インド音楽
2018年02月02日
トリプラ州の"コンシャス"ラッパー Borkung Hrankhawl その2
前回、EDM/ロック的なトラックにポジティブ言葉を乗せてラップするBorkung Hrankhawlの音楽と彼の故郷トリプラ州について書いたので、今回はBorkungその人に迫ってみたいと思います。
そう、わざわざ2回に分けて書くってことは、これは相当面白い(とアタクシが勝手に思ってる)ってことでございます。
さて、Borkung Hrankhawl.
彼はトリプラ民族主義を掲げる政党”Indigenous Nationalist Party of Twipra”(トリプラ先住民民族主義党)の党首、Bijoy Kumar Hrangkhawlの一人息子として生まれた。父はトリプラ人の権利のための武力闘争を経て政治家になった人物で、Borkungにも大きな影響を与えた。
2つのサイト(HindusthanTimes, FirstPost)のインタビューから、Borukungの半生と音楽観、人生観を見てみよう。
彼のラップ同様、インタビューで語る言葉も熱くストレートだ。
「クラブや酒や女性についてラップするのは好みじゃない。ラップは神様からの贈り物なんだ。僕はラップを使って世の中をより良くしたい」
トリプラ先住民のために尽力する父を見て育った彼は、ラップを通してトリプラ人のことや彼らをとりまく環境を伝えたいという意識を持っている。
「トリプラの人々は人口が少ないせいで無視されてきた。僕たちはトリプラ人としての権利が得たいんだ。暴力や、人間性を脅かすようなことを煽るんじゃなく、僕はただ、平等と平和を広めたいんだ」
ここでは「トリプラの人々」と訳したけど、彼はTribal people in Tripuraという言葉を使っている。
インドでTribalという言葉は、一般的にはインドの主な宗教や文化とは別の伝統のもとに暮らす先住民族や少数民族のことを表している。
そして、彼らの多くは今なお被差別的・後進的な生活を強いられている。
前回も触れたように、都市部で差別的な扱いを受け、ときに命を落とす北東部出身者も後を絶たない。
Borkungもまた、学生時代にデリーでネパール人と間違えられて強盗にあった経験があると語る。
北東部出身の人間がデリーで暮らすうえで、このような危険は常にあるという。
多くの北東部の州で、ときにテロリズムにまで及ぶ独立運動が行われているのには、こうした背景がある。
だが、暴力ではなく平和を訴える彼は、こうした差別や無理解に対してこう語る。
「僕たちはみんな同じインド人だ。僕はこのギャップを埋める架け橋が必要だと感じたんだ。彼ら(大多数のインド人)は僕たちの文化を知らないだけで、他の点では彼らはいい人たちなんだよ」
彼のデビュー曲の名は”The Roots”。
より直接的に差別反対とトリプラ人の権利を主張し、自身のルーツを誇る楽曲だ。
いくつかの印象的なリリックを書き出してみる。
(しかも調子に乗って途中まで訳でも韻を踏んでみた)
I ain’t no politician though I’m vicious 俺は凶暴だけど政治家じゃない
Never worshipped on a path of a wrath 怒りへの道を崇めたりしない
I’m from Tripura you fakers 俺はトリプラ生まれだ イカサマ師たち
That’s the first thing you ought know これは最初に覚えとけお前たち
I did grow from Dhalai district and I need no passport インドに来るのにパスポートはいらない ダライ地区育ち
TNV and INPT could be the last soul TNVとINPTが最期の魂
(TNV,INPTは彼の父が率いていた武装組織と政党の名前)
How can you feed the poor when you bribe what has been reissued? 与えられたものを賄賂にしてしまうならどうやって貧しい人たちを食わせる?
