2018年

2019年01月25日

Rolling Stone Indiaが選ぶ2018年のベストミュージックビデオTop10!

ベストシングルベストアルバムと続いた'Rolling Stone Indiaが選ぶ2018年のベスト○○'シリーズ、ひとまず今回でラスト!
今回はミュージックビデオをお届けします。
(元になった記事はこちらhttp://rollingstoneindia.com/10-best-indian-music-videos-2018/

ご存知の通りインドは映画大国ということもあって、映像人材には事欠かないのか、どのビデオもかなりクオリティーの高いものになっている(そうでないものもあるが)。
いずれもベストシングル、ベストアルバムとは重複無しの選曲になっているが、映像だけでなく楽曲もとても質が高いものが揃っていて、インドの音楽シーンの成熟ぶりを感じさせられる。
中世から現代まであらゆる時代が共存する国インドの、最先端の音楽を体験できる10曲をお楽しみください!


Nuka, "Don't Be Afraid"

ダウンテンポの美しいエレクトロポップに重なる映像は、ヒンドゥーの葬送(火葬、遺灰を海に撒く)を描く場面から始まり、死と再生を幻想的に表現したもの。
この音像・映像で内容がインド哲学的なのがしびれるところだ。
本名Anushka Manchanda.
デリー出身の彼女は、タミル語、テルグ語、カンナダ語、ヒンディー語などの映画のプレイバックシンガー(ミュージカルシーンの俳優の口パクのバックシンガー)やアイドルみたいなガールポップグループを経て、現在ではモデルや音楽プロデューサーなどマルチな分野で活躍。
プレイバックシンガー出身の歌手がよりアーティスティックな音楽を別名義で発表するのはここ数年よく見られる傾向で、映画音楽とインディー音楽(「映画と関係ない作家性の強い音楽」程度の意味に捉えてください)の垣根はどんどん低くなっている。
映像作家はムンバイのNavzar Eranee. 彼もまた若い頃から海外文化の影響を大きく受けて育ったという。


Prateek Kuhad, "Cold/Mess"

2015年にデビューしたジャイプル出身のシンガーソングライター。
アメリカ留学を経て、現在はデリーを拠点に活動している。
ご覧の通りの洗練された音楽性で、MTV Europe Music Awardほか、多くの賞に輝いている評価の高いアーティストだ。
インドらしさを全く感じさせないミュージックビデオは、それもそのはず、ウクライナ人の映像作家Dar Gaiによるもの。
どこかインドの街(ムンバイ?)を舞台に撮影されているようだが、この極めて恣意的に無国籍な雰囲気(俳優もインド人だけどインド人っぽくない感じ!)は、この音楽のリスナーが見たい街並みということなのだろうか。
ところで、俳優さんの若白髪はインド的には「有り」なの?
ブリーチとかオシャレ的なもの?


Tienas, "18th Dec"

Prabh Deepらを擁する話題のヒップホップレーベルAzadi Recordsと契約したムンバイの若手ラッパー(まだ22歳)で、以前紹介した"Fake Adidas"と同様、小慣れた英語ラップを聞かせてくれている。
Tienasという名前は、本名のTanmay Saxenaを縮めてT'n'S(T and S)としたところから取られていて、いうまでもなくEminem(Marshall Mathers→M'n'M)が元ネタと思われる。
EminemにおけるSlim Shadyにあたる別人格としてBobby Boucherというキャラクターを演じることもあるようだ。
このミュージックビデオはムンバイの貧民街やジュエリーショップを舞台に、全編が女優によるリップシンクとなっている。
Tienasは男性にしては声が高いので、以前このビデオを見て勘違いして女性ラッパーだとどこかに書いてしまった記憶があるのだが、どこだったか思い出せない…。


That Boy Roby, "T"

2018年にファーストアルバムをリリースしたチャンディガル出身のスリーピースバンドが奏でるのはサイケデリックなガレージロック!
ビデオはただひたすらに90年代のインド映画の映像のコラージュで、インド映画好きなら若き日のアーミル・カーンやシャー・ルクを見つけることができるはず。
なんだろうこれは。我々が昔の刑事ドラマとかバブル期のトレンディードラマをキッチュなものとして再発見するみたいな感覚なんだろうか。
Rolling Stone India誌によると「ハイクオリティーな4分間の時間の無駄」。
全くその通りで、それ以上のものではないが、こういうメタ的な楽しみ方をするものがここにランクインすることにインドの変化を感じる。


Gutslit, "From One Ear To Another"

出た!
昨年来日公演も果たした黒ターバンのベーシスト、Gurdip Singh Narang率いるムンバイのブルータル・デスメタルバンド。
フランク・ミラーのアメリカンコミック"Sin City"を思わせる黒白赤のハードボイルド調アニメーションは、バンドのドラマーのAaron Pintoが手がけたもの。
残虐で悪趣味でありつつ非常にスタイリッシュという、稀有な作品に仕上がっている。
カッコイイ!


