ミュージックビデオ
2020年08月17日
ヒンディー・ロックの代表格 The Local Trainの映画風ミュージックビデオ
とくに難しい定義があるわけではなく、「ヒンディー語で歌われているロック」というだけのことである。
インドでは、一般的に英語よりもローカル言語で歌われている曲のほうが人気が高い(YouTubeやサブスクの再生回数が多い)。
英語の上手い人材が多い印象の強いインドだが、英会話ができる人の割合は20%、そのなかで「英会話が流暢にできる」という人の割合はたったの4%だけだという調査結果がある。
(出典:「インドで英語が話せる人は人口の何割?」 https://news.yahoo.co.jp/byline/terasawatakunori/20150801-00048077/ 大卒者では8割以上が「流暢に話せる」もしくは「少し話せる」と答えているから、当然ながら社会階層によってもその割合は大きく異なる)
映画『ヒンディー・ミディアム』で描かれていたように、英語は給料の良い職に就き、上流階級として扱われるための必須条件として扱われているが、国全体として見ると、まだまだ自在に話せる人は少ないのだ。
というわけで、インドにも、洋楽的な世界観を志向し、国際的な成功を目指して英語で歌うミュージシャンは多いけれど、インドの一般的なリスナーにとっては、やはり生まれ育ったときから話しているローカル言語のほうが馴染みやすいという傾向がある。
この状況は、日本の音楽シーンとも似ていると言えるかもしれない。
インドの音楽シーンと言語をめぐる状況をもう少し詳しく見てみよう。
「インドには20を超える公用語がある」と言われているが、インドの言語の中で、もっとも話者数/理解者数が多いのは、インド北部と中部の広い地域で話されているヒンディー語だ。
じつは、連邦政府の公用語として定められているのは、このヒンディー語と英語のみであり、タミル語やベンガル語などの言語は州レベルでの公用語(連邦政府は「指定言語」としている)に過ぎない。
ヒンディー語を公用語としない州でも、ボリウッド映画やテレビ番組などによってヒンディー語に親しんでいる人々は多く、つまり、ヒンディー語で音楽や映画を作れば、それだけ大きな市場にアピールできるのだ。
YouTubeを見る限り、同じようなタイプ/クオリティーの音楽でも、ヒンディー語で歌われている場合、英語を含む他の言語よりも数倍からひと桁くらい再生回数が多いという印象を受ける。
(ただしこれはインディー音楽に限る。映画音楽に関しては、ヒットした映画の曲であれば、言語を問わずさらに2桁くらい高い再生回数を叩き出している)
実際、英語やヒンディー以外の言語で歌うインドのインディーミュージシャンからは、ヒンディー語の曲ばかり聴かれている現状を嘆く声を聞くことも多い。
前置きが長くなったが、こうしたインドで最大の市場を持つヒンディー語のロックを代表する存在が、The Local Trainだ。
彼らは2008年に北インドのチャンディーガル出身のメンバーらによって結成され、その後デリーを拠点に活動を続けている。
垢抜けない印象のあったヒンディー・ロックに、洋楽的なメロディーとアレンジを導入し、その洗練された音楽性で高い人気を集めている。
インド最大言語の人気バンドということで予算も豊富なのか、彼らは凝った映画風のミュージックビデオを作ることでも知られており、2017年にリリースした"Khudi"では、Uber Eatsのようなバイクでの出前を仕事にしている青年が自由を求めて旅に出るまでの過程を鮮やかに描いている。
王道のポップ・ロック・サウンドに、クオリティーの高い映像による誰もが共感できるストーリー。
600万回以上という、インドのインディーバンドにしてはかなり多い再生回数を叩き出している理由が分かるだろう。
旅は彼らにとって大事なテーマなのか、この"Dil Mere"はヒマラヤ山脈の麓の町マナリ(Manali)を舞台にしたロードムービー風に撮影されている。
空撮を多用した美しい自然と、現地の人々の素朴な佇まいが清々しい印象を残すこの映像は、撮影に8日間、編集に30日間をかけたものだという。
このミュージックビデオのYouTubeでの再生回数は1,200万回以上!
彼らの人気の程がお分かりいただけるだろう。
現時点での最新アルバムは2018年にリリースされた"Vaaqif".
