コスプレ
2021年12月20日
インド北東部 晩秋の桜祭り Cherry Blossom Festival in Shillong
桜といえば日本を代表する花であることは論を待たないが、異論があるとすればシロンからだろう。
何を言っているのか訳が分からないだろうけど、まずは、この美しい桜の写真を見てほしい。



いやー、やっぱり日本の春はこれだよな、と言いたくなるが、じつはこれ、みんなインドで撮られたものなのである。
この写真のいずれもが、インド北東部のメガラヤ州の州都シロン(Shillong)で撮影されたものだ。
しかも、これは春ではなくて晩秋。
インドではムンバイにも桜の並木道があり、毎年3月に見頃となるが、シロンでは桜の種類が違うのか、毎年11月に満開の季節を迎える。
(写真の出典:
1枚目 https://www.cntraveller.in/story/covid-cant-stop-cherry-blossoms-from-blooming-in-shillong-meghalaya/
2枚目 https://timesofindia.indiatimes.com/travel/destinations/shillong-ready-to-host-indian-cherry-blossom-festival-in-nov/as61184175.cms
3枚目 https://indianexpress.com/article/north-east-india/meghalaya/cherry-blossom-festival-shillong-meghalaya-bloom-no-show-yet-show-must-go-on-4927948/)


(地図出典:Wikipedia)
このブログでも何度も紹介しているように、インド北東部は、アーリア系やドラヴィダ系の彫りの深い典型的な「インド人」ではなく、東アジア/東南アジア的な見た目の人々が多く暮らす土地である。
我々がインドと聞いてイメージする褐色の大地とは異なるヒマラヤのふもとの山間に桜が咲き誇る様子は、まるで日本の田舎の風景のようだ。

(出典:https://www.indiatimes.com/trending/environment/shillong-2021-cherry-blossom-festival-photos-555265.html)
北東部は文化的にも独特で、20世紀以降、欧米の伝道師たちによって持ち込まれたキリスト教の信仰が定着し、じつに人口の75%がクリスチャンだ。
そのためか、メガラヤ州にはインドではかなり早い時期から欧米のポピュラーミュージックが浸透していて、シロンは「インドのロックの首都」とも言われている。
日本で花見といえば宴会だが、そんなシロンではやはり桜の季節も音楽フェス。
今年はシロンの桜祭り、その名も'Shillong Cherry Blossom Festival'が2年ぶりに開催され、そのなかでインド国内外のアーティストが出演するライブが行われた。
今年のフェスティバルは、11月25〜27日の3日間にわたって行われ、大いに盛り上がったようだ。
出演アーティストを見てみよう。
まずは韓国から、K-Popの今年デビューしたガールズグループPIXY.
Cherry Blossom Festivalのステージでは、かつて世界的にヒットしたPanjabi MCの"Mundian To Bach Ke"をカバーするなど、インドのオーディエンスを意識したパフォーマンスを繰り広げた。
この曲は、インド北西部パンジャーブのバングラーを現代的にアレンジしたもので、メガラヤ州とは遠く離れた地方の音楽なのだが、それでもインドのための特別なパフォーマンスであることは十分に伝わったようで、観客も大いに盛り上がっている。
K-Pop人気はインドでも絶大で、韓国側もしっかりとインドをマーケットとして位置付けているようである。
PIXYのような新鋭K-Popグループによるインドでのプロモーション活動は、ここ数年さかんに行われていて、インド各地でK-Pop人気の裾野を広げることに貢献している。
他の出演者も見てみよう。
ポルトガルの女性EDM DJ, Mari Ferrariはこのブチ上げっぷり。
他には、ドバイのファンクグループ、Carl and the Reda Mafiaやタイのエレクトロニック・ポップ・アーティストPyraら国際色豊かな面々が出演している。
「そこまで世界的に有名ではないが面白いアーティスト」を呼ぶことにかけては、北東部のフェスはなかなかの慧眼を発揮していると言えるだろう。
このCherry Blossom Festivalには、地元メガラヤのアーティストたちも出演し、ステージを盛り上げている。
例えばこの女性シンガーのJessie Lyngdoh.
R&BシンガーのShane.
メガラヤ州の公用語は、地元言語のガロ語(Garo)、カシ語(Khasi)、そして英語。
北東部の地元言語は話者数が少ないためか、英語で歌うアーティストが多いのも特徴となっていえる。
EDMのDJ Wanshanのこの下世話な盛り上がりっぷりも最高。
BANJOPら地元のメンバーも複数出演した。
ロックバンドのRum and Monkeys.
