母の日
2019年05月11日
母に捧げるインドのヒップホップ/ギターインストゥルメンタル
明日は母の日。
インド人といえば、お母さん大好きな国民性で知られている。
いや、そりゃどこの国でも母親の大切さというのは変わらないのだけれども、当然ながら感謝や愛情の表し方というのは国によって随分違う。
音楽でもそうだ。
ちなみに「お父さんソング」っていうのは全然聞いたことがない。
インドの映画でも小説でも、父親って古い価値観で男性主人公と対立する存在として描かれることが多いし、あんまり面と向かってありがとうって感じでもないのかな(逆に娘と父親の愛情というのはすごくストレートに表されることが多いようだけど)。
というわけで、母の日前日の今回は、インドの「お母さんソング」を特集してみました。
今回紹介したアーティストをこれまでに紹介した記事もぜひお読みください。
Big Dealに関する記事:
「レペゼンオディシャ、レペゼン福井、日印ハーフのラッパー Big Deal」
「律儀なBig Deal(ミニ・インタビュー)」
「"Gully Boy"と『あまねき旋律』をつなぐヒップホップ・アーティストたち」インド北東部版のJoyner Lucas"I'm not Racist"である"Are You Indian"は必聴!
Ranveer Singhの"Gully Boy"に関する記事:
「ムンバイのヒップホップシーンをテーマにした映画が公開!"Gully Boy"」
「映画"Gully Boy"のレビューと感想(ネタバレなし)」
「映画"Gully Boy"あらすじ、見どころ、楽曲紹介&トリビア」
Manan Guptaに関する記事:
「説明不要!新世代の天才!Rhythm Shaw他若き才能たち!」
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凡平自選の2018年度のおすすめ記事はこちらからどうぞ!
インド人といえば、お母さん大好きな国民性で知られている。
いや、そりゃどこの国でも母親の大切さというのは変わらないのだけれども、当然ながら感謝や愛情の表し方というのは国によって随分違う。
音楽でもそうだ。
日本よりも感情表現がストレートな英語圏でも、ポップミュージックのテーマは基本的に男女間の恋愛で、お母さんへの愛を直接的に表現した曲っていうのはあんまり聞いたことがない。
ところが、お母さんへの愛情も照れることなくストレートに表すインドでは、母への感謝や愛を歌った楽曲というのがけっこうあるのだ。
というわけで、今回は母の日を前に、インドの「お母さんありがとう」ソングを紹介します!
まず最初に紹介するのは、日印ハーフのラッパー、Big Deal.
英語でラップすることも多い彼が、生まれ故郷オディシャ州の言語オリヤー語でラップしたこの"Bou"は、そのものずばり「母」という意味のタイトルだ。
字幕を読むと、献身的な母親の愛情への感謝を率直に言葉にしたリリックであることが分かる。
Big Dealは、オディシャ人としての誇りや少年時代に受けた差別などをリリックのテーマにすることが多いが、つねにポジティブでまっすぐなメッセージを発信しているところが大きな魅力だ。
この曲もそんな彼の面目躍如といったところ。
ちなみに彼自身のお母さんはモハンティ三千枝という名前で活躍している小説家でもある。
先日公開され大ヒットとなったヒップホップ映画"Gully Boy"の中にも、母の愛をラップしたリリックが出てくる。
主演のランヴィール・シン自身がラップしているこの"Asli Hip Hop" は、本物のヒップホップに生きる決意を歌った内容だが、その中にもこんな内容のリリックが混じっている。
俺を嫌うやつは百万といるが、俺には母さんの愛がある
母さんの笑顔の中に俺の勝利があるのさ どうして失うことができようか
(中略)
俺はパフォーマーで、俺はアートを作っている
これこそが俺の宗教で、他にアイデンティティーはないのさ
母さんが神で、俺が育ったストリートこそが愛なんだ
(歌詞はヒンディー語の英訳から訳したもの)
この曲は映画の中のラップバトルのシーンで出てくる曲。
英語のラップだと相手の母親を侮辱するというのは聞いたことがあるけど、ここではヒンディー語で逆に自分のお母さんへの愛情をラップしてるっていうのが面白い。
2番目の歌詞をよく読んでみると、彼の育ったストリートと母親を並べて、誇るべきルーツとしてラップしていることが分かる。
インドでは、インドという国そのものを"バーラト・マーター(Bharat Mata=母なるインド)"という女神として、無償の愛を捧げてくれる母になぞらえて表現する伝統がある。
('Bharat Mata' 画像出店Wikipedia https://en.wikipedia.org/wiki/Bharat_Mata)
バーラト・マーターはインドの国土を背景に獅子を従えた美しい女性として描かれる。
ところが、お母さんへの愛情も照れることなくストレートに表すインドでは、母への感謝や愛を歌った楽曲というのがけっこうあるのだ。
というわけで、今回は母の日を前に、インドの「お母さんありがとう」ソングを紹介します!
