ブルース

2019年03月17日

コルカタに凄腕ブルースマンがいた!Arinjoy Trio インド・ブルース事情

90年代に初めてインドを訪れたとき、インド社会の格差や不平等、そして人々のバイタリティーと口の達者さに触れて、インド人がラップを始めたらすごいことになるだろうなあ、と思ったものだった。
あれから20年余り、ようやくインドにもヒップホップが根付いてきて、すごいことになりつつある、というのは今まで何度も書いた通り

あの頃のインドで、「インド人が本気でやりはじめたらすごいことになるんじゃないか」と思ったジャンルがもう一つある。
それはブルースだ。

ブルースは アメリカの黒人の労働歌にルーツを持つ音楽で、その名の通りブルー(憂鬱)な感情をプリミティブかつ強烈に表現してロックなどその後の音楽に大きな影響を与えた。
というのがブルースの一般的な解説になるのだが、 実際のブルースは憂鬱といってもじめじめした暗い音楽ではなく、救いのない日々のやるせなさも恋人と別れたさみしさも痛烈に笑い飛ばしてしまうような豪快な音楽でもある。
ブルースは「辛すぎると泣けるのを通り越して笑えてくるぜ」という悲しくも開き直った感覚と、「俺は精力絶倫だぜ」みたいな下世話さが渾然一体となった音楽なのだ。 
レコードとしてブルースが広く流通し始めた1950年代、Muddy Warters, Howlin' Wolf, Buddy Guy, B.B.King, Lightnin' Hopkins, John Lee Hookerら、幾多の伝説的ブルースマンが登場すると、彼らは人種の枠を越えてやがて白人ロックミュージシャンたちにも大きな影響を与えた。

何が言いたいかというと、インドの下町で出会った庶民たち、例えば人力車夫や道端で働く人夫たちから、そうしたいにしえのブルースマン達に通じる、力強さとあきらめが同居した、シブくて強くて明るくて、でもその根底にはやるせない憂鬱があるんだぜ、みたいな印象を受けたということなのである。 
この人たちにギターを教えてブルースをやらせたら凄いことになるだろうなあ、なんて感じたものだった。

さてその後、インドの労働者の中からとんでもないブルースミュージシャンが登場したかというと、そんなことはなかった。
そりゃそうだ。
だいたい、ブルースは1950年代くらいまでのアメリカの黒人の文化的・社会的なバックグラウンドと音楽的な流行から発生した音楽なわけで、それを全く状況が異なる現代のインドに求めてもしょうがない。
そもそもアメリカの黒人からして、今ではヒップホップに流行が移ってしまったし、遠く離れたインドで、それもアメリカの音楽なんて知るはずもない労働者階級がブルースをやるわけがないのだ。

いつもながら大変に前置きが長くて申し訳ない。
では、これだけ音楽の趣味が多様化した現代インドで、誰もブルースを聴いていないのだろうか。そして、誰もブルースを演奏していないのだろうか。

と思ったら、いた。
それもかなりの腕前のミュージシャンが。
コルカタを拠点に活動する彼の名前はArinjoy Sarkar.
まずはさっそく、彼が率いるArinjoy Trioが先ごろリリースしたセルフタイトルのデビューアルバムから"Cold, Cold, Cold"という曲を聴いてみてほしい。

言われなければとてもインドのバンドだとは思えない本格的なブルース!
タメの効いたギターのフレージングも、決して上手いわけではないがツボを押さえた歌い回しも、ブルースファンなら「分かってるなあ〜」と膝を打ちたくなるのではないだろうか。

弾き語りスタイルの"Don't You Leave Me Behind"


ブルース一辺倒というわけじゃなくて、レニー・クラヴィッツみたいなロックの曲も。
"Who You Are"

2:28あたりからの急にPink Floydみたいになる展開もカッコイイ!

Bo DiddleyのビートにJeff Beckのトーンのインスト"Beyond The Lines"

こうして聴くと、けっこう引き出しの多い器用なバンドだということが分かる。
Arinjoyが影響を受けたミュージシャンとして名前を挙げているのは、Stevie Ray Vaughan, Buddy Guy, Albert Collins, Larry Carltonとのことで、かなりいろいろなタイプのブルースを聴きこんできたようだ。

コルカタのBlooperhouse Studioでレコーディングしたこのアルバムは、Coldplayのクリス・マーティンやJohn Legendとの仕事で知られるSara Carterがマスタリングを行ってリリースされた。
フロントマンのArinjoy Sarkarは、以前はJack Rabbitという地元言語のベンガリ語で歌うバンドのギタリストだったという。


Arinjoy Trioは2018年にムンバイで行われたMahindra Blues Festivalでのバンド・コンテストで優勝したことで一気に注目を集めた。
このMahindra Blies Festival、じつはアジア最大のブルースフェスティバルとして知られており、これまBuddy Guy, John Lee Hooker, Jimmy Vaughan, Keb Mo, John Mayallといったアメリカやイギリスの大御所ブルースミュージシャンが出演してきた。
2018年のフェスの様子はこんな感じ。