シロンは小さな街だが、さすが「インドのロックの首都」と言われているだけあり、層の厚さを感じさせるラインナップである。
このフェスが北東部らしくて面白いところは、音楽だけでなく、コスプレ大会などのイベントも行われていること。
北東部では、見た目的な親近感からか、K-Popだけでなく日本のアニメやコスプレ文化も非常に高い人気を博している。
フェス全体の様子はこちらの動画で見ることができる。
この動画でも「サクラ」という言葉が使われているし、コスプレ大会も行われているこのフェスに、日本のアーティストにもぜひ出演してほしいところ。
秋に桜が見たくなったら、春まで待つ必要はない。
メガラヤ州シロンに行こう。
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何を言っているのか訳が分からないだろうけど、まずは、この美しい桜の写真を見てほしい。



いやー、やっぱり日本の春はこれだよな、と言いたくなるが、じつはこれ、みんなインドで撮られたものなのである。
この写真のいずれもが、インド北東部のメガラヤ州の州都シロン(Shillong)で撮影されたものだ。
しかも、これは春ではなくて晩秋。
インドではムンバイにも桜の並木道があり、毎年3月に見頃となるが、シロンでは桜の種類が違うのか、毎年11月に満開の季節を迎える。
(写真の出典:
1枚目 https://www.cntraveller.in/story/covid-cant-stop-cherry-blossoms-from-blooming-in-shillong-meghalaya/
2枚目 https://timesofindia.indiatimes.com/travel/destinations/shillong-ready-to-host-indian-cherry-blossom-festival-in-nov/as61184175.cms
3枚目 https://indianexpress.com/article/north-east-india/meghalaya/cherry-blossom-festival-shillong-meghalaya-bloom-no-show-yet-show-must-go-on-4927948/)


(地図出典:Wikipedia)
このブログでも何度も紹介しているように、インド北東部は、アーリア系やドラヴィダ系の彫りの深い典型的な「インド人」ではなく、東アジア/東南アジア的な見た目の人々が多く暮らす土地である。
我々がインドと聞いてイメージする褐色の大地とは異なるヒマラヤのふもとの山間に桜が咲き誇る様子は、まるで日本の田舎の風景のようだ。

(出典:https://www.indiatimes.com/trending/environment/shillong-2021-cherry-blossom-festival-photos-555265.html)
北東部は文化的にも独特で、20世紀以降、欧米の伝道師たちによって持ち込まれたキリスト教の信仰が定着し、じつに人口の75%がクリスチャンだ。
そのためか、メガラヤ州にはインドではかなり早い時期から欧米のポピュラーミュージックが浸透していて、シロンは「インドのロックの首都」とも言われている。
日本で花見といえば宴会だが、そんなシロンではやはり桜の季節も音楽フェス。
今年はシロンの桜祭り、その名も'Shillong Cherry Blossom Festival'が2年ぶりに開催され、そのなかでインド国内外のアーティストが出演するライブが行われた。
今年のフェスティバルは、11月25〜27日の3日間にわたって行われ、大いに盛り上がったようだ。
出演アーティストを見てみよう。
まずは韓国から、K-Popの今年デビューしたガールズグループPIXY.
Cherry Blossom Festivalのステージでは、かつて世界的にヒットしたPanjabi MCの"Mundian To Bach Ke"をカバーするなど、インドのオーディエンスを意識したパフォーマンスを繰り広げた。
この曲は、インド北西部パンジャーブのバングラーを現代的にアレンジしたもので、メガラヤ州とは遠く離れた地方の音楽なのだが、それでもインドのための特別なパフォーマンスであることは十分に伝わったようで、観客も大いに盛り上がっている。
K-Pop人気はインドでも絶大で、韓国側もしっかりとインドをマーケットとして位置付けているようである。
PIXYのような新鋭K-Popグループによるインドでのプロモーション活動は、ここ数年さかんに行われていて、インド各地でK-Pop人気の裾野を広げることに貢献している。
他の出演者も見てみよう。
ポルトガルの女性EDM DJ, Mari Ferrariはこのブチ上げっぷり。
他には、ドバイのファンクグループ、Carl and the Reda Mafiaやタイのエレクトロニック・ポップ・アーティストPyraら国際色豊かな面々が出演している。
「そこまで世界的に有名ではないが面白いアーティスト」を呼ぶことにかけては、北東部のフェスはなかなかの慧眼を発揮していると言えるだろう。
このCherry Blossom Festivalには、地元メガラヤのアーティストたちも出演し、ステージを盛り上げている。
例えばこの女性シンガーのJessie Lyngdoh.
R&BシンガーのShane.
メガラヤ州の公用語は、地元言語のガロ語(Garo)、カシ語(Khasi)、そして英語。
北東部の地元言語は話者数が少ないためか、英語で歌うアーティストが多いのも特徴となっていえる。
EDMのDJ Wanshanのこの下世話な盛り上がりっぷりも最高。
BANJOPら地元のメンバーも複数出演した。
ロックバンドのRum and Monkeys.
シロンは小さな街だが、さすが「インドのロックの首都」と言われているだけあり、層の厚さを感じさせるラインナップである。
このフェスが北東部らしくて面白いところは、音楽だけでなく、コスプレ大会などのイベントも行われていること。
北東部では、見た目的な親近感からか、K-Popだけでなく日本のアニメやコスプレ文化も非常に高い人気を博している。
フェス全体の様子はこちらの動画で見ることができる。
この動画でも「サクラ」という言葉が使われているし、コスプレ大会も行われているこのフェスに、日本のアーティストにもぜひ出演してほしいところ。
秋に桜が見たくなったら、春まで待つ必要はない。
メガラヤ州シロンに行こう。
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goshimasayama18 at 22:20|Permalink│Comments(0)
2020年09月25日
インドの秘境ナガランドの音楽やコスプレのオンライン・イベントのご案内!
