている。
Kraken, Komorebi, Riatsuなど、これまで何度も日本の影響を受けたアーティストを紹介してきたが、ここにきて、新たな次元で日本にインスパイアされたシンガーソングライターを見つけてしまった。

彼女の名前はDrish TことDrishti Tandel.
DrishT

ムンバイ育ち、若干20歳の彼女は、他のアーティストのように、曲に日本語のタイトルを付けたり、日本のアニメ風のミュージックビデオを作ったりしているだけではない。
なんと、彼女は日本語で歌っているのだ。

まずは彼女の曲"Convenience Store(コンビニ)"を聴いてもらおう。
(ちなみに、カタカナの「コンビニ」までがタイトルの一部だ)
 
大貫妙子を思わせる透明感のある声のキュートなポップス!
日本語の発音もとてもきれいだし、わざとなのかどうか分からないが、「忘れものはいないの?」という表現がユニークでかわいらしい。

彼女がすごいのは、この1曲だけ日本語で歌っているのではなく、「これまでに発表した全ての曲を日本語で歌っている」ということだ。
考えてみてほしい。
日本にも英語で歌うアーティストはいるが、全ての曲を日本語でも英語でもない、母語ではない言語で歌うアーティストがいるだろうか?

Drish Tは他のアーティストの楽曲にゲストヴォーカルとして参加することも多く、iTooKaPillと共演した"Portal"は、なんと日本語の「語り」から始まるエレクトロニック・バラードだ。
声質やトラックのせいもあると思うが、この曲はちょっと宇多田ヒカルっぽく聴こえる。

Animeshというアーティストとコラボレーションした"血の流れ(Blood Flow)"では、アンビエントっぽいトラックに乗せたメロウなヴォーカルを披露している。
インドの音楽シーンに突如現れた日本語シンガー、Drish T, 彼女はいったい何者なのか?
さっそくTwitterのダイレクトメッセージを通じてインタビューを申し込んでみたところ、「日本でインドの音楽のブログを書いている人がいるなんて思わなかった。喜んで質問に答えます!」とすぐに快諾の返事が来た。
それではさっそく、インド生まれの日本語シンガー、Drish Tインタビューの模様をお届けしよう。


ーまず最初に、あなたの経歴を教えてください。あなたはムンバイ在住の二十歳のシンガーソングライターで、カレッジで音楽を学んでいる、ってことであってますか?

「もちろんです!私はムンバイで育ったんですが、でも今はチェンナイにあるA.R.ラフマーンの音楽学校に通っていてディプロマ課程の2年目です」

ーということは、現在はチェンナイに住んでいるんですか?

「はい。ここで学んで3年になります。でもロックダウンでみんな家に帰っていたから、最近になってやっと最終学年がスタートしたところです」

ー学校が再開してよかったですね。いつ、どうやって作曲や歌を始めたんですか?

「最初は8年生(中学2年)のときにアコースティックギターを弾き始めました。叔父さんの古いギターを直して使ったんです。でもすぐに歌うほうが好きだって気がつきました。それで西洋風のヴォーカルを始めて、トリニティ(ロンドンの名門音楽カレッジ)のグレード5の試験を受けることにしました。それから、KM音楽学院(KM Music Conservatory:前述のA.R.ラフマーンの音楽学校)を見つけて、芸術系の学校で12学年(日本でいう高校3年)を終えたあとに、ここに来たんです」

ーギターを始めた頃は、どんな音楽をプレイしていたんですか?

「そのころはポップ・パンクに夢中だったから、ポップ・パンクから始めました」

ー例えばGreen Dayとかですか?古くてすみません、あなたよりだいぶ年上なので(笑)。

「(笑) そう。6年生と7年生(中1)の頃、Green Dayの"Boulevard of Broken Dreams"がすごく人気だった。でもPanic! At The DiscoとかTwenty One Pilots, 5 Seconds To Marsの曲なんかも弾いてました!」

ーいいですね!私はGreen DayでいうとBasket Case世代でした。じゃあ、彼らがあなたに影響を与えたアーティストということですか?

