日本のジャズ
2018年09月14日
日本の文化に影響を受けたインド人アーティスト! ロックバンド編 Kraken
先日、日本のサブカルチャーからの影響を受けたエレクトロニカ・アーティストとして、宮崎駿のアニメなどからインスパイアされたKomorebiと、カルト・ムービー「鉄男」からタイトルを取ったトラックをリリースしたHybrid Protokolを紹介した。
今回は、ジャパニーズ・カルチャーの影響を受けたアーティスト、ロックバンド編!
彼らの日本のサブカルチャーへの驚くべき愛情を心して読むべし。
そのバンドの名前はKraken。
2014年に結成された6人組のデリーのロックバンドだ。
このブログの熱心な読者の方なら、彼らがRolling Stone Indiaが選ぶ2017年のベストアルバムの第7位に選ばれていたのを覚えているかもしれない。
彼らがどれだけ日本に影響を受けているかは、フライヤーやウェブサイトを見ていただければ一目瞭然!
まずこれがファーストアルバムのウェブ告知。

箸としゃもじは分かるけど、まるいのはピザ?
続いて最近のツアーのフライヤー。

お坊さんが「こんなのプログレじゃないぜ」って言ってる。サポートのポストハードコア/マスロックのバンド名、Haiku Like Imaginationというのにも注目。彼らも日本文化の影響を受けてるんだろうか。
北東部ツアーのフライヤーはこんな感じ。

これ、全てインドのバンドがインド国内向けに作ってるチラシです。
五重塔、着物、寿司っていう伝統的な要素に、缶ジュースや公衆電話、カタカナ表記、といかにも「外国人から見た日本」的なテイストだけど、日本文化というとアニメやマンガのイメージが非常に強いインドで、伝統や食文化にまで目配りができているというのはなかなかの日本通ぶりと言える。
バンドの中心メンバーのギタリスト、Moses Koulは実際に日本に一人旅に来たこともあるようで、日本のカルチャーに大きな影響を受けているという(詳細は後述)。
そんな彼らのサウンドをさっそく聴いてみましょう。
2017年にリリースされた彼らのファーストアルバム"Lush"から、"Yooo! It's ALetter From Koi Fish"
"Koi Fish"は魚の鯉のことのようで、「ヨ〜!俺の鯉からの手紙だ!」という日本語表記に脱力するが、これは「恋」と「鯉」がかかっているのかな?
歌詞をみると一応ラブソングのようだし。
バッキングでも派手に動き回るギターや、ハードコアっぽいシャウトが入りつつも、それが暴力性の表現ではなくグルーヴ感を促進するように使われているところなど、日本の音楽専門学校のESP出身のバンドみたいな雰囲気だ(分かるかなあ)。
ビデオもローバジェットで作られているようだけど、日本旅行のお土産なのかな?が並んでいて、ここでも彼らの日本愛が感じられる。
"Bouncy Bouncy Ooh Such A Good Time"
タイトルの訳は「ワクワク楽しいなあ〜」だって。ビデオはジブリの森かな。
"What Will Be, Will Be, Promise Me Kawaii Tea"
今度は「なるようになる、可愛いお茶を約束してくれ」とのこと。
またしても日本の日常を切り取ったビデオと激しいロックが不思議な雰囲気を醸し出している。
なんだか曲調も日本のアニメ(戦うようなやつ)の主題歌っぽく聴こえるが、いったい彼らはどんな日本文化に影響を受けてきたのか。
SNSを通していくつかの質問をしてみました。
最初の質問は、日本の文化にいつ、どんなふうに影響を受けたのかということ。
Kraken 「まず、俺たちの音楽を日本に広める機会を提供してくれてありがとう。日本は大好きで、深い影響を受けた国なんだ。いつ、どんなふうに日本の豊かな文化から影響を受けたかを答えるよ。俺たちのギタリストMoses Koulは十代のときに映画やアートを通して日本の音楽を発見したんだ。