「Do you know Cosplay? 知人がコスプレや音楽のオンラインイベントを行うんだ。ぜひ日本からも参加してほしい」
彼の知人だという女性から詳細を教えてもらったところ、その企画は、'Magnum Opus'という名称で、ナガランドの'Act of Kindness'という団体が企画しているものだそうだ。
ナガランドといえば、かつては首狩りの風習があったことでも知られているミャンマーと国境を接するインド北東部の土地。
昨年公開された、田園地帯で歌われる美しい労働歌を描いたドキュメンタリー映画『あまねき旋律』でご存知の方も多いだろう。
もともとは異なる文化や言語を持つ16もの部族が暮らすナガランドは、住民のほとんどがキリスト教に改宗し、激しい独立運動を経て、そしてなぜか今では日本のアニメのコスプレが大流行しているという非常にユニークな土地だ。
インド北東部で音楽ライターをしている友人から、いきなりこんな連絡があった。
彼の知人だという女性から詳細を教えてもらったところ、その企画は、'Magnum Opus'という名称で、ナガランドの'Act of Kindness'という団体が企画しているものだそうだ。
ナガランドといえば、かつては首狩りの風習があったことでも知られているミャンマーと国境を接するインド北東部の土地。
第二次世界大戦での日本軍の無謀なインパール作戦の激戦地にもなった土地としても知られている。
昨年公開された、田園地帯で歌われる美しい労働歌を描いたドキュメンタリー映画『あまねき旋律』でご存知の方も多いだろう。
もともとは異なる文化や言語を持つ16もの部族が暮らすナガランドは、住民のほとんどがキリスト教に改宗し、激しい独立運動を経て、そしてなぜか今では日本のアニメのコスプレが大流行しているという非常にユニークな土地だ。
どれほどコスプレが人気かというと、Nagaland Anime Junkiesというアニメ同好会が毎年開催しているコスプレの祭典Cosfestには、近隣の州からも含めて、毎年1万人近いファンが集まるほどだという。
ご覧の通り、ナガランドに住んでいるのは、典型的なインド人のイメージとは異なるモンゴロイド系の民族。
民族衣装を着ていなければ(とくにコスプレをしていると)日本人と間違えてしまいそうである。
今回案内のあったMagnum Opusは、10月25日の「世界芸術の日(International Artist Day)」に合わせて開催されているアートと音楽の祭典で、今年で6回目を数える。
絵画、写真、オリジナル楽曲、短編ストーリーなどと並んで、「コスプレ部門」があるというのがいかにもナガランドらしい。
ご覧の通り、ナガランドに住んでいるのは、典型的なインド人のイメージとは異なるモンゴロイド系の民族。
民族衣装を着ていなければ(とくにコスプレをしていると)日本人と間違えてしまいそうである。
今回案内のあったMagnum Opusは、10月25日の「世界芸術の日(International Artist Day)」に合わせて開催されているアートと音楽の祭典で、今年で6回目を数える。
絵画、写真、オリジナル楽曲、短編ストーリーなどと並んで、「コスプレ部門」があるというのがいかにもナガランドらしい。
というか、日本の芸術祭のようなイベントで、コスプレ部門が行われているというのは聞いたことがない。
ナガランドはオタクカルチャーの市民権という点で言えば、もはやとっくに日本を超えているのかもしれない。
すごいぞ、ナガランド。
すごいぞ、ナガランド。
このイベントは、例年ナガランド州の中心都市ディマプルで開催されていたが、今年はコロナウイルス禍によりオンライン開催となったことで、ぜひコスプレの本場である日本からも参加してほしい、ということで私にコンタクトしてくれたようだ。
こちらは2年前に行われたイベントの様子。
コスプレ部門の様子は1:30頃から出てくる。
インドの山奥の地方都市とは思えないコスプレっぷりに驚かされるだろう。
ナガランドの人々のジャパニーズ・カルチャーへの情熱には驚かされるばかり。
この動画は、先述の'Cosfest'を取り上げたドキュメンタリー映画だ。
38:20頃から、ナガの人々が日本への思いを告白する部分がある。
なんだか日本人として、こそばゆいような気持ちになるが、ここまで日本のカルチャーに情熱を傾けてくれている人々に、日本のコスプレイヤーの皆さんには是非とも応えてほしい。
エントリー費用はたったの150ルピー(215円程度)。
賞金もベスト・コスチューム賞が10,000ルピー(14,000円程度)、ベスト・パフォーマンスなどの各賞が5,000ルピー(7,000円程度)とごく少額だが、オンラインとはいえ、旅行でもなかなか行けない地域のイベントに参加することは、プライスレスな経験になること間違いなし。
コスプレ部門の審査員はNaga Anime Junkiesの優勝者らが務めるそうだ。
こちらは2年前に行われたイベントの様子。
コスプレ部門の様子は1:30頃から出てくる。
インドの山奥の地方都市とは思えないコスプレっぷりに驚かされるだろう。
ナガランドの人々のジャパニーズ・カルチャーへの情熱には驚かされるばかり。
この動画は、先述の'Cosfest'を取り上げたドキュメンタリー映画だ。
38:20頃から、ナガの人々が日本への思いを告白する部分がある。
なんだか日本人として、こそばゆいような気持ちになるが、ここまで日本のカルチャーに情熱を傾けてくれている人々に、日本のコスプレイヤーの皆さんには是非とも応えてほしい。
エントリー費用はたったの150ルピー(215円程度)。
賞金もベスト・コスチューム賞が10,000ルピー(14,000円程度)、ベスト・パフォーマンスなどの各賞が5,000ルピー(7,000円程度)とごく少額だが、オンラインとはいえ、旅行でもなかなか行けない地域のイベントに参加することは、プライスレスな経験になること間違いなし。
コスプレ部門の審査員はNaga Anime Junkiesの優勝者らが務めるそうだ。
審査は、未編集の1分間未満の動画と、未加工の画像3枚(正面・横・後ろから撮影したもの。アクセサリー等にフォーカスした画像1枚を追加可能)で行われる。