Kavya Trehan, "Underscore"

ドリーミーなエレクトロポップを歌うKavya Trehanは女優、モデル、宝石デザイナーとしても活躍するマルチな才能を持った女性で、ダンス/エレクトロニックバンドMoskoのヴォーカリストでもある。
(Moskoには以前紹介したジャパニーズカルチャーに影響を受けたバンドKrakenの中心メンバーMoses Koulも在籍している)
ノスタルジックかつ無国籍な雰囲気のビデオはDivineRaja Kumariのビデオも手がけたアメリカ人Shawn Thomasが LAで撮影したものだそうな。
お分かりの通り、インド人はインドが好きなのと同じくらい、インドらしくないものが好き。
日本人も同じだよね。


Avora Records, "Sunday"

先日紹介した「インド北東部のベストミュージックビデオ」にも選ばれていたミゾラム州アイゾウルのポップロックバンドがこの全国版にも選出された。
アート的で意味深なミュージックビデオが多く選ばれている中で、同郷の映像作家Dammy Murrayによるポップなかわいさを全面に出した映像が個性的。


Mali, "Play"

チェンナイ出身のケララ系シンガーソングライターMaliことMaalavika Manojは、映画のプレイバックシンガーやジャズポップバンドBass In Bridgeでの活動を経て、今ではムンバイで活躍している。
幼い頃に音楽を教えてくれたという、彼女の実の祖父と共演したあたたかい雰囲気のビデオはムンバイの映像作家Krish Makhijaによるもの。
彼女の深みのある美しい声(少しNorah Jonesを思わせる)と、確かなソングライティング力が分かる一曲だ。
あと最後に、誰もが気づいたことと思うけど、このMaliさん、かなりの美人だと思う。
まいっちゃうなあ。

Chidakasha, "Tigress"

ケララ州コチ出身のロックバンド。
聞きなれないバンド名はインド哲学やヨガで使われるなんか難しい意味の言葉らしい。
インスピレーションを求めてメンバーがMarshmelloみたいな箱男になったビデオは、いかにもローバジェットだがなかなか愛嬌がある。
3:50あたりからのフュージョン・ロック的な展開も聴きどころ。

Ritviz, "Jeet"

インド音楽の要素を取り入れたプネーのエレクトロニック/ダンス系アーティスト。
下町、オートリクシャー、ビーチ、映画館(そこで見るのは前年のRitvizヒット曲"Udd Gaye")、垢抜けないダンスといったローカル色満載の映像はこのランキングの中でも異色の存在だ。
この「美化されていないローカル感」をB級感覚やミスマッチとして扱うのではなく、そのままフォーキーなダンスミュージックと癒合させるセンスは、とにかくお洒落な方向を目指しがちなインドの音楽シーンではとても珍しく、またその試みは見事に成功している。
この素晴らしいビデオはムンバイの映像作家Bibartan Ghoshによるもの。


以上、全10曲を紹介しました。
見ていただいて分かる通り、Nukaの"Don't be Afraid"やThat Boy Robyの"T"、Maliの"Play"、Ritvizの"Jeet"のように、インド的なものを美しく詩的に(あるいはおもしろおかしく)映したビデオもあれば、逆にPrateek Kuhadの"Cold/Mess"やGutslitの"From One Ear To Another"、Kavya Trehanの"Underscore"のように無国籍でオシャレなものこそを美とするものもあり、「かっこよさ」と「インド的」なものとの距離感の取り方がいろいろあるのが面白いところ。

ところで、いつも気になっているのは、この映像を撮るお金はどこから出ているのかということ。
例えばNukaやPrateek KuhadはYoutubeの再生回数が120万回を超えているが、LAロケのKavya Trehanでさえ再生回数6,000回足らず、That Boy Robyに至っては3,200回に過ぎない。
(それにあのビデオ、著作権関係とか、大丈夫なんだろうか)

映画音楽・古典音楽以外のほとんどの楽曲が大手レコード会社ではなくインディーズレーベル(もしくは完全な自主制作)からのリリースであるインド。
100万を超える再生回数のものは別として、他は制作費用が回収できていなさそうなものばかりだ。
いったいどこからこれだけの映像を撮るお金が出てくるのだろうか。

おそらくだが、その答えのひとつは「家がお金持ち」ということだと思う。
インドのインディーズシーンで活躍しているミュージシャンは、幼い頃から楽器に触れて欧米への留学経験を持つなど、端的に言うと実家が裕福そうな人が多い。
音楽コンテンツ販売のプロモーションのためにミュージックビデオを作るのではなく、もともと金持ちで、良い作品のために惜しげも無くお金と労力をつぎ込むという、千葉のジャガーさん的なアーティストも多いのではないかと思う。 

そんな彼らが発展途上のシーンを底上げしてくれているのも確かなので、もしそうだとしてもそれはそれで有りだと思うのだけど、次回はそんなアーティストたちとは全く真逆のインドならではの音楽を紹介したいと思います!

