ターバン

2020年10月13日

2020年版 シク系ミュージシャンのターバン・ファッションチェック!




先日のバングラーの記事を書いていて、どうしても気になったことがある。
それは、ターバンの巻き方についてだ。
改めて言うまでもないが、ターバンというのは、インド北西部のパンジャーブ地方にルーツを持つ「シク教」の男性信者が教義によって頭に巻くことになっている例のあれのことである。
シク教徒はインドの人口の2%に満たない少数派だが、彼らは英国統治時代から軍人や労働者として諸外国に渡っていたため、インド人といえばターバン姿というイメージになっているのだ。
(実際はシク教徒以外にもターバン文化を持っている人たちもいるし、宗教に関係なく「盛装としてのターバン」というのもあるのだが、ややこしくなるので今回は省略)

シク教徒のミュージシャンのターバン事情については、以前も書いたことがあったのだけど、今回あらためて気づいたことがあった。


それは、インド国内のシクのミュージシャンは、ターバンを巻く時に、ほぼ必ず「正面から見ると額がハの字型になり、耳が隠れるボリュームのある巻き方」をしているということだ。

例えばこんな感じである。
今年7月にリリースされたDiljit Dosanjhの"G.O.A.T."のミュージックビデオを見てみよう。
 
前回も取り上げたDiljit Dosanjhは、このゴッドファーザーのような世界観のミュージックビデオで、タキシードやストリート系のファッションに合わせて黒いターバンを着用している。
我々がターバンと聞いてイメージする伝統的な巻き方なので、これを便宜的に「トラディショナル巻き」と名付けることにする。
額にチラリと見える赤い下地がアクセントになっているのもポイントだ。
「トラディショナル巻き」のいいところは、この下地チラ見せコーディネートができるということだろう。
それにしても、このミュージックビデオのマフィア風男性、ターバン を巻いているというだけでものすごい貫禄に見える。

トラディショナル巻き以外にどんな巻き方があるのかと言うと、それは「ラッパー巻き」(こちらも勝手に命名)である。
「ラッパー巻き」については、このUKのインド系ヒップホップグループRDBが2011年にリリースした"K.I.N.G Singh Is King"のミュージックビデオを見ていただけば一目瞭然だ。

「ラッパー巻き」の特徴は、耳が見える巻き方だということ(耳をほぼ全て出すスタイルもあれば、半分だけ出すスタイルもあるようだ)、正面から見たときの額のラインが「ハの字型」ではなくより並行に近いということ、そしてターバンのボリュームがかなり控えめであるということだ。

「ラッパー巻き」は、2000年代以降に活躍が目立つようになった在外パンジャーブ系ラッパーがよく取り入れていた巻き方である。
おそらく、よりカジュアルなイメージがヒップホップ系のファッションに合うという判断だったのだろう。

ところが、インド国内のシクのミュージシャンたち、とくにパンジャーブを拠点に活動しているバングラー系のミュージシャンやラッパーたちは、首から下のファッションはどんなに西洋化しても、ターバンの巻き方だけは頑なにトラディショナル巻きを守っているのだ。
音楽的には様々な新しいジャンルとの融合が行われているバングラーだが、ターバンのスタイルに関しては、本場インドでは、かなり保守的なようなのである。

とはいえ、彼らのターバンの着こなし(かぶりこなし)はじつにオシャレで、見ているだけでとても楽しい。
それではさっそく、インド国内のパンジャーブ系シンガーたちを見てみよう。

まるで「ターバン王子」と呼びたくなるくらい整った顔立ちと伸びやかな声が魅力のNirvair Pannuは、ちょっとレゲエっぽくも聴こえるビートに合わせて、いかにもバングラー歌手らしい鮮やかな色のターバンを披露している。(曲は1:00過ぎから)

明るい色には黒、濃いエンジには黄色の下地を合わせるセンスもなかなかだ。
映像やファッションに垢抜けない部分もあるが、それも含めてメインストリームの大衆性なのだろう。

パンジャーブ語映画の俳優も務めているJordan Sandhuが今年2月にリリースした"Mashoor Ho Giya"では、オフィスカジュアルやパーティーファッションにカラフルなターバンを合わせたコーディネートが楽しめる。
 