評価の対象は、コスチュームのディテールやパフォーマンス、オリジナリティーとのこと。
(詳細はこちら)


このRegistrationを10月15日までに以下のメールアドレス宛に送り、参加費をGoogle Payで振り込んだうえで、動画や画像を10月20日までに送ればエントリー完了。
(送付先のメールアドレスは、actofkindness.dimapur@gmail.com)
評価の対象は、コスチュームのディテールやパフォーマンス、オリジナリティーとのこと。
(詳細はこちら)


このRegistrationを10月15日までに以下のメールアドレス宛に送り、参加費をGoogle Payで振り込んだうえで、動画や画像を10月20日までに送ればエントリー完了。
(送付先のメールアドレスは、actofkindness.dimapur@gmail.com)
もちろん、それ以外の部門も参加大歓迎。
オリジナルソング部門は、英語の曲が望ましいが日本語でも構わないとのこと。
これらの部門の詳細や審査方法については、上記のメールアドレス宛に気軽に問い合わせてほしい。



それぞれ、ナガランドで活躍しているアーティストが審査を行うようだ。
コスプレイヤーをはじめ、アーティストのみなさんはコロナ禍でなかなかリアルでのイベントに参加できない日々が続いていると思うが、こんな時だからこそ、普段はなかなか接する機会がない地域の人々とも繋がってもらえたらと思う。
日本からの入賞者の知らせを聞くことを、心待ちにしています。
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これらの部門の詳細や審査方法については、上記のメールアドレス宛に気軽に問い合わせてほしい。



それぞれ、ナガランドで活躍しているアーティストが審査を行うようだ。
コスプレイヤーをはじめ、アーティストのみなさんはコロナ禍でなかなかリアルでのイベントに参加できない日々が続いていると思うが、こんな時だからこそ、普段はなかなか接する機会がない地域の人々とも繋がってもらえたらと思う。
日本からの入賞者の知らせを聞くことを、心待ちにしています。
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goshimasayama18 at 23:04|Permalink│Comments(0)
2019年06月08日
ロックバンドKrakenがアンダーグラウンドラッパーを従えて初の(?)コスプレツアーを実施!
22年前に南米を旅行していた時のこと。
確かアルゼンチンだったと記憶しているが、私が乗っていたバスに、いかにもハードコア・パンクとかをやっていそうな、革ジャンを着てタトゥーの入った、いかつくてコワモテの男が乗車してきた。
絡まれたら嫌だなあと思いながら彼の様子を伺っていると、彼はおもむろにカバンの中から、ローマ字で"Otaku"と書かれた日本のアニメの絵が表紙の雑誌を取り出し、夢中になって読み始めた。
当時(今もかもしれないが)、日本ではアニメなどのオタクカルチャーは、ハードコア・パンクや不良文化とは真逆のイメージだったので、彼の好みの振れ幅の大きさに、ものすごく驚かされたものだ。
そういえば、ニューヨークのハードコア・バンドSick Of It Allが、インタビューで、自分たちがいかにドラゴンボールが好きか、どれだけドラゴンボールに衝撃を受け、夢中になったかを熱く語っているのを読んだのも同じ頃だったように思う。
硬派で激しいハードコア・パンクと、小学生のときに読んでいたマンガの印象がどうしても重ならなくて、やはり強烈な違和感を感じたものだった。
何が言いたいのかというと、アニメに代表される日本のオタクカルチャーは、じつは海外ではサブカルチャーのひとつとして、コアな音楽ジャンルと結びついて、面白い受容のされ方をしているのではないか、ということである。
さて、話をいつも通りインドに戻すと、今回の記事のタイトルは「ロックバンドKrakenがアンダーグラウンドラッパーを従えて初の(?)コスプレツアーを実施」というもの。
何を言っているのか、わけが分からないという方も多いのではないかと思う。
解説するとこういうことだ。
かつてこのブログでも紹介した、デリーを拠点に活動するマスロック/プログレッシブメタルバンドKrakenは、ジャパニーズ・カルチャーに大きな影響を受けたグループである。
彼らのファーストアルバム"Lush"では、複雑でテクニカルなロックサウンドに日本文化の影響をミックスしたユニークな世界観を披露しており、Rolling Stone India誌で2017年のベストアルバム第7位に選ばれるなど、音楽的にも高い評価を受けている。
そんな彼らがインド各都市で行う今回のツアーは「コスプレツアー」というかなりユニークなもの。
彼らのTwitter曰く、「初のミュージック&コスプレツアー!最高のパーティーを開くために、音楽ファンとコスプレファンに橋渡しをする!」とのことだそうだ。
The First Ever Music and Cosplay Tour! We are bridging the Music and Cosplay communities, all for the great cause of putting up the greatest party! Ticket Links, start planning your outfit. pic.twitter.com/qG7ZUZboAB
— Kraken (@krakenfam) 2019年6月3日
こうした「コスプレライブツアー」が世界初なのかどうかは分からないが、もしコスプレ発祥の地であるここ日本で前例があったとしても、アニソン歌手とか、声優のコンサートなのではないかと思う。
Krakenの音楽は直接アニメと関連しているわけではなく、サウンドもプログレッシブかつマスロック的なもので、このコスプレライブがいったいどのような雰囲気になるのか、想像もつかない。
しかも、今回彼らがツアーのサポートに起用したのは、ロックバンドではなく、ヒップホップアーティストのEnkoreとHanuMankind.