それでは、サヨナラ、サヨナラ。



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goshimasayama18 at 21:03|PermalinkComments(0)

2019年01月16日

Rolling Stone Indiaが選ぶ2018年のベストアルバムTop10!

前回、Rolling Stone India誌が選ぶ2018年のベストシングルを紹介したけど、今回は同誌が選ぶベストアルバムを紹介!
はっきりいって今回のほうがシングルよりもずっと面白くてかっこいい!
まだあまり知られていないグッドミュージックを探している人は是非ともチェックすべき10枚をご案内します。

こちらも順位はつけられていなかったので、ひとまず同誌サイトで紹介されている順に書いていきます。
アーティスト名とアルバム名のところにアルバム全体が聴けるサイトへのリンクになっていて、収録曲のYoutubeも貼っておいたので聴きながらお楽しみください。
それでは!

Rainburn, "Insignify"

イントロが結構長くて、曲が始まるのは1:53から。
選者の趣味なのだろうが、いきなりコテコテのメタルが出てくるところにこのセレクトの面白さを感じる。
今作はバンガロールを拠点に活動するプログレッシブメタルバンドのデビューアルバム。
インドではDream Theaterの影響下にあるようなこの手の音楽はかなり人気があり、多くのバンドが存在している(詳細後述)が、彼らはその中でもかなりレベルの高いバンドと言えるだろう。
2曲めの"Merchant of Dreams"(1:53〜)の途中にブルース風の進行が出てきたり、6曲めにアカペラ曲の"Purpose"(24:35〜)が収録されているあたりが個性だろうか。

The Local Train, "Vaaqif"

The Local Trainは2008年にインド北部チャンディーガルで結成され、現在はデリーを拠点に活動するヒンディーロックバンド。
ヒンディーロックとは何ぞやというと、文字どおりヒンディー語で歌われるロックのことだが、このバンドの場合、ヒンディーで歌ってもいかにもインド的な歌い回しは出てこず、完全に洋楽ロック的なメロディーとアレンジになっているのが良さでもあるし、少しもったいなく感じる部分でもある。
(ヒンディー語以外のマーケットにはなかなか届かないだろうから)

Dhruv Visvanath, "The Lost Cause"

ニューデリーで活動するシンガーソングライターで、アメリカのAcoustic Guitar Magazineで30歳以下の偉大なギタリスト30名に選ばれたこともあるというDhruv Visvanath。
このアルバムでも、ほぼアコースティックギターとヴォーカルハーモニーだけでドラマティックな楽曲を構成することに成功している。

Paradigm Shift, "Sammukh"

また出た!プログレッシブ・メタル・バンド!
彼らは最近日本でも注目されているPineapple Express同様、伝統音楽の要素(声楽やバイオリン)を大胆に取り入れた音楽性のバンドだ。
この手のプログレ・ミーツ・インディアなバンドは数多いが、変拍子や複雑なフレーズを駆使するプログレとインドの古典音楽にそれだけ親和性があるということなのだろう(他に注目株としてはタミルのAgam、もう少しグランジっぽいところでデリーのAnand Bhaskar Collectiveなど)。


Enkore, "Bombay Soul"

ムンバイのバイリンガルラッパー(英語とヒンディー)Enkoreが、このブログでも何度も名前が出て来ているデリーの鬼才トラックメイカーSez on the Beatのプロデュースでリリースしたアルバム。
Sezはいつものトラップ色の強いトラックではなく、スムースでチルな質感の音作りを意識している。
ギターを中心にしたメロウなトラックにところどころ顔を出すインド風味が心地よい。


Skyharbor, "Sunshine Dust"

アメリカ在住(インド系米国人?)のメンバーを含むSkyharborは、日本のBabymetalの全米ツアーのオープニングアクトを任されるなど人気上昇中のメタルバンドだ。
このブログではついついデスメタル、スラッシュメタル、正統派ヘヴィーメタルなどのオールドスクールなメタルバンドを中心に紹介してしまっているが、こういった現代的な音像のメタルバンドも多いので、いつかまとめて紹介したいところ。

Swarathma, "Raah-E-Fakira"

インドの伝統音楽とロックを融合したバンガロールのバンドの3枚目のアルバム。
これまで、Anand Bhaskar CollectivePineapple ExpressPakhseeなど、インドの古典声楽とロックを融合したバンドはいくつも紹介してきたけど、このバンドはより土着的・大衆的なインドのフォーク(民謡)とロックとの融合!
朗々としつつも繊細なニュアンスのある古典声楽と違って、骨太で素朴な歌声のインド民謡とロックの組み合わせは、これまた非常に面白い仕上がりになっている。
ロックの部分がけっこう練られたアレンジになっているので、朴訥としたヴォーカルが入ってくると、その落差にずっこけつつも、だんだん「これはこれでアリかも…」と思わされてくるから不思議だ。
ヴォーカリストは同じくインド民謡歌手のRaghu Dixitの弟、Vasu Dixit.
インドでは古典と現代音楽との融合が当たり前のように行われていて、またそれが普通にリスナーに受け入れられてもいる。
日本で同じようなことをしたら完全にイロモノだし、クールなものとして聴かれることもないだろう。
インド社会は急速に西欧化(ニアリーイコール資本主義化)しつつあるが、その根っこの部分には自分たちの文化や伝統の確固たる基盤があるのだ。