彼の場合、ターバンと服の色を合わせるのではなく、ターバンの色彩を単独で活かす着こなしを心掛けているようだ。
どのスタイルもポップで親しみやすい魅力があり、彼のキャラクターによく似合っている。

シンガーの次は、ラッパーを見てみよう。
バングラー的なラップではなく、ヒップホップ的なフロウでラップするNseeBも、やはりターバンはトラディショナル巻きだ。
 
彼のようなバングラー系ではないラッパーは黒いターバンを巻いていることが多いのだが、今年9月にリリースされた"Revolution"では、様々な色のターバンを、チラ見せ無しのトラディショナル巻きスタイルで披露している。

こちらのSikander Kahlonもパンジャーブ出身のラッパーだ。
この"Kush Ta Banuga"では、ニットキャップやハンチングを後ろ前にしてかぶるなど、いかにもラッパー然とした姿を見せているが、ターバンを巻くときはやっぱりトラディショナル巻き。

ターバンの色はハードコア・ラッパーらしい黒。
個人的には、トラディショナル巻きはチラ見せのアクセントをいかに他のアイテムとコーディネートするかが肝だと思っているのだが、彼やNseeBのように、あえてチラ見せしないスタイルも根強い人気があるようだ。

と、いろいろなスタイルのシク教徒のミュージシャンを見てきたが、ご覧のとおり、インド国内のシク系ミュージシャンは、音楽ジャンルにかかわらず、ターバンを巻く時は「トラディショナル巻き」を守る傾向があるのだ。

私の知る限り、インド国内で「ラッパー巻き」をしているのは、デリーのストリートラッパーのPrabh Deepだけだ。
彼は、ターバンの額の部分がほぼ真っ直ぐになるような、かなりタイトなラッパー巻きスタイルを実践している。

洗練されたストリート・スタイルと、いかにもラッパー然とした鋭い眼光が、ラッパー巻きのスタイルによく似合っている。
トラディショナル巻きは、どうしても伝統的なバングラーのイメージが強い巻き方である。
彼がラッパー巻きを選んでいる理由は、「俺はパンジャービーだけど、バングラー系ではない」という矜恃なのかもしれない。


ここまで、シクのラッパーたちの2つのターバンの巻き方、すなわち「トラディショナル巻き」と「ラッパー巻き」に注目してきたが、じつは、彼らにはもう一つの選択肢がある。
それは、「ターバンをかぶらない」ということだ。

時代の流れとともに手間のかかるターバンは敬遠されつつあり、最近では、インドのシク教徒の半数がもはやターバンを巻いていないとも言われている。

シクのミュージシャンでも、メインストリーム系ラッパーのYo Yo Honey SinghやBadshahもパンジャーブ出身のシク教徒だが、彼らに関して言えば、ターバンを巻いている姿は全く見たことがない。


Yo Yo Honey Singhが今年リリースしたこの曲では、スペイン語の歌詞を導入したパンジャービー・ポップのラテン化の好例だ。

Badshahの現時点での最新作は、意外なことにかなり落ち着いた曲調で、ミュージックビデオでは珍しくインドのルーツを前面に出している。
原曲はなんとベンガルの民謡だという。

音楽的な話はさておき、ともかく彼らはターバンを巻いていないのだ。
(そういえば、2000年前後に世界的なバングラー・ブームの火付け役となったPunjabi MCもターバンを巻かないスタイルだった)
ターバンを巻いても巻かなくても、それは個人の自由だし、まして信仰に関わることに部外者が口を出すのはご法度だ。
ターバンを巻く、巻かないという選択には、伝統主義か現代的かというだけではなく、宗派による違いも関係しているとも聞いたことがある。

ただ、そうは言っても、シクの男性は、やっぱりターバンを巻いてたほうがかっこよく見えてしまうというのもまた事実。
これもまたステレオタイプな先入観によるものなんだろうけど、成金のパーティーみたいなミュージックビデオであろうと、ギャングスタみたいな格好をしていていようと、ターバンを巻いているだけで、シクの男性は「一本筋の通った男」みたいな雰囲気が出て、圧倒的にかっこよく見えてしまうのだ。