Buddy Guyらが出演した2015年のフェスのトリを飾ったパフォーマンスの様子がこちら。
 
さすがにこれまで紹介してきたEDM系やロック系の大規模フェスに比べれば落ち着いたものだが、それでもこれだけのオーディエンスを集めることのできるブルース系のフェスティバルは東京でもなかなかできないだろう。
少なくともインドの大都市では、ブルースのリスナーに関してはそれなりにたくさんいるようだ。

では演奏者のほうはどうかというと、Arinjoy Trioのようなコテコテのブルースバンドは数少ないようだが、ブルースロックに関しては優れたバンドがけっこういるので紹介してみたい。

今年のMahindra Blues Festivalのバンドコンテストで優勝したのは、以前Ziro Festivalの記事2018年インド北東部ベストミュージックビデオ18選でも取り上げたメガラヤ州シロンのBlue Temptation.


同じく「インドのロックの首都」シロンから2003年結成の女性ヴォーカルのベテランバンド、Soulmate.


さらにシロンのバンドが続くが、2009年結成のBig Bang Bluesも渋い。

彼らはブルースベースのハードロックバンドSkyEyesとしても活動をしている。

ムンバイのジェフ・ベックのようなスタイルのギタープレイヤーのWarren Mendosa率いるBlackstratbluesは、インストゥルメンタルながらRolling Stone Indiaが選ぶ2017年ベストアルバムの2位に選出された実力派。


同じくムンバイから、心理学者でもあり、ガンを克服した経験も持つソウルフルな女性ヴォーカリストのKanchan Daniel率いるKanchan Daniel and the Beards.


以前も紹介したジャールカンド州ラーンチーのThe Mellow Turtleはブルースの影響を受けつつもヒップホップなどの要素も取り入れた面白い音楽性。
この曲も同郷の盟友であるラッパーのTre Essとの共演。


と、なにやらほとんどシロンとムンバイのバンドになってしまったが、ざっとインドで活躍するブルースロック系のアーティストを紹介してみた。
こうして聴いてみると、インドのブルースといっても、当初私が期待していたような、「抑圧された境遇から否応なくあふれ出る魂の発露」みたいなものではなく、世界中の他の国々同様、ブルースにあこがれて演奏する中産階級のバンドが多いようだ。
そりゃインドじゃ楽器を買おうにも本当に貧しい層にはなかなか手も届かないだろうし、当然といえば当然なのだけど。
やはりインドでも、「抑圧された人々」の表現は、これからもヒップホップでされてゆくことになるのだろう。

でもなあ。
あれだけの人口がいて、文化の多様性のあるインド。 
アメリカの黒人のブルースとは違っても、どこかにブルースみたいに俗っぽくて憂鬱で楽しい音楽があるような気がするのだけど。
これからも探してみることにします。

それでは今日はこのへんで。
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凡平自選の2018年度のおすすめ記事はこちらからどうぞ! 

goshimasayama18 at 19:59|PermalinkComments(0)

2018年08月08日

インドのエリートR&Bシンガーが歌う結婚適齢期!Aditi Ramesh

「インドの女性に関する話題」と言えば、ここ日本で報道されるのは、首都デリーや地方でのレイプ被害だとか、結婚のときの持参金で揉めて花嫁が殺されたとか、顔に硫酸をかけられたとか、悲惨なものばかり。
あるいは、インディラ・ガンディー首相やタミルナードゥ州のジャヤラリタ州首相のような、いわゆる「男まさり」な女性政治家たちや、女性美をとことん強調したボリウッド女優など、いずれにしてもかなり極端なものが多いように思う。
もちろん、そのいずれもが注目すべきトピックではあるのだけれども、当然ながら、こうした注目を浴びる人たちとは関係なく暮らす女性たちだってインドにはたくさんいる。

というわけで、今回は、「女性R&Bシンガー、Aditi Rameshが歌う現代インドのキャリアウーマンの切実な悩み」というテーマでお届けします。

今回の記事の主役、Aditi Rameshはムンバイで活躍する実力派女性シンガーソングライターで、例えばこんな楽曲を歌っている 。

お聴きいただければ分かるとおり、この曲はインド要素ゼロ。
ちょっとフランスの女性シンガーZazを思わせる、ジャジーな楽曲だ。


もっとミニマルでエクスペリメンタルな曲もある。
Zap Mamaみたいなアフリカにルーツのあるアーティストに似た雰囲気のある楽曲で、中間部では南インド古典音楽のカルナーティック的な歌い回しも出てくる。

現在28歳のAditiは、少女時代をニューヨークで過ごした。
ニューヨークでも、やはり以前紹介したRaja Kumariのように、インド人コミュニティとの繋がりが強かったのだろう。
クラシックピアノだけでなく、カルナーティック音楽の古典声楽を習っていたという。
15歳のときに家族とともにインドのバンガロールに戻ってくると、その後大学で法律を修め、インドでもトップクラスの法律事務所で弁護士としてキャリアをスタートさせた。
この経歴を見てわかる通り、彼女はミュージシャンである以前に、裕福な家庭で育った極めて優秀なエリートでもあるわけだ。