「ええ。最初は彼らの曲をたくさん聴いていた。それからママの古いCDのコレクションで、ブライアン・メイとかマイケル・ジャクソンとかABBAとかQueenも!
それから、ちょっとずつ日本や韓国の音楽も聴くようになって、いまではそういう音楽から影響を受けています!あとはカレッジの友達が作る音楽にも」

ーあなたが日本語でとても上手に歌っているので驚きました。日本語も勉強しているんですか?(ここまで英語でインタビューしていたのだが、この質問に彼女は日本語で答えてくれた)
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ーすごい!漢字もたくさん知ってますね。どうやって日本語で歌詞を書いているのですか?

「ありがとうございます(日本語で)!
日本語の歌をたくさん聴いているし、アニメとかインタビューとかポッドキャストとか、いろんなメディアを通して、言葉の自然な響きを学ぼうと努力してる。それで、歌詞を書こうと座ったら、考えなくても言葉が浮かんでくるようになりました。今では日本語が私の内面の深い感情をもっともうまく表現できる言語です。英語よりもね」

ーいつ、どうやって日本のカルチャーを見つけたんですか?

「9年生(中3)と10年生(高1)の頃、YouTuberをたくさん見ていたんだけど、ある時突然彼らが『デスノート』と『進撃の巨人』の話をするようになった(笑)。それですごく興味を持って、最初に見始たのが『四月は君の嘘』。音楽に関する話だったので。それからもっとたくさんアニメを見続けて、とても印象的で美しい言葉だから、日本語も勉強したいって思いました。そういうわけで、Duolingoで独学を始めて、日本の文化に関する本もたくさん読みました。
日本の文化でいちばん好きなのは、礼儀正しさと敬意です。私はすべての人が敬意を持って扱われるべきだと信じているから、すぐに日本の文化に共感ました。
2019年には日本語能力試験(JLPT)のN4(4級)に合格したんです!」

ーおめでとうございます!あなたの言ってること、分かる気がします。僕の場合は19歳のときにインドを旅して、それからずっとインドが好きなので。インドの好きなところは、活気があるところと文化の多様性ですね。僕の場合は、インドの言葉ができないってのが違うけど。勉強するべきだったかな…。

「それは素晴らしい!ヒンディー語はとても簡単だし、北インドで最も共通して話されている言語です。私は南インドの言語を知らないから、今住んでいるチェンナイではちょっと苦労することもあります」

お気に入りのアニメや日本のミュージシャンを教えてもらえますか?

「私のお気に入りの日本のアニメは、なんといってもジブリの映画!『ハウルの動く城』はお気に入りの一つです。『ハイキュー!!』も大好き。登場人物たちを見てると、あたたかくてハッピーな気持ちになれます。もちろん、『鬼滅の刃』『進撃の巨人』『僕のヒーローアカデミア』、最近では『呪術廻戦』も」

ージブリの作品はどれも素晴らしいですよね。もう『呪術廻戦』もご存知なんですね!日本では去年『鬼滅の刃』の映画が大ヒットして、次は『呪術廻戦』が来るんじゃないかってみんな話してますよ。

「ええ。『呪術廻戦』はインドでも私たちの世代にとても人気です!
『NARUTO!』みたいなクラシックな作品ももちろん好き。
日本の音楽に関して言えば、大橋トリオ、久石譲、林ゆうき、Tempalay、Burnout Syndromes、Radwimps、米津玄師、神山羊、King Gnuをたくさん聴いているし、他にもお気に入りは大勢います。挙げればきりがないです(笑)」

ー(凄い…。知らないアーティストもいる…)韓国の音楽も聴いているって言ってましたよね。今ではK-Popは世界中で人気がありますが、日本の音楽と韓国の音楽の違いはどんなところだと思いますか?

「あ、百景を挙げるのを忘れてた!最近ではマスロックやプログレッシブロックもたくさん聴いています。
そうです、K-Popはインドでも大人気です。もちろん、BTSはとくに。私も彼らの音楽は大好きです。なにより、いろんな意味で盛り上げてくれるので。でも、彼らみたいなグループはとても商業的だってことにすぐに気がついて、もっとインディー・ミュージックを聴くようになった。そう、日本の音楽のほうが、より誠実な感じがします。
あっ!toeとu-zhaanのことも言い忘れてました!」

