インドのR&B
2025年12月28日
2025年度版 軽刈田凡平's インドのインディー音楽top10 +α
今年はほとんどブログの記事を書かないまま1年が終わってしまった。
渋谷で行われたほとんど在日インド人のディワーリー・パーティーでのカラン・カンチャンのDJが最高だったこととか、ナガランドからやってきたポップパンクバンドのStreet Storiesのライブがエモかったこととか、ちゃんと書いておきたいことはたくさんあったのだけど、連載のほうにほぼ全集中していて、つい母屋であるこのブログをすっぽかしてしまった。
連載というのは、春秋社のウェブマガジン『web春秋 はるとあき』内での「軽刈田凡平の新しいインド音楽の世界」のことで、気合入れて書いてますのでヨロシク。
ともかく、今年も年末恒例の、自分なりのインドのインディー音楽top10を選んでみます。
対象は、アルバムだったり、楽曲だったり、ミュージックビデオだったり、はたまた出来事だったりと何でもあり。
今年は例年になく情報の入力と出力のバランスがアンバランスで、アウトプット過剰だったので、チェックできていない作品がまだまだありそう。
何かおすすめがあったら教えてください。
また、インドの慣例にならって、「インディー音楽」というのは「非メジャーレーベル」という意味ではなく、「非映画音楽」という意味で使っているので、メジャーなアーティストもここには含まれています。
10作品の順位はとくにないです。
Karan Aujla "P-Pop Culture"(アルバム)
いきなり大メジャーで申し訳ないが、カナダを拠点に活躍するパンジャーブ音楽界の大スター、Karan Aujlaのアルバムを筆頭に挙げたい。
数年前からAujlaをはじめとしてAP Dhillon、Diljit Dosanjh、Shubhらのパンジャーブ勢は北インドと在外インド人社会での人気がめちゃくちゃ高く、APとDiljitはコーチェラでもパフォーマンスを披露している。
昨年末にムンバイで見たAujlaのライブもめちゃくちゃ大規模かつド派手で大いに盛り上がっていた。
今作は全曲が盟友Ikkyによるプロデュースで、ゲストはなし。
今の彼の勢いだったら、国内外の人気ラッパーを加えた話題作を作ることもできたはずだが、彼はたった二人だけで新しいパンジャーブのポップスを作ることを引き受けた。
背負うアルファベットはインディアの「I」ではなくパンジャーブの「P」。
これまでのヒップホップ的/ダンスポップ的なアプローチに加えて、今作ではロック的なダイナミズムが大幅に加わっていて、これが昨今のヒップホップ的な取り入れ方とも違うのは、生バンドとのライブを積み重ねてきたからだろうか。
TV Dinner "Non Believer"(楽曲)
今年のインドのインディーミュージック界での残念なニュースといえば、一部で世界的な評価を得ていた(日本だと高橋幸宏が高く評価していたとか)コルカタのドリームポップデュオ、Parekh&Singhの解散だ。
ミュージックビデオのウェス・アンダーソンへのオマージュに満ちた映像、キャッチーさに振り切りすぎない上品なポップネス。
彼らはステレオタイプなインドのイメージを覆すに十分すぎるクオリティのアーティストたちだった。
解散後、さっそくソロ活動を開始したメンバーのひとり、Nischay ParekhのソロプロジェクトがこのTV Dinnerだ。
おおまかな方向性はデュオ時代と大きく変わらないが、ポップな部分はそのままに、過剰なオシャレさを取り払ってメロディーの美しさを際立たせたアレンジは永遠に古くならなさそうだ。
こういう音楽がインドで作られていることはきちんと伝えてゆきたい。
DL91まわりの一連の作品
Ab 17 "Chanel got Work ft. Ikka"
これはちょっとズルい挙げ方かもしれないが、デリーにいつの間にか誕生していたヒップホップ界隈の集団(クルーと呼んで良いのか)DL 91 Eraの関連作品がとにかくやばかった。
インドのヒップホップの魅力には、いかにもインドらしい、各地域の特色や伝統を踏まえた表現(たとえばパンジャーブのバングラー・ラップ)と、逆に世界中のどこの地域でも成立しうる同時代的な表現の両方があるが、彼らは後者の代表格。
日本でいうと、kZmとかtohjiとかに近い、都市生活の虚無感みたいなものを、陶酔というか恍惚感へと昇華した現代的なヒップホップ。
とにかくDL 91 Era界隈の作品は、Hurricaneのプロデュース作品とか、OG Luciferのアルバム"Naala Paar"とか、毎回ハズレのないSeedhe Mautのアルバムまでを含めて、作品の質と量、いずれも特筆すべきものだった。
まったく違う土地や文化のもとに暮らす人々が慣らす音を通して同時代性を感じることができるというのは、ポピュラー音楽を聴く最大の喜びのひとつでもあると思う。
Shauharty "Farookh"(アルバム)
インドにおける2025年のアンダーグラウンド・ヒップホップの到達点と言えるのがこのShauhartyだ。
今年リリースされたアルバム"Farookh"は、シブすぎる音作りや、"Saddam Hussainé"(なぜeにアクセント記号?)、"Keith Haring"、"Earth, Wind & Fire"といった人名シリーズの楽曲、さらには、"Penis Flytrap", "Pitstop 4 Sex"といった下品なリリシズムとでもいうべき楽曲タイトルなど、ワードセンスからサウンドまで、強烈な個性が感じられる作品だった。
今はデリーを拠点にしているそうだが、もともとは北東部出身だというのがほかのデリー勢と一線を画す音作りの秘密か。
グジャラートのDhanjiと並んで、時流に影響されずに自分の音作りを追求するアーティストがきちんと活躍していることにインドのヒップホップシーンの層の厚さを感じる。
Dizlaw, Tienas, Kim the Beloved, Ranj, Jelo, Clifr "BLOODBATH"(楽曲)
かつてPrabh DeepやSeedhe Mautを輩出したことで信頼の厚いデリーのヒップホップレーベルAzadi Recordsは、最近は以前の勢いを失いかけているようにも見えていたけど、この曲を聴く限りまだまだ大丈夫そうだ。
Dizlaw, Tienasのムンバイ勢、Ranj(タミル)とClifrのサウスの安定コンビ、Kim the Beloved(ミゾラム)とJelo(メガラヤ)の北東部勢というインド全土のアンダーグラウンド系ラッパーを束ね、このゴリゴリのミクスチャーロック的なビートにほとんど英語のラップを乗せてきたのは、Hanumankindのヒットを意識してのことだろうか。
ちなみにイントロの宗教歌っぽいサンプリングはコメディアンがファシズム的政治を揶揄しているものだそうで、そういうところにもカウンターカルチャーとしてのヒップホップを支持してきたレーベルの主張が見える。
KR$NA "Yours Truly"(アルバム)
デリーのベテランラッパーKR$NAのニューアルバム"Yours Truly"は、RaftaarやBadshahといったデリーのメインストリーム勢、YashrajやSeedhe Mautといったアンダーグラウンド寄りのラッパー、さらにはイギリスのAitch、そして日本のAwichなど、幅広いゲストを招いて制作された意欲作。
アルバム全体のトーンを作っているのはインドのヒップホップシーンの大物プロデューサーPnenom.
KR$NAは20年近いキャリアを持つ重鎮だが、Seedhe Mautが参加した曲ではHurricaneを起用するなど、新しいサウンドへの目配りもできており、まだまだ衰える兆しはなさそうだ。
Awichが参加した"Hello"のプロデュースはKaran Kanchan.
「はじめまして」と「Haan ji, Namaste」のライムも彼の発案で、ビートもさすがのかっこよさ。
今年はAwichがインドのKR$NAや韓国のJay Parkをはじめ、中国、カンボジアのラッパーを招いた"ASIAN STATE OF MIND"を制作するなど、アジアのヒップホップを統合する動きも見られた。
この曲はおそらくその時のスワップ(相互客演でギャラを相殺する)で制作されたものだろうが、AwichはKR$NAとの共演のプロモーションに熱心ではなく、日本ではまったく話題にならなかったのがもったいない。
インド国内外のさまざまな例を見てきた結果、言語に大きく依存するラップに関しては、国や言語を超えたコラボレーションは成功しないのではないか、というのが現時点での私の見立てだ。
Yo Yo Honey Singh "51 GLORIOUS DAYS"(アルバム)
今さらHoney Singhを年間トップ10に入れるのもどうかとは思うのだが、今年リリースされた51曲入りというとんでもないボリュームのアルバムには度肝を抜かれた。
あらためて聴いてみると、ミュージックビデオはあいかわらずダサいが、ビートはかっこいいし(昔よりずっとよくなった)、ラップも技巧的なわけではないがさすがにどっしりとした風格がある。
曲が多すぎて熱心なファンでもまともに全曲聴かないのではないかという心配があるが、余計なお世話というものだろう。
目立つゲストはこの曲のAP DhillonやBohemia("Sawaal Puchdi")といった大御所のみだが、そこも若手とつるみがちな(かつての仲間で仲違いした)BadshahやRaftaarとの差別化だろうか。
ラージャスターンのフォークを導入したり("Bicchudo", "Bhagoliyo")、いろんなことをやっている。
今年はSeedhe Mautの30曲入りアルバム"DL91 FM"のボリュームと質の高さにも驚かされたが、このランキングの常連である彼らについては、単体では選出せず「DL91関連の作品」のなかに含めることとした。
Chaar Diwaari, Raftaar "FAREBI"(楽曲)
若手ラッパーとしての人気をすっかり確立したChaar Diwaariがデリーの大御所の一人Raftaarと共演したこの曲は、性急なビート感やポップセンスに2025年の空気感を感じる一曲だった。
ちゃんとインドっぽいところもポイントが高い。
かなりポップにできている曲だと思うのだが、YouTubeでの再生回数は現時点で530万界程度で、十分多いとも言えるが人気曲ともなるとすぐに数千万再生を超えるインドの状況を考えると少ないようにも思える。
インドもまた、ヒップホップがサブカルチャーとしては確立しているものの、メインストリームには成り得ていないという、日本と同じような状況にある。
ThirumaLi, ThudWiser "Kulasthree"(楽曲)
近年成長著しいケーララ州の言語マラヤーラム語ラップ。
Spotifyによると、2019年から2023年にかけてマラヤーラム語ラップの再生回数は5,300パーセントという驚異的な成長を示したそうで、確かに最近はミュージックビデオや楽曲の出来も加速度的に完成されてきた気がする。
マラヤーラム語ラップシーンの牽引者の一人であるThirumaLiとThudwiserがコラボしたKulasthree"は、他愛のないラブソングながらも、ケーララ的としか言いようのない詩的なリリックと映像美、そしてサウンドがたまらない。
Kukasthreeというのは伝統的な価値観における「理想の女性像」を表す単語だそうで、価値観の古さが気になるところだが、皮肉を込めた表現なのかどうかが気になるところではある。
Aman Sagar, Sanjeeta Bhattacharya "ESWY"(楽曲、ミュージックビデオ)
最近のインドのインディペンデント音楽シーンの密かなトレンドでもあるR&B路線の曲に、これまでRitvizやPrateek Kuhadらの楽曲に数々のセンスの良い映像を作成してきたJugaad Motion PicturesがMVを手がけた。
正直、映像で見るとちょっと演出が楽曲を邪魔してしまっている感じもあるが、楽曲の質の高さはサブスクなどで味わってもらうとして、輪廻転生モノというインドの伝統的なエンタメ文化とインディーズ音楽が融合したここまでセンスの良いミュージックビデオが作られたことをまずは讃えたい。
他に迷ったのは90年代風のエレクトロニック・ポップをセンスよく仕上げたPhilterSoup、デリーのMtoFトランスジェンダーで、性自認がどうこうということよりも佇まいのカッコ良さとリリックの生々しさにやられたKinari、プログレッシブ・サイバーメタルともいうべきAmogh Symphony.
