インドと日本

2021年05月22日

翻訳熱望! "Indian Migrants in Tokyo" インド人は日本でどう暮らしているのか?


英語の本を読むのが遅いので、紹介するのがすっかり遅くなってしまったが、Megha Wadhwa著の"Indian Migrants in Tokyo: A Study of Socio-Cultural, Religious, and Working Worlds"がめっぽう面白かった!
IndianMigrantsInTokyo
 
この本はイギリスの学術系出版社Routledgeの'Studies on Asia in the World'シリーズの一冊として刊行された、在日インド人に関する研究書である。
なんて書くと生真面目で小難しい本を想像してしまうかもしれないが、この本はとにかく読みやすくて面白い。
自分はアカデミックな立場の人間ではないので、学術的な本というと「本来は心躍る面白いテーマでも、平板かつ無味乾燥に書かなきゃいけないもの」という偏見を持っていたのだが(一般書とは違うお作法があることは存じ上げております…)、それはこの本にはまったくあてはまらない。

"Indian Migrants in Tokyo"の内容を簡単に説明すると、「日本に5年以上暮らしているインド人たちへの聞き取り調査をまとめたもの」ということになる。
だが、その内容はインタビュー記録や考察の羅列にとどまらない。
本書は、回答に協力してくれた人々や、著者本人(彼女も5年以上日本で暮らしている「当事者」の一人だ)の人生観と悲喜こもごもが込めらた、読みものとしても非常に面白いものなのだ。
ところが、洋書の研究書/専門書であるこの本はバカ高く、ハードカバーの書籍で16,510円、Kindle版でも6,510円もする(2021年5月時点)。
いくら面白いとはいえ、さすがに個人で買うのはちょっと厳しい代物である。
(幸運なことに、私はたまたま某大学の図書館で借りることができた)

率直に言って、この興味深い本を研究者だけに独占させてしまうのはもったいない。
日本語への翻訳と、もっと安価に読めるようになることを強く期待したいのだが、今回はその時の楽しみをうばわない程度に、この本の内容を紹介したい。


著者のMegha Wadhwaはデリー出身。
世界一周旅行を経験したという祖母の影響で日本に興味を持ち、日本企業での勤務を経て、上智大学のPDとして在日インド人の研究を始めた。(現在はベルリン自由大学に研究者としての籍を置いているようだ)
"Indian Migrants in Tokyo"はその7年以上におよぶ研究の集大成で、この本は、我々にとって遠いようで近く、近いようで遠い東京のインド人コミュニティを、同胞の目から覗き見るという、稀有な体験ができるものになっている。

以下、私が面白いと思った部分をいくつかのトピックとして紹介するが、これはこの本の章立てに沿っているわけではなく、独断で興味深いと感じたところをかいつまんだものだということをお断りしておく。



在日インド人は、宗教や言語や階層といったサブ・コミュニティではなく、「インド人」というアイデンティティの大きいコミュニティとしてまとまりがち!

ご存知の方も多い思うが、インドはひとつの国家でありながら、言語、民族、文化、宗教など、多様すぎるほどの多様性に溢れている。
こうした多様性は我々日本人には想像しづらいものだが、インドをひとつの国ではなく「ヨーロッパ」や「東南アジア」と同じような「地域」だと捉えると分かりやすい。
つまり、インドに28ある州が、国家と同じくらいの独自性を持ち、他と区別できる固有の文化や言語を持っているのだ。
さらに、地域や言語によって「ヨコ方向」に分けられるだけではなく、インドには、カーストや経済状況による「タテ方向」に分けられる階層も存在している。

こうした特性から、英米やドバイのようなインド系住民が多く暮らす国では、インド人たちは母国で属していた集団ごとに、別々のコミュニティを形成する傾向があるという。
(2015年の集計では、アメリカには450万人、イギリスには180万人、UAEには200万人のインド人が暮らしている)
ところが、日本で暮らすインド人は、増え続けているとはいえ35,000人程度で、そのうち東京とその近郊に暮らしているのは20,000人ほどに過ぎない。(いずれも2018年のデータ。地域的にはとくに江戸川区、江東区に多い)
こうした事情から、日本で暮らすインド人たちは、母国での地域、言語、信仰、階層といった壁を超えて、「インド人」としてひとつのコミュニティを作る傾向があるそうだ。
在日インド人たちのこんな言葉がそれを象徴している。

「私はアムリトサル(インド北西部パンジャーブ州)出身のシク教徒ですが、日本で最初にできたインド人の友達はオリッサ(インド東部)から来た女性でした。しかも私はいまだに彼女の宗教を知りません。結婚して東京に引っ越してきたとき、最優先だったのはインド人(の友達)を見つけることでした。(…中略…)夫には男友達が何人かいましたが、私は女友達を探していたんです。(…)その後、交友関係が広がって、今ではシク教徒も、そうでない人も、インド人の友達がたくさんいます」


アムリトサルとオリッサ州(現オディシャ州)はまったく別の言語や文化を持つ地域で、オリッサ出身の友人はおそらくシク教徒ではないはずである。
インド国内やインド人の多い都市に暮らしていたら、この二人は知り合うことすらなかったかもしれない。
また別の在日インド人はこう語る。

「ドバイに住んでいたときは、インド人がたくさんいたので、私は付き合う友だちを選ぶことができました。でも日本ではそんなに選択肢はありません。率直に言うと、(東京では)ドバイやインドにいたら絶対に付き合わなかったような友人も何人かいます。でもここでは、選んでなんかいられないんです。幸いなことに彼らのことを好きになることができましたが、最初のうちは、必要だったから付き合っただけでした。とても孤独だったので、誰もいないよりはましだったんです」

日本にいくつもある言語・地域によるインド人グループ(ベンガル人とか、タミル人とか)は、別のコミュニティ出身のインド人も歓迎して活動しているという。
はからずも、日本での暮らしが、彼らに「インド人」というより大きな帰属意識を感じさせているのだ。



インド人が日本の暮らしで困ること

インド人が日本で暮らすうえで困ることのトップ3は、「言語」「住居」「食生活」。

とくに言語に関しては、古い時代に移住してきた人ほど苦労が大きかったようだ。
彼らのほとんどが流暢な英語を話すが、日本人には英語すら通じないことが多かったからだ。
今では日常生活での言葉の問題は比較的少なくなってはきたものの、こと仕事の場面では、今でも言語面で苦労することが多いという。
そりゃそうだ。
ビジネスで使う日本語は、日本人でも難しい。
言語も文化も全く違うインド人が、話し言葉とは全く違う「平素は格別のご高配を賜り〜」なんて文章を読んだり書いたりするのは苦痛以外の何ものでもないだろう。
(というか、この手のビジネス文はほとんどの日本人にとっても苦痛でしかないと思う)
そのため、海外でのキャリアを追求するインド人の多くは、せっかく日本に好印象を持っていても、日本に見切りをつけて、英語が通じる欧米やシンガポールなどに渡ってしまうという。
(ちなみに日本特有の職場カルチャーについては、合う人も合わない人もいるようだ)
今では世界中に広く知られている通り、インドはITなどの分野で多くの優秀な人材を輩出している国である。
彼らが日本に定着しないということは、日本がそのまま世界市場から遅れをとってゆくことを意味する。
こうした理由で日本を離れる才能ある外国人はきっとインド人以外にも多いはずだ。
日本人としてなんとも耳が痛い話である。