ここまで読んでくださったみなさんは、ターバンが単なるエキゾチックなかぶり物ではなく、また信仰を象徴するだけの伝統でもなく、タキシードからヒップホップまで、あらゆるスタイルに合わせられる極めてクールなファッション・アイテムでもあるということがお分かりいただけただろう。

ターバンとファッションと言えば、少し前にGucciがターバン風のデザインの帽子を発表して、 シク教徒たちから「信仰へのリスペクトを欠く行為である」と批判された事件があった。

その帽子のデザインは、今回紹介した洗練されたシク教徒たちのスタイルと比べると、はっきり言ってかなりダサかったので、文化の盗用とかいう以前の問題だったのだが、何が言いたいかというと、要は、ターバンは、世界的なハイブランドが真似したくなるほどかっこいいのだということである。

ところが、ターバンは、センスとか色彩感覚といった問題だけではなく、やはり信仰を持ったシク教徒がかぶっているからこそかっこいいのであって、そうでない人が模倣しても、絶対に彼らほどには似合わないのだ。
(ドレッドヘアーはジャマイカのラスタマンがいちばんかっこよく見えるというのと同じ原理だ)
上記のCNNの記事にあるように、シク教徒たちにとって、ターバンは偏見や差別の対象に成りうるものでもある。
それでもターバンを小粋にかぶりこなす彼らの、自身のルーツや文化へのプライドが、何にも増して彼らをかっこよく見せている。
彼らが何を信じ、どんな信念を持って生きているかを知ることもももちろん大事だが、ポップカルチャーの視点から、彼らがいかにクールであるかという部分に注目することも、リスペクトの一形態のつもりだ。

というわけで、当ブログではこれからもパンジャービー・ミュージシャンたちのターバン・ファッションに注目してゆきたいと思います。
ターバン・ファッションチェック、毎年恒例にしようかな。


(追記:シク教徒のターバンは正確にはDastarと言い、巻き方にもそれぞれちゃんと名前がある。今回は、音楽カルチャーやファッションと関連づけて気軽に読めるものにしたかったので、あえて「トラディショナル巻き」や「ラッパー巻き」と書いたが、いずれリスペクトを込めて、正しい名称や巻き方の種類を紹介したいと思っている。また、パンジャーブの高齢の男性がラッパー巻きをしているのを見たことがあるので、ラッパー巻きは必ずしも若者向けのカジュアルなスタイルというわけでもないようだ。そのあたりの話は、また改めて。)


参考サイト:
https://en.wikipedia.org/wiki/Kesh_(Sikhism)




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goshimasayama18 at 17:47|PermalinkComments(0)

2019年12月02日

インド音楽シーンのオシャレターバン史

先日紹介した白黒二色ターバンのFaridkotに続いて、他のシク教徒のアーティスト達(のターバン)も見てみよう。

まずは古いところから、80年代から活躍するパンジャービー・ポップ・シンガー、Malkit Singhの"Chal Hun"のビデオをご覧ください。
 
オールドスクールなバングラー歌謡といった趣きのサウンドと、コミカルなタッチで民族衣装の人々が集ったパーティーを描いたビデオがレトロで良い。
この時代のシク教徒のポップシンガーは、このMalkit Singhのように赤やピンクや水色などのド派手で大ぶりなターバンを巻いていることが多かった。
シク教徒は本来は神から与えられた髪や髭を切ったり剃ったりしてはいけないことになっており、彼らのターバンのサイズが大きいのは、ターバンの下に長髪を隠しているからなのかもしれない。

現代のド派手系ターバンの代表としては、バングラー・ポップ・シンガーのManjit Singhを挙げてみたい。
彼が先日リリースした、"Top Off"のミュージックビデオは現代的なオシャレターバンの見本市だ。
 
鮮やかなボルドーカラーのターバンと、額の部分に衣装に合わせた黒い下地をチラ見せする着こなし(かぶりこなし)はじつに粋だ。
同系色が入ったジャージや黒いジャケットにはボルドーのターバン、カジュアルなジーンズには黄色のターバン(ここでも、黒いスタジャンに合わせてターバン下地の色は黒)とかぶり分けているのもポイントが高い。
後半に出て来る派手なシャツに赤いターバンを合わせているのも(よく見るとボルドーとはまた違う色)、最高にキマっている。
最近ではシク系シンガーでも、ターバンをかぶらない人が増えているが(例:バングラー・ラッパーのYo Yo Honey SinghやBadshah)、このManjitを見れば、単純に「ターバンはかぶったほうがかっこいい」ということが分かってもらえるだろう。