そんな彼女が再び音楽と向き合うことになったのは2016年。
友人にキーボードをもらったことをきっかけに、彼女はまた音楽にのめり込んでゆく。
翌年に最初の音源をリリースすると、ジャズやブルース、ヒップホップ、それにほんの少しのカルナーティックの要素を融合した彼女の音楽は、若いリスナーたちの注目を集めることとなった。
今では弁護士の仕事を辞めて、音楽一本で生活しているとのこと。

何不自由なく育ったお嬢さんがブルースねえ、と皮肉りたくもなるが、15歳という多感な時期にインドに戻ってきた彼女は、母国であるはずのインドでの暮らしになかなかなじめず、両親ともうまくいかない時期を過ごしていたという。
彼女が法律の道に進んだのも、両親のように薬学や工学を学びたくないという理由からだそうだ。 

音楽活動に真剣に取り組み始めた当初、彼女のいちばんのモチベーションは、人間性を無視してまで働かざるをえない環境への不満を表現することだった。
仕事に対する怒りをブルースの形でぶつけた"Working People's Blues"という曲でムンバイのシンガーソングライターのコンペティションで優勝したことが、デビューのきっかけになった。
これがその曲で、歌は30秒頃から。

お聴きいただいて分かる通り、かなり本格的なブルースソングだ。
はたから見れば裕福で悩みなんかなさそうに見える境遇でも、 当然ながら相応の苦労や憂鬱があるってわけだ。

さて、前置きが長くなったが、今回注目するのはこの曲。
"Marriageble Age"


現代的なR&Bを思わせるミニマルなトラックにフィーメイル・ラッパーDee MCのラップを大きくフィーチャーした楽曲で、ところどころにカルナーティック的な歌い回しが顔を出す。
ジャジーな部分やR&Bっぽい部分はインドらしさ皆無なのに、ラップになるとアメリカの黒人やジャマイカン的なリズムではなく、インドのリズム由来のフロウになっているところに、このリズムがDNAレベルでの浸透していることを感じる。

サウンド面でも非常に興味深い楽曲だが、今回注目する歌詞の内容はこんな感じだ。
(英語の歌詞全体はこちらからどうぞ。"show more"をクリック!)

あなたはいくつになったの?25?26?
家族はいつ身を固めるのかと聞いてくる
いつ赤ちゃんを産んでくれるの?
あなたの体内時計はどんどん時を刻んでゆくのに、どうして私を困らせるの?
いつ落ち着くつもりなの?
どうしていい人を探さないの?男の人はたくさんいるのに

分からないの?そんなことが私のしたいことの全てってわけじゃない
私には自分のしたいことがある、無関心だなんて言わないで

でもあなたはもう結婚適齢期、20代ももう下り坂
あなたは結婚適齢期、もう十分自由を満喫したでしょう?
どうして動き回っているの?あなたの人生で何をやっているの?
今すぐに誰かの奥さんにならないんだったら
誰にも見つけてもらえない落し物みたいになるわ

(ここからラップパート)
時は流れてゆくのに、どうして遊びまわっているの?
美貌は衰えてゆくのに、自分だけは別だと思ってる
あなたは正気を失ってるの 結婚する時期よ
気分を切り替えなさい 夢見る時は終わったの

私たちのおせっかいは終わらないわ
こういうものなの 逆らえないの
イヤって言えば言うほどしつこくするわよ
それだけが目的なの 理由は聞かないで

あなたはインドにいるの ここはアメリカじゃない
一度無くした若さは戻らないわ
また結婚の申し込み(rishtaa)があったわ、今度は文句ないでしょう
最高の巡り合わせなのに、どうしてまだ待つなんて言うの?
娘よ、手遅れになる前に決めなきゃ
これ以上自由でいるあなたを見たくはないわ

私の古い考えを変えることはできないわ
男とハグしたりキスしたりするのは結婚してからにしなさい
結婚証明こそが生きてゆくためのライセンスなのよ
どうして理解できないの?あなたには責任があるの
まだ子供時代が過ごしたいの?
あなたの叔母さんが送ってくれた写真を見てみなさい
目をそらさないで この人の奥さんになりなさい
仕事が終わったら彼のために料理を作って彼を幸せにするの
向こうのご両親も待っているわ 年相応になりなさい

インドの女性であることは呪わしくもありがたいこと
みんなは私を押さえつけようとするけど私は自由でいたいの
結婚適齢期なのよ 血を絶やそうとしているの?
30歳になるまで待っていられないわ もうすぐなのよ



