AmeenSingh
2021年04月12日
インドで発見!日本語で歌うシンガーソングライター Drish T
日本人にとってうれしいことに、アニメや漫画といった日本のカルチャーは、インドのインディー音楽シーンでも一定の存在感を放っている。
Kraken, Komorebi, Riatsuなど、これまで何度も日本の影響を受けたアーティストを紹介してきたが、ここにきて、新たな次元で日本にインスパイアされたシンガーソングライターを見つけてしまった。
彼女の名前はDrish TことDrishti Tandel.

ムンバイ育ち、若干20歳の彼女は、他のアーティストのように、曲に日本語のタイトルを付けたり、日本のアニメ風のミュージックビデオを作ったりしているだけではない。
なんと、彼女は日本語で歌っているのだ。
まずは彼女の曲"Convenience Store(コンビニ)"を聴いてもらおう。
(ちなみに、カタカナの「コンビニ」までがタイトルの一部だ)
大貫妙子を思わせる透明感のある声のキュートなポップス!
日本語の発音もとてもきれいだし、わざとなのかどうか分からないが、「忘れものはいないの?」という表現がユニークでかわいらしい。
彼女がすごいのは、この1曲だけ日本語で歌っているのではなく、「これまでに発表した全ての曲を日本語で歌っている」ということだ。
考えてみてほしい。
日本にも英語で歌うアーティストはいるが、全ての曲を日本語でも英語でもない、母語ではない言語で歌うアーティストがいるだろうか?
Drish Tは他のアーティストの楽曲にゲストヴォーカルとして参加することも多く、iTooKaPillと共演した"Portal"は、なんと日本語の「語り」から始まるエレクトロニック・バラードだ。
声質やトラックのせいもあると思うが、この曲はちょっと宇多田ヒカルっぽく聴こえる。
Animeshというアーティストとコラボレーションした"血の流れ(Blood Flow)"では、アンビエントっぽいトラックに乗せたメロウなヴォーカルを披露している。
インドの音楽シーンに突如現れた日本語シンガー、Drish T, 彼女はいったい何者なのか?
さっそくTwitterのダイレクトメッセージを通じてインタビューを申し込んでみたところ、「日本でインドの音楽のブログを書いている人がいるなんて思わなかった。喜んで質問に答えます!」とすぐに快諾の返事が来た。
それではさっそく、インド生まれの日本語シンガー、Drish Tインタビューの模様をお届けしよう。
ーまず最初に、あなたの経歴を教えてください。あなたはムンバイ在住の二十歳のシンガーソングライターで、カレッジで音楽を学んでいる、ってことであってますか?
「もちろんです!私はムンバイで育ったんですが、でも今はチェンナイにあるA.R.ラフマーンの音楽学校に通っていてディプロマ課程の2年目です」
ーということは、現在はチェンナイに住んでいるんですか?
「はい。ここで学んで3年になります。でもロックダウンでみんな家に帰っていたから、最近になってやっと最終学年がスタートしたところです」
ー学校が再開してよかったですね。いつ、どうやって作曲や歌を始めたんですか?
「最初は8年生(中学2年)のときにアコースティックギターを弾き始めました。叔父さんの古いギターを直して使ったんです。でもすぐに歌うほうが好きだって気がつきました。それで西洋風のヴォーカルを始めて、トリニティ(ロンドンの名門音楽カレッジ)のグレード5の試験を受けることにしました。それから、KM音楽学院(KM Music Conservatory:前述のA.R.ラフマーンの音楽学校)を見つけて、芸術系の学校で12学年(日本でいう高校3年)を終えたあとに、ここに来たんです」
ーギターを始めた頃は、どんな音楽をプレイしていたんですか?
「そのころはポップ・パンクに夢中だったから、ポップ・パンクから始めました」
ー例えばGreen Dayとかですか?古くてすみません、あなたよりだいぶ年上なので(笑)。
「(笑) そう。6年生と7年生(中1)の頃、Green Dayの"Boulevard of Broken Dreams"がすごく人気だった。でもPanic! At The DiscoとかTwenty One Pilots, 5 Seconds To Marsの曲なんかも弾いてました!」
ーいいですね!私はGreen DayでいうとBasket Case世代でした。じゃあ、彼らがあなたに影響を与えたアーティストということですか?