All the rights given to us were misused 俺たちに与えられた権利はすべて悪用されてる
'Cause we the indigenous people have been spoofed out of our own land 俺たち先住民は自分たちの土地を追い出されてる
Though we minority, we hold hands マイノリティーでも手を携える
You ain't a component to extinct our clan 我々一族を絶やすことはできない
We fight till accomplishment 俺たちは成し遂げるまで戦う
I gotta give it, a salute to my roots yo. I gotta lift it up and never loose my roots yo.
さあ、俺は自分のルーツを讃える、絶対にルーツを失ったりしない
さらにメッセージ色の強いこのフリースタイルも非常に印象的だ。
ライムになっているだけでなく、全体が起承転結のある素晴らしいメッセージになっている全文はYoutubeの「もっと見る」から読むことができるので、ぜひチェックしてほしい。
ちなみに最後に出てくるRichard Loitam、Danna Sangma、Reingamphi Awungshi、Nido Taniaの4人は、いずれもデリーやバンガロールといった大都市で死に追いやられ、満足な捜査さえも行われなかった北東部出身の学生の名前だ。
リアルでストレートな表現と主張。あまり軽薄な言葉は使いたくないが、ものすごくかっこいい。
本物の表現者だなって感じる。
小さい頃からラップに夢中だった彼は、ライムしながらメッセージを伝えることが何よりも好きだったようだ。
ラッパーとしては、EminemやFat Joe、Fort Minorに大きな影響を受けたという。
極めてシリアスな表現者でありながら、ポップな曲への参加にも抵抗がないようで、意外なところではデリーの城みちるみたいなポップシンガーの曲にゲスト参加していたりもする。
インタビューで今後の目標を聴かれた彼は、グラミー賞を取ることだと答えた。
「僕は仲間を代表して、インドを代表してグラミーを勝ち取ってこう言いたいんだ。僕はトリプラ人だ。僕はインド人だと。自分がどこから来たのかを、自分のストーリーを伝えたいんだ」
こう言ってはなんだけど、ポップミュージックの辺境インドの中のさらに辺境の北東部のインディーズアーティストが、こんな大きな夢とメッセージを持っているということに、なんというか、またしてもぐっと来てしまった。
こないだのデスメタルバンドのTanaもそうだけど、インド北東部の人、ちょっとぐっと来させすぎじゃないか。
「インドのメインランド(主流文化地域)の友達もたくさんいるよ。彼らはみんないい人たちで親切だ。そうじゃないごく一部の人は、北東部のことを知らないだけなんだと思う。一度人間として受け入れられれば、優しい心の人たちがたくさんいる。僕が言いたいのは、必要なのは親密さを増すことだってこと。北東部とメインランドの親密さを育んでいく責任が僕らにはあるんだ」
人間性への揺るぎない信頼。それこそが彼のポジティブさの根底にある信念なのだろう。
彼はトリプラの人々だけでなく、インド全体の人々にメッセージが届けられるように、英語やヒンディーでラップすることを選んでいるというが、彼の表現の普遍性は、インド北東部や国境を越えて心に響くものがあるように感じる。大げさに言えば、ボブ・マーリーのように。
過酷な環境にも折れないポジティブさは、いつだって音楽を音楽以上のものにしてくれる。
2018年02月01日
トリプラ州の“コンシャス”ラッパー Borkung Hrangkhawl その1
バックパッカーの言葉で、旅の途中でひとつの場所についつい長逗留してしまうことを「沈没」というが、どうやらこのブログもインド北東部に沈没してしまったみたいだ。
正直、インドの中でもあんまり知らないエリアではあったのだけど、面白い音楽が出てくる出てくる。
ってなわけで、今回はデスメタルから離れて、インド北東部トリプラ州のラッパーを紹介します。
それではまず聴いてみてちょうだい。
"Never Give Up"
彼の名はBorkung Hrangkhawl.
と紹介してはみたものの、……読めない…。
ボルクン・ランコウルって感じで良いのかな?