それで、日本のジャズ・アーティストたちにのめり込んでいた。同じ頃に、たくさんの映画やアートやアニメがインドに入ってきて、インドでも日本文化にもっと深く知ることができるようになった。つまり、 日本のメジャーな輸出文化であるアニメとかJ-Pop以外のものにも触れられるようになったってことだよ。俺たちは、日本のアートの歴史の中で、日本がどうやって西洋文化を受け入れて、そこに独自の要素を加えていったのかを知ることができた。
例えば、すごく日本的に聞こえるメロディーラインってあるよね。それは、そういう音を奏でるミュージシャンたちが、欧米よりも日本のアーティストにより親しんでいるからそういう曲調になるんだってこととかね。
俺たちのキーボーディストのReuben Dasは自作のアニメやマンガにも情熱を注いでいて、これは俺たちが日本のアートや音楽、文化に触れながら育ってきたことを表すアウトプットになっているんだ。
俺たちは日本の映画、アート、音楽にすごくリスペクトと憧れを感じている。子どもの頃から日本の美しい文化にインスパイアされ、影響を受けて育ってきたからこういうことをしているってわけさ。
日本でツアーをして、俺たちの音楽をプレイするのが夢なんだよ。今すぐにでも叶えたいと思っている。そのためにとにかくがんばっているのさ」
ありがとう。
そんなふうに言ってもらえて日本人としてうれしいよ。
それにしても、影響を受けたのが日本のジャズというのは意外だった。
影響を受けた日本のミュージシャンや映画などを具体的に聞いてみると、こんな答えが返ってきた。
Kraken「俺たちがインスパイアされたり影響を受けたミュージシャンの名前をいくつか挙げると、上原ひろみ、山下洋輔トリオ、きゃりーぱみゅぱみゅ、菊池雅章、Uyama Hirotoだな。それとは別に、日本のヒップホップにも深い影響を受けていて、何人か名前を挙げるとなると、Nujabes、Ken the 390、Gomess。
俺たちが大きく影響を受けた映画監督は、宮崎駿、今敏、岩井俊二だよ。」
この回答にはびっくりした。
だって、かれらの音楽性から、てっきりOne OK RockとかSpyairとかの名前が挙がるものと思っていたから。
映画にしても、宮崎駿はともかくとして、他にはドラゴンボールとかNarutoあたりが挙がるものと思っていた。
この予想以上にマニアックな日本通ぶりにはひたすら驚かされるばかり。
ここに名前が挙がったアーティスト全員を深く知っている人って、日本人でも少ないんじゃないだろうか。
正直、私も日本のジャズやヒップホップにはてんで詳しくないので、存じ上げない方が何人かいた。
菊池雅章(これで「まさぶみ 」と読む)はピアニストで、日本のマイルスとも称される、日本におけるエレクトリック・ジャズのパイオニア。ピアノソロのアルバムや尺八との共演アルバムなんかも作っている。
Uyama HirotoはNujabesとのコラボレーションでも知られるマルチプレイヤー、Gomessは自閉症であることをカミングアウトしているラッパーで、独特の詩世界で知られるアーティストだ。
今敏(こん・さとし)は「Perfect Blue」「東京ゴッドファーザーズ」「パプリカ」などで知られるアニメ映画の監督。
自分の知識の無さを恥入りました。
それにしても、まさかこんな斜め上の回答が返ってくるとは思わなかった。
そのことを正直に伝えると、
「ハハハ、きゃりーぱみゅぱみゅは知ってるだろ?」とのこと。
私もたまにインド人のブログ読者(グーグル翻訳などを使って読んでくれているようだ)から「このアーティストは知らなかった!素晴らしいアーティストを教えてくれてありがとう」とか言われることがあるが、まさかインド人に日本のアーティストを教えてもらうことがあるとは。
今回名前を挙げてもらったアーティストをチェックしてみて、そのセンスの良さに恐れ入りました。
ヘヴィーロックアーティストの名前がひとつも挙がらなかったのが意外だったけど、今後はビジュアル面以外でも、彼らが影響を受けた日本のサブカルチャーの要素が出てくることがあるのだろうか。
すぐにでも日本で演奏したいと語るKraken.
その夢が一刻も早く願うことを心から願わずにはいられない。
少なくとも、ここまで日本を愛してくれている彼らが、日本でもっと有名になってほしいなあと思います。
みなさんも彼らのことを広めてくれたらうれしいよ。
それでは、また!
