執筆

2018年09月20日

STUDIO VOICE Vol.413 いまアジアから生まれる音楽 (少しだけ執筆)

ども、軽刈田 凡平(かるかった・ぼんべい)です。
本日発売のSTUDIO VOICE Vol.413「いまアジアから生まれる音楽」特集号にインドのオススメフェス、クラブ、注目レーベル情報を提供させてもらいました。(pp.171-179)
StudioVoice413
今号のSTUDIO VOICEは、タイトルの通り1冊まるごと現在のアジアの音楽特集。
アジア各国のシーンのいちばんとんがったところがいったいどうなっているのかという記事が満載で、これが全ページどこを読んでも面白い大充実の内容。
音楽好きだったら、この1冊を片手にいろんな音楽を検索して過ごすだけで、1ヶ月くらいは充実した生活が送れるんじゃないかと思います。

なんだかんだいっても世界中のトレンドをリードする欧米とは、物理的にも文化的にも距離のあるアジアのシーン。
そこで活躍するアーティストたちは大きく分けて2つのタイプの大別される。

最近アジアでもすっかり珍しくなくなったのが、欧米との地理的・文化的な距離に関係なく、我が道を行きながら最先端の音楽を作り続けるタイプのアーティストたち。 
彼らは口を揃えてこう言う。
地理的な情報格差がほとんどなくなったこの時代に「アジアの音楽」なんて括ることにいったいどんな意味があるのかい?と。

一方で、アジアならではの独自の文化や社会に否応なしに(あるいは、なかば選択的に)どっぷりと浸かり、その中で伝統と現代をミクスチュアして、世界中のどこにもない音楽をクリエイトしてゆくアーティストたち。

今回の特集の中では、インドに関する記事では田口悟史さんという方が最近拠点をバンガロールからムンバイに移したエレクトロニカ・アーティストのMonsoonsirenに取材した記事がとても秀逸。
いま挙げた2つの例では前者にカテゴライズされるはずの彼は、最先端の音楽を奏でながらも、地元のシーンや伝統的なコミュニティーからは隔絶して暮らす、ある種孤独なアーティストでもある。
海外旅行をすれば楽しいが、それでも彼にとって外国はしょせん異国であって、ホームと感じるのはインドであるという事実。

彼の抱える断絶と帰属意識はそのまま21世紀のインドやアジアの(いや、ひょっとしたら世界中の)アーティストの一典型として捉えることができるものだろう。
このブログで取り上げたアーティストでは、大都市ではなく後進地帯のアーティストではあるがラッパーのTre Essなんかにも通じる感覚があるように思う。

もちろん、こうしたアーティストこそがインドやアジアの典型的な代表格かといえばそういうわけでもなく、逆に地元愛どっぷりのラージャスタンのラッパーJ19 Squadのようなアーティストたちまで、ジャンルごとに多様なスタンスとスタイルのアーティストがいて、インドの(アジアの)シーンを形作っているというわけだ。
また地域ごとに異なる固有の歴史や欧米の文化との距離感が、シーンごとの面白さを形成している。
そして大事なのは、どのシーンもまだまだ熱くて発展途上だということ。

今回のSTUDIO VOICEでは他にもインドのデスメタルに注目した記事なんかもあり、なかなか好事家の少ないインドの音楽シーンに関して、自分と似たようなところに着目している人がいると分かったのもうれしかった。

みなさんもぜひご一読を! 

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goshimasayama18 at 22:54|PermalinkComments(0)

2018年05月10日

雑誌「POPEYE」6月号「僕の好きな音楽」インドのページ!

ポパイ表紙
本日発売の雑誌「POPEYE」6月号の音楽大特集「ぼくの好きな音楽」のインド音楽のページに情報提供させてもらいました!