その収録曲"Gustaakh"のミュージックビデオは、なんと特撮SF風のコマ撮り作品だ。
日本の怪獣映画(のハリウッドリメイク?)の影響も感じられる作風が面白い。
彼らは、影響を受けたバンドにNirvana, Aerosmith, U2, Alt-J, The 1975を挙げている。
まったく音楽的な共通点のない顔ぶれだが、いずれも商業的に大きな成功を収めたバンドなので、王道のロックを奏でる彼ららしい好みとも言えるだろう。
(ちなみに国内のアーティストでは、Indian OceanとLucky Aliを挙げている)
メンバーの中にはロスアンジェルスの名門音楽学校MIの出身者(ギタリストのParas Thakur)も在籍しており、英語で歌っても良さそうな彼らだが、ヒンディー語で歌う理由をインタビューでこう答えている。
「僕らは90年代に育ったから、インドにロックやポップスが紹介される前の音楽を聴いていた。だから、僕らのルーツも、考え方も、心の中で自問自答するときも、いまだにヒンディー語なんだ。それに加えて、ウルドゥー語(ヒンディーと共通点の多いパキスタンなどの公用語)の詩も僕らの一部になっていて、ずっと楽しんできた。だから、ヒンディー語の音楽を通して自分たちのことを表現するって言うことは、ぼくらにとってすごく自然で、詩的なことでもあるんだ」
(https://travelandleisureindia.in/the-local-train-interview/)
彼らが表現したい世界観は、自分たちのルーツでもあるヒンディー/ウルドゥーでないと表現できないということなのだろう。
The Local Trainは、デリーでの大学祭や各地のフェスでのライブで人気を獲得し、2015年にはゼンハイザーによって「インドNo.1若手バンド」にも選ばれるなど、音楽業界での評価も高い。
つねに新しくて刺激的な音楽を探している映画業界が彼らのことを放っておくはずもなく、実際、彼らの"Aaoge Tum Labhi"は2015年のボリウッド映画"Angry Indian Goddeses"にも採用されている。
これは映画のために作曲したものではなく、彼らが以前に作っていた曲が映画に採用されたという経緯だったようだ。
(そのため、よくあるボリウッド・ソングのように、映画のシーンがミュージックビデオに使われていない。ちなみにこの曲の再生回数も1,000万回を超えている)
ご存知の通り、インドでは音楽シーンの主流は今でも映画音楽だが、彼らはボリウッドについて、どう考えているのだろうか。
「結局のところ、ボリウッドだろうとインディーだろうと、いい曲はいいし、ダメな曲はダメだよね。僕らは雇われて女優のダンスシーンのために曲を変えたりするミュージシャンにはなりたくない。僕らはインディーアーティストとして、自分たちが作りたいものだけを作りたいんだ。僕らの音楽をそのまま求めてくれるんだったら、誰であろうとうれしいよ」
「"Angry Indian Goddeses"で使われた曲も、アルバムでリリースされた通りだった。ディスコ調にしたり、ビートを変えたりはしなかった。インディーバンドにとっては大切なことさ」
自分たちの曲がそのままの形で使われるのであれば構わないが、映画のために魂を売ろうとは思わない。
参考サイト:
http://www.pritishaborthakur.com/2016/03/19/in-conversation-with-the-local-train/
https://themanipaljournal.com/2017/02/20/being-indie-and-hindi-the-local-train-interview/
https://travelandleisureindia.in/the-local-train-interview/
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2019年01月25日
Rolling Stone Indiaが選ぶ2018年のベストミュージックビデオTop10!
今回はミュージックビデオをお届けします。
(元になった記事はこちら:http://rollingstoneindia.com/10-best-indian-music-videos-2018/)
ご存知の通りインドは映画大国ということもあって、映像人材には事欠かないのか、どのビデオもかなりクオリティーの高いものになっている(そうでないものもあるが)。
いずれもベストシングル、ベストアルバムとは重複無しの選曲になっているが、映像だけでなく楽曲もとても質が高いものが揃っていて、インドの音楽シーンの成熟ぶりを感じさせられる。
中世から現代まであらゆる時代が共存する国インドの、最先端の音楽を体験できる10曲をお楽しみください!
Nuka, "Don't Be Afraid"
ダウンテンポの美しいエレクトロポップに重なる映像は、ヒンドゥーの葬送(火葬、遺灰を海に撒く)を描く場面から始まり、死と再生を幻想的に表現したもの。
この音像・映像で内容がインド哲学的なのがしびれるところだ。
本名Anushka Manchanda.
