タラブックス
2018年01月06日
インド少数民族アート・ミーツ・ブルース!!「Brer Rabbit Retold」
「世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦」@板橋区立美術館に行ってきた。
この企画展は、チェンナイにあるタラブックスという出版社による、インド先住民族(アーディヴァーシーと呼ばれる)の絵画を用いた絵本の原画を中心に展示したもの。
はて、ユーラシア大陸のど真ん中のインドで先住民族とはなんぞ?と思う向きも多いと思うのですが、彼らはインドにアーリア系民族、ドラヴィダ系民族が来る前から暮らしていた人々で、今でもインド各地に独自の文化を保って暮らしている。
つまり、数千年〜数万年前から自分たちの独自性を維持して暮らしている人たちというわけだ。
その中でも、とくに独自の伝統絵画で有名なゴンド、ミティラー、ワールリーなどの部族の絵描きたちに、インドや世界の民話や伝承をモチーフにイラストを描いてもらったものが展示の中心になっている。
こう言ってはなんですが、はて、こんなニッチというかマイナーな企画に人が集まるのかいな、と思って行ってみたら、どうも複数のメディアに取り上げられたみたいで、会場は大盛況、チケット買うにも大行列!
こんな自虐的なノボリがあったけど、いやいやどうして大混雑。
都営三田線の終点、西高島平から徒歩15分という、23区内で最果ての地みたいなところなのに。
これはどうでもいいけど会場の近くの公園にて。
犬を連れこんで良いのか、ダメなのか、字が消えちゃっててわからない。
会場内は撮影ほぼ全面OKだったのだけど、あっしは写真センスゼロかつ骨董品レベルの携帯では綺麗に撮れるはずもなく、作品の様子はタラブックスのサイトなどでご覧ください。「tarabooks」で画像検索などしてみるのもオススメです。
(日本語サイトはこちら)
インドの少数民族とかインドの文化とかそういう予備知識を抜きにして、とにかく単純に美しくて力強い絵がたくさん楽しめました!
会場の盛況も、インド好きとか美術好きが集まってるってことじゃなくて、作品の普遍的な魅力によるものなんでしょう。
他にも、インドの手書きの映画ポスターとかマッチ箱とか、そういう今までアートと見なされていなかったものを取り上げたりもしている。
最近 政界に進出すると話題のスーパースター、ラジニもこの泥臭さ。
描かれている人が見切れてる人質っぽい人以外、みんな斧とか鞭とかナイフとか持ってるのも凄い。
展示されている作品は、アーディヴァーシーの伝統的な作品をそのまま持ってきたわけではなくて、現代的なセンスを持ったタラブックスの人たちとのワークショップによって、より西洋的にアーティスティックなスタイルで作られたもの。
いわば伝統ミーツ現代。
このブログのテーマの一つは、「面白いものは境界線上で起きている!」ということなんだけど、どこか共通するものを感じる、とても面白い美術展でした。
さて、ここはインドの今の音楽を紹介するブログなので、関連する音楽ネタをひとつ。
西インドに伝わる礼拝用の布「マタニパチェディ」の作家と、アフリカ系アメリカ人の吟遊詩人アーサー・フラワーズによる共作の絵本「新釈ブレア・ラビット」という作品も展示されていたのですが、その絵本にあわせて、フラワーズがインド人ミュージシャンたちの演奏をバックに朗読した映像がこちら!
これがまた凄くいい!
このアーサー・フラワーズさん、吟遊詩人と紹介されているけれども、もうほとんどブルースマンで、その語りからして完全にブルース!
ジャズとインド音楽の融合ってのはいくつか見たことがあるけど、ブルース・ミーツ・インドというのは新しい!
そしてこんなにはまるとは思わなかった!
アニメーション化されたイラストもすごく美しい。
このブレア・ラビットのブレアというのは「brother」の変形で、悩みを抱えるウサギが「笑いの国」を求めて旅に出かけるストーリー。
じつはディズニーランドのスプラッシュ・マウンテンもこの話がもとになっている。
https://ameblo.jp/love-light-godbreath/entry-10661877559.html
今回はフラワーズさんも自分なりにアレンジして語っているみたいですね。
アフリカン・アメリカンの伝承である民話やブルースと、同じように苦難の歴史を重ねてきたであろうアーディヴァーシー(アーディヴァーシーたちは被差別的な立場に置かれ、貧しい暮らしをしているものがほとんど。行政上はScheduled Tribe=指定部族と呼ばれ、カースト外の指定カースト=Scheduled Casteと合わせてSC/STとして保護の対象になっている。)の美しい融合の紹介でした。
この板橋区立美術館の企画展は2018年1月8日まで!
終わる直前に紹介するなって話ですが、行く価値ありすぎ!
ちなみにアーディヴァーシーの美術については、バックパッカー界の大御所、蔵前仁一の「わけいっても、わけいっても、インド」で紀行もかねて詳しく楽しく知ることができます。
それでは今日はこの辺で!