続いては、このManjit Singhが、パンジャーブ系イギリス人シクのManj Musikと共演した"Beauty Queen"を見ていただこう。
Manji Musikは、映画『ガリーボーイ』の審査員役として、Raja Kumariらとともにカメオ出演していた音楽プロデューサーだ。


今回も、Manjit Singhは、黒ターバンに赤の下地チラ見せ(赤いアロハシャツとコーディネート)、黄色いターバンに黒い下地チラ見せ(黄色系統のド派手なシャツと)と、完璧なかぶりこなしを見せているが、ここで注目したいのはもう一人のManj Musikだ。
Manjit Singhのように、ターバンが額で「ハの字」になるかぶり方は、下地とのコーディネートが楽しめるし、ターバンの存在感をアピールできる一方、ターバンが目立ち過ぎてしまい、場合によっては野暮ったく見えてしまう危険性がある。
そこで、在外シク教徒のミュージシャンを中心に、カジュアルかつすっきり見せるために流行している(多分)のが、このManj Musikのように、額でターバンが水平に近い形になるかぶり方だ。
(このかぶり方自体は、パンジャーブの老人がしているのも見たことがあるので以前からあるスタイルのようだが)
このかぶり方だと、ターバンのシルエットがだいぶすっきりとして、ドゥーラグや80年代のアメリカの黒人ミュージシャンがよくかぶっていた円筒形の帽子(これも名前は知らないが、よくドラムやパーカッションの人がかぶっていたアレ)のような雰囲気もある。
 
例えば、初期Desi HipHop(南アジア系のヒップホップ)を代表するアーティストである、パンジャーブ系イギリス人の三人組のRDBを見てみよう。
彼らはほぼいつもこのかぶり方をしていて、インド系ラッパーのJ.Hindをフィーチャーした"K.I.N.G Singh Is King"(2011年)のミュージックビデオでもその様子が見て取れる。

このかぶり方の場合、ほとんど必ず黒が選ばれているということは抑えておきたい。
楽曲としては、トゥンビ(バングラーで印象的な高音部のシンプルなフレーズを奏でる弦楽器)のビートとラップをごく自然に合わせているのが印象深い。

インド国内でも、2018年にデビューして以来、デリーのヒップホップシーンをリードしているストリートラッパーのPrabh Deepも常に黒いターバンでこの巻き方を堅持している。

かなりタイトフィットな彼のスタイルは、一見ドゥーラグかバンダナのようにも見えるが、上部や後ろ姿が映ると、まぎれもなくターバンであるということが分かる。
ストリートラップという新しいスタイルの表現を志しながらも、ヒップホップ・ファッションとターバンを融合し、自身のルーツを大事にしようとする彼の意気が伝わってくる。
(ちなみに彼のファーストアルバムのタイトルは、「歴史的名作」を意味する'Classic'と、シク教の'Sikh'をかけあわせた"Class-Sikh")
リズム的にはバングラーの影響はほぼ消失しており、完全なヒップホップのビートの楽曲だが、彼が見せるダンスは典型的なバングラーのものであるところにも注目したい。

一方で、ムンバイのブルータル・デスメタルバンドGutslitのリーダーでベーシストのGurdip Singhは、ジャンルのイメージに合わせて常に黒のターバンを身につけているが、その「巻き方」には、より伝統的な額が「ハの字型」になるスタイルを採用している。


これは、海外ツアーなども行なっている彼らが、「ターバンを巻いたデスメタラー」という非常にユニークなイメージを最大限に効果的に活用するためだろう。
インドのバンドというアイデンティティーを強く打ち出すためには、ドゥーラグやキャップのように見えるスタイルではなく、伝統的なイメージでターバンを巻くほうが良いに決まっている。
実際、彼らは自分たちのイメージイラストにも積極的に「ターバンを巻いた骸骨」を用いている。
GutslitLogo
Gutslitはサウンド面でも非常にレベルの高いバンドであるが、もしターバン姿のメンバーがいなかったら、彼らがここまでメタルファンの印象に残ることも、毎年のように海外ツアーに出ることも難しかったかもしれない。