2025年のトップ10(および次点となる作品)の紹介は以上となるのだが、いつも迷うのは、在外インド人による作品(とくにインドらしさがほぼない作品)をここに含めるべきかどうかということ。
これから紹介するアーティストは、音楽的にも南アジア的な要素はかなり少ないのだけど、ここで私が書いておかないと、日本において作品がまったくなかったことにされてしまうのではないか、という勝手な責任感もあって、ついでに紹介させてもらう。
Steel Banglez "One Day It Will All Make Sense"
イギリスで活躍しているパンジャーブ系プロデューサーのSteel Banglezが作成した南インド要素ほぼなしのヒップホップ/R&Bアルバムで、この曲はタミル映画のプレイバックシンガーとしても活躍しているSid Sriramとニューヨークの伝説的ラッパーであるNasが共演。
Steel Banglezは2023年にはUKのラッパーを中心に起用したアルバム"The Playlist"を作成しているが、今作ではインド本国やアメリカ、ナイジェリア系のアーティストも起用して、グローバルDesiミュージックとでも呼ぶべきサウンドを作り上げている。(Sid Sriramも拠点はカリフォルニアで、英語のR&Bアルバムも発表している。また両作でイギリスでも人気の高いナイジェリアやガーナなどアフリカ系アーティストが起用されていることも書き添えておきたい)
この曲はラップが入った王道R&B的な曲調ながら、最後に南インドの古典音楽であるカルナーティック由来の歌い回しが入ってくるところに痺れる。
南アジア色が薄い、ある意味で聴きやすい作品でもあるので、日本でももっと幅広く評価されてほしいところ。
Sayak Das "don't let this be the end"(楽曲)
「アジアのヒップホップ/R&Bアーティストをフックアップする」というコンセプトで活動する88risingだが、これまで取り上げてきたアーティストは東アジアや東南アジアにルーツを持つアーティストがほとんどだった。
アジアは広すぎるので、たとえば日本人を含めた東〜東南アジアの人々が、中央アジアや西アジアを同じ地域の人々として認識するかというとなかなか難しい問題だと思うのだが、まあともかく、ここにきて88risingが南アジア系のアーティストにも目を向けるようになったのは大変興味深い。
北米では南アジア系のコミュニティはすでに確立していて、たとえばパンジャーブ系のヒップホップなどは本国とシームレスにつながった揺るぎないディアスポラのシーンが存在しているので、必然的に88rising はよりオルタナティブなアーティストに着目せざるを得ない。
このSayak Dasの今っぽさは皆無だけど、ただただポップで上質なR&Bポップという音楽性は無視されてしまうのはもったいなく、ここできちんと取り上げておきたいと思った次第。
来年はもうちょっとブログの記事書きたい!
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goshimasayama18 at 14:43|Permalink│Comments(0)
2024年11月10日
ソウルフル&ファンキー! インドの新進R&B系シンガーソングライター特集
これまでにこのブログでは、Prateek Kuhad, Raghav Meattle, Sanjeeta Bhattacharya, Anoushka Maskey, Mali, Topshe,などのインディーズシーン出身のシンガーソングライターを紹介してきた。
いろんな人を紹介してはきたものの、アメリカのバークリー音楽大学出身のSanjeeta Bhattacharya以外は、どちらかというと抒情的な作風のシンガーが多かった。
これは自分の好みもあるだろうけど、インドで音楽を志す若者たちの傾向として、踊れる音楽を作りたい人はEDMを、ストリート的な表現をしたい人はヒップホップを、激しさを求める人はヘヴィメタルを、内省的な表現を好む人がSSWを選ぶという傾向があるからだろうと理解していた。(※ものすごく大雑把な括りです)
そんなインドでも、ここ数年の間に、R&Bっぽい、ポップかつ踊れる曲を作るシンガーソングライターが目につくようになってきた。
例えばこのRamanというシンガーが最近リリースした曲はこんな感じ。
Raman "Dekho Na"
歌良し、メロディー良し、声良しと、3拍子揃った才能を感じさせてくれるRamanはなんとまだ19歳!
ポップだがどこか影のある音楽性は、日本で言うと藤井風あたりに通じる印象だ。
調べてみたが出身地がどこかは分からなかったものの、ヒンディー語で歌っているのでおそらくは北インドのどこかのはず。
世界中どこの国に存在していてもおかしくないR&Bベースのポップだけど、たまに節回しがほんのちょっとだけインド風味になるところがたまらない。(言語の響きに引っ張られているのか?)
Raman "Jadui Pari"
この曲はちょっとボサノヴァっぽいコード進行で、インド人もこういうコード進行をオシャレだと感じるんだなあと思うとなかなか感慨深い。
ミュージックビデオを見る限り、Raman、見た目もなかなかのイケメンだ。
こういうタイプのシンガーが今後インドでどれくらいメジャーになるものか、気になるところではある。
カンナダ語(ベンガルールなどがある南インドのカルナータカ州の公用語)で歌うSanjith Hedgeもちょっと藤井風っぽい感じのあるR&Bスタイルのシンガー。
Sanjith Hegde "Gulaabo"
音楽のスタイルもそうだが、ミュージックビデオの無機質にも有機的にも見える複雑なコレオグラフィーや、現実とシュールが入り混じった世界観もすごく今っぽい。
インドの場合、ヒップホップではローカル色が強く出るけれど、R&Bになるとそうでもなく無国籍な感じ(ミドルクラス趣味というか)になるところも面白いと思う。
これは、楽曲が表現している内容だけでなく、作り手やリスナーの生きている世界、見ている世界の違いによるものと見ていいだろう。
あと関係ないけど、サビがちょっとゲラゲラポーみたいに聴こえる。
もうちょっとクラシックなタイプというか、ジャズっぽいアレンジの歌を歌うこんなシンガーもいる。
デリー出身のVasu Rainaのこの曲は、トランペットのイントロからしてシブい。
Vasu Raina "aag"
こうした生音っぽいグルーヴへの接近は以前特集したヒップホップのビートのディスコ化とも共鳴している感じがする。
ギターやピアノ(インドの場合、気候の影響や調律師の不足からエレピがほとんどらしい)の弾き語り的なスタイルが多かったSSWやDTMっぽいビートに飽きてきたラッパーたちが、反動としてこういうスタイルに寄せてきているのかもしれない。
同様にホーンが効いたレイドバックした曲では、ベンガルールのTushar MathurのEP "Snooze"もかなり良かった。
Tushar Mathur "Snooze"
ぶん殴られたヒゲ面のインド人男性(なぜか絆創膏に花)という、インパクトがありすぎるジャケからは想像もつかないシルキーな感触のR&Bポップスで、どことなく懐古趣味的な音像はデリーのPeter Cat Recording Co.にも通じるものがある。
(そういえば今年リリースされたPeter Cat Recording Co.の"Beta"も「上質な退屈さ」ともいえる独特の音楽性であいかわらずの良作でした)
こうした良質なインド産英語インディーズ音楽は、今のところインド国内ではそこまで市場が広がらなさそうなので、海外のリスナーにもっと見つけられてほしいな、と思うばかり。
以前紹介したSanjeeta Bhattacharyaの新曲もあいかわらずキャッチーな佳曲。
今回はJhalliという女性シンガーとのコラボになっている。
Sanjeeta Bhattacharya x Jhalli "Main Character Energy"
ミュージックビデオも凝っていて、インド女性のシスターフッド賛歌になっているところも素晴らしい。
彼女の音楽には、いつも「女性らしさを女性自身のものとして謳歌する」というテーマが通底している。
あまりインディーズ趣味に走りすぎても「インドのR&Bなんて一部の好事家がやってるだけでしょう」と思われてしまいそうなので(まあそうなんだけど)、ここでメジャーどころを。
さあざまな言語の映画のプレイバックシンガーとしても大活躍しているケーララ出身のBenny Dayalが今年リリースしたマラヤーラム語の曲はこんな感じ。
Benny Dayal & Hashbass Feat. Vivzy "Ith Athyamai"
この曲の言語はマラヤーラム語で、言語の響きに影響を受けた歌い回しが随所に散りばめられているところがまた良い。
共演のHashbassはデリーのベースギター奏者兼ビートメーカーで、VivzyはBennyと同郷のケーララのフィメール・ラッパー。
タミル系アメリカ人のSid Sriramをはじめ、プレイバックシンガーがソロでR&B系の曲をリリースするという例も増えてきたようだ。
南アジアのシンガーは、人種的な特徴からそうなるのか、男女ともにとても甘い声をしている人が多いので、ソウルやR&Bは彼らの良さがもっとも活かせるジャンルのひとつだろう。
今後、さらに魅力的なシンガーや楽曲が生まれてくることを期待したい。
さて、ここから先は記事の本題とは別の話。
最近ブログに「あなたの感覚は古すぎます」「あなたはこのアーティストに気づくのが遅すぎます」という趣旨のコメントをくれた人がいて、「こんなふうにディスられるなんて、まるでいっぱしの音楽評論家になったみたいだな」と笑ってしまったのだけど、「扱うアーティストが偏りすぎ」という指摘もあったので、誤解のないように書いておく。
多くの方はお気付きだと思いますが、このブログはインドの音楽シーン全体をくまなく紹介するものではなく、ヒップホップとかロックとか電子音楽といったジャンルを中心に、インディペンデントな形式で活動しているアーティストを中心に扱っています。
だから偏っていると言われれば、もちろん偏っている。
インドのポピュラー音楽のまだまだ本流である映画音楽もあんまり扱ってません。
理由は、映画についてはすでに優れた紹介者の方がたくさんいるし、個人的に「映画のために作られた音楽」よりも、もっと作家性の強い音楽に興味があるから。
世界最大の国のインディーズシーンが急速な勢いで発展しているということ自体わくわくするし、音楽的にかっこいいと思えるアーティストも、メジャーよりアンダーグラウンドにより多いと感じています。
インドで大衆的な人気がある音楽を知りたかったら、AIに聞くとか、サブスクの各種現地チャートをチェックするとか、インドの情報サイトをグーグル翻訳するとかでほぼ事足りてしまうので、改めて自分の言葉で文章化する必要性をあんまり感じていません。
世界最大の国のインディーズシーンが急速な勢いで発展しているということ自体わくわくするし、音楽的にかっこいいと思えるアーティストも、メジャーよりアンダーグラウンドにより多いと感じています。