「住居探し」については想像の通り。
ここでも日本の排外主義的な側面(もう少しマイルドに言うなら、外国人を苦手に感じる側面)が彼らの壁となっていて、読んでいてなんだか申し訳ない気持ちを覚える。

興味深いのは(と言っては申し訳ないが)、食に関する問題だ。
インドにはベジタリアンが多く、またノンベジタリアンであっても、日本で一般的な牛肉や豚肉を食べる習慣はほとんどない。
魚を食べることも沿岸部など一部の地域を除いては一般的ではないし、味付けも、出汁や醤油がベースの日本と、マサラの国インドでは全く異なる。
インド人が日本で食べ物に苦労していることは想像にかたくないが、その解決方法はなんともユニークだ。
ベジタリアンの間では、食べられるものが見つからないときに、マクドナルドでパティ抜きのハンバーガーとポテトフライを頼んで、バンズにポテトフライを挟んで食べるというライフハックが浸透しているという。
それが美味しいかどうかは別にして、彼らのたくましさと工夫(いわゆるジュガール〔Jugaad〕の精神)には、いつもながら驚かされる。



インドと日本と男と女

インド人から見た日本の男性像・女性像は、奇妙に映ることもあるようだ。
かつて大阪のインド総領事を務めていたVikas Swarup(ヴィカス・スワループ。映画『スラムドッグ・ミリオネア』の原作の著者としても知られる)の"Accidental Apprentice"には、日本人である登場人物の亡き妻が夫に対して非常に献身的だったという記述が出てくるし、現代インドのベストセラー作家Chetan Bhagat(『きっと、うまくいく〔3 Idiots〕』や"2 States"といったボリウッド映画の原作者でもある)の小説には、日本企業の男性が女性社員を使用人のように扱う場面が出てくる。
インドも保守的な伝統の残る国だが、高い教育を受けてきたインド人にとっては、日本こそ今なお男性上位の保守的な文化の国という印象があるのかもしれない。(これは、この本には関係のない話)

"Indian Migrants in Japan"によると、インド人から見た日本人男性の印象は「会話が長く続かない」「ハードワーキング」「家族より仕事を優先」といったものだそうで、日本人女性には「いつも笑顔」「たくさん食べるのにスリム」「見た目にすごく気を遣ってる(目は私の方が大きいけど)」と感じているようだ。
日本人女性に対しては、インドの女性から「『カワイイ』に囚われることをやめて、もっとリーダーシップを発揮すべき」という指摘もあったが、男性からは「インドの女性より話しやすいし、お酒も一緒に飲めて良い」(インドでは大っぴらに飲酒する女性はまだまだ少ない)なんていう意見も。
ちなみにインド人女性から見ると、「職場ではインド人女性のほうが強いけど、家庭では日本人女性のほうが強い」とのこと。
これには全面的に同意!



日本に来たインド人はどう変わる?

男と女をめぐる話題は続く。
貧富の差の激しいインドでは、中流階級以上の家庭では使用人を雇うことが一般的だが、日本では家政婦は非常に高くつく。
そのため、ほとんどの家庭は夫婦だけでやりくりしなければならない。
このことは悪いことばかりではなく、「結果として、夫が家事や子育てに参加してくれるようになって良かった」という女性からの意見もある。
結婚早々に日本で暮らすことになったある主婦は、インドに帰ったら夫の家族と一緒に暮らさなければならないので、年長者に従わなければならないという恐怖感と、まわりにたくさんの人がいる環境で暮らせる期待の両方を感じているという。

様々な違いがあるとはいえ、インドの人たちにとっても、日本の社会が便利で安全であることや、時間に正確であることは、総じて高く評価されている。
日本で暮らした結果、インドに帰っても時間の正確さを求めるようになってしまう人もいるという。
面白かったのは、日本文化の影響を受けて、在日インド人社会では、インド的な部分と日本的な部分が奇妙に混ざってしまうこともあるという話。
例えば、日本で行われているインドのお祭りだと、スケジュール通りに進まないという時間にルーズな部分はインド的でありつつ、行列にきちんと並ぶところは日本的、なんてこともあるそうだ。

それにしても、この本に出てくるインド人たちの日本社会に対するコメントはいちいち面白い。
たとえば、「日本では社会性と協調性が尊重されているが、インドでは個人と一人一人の努力が重視されている」。
これには同意する人が多いだろう。
ビジネスについては、「日本人は6ヶ月で決めて1ヶ月で仕上げるが、インド人は1ヶ月で決めて、6ヶ月かけて仕上げる」だそうで、これも仕事文化の違いを見事に言い当てている。



在日インド人と信仰

インド人は総じて信仰に厚い。
また、祈りや瞑想といった精神的な活動を大切にしている人たちも多い。

著者もまた、日本での生活の中で祈りの場を求めて、まず仏教のお寺や神道の神社、キリスト教の教会を訪ねてみたという。
しかし、そこにインドの寺院のような祈りや心の平安を見出すことができず、当時中野にあったというヒンドゥー寺院を訪れることになった。
(しかしそこは彼女が思っていた「寺院」とは違って…と話はさらに続くのだが、今は割愛する)
こうした記述からは、日本に暮らすインド人たちが、精神文化を非常に大事にしていることが分かるし、寺院や教会が、宗教的な意味だけでなく、社会的、文化的な集会所としての意味も持っているという考察もとても興味深い。

彼らにとって、信仰とは、自身と神とを繋ぎ人生の指針を示すだけではなく、家族やコミュニティの絆であり、アイデンティティでもある。
とくに、異国の地で子どもを育てる人々にとっては、自身の文化を引きついてゆくためにも、信仰の伝統を守ることは大きな意味を持つのだ。

この本では、ヒンドゥー教、イスラム教、シク教、ジャイナ教、キリスト教を信仰するインド人たちが、ここ日本でどのように祈りの場を設け、信仰生活を守って来たかについて詳細に記されているが、とくに興味深いのは、やはりヒンドゥー、シク、ジャイナ教といったインドで生まれた宗教の話だ。

なかでも、ターバンを巻いた姿ゆえに、日本では良くも悪くも目立ってしまうシク教徒たちの日本社会での奮闘は印象的だ。
彼らは、ときに警察に怪しまれたりしながらも、はじめは仲間が経営するレストランを借りて祈りの場を確保し、やがて専用の寺院を設けるに至る。
しかし、日本でシク教徒が戒律を守って生きるのは大変だ。
髪の毛やヒゲを伸ばすという戒律は上司の理解が得られないし、男の子が女の子と間違われるのをいやがって、髪を切りたがることもあるという。
日本で育った子どもたちが野球やサッカーのチームに入るためにターバンを巻くのをやめたり、逆にチームをやめてターバンを巻き続けることを選ぶケースもある。
こうしたトラブルだけではなく、電気店に務めるシク教徒が、そのターバン姿ゆえに人気となって、おおいに売り上げに貢献しているという例もあるというから、在日インド人の人生もいろいろだ。