DCF_Shapes, "Live Vol.1"

インドの音楽シーンで活躍する一流プレイヤーによって構成されたファンクバンドのライブアルバムで、これが非常にかっこいい!
終始ファンキーなグルーヴにデジタル的な要素もうまくはまっていて、とにかく聴かせる、踊らせる。
ぜひライブで見てみたいバンドだ。
ちょっと渋さ知らズオーケストラみたいに聴こえるジャジーなところも気持ちいい。

ドラムにバンド名にもなっているDCFの別名を持つムンバイのセッションドラマーLindsey D'mello(2014年にDark Circle Factory名義で出したアルバムもかっこいい。DCFはその略称のようだ).
ギターにムンバイのインダストリアル・メタルバンドPentagramのRandolph.
サックスにインドを代表するジャズ・プレイヤーのRhys Sebastian D'souza.
'Funktastic'でラップを披露しているのはムンバイの老舗ヒップホップ・グループBombay Bassmentのメンバーでケニア出身のアフリカンであるBob katことBob Omulo.
ところで、インドのインディーズシーンの「ベテラン」である彼らの名前を見ると、英語のファーストネームやポルトガル語の苗字がずらり。インドのインディー音楽シーン創成期にクリスチャンのミュージシャンが果たした役割の大きさを再認識させられる。


Gabriel Daniel, "Conflicting"

バンガロールを拠点に活躍するオルタナティヴ系シンガー・ソングライターが、ドラマーとベースのサポートを加えて作ったアルバム。
いかにもシンガー・ソングライターといった叙情的な作風に、ところどころでポストロック的な要素やマスロックっぽい要素が光る。


Raghav Meattle, "Songs From Matchbox"

デリー出身のさわやか系シンガー・ソングライターのデビュー・アルバム。
60年代っぽくも聴こえるし、ちょっとジャック・ジョンソンみたいなサーフ系や西海岸系フォークを思わせる雰囲気もある楽曲は、どこか懐かしくて、そして完成度もとても高い。
インドのミュージシャンでここまでアメリカっぽい空気を感じさせる人は珍しい。


と、ざっと10枚を紹介してみた。
メタル、ロック、ヒップホップ、ファンク、SSWとジャンルも多岐にわたり、それぞれかなり聴き応えのある作品が揃っているのが分かるだろう。
シングル10選のときは、オシャレ感重視の雰囲気ものが多かった印象だが、このアルバム10選ではよりアーティストの個性が強く出た作品がピックアップされている。
Paradigm ShiftやSwarathmaみたいにいかにもインドといった要素が入ったバンドも面白いし、SkyharborやDCF_Shapesは国籍に関係なくかっこいい音楽を作っている。
Raghav Meattleの普遍的なグッドメロディーを作曲する才能も覚えておきたい。

「音楽とインド」というテーマで記事を書くことが多いため、ついついインドならではの音楽性や背景のあるアーティストを取り上げることが多いのだけど、こんなふうに純粋に優れた音楽を作っているミュージシャンたちもかなり高いレベルにいることが改めて分かるアルバムたちだった。
気に入ったアーティストがいたら、ぜひみなさんのプレイリストに加えてみてください。
2017年のベストアルバムtop10と聴き比べて見るのも一興です。
それではまた!

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goshimasayama18 at 23:18|PermalinkComments(0)

2019年01月14日

Rolling Stone Indiaが選ぶ2018年のベストシングルTop10!

先日の記事でインド北東部の2018年のベストソングスを紹介したけど、今回はRolling Stone Indiaが選んだインド全体の2018年のベストシングルTop10を紹介!

このRolling Stone India、インドのなかではオシャレというか気取っているというかサブカル気質というか、メジャーな映画音楽などではなく、インディーズ寄りの優れた音楽を紹介する傾向が強いメディアだ。
つまり、今回紹介する音楽はインドでは誰もが知っている大ヒットということではなく、売り上げや知名度に関係なく選ばれたグッドミュージックたちというわけ。
このラインナップを知ることで、今のインドのインディーズシーンでどんな音楽がかっこいいのかを把握する手がかりにもなるはず。
10曲が選ばれているけど順位はついていないようなので、元の記事で紹介されている順に書いていきます!