彼の名前はインドの人たちにとってもやっぱり読みにくいようで、BKというシンプルなステージネームも使っている。
まず切れ味のよい英語のラップのスキルにびっくり。
それからヒップホップというよりもロックやEDM色の強いミクスチャー的なトラックも印象的で、ちょっとLinkin Parkにも似た感じがする。
北東部ゆえかインド臭がまったくしないサウンドだ。
Borkungはビデオにも出ているトラックメーカーのDJ InaとギタリストのMoses Raiとのトリオで活動しており、リリックにもRap with EDMとかTrying to blend hip hop with a new musicなんて言葉が出てくるので、かなり意図的にこの音楽性を作り上げているのだろう。
そんでサビだ。
I am not giving up
My dreams, my life, my struggle no, not anymore.
I am not giving in
my dreams, my life not anything it’s never too late I know,
Never give up.
夢も人生も戦いもあきらめないぜ!遅すぎるなんてことはないんだ!絶対にあきらめるな!となんだかやたらにポジティブで力強い言葉が並ぶ。
Borkung、熱い男のようだ。
続いての曲をどうぞ。"Fighter"
それにしても、ムンバイのDIVINEのビデオクリップは地元下町を練り歩くやつばかりだったけど、自然豊かなトリプラで育った彼になると、大自然の中を練り歩くのばかりになるってのは、やはりヒップホップの「レペゼン地元」って感覚によるものなんだろうか。
次はもう少し古い2013年の曲。"Journey"
なんか曲名のセンスがどれもちょっとハウンドドッグみたいではあるけれど、気にせず聴いてみてください。
この曲のサビも「The journey goes on till I make it」とあくまでもポジティブ全開。最後のヴァースはヒンディーで歌われているんだが、その前のヴァースの英語のリリックも印象深い。
Hitting hip hop scene of North East city, No retreat, No surrender, in this life of treachery
Misery is a part of it, to admit that my life was ruined
But look at me now haters! I'm smooth like a fluid
Blessed out beat so thick, with blip music, being Aesthetic
Blinked out the whole crowd and Rap Critics
That's why I opted, I opted
「俺は後退も降伏もしない」「憎しむものたちよ(Haters) 俺を見ろ!音楽でぶちかますぜ なぜなら俺は決めたんだから」と、またしても逆境に負けないポジティブな言葉が続く。
ところで、ここで出てくる”Haters”とは誰を指すのだろうか。
そして、このポジティブ野郎ことBorkung Hrankhawlとはどんなバックグラウンドを持った人物なのか。
彼の出身地であるトリプラ州は、古来からトリプラ王国が栄えた土地で、現在では360万人程度が暮らしている(インド全体の人口の0.3%)。
地図を見てみると、インド北東部の「セブン・シスターズ」の中でもバングラデシュに突き出すような場所に位置しているのが分かるだろう。(ミゾラムから東側はミャンマー)
言語的には、周辺地域で使われるベンガル語とは全く異なるコクバラ語を話し、独自の文化を保ってきた地域である。
ちょっとどんなところか見てみよう。
今では博物館になっているかつての王宮。
自然が豊かな地域もあり、野生の象も見られる。
人々はこんな感じ。顔はいわゆるインドの人たちよりも、ぐっと東アジア。
こんな遺跡も。
それでいて、州都のアガルタラはそれなりに栄えているようでもある。
しかしながら、周辺の諸地域同様に、トリプラの多くの人々も、インド社会の中で軽視され、差別的な扱いをされていると感じているようだ。
実際に、近年になっても、デリーやバンガロールといった都市部では、北東部出身の学生が不審な死を遂げたにも関わらず十分な捜査が行われなかったり、差別的な扱いに耐えかねて命を絶ったりという悲惨な事件が何件も発生している。
たまたまこないだ読んだウダイ・プラカーシの「黄色い日傘の女」という小説でも、地元のマフィアにリンチされて死を選ぶ北東部出身の学生の様子が生々しく描かれていた。今もなお、北東部の人々がインドの中心的地域への反発を抱くのには十分な理由と背景があるのだ。
そうした感情を持つ人々の一部は、以前から「トリプラ民族解放戦線(NLFT)」を組織してゲリラ的な活動を行っており、インド政府によりテロ組織にも指定されている。
そう、この地域が豊かな自然と文化にもかかわらず、ツーリストにあまり馴染みがなかった理由の一つとして、各州の独立派テロリストの活動が長く盛んだったことが挙げられる。
長くなってきたので今回はここまで!