インド国内人口の2%に満たないシク教徒が、国内外のインド系音楽シーンで目立っているのには理由がある。
シク教は16世紀にパンジャーブ地方で生まれた宗教で、ごく大雑把にいうと、ヒンドゥーとイスラームの折衷的な教義を持つとされる。
パンジャーブ州では今でも人口の6割近くがシク教徒であり、世界中で暮らすシク教徒たちも、ほとんどがこの地域にルーツを持っている。
シク教徒たちは勇猛な戦士として知られ、英国支配下の時代から重用されており、海外へと渡る者も多かった。
またパンジャーブ地方はインド・パキスタン両国にまたがる地域に位置しているため、分離独立時にイスラーム国家となったパキスタン側から大量の移民が発生し、多くのパンジャービー達が海外に渡った。

やがて、海外在住のパンジャービーたちは、シンプルなリズムを特徴とする故郷の伝統音楽「バングラー(Bhangra)」と欧米のダンスミュージックを融合させた「バングラー・ビート」という音楽を作り出した。
複雑なリズムを特徴とする他のインド古典音楽と違い、直線的なビートのバングラーは、ダンスミュージックとの相性が抜群だったのだ。
90年代から00年代にかけて、バングラー・ビートはパンジャービー系移民の枠を超えて世界的なブームを巻き起こした。
バングラー・ビートはインドにルーツを持つ最新の流行音楽としてボリウッドに導入されると、ヒップホップやEDM、ラテン音楽などと融合し、今日までインドの音楽シーンのメインストリームとなっている。
彼らが持つ伝統的なリズムと、歴史に翻弄された数奇な運命が、シクのミュージシャンたちを南アジア系音楽の中心へと導いたのだ。

現在では、前回紹介したファンク・ロックのFaridkotや、今回紹介したPrabh Deepのように、典型的なバングラーではなく、さまざまなジャンルで活躍するシクのアーティストたちがいる。

最後に、今回ファッションとターバンについて調べていた中で見つけた、とびきり素敵な画像を紹介したい。
おしゃれターバン
https://news.yale.edu/2016/11/21/under-turban-film-and-talk-explore-sikh-identityより。A scene from "Under the Turban," about members of the fashion world in Londonとのこと)
イギリスのオシャレなシク教徒たち。
カッコ良すぎるだろ! 
先頭の男性の、伝統的なスタイルに見せかけて、ドレープ感を出した巻き方も新しい。

個人的には、少し前に話題となったコンゴのオシャレ集団サプールの次に注目すべきローカル先端ファッションは、オシャレなシク教徒ではないかと思っている。
みなさんも、ぜひシク教徒たちのオシャレなターバンに注目してみてほしい。
それでは!

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2019年11月21日

Faridkotのファンキーでオシャレな「ターバン・ポップ」!


前回まで、「謎のインド人占い師ヨギ・シン」の話題ばかり書いていたので、私自身もすっかり忘れていたのだが、このブログはインドの最近の音楽(ロックとかヒップホップとか)を紹介するブログなんだった。
というわけで、今日からひとまず平常運転に戻ります。
とはいえ今回は前回からの流れでシク教にまつわる話。

シク教徒の男性ってオシャレだなあ、と思う。
体格がいい人が多いせいもあるが、スーツを着ても民族衣装を着ても、だいたいバッチリ決まって見えるし、何よりもターバンの着こなし(かぶりこなし)がとても粋なのだ。

「ターバン」というと伝統的なものという印象が強く、あまりファッショナブルなイメージはないかもしれないが、シク教徒の男性たちは、じつはターバンを含めたコーディネートにとても気を遣っているオシャレさんたちなのだ。
その日のファッションやTPOに合わせて、白や薄い水色みたいなシンプルなものから赤や黄色などのド派手なものまで、いろんな種類のターバンを使い分けているのも素敵だし、額の部分にちらっと見えるターバンの下にかぶるやつ(名前知らない)を差し色にしたりするのなんて、本当に粋だなあと思う。