Parekh & Singh, "Summer Skin"

この手のランキングでは常連のオシャレ感が漂うコルカタのカラフルな「ドリームポップデュオ」。
ウェス・アンダーソンのポップな世界観に影響を受けた彼らの今作は、歌詞に出てくるウディ・アレンやビートルズといったモチーフがまた雰囲気づくりに一役かっている。


Calico, "Garnet Eye"

ムンバイのソフトロック・バンドによる洗練された楽曲。
メロウなグルーヴが心地よいアーバンポップ風の仕上がりだが、歌詞は「無常観」がテーマ。


Droolfox, "Descent"

バンガロールのエレクトロニカ/シンセウェイヴ・デュオがヴォーカリストのJitesh JadwaniとJoel Sakkariをゲストに迎えて作成したトラック。
ここまで紹介した音楽同様に無国籍なポップサウンドの楽曲はバンコクのローカルトレインの音から始まる。
ギターのグルーヴとメロウなヴォーカルが効いている、ダフト・パンク的な雰囲気もある曲だ。


Bloodywood, "Jee Veerey"

ニューデリーのメタルグループ、Bloodywoodはギター&プログラミングのKaran KatiyarとヴォーカルのJayant Bhadulaの2人組。
ボリウッドをもじったバンド名からも分かる通り、これまでカバー曲や企画ものっぽい曲を中心にリリースしていたが、今回はラッパーのRaoul Kerrと共演したフォークメタル(民族音楽の要素が入ったメタル)の曲をリリース。
リズムやヴォーカルがここまでメタルだとヨーロッパ的な響きに聞こえるのは必然なのだろうか。
ビデオの後半にもあるとおり、精神的に困難を抱えている人へのサポートに関する真剣なメッセージを伝える意図もあるようだ。


Hanita Bhambri, "Let Me Go"

Hanita Bhambriは世界的なホテルチェーンのAloft Hotelsによるオーディション企画、Project Aloft Starの2018年度アジア太平洋部門で優勝した女性シンガー。
その後ユニバーサルと契約し、コルカタを拠点にRadioheadやFoo Fightersも手がけたエンジニアのMiti Adhikariによるプロデュースでこの曲をリリースした。
Rolling Stone IndiaはAdeleやFlorence Welchのような英国フォークの雰囲気のある曲と書いている。

Prabh Deep and Seedhe Maut, "Class-Sikh Maut Vol.II"

ここまで、インドらしさ皆無の無国籍な英語ヴォーカルの作品が続いたけれど、ここにきてやっとヒンディー語でインドらしいトラックの楽曲が登場。
昨年の同誌が選ぶベストアルバムトップ10の1位に選ばれたデリーの実力派アンダーグラウンドラッパーPrabh Deepが同じくデリーのSeedhe Mautとコラボレーションしたこの作品は、Prabh Deepも所属する大注目ヒップホップレーベルAzadi Recordsからリリースされた。
まず耳に残るのはインド随一の気鋭のビートメーカー、Sez On The Beatの渾身のトラック。
時代の空気を纏いつつインドでしかありえない伝統音楽とのフュージョンになっている。
Seedhe MautはEncore ABJとCalmからなる二人組のバイリンガル・ラッパー(英語とヒンディー)で、この曲のパフォーマンスからはPrabh Deepに匹敵する確かなスキルが伺える。


The Tekina Collab, "Claiming Me"

The Tekina CollabはムンバイのシンガーソングライターAniket Mangrukarによるプロジェクトのようだ。
オサレな雰囲気で聴かせる1曲。

Azamaan Hoyvoy, "Everybody Looking For Love"

ジャズ、ソウル、電子音楽を融合した音楽性で活躍するムンバイのシンガー。
王道のソウルマナーに沿いつつもポリリズム的な展開が心地よいこの曲は、ヴォーカルがちょっと弱い気もするけどやりたいことは分かるし十分にかっこいい。

Takar Nabam, "Recending"

北東部アルナーチャル・プラデーシュ出身のニューデリーで活躍するシンガーソングライターの失恋をテーマにしたこの楽曲は、サウンド的には王道のロックだがブルージーでメランコリックなヴォーカルとグルーヴィーな演奏の妙が心地よい。

Yungsta and Frappe Ash "Nana"

Rolling Stone誌上で「インドからのRae Sremmurdへの回答」と評されているニューデリーの新鋭ラッパー二人組によるヘヴィートラップ。
(Rae Sremmurdはミシシッピ出身の新世代兄弟デュオで近々来日。ご存知ない方は各自チェックを)
派手さのないミュージックビデオにかえって本気が滲む(予算の都合?)。
スケボーとラップというインドではまだ若いストリートカルチャーの熱さがびんびん伝わってくる。


ざっと全曲を紹介させていただきました。
Prabh Deep and Seedhe Maut以外はインドらしさ皆無の無国籍サウンドが並んでいるが、インドもアジアでよく見られる土着的なものからの脱却をもって洗練とみなすという潮流の中にいるのだろう。
クオリティーもおしなべて高くて、洋楽のヒット曲に混じって流れても違和感のないような楽曲が並んでいる。
ここで紹介したような楽曲を聴きながらムンバイやデリーのハイセンスなエリアを歩けば、どこか外国の街角を歩いているような、世界中のどこでもないようなオシャレな街を歩いているような気分が味わえることだろう。
恣意的に洋楽的で都会的で人工的な楽曲たち。