ラッパーのパフォーマンスにコスプレをした観客がいるというのはもはやシュールでさえある。
インディーシーンが発展途上のインドでは、異なるジャンルのアーティスト同士の共演も珍しくはないが、プログレッシブ・メタルとコスプレとヒップホップの融合と言われると、もう全然わけがわからない。
(ちなみに前回のKrakenのツアーのサポートは、このブログでも紹介したマスロックバンドのHaiku-Like Imagination. 音楽的にはかなり近いバンドだった)
サポートアクトの一人、Enkoreはムンバイのラッパーで、2018年に発表した"Bombay Soul"がRolling Stone Indiaの2018年ベストアルバムTop10に選ばれるなど、批評家からの評価も高いアーティストだ。
インディーシーンが発展途上のインドでは、異なるジャンルのアーティスト同士の共演も珍しくはないが、プログレッシブ・メタルとコスプレとヒップホップの融合と言われると、もう全然わけがわからない。
(ちなみに前回のKrakenのツアーのサポートは、このブログでも紹介したマスロックバンドのHaiku-Like Imagination. 音楽的にはかなり近いバンドだった)
サポートアクトの一人、Enkoreはムンバイのラッパーで、2018年に発表した"Bombay Soul"がRolling Stone Indiaの2018年ベストアルバムTop10に選ばれるなど、批評家からの評価も高いアーティストだ。
その音楽性は、昨今インドで流行しているGully Rap(インド版ストリートラップ)のような前のめりなリズムを強調したものではなく、メロウでジャジーな雰囲気のあるものだ。
(インド各地でこの傾向のアーティストは少しづつ増えてきており、代表的なところでは、ムンバイのTienas, バンガロールのSmokey the Ghost, ジャールカンドのTre Essなど。デリーの人気トラックメイカーSezのサウンドも同様の質感を強調していることがある)
彼のようなアンダーグラウンド・ヒップホップは、音楽的にはKrakenが演奏するプログレッシブ・メタルとは1ミリも重ならないように思えるが、ここにジャパニーズ・カルチャーからの影響という補助線を引くと、意外な共通点が見えてくる。
メロウで心地よいビートを特徴とするチルホップ/ローファイ・ヒップホップ(ローファイ・ビーツ)は、日本のトラックメーカーである故Nujabesが創始者とされている。
彼の楽曲は深夜アニメ『サムライ・チャンプルー』で大々的にフィーチャーされ、ケーブルテレビのアニメ専門チャンネルを通して世界中に広まった。
その影響もあって、今でもチルホップのミックス音源を動画サイトにアップしたときには日本のアニメ風の映像を合わせるのがひとつの様式美になっている。
例えばこんなふうに。
例えばこんなふうに。
意外なところで、ヒップホップはアニメカルチャーと繋がっているのだ。
そしてもう一方のサポートアクトであるHanuMankindがまた強烈だ。
ヒンドゥー教の猿の神ハヌマーンと人類を意味するhumankindを合わせたアーティスト名からして人を食っているが、彼のラップの世界感はさらに驚くべきもの。
メロウでローファイな質感のこの曲のタイトルは、なんと"Kamehameha".
そう、我々にも馴染深いあの「ドラゴンボール」の「かめはめ波」である。
メロウでローファイな質感のこの曲のタイトルは、なんと"Kamehameha".
そう、我々にも馴染深いあの「ドラゴンボール」の「かめはめ波」である。
ビートが入ってきた瞬間に、「孫悟空」という単語からフロウが始まり、続いてSuper Sasiyan(スーパーサイヤ人)という言葉も耳に入ってくるという衝撃的なリリック。
とはいえ彼のサウンドにはドラゴンボール的なヒロイズムや派手さではなく、あくまでチルなビートに乗せて「カメ!ハメ!ハ!」のコーラスが吐き出される。
いったいこれは何なのだ。
とはいえ彼のサウンドにはドラゴンボール的なヒロイズムや派手さではなく、あくまでチルなビートに乗せて「カメ!ハメ!ハ!」のコーラスが吐き出される。
いったいこれは何なのだ。
さらにはこんな楽曲も。
その名も"Super Mario". トラックはそのまんまだ!
この曲も、リリックにはゲーム、ドラゴンボール、クリケットなどのヒップホップらしからぬネタが盛りだくさん。
"Samurai Jack"と名付けられたこの曲はジャジーなビートが心地よい。
ここでもリリックではギークっぽい単語とインドっぽい単語が共存している不思議な世界。これは、インドで実を結んだナードコア・ヒップホップのひとつの結晶という理解で良いのだろうか?