「ええ。最初は彼らの曲をたくさん聴いていた。それからママの古いCDのコレクションで、ブライアン・メイとかマイケル・ジャクソンとかABBAとかQueenも!
それから、ちょっとずつ日本や韓国の音楽も聴くようになって、いまではそういう音楽から影響を受けています!あとはカレッジの友達が作る音楽にも」
ーあなたが日本語でとても上手に歌っているので驚きました。日本語も勉強しているんですか?(ここまで英語でインタビューしていたのだが、この質問に彼女は日本語で答えてくれた)

ーすごい!漢字もたくさん知ってますね。どうやって日本語で歌詞を書いているのですか?
「ありがとうございます(日本語で)!
日本語の歌をたくさん聴いているし、アニメとかインタビューとかポッドキャストとか、いろんなメディアを通して、言葉の自然な響きを学ぼうと努力してる。それで、歌詞を書こうと座ったら、考えなくても言葉が浮かんでくるようになりました。今では日本語が私の内面の深い感情をもっともうまく表現できる言語です。英語よりもね」
ーいつ、どうやって日本のカルチャーを見つけたんですか?
「9年生(中3)と10年生(高1)の頃、YouTuberをたくさん見ていたんだけど、ある時突然彼らが『デスノート』と『進撃の巨人』の話をするようになった(笑)。それですごく興味を持って、最初に見始たのが『四月は君の嘘』。音楽に関する話だったので。それからもっとたくさんアニメを見続けて、とても印象的で美しい言葉だから、日本語も勉強したいって思いました。そういうわけで、Duolingoで独学を始めて、日本の文化に関する本もたくさん読みました。
日本の文化でいちばん好きなのは、礼儀正しさと敬意です。私はすべての人が敬意を持って扱われるべきだと信じているから、すぐに日本の文化に共感ました。
2019年には日本語能力試験(JLPT)のN4(4級)に合格したんです!」
ーおめでとうございます!あなたの言ってること、分かる気がします。僕の場合は19歳のときにインドを旅して、それからずっとインドが好きなので。インドの好きなところは、活気があるところと文化の多様性ですね。僕の場合は、インドの言葉ができないってのが違うけど。勉強するべきだったかな…。
「それは素晴らしい!ヒンディー語はとても簡単だし、北インドで最も共通して話されている言語です。私は南インドの言語を知らないから、今住んでいるチェンナイではちょっと苦労することもあります」
ーお気に入りのアニメや日本のミュージシャンを教えてもらえますか?
「私のお気に入りの日本のアニメは、なんといってもジブリの映画!『ハウルの動く城』はお気に入りの一つです。『ハイキュー!!』も大好き。登場人物たちを見てると、あたたかくてハッピーな気持ちになれます。もちろん、『鬼滅の刃』『進撃の巨人』『僕のヒーローアカデミア』、最近では『呪術廻戦』も」
ージブリの作品はどれも素晴らしいですよね。もう『呪術廻戦』もご存知なんですね!日本では去年『鬼滅の刃』の映画が大ヒットして、次は『呪術廻戦』が来るんじゃないかってみんな話してますよ。
「ええ。『呪術廻戦』はインドでも私たちの世代にとても人気です!
『NARUTO!』みたいなクラシックな作品ももちろん好き。
日本の音楽に関して言えば、大橋トリオ、久石譲、林ゆうき、Tempalay、Burnout Syndromes、Radwimps、米津玄師、神山羊、King Gnuをたくさん聴いているし、他にもお気に入りは大勢います。挙げればきりがないです(笑)」
ー(凄い…。知らないアーティストもいる…)韓国の音楽も聴いているって言ってましたよね。今ではK-Popは世界中で人気がありますが、日本の音楽と韓国の音楽の違いはどんなところだと思いますか?