全体的に何かに似ていると思っていたけど、やっと分かった。
それは90年代の日本の音楽シーンを席巻した渋谷系だ。
どこまでいっても歌謡曲臭の拭えないJ-POPやバンドブームを尻目に、潔癖なまでにドメスティックな要素を排して「センスの良さ」を競ったあのムーブメントだ。
あのころ、渋谷系のミュージシャンたちは、古今の洋楽の影響を糧に、古くて新しい自分たちの音楽を作り出していた。
インドのインディーズシーンも、今まさにそんな時代を迎えているのかもしれない。

そしてふだんこのブログで紹介している通り、このランキングには入っていないところで、伝統に目を背けずに、現代音楽との面白い融合に成功している作品がたくさんあるというのもインドの音楽シーンの豊饒さだ。

インドの音楽カルチャーは、日本で何十年もかけて起きた音楽シーンの進化、変化をここ10年ほどで一気に経験してきた。
日本でいうと、歌謡曲(=メインストリーム。インドでいえば映画音楽)が多様化、複雑化してきた80年代、バンドブームが勃興し若者が自分たちの音楽を奏でることがもてはやされた90年代前半、より洋楽的な洗練を目指した90年代後半、DJ文化が一般化しインターネットでより多くの音楽へのアクセスが可能になった2000年代以降、そして今日の世界の同時代的な音楽の流行。
あらゆる事象が一度に起きて盛り上がっているのがインドの音楽シーンの熱いところだ。

これからもインドの音楽シーンのいろんな側面を紹介してゆくのでヨロシクお願いします!



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2019年01月09日

Meraki Studiosが選ぶ2018年インド北東部のベストミュージックビデオ18選!

改めまして、軽刈田 凡平です。
Meraki Studiosが選出した2018年のインド北東部のインディーアーティストによるベストミュージックビデオが発表されたので、今回はそのなかでいくつか印象的だったものを紹介します。
このMeraki Studios、正直に言うと私もどんなところかよく知らないのだけど、彼らのウェブサイトによると、どうやらマニプル州インパールを拠点に広告、デザイン、録音、撮影、アーティストのブッキングとマネジメント、服飾販売などを手がけているところらしい。

詳細はリンクを参照してもらうこととして、選ばれた楽曲は以下の18本。
アーティスト名、曲名、ジャンル、出身地(活動拠点?)の順に紹介します。


・Pelenuo Yhome  'Build A Story'   フォーク / ナガランド州コヒマ
・Fame The Band  'Autumn'   ロック / メガラヤ州(現在はムンバイを拠点に活動)
・Lik Lik Lei  'Eshei'   ポップ / マニプル州インパール
・The Twin Effect  'Chasing Shadows'   ポップ / ナガランド州ディマプル
・Avora Records  'Sunday'  ロック / ミゾラム州アイゾウル
・Fireflood  'Rain'  ロック / ナガランド州ディマプル
・Tali Angh  'City Of Lights'  ポップ / ナガランド州コヒマ
・Lucid Recess  'Blindmen'  オルタナティブ / アッサム州グワハティ
・Featherheadds  'Haokui'  フュージョン・ロック / マニプル州ウクルル 
・Big-Ri And Meba Ofilia  'Done Talking'  R&B / メガラヤ州シロン
・Avora Records  '23:00'  ロック / ミゾラム州アイゾウル
・Lo! Peninsula  'Another Divine Joke'  ポストロック / マニプル州インパール
・Lateral  'Hepaah'  ポップ / アッサム州グワハティ
・Sacred Secrecy  'Shitanagar'  デスメタル / アルナーチャル・プラデーシュ州イタナガル
・Blue Temptation  'Blessing'  ロック / メガラヤ州シロン
・Lily  'Unchained'  EDM  / メガラヤ州シロン
・Matilda & The Quest  'Thinlung Hliam'  ポップ / ミゾラム州アイゾウル
・Joshua Shohe & Zonimong Imchen  'Never Let You Down'   ポップ / ナガランド州


まず目につくのはロック系の多さ!
ジャンル分けは独断かつ適当だが、それを差し引いても、ヒップホップ系やエレクトロニカ系はほとんどいなくて、ロック系が大半を占めている。
北東部はもともとロックが盛んな土地で、メガラヤ州シロンは「インドのロックの首都」とも言われている街だ(今回もシロンから3バンドが選出されている)。
ロック系の中でもFirefloodみたいなハードロック系からAvora Recordsみたいなギターポップ系、Blue Temptationみたいなブルースロック系、さらにはポストロックやデスメタルまで多様なタイプのバンドが揃っている。

そしてもうひとつ気になったのはナガランドのバンドの多さ!
州別に言うと、ナガランドが5バンド、メガラヤが4バンド、マニプルが3バンド、ミゾラムとアッサムが2バンドずつ、アルナーチャル・プラデーシュ州が1バンド。
これまでもナガランドについてはいろいろと書いてきたけど(全3回のナガランド特集はこちらから)、改めてナガの地の音楽カルチャーの強さを感じさせられた。