今回は正直言って予告編。
次回はこのトリプラの地でポジティブな言葉を吐く男、Borkung Hrankhawlの人となりに迫ってみます!
2018年01月26日
インド北東部でいったい何が!? Death Metal from “7 Sisters States”
前回、「インドのペイガン・メタル」なんていう濃いものを書いてしまったので、今回は軽くて洒落ているものを書こうと思っていたら、ああ、なんたること、また濃くてむさ苦しいネタを見つけてしまった…。
「インド北東部7州」といってピンと来る人は、相当インドが好きな人かインド人くらいだと思うので、まずはインドの地図をごらんください。
この菱形に近いインドの地図の東側のコルカタのさらに東、ちょうどバングラデシュに抉られるようになった東の端の、ちぎれてしまいそうな部分。
ここに、英語で”Seven Sisters”と呼ばれる7つの州がある。
アルナーチャル・プラデーシュ州、アッサム州、メーガーラヤ州、マニプル州、ミゾラム州、ナガランド州、トリプラ州の7つの州のことだ。
いずれの州も北インドのアーリア系とも、南インドのドラヴィダ系とも違うモンゴロイド系の民族が暮らしていて、インドの大部分とはまったく違う文化や言語を持った地域だ。
それぞれの州ごとに、異なる言語や文化があり、さながらこの地域は民族のモザイクのような様相となっている。
気候の面でも、どちらかというと乾燥したインドの大地とは異なり、密林が広がる山岳地帯が多く、メーガーラヤ州のマウシンラムという村は年間で最も雨が降った場所(1985年。26,000mm)とされている。
この地域は中国、バングラデシュ、ミャンマー、ブータンと国境を接していて、私がよくインドに行っていた’90年代後半〜’00年代初頭頃は外国人の立ち入りが禁止されていた、まさしくインドの辺境中の辺境。
ちょっと景色や人々を見てみると、こんな感じだ。
メガラヤ州の絶景
マニプル州の谷間の街
ミゾラム州の州都、アイザウル
ナガランドの人々
アッサムの茶畑。まるで静岡みたい。
それぞれ独自の文化を保った人たちが豊かな大自然の中で暮らすのどかな地域っといった印象を受けるね。
Seven Sistersはインド辺境の古き良き文化が残る純朴な7姉妹といったイメージだ。
ところがしかし。
前回の記事を書いている時に、YoutubeのThrashDeath Assaultという物騒な名前のユーザー(どうやらインドのヘヴィーメタル愛好家のようだ)が、Top 10 Indian Death Metal Bandという動画を挙げているのが目についたので、なんとなく見てみることにした。
それがこちら。
ちゃんとバンド名といっしょに出身都市の名前が出てくる親切仕様になっていて、アタクシのような人間にはありがたい。
へえ、インドにそんなにたくさんデスメタルバンドっているんだ、ムンバイとかバンガロールみたいな大都市、国際都市のバンドがたくさん出てくるのかなあ、と思ったて見ていたら、さにあらず。
耳慣れない地名が次から次へと出てくる。しかも、明らかにモンゴロイド系の顔のメンバーがいるバンドが出てくる出てくる。
紹介されているバンド名、出身都市、出身州を並べてみるとこんな感じ。
1. IIIrd Sovereign アイゾール(ミゾラム州)
2. Gutslit : Mumbai ムンバイ(マハーラーシュトラ州)
3. Plague Throat シロン(メーガーラヤ州)
4. Demonic Resurrection ムンバイ(マハーラーシュトラ州)
5. Godless ハイデラバード(アーンドラ・プラデーシュ州)
6. Sycorax ダージリン(ウエスト・ベンガル州)
7. Agnostic グワハティ(アッサム州)
8. Killibrium ムンバイ(マハーラーシュトラ州)
9. Alien Gods イーターナガル(アルナーチャル・プラデーシュ州)
10. Wired Anxiety ムンバイ(マハーラーシュトラ州)
と、なんと例のインド北東部、セブン・シスターズ出身のバンドが4つも入っている。6位のSycoraxの出身地である紅茶で有名なダージリンも、州こそ違うが地理的にはかなり近いところにあり、じつに10バンド中半分がインド北東部出身ということになる。
9位のAlien Godsの出身地イーターナガルなんて、調べてみたら、人口35,000人のこんな町だ。
いったい何故、こんなにのどかな地方でデスメタルを?