各宗教の説明も丁寧で、さまざまな宗教施設での祈りや祭礼の様子も詳しく書かれており、本書はインドの宗教入門としてもよくできている。


本当はまだまだ書きたいのだが、もうずいぶん長くなったし、この本がいつか翻訳されたときの楽しみを奪ってしまうのは本意ではないので、このあたりにしておく。

最後まで面白く読ませてもらったが、できればもっと詳しく書いてほしかった部分もなかったわけではない。
ぜいたくを言えば、在日インド人の暮らしや社会に、他の南アジア諸国(ネパール、パキスタン、バングラデシュなど)出身の人々がどのように関わっているのかも知りたかった。
北インドで広く話されているヒンディー語とパキスタンの公用語であるウルドゥー語は極めて近い言語だし、インドの西ベンガル州とバングラデシュはいずれもベンガル語を公用語としている。
ここ日本で、南アジア出身者たちの国境を超えた営みが、どの程度、どのような形で行われているのか、そのあたりも今後の研究に期待したいところだ。

それから、取り上げられている移民の人選が、ホワイトカラーに偏っているように思えたのも少々残念だった。
できれば、我々が多く接するインド料理店で働く人々などのライフヒストリーも取り上げてもらえたら、より興味深い内容になったのではないかと思う。

とはいえ、これらはこの本の充実度から考えれば、あくまで些細なこと。

もう一度くりかえすが、この"Indian Migrants in Tokyo"はとにかく面白く、興味の尽きない本だった。
小林真樹さんの『日本の中のインド亜大陸食紀行』とか、高野秀行さんの『移民の宴 日本に移り住んだ外国人の不思議な食生活』、室橋裕和さんの『ルポ新大久保 移民最前線都市を歩く』と同じように、異文化に興味のある人だったら誰でも面白く読めること間違いなし。
日本で暮らすインド人の目線から見た我々の社会の姿に、はっとさせられることも多かった。
この本が翻訳され、日本でも多くの人に読まれるようになることを、祈ってやまない。




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goshimasayama18 at 13:39|PermalinkComments(0)

2019年06月08日

ロックバンドKrakenがアンダーグラウンドラッパーを従えて初の(?)コスプレツアーを実施!


22年前に南米を旅行していた時のこと。
確かアルゼンチンだったと記憶しているが、私が乗っていたバスに、いかにもハードコア・パンクとかをやっていそうな、革ジャンを着てタトゥーの入った、いかつくてコワモテの男が乗車してきた。
絡まれたら嫌だなあと思いながら彼の様子を伺っていると、彼はおもむろにカバンの中から、ローマ字で"Otaku"と書かれた日本のアニメの絵が表紙の雑誌を取り出し、夢中になって読み始めた。
当時(今もかもしれないが)、日本ではアニメなどのオタクカルチャーは、ハードコア・パンクや不良文化とは真逆のイメージだったので、彼の好みの振れ幅の大きさに、ものすごく驚かされたものだ。
そういえば、ニューヨークのハードコア・バンドSick Of It Allが、インタビューで、自分たちがいかにドラゴンボールが好きか、どれだけドラゴンボールに衝撃を受け、夢中になったかを熱く語っているのを読んだのも同じ頃だったように思う。
硬派で激しいハードコア・パンクと、小学生のときに読んでいたマンガの印象がどうしても重ならなくて、やはり強烈な違和感を感じたものだった。

何が言いたいのかというと、アニメに代表される日本のオタクカルチャーは、じつは海外ではサブカルチャーのひとつとして、コアな音楽ジャンルと結びついて、面白い受容のされ方をしているのではないか、ということである。

さて、話をいつも通りインドに戻すと、今回の記事のタイトルは「ロックバンドKrakenがアンダーグラウンドラッパーを従えて初の(?)コスプレツアーを実施」というもの。
何を言っているのか、わけが分からないという方も多いのではないかと思う。

解説するとこういうことだ。
かつてこのブログでも紹介した、デリーを拠点に活動するマスロック/プログレッシブメタルバンドKrakenは、ジャパニーズ・カルチャーに大きな影響を受けたグループである。
彼らのファーストアルバム"Lush"では、複雑でテクニカルなロックサウンドに日本文化の影響をミックスしたユニークな世界観を披露しており、Rolling Stone India誌で2017年のベストアルバム第7位に選ばれるなど、音楽的にも高い評価を受けている。


そんな彼らがインド各都市で行う今回のツアーは「コスプレツアー」というかなりユニークなもの。
彼らのTwitter曰く、「初のミュージック&コスプレツアー!最高のパーティーを開くために、音楽ファンとコスプレファンに橋渡しをする!」とのことだそうだ。

こうした「コスプレライブツアー」が世界初なのかどうかは分からないが、もしコスプレ発祥の地であるここ日本で前例があったとしても、アニソン歌手とか、声優のコンサートなのではないかと思う。
Krakenの音楽は直接アニメと関連しているわけではなく、サウンドもプログレッシブかつマスロック的なもので、このコスプレライブがいったいどのような雰囲気になるのか、想像もつかない

しかも、今回彼らがツアーのサポートに起用したのは、ロックバンドではなく、ヒップホップアーティストのEnkoreとHanuMankind.
ラッパーのパフォーマンスにコスプレをした観客がいるというのはもはやシュールでさえある。
インディーシーンが発展途上のインドでは、異なるジャンルのアーティスト同士の共演も珍しくはないが、プログレッシブ・メタルとコスプレとヒップホップの融合と言われると、もう全然わけがわからない。
(ちなみに前回のKrakenのツアーのサポートは、このブログでも紹介したマスロックバンドのHaiku-Like Imagination. 音楽的にはかなり近いバンドだった)

サポートアクトの一人、Enkoreはムンバイのラッパーで、2018年に発表した"Bombay Soul"がRolling Stone Indiaの2018年ベストアルバムTop10に選ばれるなど、批評家からの評価も高いアーティストだ。

その音楽性は、昨今インドで流行しているGully Rap(インド版ストリートラップ)のような前のめりなリズムを強調したものではなく、メロウでジャジーな雰囲気のあるものだ。
(インド各地でこの傾向のアーティストは少しづつ増えてきており、代表的なところでは、ムンバイのTienas, バンガロールのSmokey the Ghost, ジャールカンドのTre Essなど。デリーの人気トラックメイカーSezのサウンドも同様の質感を強調していることがある)
彼のようなアンダーグラウンド・ヒップホップは、音楽的にはKrakenが演奏するプログレッシブ・メタルとは1ミリも重ならないように思えるが、ここにジャパニーズ・カルチャーからの影響という補助線を引くと、意外な共通点が見えてくる。
メロウで心地よいビートを特徴とするチルホップ/ローファイ・ヒップホップ(ローファイ・ビーツ)は、日本のトラックメーカーである故Nujabesが創始者とされている。
彼の楽曲は深夜アニメ『サムライ・チャンプルー』で大々的にフィーチャーされ、ケーブルテレビのアニメ専門チャンネルを通して世界中に広まった。
その影響もあって、今でもチルホップのミックス音源を動画サイトにアップしたときには日本のアニメ風の映像を合わせるのがひとつの様式美になっている。
例えばこんなふうに。 
意外なところで、ヒップホップはアニメカルチャーと繋がっているのだ。



そしてもう一方のサポートアクトであるHanuMankindがまた強烈だ。
ヒンドゥー教の猿の神ハヌマーンと人類を意味するhumankindを合わせたアーティスト名からして人を食っているが、彼のラップの世界感はさらに驚くべきもの。

メロウでローファイな質感のこの曲のタイトルは、なんと"Kamehameha". 
そう、我々にも馴染深いあの「ドラゴンボール」の「かめはめ波」である。 
ビートが入ってきた瞬間に、「孫悟空」という単語からフロウが始まり、続いてSuper Sasiyan(スーパーサイヤ人)という言葉も耳に入ってくるという衝撃的なリリック。
とはいえ彼のサウンドにはドラゴンボール的なヒロイズムや派手さではなく、あくまでチルなビートに乗せて「カメ!ハメ!ハ!」のコーラスが吐き出される。
いったいこれは何なのだ。 

さらにはこんな楽曲も。
その名も"Super Mario". トラックはそのまんまだ!
 