デリー出身の彼女は、タミル語、テルグ語、カンナダ語、ヒンディー語などの映画のプレイバックシンガー(ミュージカルシーンの俳優の口パクのバックシンガー)やアイドルみたいなガールポップグループを経て、現在ではモデルや音楽プロデューサーなどマルチな分野で活躍。
プレイバックシンガー出身の歌手がよりアーティスティックな音楽を別名義で発表するのはここ数年よく見られる傾向で、映画音楽とインディー音楽(「映画と関係ない作家性の強い音楽」程度の意味に捉えてください)の垣根はどんどん低くなっている。
映像作家はムンバイのNavzar Eranee. 彼もまた若い頃から海外文化の影響を大きく受けて育ったという。
Prateek Kuhad, "Cold/Mess"
2015年にデビューしたジャイプル出身のシンガーソングライター。
アメリカ留学を経て、現在はデリーを拠点に活動している。
ご覧の通りの洗練された音楽性で、MTV Europe Music Awardほか、多くの賞に輝いている評価の高いアーティストだ。
インドらしさを全く感じさせないミュージックビデオは、それもそのはず、ウクライナ人の映像作家Dar Gaiによるもの。
どこかインドの街(ムンバイ?)を舞台に撮影されているようだが、この極めて恣意的に無国籍な雰囲気(俳優もインド人だけどインド人っぽくない感じ!)は、この音楽のリスナーが見たい街並みということなのだろうか。
ところで、俳優さんの若白髪はインド的には「有り」なの?
ブリーチとかオシャレ的なもの?
Tienas, "18th Dec"
Prabh Deepらを擁する話題のヒップホップレーベルAzadi Recordsと契約したムンバイの若手ラッパー(まだ22歳)で、以前紹介した"Fake Adidas"と同様、小慣れた英語ラップを聞かせてくれている。
Tienasという名前は、本名のTanmay Saxenaを縮めてT'n'S(T and S)としたところから取られていて、いうまでもなくEminem(Marshall Mathers→M'n'M)が元ネタと思われる。
EminemにおけるSlim Shadyにあたる別人格としてBobby Boucherというキャラクターを演じることもあるようだ。
このミュージックビデオはムンバイの貧民街やジュエリーショップを舞台に、全編が女優によるリップシンクとなっている。
Tienasは男性にしては声が高いので、以前このビデオを見て勘違いして女性ラッパーだとどこかに書いてしまった記憶があるのだが、どこだったか思い出せない…。
That Boy Roby, "T"
2018年にファーストアルバムをリリースしたチャンディガル出身のスリーピースバンドが奏でるのはサイケデリックなガレージロック!
ビデオはただひたすらに90年代のインド映画の映像のコラージュで、インド映画好きなら若き日のアーミル・カーンやシャー・ルクを見つけることができるはず。
なんだろうこれは。我々が昔の刑事ドラマとかバブル期のトレンディードラマをキッチュなものとして再発見するみたいな感覚なんだろうか。
Rolling Stone India誌によると「ハイクオリティーな4分間の時間の無駄」。
全くその通りで、それ以上のものではないが、こういうメタ的な楽しみ方をするものがここにランクインすることにインドの変化を感じる。
Gutslit, "From One Ear To Another"
出た!
昨年来日公演も果たした黒ターバンのベーシスト、Gurdip Singh Narang率いるムンバイのブルータル・デスメタルバンド。
フランク・ミラーのアメリカンコミック"Sin City"を思わせる黒白赤のハードボイルド調アニメーションは、バンドのドラマーのAaron Pintoが手がけたもの。
残虐で悪趣味でありつつ非常にスタイリッシュという、稀有な作品に仕上がっている。
カッコイイ!