それでは、この18曲を聴いてとくに印象に残ったビデオをいくつか紹介します。

Lik Lik Leiは、日本軍の悪名高いインパール作戦で有名なマニプル州インパールのバンド。
このデビュー曲の'Eshei'はマニプルの映画、その名も'Iriguchi(入り口)'のサウンドトラックからの1曲。

ミュージックビデオを見て分かる通り、日本軍の兵士が残した秘密の箱を見つけた現代のマニプリの若者が主人公の映画のようだ。
映画の背景にある重い歴史(大戦後、マニプル州はナガランドと同様に過酷な独立闘争を経験している)と、ビデオに出てくる現代的な若者、そしてウクレレを使った軽やかな音楽の対比が面白い。

アッサムのLucid Recessは2004年結成のベテラン・オルタナティブメタルバンド。

この曲ではサウンドガーデンやニルヴァーナを思わせるグランジ的なサウンドを聴かせている。

Featherheadsはマニプル州の小さな街、ウクルルのバンド。
ウクルルも日本軍の悲劇的な激戦地となった場所だ。

個人的には、今回のリストの中でいちばん強烈に印象に残ったビデオだ。
音楽的にはおそらく地元部族の伝統音楽とロックとのフュージョンということになるのだろう。
注目すべきは彼らの衣装で、なんと地元の民族衣装にインディアンの民族衣装を大胆に合わせている。
ここで言うインディアンはインド人ではなくアメリカ先住民のいわゆるネイティブアメリカンのこと。
インド人(インディアン)のなかでは周縁的な存在であることを余儀なくされている北東部マニプル州の彼らが、同じ「インディアン」と呼ばれながらも、やはり国家の中で周縁的な立場に置かれているアメリカ先住民の格好をしているというわけだ。
そしてマニプリとアメリカ先住民は「追いやられた先住民族」という点で共通している。
なにやら非常にややこしいが、おそらく彼らはそこに共感と皮肉を見出してこの格好をしているのではないか。
って、単にファッションとして取り入れているだけかもしれないけど、いずれにしても興味深い一致ではある。

同じくマニプル州のLo! Peninsulaはシューゲイザー、ドリームポップ、サイケロックを標榜するバンドで、曲によってはポストロック的な響きを持つ演奏をすることもある(このへんはジャンルのボーダーが曖昧な部分ではあるけれども)。

さっきのFeatherheadsとはうってかわって、とてもインドの山奥から出てきたとは思えない(失礼!)サウンド!
彼らはシアトルのカレッジラジオ局KEXPで紹介されたこともあるようだ。
ポストロックというジャンル字体はもはや世界中のどこでも珍しいものではなくなっているけれども、それでも今回紹介する北東部のバンドの中で彼らの存在感は群を抜いている。
他にも尖っているバンドはあるが、彼らだけは世界中の別の時空と共鳴しているかのような印象を受けた。

ナガランドのJosua Shohe & Zonimong Imochenの'Never Let You Down'はZonimongのヒューマンビートボックスが全編にフィーチャーされた曲。

歌もちょっと弱いし、とりあえず地元で撮ったみたいなビデオも適当な印象だけど、意欲的な試みではある。


すでに紹介してきたバンドたちもおさらい。
日本のMonoがトリを務めたZiro Festivalにも出演したAvora Recordsは2曲でノミネート。
'Sunday'はどことなく1990年代の日本のバンドを思わせるミュージックビデオだ。


同じくZiro Festivalにも出演していたBlue Temptationはレニー・クラヴィッツみたいなシブいブルースロック!


MTV EMA2018のベストインド人アーティストに選ばれたBig-Ri& Meba Ofiliaも当然ランクイン。


このブログ最初のインタビューにも協力してくれたTana Doni率いるSacred Secrecyが地元イタナガルを強烈にディスっているブルータル・デスメタル'Shitanagar'でノミネート!


少々の荒削りさとびっくりするようなセンスが共存している北東部のシーン、今後も注目していきたいと思います!

そして今年は北東部が先になってしまったけど、メインランドの2018年を代表する曲やアルバムもまた紹介します!
それでは!



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凡平自選の2018年度のおすすめ記事はこちらからどうぞ! 


goshimasayama18 at 22:29|PermalinkComments(0)

2018年12月30日

2018年を振り返る

いつもご愛読ありがとうございます。
2017年12月25日に始めたこのブログも約1年あまり、これまでに書いた記事もなんと109本にもなりました。

最初は、「インドの音楽と社会」というテーマに自分以外誰が興味を持ってくれるのか分からずに始めたブログでしたが、大勢の方に読んでいただけて本当に感謝です。
ブログを書いてきたなかで、多くのインドのミュージシャンたちにインタビューさせてもらったり、POPEYEとSTUDIO VOICEという歴史あるカルチャー誌の音楽特集に関わらせてもらったりと、素晴らしい機会をたくさんいただきました。
この1年で関わった全ての方、そしてお読みいただいた全ての方にあらためて御礼申し上げます。