しかも、全部、メロディアスだったりシンフォニックだったりしないゴリゴリの骨太な感じのやつだ。
ひょっとするとこれは選んだ人がこのへんの地方の人で、恣意的なランキングなんじゃないかと、今度は、www.toptens.comというサイトの「Top 10 Metal Band in India」という記事を見てみた。
Top 10といいながら144位までランキングされていて、まずそもそもインドにそんなにメタルバンドがいるってことに驚いた(最後のほうは「High School Band」とかも出てくるからなんとも言えないが)んだが、このランキング(デスメタルに限らない)でも、東北7州のバンドはTop10入りこそ逃したものの、100位までで21組もいる。
参考までに書くと、セブン・シスターズの人口は4,500万人。インド全土の人口の3.7%に過ぎない。州のGDP、一人当たりGDPも比較的低い州ばかりだ。
豊かな自然や独自の文化があり、楽器なんかもそうそう流通してなさそうな(買うお金だってバカにならないし)これらの州で、いったいなぜデスメタルが流行っているのか。
ナガランドなんかは、昔は首刈りの風習があって、一人前の大人の男と認められるには余所者の首を刈ってこないといけない、っていう習慣があったところなので、なんかこう、残虐性に惹かれる文化があるのだろうか。
それとも、この地域は歴史的にゲリラ的な独立闘争運動が盛んだったことから、インド政府に隷属せざるを得ない怒りのようなものが蓄積されているのだろうか。
ひとまず、どんなバンドがいるのか見ながら考えてみようか。
とはいえ、あんまり動く映像があるバンドが多くないんだよなあ。
まずは、インドのデスメタルバンド10選の3位、メーガーラヤ州のPlague Throatをどうぞ。
このバンドはドイツのフェスティバルでの演奏経験もあるようだ。
しっかし、デスメタルとはこういう音楽と分かっていながら、どうしても酒を飲みすぎて猛烈な頭痛と吐き気を催し、トイレでのたうちまわっている状態のように聴こえてしまって仕方がない。
デスメタルだなあ!とは思うけど、あまりにも類型的すぎてなんとも言えないなあ。まあ、それだけ良くできているとも言えるが。
続いては、インドのデスメタルバンド10選の9位、アルナーチャル・プラデーシュ州イーターナガル出身のAlien Godsのコルカタでのライブの様子がこちら。
あんなのどかなところ出身なのに、なぜこんなことに。
田舎のお母さん、心配してるよ。まあそれ言ったらSlipknotの故郷のアイオワだってど田舎なわけだから言いっこなしかもだけど。
今度はデスメタルから離れまして、インドのメタルバンド100選から18位のバンド、アッサム州のXontrax.