Kavya Trehan, "Underscore"
ドリーミーなエレクトロポップを歌うKavya Trehanは女優、モデル、宝石デザイナーとしても活躍するマルチな才能を持った女性で、ダンス/エレクトロニックバンドMoskoのヴォーカリストでもある。
(Moskoには以前紹介したジャパニーズカルチャーに影響を受けたバンドKrakenの中心メンバーMoses Koulも在籍している)
ノスタルジックかつ無国籍な雰囲気のビデオはDivineとRaja Kumariのビデオも手がけたアメリカ人Shawn Thomasが LAで撮影したものだそうな。
Avora Records, "Sunday"
先日紹介した「インド北東部のベストミュージックビデオ」にも選ばれていたミゾラム州アイゾウルのポップロックバンドがこの全国版にも選出された。
アート的で意味深なミュージックビデオが多く選ばれている中で、同郷の映像作家Dammy Murrayによるポップなかわいさを全面に出した映像が個性的。
Mali, "Play"
チェンナイ出身のケララ系シンガーソングライターMaliことMaalavika Manojは、映画のプレイバックシンガーやジャズポップバンドBass In Bridgeでの活動を経て、今ではムンバイで活躍している。
幼い頃に音楽を教えてくれたという、彼女の実の祖父と共演したあたたかい雰囲気のビデオはムンバイの映像作家Krish Makhijaによるもの。
彼女の深みのある美しい声(少しNorah Jonesを思わせる)と、確かなソングライティング力が分かる一曲だ。
あと最後に、誰もが気づいたことと思うけど、このMaliさん、かなりの美人だと思う。
まいっちゃうなあ。
Chidakasha, "Tigress"
ケララ州コチ出身のロックバンド。
聞きなれないバンド名はインド哲学やヨガで使われるなんか難しい意味の言葉らしい。
インスピレーションを求めてメンバーがMarshmelloみたいな箱男になったビデオは、いかにもローバジェットだがなかなか愛嬌がある。
3:50あたりからのフュージョン・ロック的な展開も聴きどころ。
Ritviz, "Jeet"
インド音楽の要素を取り入れたプネーのエレクトロニック/ダンス系アーティスト。
下町、オートリクシャー、ビーチ、映画館(そこで見るのは前年のRitvizヒット曲"Udd Gaye")、垢抜けないダンスといったローカル色満載の映像はこのランキングの中でも異色の存在だ。
この「美化されていないローカル感」をB級感覚やミスマッチとして扱うのではなく、そのままフォーキーなダンスミュージックと癒合させるセンスは、とにかくお洒落な方向を目指しがちなインドの音楽シーンではとても珍しく、またその試みは見事に成功している。
この素晴らしいビデオはムンバイの映像作家Bibartan Ghoshによるもの。
以上、全10曲を紹介しました。
見ていただいて分かる通り、Nukaの"Don't be Afraid"やThat Boy Robyの"T"、Maliの"Play"、Ritvizの"Jeet"のように、インド的なものを美しく詩的に(あるいはおもしろおかしく)映したビデオもあれば、逆にPrateek Kuhadの"Cold/Mess"やGutslitの"From One Ear To Another"、Kavya Trehanの"Underscore"のように無国籍でオシャレなものこそを美とするものもあり、「かっこよさ」と「インド的」なものとの距離感の取り方がいろいろあるのが面白いところ。
ところで、いつも気になっているのは、この映像を撮るお金はどこから出ているのかということ。
例えばNukaやPrateek KuhadはYoutubeの再生回数が120万回を超えているが、LAロケのKavya Trehanでさえ再生回数6,000回足らず、That Boy Robyに至っては3,200回に過ぎない。
(それにあのビデオ、著作権関係とか、大丈夫なんだろうか)
映画音楽・古典音楽以外のほとんどの楽曲が大手レコード会社ではなくインディーズレーベル(もしくは完全な自主制作)からのリリースであるインド。
100万を超える再生回数のものは別として、他は制作費用が回収できていなさそうなものばかりだ。
いったいどこからこれだけの映像を撮るお金が出てくるのだろうか。
おそらくだが、その答えのひとつは「家がお金持ち」ということだと思う。
インドのインディーズシーンで活躍しているミュージシャンは、幼い頃から楽器に触れて欧米への留学経験を持つなど、端的に言うと実家が裕福そうな人が多い。
音楽コンテンツ販売のプロモーションのためにミュージックビデオを作るのではなく、もともと金持ちで、良い作品のために惜しげも無くお金と労力をつぎ込むという、千葉のジャガーさん的なアーティストも多いのではないかと思う。
そんな彼らが発展途上のシーンを底上げしてくれているのも確かなので、もしそうだとしてもそれはそれで有りだと思うのだけど、次回はそんなアーティストたちとは全く真逆のインドならではの音楽を紹介したいと思います!