インドで大衆的な人気がある音楽を知りたかったら、AIに聞くとか、サブスクの各種現地チャートをチェックするとか、インドの情報サイトをグーグル翻訳するとかでほぼ事足りてしまうので、改めて自分の言葉で文章化する必要性をあんまり感じていません。
というわけで、このブログでは、現地でそこまで「売れて」いなくても、面白いと感じたものを積極的に紹介しています。
今回紹介したアーティストも、Benny Dayal以外はインドでもほぼ無名と言っていい存在だと思います。
今回紹介したアーティストも、Benny Dayal以外はインドでもほぼ無名と言っていい存在だと思います。
紹介する基準は、まず何よりも音楽的に面白いこと。かっこいいこと。
ジャンルの解釈や表現が興味深かったり、個性が強かったり、面白いストーリーがあったり、強いメッセージが込められていたり、日本や海外の音楽シーンと共鳴していたり、といったアーティストや楽曲もすすんで取り上げています。
もちろんこの基準にあてはまる音楽は人によって違うし、そもそも音楽の価値を全然違うところに見出している人も多いでしょう。ジャンルの解釈や表現が興味深かったり、個性が強かったり、面白いストーリーがあったり、強いメッセージが込められていたり、日本や海外の音楽シーンと共鳴していたり、といったアーティストや楽曲もすすんで取り上げています。
なんか軽刈田の趣味が合わないな、と思う人がいたら、ぜひSNSなりブログなりで、自分の好きな音楽を発信してみてください。
インドの音楽に注目してくれる人が増えるのは、むしろうれしいことなので。
てなわけで、今後もこのスタンスでやっていくのでよろしくね。
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2024年02月06日
Indi-Popの時代! 90年代インドの音楽シーン
今さら言うのもなんだが、このブログでは主にインドのインディペンデント音楽を紹介している。
この「インディペンデント(インディーズ)」という言葉、じつはインドでは、日本や他の国とは違う意味を持っている。
日本や欧米では、インディーズという言葉は、大手のレコード会社ではなくて、より小規模なコアなジャンルを扱うレーベルや、そこに所属しているアーティスト、そして彼らの非商業主義的な姿勢のことを指す。
今では個人でも音楽を流通させることができる時代なので、レーベルや事務所に所属せず、完全に「インディペンデント」で制作・発信・プロモーションを行っているアーティストも珍しくない(これは今ではインドも同じ)。
では、インドにおける「インディペンデント」とは、他にどんな意味があるのか。
それはずばり、「ポピュラー音楽の主流である映画音楽から独立している」という意味である。
長い間ヒット曲といえば映画音楽(ミュージカルシーンのための挿入歌)が独占していたインドの音楽シーンを中世ヨーロッパ風に言うならば「音楽は映画の婢女(はしため)」。
音楽は、映画を効果的に盛り上げるため、そして映画をプロモーションするためだけに作られ、使われてきた。
だから、こうした構図の外側で、映画のためではなく純粋に音楽そのものとして作られた楽曲は、インドでは十分に「インディペンデント」と呼ぶに値するし、実際にそう呼ばれてきたのである。
そんなの誰が決めたんだと聞かれたら困るが、私がチェックしているインドの音楽メディアでは、インディペンデントという用語はこのように使われていることが多いように思う。
最近ではこうした構造は変わりつつあり、2022年4月にインドのビジネスメディアMintに掲載された記事によると、その前の3年間でインドのレーベルがリリースした曲のうち、非映画音楽が占める割合は、5〜10%から30%にまで拡大したという。
その話はまた別の機会にするとして、今回は30年ほど遡って、インドでインディペンデントな音楽が注目され始めた時代に注目してみたい。
映画音楽以外のポピュラー音楽が少しずつ目立つようになってきたのは1990年代のこと。
この時代、映画から独立した音楽は、インディポップ(Indi-Pop)と呼ばれていた。
お気づきの通り、この呼称は、Indian popとIndipendent popのダブルミーニングになっている。
Indi-Popという言葉が最初に使われたのは1981年で、最初にそう呼ばれたのはインド系シンガーSheila Chandraを中心としたイギリスのバンドMonsoonだった。
(今回の記事の趣旨から外れるので詳述はしないが、彼らはワールドミュージック的なアレンジでビートルズの"Tomorrow Never Knows"をカバーするなど結構面白い音楽をやっているので、興味がある人はチェックしてみてほしい)
しかしこのIndi-Popという言葉が広く使われるようになるには、90年代の到来を待たなければならなかった。
「Indi-Pop」と検索すると、90年代の音楽を扱った記事やプレイリストばかり出てきて、ほかの時代の音楽はほとんど見当たらない。
Indi-Popと呼ばれるのは、90年代から00年代前半という限られた時代のポップミュージックだけなのである。
例えば、インディポップの女王(Queen of Indipop)と呼ばれていたAlisha Chinaiの"Made In India"という曲は、1995年の作品。
Alisha Chinai "Made In India"
日本人にとっては「インディペンデント」ではなく「インディアン」のほうが強く感じられるのがIndi-Popである。
発売元は大手のグラモフォン(現Saregama)で、つまり映画音楽からは独立しているものの、Indi-Popは本来の意味のインディーズというわけではなかった。
それでも、当時のインドでは映画と関係のないところでこういうキャッチーなポップスが作られること自体が斬新でクールだったのだろう。
この曲の人気は根強く、カリフォルニアのインド系ラッパー/シンガーRaja Kumariが2022年にリリースした同名曲でコーラス部分を引用している。
Raja Kumari "Made in India"
Raja Kumari版のミュージックビデオは、80年代から活躍している大女優Madhuri Dixitが出演したことでも話題を集めた。
Alisha Chinaiが歌ったオリジナルバージョンを作曲・プロデュースしたのはBidduという人物だ。
10代の頃ベンガルールでTrojansというビートグループ(60年代のインドではロックバンドをこう呼んでいた)を組んでいた彼は、その後イギリスに渡って音楽プロデューサーとしての地位を確立。
渡英後の仕事では、ジャマイカ人シンガーCarl Douglasのヒット曲"Kung Fu Fighting"(1974年)が有名だ。
この曲は世界中で1,100万枚を売り上げたそうだが、インド人がジャマイカ人シンガーをプロデュースしてエセ中国風のディスコ曲をヒットさせたというのだからわけが分からない。
Bidduは日本の歌謡界とも縁があって、1969年にはザ・タイガースの"Smile For Me"をプロデュース、(作詞作曲はビージーズのメンバー)、1988年には中森明菜の"Blonde"(Winston Selaなる人物との共作)を手がけている。
1970年代末以降はボリウッド映画にも参入し、90年代にはIndi-Popの代表的な作曲家として活躍した。
のちにプレイバックシンガーとして人気を博すShaanがSagarikaなる女性シンガーと1996年にリリースしたアルバム"Naujawan"もBidduによるプロデュースで、Sagarikaが歌うこの曲は、Winkみたいな人工的なポップネスが時代を感じさせる。
Shaan & Sagarika "Disco Deewane"
今ではプレイバックシンガーの印象が強いShaanはもともとIndi-Popシーン出身で、デビュー曲はやはりIndi-Popのシンガーとして活躍したShweta Shettyらと共演したこの曲だった。
Shweta Shetty, Style Bhai, Sagarika, Shaan, Babul Supriyo "Q Funk"
マイケル・ジャクソンみたいなイントロで始まるこの曲、今聴くとかっこよさとダサさのブレンドが絶妙。
Q-Funkというタイトルの意味は不明だが、この曲がリリースされた時期(1995年)を考えると、ジョージ・クリントン率いるP-Funkではなく、西海岸のヒップホップG-Funkからの命名だろうか。
Shweta Shettyの代表曲はこの"Johnny Joker"。
Shweta Shetty "Johnny Joker"
まったく知らない曲なのに妙になつかしいこの感覚は何なんだろうか。
外国人が日本のシティポップを聴いたときに感じるのはこういう気持ちなのかもしれない。
ちなみにこの曲もBidduのプロデュース。
何度かこのブログで紹介しているが、インドで最初のラップとされる1992年のこの曲も、Indi-Pop期のヒット曲だ。
Baba Sehgal "Thanda Thanda Pani"
QueenとDavid Bowieが共作した"Under Pressure"をそのままサンプリングしたVanilla Iceの"Ice Ice Baby"をさらにそのままパクるという驚異の孫引きパクりで、著作権的にはかなりグレー(ていうか一発アウト?)かもしれないが、ビートルズの時代から西洋のポピュラー音楽がインドの音楽を引用してきたことを考えれば、個人的には笑って済ませたい。
インド系ラップだと、他にUsherの"Yeah!"をパクった曲もあったりするのだが、その話はまたいずれ。
Indi-Popの時代には海外から逆輸入されたグループも活躍していた。
この時代の在外インド人シンガーではApache IndianやPanjabi MCが有名だが、Indi-Popという文脈では、インド人シンガーNeeraj Shridharを中心にスウェーデンで結成されたBombay Vikingを推したい。
Bombay Vikings "Kya Surat Hai"
この曲は1999年にリリースされた彼らのファーストアルバムからのヒット曲。
このアルバムは、往年のボリウッドのヒット曲にエレクトロ・ディスコ風のアレンジを施して人気を集めたという。
"Very"(1993年)時代のPet Shop Boysみたいなキラキラしたサウンドが高揚感とノスタルジーを同時にかきたてる。
Indi-Pop時代後期に特徴的だったのは、スパイスガールズとかバックストリートボーイズみたいなアイドルっぽい佇まいのグループもデビューしていたということ。
私の知る限り、この手のグループは今のインドには(少なくとも今日インディペンデント音楽として扱われるシーンには)存在していない。
Viva "Hum Naye Geet Sunayein"
A Band of Boys "Meri Neend"
どちらもオフィシャルチャンネルなのに映像が粗いのが気になるが(マスターデータ残ってないのか)、それは置いておいて。
Vivaの活動時期は2002年から2005年、A Band of Boysは2001年から2006年で、どちらも決して長く活躍したグループではないが、活動期間の短さにもかかわらず、当時の音楽シーンを振り返る記事で言及されることが多く、インド人の記憶に深く刻まれているようである。