音は激しいけど、なんか短髪のメンバーがすごく真面目そう。
邪悪な感じがあんまりしないな…。もっともてそうな音楽やれよ、って言いたくなる感じ。
続いて、インドのメタルバンドベスト100の41位、ミゾラム州のComora、お聴きください。
おお、ちゃんとした(?)ミュージックビデオだ。
こちらもサウンドは激しいけど、なんかすっげえ朴訥。山の中で民族衣装を着て演奏してる…。なぜこのシチュエーション、この格好でこの音楽なのか。
続いて、メタルバンドベスト100の58位、首刈りがかつて行われていたというナガランドのIncipitというバンド。
これ、メタルじゃないじゃん。なんかジャーニーみたいな爽やか感じのロック。
メンバーやっぱり朴訥としてるなあ。
うーん、ランキング下位のバンドになってくると、朴訥ばかりが気になって、なにが彼らをメタルに駆り立てているのか、映像を見てもよく分からない。
ここから先は完全にアタクシの推測。
高野秀行の「西南シルクロードは密林に消える」って本によると、2002年ごろのナガランド州ディマプルという町の様子はこんなふうだったという。
何よりも意外だったのは、その若者たちのファッションだ。Tシャツか派手な柄のシャツをだらっと着流し、下は膝小僧が見え隠れするくらいの長さのハーフパンツ。頭にはバンダナを巻くかアポロキャップをかぶり、素足にジョギングシューズをはいている。いわゆるヒップ・ホップ系のストリート・ファッションというやつだ。
女の子もまちがってもサリーなど着ておらず、茶髪が多く、服装もTシャツにジーンズなどで、これまた日本の今時の若い子と変わらない。
(中略)
「ナガ人はクリスチャンだから、インド人よりずっとアメリカナイズされているんだ」
そう、インド全体では2%に満たないキリスト教徒だが、セブン・シスターズ諸州では人口の2割ものクリスチャンがいる。人口規模が圧倒的に多いアッサム州にヒンドゥー教徒が多いので、地域全体では2割にとどまっているが、ナガランド、ミゾラムでは9割、メーガーラヤでは7割以上がクリスチャンだ。
歴史的にヒンドゥー文化圏外だったこの地域では、もともとはヒンドゥー信仰よりもアニミズム(精霊信仰)が盛んだった。
そこに、西洋の宣教師たちがこぞって布教に訪れたことで、住民の多くがクリスチャンに改宗し、現在に至っている。
セブン・シスターズ諸州では、キリスト教への改宗によって精神的な面での欧米化が早くから進んでおり、かつ文化的にもいわゆるインド的なものへの共感がしづらい文化的背景であることから、ボリウッドの影響も少なかったと思われる。
おそらくだが、インターネットの発展などで、同時代の欧米の文化に接することができるようになったとき、セブン・シスターズの若者たちは、インドのポップカルチャーであるボリウッド的なものよりも、アメリカを始めとする欧米の文化のほうに魅力を感じたのではないだろうか。
その中の一部の若者たちはデスメタルのような激しいサウンドに惹かれ、結果的にインドの他の地域よりも、デスメタルバンドの数が顕著に多い、ということになった、とは言えないだろうか。
ちなみにこの地域、他国と国境を接する軍事上の要衝でもあるため、道路や電気といったインフラは意外と整備されているようで、楽器(エレキギターとかね)の入手や演奏は以外と容易だったのかもしれない。
とはいえ、やっぱりこの推論にはちょっと無理があるような感じもする。
こうなったら、便利なこのご時世、SNSを通じて直接彼らに聞いてみたいと思います。
いったいどんな返事が返ってくるのか、乞う御期待!