それにしても、KrakenとHanuMankindとEnkore、いくら日本のサブカルチャーという共通点があるとはいえ、そもそもプログレッシブ・メタルバンドがラッパー2人とツアーをするというところからして意外というか想像不能だし、しかもコスプレの要素も入ってくるとなると、もうなんだかわけがわからない。
わけがわからないとはいえ、まるで日本のバンドブームの初期のように、インディーミュージックシーン全体がジャンルにこだわらず盛り上がっている様子はなんだかとっても楽しそうだ。
そういえば、いまやインドNo.1ラッパーとなったDivineがインドの「ロックの首都」と言われている北東部メガラヤ州の州都シロンで行なったライブのサポートは地元のデスメタルバンドPlague Throatだった。
そういえば、いまやインドNo.1ラッパーとなったDivineがインドの「ロックの首都」と言われている北東部メガラヤ州の州都シロンで行なったライブのサポートは地元のデスメタルバンドPlague Throatだった。
バンガロールでは先日ラッパーのBig Dealとやはりブルータル・デスメタルバンドのGutSlitのジョイントライブがあったばかりだ。
なんだかAnthraxがPublic Enemyと共演し、映画"Judgement Night"のサントラでオルタナティブロックとヒップホップのアーティストたちがコラボレーションした90年代前半のアメリカを思い起こさせるようでもある。 (古い例えで恐縮ですが)
特定のジャンルのファンではなく、インディーミュージック/オルタナティブミュージックのファンとしての連帯感が、インドには存在しているのだろうか。
この混沌とした熱気は、ジャンルが細分化されてしまった日本から見ると、正直少々うらやましくもある。
以前行ったインタビューでは、Krakenのメンバーは日本のヒップホップにも影響を受けたことを公言しており、Nujabes、Ken the 390、Gomessらの名前をフェイバリットとして挙げている。
ギター/ヴォーカルのMoses Koul曰く、次のアルバムは前作"Lush"とは大きく異なり、ヒップホップの要素が大きいものになるとのことで、いったいどうなるのか今から非常に楽しみだ。
それにしても、インドの音楽シーンにおける「ジャパニーズ・カルチャー」の面白さは、いつも想像を超えてくる。
先日、「インドで生まれた日本音楽」J-Trapの紹介をしたときにも感じたことだが、もはや日本文化は日本だけのものではないのだ。
この混沌とした熱気は、ジャンルが細分化されてしまった日本から見ると、正直少々うらやましくもある。
以前行ったインタビューでは、Krakenのメンバーは日本のヒップホップにも影響を受けたことを公言しており、Nujabes、Ken the 390、Gomessらの名前をフェイバリットとして挙げている。
ギター/ヴォーカルのMoses Koul曰く、次のアルバムは前作"Lush"とは大きく異なり、ヒップホップの要素が大きいものになるとのことで、いったいどうなるのか今から非常に楽しみだ。
それにしても、インドの音楽シーンにおける「ジャパニーズ・カルチャー」の面白さは、いつも想像を超えてくる。
先日、「インドで生まれた日本音楽」J-Trapの紹介をしたときにも感じたことだが、もはや日本文化は日本だけのものではないのだ。
また、インドでのK-Popブームと比較すると、韓流カルチャーがポップカルチャー(大衆文化)として受容されているのに対して、日本のカルチャーはサブカルチャー(マニア文化)として受け入れられているというのも面白い。
(参考:「インドで盛り上がるK-Pop旋風!」)
今後、日本で生まれた要素が、インドでどんな花を咲かせ、実を結ぶのだろうか。
ジャパニーズ・カルチャーをマサラの一つとして、全く新しいものがインドで生まれるってことに、ワクワクする気持ちを抑えられない。
これからも「インドの日本文化」紹介していきます!
(インドのコスプレ文化といえば、ムンバイなどの大都市だけでなく、北東部ナガランド州でも異常に盛り上がっているようだ。「特集ナガランドその3 ナガの地で花開く日本文化 ナガランドのオタク・カルチャー事情とは?」)
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(参考:「インドで盛り上がるK-Pop旋風!」)
今後、日本で生まれた要素が、インドでどんな花を咲かせ、実を結ぶのだろうか。
ジャパニーズ・カルチャーをマサラの一つとして、全く新しいものがインドで生まれるってことに、ワクワクする気持ちを抑えられない。
これからも「インドの日本文化」紹介していきます!
(インドのコスプレ文化といえば、ムンバイなどの大都市だけでなく、北東部ナガランド州でも異常に盛り上がっているようだ。「特集ナガランドその3 ナガの地で花開く日本文化 ナガランドのオタク・カルチャー事情とは?」)
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goshimasayama18 at 17:24|Permalink│Comments(0)
2018年10月27日
特集ナガランドその3 ナガの地で花開く日本文化 ナガランドのオタク・カルチャー事情とは?