ポパイ記事
「POPEYE」と言えば「シティボーイのための雑誌 」を標榜しているお洒落カルチャー誌。
よくそんなところのライターさんがこんな辺境ブログを見つけてくれたものだと思ったけど、ええいままよ、といろんな音楽を紹介してしまいました。

「POPEYE」からこのブログにたどり着いた方、軽刈田 凡平(かるかった・ぼんべい)と申します。
以後、お見知りおきを。
 記事で紹介していた音楽をもうちょっと深く知りたい方向けに、Youtubeとブログの記事をリンクしてみますんで、良かったらどうぞ。
アーティスト名の前の数字は、POPEYEの記事についてる番号です。

1.AMBUSHは、のっけからまだ記事に書いてないバンドです。
今年新しいアルバムを出すらしいので、そのタイミングで改めて紹介するつもり。

北東部アッサム州出身のバンドで、音はもろレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンだけど、硬派な姿勢も本家同様。
この曲は、インドのマジョリティーであるアーリア系やドラヴィダ系から差別な扱いをうけ、法的にも不利な立場に置かれている北東部人々の権利を訴える内容だ。


2.Anand Bhaskar Collectiveは、サウンドガーデンのようなオルタナティブ・ロックに乗るインド声楽系のヴォーカルが絶妙なバンド。
この曲が記事に書かれていたHey Ram.

彼らについて書いたブログ記事はこちらからどうぞ。


3.aswekeepsearchingはグジャラート州出身の繊細にして壮大なサウンドを奏でるポストロックバンド。
歌詞のヒンディー語の響きがまたいい感じの情緒なのです。

紹介の記事はこちら

4.Gutslit、こんどはムンバイのデスメタル!

黒ターバンのベーシストがかっこいいぞ。
こういうコアな音楽になればなるほど、国境って無くなってくるんだなあ、と感慨もひとしお。
なんと彼らはクラウドファウンディングで資金を集めて来日公演を含めたアジアツアーを計画中!という記事はこちら
他にも北東部のデスメタルバンドへのインタビューなんかもしてます。

5.Parekh & Singh
彼らのこともまだ記事にしてないや。
とてもポップでお洒落な雰囲気の音楽。

こんなふうに、インドらしさを全く出さず、無国籍的にセンスとポップさで勝負しているアーティストも結構います。

6.GURBAX
ここで痛恨の誤植!
POPEYEの記事ではGRUBAXとあるけど、正しくはGURBAX.

ヒンドゥー的要素を取り入れたトラップミュージックで、記事はこちら
記事ではインドのクラブシーンの盛り上がりが感じられる映像も見られます。
他にインドの要素の入ったトラップでは、Su Realもオススメ

7.インドのエミネムことBRODHA V
インドではヒンディー語をはじめとする各地域の言語でラップするアーティストも多いけど、彼のラップは英語なので聴きやすいと思います。
英語とはいえ、サビで急にヒンドゥーの聖歌になるところが小粋かつ気持ちいい。

インドのラッパーへのエミネムの影響というのは本当に大きく、今まで記事にした中だと、Big DealJ19SquadBKもエミネムからの影響を公言していた。
まあ、そもそも今世界中で活躍しているラッパーで、彼の影響下にない人のほうが少ないのかもしれないけど。

記事に書いてある「インドの音楽は長らく鎖国状態にあり…」というのは、インドの音楽マーケットは長らくインドの映画音楽が中心に(というかそればっかり)流通していて、一般大衆がいろんなジャンルの音楽を聴く機会が非常に限られていた、っていうことを指してます。
これが21世紀に入った頃から、インターネットの普及とともに、一気に世界中の音楽にアクセスできる裾環境になり、いろんな音楽を聴く人、自分もやりたい!って人が増えてきて、結果的にとっても面白いことになっている、っていうのが今のインドの音楽シーンの状況です(ざっくり言うと)。

インドには他にも面白い音楽がたくさんあって、まだまだ全然紹介しきれていないのだけど、今回のPOPEYEの特集的な感じのものでいうと、例えばインド音楽の側からのヒップホップへのアプローチとか、インドのポップスのラテン化傾向のなんていうのはわりと面白いんじゃないかと思います。

今月のPOPEYE、他のページでは私のような駄ブロガーではなく、ビースティーズのマイクD、細野晴臣、トミー・ゲレロ、コムアイ、ウェス・アンダーソンといった古今東西のセンスいい感じの人たちがお気に入りの音楽を紹介していて、読み応えたっぷり、オススメです。

それにしてもこの特集を読んでつくづく感じたのは、「俺最近こんなマニアックでセンスのいい音楽聴いてるんだぜ」ってイキがりたい文化って、洋の東西も老若男女も問わずまだまだ盛んなんだなあ、ということ。もちろん本当にその音楽が好きだというのが大前提なのだけど。
ちょっと嬉しくなっちゃいましたよ。
私なんかまだまだ。
これからも精進します。 

goshimasayama18 at 00:42|PermalinkComments(0)