ーK-Popは国際的なマーケットに向けたビッグビジネスって感じですよね。日本の方が人口が多いからかもしれませんが、日本のアーティストはもっと国内マーケット向けに音楽を作っていて、そのことがユニークなサウンドを生み出しているようにも思います。どっちのほうが良いということではなく、どちらも面白いですよね。
プログレッシブロックやマスロックが好きなら、デリーのバンドKrakenは知ってますか? 彼らも日本のカルチャーから影響を受けているバンドです。

「そう、日本の音楽はとてもユニークで、ほとんどの人がなかなかそのことを理解していない。でもインドの人たちも、少しずつ東アジアのカルチャーに対してオープンになってきています。
Krakenのことはちょっと前に知ったのだけど、彼らは本当にクール。私は日本とインドが私たちの文化を超えてつながるのが大好き!」

ーところで、iTooKaPill, Animesh, Ameen Singhなどのたくさんのミュージシャンと共演していますよね。彼らのことは知りませんでしたが、とても才能があるミュージシャンたちで驚きました。どうやって彼らと知り合って、コラボレーションすることになったんですか?

「ええ(笑)、彼らはミュージックカレッジの同級生なんです。ここでたくさんの面白くて才能のある人たちと会えて、素晴らしいです」

ー最高ですね。ところで、これまでずっと日本語で楽曲をリリースしてきましたが、インドの人々のリアクションはどうでしたか?彼らにとっては、意味がわからない言語だと思うのですが。

「そうですね、実際、私の音楽をリリースすることにはためらいがあったのですが、でもK-Popもインドで人気があるし、人々が新しい文化やカルチャーを受け入れるようになってきたって気付きました。それで、みんなが歌詞を理解できるように、リリックビデオを作りました。みんなのリアクションには、とても満足しています。日本語で歌っているから、音楽業界のインフルエンサーたちも注目してくれた。インドではとても珍しいことだから!」

ー『コンビニ』みたいな曲はどうやって書いたんですか?あの曲、すごく気に入っているのですが、日本の暮らしを想像しながら書いたんですか?

「ありがとうございます(日本語で)。私はよくパンケーキを焼くし、日本のコンビニに行くvlogをたくさん見てたから、自分でちょっとした世界を作ってみたくなりました」

ー歌詞の中で「忘れ物はいないの?」っていうところが好きです。「いない」って、人に対して使う言葉だから、なんだか詩的でかわいらしく聞こえるんです。まるで卵とかバターを友達みたいに扱っている気がして。

「歌をレコーディングした後に気が付いたんですが、そのままにしました!それはすごくキュートな見方ですね」

ー間違いだったんですか?わざとそうしているのかと思いました。

「はい、間違いなんです。でもそのままにしておいてよかった(笑)」

ー他の曲は、もっと心の状態を表したものが多そうですね。" Let's Escape (Nigeyo)"(逃げよう)も気に入っています。ギターが素晴らしくて。この曲は何から逃げることを歌っているのですか?

「そう、他の曲は心の状態について歌っています。親友のAmeenがすごくクールなリフを弾いてくれて、共演しようって言ってくれたんです。歌詞を書こうと思って座ったら、すぐに『逃げよう』って言葉が浮かんできた。歌詞全体は、宿命論的な心のあり方から逃げることについて書いているけど、いろんな解釈ができます。何らかの感情、場所、人からエスケープするとかね」

現時点の最新曲"Let's Escape(Nigeyo)"はAmeen Singhのマスロック的なギターをフィーチャーした楽曲で、彼女の新しい一面を見ることができる。

「本当は、2020年の夏に両親といっしょに日本を訪れて、いくつかの音楽大学をチェックする予定でした。でもパンデミックが起こってしまって…。本当に、いつか日本で学んでみたいと思ってます」

ー日本にはまだ来たことがないんですか?

「ええ、まだないんです。チケットも予約していたのに、全てキャンセルしなければならなりませんでした」


と、最後まで日本への思いを語ってくれたDrish T.
彼女が安心して日本に来ることができる日が訪れることを、心から願っている。

彼女がコラボレーションしていたiTooKaPillやAnimeshも才能あるミュージシャンで、インドの若手アーティストの(というか、A.R.ラフマーンのKM音楽学院の)レベルの高さを思い知らされる。
というわけで、今回は「インドで日本語で歌うインド人シンガー」Drish Tを紹介しました!
次回は「インドでヒンディー語で歌う日本人シンガー」です !





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