この曲も、リリックにはゲーム、ドラゴンボール、クリケットなどのヒップホップらしからぬネタが盛りだくさん。

"Samurai Jack"と名付けられたこの曲はジャジーなビートが心地よい。

ここでもリリックではギークっぽい単語とインドっぽい単語が共存している不思議な世界。これは、インドで実を結んだナードコア・ヒップホップのひとつの結晶という理解で良いのだろうか?

それにしても、KrakenとHanuMankindとEnkore、いくら日本のサブカルチャーという共通点があるとはいえ、そもそもプログレッシブ・メタルバンドがラッパー2人とツアーをするというところからして意外というか想像不能だし、しかもコスプレの要素も入ってくるとなると、もうなんだかわけがわからない。


わけがわからないとはいえ、まるで日本のバンドブームの初期のように、インディーミュージックシーン全体がジャンルにこだわらず盛り上がっている様子はなんだかとっても楽しそうだ。
そういえば、いまやインドNo.1ラッパーとなったDivineがインドの「ロックの首都」と言われている北東部メガラヤ州の州都シロンで行なったライブのサポートは地元のデスメタルバンドPlague Throatだった。
バンガロールでは先日ラッパーのBig Dealとやはりブルータル・デスメタルバンドのGutSlitのジョイントライブがあったばかりだ。
なんだかAnthraxがPublic Enemyと共演し、映画"Judgement Night"のサントラでオルタナティブロックとヒップホップのアーティストたちがコラボレーションした90年代前半のアメリカを思い起こさせるようでもある。 (古い例えで恐縮ですが)
特定のジャンルのファンではなく、インディーミュージック/オルタナティブミュージックのファンとしての連帯感が、インドには存在しているのだろうか。
この混沌とした熱気は、ジャンルが細分化されてしまった日本から見ると、正直少々
うらやましくもある。

以前行ったインタビューでは、Krakenのメンバーは日本のヒップホップにも影響を受けたことを公言しており、Nujabes、Ken the 390、Gomessらの名前をフェイバリットとして挙げている。
ギター/ヴォーカルのMoses Koul曰く、次のアルバムは前作"Lush"とは大きく異なり、ヒップホップの要素が大きいものになるとのことで、いったいどうなるのか今から非常に楽しみだ。

それにしても、インドの音楽シーンにおける「ジャパニーズ・カルチャー」の面白さは、いつも想像を超えてくる。
先日、「インドで生まれた日本音楽」J-Trapの紹介をしたときにも感じたことだが、もはや日本文化は日本だけのものではないのだ。
また、インドでのK-Popブームと比較すると、韓流カルチャーがポップカルチャー(大衆文化)として受容されているのに対して、日本のカルチャーはサブカルチャー(マニア文化)として受け入れられているというのも面白い。
(参考:「インドで盛り上がるK-Pop旋風!」

今後、日本で生まれた要素が、インドでどんな花を咲かせ、実を結ぶのだろうか。
ジャパニーズ・カルチャーをマサラの一つとして、全く新しいものがインドで生まれるってことに、ワクワクする気持ちを抑えられない。
これからも「インドの日本文化」紹介していきます!


(インドのコスプレ文化といえば、ムンバイなどの大都市だけでなく、北東部ナガランド州でも異常に盛り上がっているようだ。「特集ナガランドその3 ナガの地で花開く日本文化 ナガランドのオタク・カルチャー事情とは?」

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2019年06月01日

インドならではのGully Cricket Rap!そして日本ではなくインドで生まれたJ-Trapとは何か?


映画"Gully Boy"のヒットで、今やムンバイだけではなくインドを代表するラッパーとなったDivine.
最近ではPumaの新しい広告に起用されて、"SockThem"という楽曲でラップを披露している。
(インド映画史、音楽史に残るヒップホップ映画"Gully Boy"についてはこちらから「映画"Gully Boy"のレビューと感想」)
 
クリケットはインド最大の人気スポーツで、スター選手は30億円以上の年収を手にする国民的ヒーロー。
そのクリケットのインド代表選手でもあるVirat Kohli、女子クリケット選手のSushma Vermらをフィーチャーした、インドならではのコマーシャルビデオだ(ちなみに東アジア系の顔立ちの男女は、北東部マニプル州出身の女子ボクシングのチャンピオンMary Komと、同州出身のサッカー選手Dheeraj Singh Moirangthem)。
国民的スポーツであるクリケットを、ヒップホップに代表されるストリートカルチャーにも通じる「クールなもの」として扱ったこのCMは、インドでもスポーツウェアをファッションのひとつとして定着させようというPumaの戦略の一環として作成されたものだ。
(関連記事:「インドの音楽シーンと企業文化! 酒とダンスとスニーカー、そしてデスメタルにG-Shock!」

ここで起用されたDivineは、ヒンディー語で「路地」を意味する'Gully'という言葉をインドの「ストリート」を象徴するものとしてヒップホップに導入した先駆者でもある。
大衆スポーツであるクリケットもまたあらゆる場所でプレイされており、路地のような広いスペースがない場所でも、ルールが簡略化された'Gully Cricket'なるものが楽しまれている(ヴァラナシのガンジス河のほとりの、火葬場のすぐ近くで子供達がクリケットに興じているのを見たときにはさすがに驚いた)。
つまり、この曲は、'Gully'というインドのストリート文化を象徴する言葉を軸にしてヒップホップとクリケットをつなげるという、非常にインド的かつ今日的なものになっているのだ。
"SockThem"というスペースのないタイトル表記も、ハッシュタグ文化や検索しやすさを意識した、とても今日的なものと言えるだろう。

"SockThem"のトラックを手がけているのは、Karan Kanchan.
ムンバイのヒップホップシーンで数多くのトラックを手がけている22歳の新進クリエイターだ。

代表的なところだと、"Gully Boy"の主人公のモデルになったNaezyが2017年にリリースした"Aane De"のトラックは彼によるもの。
当時若干20歳!
ムンバイのヒップホップシーンが若い才能によって活気づいていることが分かる。

Karan Kanchanの名前を最初に知ったのは、インドの媒体で彼がJ-Trapアーティストとして紹介されていたのを読んだ時だった。
Trapというのは、ヒップホップから派生した、あの重低音を強調した音楽ジャンルのトラップのことである。
では、接頭語の'J'は何なのかというと、驚くべきことに、それはJ-Popなどと同様に、日本、つまりJapanを表す'J'なのである。
調べてみたが、J-Trapなるジャンルは、日本国内には今のところ存在していないようだ。
いったいどういうことなのかというと、どうやら彼は、琴や三味線といった日本古来の楽器とトラップを融合して、J-Trapという全く新しいジャンルをインドで編み出したてしまったようなのだ。


インドのアーティストが、古典音楽と現代音楽を躊躇なく融合させているという話を先日書いたばかりだが、まさかインド人が日本の伝統音楽とトラップまで融合させているとは思わなかった。
さっそくそのサウンドを聴いてみよう。
"Kawaii Killer".
 