「あ、百景を挙げるのを忘れてた!最近ではマスロックやプログレッシブロックもたくさん聴いています。
そうです、K-Popはインドでも大人気です。もちろん、BTSはとくに。私も彼らの音楽は大好きです。なにより、いろんな意味で盛り上げてくれるので。でも、彼らみたいなグループはとても商業的だってことにすぐに気がついて、もっとインディー・ミュージックを聴くようになった。そう、日本の音楽のほうが、より誠実な感じがします。
あっ!toeとu-zhaanのことも言い忘れてました!」
ーK-Popは国際的なマーケットに向けたビッグビジネスって感じですよね。日本の方が人口が多いからかもしれませんが、日本のアーティストはもっと国内マーケット向けに音楽を作っていて、そのことがユニークなサウンドを生み出しているようにも思います。どっちのほうが良いということではなく、どちらも面白いですよね。
プログレッシブロックやマスロックが好きなら、デリーのバンドKrakenは知ってますか? 彼らも日本のカルチャーから影響を受けているバンドです。
「そう、日本の音楽はとてもユニークで、ほとんどの人がなかなかそのことを理解していない。でもインドの人たちも、少しずつ東アジアのカルチャーに対してオープンになってきています。
Krakenのことはちょっと前に知ったのだけど、彼らは本当にクール。私は日本とインドが私たちの文化を超えてつながるのが大好き!」
ーところで、iTooKaPill, Animesh, Ameen Singhなどのたくさんのミュージシャンと共演していますよね。彼らのことは知りませんでしたが、とても才能があるミュージシャンたちで驚きました。どうやって彼らと知り合って、コラボレーションすることになったんですか?
「ええ(笑)、彼らはミュージックカレッジの同級生なんです。ここでたくさんの面白くて才能のある人たちと会えて、素晴らしいです」
ー最高ですね。ところで、これまでずっと日本語で楽曲をリリースしてきましたが、インドの人々のリアクションはどうでしたか?彼らにとっては、意味がわからない言語だと思うのですが。
「そうですね、実際、私の音楽をリリースすることにはためらいがあったのですが、でもK-Popもインドで人気があるし、人々が新しい文化やカルチャーを受け入れるようになってきたって気付きました。それで、みんなが歌詞を理解できるように、リリックビデオを作りました。みんなのリアクションには、とても満足しています。日本語で歌っているから、音楽業界のインフルエンサーたちも注目してくれた。インドではとても珍しいことだから!」
ー『コンビニ』みたいな曲はどうやって書いたんですか?あの曲、すごく気に入っているのですが、日本の暮らしを想像しながら書いたんですか?
「ありがとうございます(日本語で)。私はよくパンケーキを焼くし、日本のコンビニに行くvlogをたくさん見てたから、自分でちょっとした世界を作ってみたくなりました」
ー歌詞の中で「忘れ物はいないの?」っていうところが好きです。「いない」って、人に対して使う言葉だから、なんだか詩的でかわいらしく聞こえるんです。まるで卵とかバターを友達みたいに扱っている気がして。
「歌をレコーディングした後に気が付いたんですが、そのままにしました!それはすごくキュートな見方ですね」
ー間違いだったんですか?わざとそうしているのかと思いました。
「はい、間違いなんです。でもそのままにしておいてよかった(笑)」
ー他の曲は、もっと心の状態を表したものが多そうですね。" Let's Escape (Nigeyo)"(逃げよう)も気に入っています。ギターが素晴らしくて。この曲は何から逃げることを歌っているのですか?
「そう、他の曲は心の状態について歌っています。親友のAmeenがすごくクールなリフを弾いてくれて、共演しようって言ってくれたんです。歌詞を書こうと思って座ったら、すぐに『逃げよう』って言葉が浮かんできた。歌詞全体は、宿命論的な心のあり方から逃げることについて書いているけど、いろんな解釈ができます。何らかの感情、場所、人からエスケープするとかね」
現時点の最新曲"Let's Escape(Nigeyo)"はAmeen Singhのマスロック的なギターをフィーチャーした楽曲で、彼女の新しい一面を見ることができる。
「本当は、2020年の夏に両親といっしょに日本を訪れて、いくつかの音楽大学をチェックする予定でした。でもパンデミックが起こってしまって…。本当に、いつか日本で学んでみたいと思ってます」
ー日本にはまだ来たことがないんですか?
「ええ、まだないんです。チケットも予約していたのに、全てキャンセルしなければならなりませんでした」
と、最後まで日本への思いを語ってくれたDrish T.
彼女が安心して日本に来ることができる日が訪れることを、心から願っている。
彼女がコラボレーションしていたiTooKaPillやAnimeshも才能あるミュージシャンで、インドの若手アーティストの(というか、A.R.ラフマーンのKM音楽学院の)レベルの高さを思い知らされる。
というわけで、今回は「インドで日本語で歌うインド人シンガー」Drish Tを紹介しました!