VivaのメンバーだったAnushka Manchandaは、今ではKiss Nukaという名前でクラブミュージックのアーティストとして活躍している。
A Band of Boysは2018年に再結成を果たしたようだ。
ここまで紹介した楽曲を聴いて分かる通り、Indi-Popは「Indi」と言っているものの、いわゆるインディーズ的な通好みだったり実験的だったりする作風なわけではなく、音楽的にはほとんど王道のポップスである。
今回の記事では、今聴いてぎりぎりカッコいいと思えなくもない曲を集めたつもりだが、他にはインド演歌みたいな曲も結構多くて、Indi-Popは当時のインドの西洋的ポピュラー音楽受容の限界を感じさせられるジャンルでもある。
正直に言うと、2024年に外国人が聴くには、「当時のインドではこれが斬新でクールだったはず」という想像力のスパイスを効かせる必要があるかもしれない。
90年代のインドは今日まで続く経済成長の初期段階で、都市部の中産階級がようやくケーブルテレビや衛星放送で多様な音楽に触れられるようになった時代だ。
どこか垢抜けなくて、しかし根拠のない希望に満ちあふれたサウンドは、ちょうど日本の70年代や80年代のように、インドでもこの時代にしか作ることができないものだったのだろう。
最近のインドでは、日本におけるシティポップリバイバルのように、この頃を懐古する動きが出始めている。
前述のRaja KumariによるAlisha Chinaiの"Made In India"の引用や、Karan Kanchanがプロデュースした曲(DIVINEの"Baazigar")に1992年の同名映画のタイトル曲をサンプリングされている例がそれにあたる。
過去の名曲をLo-Fi処理してノスタルジーをブーストしたリミックスも人気があるようだし、ミュージックビデオではアナログ風に加工された映像がトレンドになっている。
今ではインドでも、インディペンデントという言葉の使われ方はすっかり世界標準になってしまったが、Indi-Popが現代の音楽シーンでかっこよく生まれ変わる可能性はまだまだありそうだ。
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この「インディペンデント(インディーズ)」という言葉、じつはインドでは、日本や他の国とは違う意味を持っている。
日本や欧米では、インディーズという言葉は、大手のレコード会社ではなくて、より小規模なコアなジャンルを扱うレーベルや、そこに所属しているアーティスト、そして彼らの非商業主義的な姿勢のことを指す。
今では個人でも音楽を流通させることができる時代なので、レーベルや事務所に所属せず、完全に「インディペンデント」で制作・発信・プロモーションを行っているアーティストも珍しくない(これは今ではインドも同じ)。
では、インドにおける「インディペンデント」とは、他にどんな意味があるのか。
それはずばり、「ポピュラー音楽の主流である映画音楽から独立している」という意味である。
長い間ヒット曲といえば映画音楽(ミュージカルシーンのための挿入歌)が独占していたインドの音楽シーンを中世ヨーロッパ風に言うならば「音楽は映画の婢女(はしため)」。
音楽は、映画を効果的に盛り上げるため、そして映画をプロモーションするためだけに作られ、使われてきた。
だから、こうした構図の外側で、映画のためではなく純粋に音楽そのものとして作られた楽曲は、インドでは十分に「インディペンデント」と呼ぶに値するし、実際にそう呼ばれてきたのである。
そんなの誰が決めたんだと聞かれたら困るが、私がチェックしているインドの音楽メディアでは、インディペンデントという用語はこのように使われていることが多いように思う。
最近ではこうした構造は変わりつつあり、2022年4月にインドのビジネスメディアMintに掲載された記事によると、その前の3年間でインドのレーベルがリリースした曲のうち、非映画音楽が占める割合は、5〜10%から30%にまで拡大したという。
その話はまた別の機会にするとして、今回は30年ほど遡って、インドでインディペンデントな音楽が注目され始めた時代に注目してみたい。
映画音楽以外のポピュラー音楽が少しずつ目立つようになってきたのは1990年代のこと。
この時代、映画から独立した音楽は、インディポップ(Indi-Pop)と呼ばれていた。
お気づきの通り、この呼称は、Indian popとIndipendent popのダブルミーニングになっている。
Indi-Popという言葉が最初に使われたのは1981年で、最初にそう呼ばれたのはインド系シンガーSheila Chandraを中心としたイギリスのバンドMonsoonだった。
(今回の記事の趣旨から外れるので詳述はしないが、彼らはワールドミュージック的なアレンジでビートルズの"Tomorrow Never Knows"をカバーするなど結構面白い音楽をやっているので、興味がある人はチェックしてみてほしい)
しかしこのIndi-Popという言葉が広く使われるようになるには、90年代の到来を待たなければならなかった。
「Indi-Pop」と検索すると、90年代の音楽を扱った記事やプレイリストばかり出てきて、ほかの時代の音楽はほとんど見当たらない。
Indi-Popと呼ばれるのは、90年代から00年代前半という限られた時代のポップミュージックだけなのである。
例えば、インディポップの女王(Queen of Indipop)と呼ばれていたAlisha Chinaiの"Made In India"という曲は、1995年の作品。
Alisha Chinai "Made In India"
日本人にとっては「インディペンデント」ではなく「インディアン」のほうが強く感じられるのがIndi-Popである。
発売元は大手のグラモフォン(現Saregama)で、つまり映画音楽からは独立しているものの、Indi-Popは本来の意味のインディーズというわけではなかった。
それでも、当時のインドでは映画と関係のないところでこういうキャッチーなポップスが作られること自体が斬新でクールだったのだろう。
この曲の人気は根強く、カリフォルニアのインド系ラッパー/シンガーRaja Kumariが2022年にリリースした同名曲でコーラス部分を引用している。
Raja Kumari "Made in India"
Raja Kumari版のミュージックビデオは、80年代から活躍している大女優Madhuri Dixitが出演したことでも話題を集めた。
Alisha Chinaiが歌ったオリジナルバージョンを作曲・プロデュースしたのはBidduという人物だ。
10代の頃ベンガルールでTrojansというビートグループ(60年代のインドではロックバンドをこう呼んでいた)を組んでいた彼は、その後イギリスに渡って音楽プロデューサーとしての地位を確立。
渡英後の仕事では、ジャマイカ人シンガーCarl Douglasのヒット曲"Kung Fu Fighting"(1974年)が有名だ。
この曲は世界中で1,100万枚を売り上げたそうだが、インド人がジャマイカ人シンガーをプロデュースしてエセ中国風のディスコ曲をヒットさせたというのだからわけが分からない。
Bidduは日本の歌謡界とも縁があって、1969年にはザ・タイガースの"Smile For Me"をプロデュース、(作詞作曲はビージーズのメンバー)、1988年には中森明菜の"Blonde"(Winston Selaなる人物との共作)を手がけている。
1970年代末以降はボリウッド映画にも参入し、90年代にはIndi-Popの代表的な作曲家として活躍した。
のちにプレイバックシンガーとして人気を博すShaanがSagarikaなる女性シンガーと1996年にリリースしたアルバム"Naujawan"もBidduによるプロデュースで、Sagarikaが歌うこの曲は、Winkみたいな人工的なポップネスが時代を感じさせる。
Shaan & Sagarika "Disco Deewane"
今ではプレイバックシンガーの印象が強いShaanはもともとIndi-Popシーン出身で、デビュー曲はやはりIndi-Popのシンガーとして活躍したShweta Shettyらと共演したこの曲だった。
Shweta Shetty, Style Bhai, Sagarika, Shaan, Babul Supriyo "Q Funk"
マイケル・ジャクソンみたいなイントロで始まるこの曲、今聴くとかっこよさとダサさのブレンドが絶妙。
Q-Funkというタイトルの意味は不明だが、この曲がリリースされた時期(1995年)を考えると、ジョージ・クリントン率いるP-Funkではなく、西海岸のヒップホップG-Funkからの命名だろうか。
Shweta Shettyの代表曲はこの"Johnny Joker"。
Shweta Shetty "Johnny Joker"
まったく知らない曲なのに妙になつかしいこの感覚は何なんだろうか。
外国人が日本のシティポップを聴いたときに感じるのはこういう気持ちなのかもしれない。
ちなみにこの曲もBidduのプロデュース。
何度かこのブログで紹介しているが、インドで最初のラップとされる1992年のこの曲も、Indi-Pop期のヒット曲だ。
Baba Sehgal "Thanda Thanda Pani"
QueenとDavid Bowieが共作した"Under Pressure"をそのままサンプリングしたVanilla Iceの"Ice Ice Baby"をさらにそのままパクるという驚異の孫引きパクりで、著作権的にはかなりグレー(ていうか一発アウト?)かもしれないが、ビートルズの時代から西洋のポピュラー音楽がインドの音楽を引用してきたことを考えれば、個人的には笑って済ませたい。
インド系ラップだと、他にUsherの"Yeah!"をパクった曲もあったりするのだが、その話はまたいずれ。
Indi-Popの時代には海外から逆輸入されたグループも活躍していた。
この時代の在外インド人シンガーではApache IndianやPanjabi MCが有名だが、Indi-Popという文脈では、インド人シンガーNeeraj Shridharを中心にスウェーデンで結成されたBombay Vikingを推したい。
Bombay Vikings "Kya Surat Hai"
この曲は1999年にリリースされた彼らのファーストアルバムからのヒット曲。
このアルバムは、往年のボリウッドのヒット曲にエレクトロ・ディスコ風のアレンジを施して人気を集めたという。
"Very"(1993年)時代のPet Shop Boysみたいなキラキラしたサウンドが高揚感とノスタルジーを同時にかきたてる。
Indi-Pop時代後期に特徴的だったのは、スパイスガールズとかバックストリートボーイズみたいなアイドルっぽい佇まいのグループもデビューしていたということ。
私の知る限り、この手のグループは今のインドには(少なくとも今日インディペンデント音楽として扱われるシーンには)存在していない。