アタック感が強くてサステインの少ない三味線の音色が意外とトラップサウンドに合っている!

この"Torii"は、マンガやゲームなどのジャパニーズカルチャーの影響を受けたベトナム人トラップアーティストのTrickazが運営する'Otodayo Rocords'からリリースされた楽曲。
Karanによると、日本の戦争映画の音楽に影響を受けたとのことだが、完全にオリジナルな個性を持つサウンドに仕上がっている。



琴や三味線の音が入ると、結果的に「謎の村雨城」みたいな昔のゲームのBGMを思い出させる雰囲気もあって、それがまた面白い。(歳がバレますが)

日本カラーが少ない曲はこんな感じ。 

以前、謎のジャンル「ターバン・トラップ」のアーティストとして紹介したGurbaxの楽曲のリミックスも。

ターバン・トラップとJ-トラップ、トラップミュージック界の日印タッグ結成!(どちらもインド人だけど)

ここ数年、世界中のアンダーグラウンド・シーンでオタクカルチャーとクラブミュージックの融合が進んでいて、ハードコアテクノから派生した日本のナードコアやヒップホップから派生したアメリカのナードコア、スムースなトラックに日本のアニメの映像を取り入れたローファイ・ビーツ/チルホップなど、様々なジャンルが誕生している。
このKaran KanchanのJ-Trapもその新しい一例として見ることができるだろう。
(参考:「日本とインドのアーティストによる驚愕のコラボレーション "Mystic Jounetsu"って何だ?」
(参考サイト:面白外人イアンの謎の文化チガイ 第51回「入門ナードコア」

その究極とも言えるトラックが、日本在住のアメリカ人Youtuber(現在ではすでに離日しているようだ)Nathalia Natchanとのコラボレーションであるこの"Trap Bandit".

カンちゃんとなっちゃんによるこの楽曲は、外国人によって作られた全く新しい「ジャパニーズ・ミュージック」だ。

こういう作品を聴くと、日本文化はもはや日本人だけのものではないことを改めて感じる。
かつて、イタリア人がマカロニ・ウエスタンを作り出し、日本人が数々の欧米文化を独自にアレンジしてきたように、日本文化も外からの目線で再構築される時代になったということなのだろう。
日本のリスナーにとって、これはかなり楽しいことである。
我々が知らない間に日本のカルチャーが、見たこともない「クールなもの」になっているというのは、最高にクールで面白いことではないか。


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goshimasayama18 at 19:53|PermalinkComments(0)

2019年04月06日

インドのマスロックバンドHaiku-Like Imaginationの楽曲に日本人ギタリストが参加!

以前、「日本語の名前を持つインドのアーティスト特集」で紹介したバンガロールを拠点に活動するエクスペリメンタル・マスロック/ポストハードコアバンドのHaiku-Like Imaginationがデビュー曲となる"Hey, Dynamics!"をRolling Stone Indiaのウェブサイトで独占公開した。
「ワタシ?キモチヨウカイ?俳句のような想像力?日本語の名前を持つインドのアーティストたち!」
スクリーンショット 2019-04-06 10.40.54
http://rollingstoneindia.com/exclusive-stream-haiku-like-imaginations-hyper-playful-hey-dynamics/


(2019.4.13追記 Rolling Stone Indiaでの先行公開を経てYoutubeにも音源がアップされていたので貼り付けておく)

これは近日発売予定のフルアルバム"Eat, Lead, Motherbuzzer"からの先行シングルということになるらしい。

マスロック(math-rock:変拍子や変則的なリズムを特徴とするポストハードコアの一ジャンル)特有の鋭角的なサウンドと複雑な構成の楽曲だが、ヘヴィーでテクニカルなだけでなく、ツインリードのリフや急に飛び出すポップなコーラスが強烈な印象を残す素晴らしい仕上がりだ。
もう一つ聴き逃せないのが、この曲でギターソロを弾いているのが日本のプログレッシブ・メタルバンドCyclamenのギタリスト高尾真之だということだ。
4:15頃から始まる美しいトーンのソロに注目!

高尾氏に参加の経緯を聞いてみたところ、バンドのメンバーから直接依頼があったということのようだ。
Haiku-Like Imaginationのメンバーは日本のマスロックをかなり掘り下げ聴いており、日本でCyclamenのライブを見たこともあるというから相当なものだ。
以前からインスタグラムを通して高尾氏のギタープレイへのリアクションもあったという。

そういえば、以前Haiku-Like Imaginationというバンド名の由来を聞くために彼らにコンタクトしたとき、ギタリストのSuchethから日本のマスロック系フェスティバルであるBahamas Festを見に来日する予定だと聞いていた。(彼らの不思議なバンド名の由来はこの記事から)
どうやらCyclamenのライブもBahamas Festで見たようで、それが今回のギターソロの依頼につながった模様。 
それにしても、海外から日本のマスロック系フェスを見るために来日するって、彼らがアーティストとしてだけではなく、ファンとしてもかなりハードコアな姿勢でマスロックに入れ込んでいることが分かる。
高尾氏曰く、ソロの依頼が来たときは直接の面識は無かったそうだが、ネットを介して音源のやりとりをしながらソロをレコーディングしていったとのこと。

この"Hey, Dynamics"のマスタリングはマスロック/ポストハードコアのジャンルで評価の高いカリフォルニアのDance Gavin DanceやソルトレークシティのEidolaなどを手がけたKris Crummet.

ゲスト参加したギタリスト高尾真之が在籍するCyclamenはもともとはヴォーカルの今西義人を中心にイギリスのレディングで結成されたバンドで、国際的な人気も高い。

こんな楽曲もやっている。

CyclamenがタイのシンガーStamp Apiwatをフィーチャーした"The Least".

話をHaiku-Like Imaginationに戻すと、彼らは2017年に結成され、この曲がレコーディング音源としては初めてのリリースだという新人バンドだが、新人にしてこの国際性。
このブログでも何度も書いている通り、コアなジャンルになればなるほど国境や国籍は全く意味をなさなくなる。
彼らについても、もはやインドのバンドだとか考えることにあまり意味はないのかもしれない。
以前来日したデスメタルバンドのGutslitのようにHaiku-Like Imaginationが来日公演をしたり、インドのフェスでライブしたmonoのようにCyclamenがインドでライブを行ったりということも十分にありうることなのだ。


(2019.4.15追記 ついにHaiku Like Imaginationのデビューアルバム"Eat Lead, Motherbuzzer"が全曲リリースとなった。こちらのBandcampから全曲再生&ダウンロード購入可能!奇妙で複雑で激しくて美しい、マスロック/ポストハードコアの名盤!)
https://haiku-likeimagination.bandcamp.com/releases


インドのこのジャンルのバンドとしては、日本文化からの影響を全面に出したデリーKrakenも活躍している。
 (彼らのことを紹介した記事はこちら「日本の文化に影響を受けたインド人アーティスト! ロックバンド編 Kraken」)

以前北東部アルナーチャル・プラデーシュ州のデスメタルミュージシャンTana Doniから紹介してもらった同郷のマスロックバンドSky Levelも先ごろデビューアルバムをリリースした。


こうした世界的にもメインストリームとは言えないコアなジャンルでも、レベルの高いバンドが各地にいるのがインドの音楽シーンの底力だ。
次回は、また別の日本との繋がりのあるミュージシャンの続報と、インディーミュージシャンの苦労について書いてみたいと思います。
それでは!