次回は「インドでヒンディー語で歌う日本人シンガー」です !
Kraken, Komorebi, Riatsuなど、これまで何度も日本の影響を受けたアーティストを紹介してきたが、ここにきて、新たな次元で日本にインスパイアされたシンガーソングライターを見つけてしまった。
彼女の名前はDrish TことDrishti Tandel.

ムンバイ育ち、若干20歳の彼女は、他のアーティストのように、曲に日本語のタイトルを付けたり、日本のアニメ風のミュージックビデオを作ったりしているだけではない。
なんと、彼女は日本語で歌っているのだ。
まずは彼女の曲"Convenience Store(コンビニ)"を聴いてもらおう。
(ちなみに、カタカナの「コンビニ」までがタイトルの一部だ)
大貫妙子を思わせる透明感のある声のキュートなポップス!
日本語の発音もとてもきれいだし、わざとなのかどうか分からないが、「忘れものはいないの?」という表現がユニークでかわいらしい。
彼女がすごいのは、この1曲だけ日本語で歌っているのではなく、「これまでに発表した全ての曲を日本語で歌っている」ということだ。
考えてみてほしい。
日本にも英語で歌うアーティストはいるが、全ての曲を日本語でも英語でもない、母語ではない言語で歌うアーティストがいるだろうか?
Drish Tは他のアーティストの楽曲にゲストヴォーカルとして参加することも多く、iTooKaPillと共演した"Portal"は、なんと日本語の「語り」から始まるエレクトロニック・バラードだ。
声質やトラックのせいもあると思うが、この曲はちょっと宇多田ヒカルっぽく聴こえる。
Animeshというアーティストとコラボレーションした"血の流れ(Blood Flow)"では、アンビエントっぽいトラックに乗せたメロウなヴォーカルを披露している。
インドの音楽シーンに突如現れた日本語シンガー、Drish T, 彼女はいったい何者なのか?
さっそくTwitterのダイレクトメッセージを通じてインタビューを申し込んでみたところ、「日本でインドの音楽のブログを書いている人がいるなんて思わなかった。喜んで質問に答えます!」とすぐに快諾の返事が来た。
それではさっそく、インド生まれの日本語シンガー、Drish Tインタビューの模様をお届けしよう。
ーまず最初に、あなたの経歴を教えてください。あなたはムンバイ在住の二十歳のシンガーソングライターで、カレッジで音楽を学んでいる、ってことであってますか?
「もちろんです!私はムンバイで育ったんですが、でも今はチェンナイにあるA.R.ラフマーンの音楽学校に通っていてディプロマ課程の2年目です」
ーということは、現在はチェンナイに住んでいるんですか?
「はい。ここで学んで3年になります。でもロックダウンでみんな家に帰っていたから、最近になってやっと最終学年がスタートしたところです」
ー学校が再開してよかったですね。いつ、どうやって作曲や歌を始めたんですか?
「最初は8年生(中学2年)のときにアコースティックギターを弾き始めました。叔父さんの古いギターを直して使ったんです。でもすぐに歌うほうが好きだって気がつきました。それで西洋風のヴォーカルを始めて、トリニティ(ロンドンの名門音楽カレッジ)のグレード5の試験を受けることにしました。それから、KM音楽学院(KM Music Conservatory:前述のA.R.ラフマーンの音楽学校)を見つけて、芸術系の学校で12学年(日本でいう高校3年)を終えたあとに、ここに来たんです」
ーギターを始めた頃は、どんな音楽をプレイしていたんですか?
「そのころはポップ・パンクに夢中だったから、ポップ・パンクから始めました」
ー例えばGreen Dayとかですか?古くてすみません、あなたよりだいぶ年上なので(笑)。
「(笑) そう。6年生と7年生(中1)の頃、Green Dayの"Boulevard of Broken Dreams"がすごく人気だった。でもPanic! At The DiscoとかTwenty One Pilots, 5 Seconds To Marsの曲なんかも弾いてました!」
ーいいですね!私はGreen DayでいうとBasket Case世代でした。じゃあ、彼らがあなたに影響を与えたアーティストということですか?
「ええ。最初は彼らの曲をたくさん聴いていた。それからママの古いCDのコレクションで、ブライアン・メイとかマイケル・ジャクソンとかABBAとかQueenも!