ところどころ、とくにヒンディーのところはGoogle翻訳なので間違っているかもしれないがご勘弁を。
親族からのプレッシャーを表したすごく直接的な歌詞にとにかくびっくりした。
日本だとポップスの曲で、ここまで具体的かつ個人的な不満をぶちまけることって、なかなかない。
でもAditiがこういう曲を発表したのは、これが単なる個人的な不平ではなく、インド社会全体に共通して見られる現象だからだろう。
実際にAditiが親からこういうプレッシャーをかけられているということではなく(それも有りうることだが)、多くのリスナーが共感してくれる内容だからこそ歌にしたのではないだろうか。

Aditiに代表される英語での高等教育を受けた新しい世代は、インド社会でますます存在感を増してきている。
彼らの特徴は、英語を流暢に話すこと(海外在住経験者も多い)、その多くがエンジニアやMBA、法律家や医師などの専門職であること、カースト等の伝統的な価値観への帰属意識が希薄なことなどが挙げられ、インド社会の中で、カーストや地域をベースにした既存の集団とは違う、新しい「階層」を形成している。
しかしながら、今日でも家族をベースにしたコミュニティの団結がとても強いのもまたインド。
こうした新しい考え方と価値観を異にする彼らの両親らの古い世代とのギャップは埋めようがないレベルにまで達している。
その最たるものが結婚に対する意識だ。
彼らの母親たちの世代では、女性は20代前半には両親の決めた相手と結婚し、家庭に入り、子どもを生み育て家を守るのが当然であり、またそれこそが幸福とされていた。
もっとキャリアを追求したいとか、結婚相手を自分で探して選びたいとか、結婚のタイミングを自分で決めたい、という若い世代の考え方とはどうしたって相容れない。
これはもうどちらが正しいという問題ではなく、価値観や幸福感のベースをコミュニティーや伝統とするのか、それとも個人とするのかという根本的な考え方の違いなのだ。

世間体や家族の体面のためだけに結婚なんかしたくはないし、それが幸福とも思えない。
それなのに両親や親族からは会うたびに結婚はまだかと聞かれる。
めんどくさくってしょうがない。

と、まあ、この曲は都市部のインドの女性の極めて現実的な悩みを歌ったものなのだ。
そもそもブルースやR&Bは人々の憂鬱や苦労をストレートに歌い飛ばすもの。
特段に悲惨な境遇でなければ歌にしてはいけないなんて決まりはなく、例えば往年のR&Bシンガー、エタ・ ジェイムスの"My Mother in Law"という曲では、口うるさい姑への不満が歌われている。
そういう意味で、このAditi Rameshの"Mariageable Age" はまさしく現代のインド都市部の働く女性のためのリアルなブルースと呼ぶことができるだろう。

彼女はソロ名義とは別のプロジェクトや客演も積極的に行っている。

よりジャジーなアプローチを行っているカルテット、Jazztronaut.


音楽の世界における女性の地位向上をテーマにした女性だけのバンド、Ladies Compatment.


Mohit Rao, Adrian Joshua, The Accountantとのユニットではヒップホップ色の強いサウンド。


先日の映画音楽カバーの記事でも紹介したアカペラグループVoctronicaのメンバーの一人でもある。


彼女の音楽は、インドの要素を取り入れていても、どこか都会的でR&Bの空気感が支配的な印象を受ける。
こうした印象は、インド系アメリカ人であるRaja Kumariとも共通しているように感じるが、これはAditiも幼いころを米国で過ごし、アメリカの音楽に本場で親しんでいたことが理由なのだろうか。
(彼女はインタビューでも、両親はミュージシャンでこそなかったが、いろいろな音楽を聴かせてくれたと語っている)
R&Bやジャズをベースにしたサウンドに、ほんの少しのインド音楽の要素。
これは、欧米風の個人主義的な価値観に基づいて暮らしつつも、伝統やコミュニティーから完全には自由になれないインドの新しい世代そのものを表しているようにも感じられる。

というわけで、今回はAditi Rameshの音楽を通じてインドにおける世代間の価値観のギャップを紹介してみました。
彼女の音楽は、こんなふうに歌詞をほじくらなくても、サウンドだけでも十分に素晴らしいものなので、ぜひいろんな曲を聴いてみてください。

いよいよ次回は、読者の方からリクエストをいただいたバンド、Pineapple Expressを紹介してみたいと思います! 
それでは。 



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goshimasayama18 at 23:24|PermalinkComments(0)

2018年06月23日

The Mellow Turtleインタビュー!驚異の音楽性の秘密とは?

先日紹介した、ジャールカンド州ラーンチー出身の驚くべき音楽性を誇るギタリスト/シンガー・ソングライターのThe Mellow Turtle.
インドの中でも後進的な地域の出身ながら、時代もジャンルも超越した先進的なハイブリッドサウンドを奏でる彼の音楽遍歴やバックグラウンドはいかなるものなのか?
想像を超える実態が明らかになった驚愕のメールインタビューの模様をお届けします!
その前に、The Mellow Turtleの紹介記事はこちら