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goshimasayama18 at 16:42|PermalinkComments(0)

2019年04月01日

電気グルーヴとインド古典音楽をリミックスして石野卓球にリツイートされたムンバイのJ-popファン


今回の記事は少し個人的な内容かもしれない。
今回紹介するのは、プロのミュージシャンではなく、ムンバイに住んでいる私の友人、Stephenだからだ。
大のPerfumeファン、J-PopファンでPerfume India  🇮🇳 | परफ्यूम インド@prfmindia)という名前でtwitterをやっている彼は、どういうわけかかなり早い段階で私のブログを見つけてくれて、Google翻訳を使ってこのブログを読んでくれていた。
彼はいつも日本の音楽(主にPerfume)について英語でツイートしていて、私はいつもブログに日本語でインドの音楽のことを書いている。
いわば日本とインド、それぞれの国で、正反対に同じようなことをしているのだ。

そんな彼なので、もちろんピエール瀧に何が起きて、日本のレコード会社がそれに対してどう反応したのかも知っている。
なにせ、インドでサービスが開始されたばかりのSpotifyから、彼らの楽曲が全て削除されてしまったのだから。
(ちなみに電気グルーヴの名前はPerfumeと共演したことで知ったらしい)

私も電気グルーヴのファンだったので、今回の逮捕とその後の過剰な自粛に胸を痛めていたのだが、そんなときに彼が電気の初期の名曲「電気ビリビリ」に南インドのリズム「コナッコル」(Konnakol)をかぶせたリミックスをtwitterに投稿してくれた。


コナッコルは南インド古典音楽のラップ的に口でリズムを取る歌唱方法で、とにかくその速くて複雑なリズムがすごい。
似たものに北インドの古典音楽で用いられるボル(Bol)というものもあるので、よってこのmixは名付けて"Denki Biribol".
「このビートが気に入ったから、ガラムマサラをちょっと加えてみた」っていうコメントもイカす!
この曲がPerfumeのあ〜ちゃんのお気に入りっていう彼ならではの情報も面白い(Perfumeのメンバーがこんなヤバい曲が好きっていうのは意外!)が、とにかくアクの強い初期電気の楽曲に、インド古典音楽っていう意外すぎる要素が驚くほどハマっている。


なんというか、このタイミングで外国の電気ファンが、それも彼らがライブを行ったことがあるドイツとかじゃなくて、インドのファンがこういうポストをしてくれたことがすごく温かくて、うれしかった。
それに単純にこのmixがすごく面白くてかっこよかったので、勝手にリツイートしまくっていたら、なんとそれが石野卓球氏の目にとまったらしく、卓球氏が彼のポストをリツイートしてくれたのだ。
スクリーンショット 2019-03-30 14.49.42
瀧の逮捕とそれにともなう活動休止以降、電気ファンにとって唯一の彼らとの接点である卓球氏のtwitterで取り上げてもらえるなんて、私も彼もとてもうれしかった。
このツイートはまたたく間に広まり(2019年3月30日現在7059いいね、1390リツイート)、彼は「Daokoが『いいね』してくれた!うれしくて泣けたよ!」とか、さらにJ-popマニア全開なリアクションをツイートしていた。

というわけで、今回は電気ファンの間でも存在が知られるようになったこのインドいちのJ-popファン(多分)である彼に、日本の音楽のこと、インドの音楽のことをいろいろ聞いてみました!



凡平「Hi Stephen. お願いがあるんだけど、ちょっとインタビューさせてくれる?石野卓球がリツイートしてくれて、大勢の日本人が君の『Denki Biribol』を聴いてくれたことだし、インドにいる日本の音楽のファンとしてぜひ君のことを紹介したいんだ」

Stephen「ハハハ、僕は特別な人間じゃないし、なんか変な感じだけど、ぜひ協力させてもらうよ」

凡平「ありがとう。今じゃ君は日本の電気グルーヴファンにとって特別だよ。それじゃあさっそく最初の質問。そもそもどうしてJ-popを聴くようになったの?」

Stephen「正確に言うのは難しいけど、ほとんどは小さい頃見たアニメを通して知ったって言えるかな。最初の頃聴いたJ-popはアイドル音楽に限られていたけど、後になって他にもいろいろあるのを見つけたんだ」

凡平「日本の若者と同じような感じだね。どんなアニメを見てたの?」

Stephen「最初に知ったのは『ナルト』と『デスノート』。実際のところ、アニメの大ファンってわけじゃないから、すごくたくさん見たわけじゃないけど。『ナルト』『鋼の錬金術師』『Devil May Cry』を少し見てたよ。完全に見たのは2つだけで、『デスノート』と『NHKにようこそ』だね。この2つは大好きだった。実際、『NHKにようこそ』でかなり日本の音楽に興味を持つようになったんだ」

恥ずかしながら、『NHKにようこそ』という作品のタイトルは聞いたことがあったが、英語で"Welcome to NHK"と言われた時にこの作品名の英訳だとすぐに分からず、この時てっきりNHKでアニメを見ていたのだと誤解していた。ちなみにこの作品タイトルの'NHK'は放送局ではなく「日本ひきこもり協会」の略で、青年がひきこもりから立ち直る過程を描いたライトノベルが原作のアニメ。

凡平「NHKの国際放送とかケーブルテレビで見てたの?」

Stephen「いや、うちの地域じゃ見られないから、インターネットで見てたんだ」

凡平「なるほど。インドでも日本のアニメは人気って聞いたけど、インドの人たちもみんなそんな感じでアニメを見ているの?」

Stephen「アニメはインドではびっくりするくらい人気があるよ。アニメファンが集まるためのカフェもあるんだ。ムンバイに'Leaping Window'っていうマンガのライブラリーがあるレストランまであるんだ。さすがにそういう場所は町中でここだけじゃないかな。アニメキャラのタトゥーやなんかをした人を見かけることだってあるよ」

と、思ったより盛り上がっていそうなムンバイのアニメ事情。
これがそのLeaping Windowの様子だ。
日本のマンガ喫茶とは違って、料理もかなり本格的でオシャレなものを提供してくれるお店のようだ。
行ってみたい!
LeapingWindow
(画像は'Things To Do In Mumbai'のFacebookページから)

Stephen「Cool Japan FestivalやComic Conではコスプレイヤーもたくさん集まるよ。かなり真剣にやってるほとんどプロみたいな人たちもいる。」

ムンバイのCool Japan Festivalのコスプレイヤーたちはこんな感じ。
CoolJapanFestivalMumbai
(画像はCool Japan Festivalの Twitterから)
(関連記事:「特集ナガランドその3 ナガの地で花開く日本文化 ナガランドのオタク・カルチャー事情とは?」「日本とインドのアーティストによる驚愕のコラボレーション "Mystic Jounetsu"って何だ?」)