インド北東部の秘境、ナガランド州を紹介してきたこの特集。
第1回目は「首刈り」「独立闘争」「キリスト教」に象徴されるナガランドの近現代史を取り上げ、第2回目では社会問題となっている悪魔崇拝とその背景を紹介してきた。
第3回目の今回は、現代のナガの若者たちの間に流行するさらに驚愕のカルチャーを紹介する。
何を隠そう、それは日本発祥の文化。
「コスプレ」である。
アニメ、マンガに代表される日本のサブカルチャーはインドでもそれなりの人気を博してはいるが(例えば首都デリーやムンバイでもコスプレイベントが開催されている)、なぜかここナガランドには、州の規模を考えると非常に多くの熱心なオタクカルチャーのファンが集中している。
百聞は一見に如かず。
さっそくその様子を見てみよう。
これは、今年7月にナガランドの州都コヒマで行われたイベント、Cosfestの様子だ。
入場料は大人100ルピー(約160円)、子供50ルピー(約80円)。
インドとはいえ、ナガの人々は日本人同様のモンゴロイド系の顔立ちなので、言われなければインドだと全く気づかないほどのコスプレっぷり!




これはコスプレでなくオブジェ

(以上写真5枚はhttps://rootsandleisure.com/day-1-of-cosfest-2018-kohima/から)




(以上写真4枚はhttp://morungexpress.com/cosplay-just-costume-play/から)
紹介しておきながら元ネタが分からないものが多く、あまり語れることがなくて申し訳ない。
このイベントは、Nagaland Anime Junkies(NAJ)というグループが州都のコヒマで2013年から毎年開催しているもの。
地元メディアの記事によると、当初、こうしたコスプレイヤーが出始めた頃には、見慣れない黒ずくめの衣装や奇妙なメイクに、新手のサタニストかと疑われたりもしていたようだが、今では新たな文化としてすっかり定着しているという。
第6回目となる今年は、コスプレだけでなく、バンド演奏、 DJ、アニメ映画の上映(新海誠作品)なども行われ、8,000人ものファンを集めた。
前回紹介した社会問題となっているコヒマのサタニストが3,000人とのことだから、悪魔主義者の倍以上のコスプレファン・アニメファンがいるということだ。
繰り返すが、コヒマの人口は27万人。
そのうち1%はサタニストで、悪魔に取り憑かれていたり、真夜中に墓地であやしげな儀式をしたりしている。
そして3%はイベントに集まるほどのコスプレファン。
ここはいったいどういう街なんだ…。
映像でみるとこんな感じで、とても、あののどかな「あまねき旋律」の舞台と同じ州だとは思えない。
先進国のコスプレと比較して完成度がどうなのか、私には分かりかねるが、着物にもセーラー服にも触れたことがないであろうナガランドで、情熱と工夫でここまでの衣装やメイクを作り上げる姿勢にはもう脱帽するしかない。
Cosfestを主催しているNagaland Anime Junkies(NAJ)は2011年に結成された。
当初はNaga Anime Junkiesを名乗っていたが、ファンが集まるにつれて「自分はナガ人ではないが仲間に入れてもらえないか」という声が多くなり、名称をNagaland Anime Junkiesに改めたという。
Nagaは民族名だが、Nagalandは単なる地名だからだ。
このCosfestは、当初は遠く離れたムンバイのコスプレイベントに参加できない地元のアニメファンのために開催したものだったのが(コヒマ-ムンバイ間の距離は3,000km以上)、あっという間に大人気となり、近隣の州からもファンが集まるようになった。
ナガランドのコスプレ愛好家たちは、材料が手に入りにくい環境で工夫に工夫を重ねて衣装を製作しているとのこと。
地元の生地屋で使えそうな生地を買ったり、現地では高価な発泡スチロールを冷蔵品を扱うお店に売ってもらったりして、手作りで衣装を作っているという。
インドでは、ドラえもん、クレヨンしんちゃん、ハットリくん、ポケモンのような子ども向けのアニメは広く知られているが、コスプレの対象になるようなサブカル的、オタク的なアニメのファンもそれなりに存在している。
それなのに、このナガランドでの異常なまでのアニメブームはいったいどういうことなのだろうか。
地元紙の報道によると、ナガランドでの日本ブームには3つのきっかけがあったようだ。
1つめは、2002年に日本の宗教指導者がナガランドを訪れ、第二次世界大戦中の激戦地となったことに対し、謝罪を行ったということ。(調べたところ、キリスト教のアガペという団体だったようだ)
2つめは、2009年に日本のミュージシャンがコヒマでパフォーマンスをしたこと。(調べたけど誰だか分からなかった。いったい誰?)
3つめは、2011年にナガを代表するバンドたちが、東日本大震災の被災者支援のためのイベントを開催したことだという。
このイベントには、先日紹介したAlobo NagaやDivine Connectionも出演したようだ。
日本では詳しく報じられなかったと思うが、遠く離れた、決して豊かとは言えないナガランドからも、州を代表するスターや一般市民たちが精一杯の支援してくれたと思うと、胸が熱くなる。
こうしたイベントを通して日本文化への親近感が湧いていたところに、「クローズzero」の映画が公開され、日本ブームに火がついたということのようだ。
また、Cosfestを扱ったドキュメンタリー映画(「Japan in Nagaland」後述)によると、ナガのアニメファンたちはアニマックスやカートゥーン・ネットワークのようなケーブルテレビでアニメにはまったという。
このドキュメンタリーでは、コスプレがここまで流行する背景として、ナガランドにはバーやクラブのような若者向けの娯楽や文化がなかったためと分析されている。
ナガランドの日本のサブカルチャーへの情熱は、コスプレという「模倣」にとどまらない。
日本風のオリジナルのマンガを描くアーティストもいる。


(画像2点、出展:https://scroll.in/magazine/876664/in-manga-crazy-nagaland-a-young-womans-comic-series-has-made-her-a-minor-star)
彼女の名前はThej Yhome.