—あなたのFacebookページを読むと、ずいぶんいろんなタイプの音楽を聴いてきたみたいだね(註:彼はおすすめとして、Tom Misch, FKJ, Bonobo, B.B.King, Muddy Waters, Alt J, Ratatat, Ska Vengers, The F16sなど、海外、国内を問わず非常に多様なアーティストを挙げている)。 それにブルースロックだったり、ヒップホップだったり、エクスペリメンタルなものだったり、すごくいろいろなスタイルの曲を書いているけど、いったいどんな音楽的影響を受けてきたのか、教えてもらえる


MT
「最近聞いているのはアフリカのマリのブルースだよ。Ali Farka Toure, Songhoy Blues, Vieux Farka Toureとかだな。 大きな影響を受けたアーティストといえば、The Black Keys, Ratatat, Gorillaz, Chet Faker, Glass Animals, Morcheeba, Thievery Corporation, Muddy Waters, Howlin Wolfあたりってことになる。 最近じゃヒンドゥスターニー(北インド)の古典音楽も聴き始めたよ。」 

マリのブルース!そっちから球が飛んでくるとは思わなかった!
他にも、インディーロック、新世代シンガー・ソングライター、ローファイ、伝説的ブルースマンと、古典から現代まで、センス良すぎるラインナップだ。
さらに地元インドの古典音楽まで聴き始めたとは!
ギタリストにもかかわらず、いわゆるギターヒーロー的なテクニカルなプレイヤーを挙げずに、いろいろなジャンルのグッドミュージックを挙げているのも印象的。
本当に音楽そのものが大好きなのだろう。

 

—マリのブルースって、いったいどこで知ったの?

 MTYoutubeで見つけて、そこからインターネットで調べ始めたんだ。Ali Farka ToureRy Cooderのアルバム「Talking Timbuktu」はチェックすべきだよ。すごく美しい音楽だ」

 

 
Ali Farka Toureのソロアルバムはこちら!

 

Ali Farka Toure、不勉強にして初耳だったのだけど、聴いてみてびっくりした。
なぜって、もはやすっかり伝統芸能として形骸化し、息絶えたと思っていたブルースの「精神」が、彼の音楽に生々しく息づいていたから。
アフリカ系アメリカ人によって生まれ、そのままアメリカで死んだと思われていたブルースは、その精神的故郷アフリカで今も生き残っていた。
そしてインドの後進地域のミュージシャンに影響を与え、さらに新しい音楽の母胎となっている。
なんて素晴らしい話なんだろう!


—いつ、どんなふうにギターの演奏を始めたの?

MT
134歳のころにギターを弾き始めた。理由はギターのサウンドにどっぷりはまっちゃってたから。それでギターのレッスンを始めたんだけど、少しの間だけレッスンを受けて、あとはウェブ上のタブ譜を見ながら練習したよ」 


—お気に入りのソングライターやパフォーマー、ギタリストは誰?

MT
「それは難しい質問だな。ソングライターとしては、Ben Howardが大好きだ。ベスト・パフォーマーを挙げるなら、Anderson Paakってことになるね。お気に入りのギタリストってことなら、B.B.Kingがいちばんだよ」 

Ben Howardは先日紹介したAsterix Majorを思わせる叙情的なフォーク系シンガー・ソングライターだ。
The Mellow Turtle、守備範囲広すぎだろう。


Anderson Paakはカリフォルニアのゲットー出身のアーティスト。アメリカの黒人音楽の誕生から現在までを全て詰め込んだようなラッパー/シンガー/ドラマー。
ケンドリック・ラマーらと並んで、現在のヒップホップシーンで高い評価を得ている。


B.B.Kingは言うまでもないブルースの大御所だ。これは彼が映画ブルースブラザーズ2000でも披露していた代表曲の1つ。
 

こうして彼のお気に入りの音楽を並べてみると、音楽性は様々だが、サウンドやスタイルのかっこよさを追求するだけでなく、魂を込めて真摯に表現しているタイプのアーティストが多いことに気がつく。
とくに彼の黒人音楽の好みに関しては、耐え難きを耐え、忍び難きを忍ばざるを得ないジャールカンドの暮らしの中で育まれた感覚が共鳴するアーティストを挙げているようにも感じる。考えすぎだろうか?


—あなたがTre Essと競演している曲がすごく好きなんだけど、彼もラーンチー出身だよね。いつ、どんなふうに出会って、共作を始めるようになったか教えてもらえる?

MT
「ありがとう!友達のJayantElephant RideEPを作っていたときに、SumitTre Essの本名)もJayantのスタジオでソロアルバムをレコーディングしてたんだ。ある日スタジオに顔を出したらJayantが、僕らの曲に合わせてラップをした奴がいるって言うんだ。それをチェックしてみたらすごく良かったから、そのTangerineって曲のラップをそのまま残しておくことにしたんだよ。その後、僕らはスタジオで顔を合わせて、いっしょにレコーディングするようになった。それで今じゃすっかり大親友になったってわけさ。」 

それがこの曲、Tangerine. Tre Essのラップは2:10頃から。
ラップが入ることで、ブルースロック調の曲がより現代的、立体的になっているのがわかる。



—ラーンチーやジャールカンド州のミュージックシーンについて教えてくれる?ジャールカンドじゃどんなところでライブをしているの?ライブハウスみたいなところとか、フェスとかあるの?