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今回は、ジャパニーズ・カルチャーの影響を受けたアーティスト、ロックバンド編!
彼らの日本のサブカルチャーへの驚くべき愛情を心して読むべし。
そのバンドの名前はKraken。
2014年に結成された6人組のデリーのロックバンドだ。
このブログの熱心な読者の方なら、彼らがRolling Stone Indiaが選ぶ2017年のベストアルバムの第7位に選ばれていたのを覚えているかもしれない。
彼らがどれだけ日本に影響を受けているかは、フライヤーやウェブサイトを見ていただければ一目瞭然!
まずこれがファーストアルバムのウェブ告知。

箸としゃもじは分かるけど、まるいのはピザ?
続いて最近のツアーのフライヤー。

お坊さんが「こんなのプログレじゃないぜ」って言ってる。サポートのポストハードコア/マスロックのバンド名、Haiku Like Imaginationというのにも注目。彼らも日本文化の影響を受けてるんだろうか。
北東部ツアーのフライヤーはこんな感じ。

これ、全てインドのバンドがインド国内向けに作ってるチラシです。
五重塔、着物、寿司っていう伝統的な要素に、缶ジュースや公衆電話、カタカナ表記、といかにも「外国人から見た日本」的なテイストだけど、日本文化というとアニメやマンガのイメージが非常に強いインドで、伝統や食文化にまで目配りができているというのはなかなかの日本通ぶりと言える。
バンドの中心メンバーのギタリスト、Moses Koulは実際に日本に一人旅に来たこともあるようで、日本のカルチャーに大きな影響を受けているという(詳細は後述)。
そんな彼らのサウンドをさっそく聴いてみましょう。
2017年にリリースされた彼らのファーストアルバム"Lush"から、"Yooo! It's ALetter From Koi Fish"
"Koi Fish"は魚の鯉のことのようで、「ヨ〜!俺の鯉からの手紙だ!」という日本語表記に脱力するが、これは「恋」と「鯉」がかかっているのかな?
歌詞をみると一応ラブソングのようだし。
バッキングでも派手に動き回るギターや、ハードコアっぽいシャウトが入りつつも、それが暴力性の表現ではなくグルーヴ感を促進するように使われているところなど、日本の音楽専門学校のESP出身のバンドみたいな雰囲気だ(分かるかなあ)。
ビデオもローバジェットで作られているようだけど、日本旅行のお土産なのかな?が並んでいて、ここでも彼らの日本愛が感じられる。
"Bouncy Bouncy Ooh Such A Good Time"
タイトルの訳は「ワクワク楽しいなあ〜」だって。ビデオはジブリの森かな。
"What Will Be, Will Be, Promise Me Kawaii Tea"
今度は「なるようになる、可愛いお茶を約束してくれ」とのこと。
またしても日本の日常を切り取ったビデオと激しいロックが不思議な雰囲気を醸し出している。
なんだか曲調も日本のアニメ(戦うようなやつ)の主題歌っぽく聴こえるが、いったい彼らはどんな日本文化に影響を受けてきたのか。
SNSを通していくつかの質問をしてみました。
最初の質問は、日本の文化にいつ、どんなふうに影響を受けたのかということ。
Kraken 「まず、俺たちの音楽を日本に広める機会を提供してくれてありがとう。日本は大好きで、深い影響を受けた国なんだ。いつ、どんなふうに日本の豊かな文化から影響を受けたかを答えるよ。俺たちのギタリストMoses Koulは十代のときに映画やアートを通して日本の音楽を発見したんだ。
それで、日本のジャズ・アーティストたちにのめり込んでいた。同じ頃に、たくさんの映画やアートやアニメがインドに入ってきて、インドでも日本文化にもっと深く知ることができるようになった。つまり、 日本のメジャーな輸出文化であるアニメとかJ-Pop以外のものにも触れられるようになったってことだよ。俺たちは、日本のアートの歴史の中で、日本がどうやって西洋文化を受け入れて、そこに独自の要素を加えていったのかを知ることができた。
例えば、すごく日本的に聞こえるメロディーラインってあるよね。それは、そういう音を奏でるミュージシャンたちが、欧米よりも日本のアーティストにより親しんでいるからそういう曲調になるんだってこととかね。