Viva "Hum Naye Geet Sunayein"
A Band of Boys "Meri Neend"
どちらもオフィシャルチャンネルなのに映像が粗いのが気になるが(マスターデータ残ってないのか)、それは置いておいて。
Vivaの活動時期は2002年から2005年、A Band of Boysは2001年から2006年で、どちらも決して長く活躍したグループではないが、活動期間の短さにもかかわらず、当時の音楽シーンを振り返る記事で言及されることが多く、インド人の記憶に深く刻まれているようである。
VivaのメンバーだったAnushka Manchandaは、今ではKiss Nukaという名前でクラブミュージックのアーティストとして活躍している。
A Band of Boysは2018年に再結成を果たしたようだ。
ここまで紹介した楽曲を聴いて分かる通り、Indi-Popは「Indi」と言っているものの、いわゆるインディーズ的な通好みだったり実験的だったりする作風なわけではなく、音楽的にはほとんど王道のポップスである。
今回の記事では、今聴いてぎりぎりカッコいいと思えなくもない曲を集めたつもりだが、他にはインド演歌みたいな曲も結構多くて、Indi-Popは当時のインドの西洋的ポピュラー音楽受容の限界を感じさせられるジャンルでもある。
正直に言うと、2024年に外国人が聴くには、「当時のインドではこれが斬新でクールだったはず」という想像力のスパイスを効かせる必要があるかもしれない。
90年代のインドは今日まで続く経済成長の初期段階で、都市部の中産階級がようやくケーブルテレビや衛星放送で多様な音楽に触れられるようになった時代だ。
どこか垢抜けなくて、しかし根拠のない希望に満ちあふれたサウンドは、ちょうど日本の70年代や80年代のように、インドでもこの時代にしか作ることができないものだったのだろう。
最近のインドでは、日本におけるシティポップリバイバルのように、この頃を懐古する動きが出始めている。
前述のRaja KumariによるAlisha Chinaiの"Made In India"の引用や、Karan Kanchanがプロデュースした曲(DIVINEの"Baazigar")に1992年の同名映画のタイトル曲をサンプリングされている例がそれにあたる。
過去の名曲をLo-Fi処理してノスタルジーをブーストしたリミックスも人気があるようだし、ミュージックビデオではアナログ風に加工された映像がトレンドになっている。
今ではインドでも、インディペンデントという言葉の使われ方はすっかり世界標準になってしまったが、Indi-Popが現代の音楽シーンでかっこよく生まれ変わる可能性はまだまだありそうだ。
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goshimasayama18 at 22:29|Permalink│Comments(0)
2023年01月08日
(後編)Rolling Stone Indiaが選ぶ2022年のベストシングルTop22 さらなる多様なポップミュージックたち
前回に続いて、Rolling Stone Indiaが選んだ2022年のベストシングル22選の後編、Top10を一言レビュー付きで紹介する。
22〜11位同様、アコースティック系ポップを基調としつつも、Top10にはさらに多様性にあふれた曲が集まっている。
10位 MS Krsna “Odathey Oliyathey”
ミズ・クリシュナという女性アーティストかと思ったら男性だった。
デリーのベテランラッパーKR$NAとも関係がない、チェンナイのシンガーソングライターだ。
使っている楽器こそアコースティックギターだが(途中からバスドラの4つ打ちが入る)そのフレーズや歌メロは洋楽的というよりはタミル的。
タミルらしい個性を感じさせる面白いアーティストだ。
9位 The Colour Compound “Holding On To The Hope”
アメリカっぽいカントリー系ロックチューンかと思ったら、この曲も4つ打ちのバスドラが入ってくる。
さわやかでポップなメロディーが印象的。
ムンバイの3ピースロックバンドだそうで、海沿いの道をドライブしたら気持ちよさそうな曲だ。
どうでもいいが、colourの綴りにイギリス領だった面影を感じさせられる。
8位 Friends from Moon “Rebellion Road”
過去にはあまりにも壮大なオーケストレーションを導入したデス/ブラックメタル(以前の記事で「サウンドトラックメタル」と命名させてもらった)を演奏していたデリーのRitwik ShivamのソロプロジェクトFriends from Moonが、気がついたらプログレメタルっぽい要素のあるポップなロックバンドに様変わりしていた。
もはやデスメタル的なグロウル(いわゆるデス声)は完全に聴かれなくなり、YouTubeの静止画もこのかわいらしさだ。
今っぽい音ではないが、Burrn!で結構いい点数取りそうな感じというか、これはこれで上質な音楽だ。
一昨年のハロウィン(ジャーマンメタルではなく、10月末の)にはビートルズのCome Togetherのインダストリアル的カバーを披露したりもしていて、予想のつかない音楽性で今後も楽しませてくれそうなアーティストだ。
7位 Meba Ofilia “Feelings”
インド北東部メガラヤ州の州都シロン(古くから「インドのロックの首都」と言われている街だ)のR&Bシンガー/ラッパーのMeba Ofiliaの新曲は、ヒップホップ的な要素のないR&Bバラードだ。
北東部のミュージシャンはブルースや80年代など、古めの洋楽を好む傾向が強いが、この曲も音楽性としては90年代くらいの感じ。
6位 Vaisakh Somanath “Death of January”
マラヤーラム語を中心に多言語で楽曲を発表するシンガーソングライターVaisakh Somanathが今は亡き母を偲んで書いた曲。
シンプルだが美しいメロディーで始まり、静かに盛り上がってゆく構成が胸に沁みる。
歌い回しとラップから、マラヤーラム語の響きの心地よさを存分に感じることができる曲だ。
せっかくインドのランキングなのだから、こういう曲がもっと聴きたいよな。
5位 Lucky Ali “Intezaar”
Lucky Aliはボリウッド映画の曲なども歌うメインストリーム寄りのシンガーだが、どういうわけかインディペンデント系の音楽を推す傾向が強いRolling Stone Indiaにも取り上げられることが多い。
プレイバックシンガーという出自にふさわしく、この曲もポップな分かりやすさと洋楽的な方向の洗練をうまく融合させたアレンジが素晴らしい。
後半の間奏でウォール・オブ・サウンド的なコーラスが出てきたときには思わず唸ってしまった。
ミュージックビデオも映画的な美しさがある。
4位 Shikhar “Moonbrain”
憂を帯びたキャッチーな歌メロと、アルペジオとカッティングを織り交ぜたギターのバッキングが素晴らしい。
インド中部マディヤ・プラデーシュ州の州都ボーパール出身だそうで、こう言ってはなんだが、かなり地味な都市からこれだけの洗練されたシンガーソングライターが出てきたことに驚かされた。
タイトルの意味は、簡単なことも疎かになってしまうようなぼーっとした精神状態を指す言葉だそうだ。
3位 Dhruv Visvanath “Suffocation”
Dhruv VisvanathはアメリカのAcoustic Guitar Magazineで30歳以下の偉大なギタリスト30名に選ばれたこともあるという、ニューデリーを拠点に活躍する活動するシンガーソングライター。
この曲もアコースティックギターのパーカッシブな奏法が印象的(こういうのは生演奏を見ないと今ひとつ盛り上がらないんだよな…とも思うが)。
演奏だけでなく、歌メロにはフックがあるし、ファルセットのサビにも色気があるし、曲自体も非常によくできている。
さすがにトップ3の曲になるとクオリティが高い。
2位 Reble x kbjj “Talk of the Town”
KbjjというのはヴォーカルのEmma ChallamとプロデューサーのErick Frankyからなるポップデュオ、途中でRableというのはこの曲でコラボレーションしているフィメールラッパー。
全員が北東部メガラヤ州の州都シロン出身のミュージシャンたちだ。
これまでインドのアーティストでは聴いたことがない音楽性で、強いていうならば(ネオ)カワイイの要素を大幅に減じたCHAI(インドの話題だけれども、日本のバンドのほうのね)みたいな感じ?
インド北東部の独自性と、「インドのロックの首都」と言われる当地の面白さの両方が感じられるアーティストだ。
1位 Chirag Todi (ft. Ramya Pothuri & RANJ) “Love Nobody”
Chirag TodiはHeat Sinkというジャズロックバンドのメンバーで、Rolling Stone Indiaが選ぶ2020年のベストシングルの1位にも選ばれたアーティスト。
この"Love Nobody"も、2020年に選ばれていた"Desire"で共演していたムンバイの「プログレッシブ・ドリームポップ」ユニットSecond SightのPushkar Srivatsalが今作をプロデュース。
Karan Kanchanはじめさまざまなアーティストとの共演で知られるRamya Pothuri、女性ラッパーのRANJとのコラボレーションによる「ラップ入りシティポップ」的な小洒落たサウンドはいかにもRolling Stone India好みだ。
と、全体的に洋楽的ポップアーティストとしての質の高さを誇示しつつも、随所にインドならではの個性が感じられるシングルTop22でした。
来年はTop23になるのかと思うと今から目眩がするぜ。
全体的にロック/R&B色が強くて、EDM系が少なく、ヒップホップが全くないのが昨今のインドのシーンを考えるとちょっと不思議な選曲ではあったけど、そこは媒体の傾向ってことなのかな。
過去のTop10と聴き比べてみるのも一興です。
昨年いきなり1位にランクインした実力派ジャズ/R&BのVasundhara Veeはその後ボリウッドのプレイバックシンガーとして活躍しているようだ。
2020年はより小洒落た感じで揃えてきていた感じがある。
そう考えると、やはり20曲くらい選んだ方が個性が感じられて良いのかな。
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goshimasayama18 at 14:15|Permalink│Comments(0)
2023年01月05日
(前編)Rolling Stone Indiaが選ぶ2022年のベストシングルTop22 インドのインディー音楽はここまで来た
例年このブログで特集している「Rolling Stone Indiaが選ぶベスト○○Top10」シリーズ。
前回特集したベストアルバム部門が、例年と違って15作品選ばれていてびっくりしたのだが、そのあとに発表されたベストシングル部門はなんと22作品!