それから、ちょっとずつ日本や韓国の音楽も聴くようになって、いまではそういう音楽から影響を受けています!あとはカレッジの友達が作る音楽にも」
ーあなたが日本語でとても上手に歌っているので驚きました。日本語も勉強しているんですか?(ここまで英語でインタビューしていたのだが、この質問に彼女は日本語で答えてくれた)

ーすごい!漢字もたくさん知ってますね。どうやって日本語で歌詞を書いているのですか?
「ありがとうございます(日本語で)!
日本語の歌をたくさん聴いているし、アニメとかインタビューとかポッドキャストとか、いろんなメディアを通して、言葉の自然な響きを学ぼうと努力してる。それで、歌詞を書こうと座ったら、考えなくても言葉が浮かんでくるようになりました。今では日本語が私の内面の深い感情をもっともうまく表現できる言語です。英語よりもね」
ーいつ、どうやって日本のカルチャーを見つけたんですか?
「9年生(中3)と10年生(高1)の頃、YouTuberをたくさん見ていたんだけど、ある時突然彼らが『デスノート』と『進撃の巨人』の話をするようになった(笑)。それですごく興味を持って、最初に見始たのが『四月は君の嘘』。音楽に関する話だったので。それからもっとたくさんアニメを見続けて、とても印象的で美しい言葉だから、日本語も勉強したいって思いました。そういうわけで、Duolingoで独学を始めて、日本の文化に関する本もたくさん読みました。
日本の文化でいちばん好きなのは、礼儀正しさと敬意です。私はすべての人が敬意を持って扱われるべきだと信じているから、すぐに日本の文化に共感ました。
2019年には日本語能力試験(JLPT)のN4(4級)に合格したんです!」
ーおめでとうございます!あなたの言ってること、分かる気がします。僕の場合は19歳のときにインドを旅して、それからずっとインドが好きなので。インドの好きなところは、活気があるところと文化の多様性ですね。僕の場合は、インドの言葉ができないってのが違うけど。勉強するべきだったかな…。
「それは素晴らしい!ヒンディー語はとても簡単だし、北インドで最も共通して話されている言語です。私は南インドの言語を知らないから、今住んでいるチェンナイではちょっと苦労することもあります」
ーお気に入りのアニメや日本のミュージシャンを教えてもらえますか?
「私のお気に入りの日本のアニメは、なんといってもジブリの映画!『ハウルの動く城』はお気に入りの一つです。『ハイキュー!!』も大好き。登場人物たちを見てると、あたたかくてハッピーな気持ちになれます。もちろん、『鬼滅の刃』『進撃の巨人』『僕のヒーローアカデミア』、最近では『呪術廻戦』も」
ージブリの作品はどれも素晴らしいですよね。もう『呪術廻戦』もご存知なんですね!日本では去年『鬼滅の刃』の映画が大ヒットして、次は『呪術廻戦』が来るんじゃないかってみんな話してますよ。
「ええ。『呪術廻戦』はインドでも私たちの世代にとても人気です!
『NARUTO!』みたいなクラシックな作品ももちろん好き。
日本の音楽に関して言えば、大橋トリオ、久石譲、林ゆうき、Tempalay、Burnout Syndromes、Radwimps、米津玄師、神山羊、King Gnuをたくさん聴いているし、他にもお気に入りは大勢います。挙げればきりがないです(笑)」
ー(凄い…。知らないアーティストもいる…)韓国の音楽も聴いているって言ってましたよね。今ではK-Popは世界中で人気がありますが、日本の音楽と韓国の音楽の違いはどんなところだと思いますか?