MT
「ラーンチーのシーンは本当に退屈だよ。生演奏が聴ける場所なんてないね。へヴィーメタルとカバーバンドのリスナーがいるだけさ。ラーンチーでライブを企画しようとしたことがあったんだ。でも観客は古いヒンディー語とか英語の曲のカバーばっかりリクエストしてきた。ここで新しいタイプの音楽を聴く人を見つけるのは本当に大変だよ」 

音楽好きがほとんどいない街で、偶然出会った全く違うジャンルの才能あふれるミュージシャン2人。
ムンバイやデリーのような音楽シーンが成熟した大都市だったら、出会わずにすれ違うだけだったかもしれない。
音楽の神様はたまにこうして才能のあるもの同士を引き合わせる。
そして、そんな音楽好きがほとんどいない街で、純粋に自分たちの音楽を追求しつづけるThe Mellow TurtleTre Essには、心からのリスペクトを感じる。
でも、本当に今のままでいいの?

 —インドの場合、多くの才能あるミュージシャンがデリーやムンバイやバンガロールみたいな大都市に活動拠点を移しているよね。あなたも活動拠点を大都市に移したいと思う?それともラーンチーにとどまり続けるつもり?


MT「正直言って、まだなんとも言えないよ。理想を言えば、ラーンチーとムンバイと両方で過ごすことができればいいけど。都会の生活はとても厳しいよね。生活にお金もかかるし、交通状況も最悪で(駐:ラッシュアワーや交通渋滞のことか)移動のためにずいぶん時間を無駄にしなきゃならない。でもボンベイみたいな街に住めば、もっとライブの機会は増えるし、音楽業界の先頭に立っている人たちにも会える。僕の音楽を聴いてくれるファンを増やすこともできると思うし。」

 日本でも、いや世界中でも、同じように感じている地方在住のミュージシャンは多いことと思う。上京して一人暮らしするのだってバカにならないお金がかかる。

都会出身のミュージシャンとは、そもそも前提条件から違うってわけだ。
でも、だからこそ、彼のように地方から大都市のシーンとは関係なく面白い音楽が出てきたりもするのだけど。

 

—あなたのアルバムのタイトル『Dzong』(ゾン)とか、曲名の『Dzongka』(ゾンカ)っていうのは、ブータンの言語の『ゾンカ語』のことだよね?もしそうなら、どうしてこのタイトルをつけたのか、意味を教えてもらえる?

MT「ブータンの言葉だと、『Dzong』っていうのは宗教や行政や社会福祉を全て執り行う城のことなんだ。このアルバムを通して、僕は精神的なことや政治的なこと、社会的なことを表現したかった。それから僕は建物としての『Dzong』にすっかり魅了されてるんだ。すごくきれいなんだよ。そういうわけでアルバムに『Dzong』ってタイトルをつけたんだ。

 これが「Dzong」(ゾン)

PunakhaDzongInSpring
Dzongka』っていうのはブータンの言葉を意味している。この曲では、自分たちの独自のサウンドを追求してみたんだ。ブータンが独自の言語や文化を持っているようにね。『Dzong』をレコーディングしているとき、僕とSumitTre Ess)でブータンに行く機会があったんだ。二人ともブータンの文化や雰囲気がすっかり気に入ったんだよ。僕が今までに見た中で一番美しい国だった。」


今度はブータンと来たか!
アメリカや世界中のグッドセンスな音楽のスタイルに乗せて、地元の街のブルース(憂鬱)を歌う。それだけでも十分なのに、隣国の文化からもインスパイアを受けたという彼らの感受性には恐れ入る。時代も地理的な条件もいっさい関係ないみたいだ。

 

-あなたのFacebookのページによると、ソーシャルワーカーや起業家としても活躍しているみたいだね。音楽以外ではどんなことをしているの?

MT
「父の不動産会社で働いていて、プロジェクトの責任者をしているよ。ソーシャルワーカーとしては、今はSt.Michales盲学校のとても才能あるミュージシャンたちのメンターとレコーディングをしているよ。学校で週に2回、ギターも教えているんだ。学校でセッションのための部屋も作ろうとしているんだ」

 不動産会社はともかく、盲学校でのプロジェクトはとても面白そうだ

初期のブルースマンからレイ・チャールズ、スティーヴィー・ワンダーを経てラウル・ミドンまで、盲目の素晴らしいミュージシャンは数多くいる。
彼の音楽的センスと、インドの土壌から、どんなミュージシャンが出てくるのだろうか。

インタビューを通して感じたのは、彼の音楽全般に対する情熱だ。
地域も時代も超え、あらゆる音楽に興味を持ち、良いものを聴き分ける音楽ファンとしての情熱。
そしてそこから受けた影響を、音楽シーンのない街で世界中のどこにもない自分の音楽として作り、表現する情熱。