例年の倍以上!
もちろんこれはインドのインディー音楽シーンが急成長していることを端的に表しているのだが、いい作品が多かったらその中から厳選して10作品選ぶのではなく、躊躇なく15作品とか22作品とか選んでしまうところがいかにもインドらしい。
というわけで、今年は大盤振る舞い。
2回に分けてその22作品をすべて紹介する。
はじめに結論から言ってしまうと、このランキングに選ばれた曲は、Rolling Stone Indiaという媒体の性格を反映して、洋楽的な意味での「よい曲」が並んでいる。
何も言わずに聴かせたらインドのアーティストだとは思えない曲ばかりで、インドの音楽シーンもここまでグローバルになってきたのかと思うと感慨深い。
いっぽうで、それは海外のアーティストと比較したときに没個性という意味でもあるわけで、今日のポピュラー音楽としての洗練された響きを維持しつつ、インド的な特徴も融合した音楽をどう作るかという点が、今後のインドのインディー音楽の発展のひとつの鍵となるのだろう。
能書きはともかくさっそく紹介に移ります。
22位 BeBhumika, Katoptris “Pareshaan”
Ritvizマナーの男女ヴォーカルのヒンディー語EDM(いわゆる'印DM')。
インド的アイデンティティと現代的なポップサウンドの両立という点では、この曲は上位ランクの楽曲よりもがんばっている。
ただインド国内ではこの手のサウンドは珍しくなくなってきており、インドのシーンの中で今後オリジナリティをどう出してゆくのかというまた別の課題がありそうだ。
Ritvizフォロワーにとどまらない次の展開を期待したい。
21位 The Runway "Find Me, Find You"
このブログでも何度も紹介している、インド北東部のナガランド州から登場したバンド。
聴いての通り80年代リバイバル風のポップなロックだが、北東部のバンドにありがちな80〜90年代趣味が、結果的に今の時代の懐古的エモさ嗜好にばっちりはまっているように思える。
2022年は、ナガランドからこれまた80年代趣味全開なAbout Usというすごいハードロックバンドも登場しており、しばらくナガのシーンから目が離せなくなりそうだ。
20位 Mali “Ashes”
Maliはムンバイ出身のマラヤーリー系(ケーララ系)シンガーソングライター。
彼女のいつものスタイルであるやわらかいアコースティックなサウンドとやさしいヴォーカルの1曲。
そういえば、彼女はコロナ前に日本でミュージックビデオを撮ることを計画していたようだが、その後どうなったのだろうか。
19位 Kenneth Soares “Cigarettes”
イントロのパーカッション使いやレイドバックした雰囲気など、70年代アメリカンロックを思わせるインドでは珍しいタイプの曲。
しいて近い雰囲気を挙げるとしたら13位のTejasだろうか。
ムンバイのシンガーソングライターだそうだ。
18位 Tanmaya Bhatnagar “kyun hota hai?”
ニューデリーのシンガーソングライターによる歌ものヒンディー・エレクトロポップ。
全体的に柔らかめのサウンドが心地よい。
この手のエレクトロポップ勢は本当に増えてきた。
17位 Gaya "Qisse"
品の良いアコースティックなアーバンフォーク。
声質や歌い回しに、北インドっぽい節回しが顔を出すのがチャーミングだ。
ムンバイだろうか、下町を叙情的に撮影したミュージックビデオも美しい。
北インドの人かと思ったら、チェンナイ生まれ、ドバイ育ちとのこと。
16位 Raghav Meattle “Am I Overthinking This?”
2020年にリリースした"City Life"が記憶に新しいムンバイのシンガーソングライターRaghav Meattleの新曲は、こちらもアコースティックなフォークだが、英語詞ということもあり、洋楽的なサウンドが印象的。
しみじみと感じ入る曲だが、ややシンプルすぎるようにも思う。
15位 Anoushka Maskey “So Long, Already. Again.”
インド北東部シッキム州のシンガーソングライターによる、これまたアコースティックな曲。
彼女の歌声にはなんとも形容し難い寂寥感があって、どこか日本のフォークソングを思わせる雰囲気がある。
インドに数多い女性シンガーソングライターのなかでも、声に個性が感じられるアーティストだ。
14位 Kamakshi Khanna and Sanjeeta Bhattacharya “Swimming”
デリーのシンガーソングライター2人によるコラボレーション。
これもおだやかなバラードだが、歌声ひとつで空気を変える力があるKamakshi Khannaと実力派シンガーSanjeeta Bhattacharyaの共演となると、さすがに聴きごたえがある。
ミュージックビデオの「女の園」的な世界観も独特だ。
ところで、さいきんのSanjeetaのミュージックビデオは、一昨年の"Khoya Sa"もそうだったが同性愛的なテーマで作られているときが多くてなんかドギマギする。
13位 Tejas “As I’m Getting Older”
ムンバイのシンガーソングライター(どうでもいいけどこのランキングはムンバイとデリーのSSWばっかりだな)Tejasの新作は、いつも通りのダンサブルなポップチューン。
いつも通りよくできているのだが、ちょっとマンネリ感があるかな。
12位 Aanchal Bordoloi “Whiskey Blues”
北東部アッサム州出身、ベンガルールを拠点に活動しているシンガーソングライターによる曲。
タイトル通りアメリカっぽい曲調のアーバンフォークだが、いかに大都市ベンガルールとはいえ、まだまだ保守的なインドで女性がWhisley Bluesというタイトルの曲を発表するのはどういう受け止められ方をするのだろうか。
リベラルな性質の媒体なので、そのあたりの時代性というか先進性もランキングに影響しているのだろうか。
11位 Aarifah “Now She Knows”
ムンバイ出身の女性シンガーソングライターのデビューシングル。
深みのある声で歌われる洋楽的アコースティックバラード。
歌もメロも後半盛り上がってゆくアレンジも悪くないのだが、ここまでちょっと同系統の曲が多すぎるような気がしないでもない。
選者の好みなのだろうか。
というわけで、ここまで12曲を紹介してみました。
上位10曲はまた次回!
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goshimasayama18 at 22:53|Permalink│Comments(0)
2022年09月09日
いまひとつインド国内で人気のない今風かつ欧米風のポップス・アーティストたち
そんなに意識しているわけではないのだけど、考えてみるとこのブログで取り上げる音楽にはだいたい3パターンくらいあって、
- インドのインディペンデント・シーンで人気があるアーティスト
- いかにもインドらしいサウンドや社会的背景のあるアーティスト
- インドらしからぬ欧米的なサウンドや感性を持ったアーティスト
取り上げる対象がこの分類のどれかひとつにしか当てはまらないケースは少なくて、ほとんどの場合、この3つがユニークな形で組み合わさっている。
とくに記事にしやすいのが1と2の混合タイプで、人気があるアーティストであれば、媒体で取り上げられる回数も多いのでネタを集めやすいし、そこにインドならではの要素が入っていればさらに紹介する価値がある、というわけだ。
ヒップホップにしろロックにしろ電子音楽にしろ、欧米で生まれたカルチャーがインドでどう需要・解釈され、実践されているかというテーマは、インドのアーティストが奏でているサウンドと同じくらい刺激的で面白い。
で、問題は3だ。
最近のインドでは、洗練された欧米風ポップスを奏でるインディーズ・アーティストは本当に多い。
ブログを始めた2017年頃はいちいち「インドにもこんなアーティストがいた!」と記事にしていたものだが、今ではそのあまりの多さに、感動のハードルが大幅に上がってしまっている。
その結果、ブログのネタ帳には、ひたすら3のタイプのアーティストが溜まっていってしまうのである。
インドのリスナーはいまだに映画音楽をはじめとするドメスティックなサウンドを好む傾向が強い。
こうしたアーティストのほとんどが、ごく一部の音楽ファンに評価されるのみで、成功とは程遠い状況にいる。
つまり、彼らは音楽的にはなかなか質が高いのだけど、音以外、記事にするようなネタがほとんどないのだ。
今回は、そんな不憫な、しかしサウンド面ではけっこういい線行ってるアーティストたちをまとめて紹介したい。
まずは、EDMアーティストのShivam Bhatia.