「あ、百景を挙げるのを忘れてた!最近ではマスロックやプログレッシブロックもたくさん聴いています。
そうです、K-Popはインドでも大人気です。もちろん、BTSはとくに。私も彼らの音楽は大好きです。なにより、いろんな意味で盛り上げてくれるので。でも、彼らみたいなグループはとても商業的だってことにすぐに気がついて、もっとインディー・ミュージックを聴くようになった。そう、日本の音楽のほうが、より誠実な感じがします。
あっ!toeとu-zhaanのことも言い忘れてました!」
ーK-Popは国際的なマーケットに向けたビッグビジネスって感じですよね。日本の方が人口が多いからかもしれませんが、日本のアーティストはもっと国内マーケット向けに音楽を作っていて、そのことがユニークなサウンドを生み出しているようにも思います。どっちのほうが良いということではなく、どちらも面白いですよね。
プログレッシブロックやマスロックが好きなら、デリーのバンドKrakenは知ってますか? 彼らも日本のカルチャーから影響を受けているバンドです。
「そう、日本の音楽はとてもユニークで、ほとんどの人がなかなかそのことを理解していない。でもインドの人たちも、少しずつ東アジアのカルチャーに対してオープンになってきています。
Krakenのことはちょっと前に知ったのだけど、彼らは本当にクール。私は日本とインドが私たちの文化を超えてつながるのが大好き!」
ーところで、iTooKaPill, Animesh, Ameen Singhなどのたくさんのミュージシャンと共演していますよね。彼らのことは知りませんでしたが、とても才能があるミュージシャンたちで驚きました。どうやって彼らと知り合って、コラボレーションすることになったんですか?
「ええ(笑)、彼らはミュージックカレッジの同級生なんです。ここでたくさんの面白くて才能のある人たちと会えて、素晴らしいです」
ー最高ですね。ところで、これまでずっと日本語で楽曲をリリースしてきましたが、インドの人々のリアクションはどうでしたか?彼らにとっては、意味がわからない言語だと思うのですが。
「そうですね、実際、私の音楽をリリースすることにはためらいがあったのですが、でもK-Popもインドで人気があるし、人々が新しい文化やカルチャーを受け入れるようになってきたって気付きました。それで、みんなが歌詞を理解できるように、リリックビデオを作りました。みんなのリアクションには、とても満足しています。日本語で歌っているから、音楽業界のインフルエンサーたちも注目してくれた。インドではとても珍しいことだから!」
ー『コンビニ』みたいな曲はどうやって書いたんですか?あの曲、すごく気に入っているのですが、日本の暮らしを想像しながら書いたんですか?
「ありがとうございます(日本語で)。私はよくパンケーキを焼くし、日本のコンビニに行くvlogをたくさん見てたから、自分でちょっとした世界を作ってみたくなりました」
ー歌詞の中で「忘れ物はいないの?」っていうところが好きです。「いない」って、人に対して使う言葉だから、なんだか詩的でかわいらしく聞こえるんです。まるで卵とかバターを友達みたいに扱っている気がして。
「歌をレコーディングした後に気が付いたんですが、そのままにしました!それはすごくキュートな見方ですね」
ー間違いだったんですか?わざとそうしているのかと思いました。
「はい、間違いなんです。でもそのままにしておいてよかった(笑)」
ー他の曲は、もっと心の状態を表したものが多そうですね。" Let's Escape (Nigeyo)"(逃げよう)も気に入っています。ギターが素晴らしくて。この曲は何から逃げることを歌っているのですか?
「そう、他の曲は心の状態について歌っています。親友のAmeenがすごくクールなリフを弾いてくれて、共演しようって言ってくれたんです。歌詞を書こうと思って座ったら、すぐに『逃げよう』って言葉が浮かんできた。歌詞全体は、宿命論的な心のあり方から逃げることについて書いているけど、いろんな解釈ができます。何らかの感情、場所、人からエスケープするとかね」
現時点の最新曲"Let's Escape(Nigeyo)"はAmeen Singhのマスロック的なギターをフィーチャーした楽曲で、彼女の新しい一面を見ることができる。
「本当は、2020年の夏に両親といっしょに日本を訪れて、いくつかの音楽大学をチェックする予定でした。でもパンデミックが起こってしまって…。本当に、いつか日本で学んでみたいと思ってます」
ー日本にはまだ来たことがないんですか?
「ええ、まだないんです。チケットも予約していたのに、全てキャンセルしなければならなりませんでした」
と、最後まで日本への思いを語ってくれたDrish T.
彼女が安心して日本に来ることができる日が訪れることを、心から願っている。
彼女がコラボレーションしていたiTooKaPillやAnimeshも才能あるミュージシャンで、インドの若手アーティストの(というか、A.R.ラフマーンのKM音楽学院の)レベルの高さを思い知らされる。
というわけで、今回は「インドで日本語で歌うインド人シンガー」Drish Tを紹介しました!
次回は「インドでヒンディー語で歌う日本人シンガー」です !
goshimasayama18 at 20:43|Permalink│Comments(0)