また、音楽の普遍性と地域性ということについても考えさせられた。
彼の音楽は、先に述べたような世界中のさまざまな音楽からの影響で成り立っている。
だが、彼の作るサウンドの、ビートの隙間からは、紛れもないインドの地方都市の空気が漂ってくるのもまた事実だ(これは、Tre Essの音楽からも感じることだ)。

ニューヨークの音楽にはニューヨークの、西海岸の音楽には西海岸の空気があるように、彼の作る音楽からは、ジャールカンドの空気感が伝わって来る。
昼の暑さを忘れさせるくらい涼しくなった夜の、排気ガスやどこからともなく漂う煮炊きの匂い、オートリクシャーのエンジンとクラクションの音、暗い街角で行くあてもなく佇む人々の眼差しや息遣いが感じられるような音像だと、私は感じている。

The Mellow Turtle. ジャールカンド州ラーンチーが生んだ稀有な才能。
今後彼がどんな音楽を作り出すのか。
またみなさんに紹介できることを楽しみにしています。



goshimasayama18 at 20:21|PermalinkComments(2)

2018年06月15日

ジャールカンドの突然変異! The Mellow Turtle

前回、ジャールカンド州ラーンチー出身のラッパー、Tre Essを紹介した。
貧しく保守的な地域だと思っていたジャールカンドから本格的なラッパーが出てきたことに大いに驚いたものだが、驚きはこれだけでは終わらなかった。

Tre Essと頻繁に共演している同じくラーンチー出身のギタリスト、The Mellow TurtleことRishabh Lohia .
ブルースをベースにしつつ、トリップホップやエレクトロニカの要素もある楽曲の数々は、これまたジャールカンド離れした驚愕のサウンド!
まずはぜひ聴いてみてください。

昨年リリースされたセカンドアルバム"Dzong"から、"Minor Men"


Tre Essと共演した曲"Lake Dive"

アルバムタイトルの"Dzong"とは、ブータンの言語「ゾンカ語」のことだが、ブータンからは距離のあるジャールカンドで、どういう意味が込められているのだろうか。

ファーストアルバムではよりルーツ的なサウンドを聴かせている!
静止画と字幕、フリー素材だけで作ったみたいなビデオが微笑ましいぞ。
地元の写真なのだろうか。

これは何だろう、ローファイ・ヘヴィー・ブルース・ロックとでも呼ぶべきか。
途中で入ってくるラップがG.Love的な雰囲気も醸し出している。

インド古典を使った"Laced"もセンスが良い!


何なんでしょう。この、古いものも新しいものもセンスよくミックスしたオリジナリティー溢れるサウンドは。
ジャールカンドや周辺地域の後進性については前回の記事でも触れたが、デリーやムンバイといった大都市ではなく、ラーンチーからこのサウンドが生み出されるということは、インドに詳しくない人のために分かりやすく説明すると、東京に例えるとすれば足立区からコーネリアスが出てきたくらいのインパクトがある。

彼のFacebookのページによると、お気に入りのミュージシャンとして、Tom MischやFKJといった、ルーツミュージックを現代的な方法で再構築しているアーティストに加えて、B.B. KingやMuddy Watersのような昔ながらのブルースアーティストを挙げている。
ちなみにインドのアーティストでは、お気に入りとしてこのブログでも取り上げたSka Vengersの名前が挙がっていた。
同ページには、The Mellow Turtleは起業家、社会活動家としての顔も持っていると紹介されていたが、彼もまたSka VengersのTaruのような啓蒙活動をしているのだろうか。
ぜひ本人に聞いてみたいところだ。

これまでこのブログで見てきたインドのミュージシャンは、ロックならロック、ラップならラップとひとつのジャンルからの影響しか表現しないアーティストばかりだった。
中には、インドの伝統音楽や映画音楽など、地元の文化と欧米の音楽との融合を試みているミュージシャンはいたが、彼のように西洋音楽の中の異なるジャンルを、それも時代をまたいでセンスよく融合させるという、言ってみればBeck的なセンスを持ち合わせたミュージシャンというのはインドでは本当に稀有。
いったいどうやってジャールカンドでこのセンスが育まれたのだろう。

Tre EssとThe Mellow Turtle.
ジャールカンドが生んだ突然変異。
ラーンチーにはいったいどんなシーンがあるのか。
彼らの音楽的センスはどのように育まれたのか。
二人にメッセージを送って確かめてみたいと思います。
返事がもらえるといいなあ。 


追記:
The Mellow TurtleとTre Essのコラボレーションで最も気に入っているのがここで聴けるアルバム「Blues off the Ashtray」からの楽曲。
https://soundcloud.com/nrtya/sets/tre-ess-x-the-mellow-turtle
以前聞いて「おおっ!」と思ったものの記事を書いているときに見つけられなかったのだけど、再び発見したので改めて載せておきます。
ブルースとヒップホップ、黒人音楽の始まりと現在地がまさかインドで違和感なく融合するとは。 

goshimasayama18 at 00:19|PermalinkComments(0)