Shivam Bhatia "God In Our Eyes"
今となっては古典的にすら感じられるポップ系EDMサウンドに乗せて、ものすごく直接的にドラッグのことを歌った曲。
歌っているのはSarah Solsticeなる白人女性シンガーで、おそらくはインターネットを介したコラボレーションと思われるが、インド国内のソングライターと欧米のシンガーの共演は、最近ちょくちょく見かける組み合わせだ。
この曲はYouTubeで12万回近く再生されている。
Shivam Bhatiaについて調べてみると、他にSpotifyで90万回以上再生されている曲もあるので、彼のことを無名アーティスト扱いするのはちょっと失礼かもしれないが、このサウンドの無個性さが一層の泡沫感(≒バブルガム・ポップ感)を掻き立てる。
印DM(勝手に命名したインド風EDM)っぽい路線に転向したりすると面白いと思うが、さて、今後どうなるだろう。
Chrmng, x milo, "DOSHTI"
続いての人たちも詳細不明。
Chrming,(カンマまでがアーティスト名)という人とmilo.という人(こちらもたぶんピリオドまでがアーティスト名)のコラボレーションで、全く情報がないのだけど、見た目的におそらくインド北東部の人だろうか。
Chrming,のインスタのアカウント名にバングラデシュの国旗があったので、バングラデシュのアーティストかもしれない。
インドのウェブメディアで国内アーティストと並んで紹介されていたので、おそらくはインドか、少なくとも南アジアとは関連がある人のはずだが、映像監督は韓国の人のようで、よく分からない。
8月27日に公開されたこのミュージックビデオの再生回数はまだ1,000回未満。
YouTubeのクレジットを見ると、撮影監督はエド・シーランで、主演女優はエマ・ワトソンとのこと。
ふざけてんのか。
サウンド的にはアコースティックギターを取り入れたメロウなポップスで、これまたどこかで聴いたことがありそうなスタイルだ。
ここまで無個性な音楽をやってるのだから、せめて誰がやってるのかくらいはっきりさせようぜ、と思わなくもないが、ヴェイパーウェイヴみたいな匿名的なコンセプチュアル・アートなのか。
謎が多い。
次のアーティストは正体がはっきりしている。
ハイデラバードの女性シンガー、PeekayことPranati Khannaが、ムンバイを拠点に活動しているAndrea Tariangと共演したこの"Sunshine On The Street"は、ソウルフルなヴォーカルが印象的なポップソング。
Peekay & Andrea Tariang "Sunshine On The Street"
昼下がりのカフェやFMラジオに映えそうなさわやかな音楽。
今年2月に発表されたこの曲の再生回数は7万回くらいとそれなりだが、インドの人口の多さを考えると、ヒット曲と呼ぶにはちょっと無理がある。
ちなみにAndrea Tariangは、メガラヤ州出身のベテラン・ブルースロック・バンドSoulmateのギタリストの娘だそう。
Unluv "Tera Jadoo"
メロウかつダンサブルな音楽を奏でるUnluvは、やはり情報が少ないアーティストで、インドを拠点に活動しているが、もしかしたらネパール系?のようでもある。
(彼の場合もインスタグラムにネパール国旗と「今はインドを拠点に活動」の記述があった)
この洋楽っぽい音楽性でヒンディー語詞というのは珍しい(部分的に英語)。
公開5ヶ月でYouTubeの再生回数は19,000回ほど。
インドでは英語詞の曲に比べてヒンディーなど現地語の曲のほうが人気が高い傾向があるが、それを考えるともっと評価されても良い曲なのだが。
最後に紹介するのはロック。
ムンバイ在住、弱冠20歳のDev Makes Musicが演奏するのは、ひねくれてないティーン向けっぽい、極めてポップなロックだ。
Dev Makes Music "Concert Tickets"
ところで、冒頭のシーンで左腕の内側に見えるのは、リストカットの跡?タトゥー?
曲を聞く限りは爽快でポップなロックで、ダークな要素はどこにも見当たらないのだけど。
ふと思い出したのが、以前同様の趣旨で書いた記事で取り上げたAnimeshのことで、彼の"Pressure on It"のジャケット(というか今ではサムネイルというべきか)にもリストカットをした腕が描かれていた。
一時停止して見ると、Devの場合はタトゥーでもリストカットでもなさそうで、なんだかよく分からない。
というわけで、やっぱり全体的によく分からない記事になってしまった。
今回書いた彼らの場合、そもそも人気アーティストではないので、インド国内で紹介されている記事なども見当たらず、SNSでの発信がインスタの画像ばっかりだったりすると、ほとんど書ける内容がないのだ。
率直に言って、今回紹介したアーティストたちの音楽は、ポップミュージックとしてのクオリティこそそれなりに高いものの、オリジナリティには欠けているとしか言いようがない。
知名度もそんなになさそうだし、セールスの面で楽観できるアーティストは一人もいないだろう。
だが、それでも、というか、だからこそ、欧米ポップス的目線で見るとバブルガムでコマーシャルな音楽を、彼らは本気で愛して演奏しているに違いない。
今回は全体的にちょっとナメた感じで書いてしまったが、彼らがもうちょっとたくさんの人に聴かれて「けっこういいじゃん」くらいの評価を得てもいいように思う。
実際、けっこういいと思うし。
また折を見てこのタイプのミュージシャンについても書いてみたい。
なにしろたくさんいるから。
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「軽刈田 凡平(かるかった ぼんべい)のアッチャーインディア 読んだり聞いたり考えたり」
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goshimasayama18 at 18:10|Permalink│Comments(0)
2022年01月20日
Rolling Stone Indiaが選んだ2021年ベストミュージックビデオ10選!
毎年恒例のRolling Stone Indiaが選んだ年間ベスト10シリーズ。
ベストシングル、ベストアルバムに続いて、今回は、ベストミュージックビデオを紹介します!
シングル部門では小洒落たサウンドを追求し、アルバム部門ではトレンドに関係なく優れたサウンド(70's風ギターインストからデスメタルまで)を評価していたこのランキング、ミュージックビデオ部門となるとまた別の傾向が見えてくるから面白い。
ますます隆盛するインドのインディペンデント音楽シーンの勢いが感じられる映像作品が揃っている。
それではさっそく!
1. Aditi Ramesh "Shakti"
1位に選ばれたのは、ムンバイのR&Bシンガー、Aditi Rameshが年の瀬12月にリリースした"Shakti"(「力」という意味).
彼女はインドの女性が社会で直面する困難をテーマとした曲をこれまでも数多くリリースしていて、この"Shakti"でもそうした姿勢は一貫している。
歌詞の中には「3月8日(国際女性デー)にだけ女性に注目する企業にはウンザリ」とか「自分らしく生きたいだけなのに、何をしても細かく詮索される」なんてフレーズもあり、インドのみならず共感できる女性も多いんじゃないだろうか。
Aditiはミュージックビデオの中で、女子高生からサリー姿、OL風、カジュアルまであらゆる女性を演じながら、女性が思うままに好きなように生きることを歌う。
こうした内容は、以前紹介した" Marriageable Age"とも共通したものだが、サウンド的にはインド的な要素がさらに取り入れられ、よりオリジナルなものになっている。
古典音楽を思わせるメロディーラインに対して歌詞が英語なのは、子供時代にニューヨークで南インド古典音楽のカルナーティックを学んでいたというAditiならではのセンスだろう。
映像を手掛けたのは、俳優や映画音楽なども手がけるRonit Sarkar.
映画的な感覚を活かした作風に、映画界とインディペンデント音楽シーンのさらなる接近を感じる。
2. JBabe "Punch Me in the Third Eye"
JBabeはチェンナイのスタイリッシュなロックバンドF16sのギターヴォーカルJosh Fernandezによるソロプロジェクト。
F16sと比べてかなり激しいパンクロック的なスタイルのサウンドだ。
このミュージックビデオは、両親に堅苦しいお見合いを設定された若い男女の、親に隠している本当の姿がテーマとなっている。
親子や世代による価値観の相違はインドの映画や小説でも頻繁に扱われている題材で、ロックやR&Bを好む若者たちにとっても切実な問題なのだろう。
監督は、最近ブッとんだミュージックビデオを相次いで手掛けているLendrick Kumar.
この記事(↓)で紹介しているF16sのミュージックビデオも必見だ。
3. Takar Nabam "Good Night (In Memory of Laika)"
3位にランクインしたのは、インド北東部の最果て、アルナーチャル・プラデーシュ州出身のシンガーソングライターTakar Nabam.
この楽曲とミュージックビデオは、1957年にソビエトで有人宇宙飛行に向けた実験のためにロケットに乗せられた、歴史上初めて宇宙に達した生き物である「宇宙犬ライカ」に捧げられたものだ。
そのロケットは地球に帰るための設計はされておらず、ライカは宇宙空間に達した数時間後に船内の温度上昇により死亡したと言われている。
ライカについては、吉田真百合さんという漫画家の『ライカの星』という作品を読んでものすごく感動したところだったので、このミュージックビデオにも大いに心揺さぶられた。
最後に出てくる'Please forgive us'というメッセージに、動物を大事にする文化の強いインドらしさを強く感じさせられる。
インドのインディペンデント音楽シーンでは、以前からアニメーションによるミュージックビデオがけっこう作られていたが、コロナウイルスによるロックダウン以降、密になる撮影が難しくなったことから、さらにアニメ作品が目立つようになった。
アニメ大国日本の感覚で見ると、まだまだチープさもあるかもしれないが、それでもセンスの良い作品もかなり多くなってきている。
4. Kamakshi Khanna ft. OAFF "Duur"
Kamakshi Khannaはデリー出身のシンガーソングライター。
この曲はムンバイの電子音楽アーティストOAFFとのコラボレーションとなっている。
これまで面白いミュージックビデオを数多く発表しているOAFFにしては少し地味に感じられる作品だが、インドのインディペンデント音楽シーンでは、このクールさこそが評価されるのだろう。
(OAFFの面白い映像作品は"Perpetuate", "Grip"など)
チル系の「印DM」(インドの電子音楽)というか、歌モノのトリップホップ的なサウンドも今のインドっぽい。
5. Jayesh Malan "Full / Circle"
12分もあるこの作品は、ミュージックビデオというよりも、環境音楽/環境映像のショートフィルムと呼ぶ方がふさわしいかもしれない。
Jayesh Malaniはマディヤ・プラデーシュ州ボーパール生まれのマルチインストゥルメンタルプレイヤーにして映像作家。
ビートのないギターと自然の音を含んだサウンド、そして美しい映像は、1日の終わりにアロマでも焚きながら見たら疲れが取れそう。
それにしても、YouTubeでたった1100再生ほどでしかない作品をきちんと探してきてランキングに入れるRolling Stone Indiaの慧眼はなかなかのものだ。
6. Dhruv Vishvanath "Fly"
Dhruv Visvanathはデリー出身のギタリスト。
ふだんはアコースティックギターをフィンガースタイルで弾くことが多いが、この曲では超ファジーなエレクトリックギターを披露している。
「キッチンでたった一人で反乱を起こすタマゴ」のコマ撮りアニメがかわいらしい。