2018年01月15日
Rolling Stone Indiaが選ぶ2017年ベストミュージックビデオ10選
Rolling Stone Indiaが2017年のベストアルバムに続いて、2017年のベストミュージックビデオを発表した。(記事はこちら)
選考基準は、映画の映像をそのまま使用した挿入歌・主題歌は除く楽曲ということのようだ。
ミュージシャン名と都市・ジャンルを添えて紹介します。
1. Run Pussy Run: “Roaches” プネー ロック
同じくプネーのLMB Production所属の映像作家Anurag Ramgopalによる作品とのこと。
Rolling Stone Indiaによると「freak funk group」だそうで、他の曲もリズミカルでセンス良さげな歌と演奏のバンドだ。
ゴキブリっていえば、昔コルカタの安宿のドミトリーで、バックパックにものすごく大きなゴキブリがとまってたのを見つけて、サンダルで横から引っぱたいたら、びゅーんって飛んでって、少し離れたところの欧米人のリュックにくっついた。
荷物の持ち主が連れと談笑してたので、言いだすのもなんだな、と思って様子を見てたら、しばらくして気がついて「ギャーオ!コックローチ!」て大騒ぎしてた。
ゴキブリって国籍を問わずこの扱いなんだなあと思ったものです。
記事に、この昆虫が苦手な人は見ないでね、みたいなことが書いてあったけど、インドでもゴキブリ嫌い、虫嫌いって人がいるんだなあ、としみじみ。
2. Blushing Satellite: “Who Am I?” バンガロール ロック
アイデンティティの危機をテーマにしたビデオとのことで、正直、他の国のミュージックビデオで似たようなものを見たことがあるような気がするけど、こういう「イギリスかアメリカのバンドみたいな内省的なロックのサウンドで『自分とは何者か』という問いかけを歌う文化圏」にインドも入っているのだなあ、と再びしみじみ。
3. The Local Train: “Khudi” デリー ロック
ヒンディーロックと言っているけれど、言葉がヒンディー語なだけでサウンドは英米風の爽快なロックだ。
バイクが好きで自分のバイクでいろんなところを旅したいと思っているデリバリーのアルバイトが、仕事の合間に聞いたこのバンドの音楽と、ちょっとした事故をきっかけに、仕事を投げ出して自由に走り始める、というストーリーと思われる。
曲のブレイクと映像を合わせる小技も効いている。
クオリティの高い映像はVijesh Rajanという映画監督による作品で、India Film Project Awardsのミュージックビデオ部門で‘Platinum Film of the Year 2017’ を獲得したとのこと。
4. Parekh & Singh: “Ghost” コルカタ ポップ
コルカタのバンドはこのブログ始めて以来初なのではないだろうか。とはいえ無国籍風の幻想的ポップソング。
Peacefrogっていうロンドンのレーベルと契約しているこのバンドは、すでに日本での注目もそれなりにされているようで(ごめんよおじさんこの手の音楽に詳しくなくて)、こちらのサイトに詳しい。
なるほど、アタクシ映像にも詳しくないのだけど(何にも詳しくない笑)、このビデオはウェス・アンダーソン(ロイヤル・テネンバウムズとかダージリン急行の人か!)監督へのオマージュとのこと。
Rolling Stone Indiaによるとペットの犬を失った少女がいかに悲しみを乗り越えるかというストーリーとのこと。見ていて全然気づかなかった。(最初に持ってるのが犬の首輪だったのね)
自分の理解力の無さにだんだん心配になってきた…。
5. Pakshee: “Raah Piya” デリー フュージョンロック(インド音楽とのフュージョンね)
Rolling Stoneにしては珍しくインド色の強いバンドを扱っている。
ジャズ、フュージョン風な演奏とインド古典なヴォーカルの融合、と思っていたら途中でラップも入ってきてビックリ。
二人のヴォーカルはヒンドゥスターニーとカルナーティックというインドの北と南それぞれの伝統音楽のスタイルで歌っている。
映像に関しては、きれいだけど単にいろんな自然の中で演奏してるだけなんじゃ、という気がしないでもない。
それにしてもインドのバンドは6弦ベースが好きだなあ。
ベストアルバムと同様、映像のほうも極力インド的要素(ボリウッド的に大勢で舞い踊るみたいな)を排した、欧米的アーティスティックな作品が目立つセレクトとなっている。
長くなりそうなのでまずはこのへんで!