それでは、サヨナラ、サヨナラ。
★1月27日(日)ユジク阿佐ヶ谷にて「あまねき旋律」上映後にインド北東部ナガランド州の音楽シーンを語るトークイベントを行います
★凡平自選の2018年度のおすすめ記事はこちらからどうぞ!
2018年08月25日
著作権は問題ないのか? バンガロールのバンドPerfect Strangersの凄いアイデアのMV!
これが凄いアイデアで、思わず大丈夫なの?と心配になってしまうような映像作品!
公開できなくなる日が来るかもしれないので、大急ぎで紹介します。
それがこちら!
見れば一目瞭然、お分りいただけたと思うが、古今東西のあらゆるミュージックビデオ、映画、ミュージカル映像、マラドーナ等の映像をつなぎ合わせて、さもスター達がPerfect Strangerの曲をパフォーマンスしているように見せるという驚愕のアイデア!
取り上げられている映像は、あまりにも多すぎていちいち名前を挙げていられないほどだけど、大物ミュージシャンとか名作のシーンばかりで、著作権関係がすっごく大変そうだけど、大丈夫なのかなあ。
よくYoutubeで名曲をカバーしたり、「踊ってみた」というのをアップしている人がいるが、彼らの場合、超有名人たちに「歌わせてみた」「踊らせてみた」という逆転の発想。
著作権とかの問題ないかどうかは別として、膨大な映像から曲に合う映像を探してきて編集した時間と労力を思うと頭が下がる。
っていうかむしろビデオが気になりすぎて楽曲が印象に残らないくらいだもの。
このビデオ、これだけの力作にも関わらず、まだ1,000viewちょっとだけど、もっとみんなに見てほしい!って気持ちと、みんなに見られたら削除されちゃうかも!っていうアンビバレントな感情になる。
彼らはロック、ジャズ、ポップ、ファンクを融合したジャンルを演奏するバンドで、他にはこんな曲をやっている。
"Selfie"
現代社会に生きる人々のSNS依存を皮肉った作品で、こちらもかなり見応えのあるビデオだ。
プラハとバンガロールで撮影したそうだけど、こちらもまだ3,500viewほど。
制作資金はどこから出ているんだろう。
本業が別にあって儲かっているのか、実家がお金持ちなのか。
余計なお世話だけど少々気にならないでもない。
ところでみなさんは、このビデオにでてきているアーティストや作品、どれだけ判別できたでしょうか。
我が家で分かったのは32組でした!
順不同で、シャールク?、ジョー・サトリアーニ、ジューダス・プリーストの"Breaking the Law"のビデオ?、マイケル・ボルトン、ブライアン・アダムス、エアロスミス、ディオ、フレディ・マーキュリー、メタリカ、ジャック・ブラック、マイケル・ジャクソン、ロッド・スチュワート、マラドーナ、AC/DC、ブライアン・メイ、スティーヴ・ヴァイ、シド・ヴィシャス?、メイシー・グレイ、ブレンダ・ラッセル、デヴィッド・ボウイ、U2、ジャスティン・ビーバー、テイラー、スウィフト、アン・ヴォーグ、グウェン・ステファニ、ブルーノ・マーズ、マドンナ、アンドレ3000、アニー・レノックス、リック・アストリー、アヴリル・ラヴィーン、映画ハリー・ポッター。
ほかにも、「あー!これ知ってる!見たことある!誰だっけ!」というの多数。
ちょっとしたポップカルチャー検定試験みたいなビデオだよな…。
このPerfect Strangers、サウンドはちょっと頭でっかちなところがあるような気がするけど、演奏は上手そうだし、資金的なバックもありそうだし、これからの活躍(楽曲もだけど、主にビデオ)が楽しみなバンドではあります。
それではこのへんで!
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2018年01月17日
Rolling Stone Indiaが選ぶ2017年ベストミュージックビデオ10選(後編)
前回の続きです。
Rolling Stone Indiaが選ぶ2017年のベストビデオ10選、今日は6位から10位を紹介!