凡平「J-popに話を戻すと、それからPerfumeを見つけたってこと?」

Stephen「それを話すにはちょっと長くなるかな。最初に坂本龍一の音楽を見つけて、彼の音楽にはまったのが日本の音楽を好きになった最初のきっかけだよ。彼の"Seven Samurai"っていう曲があるんだけど、それが今まで聴いた曲で一番のお気に入りだよ。彼の曲を聴き続けているうちに、もっと日本の音楽を聞きたいと思うようになって、ある日Youtubeで'Japanese music'だったか、そんな感じで検索してみた。そうしたら、確か'top 100 Japanese songs'みたいなビデオを見つけたんだ。間違ってなければその最初の曲がPerfumeの『ポリリズム』で、それで一気にはまっちゃって、もっと聴かなきゃって思ったんだ。」

凡平「Perfumeは、君にとってどんなふうに特別だったの?」

Stephen「僕の場合いつも音楽こそが第一なんだけど、中田ヤスタカの音楽の作り方がすごく素晴らしくて大好きになったんだ。彼はシンプルなダンスミュージックをより複雑なものにしている。多くの欧米のアーティストは音楽をよりシンプルなものにしたがるけど、彼は反対のことをやっているんだ。
それに加えて、ライブの映像を見て3人のメンバーがまた素晴らしいことを発見したんだよ」

凡平「お気に入りのPerfumeの曲を教えてくれる?」

Stephen「うーん、ハハハ、お気に入りはたくさんあるからなあ。順序はともかく、僕のトップ5を挙げるとしたら、ポリリズム、シークレットシークレット、NIGHT FLIGHT、Have a Stroll、FAKE ITだね」

凡平「じゃあ、Perfume以外で好きなアーティストは?」

Stephen「これもすごく難しいなあ、いつも新しいクールな音楽を見つけているから。常に変わり続けてはいるけど、今現在のトップ5を挙げるとしたら、坂本龍一、YMO、中田ヤスタカのソロとcapsule、天地雅楽、吉田兄弟」

凡平「本当にいろんなジャンルを聴いてるんだね。日本の音楽をインドの音楽とか欧米の音楽、K-popみたいな他のアジアの音楽と比べて、どこが気に入ってくれているの?」

Stephen「J-Popとか日本の音楽は一般的に他の国の音楽よりもユニークなサウンドを持っているよね。日本の音楽シーンは新しいことに挑戦することを全く恐れていないみたいだよね。例えばU-Zhaanみたいなアーティストはタブラ(ご存知、インドの打楽器)でダブステップの曲を作ったりする。僕はそんなことができるなんて想像したこともなかったけど、彼はとてもうまくやっていた。日本のミュージシャンやアーティストは世界中のあらゆる要素を最大限に活用して自分たちの音楽を作る方法を本当によく知っている。日本は音楽を融合させることに関しては最高だよ。だから日本の音楽はすごく魅力的なんだ」

凡平「ありがとう。音楽のフュージョンに関しては、インドも素晴らしいセンスを持っているよね。というわけで、"Denki Biribol"の話。本当に気に入っているんだけど、どんなふうにあのリミックスを作ったの?」

Stephen「ハハハ、じつは電気グルーヴを聴き始めたのはピエール瀧のニュースを聞いてからなんだ。インドで電気グルーヴの音楽を探すのは難しかったよ。インドでもSpotifyのサービスが始まったところだったから、彼らのいくつかのアルバムを楽しむことができたんだ。それで『電気ビリビリ』のビートが本当に気に入ったんだ。
そのビートを聞いているうちにおかしなことを思いついて、そこにコナッコルをかぶせてみようと思ったんだよ(笑)。ちょっとクールで面白いとおもったからね。それでYoutubeでビデオクリップを見つけて、一緒にしてみただけだよ。こんなに多くの人が見たり聴いたりしてくれるなんて全然思わなかったよ(笑)」


ちなみに『電気ビリビリ』とmixしたコナッコルのもとの動画はこちら!
完成品を見ると違和感なく電気meetsインドになっているけど、これを電気ビリビリに合わせようと思った発想は凄い!

凡平「日本の電気グルーヴファンはみんな『Denki Biribol』を気に入ったはずだよ。瀧の逮捕以来、辛い時期だったから、インドからこうして応援してくれるのはうれしかったね。知っての通り、レコード会社が彼らの曲を全部ストリーミングサービスから削除してしまった。我々はみんな、こんなのはやりすぎでおかしいと思っているんだけど、君はどう思う?同じようなことって、インドでも起こりうるの?」

Stephen「音楽の販売やストリーミングをやめるのはアンフェアだと思うね。人々が彼らの音楽を見つけることは許されるべきだよ。例え事件をきっかけに彼らを見つけるんだとしても。僕も今回の事件をきっかけに彼らの音楽を聴き始めたけど、もうこれ以上聴くことができなくなってしまった。別に瀧がしてしまったことや、ドラッグを使うことをサポートしようってわけじゃなくて、ただ音楽を楽しみたいだけなんだからね。インドでもドラッグの問題でつかまった有名人はいたと思うけど、ファンたちは彼らを応援し続けるのか、やめるのか、自分たちで決める自由が許されているよ。」

凡平「日本はまったくおかしな状況になってしまっているよ。ところで、石野卓球がリツイートしてくれて、このポストがどんどん広まっていったのはどんな気持ちだった?Daokoみたいなアーティストを含む多くの日本人が『いいね』をしたんだよ」

Stephen「ハハハ、すごく幸せだったよ。信じられなかったよ。実を言うと、ちょと泣いたね。日本のアーティストたちはインドにファンなんかいないと思ってるんじゃないかと感じてた。だから、ここにもファンがいるんだよって分かってもらえてうれしかったんだ」

凡平「僕ら日本のファンも、インドにもファンがいるって知ることができてうれしかったよ。
それから君のもう一つのremixの"Gully Bully"も気に入ってる。"Denki Biribol"も"Gully Bully"もインド音楽の複合的なリズムがオリジナルの楽曲のデジタルなビートをもっと魅力的にしていると思う。これはどうやって作ったの?」

"Gully Bully"はStephenが作ったPerfumeの"Hurly Burly"と映画Gully Boyでも使われたヒンディー・ラップの名曲"Mere Gully Mein"(「俺のストリートで」の意味)のマッシュアップ。

ミックスしたそれぞれの曲が全く新しい印象になっていてこれまたかっこいい!
ちなみにRemixされた"Mere Gully Mein"の原曲はこんな曲。


Stephen「Perfumeに何かインドの要素をミックスしてみたかったんだよ。音楽的なことはべつに何もしていなくて、"Gully Boy"が大流行していたから、この映画の曲をPerfumeとミックスしたら、インドの人も日本のにとも面白いと思ってくれるんじゃないかと考えたんだ。だから"Mere Gully Mein"を選んで、単なる冗談なんだけど、"Gully"とPerfumeの"Hurly Burly"が似た響きだったから一緒にしてみた。そうしたら、なんとPerfumeの曲に完璧に小節やビートを合わせることができたんだ」

凡平「なるほど。ところでどうやってインドで日本の音楽の情報を得ているの?」

Stephen「おかしな話なんだけど、別にいつも探そうとしているわけではないのに、新しいものに出会ってしまうんだよ(笑)。とくにお気に入りになりそうなアーティストを探すときは、だいたい好きなアーティストのカバーやコラボレーションを探すことが多いかな。それで気がついたらファンになってるんだ。インドでもSpotifyが使えるようになったから、より簡単に探せるようになったよ。」