2018年01月06日

インド少数民族アート・ミーツ・ブルース!!「Brer Rabbit Retold」

「世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦」@板橋区立美術館に行ってきた。

この企画展は、チェンナイにあるタラブックスという出版社による、インド先住民族(アーディヴァーシーと呼ばれる)の絵画を用いた絵本の原画を中心に展示したもの。

はて、ユーラシア大陸のど真ん中のインドで先住民族とはなんぞ?と思う向きも多いと思うのですが、彼らはインドにアーリア系民族、ドラヴィダ系民族が来る前から暮らしていた人々で、今でもインド各地に独自の文化を保って暮らしている。

つまり、数千年〜数万年前から自分たちの独自性を維持して暮らしている人たちというわけだ。

その中でも、とくに独自の伝統絵画で有名なゴンド、ミティラー、ワールリーなどの部族の絵描きたちに、インドや世界の民話や伝承をモチーフにイラストを描いてもらったものが展示の中心になっている。

こう言ってはなんですが、はて、こんなニッチというかマイナーな企画に人が集まるのかいな、と思って行ってみたら、どうも複数のメディアに取り上げられたみたいで、会場は大盛況、チケット買うにも大行列!

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 こんな自虐的なノボリがあったけど、いやいやどうして大混雑。

都営三田線の終点、西高島平から徒歩15分という、23区内で最果ての地みたいなところなのに。

 

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これはどうでもいいけど会場の近くの公園にて。

犬を連れこんで良いのか、ダメなのか、字が消えちゃっててわからない。

 
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会場内は撮影ほぼ全面OKだったのだけど、あっしは写真センスゼロかつ骨董品レベルの携帯では綺麗に撮れるはずもなく、作品の様子はタラブックスのサイトなどでご覧ください。「tarabooks」で画像検索などしてみるのもオススメです。

(日本語サイトはこちら


 

インドの少数民族とかインドの文化とかそういう予備知識を抜きにして、とにかく単純に美しくて力強い絵がたくさん楽しめました!

会場の盛況も、インド好きとか美術好きが集まってるってことじゃなくて、作品の普遍的な魅力によるものなんでしょう。

 
他にも、インドの手書きの映画ポスターとかマッチ箱とか、そういう今までアートと見なされていなかったものを取り上げたりもしている。
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 最近 政界に進出すると話題のスーパースター、ラジニもこの泥臭さ。
描かれている人が見切れてる人質っぽい人以外、みんな斧とか鞭とかナイフとか持ってるのも凄い。
 

展示されている作品は、アーディヴァーシーの伝統的な作品をそのまま持ってきたわけではなくて、現代的なセンスを持ったタラブックスの人たちとのワークショップによって、より西洋的にアーティスティックなスタイルで作られたもの。
いわば伝統ミーツ現代。 

このブログのテーマの一つは、「面白いものは境界線上で起きている!」ということなんだけど、どこか共通するものを感じる、とても面白い美術展でした。

 

さて、ここはインドの今の音楽を紹介するブログなので、関連する音楽ネタをひとつ。

西インドに伝わる礼拝用の布「マタニパチェディ」の作家と、アフリカ系アメリカ人の吟遊詩人アーサー・フラワーズによる共作の絵本「新釈ブレア・ラビット」という作品も展示されていたのですが、その絵本にあわせて、フラワーズがインド人ミュージシャンたちの演奏をバックに朗読した映像がこちら


これがまた凄くいい!

このアーサー・フラワーズさん、吟遊詩人と紹介されているけれども、もうほとんどブルースマンで、その語りからして完全にブルース!

ジャズとインド音楽の融合ってのはいくつか見たことがあるけど、ブルース・ミーツ・インドというのは新しい!

そしてこんなにはまるとは思わなかった!

アニメーション化されたイラストもすごく美しい。

このブレア・ラビットのブレアというのは「brother」の変形で、悩みを抱えるウサギが「笑いの国」を求めて旅に出かけるストーリー。

じつはディズニーランドのスプラッシュ・マウンテンもこの話がもとになっている。

https://ameblo.jp/love-light-godbreath/entry-10661877559.html

今回はフラワーズさんも自分なりにアレンジして語っているみたいですね。

アフリカン・アメリカンの伝承である民話やブルースと、同じように苦難の歴史を重ねてきたであろうアーディヴァーシー(アーディヴァーシーたちは被差別的な立場に置かれ、貧しい暮らしをしているものがほとんど。行政上はScheduled Tribe=指定部族と呼ばれ、カースト外の指定カースト=Scheduled Casteと合わせてSC/STとして保護の対象になっている。)の美しい融合の紹介でした。

 

この板橋区立美術館の企画展は201818日まで!

終わる直前に紹介するなって話ですが、行く価値ありすぎ!

ちなみにアーディヴァーシーの美術については、バックパッカー界の大御所、蔵前仁一の「わけいっても、わけいっても、インド」で紀行もかねて詳しく楽しく知ることができます。
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それでは今日はこの辺で!



goshimasayama18 at 23:43|PermalinkComments(0)