このへんになるとなんか思わせぶりなアートっぽい?のが目立ってくる。
6. Sandunes: “Does Bombay Dream of NOLA” ムンバイ エレクトロニカ
叙情的なエレクトロニカに白黒のアニメ。
ニューオリンズの神秘主義(ヴードゥーみたいなやつか?)に基づいた世界観を表しているそう。
このサウンドにニューオリンズと来たか。
いろんなところから玉が飛んでくるな…。
7. Thaikkudam Bridge: “Inside My Head” コチ ロック
Thaikkudam Bridgeはいつかきちんと紹介しようと思っていたケララ出身のヘヴィーロックバンドで、これはいつもはマラヤラム語で歌っている彼らが英語で歌った一曲。
普段はもっとインドっぽい歌い回しが目立つバンドなんだけど、英語だと洋楽的メロディーラインが際立ってくるね。
使用言語によるメロディーラインへの影響ってのはインドの現代音楽の興味深いテーマかもしれない。
インドの言語で洋楽的メロディーっていうのは有りでも(3位のThe Local Train然り)、逆はまずないっていう。
あまりにも唐突な内容の映像だったので、思わず3回くらい見ちゃったのだけど、ジャングルを舞台にしたストーリーで登場人物は以下の4人。
男A:ジャングルの中を徘徊する若い男
男B:ナイフを持った男。男Aを見つけて尾行する
男C:毒蛇に首を咬まれた男
男D:男Cの連れ。なんとかして手当てをしないとって状況
4人とも、どうしてジャングルの中にいるのかとか、どういった関係なのかとかいったことは一切示されない。こういうの不条理っていうの?不親切っていうの?
この4人が極限的状況で、助け合ったり裏切ったり、といった内容のミュージックビデオ。
なかなか日本のバンドではできないセンスではある。
確かにプレデターみたいな密林の映像は緊張感があるし、密室劇的な面白さや、人間存在の本質を深く洞察した哲学的な部分(とか言ってみた)はあるかもだけど、いったい何?何故?という疑問は最後まで拭えず。
うーむ。深いのか、何なのか。
8. Black Letters: “Falter” バンガロール ロック
曲はアンビエント調だけど、自称オルタナティヴロックバンドということで、ジャンルはロックにしてみた。
海、人、魚の叙情的な映像だが、内陸部のバンドらしく海なのに魚は淡水魚(金魚)っていうこだわりの無さっぷりが気にならないこともない。
9. When Chai Met Toast: “Fight” コチ ロック
こちらもケララ出身のロックバンドで、曲によってはバンジョーが入る曲なんかもあって、無国籍な感じのポップをやっている。
映画にしろ何にしろ、インドの男性観ってマッチョだけどナイーヴという先入観があったのだけど、最近の音楽をやってる人たちだとこういうポップな感じもアリになってきたのか。
このビデオ、映像のセンスに関しては、なんとなくバンドブーム頃〜90年代初期の日本のバンドっぽいテイストって気もするなあ。
10. Chaos: “All Against All” ティルヴァナンタプラム スラッシュメタル
またケララ!そしてメタル!
このバンド名にしてこの曲名!
映像は泥の中で大勢の男たちがぶつかり合い、その近くで演奏するバンド!
無意味にビックリマークを多用してしまったが、理屈は抜きにしてメタルだぜこんちくしょう!っていう感じだけは強烈に伝わってくるじゃないですか。
この楽曲に合わせてどんなビデオを撮ろうかっていう打ち合わせの席で、「泥の中、100人くらいのほぼ裸の男達が左右から走ってきて、ぶつかり合い、取っ組み合うってのはどうでしょう?」「いいねー」っていうやり取りがあったんだろうか。
ちょと出オチ感のある内容ではある(途中で夜になったりはするけど)
はい、というわけで、今日は6位から10位までを見てみました。
こうやって続けて見てみると、やっぱりこれも媒体(Rolling Stone India)の特質なのかもだけど、極力インドっぽさを排した無国籍風な映像の作品が目立つという印象がする。
かつアーティスティックで内省的な作品ももてはやされる傾向があるんだな、と思いました。
イギリスからの独立後も、高級とされる場所だと英語こそが公用語っていう風潮のあったインドではあるけれども、こういうポップカルチャーの分野でも、非ドメスティックなものが高尚な趣味、みたいな、脱亜入欧って感じの価値観があるのかもしれない。
人様が作って、人様が選んだビデオを見ながら言いたいこと言ってアタクシはいったい何様なんでしょう?という気がしなくもないですが、ま、そんなことを思った次第でございます。