記事もずいぶん多くなってきたところなので、ここで、「軽刈田 凡平 自選ベストトピック2018」というのをやってみたいと思います。
最近このブログを見つけたけど、なんかいろいろあって何を読んだら面白いのか分からないという方も、ぜひ参考にしてみてください。
あ、みなさんすでにお気づきのことと思うけど、字の色が変わっているところがリンクになっていて、該当する記事に飛べるようになっているのでヨロシク。
ではさっそく。


まず、なんといっても大発見だったのが、インド北東部の音楽!
このブログを書き始めた当初は、北東部のシーンは完全にノーマークだったのだけど、インド文化(アーリア/ドラヴィダ系文化)の影響が薄く、信仰が盛んなキリスト教のせいか欧米の影響の強い音楽は驚きだった。
エクストリームメタルから、民族の誇りをライムするラップまで、北東部の音楽シーンについてはこちらから。
カテゴリー:インド北東部 

なかでも気合を入れて書いたのは、
・デスメタルバンドへのインタビュー(アルナーチャル・プラデーシュ州のArien Gods/Sacred SecrecyのTana Doniへのインタビュー、Third SovereignのVedantへのインタビュー
・トリプラ州のプライドをラップするBorkung Hrankhawlその2はこちら)
 ・ナガランド3部作(その1その2その3、おまけのクリスマス編
あたりかな。
北東部を扱った記事はどれも思い入れがある。
ここにきて、ナガランドを舞台にした映画「あまねき旋律」のヒットで、静かなインド北東部ブーム?が来つつあるのもうれしい。


インドらしさが最も感じられるジャンルといえばヒップホップ。
インドのメジャーどころのアーティストも紹介したけど、個人的に気に入ったのはローカル色ばりばりのラージャスタンのシーン
砂漠のギャングスタラップJ19 Squadインタビューも敢行。結局続きはなかったけど)は、最近じゃアンダーグラウンドシーンではそれなりの知名度のあるラッパーのEmiwayとビーフを繰り広げるなど、相変わらずコワモテの活動をしているようだ。

インドのヒップホップは(も)土地ごとのシーンの地方色が大きな魅力で、各地の特徴を紹介した記事はかなり思い入れがあったのだけど、なぜか誰もいいねしてくれなかったのはなぜだろう。
実はつまらないのかもしれない。 (「レペゼン俺の街!各地のラッパーと巡るインドの旅」)

この記事でも紹介した日印ハーフのラッパーBig Dealもかなり熱い男で、インタビューでも誠実な人柄が感じられた。年末年始でやる気がでない人なんかにおすすめ。 

マイナーな地方のシーンでは、ジャールカンド州(というか、このTre Ess)もかなり面白かった。
Tre Essの相棒のMellow Turtleもまた才能あるミュージシャンで、彼らからは、「ネットワークで繋がった世界では地域差によるディスアドバンテージはいともたやすく乗り越えられる」ということを教えられた。
彼らへのインタビューでは世界中のマニアックなミュージシャンの名前がばんばん出てきてとても刺激的だった。(Tre EssのインタビューThe Mellow Turtleのインタビュー

そしてインドのヒップホップの音楽的な面に迫ったのはこの記事。
インドのヒップホップは決してアメリカの黒人音楽からの影響だけで作られているわけではなくて、自分たちのリズムもしっかりと咀嚼して作られているという話
インド人とラテン系の共通点」を見つけたというのも自分的には大発見で、とくにこの記事は後半のインド人によるDespacitoカバー集は必見!


音楽を離れた余談としては、謎のインド人占い師ヨギ・シンの話(その1その2)、20年前のシッキム州での思い出話なんかがわりと面白いと思うけどどうだろう。
インド人はプロレス(WWE)好き、なんてことも今まであんまり紹介されていなかったように思う。
2019年はタイガー・ジェット・シンについての記事を書くつもりなので、興味のある方はご期待ください。

あとは順不同で、日本に影響を受けたアーティスト(ロック編エレクトロニカ編、そして脅威のナガランドのコスプレカルチャー!)、ジャマイカン・ミュージックを通じた社会改革を目指すSka Vengers(とくに中心人物のTaru)あたりがわりと面白いんじゃないかな。


他にも思い入れのある記事はいっぱいいっぱいあるのだけれども、これ以上紹介すると結局全ての記事を取り上げることになりそうなので、ここまでにしておきます。
ブログに適した記事の分量(長さ)というものがあるということは分かっているのだけど、いつも書いているうちに長くなってしまって、それなのに読んでくださっている皆さんには本当に感謝してます。
来年はもっと短くまとめられるよう精進します。
そして素晴らしいインスピレーションをいつも与えてくれるインドという国にも改めて感謝を。

今年の記事はこれでおしまいです。
みなさん、よいお年を!
そして来年もよろしくお願いします! 


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goshimasayama18 at 03:39|PermalinkComments(0)