まず最初に紹介するのは、日印ハーフのラッパー、Big Deal.
英語でラップすることも多い彼が、生まれ故郷オディシャ州の言語オリヤー語でラップしたこの"Bou"は、そのものずばり「母」という意味のタイトルだ。
字幕を読むと、献身的な母親の愛情への感謝を率直に言葉にしたリリックであることが分かる。
Big Dealは、オディシャ人としての誇りや少年時代に受けた差別などをリリックのテーマにすることが多いが、つねにポジティブでまっすぐなメッセージを発信しているところが大きな魅力だ。
この曲もそんな彼の面目躍如といったところ。
ちなみに彼自身のお母さんはモハンティ三千枝という名前で活躍している小説家でもある。
先日公開され大ヒットとなったヒップホップ映画"Gully Boy"の中にも、母の愛をラップしたリリックが出てくる。
主演のランヴィール・シン自身がラップしているこの"Asli Hip Hop" は、本物のヒップホップに生きる決意を歌った内容だが、その中にもこんな内容のリリックが混じっている。
俺を嫌うやつは百万といるが、俺には母さんの愛がある
母さんの笑顔の中に俺の勝利があるのさ どうして失うことができようか
(中略)
俺はパフォーマーで、俺はアートを作っている
これこそが俺の宗教で、他にアイデンティティーはないのさ
母さんが神で、俺が育ったストリートこそが愛なんだ
(歌詞はヒンディー語の英訳から訳したもの)
この曲は映画の中のラップバトルのシーンで出てくる曲。
英語のラップだと相手の母親を侮辱するというのは聞いたことがあるけど、ここではヒンディー語で逆に自分のお母さんへの愛情をラップしてるっていうのが面白い。
2番目の歌詞をよく読んでみると、彼の育ったストリートと母親を並べて、誇るべきルーツとしてラップしていることが分かる。
インドでは、インドという国そのものを"バーラト・マーター(Bharat Mata=母なるインド)"という女神として、無償の愛を捧げてくれる母になぞらえて表現する伝統がある。
('Bharat Mata' 画像出店Wikipedia https://en.wikipedia.org/wiki/Bharat_Mata)
バーラト・マーターはインドの国土を背景に獅子を従えた美しい女性として描かれる。
独立闘争のなかで生まれたという、インドのなかでは歴史の浅い女神ではあるが、聖地ヴァーラーナシーにはこの女神を祀った寺院もある。
国家や自身のルーツを理想の母親像に似せて誇る文化と、お母さんへの愛情のストレート過ぎる表現には何か関連があるのだろうか。
超絶技巧のフィンガースタイル・ギターの名手Manan Guptaも、インストゥルメンタルではあるが"Dear Mother"というタイトルの曲を発表している。
ものすごいアイディアとテクニックを詰め込んだこの楽曲のどこが「親愛なる母さん」なのかさっぱり分からないが、きっと彼のスキルと発想の全てを反映した楽曲を、最も尊敬するお母さんに捧げたということなのだろう。
国家や自身のルーツを理想の母親像に似せて誇る文化と、お母さんへの愛情のストレート過ぎる表現には何か関連があるのだろうか。
超絶技巧のフィンガースタイル・ギターの名手Manan Guptaも、インストゥルメンタルではあるが"Dear Mother"というタイトルの曲を発表している。
ものすごいアイディアとテクニックを詰め込んだこの楽曲のどこが「親愛なる母さん」なのかさっぱり分からないが、きっと彼のスキルと発想の全てを反映した楽曲を、最も尊敬するお母さんに捧げたということなのだろう。
ちなみに「お父さんソング」っていうのは全然聞いたことがない。
インドの映画でも小説でも、父親って古い価値観で男性主人公と対立する存在として描かれることが多いし、あんまり面と向かってありがとうって感じでもないのかな(逆に娘と父親の愛情というのはすごくストレートに表されることが多いようだけど)。
というわけで、母の日前日の今回は、インドの「お母さんソング」を特集してみました。
今回紹介したアーティストをこれまでに紹介した記事もぜひお読みください。
Big Dealに関する記事:
「レペゼンオディシャ、レペゼン福井、日印ハーフのラッパー Big Deal」
「律儀なBig Deal(ミニ・インタビュー)」
「"Gully Boy"と『あまねき旋律』をつなぐヒップホップ・アーティストたち」インド北東部版のJoyner Lucas"I'm not Racist"である"Are You Indian"は必聴!
Ranveer Singhの"Gully Boy"に関する記事:
「ムンバイのヒップホップシーンをテーマにした映画が公開!"Gully Boy"」
「映画"Gully Boy"のレビューと感想(ネタバレなし)」
「映画"Gully Boy"あらすじ、見どころ、楽曲紹介&トリビア」
Manan Guptaに関する記事:
「説明不要!新世代の天才!Rhythm Shaw他若き才能たち!」
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goshimasayama18 at 19:18|Permalink│Comments(0)