ナガランドから2,500キロ離れたインド北西部ウッタラカンド州デラドゥンの大学でアニメーションとVFXの学位を取得したのち、今では地元で働きながらマンガの製作を行っているそうだ。
彼女の作品、'Carnaby Black'はここから読むことができる。
https://tapas.io/episode/39319
日本のマンガの影響だけでなく、森林や山並みなどの豊かな自然の描き方にナガのルーツを感じさせる作風だ。
ナガランドでここまで日本のサブカルチャーが愛されている理由として、ナガの人々の外見が影響しているという指摘もある。
ボリウッド映画のように典型的なインド人が活躍する作品よりも、同じモンゴロイドである日本の作品のほうが感情移入しやすいというのだ。
アニメやマンガの前には、日本と同じ東アジアの韓流ドラマが、そのさらに前には香港のカンフー映画が流行っていたという。
とはいえ、それらの実写作品と違い、日本のアニメやマンガには、キャラクターや舞台設定が無国籍なものも多い。
コスプレの対象になるような作品はなおさらだ。
それなのになぜ、ナガの若者たちはここまで夢中になるのだろうか。
もちろんストーリーやキャラクター自体が魅力的だということもあるだろうが、それだけではなぜインドのなかでここナガランドでだけ特別な盛り上がりを見せているのか、説明がつかない。
以前紹介した通り、ナガランドは伝統的な精霊信仰からキリスト教への改宗が地域を挙げて行われた土地だ。
かつては部族ごとに独自の文化や言語を持ち、他の部族に対して首刈りまで行っていたナガの人々は、20世紀中頃までに行われた改宗によって、それまでの伝統的な生活を変え、キリスト教を中心とした新しい価値観に大きく舵を切った。
これは、彼らの暮らしに根づいていた伝統的な歌声さえも、一度は捨ててしまったというほどの大きな変革だった。
改宗後、ナガの生活は著しく変わった。
部族ごとに異なる言語を話していた彼らは、宣教師が作り出した共通語「ナガミーズ」を手に入れ、今では英語も一般的に話されている。
1951年には10%だった識字率は、2011年には80%にも達した。
こうした変化にともない、ナガの若い世代が、自らの歴史的なルーツとの間に乖離を抱えているであろうことは想像に難くない。
現在の価値観の中心であるキリスト教も、若い世代にとっては「古い伝統に変わる開明的な信仰」という実感を抱けるほどに新しいものではないだろう。
勇敢な首刈りの戦士たちも、インターネット世代の若者たちには遠い過去の話だ。
そんな中で、ナガの若者たちが、自分たちの熱中できる対象として日本のアニメを見出したというのはとても興味深い。
日本も、敗戦によって大きく価値観を転換した歴史を持っている。
その後の経済成長によって伝統的な暮らしを失ってゆく過程の中で、欧米文化の影響を受けながらも、新しく自由な発想で作られてきたのがアニメやマンガに代表される日本のサブカルチャーだ。
他の文化圏では子ども向けの娯楽に過ぎなかったアニメやマンガは、ここ日本では新しい文学となり、神話となった。
ナガと日本は、理由はどうあれ、いずれもが、第二次世界大戦後に自分たちのルーツを一度は否定してきた歴史を持つ。
自身のアイデンティティーを考えた時に、歴史や伝統というルーツを喪失したナガランドの若者たちが日本のサブカルチャーを熱狂的に受け入れているということは、ある種の必然とも言えるのかもしれない。
このナガランドのアニメブームは、インド国営放送Doordarshanも注目しており、2014年の第2回Cosfestを取材した40分ほどのドキュメンタリー映画'Japan in Nagaland'が製作されている。
NAJのメンバーたちや地元のコスプレイヤーたちの情熱には驚かされるばかり。
(Carnaby Blackの作者、Thej Yhomeも登場する)
38分18秒あたりから、彼らが日本に対する憧れを語るシーンがある。
彼らの憧れの地でわりと憂鬱に日常を暮らしている私としては、インタビューを聞いてこそばゆいというか、申し訳ないような気持になる。
彼らにとって日本は、外見こそそっくりでも、あまりにも遠い場所であるようだ。
ナガランドのオタクのみなさん、こんなにも日本の文化を愛してくれてありがとう。
震災の時の支援にも、遅くなりましたが勝手に日本を代表してお礼を申し上げます。
日本の人たち、とくに、彼らと同じようにアニメやコスプレを愛する人たちに、遠いナガランドにいる彼らのことを少しでも知ってもらえたらと思ってこの記事を書きました。
いつか会えたらいいね!
参考記事:
https://www.thehindu.com/society/history-and-culture/nagalands-japanese-subculture/article24481651.ece
https://www.telegraphindia.com/7-days/bye-bye-hallyu-hello-haiku/cid/1670283
https://rootsandleisure.com/day-1-of-cosfest-2018-kohima/
https://homegrown.co.in/article/800138/documentary-filmmaker-hemant-gaba-explores-cosplay-culture-in-nagaland
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goshimasayama18 at 21:39|Permalink│Comments(0)