俺たちのキーボーディストのReuben Dasは自作のアニメやマンガにも情熱を注いでいて、これは俺たちが日本のアートや音楽、文化に触れながら育ってきたことを表すアウトプットになっているんだ。
俺たちは日本の映画、アート、音楽にすごくリスペクトと憧れを感じている。子どもの頃から日本の美しい文化にインスパイアされ、影響を受けて育ってきたからこういうことをしているってわけさ。
日本でツアーをして、俺たちの音楽をプレイするのが夢なんだよ。今すぐにでも叶えたいと思っている。そのためにとにかくがんばっているのさ」
ありがとう。
そんなふうに言ってもらえて日本人としてうれしいよ。
それにしても、影響を受けたのが日本のジャズというのは意外だった。
影響を受けた日本のミュージシャンや映画などを具体的に聞いてみると、こんな答えが返ってきた。
Kraken「俺たちがインスパイアされたり影響を受けたミュージシャンの名前をいくつか挙げると、上原ひろみ、山下洋輔トリオ、きゃりーぱみゅぱみゅ、菊池雅章、Uyama Hirotoだな。それとは別に、日本のヒップホップにも深い影響を受けていて、何人か名前を挙げるとなると、Nujabes、Ken the 390、Gomess。
俺たちが大きく影響を受けた映画監督は、宮崎駿、今敏、岩井俊二だよ。」
この回答にはびっくりした。
だって、かれらの音楽性から、てっきりOne OK RockとかSpyairとかの名前が挙がるものと思っていたから。
映画にしても、宮崎駿はともかくとして、他にはドラゴンボールとかNarutoあたりが挙がるものと思っていた。
この予想以上にマニアックな日本通ぶりにはひたすら驚かされるばかり。
ここに名前が挙がったアーティスト全員を深く知っている人って、日本人でも少ないんじゃないだろうか。
正直、私も日本のジャズやヒップホップにはてんで詳しくないので、存じ上げない方が何人かいた。
菊池雅章(これで「まさぶみ 」と読む)はピアニストで、日本のマイルスとも称される、日本におけるエレクトリック・ジャズのパイオニア。ピアノソロのアルバムや尺八との共演アルバムなんかも作っている。
Uyama HirotoはNujabesとのコラボレーションでも知られるマルチプレイヤー、Gomessは自閉症であることをカミングアウトしているラッパーで、独特の詩世界で知られるアーティストだ。
今敏(こん・さとし)は「Perfect Blue」「東京ゴッドファーザーズ」「パプリカ」などで知られるアニメ映画の監督。
自分の知識の無さを恥入りました。
それにしても、まさかこんな斜め上の回答が返ってくるとは思わなかった。
そのことを正直に伝えると、
「ハハハ、きゃりーぱみゅぱみゅは知ってるだろ?」とのこと。
私もたまにインド人のブログ読者(グーグル翻訳などを使って読んでくれているようだ)から「このアーティストは知らなかった!素晴らしいアーティストを教えてくれてありがとう」とか言われることがあるが、まさかインド人に日本のアーティストを教えてもらうことがあるとは。
今回名前を挙げてもらったアーティストをチェックしてみて、そのセンスの良さに恐れ入りました。
ヘヴィーロックアーティストの名前がひとつも挙がらなかったのが意外だったけど、今後はビジュアル面以外でも、彼らが影響を受けた日本のサブカルチャーの要素が出てくることがあるのだろうか。
すぐにでも日本で演奏したいと語るKraken.
その夢が一刻も早く願うことを心から願わずにはいられない。
少なくとも、ここまで日本を愛してくれている彼らが、日本でもっと有名になってほしいなあと思います。
みなさんも彼らのことを広めてくれたらうれしいよ。
それでは、また!
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「軽刈田 凡平(かるかった ぼんべい)のアッチャーインディア 読んだり聞いたり考えたり」
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goshimasayama18 at 00:18|Permalink│Comments(2)