なぜ急にこんな話をしたかというと、Faridkotというバンドが今年4月にリリースした"Subah"という曲のビデオで見たとてもクールなターバンを、とにかく紹介したかったからなのである。 

私はモノトーンの太いストライプのターバンというものを初めて見た。
このすごく個性的なターバンを、レトロな丸いサングラスと合わせるなんて最高ではないか。
音楽的にも、どこか80年代っぽいエレクトロニックなビートに、ファンキーなギターのカッティングがとても心地良い。
ちょっと"Random Access Memories"の頃のDaft Punkを思わせる雰囲気もある。
そこだけ古典音楽の影響を感じさせる女性ヴォーカルがまたいいスパイスになっている。 
この曲では、衣装も音楽性も、インド人が得意な、伝統的なものを現代的にアレンジするセンスが、素晴らしくクールかつポップな形で結晶しているのだ。
これはまさに、アーバン・ポップ(Urban Pop)ならぬターバン・ポップ!(Turban Pop)

FaridkotはヴォーカルのIP SinghとギターのRajarshi Sanyalのデュオ。
現在は二人組だが、もともとは2008年に5人編成のバンドとしてデリーで結成された彼らは、自身の音楽を、親しみやすいメロディーとブルージーなギターが融合した'Confused Pop'と定義している。
Faridkotというのはパンジャーブ州にある街の名前のようで、アメリカのバンドでいうとBostonとかChicagoみたいなバンド名ということなのだろう。

面白いのは、いくつかの記事で、彼らの音楽を表すときに「スーフィー(Sufi)音楽」という言葉が使われているということだ(彼らは自分たちでもスーフィー音楽の影響を公言している)。
スーフィー/スーフィズムは、「イスラーム神秘主義」と訳され、修行によって神との究極的な合一を目指す思想とされる。
音楽ではヌスラト・ファテー・アリー・ハーンらに代表される「カウワーリー」が有名だ。
 以前からパキスタンなどには、スーフィー音楽とロックを融合した「スーフィー・ロック」というジャンルがあったが、当然ながらそれはムスリムによって演奏される音楽ジャンルだった。
ところが、Faridkotのメンバーは、IP Singhはどう見てもシク教徒だし、Rajarshi Sanyalは名前からするとヒンドゥーのようである。
私は「スーフィー」というのは、音楽のスタイルである前に、ムスリムであることを前提とするものだと思っていた。
だがどうやらそうではなく、たとえ異なる信仰を持っていても、その力強く恍惚的な音楽性から影響を受けたなら、自由に自分の音楽に取り入れて、それを公言しても良いものらしい。
なんともおおらかな、いい話ではないか。

彼らは2011年にリリースしたファーストアルバム"Ek"がラジオで高く評価され、2014年にはユニバーサルに移籍してセカンドアルバム"Phir Se"を発表した。
変わったところでは、スタローンやシュワルツェネッガーが出演した『エクスペンダブルズ3』のヒンディー語版テーマ曲も担当したようだ。
彼らの楽曲のミュージックビデオは、ショートフィルム風で見応えがあるものも多い。
 
少年の淡い恋と友情を描いた"Mahi Ve" 

インドの子どもたちってどうしてこんなにかわいいんだろう。
シク教徒の男の子のおだんごターバンもとってもキュートだ。

貧しい青年の一途な片思いを描いた"Laila"のミュージックビデオは、インド映画でもよくあるちょっとストーカーっぽい純愛もの。

これはちょっとどういう感情になったらいいのか分からない。

というわけで、今回はI.P. Singhのツートンカラーのターバンが印象的なFaridkotを紹介してみました。
シクのミュージシャンのターバン事情については、まだまだ興味深い例が多いので、次回はさらに掘り下げて書いてみたいと思います!

ちなみに、ターバンは教義として着用することになっているシク教徒以外でも、ラージャスターン州などでは伝統的に広く用いられており(デザインや巻き方が異なる)、また王侯や戦士の正装としても使われてきた。
シク教徒でも、最近は若い人たちを中心にターバンを巻かない人が増えてきており、また宗派によっては着用の義務がないこともあるようだ。
…という通りいっぺんのターバンの説明を念のためここにも書いておきます。



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