2018年01月15日
Rolling Stone Indiaが選ぶ2017年ベストミュージックビデオ10選
Rolling Stone Indiaが2017年のベストアルバムに続いて、2017年のベストミュージックビデオを発表した。(記事はこちら)
選考基準は、映画の映像をそのまま使用した挿入歌・主題歌は除く楽曲ということのようだ。
ミュージシャン名と都市・ジャンルを添えて紹介します。
1. Run Pussy Run: “Roaches” プネー ロック
同じくプネーのLMB Production所属の映像作家Anurag Ramgopalによる作品とのこと。
Rolling Stone Indiaによると「freak funk group」だそうで、他の曲もリズミカルでセンス良さげな歌と演奏のバンドだ。
ゴキブリっていえば、昔コルカタの安宿のドミトリーで、バックパックにものすごく大きなゴキブリがとまってたのを見つけて、サンダルで横から引っぱたいたら、びゅーんって飛んでって、少し離れたところの欧米人のリュックにくっついた。
荷物の持ち主が連れと談笑してたので、言いだすのもなんだな、と思って様子を見てたら、しばらくして気がついて「ギャーオ!コックローチ!」て大騒ぎしてた。
ゴキブリって国籍を問わずこの扱いなんだなあと思ったものです。
記事に、この昆虫が苦手な人は見ないでね、みたいなことが書いてあったけど、インドでもゴキブリ嫌い、虫嫌いって人がいるんだなあ、としみじみ。
2. Blushing Satellite: “Who Am I?” バンガロール ロック
アイデンティティの危機をテーマにしたビデオとのことで、正直、他の国のミュージックビデオで似たようなものを見たことがあるような気がするけど、こういう「イギリスかアメリカのバンドみたいな内省的なロックのサウンドで『自分とは何者か』という問いかけを歌う文化圏」にインドも入っているのだなあ、と再びしみじみ。
3. The Local Train: “Khudi” デリー ロック
ヒンディーロックと言っているけれど、言葉がヒンディー語なだけでサウンドは英米風の爽快なロックだ。
バイクが好きで自分のバイクでいろんなところを旅したいと思っているデリバリーのアルバイトが、仕事の合間に聞いたこのバンドの音楽と、ちょっとした事故をきっかけに、仕事を投げ出して自由に走り始める、というストーリーと思われる。
曲のブレイクと映像を合わせる小技も効いている。
クオリティの高い映像はVijesh Rajanという映画監督による作品で、India Film Project Awardsのミュージックビデオ部門で‘Platinum Film of the Year 2017’ を獲得したとのこと。
4. Parekh & Singh: “Ghost” コルカタ ポップ
コルカタのバンドはこのブログ始めて以来初なのではないだろうか。とはいえ無国籍風の幻想的ポップソング。
Peacefrogっていうロンドンのレーベルと契約しているこのバンドは、すでに日本での注目もそれなりにされているようで(ごめんよおじさんこの手の音楽に詳しくなくて)、こちらのサイトに詳しい。
なるほど、アタクシ映像にも詳しくないのだけど(何にも詳しくない笑)、このビデオはウェス・アンダーソン(ロイヤル・テネンバウムズとかダージリン急行の人か!)監督へのオマージュとのこと。
Rolling Stone Indiaによるとペットの犬を失った少女がいかに悲しみを乗り越えるかというストーリーとのこと。見ていて全然気づかなかった。(最初に持ってるのが犬の首輪だったのね)
自分の理解力の無さにだんだん心配になってきた…。
5. Pakshee: “Raah Piya” デリー フュージョンロック(インド音楽とのフュージョンね)
Rolling Stoneにしては珍しくインド色の強いバンドを扱っている。
ジャズ、フュージョン風な演奏とインド古典なヴォーカルの融合、と思っていたら途中でラップも入ってきてビックリ。
二人のヴォーカルはヒンドゥスターニーとカルナーティックというインドの北と南それぞれの伝統音楽のスタイルで歌っている。
映像に関しては、きれいだけど単にいろんな自然の中で演奏してるだけなんじゃ、という気がしないでもない。
それにしてもインドのバンドは6弦ベースが好きだなあ。
ベストアルバムと同様、映像のほうも極力インド的要素(ボリウッド的に大勢で舞い踊るみたいな)を排した、欧米的アーティスティックな作品が目立つセレクトとなっている。
長くなりそうなのでまずはこのへんで!