凡平「インタビューにつきあってくれてありがとう。では最後の質問。ご存知の通り僕はインドの最近の音楽についてブログを書いているんだけど、インドの音楽シーンについてはどう思う?例えばボリウッドとか、インディー音楽とか。」

Stephen「最近のインドの音楽シーンはすごくエキサイティングで、今までで一番いい状況だよ。だから今後についてもすごく楽しみにしている。みんながインドの音楽を思い浮かべる時、それはボリウッドか伝統的な古典音楽だと思う。でも少しずつ、みんながインドの(新しい)サウンドに気付き始めていて、それはいずれ世界中に影響を与える可能性だってあると思うんだ。なにしろフレッシュで新しいものだからね」

凡平「僕もそう思うよ。これからも日本の音楽のサポートをよろしくね!」


Stephenは現在26歳で、10代の頃は家族とともにドバイに暮らしていたそうだ。
その頃はMTVで流れるような音楽を主に聴いており、その後ヘヴィーメタルを聴いていた時期もあったとのこと。
そういう意味では、典型的なインド生まれインド育ちのインド人とは少し異なるバックグラウンドなのかもしれないが、今日のインドでは彼のようにUAEなどの湾岸諸国や欧米で生まれ育って母国に戻ってくる若者も珍しくなく、インド人としてのアイデンティティーと国際的な感覚をあわせ持つ彼らは、インドのユースカルチャーをリードする存在でもある。

彼はプロのミュージシャンではなく、いち音楽ファンに過ぎないから、"Denki Biribol"も"Gully Bully"も技術的には単純なミックスかもしれないが、そのサウンドが新しくて面白いのは否定しようがない事実だ。
インドの音楽シーンでさかんに行われているインド音楽と欧米のポピュラー音楽との融合は、彼のような自由な発想がその源泉となっているのだろう。

こうした「国境なき世代」がこれからどんな音楽を作ってゆくのだろうか(彼のように海外在住経験がなくても、インターネットが発達し英語力も高いインドの都市部では、こういう若者たちがそこかしこにいる)。
そこには何度もこのブログでも紹介しているように、日本のカルチャーが少なからぬ影響を与えることもありそうで、いろいろな意味で非常に楽しみだ。

それでは今日はこのへんで!




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goshimasayama18 at 00:49|PermalinkComments(0)

2018年11月18日

ワタシ?キモチヨウカイ?俳句のような想像力?日本語の名前を持つインドのアーティストたち!

これまでにこのブログでは、スタジオジブリなどの日本文化に影響を受けたエレクトロニカ・アーティストのKomorebiや、日本のカルト映画「鉄男」の名を冠したトラックをリリースしたコルカタのテクノ・ユニットHybrid Protokol、日本文化への造詣が深すぎるロックバンドのKrakenを紹介してきた。
北東部ナガランドでは日本のアニメやコスプレが大人気だというのも先日書いた通りだ。
とはいえ、欧米文化や韓流アーティストに比べると、インドでは日本文化はまだまだマイナーな存在。
インドの音楽シーンを扱う媒体でも、欧米の人気アーティストやK-Popの話題はよく目にするが、日本の音楽シーンについてのニュースは全く見たことがない。
(ドラえもんのような子ども向けアニメはかなり人気があるようだが)
そんなインドにもかかわらず、またしても日本語のバンド名を持つ面白いアーティストを発見したので、今回は3組まとめて紹介します! 

まず紹介するのは、バンガロールのドラムンベースアーティスト、その名もWatashi.
ワタシ。
そう「私」だ。
なんという斬新なアーティスト名。
つい先ごろ大注目レーベルのNRTYAから発表したばかりの新曲、'In-A-Morato-Rium'を発表したばかりなのだが、Soundcloudの貼り付け方が分からないので、こちらから別のサイトに飛んで聞いてみてほしい。
https://soundcloud.com/nrtya/watashi-in-a-morato-rium

曲もかなりかっこいい!
こちらはバンガロールのクラブ、Kitty Koでの今年1月のDJの様子。
動画で見る限り、けっこうイケメンなWatashiなのだった(いや、だから、私じゃなくてWatashiのことです)。

このWatashiという(日本人にとっては)不思議なアーティスト名は、本人に聞いてみたところ、もともとは彼のメールアドレスであった'Watashi Wa Yogi San'から取ったものらしく、さすがに長くて覚えにくいので、'Watashi'に省略したとのこと。
子どもの頃にたくさんのアニメからの影響を受けたという'Watashi'.
早くフルアルバムが聴いてみたいアーティストの一人です。


続いて紹介するアーティストは、ムンバイ出身の5人組バンド、Kimochi Youkai.
自分たちの音楽をヒップホップ、ジャズ、R&Bと自称しているが、聴く限りではロックやレゲエやジャムバンド的な要素も感じられる音楽性だ。
彼らもSoundcloudにはまだこの1曲しかアップしていないが、なかなかの心地よいグルーヴを聴かせてくれている。
アメリカのヒップホップグループBlack Streetが1996年に発表した'No Diggity'のレゲエカバーを聴いてみてください。
https://soundcloud.com/user-186337827

ライブの様子はこちらから。

彼らのFacebookによると、Kimochi Youkaiは'feel good demons'という意味とのこと。
うーん、ちょっと惜しいかな(笑)
Kimochi Youkaiは、音楽を通じて人々をいい気持ちにさせることを唯一の目的としたグループだそうで、彼らが言いたいのは「気持ち(Kimochi)」じゃなくて「気持ちいい」なのかもしれない。
いずれにしても、彼らのサウンドを聴く限り、人々をいい気分にさせるっていう目的はほぼ達成されているように思える。
彼らもまたフルアルバムが待たれるアーティストだ。

最後に紹介するのは、KrakenPineapple Expressとも共演経験のあるバンド、Haiku Like Imagination.
「俳句のような想像力」とはこれいかに。
バンガロールのマスロック/ポストハードコアバンドである彼らのサウンドはこんな感じ!

これまたかっこいい!
彼らにバンド名の由来を聞いてみたところ、5拍子や7拍子といった、奇数の変拍子を使うことが多いマスロックを演奏しているので、五七五の「俳句」をバンド名に取り入れたとのこと。
なるほど!よく考えたなあ。
彼らはデビュー音源を現在作成中で、なんとその後は日本ツアーも企画しているとのこと。
またしてもなんとも楽しみなアーティストだ。

今回紹介した3組はいずれもまだ新人ミュージシャンではあるけれども、徐々にメディアの露出に取り上げられるようになってきた有望株。
そして3組とも名前こそ日本語だけど、音楽性は三者三様で、そして音楽面からはこれといって日本の影響を感じないのがまた不思議だ。 
日本語の響きが、英語でもインド風でもない、独特な雰囲気を醸し出しているのだろうか。

そういえば、90年代にイギリスにUrusei Yatsuraっていうバンドがいたのを思い出した。
確か彼らは著作権だかの問題で、Yatsuraと名前を変えさせられたうえに、大して売れることもなく解散してしまったように記憶している。
今回紹介した3組には、願わくば末長く活動してもらって、そしてできればここ日本で彼らのパフォーマンスが見てみたいものだ。 
がんばれよ!




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