ちなみにサムネイル画像の右下に見える日の丸のようなマークは、インドで食品につけることが義務付けられている「ノンベジタリアン製品」を意味するもので、ベジタリアン製品の場合は緑色になる。
なかなか芸が細かい。
インドではコマ撮りアニメのミュージックビデオにも凝った作品が多くて、例えば人気ロックバンドThe Local Trainの"Gustaakh"なんかはなかなかのものだ。
7. Komorebi "Chanda"
宮崎駿などの日本文化からの影響を公言しているデリーの電子音楽アーティスト、その名もKomorebiの"Chanda"もアニメーションのミュージックビデオ。
「月」を意味する'Chanda'というタイトルは、KomorebiことTarana Marwahの亡き祖父Karamchandから取られているとのこと。
すでにこの世にはいない人を思うエッチングのようなタッチの映像が幻想的だ。
曲もため息が出るほど美しい。
8. Sanjeeta Bhattacharya, Aman Sagar "Khoya Sa"
アメリカの名門音楽大学バークリーを卒業したSanjeeta Bhattacharyaは、R&Bの影響を感じさせる洗練された音楽でこのランキングの常連となっているアーティスト。
一昨年もマダガスカルの女性ラッパーNiu Razaと共演した"Red"が、Rolling Stone India選出のベストミュージックビデオ第1位に選ばれている。
彼女は楽曲ごとに、オーガニックソウル、ラテン音楽、ラップとスタイルを変えてきたが、この"Khoya Sa"は、新機軸のヒンディー語のR&B。
ミュージックビデオのではなんと同性愛者を自ら演じている。
インドでも映画や音楽で性的マイノリティが扱われることが増えてきているとはいえ、まだまだ保守的な要素が強いインドでは、かなり挑発的な作品と考えて良いだろう。
インドのインディペンデントシーンでは、一般的なインド社会と比べてかなり「攻めた」作品も散見されるが、こうした点もまた魅力のひとつである。
9. Kayan "Be Alright"
KayanはロックバンドKimochi Youkaiやエレクトロニック・デュオNothing Anonymousでも活躍する(どちらもかなりセンスいい!)ムンバイの女性シンガーAmbika Nayakのソロ名義。
このミュージックビデオは、インドでも最近目立つようになった80年代〜90年代風の映像が特徴的だが、アナログなノイズやレトロフューチャーっぽい分かりやすいクリシェをあえて使わずに、画面の色味や歌詞のフォントやファッションで往時を現したところにセンスを感じる。
10. Ankur Sabharwar "Better Man"
Ankur Sabharwarはデリーのロックアーティスト。
こちらは50年代〜60年代の洋画の怪奇映画を思わせるモノクロの映像で、サウンドも洋楽ポップス風。
サビで転調するところがいい。
楽曲も映像も、インド人のレトロ欧米趣味の好例といえそうな作品だ。
というわけで、Rolling Stone Indiaが選んだミュージックビデオ10作品を紹介してみました。
ご存知の通り、インドには映画のシーンをそのまま使った映画音楽のミュージックビデオもたくさんあるし、映画音楽ではなくてもより商業的な音楽の豪華絢爛なミュージックビデオだって結構作られている(例えばメインストリーム・ラッパーのYo Yo Honey Singhなど)。
そうした映像作品と比べると、かなり低予算な感じも否めないけれど、それでもインディペンデントなアーティストたちがこうした面白い音楽や映像を作っているということはきちんと押さえておきたい。
今年の傾向としては、1位のAditi Rameshや2位のJBabeのように、インドの現代社会で若者が感じている問題を映像化した作品や、アニメ作品(コマ撮り含む)が多かったのが特徴と言えるだろう。
モノクローム映像を使った映像や、レトロな風合いを感じさせる映像も目立っている。
とはいえ、やはりRolling Stone Indiaらしく、「欧米的洗練」が重視されたセレクトとなっていて、それが悪いわけではないのだが、いつかまた違う視点で選んだ軽刈田によるお気に入りミュージックビデオ特集の記事も書いてみたいと思った。
過去にRolling Stone Indiaが選んだ各年のミュージックビデオも面白いので、よかったらこちらからどうぞ。
2020年はShashwat BulusuとDIVINEとRaghav Meattleが良かった。
2019年は正直あんまり記憶にないが、しいて言えば寿司が出てくるF16sのミュージックビデオが印象に残っている。
2018年の白眉はRitviz.
思えばこの年あたりから、レトロ的表現が目につくようになった。
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ベストシングル、ベストアルバムに続いて、今回は、ベストミュージックビデオを紹介します!
シングル部門では小洒落たサウンドを追求し、アルバム部門ではトレンドに関係なく優れたサウンド(70's風ギターインストからデスメタルまで)を評価していたこのランキング、ミュージックビデオ部門となるとまた別の傾向が見えてくるから面白い。
ますます隆盛するインドのインディペンデント音楽シーンの勢いが感じられる映像作品が揃っている。
それではさっそく!
1. Aditi Ramesh "Shakti"
1位に選ばれたのは、ムンバイのR&Bシンガー、Aditi Rameshが年の瀬12月にリリースした"Shakti"(「力」という意味).
彼女はインドの女性が社会で直面する困難をテーマとした曲をこれまでも数多くリリースしていて、この"Shakti"でもそうした姿勢は一貫している。
歌詞の中には「3月8日(国際女性デー)にだけ女性に注目する企業にはウンザリ」とか「自分らしく生きたいだけなのに、何をしても細かく詮索される」なんてフレーズもあり、インドのみならず共感できる女性も多いんじゃないだろうか。
Aditiはミュージックビデオの中で、女子高生からサリー姿、OL風、カジュアルまであらゆる女性を演じながら、女性が思うままに好きなように生きることを歌う。
こうした内容は、以前紹介した" Marriageable Age"とも共通したものだが、サウンド的にはインド的な要素がさらに取り入れられ、よりオリジナルなものになっている。
古典音楽を思わせるメロディーラインに対して歌詞が英語なのは、子供時代にニューヨークで南インド古典音楽のカルナーティックを学んでいたというAditiならではのセンスだろう。
映像を手掛けたのは、俳優や映画音楽なども手がけるRonit Sarkar.
映画的な感覚を活かした作風に、映画界とインディペンデント音楽シーンのさらなる接近を感じる。
2. JBabe "Punch Me in the Third Eye"
JBabeはチェンナイのスタイリッシュなロックバンドF16sのギターヴォーカルJosh Fernandezによるソロプロジェクト。
F16sと比べてかなり激しいパンクロック的なスタイルのサウンドだ。
このミュージックビデオは、両親に堅苦しいお見合いを設定された若い男女の、親に隠している本当の姿がテーマとなっている。
親子や世代による価値観の相違はインドの映画や小説でも頻繁に扱われている題材で、ロックやR&Bを好む若者たちにとっても切実な問題なのだろう。
監督は、最近ブッとんだミュージックビデオを相次いで手掛けているLendrick Kumar.
この記事(↓)で紹介しているF16sのミュージックビデオも必見だ。
3. Takar Nabam "Good Night (In Memory of Laika)"
3位にランクインしたのは、インド北東部の最果て、アルナーチャル・プラデーシュ州出身のシンガーソングライターTakar Nabam.
この楽曲とミュージックビデオは、1957年にソビエトで有人宇宙飛行に向けた実験のためにロケットに乗せられた、歴史上初めて宇宙に達した生き物である「宇宙犬ライカ」に捧げられたものだ。
そのロケットは地球に帰るための設計はされておらず、ライカは宇宙空間に達した数時間後に船内の温度上昇により死亡したと言われている。
ライカについては、吉田真百合さんという漫画家の『ライカの星』という作品を読んでものすごく感動したところだったので、このミュージックビデオにも大いに心揺さぶられた。
最後に出てくる'Please forgive us'というメッセージに、動物を大事にする文化の強いインドらしさを強く感じさせられる。
インドのインディペンデント音楽シーンでは、以前からアニメーションによるミュージックビデオがけっこう作られていたが、コロナウイルスによるロックダウン以降、密になる撮影が難しくなったことから、さらにアニメ作品が目立つようになった。
アニメ大国日本の感覚で見ると、まだまだチープさもあるかもしれないが、それでもセンスの良い作品もかなり多くなってきている。
4. Kamakshi Khanna ft. OAFF "Duur"
Kamakshi Khannaはデリー出身のシンガーソングライター。
この曲はムンバイの電子音楽アーティストOAFFとのコラボレーションとなっている。
これまで面白いミュージックビデオを数多く発表しているOAFFにしては少し地味に感じられる作品だが、インドのインディペンデント音楽シーンでは、このクールさこそが評価されるのだろう。
(OAFFの面白い映像作品は"Perpetuate", "Grip"など)
チル系の「印DM」(インドの電子音楽)というか、歌モノのトリップホップ的なサウンドも今のインドっぽい。
5. Jayesh Malan "Full / Circle"
12分もあるこの作品は、ミュージックビデオというよりも、環境音楽/環境映像のショートフィルムと呼ぶ方がふさわしいかもしれない。
Jayesh Malaniはマディヤ・プラデーシュ州ボーパール生まれのマルチインストゥルメンタルプレイヤーにして映像作家。
ビートのないギターと自然の音を含んだサウンド、そして美しい映像は、1日の終わりにアロマでも焚きながら見たら疲れが取れそう。
それにしても、YouTubeでたった1100再生ほどでしかない作品をきちんと探してきてランキングに入れるRolling Stone Indiaの慧眼はなかなかのものだ。
6. Dhruv Vishvanath "Fly"
Dhruv Visvanathはデリー出身のギタリスト。
ふだんはアコースティックギターをフィンガースタイルで弾くことが多いが、この曲では超ファジーなエレクトリックギターを披露している。
「キッチンでたった一人で反乱を起こすタマゴ」のコマ撮りアニメがかわいらしい。
ちなみにサムネイル画像の右下に見える日の丸のようなマークは、インドで食品につけることが義務付けられている「ノンベジタリアン製品」を意味するもので、ベジタリアン製品の場合は緑色になる。
なかなか芸が細かい。
インドではコマ撮りアニメのミュージックビデオにも凝った作品が多くて、例えば人気ロックバンドThe Local Trainの"Gustaakh"なんかはなかなかのものだ。
7. Komorebi "Chanda"
宮崎駿などの日本文化からの影響を公言しているデリーの電子音楽アーティスト、その名もKomorebiの"Chanda"もアニメーションのミュージックビデオ。
「月」を意味する'Chanda'というタイトルは、KomorebiことTarana Marwahの亡き祖父Karamchandから取られているとのこと。
すでにこの世にはいない人を思うエッチングのようなタッチの映像が幻想的だ。
曲もため息が出るほど美しい。
8. Sanjeeta Bhattacharya, Aman Sagar "Khoya Sa"
アメリカの名門音楽大学バークリーを卒業したSanjeeta Bhattacharyaは、R&Bの影響を感じさせる洗練された音楽でこのランキングの常連となっているアーティスト。
一昨年もマダガスカルの女性ラッパーNiu Razaと共演した"Red"が、Rolling Stone India選出のベストミュージックビデオ第1位に選ばれている。
彼女は楽曲ごとに、オーガニックソウル、ラテン音楽、ラップとスタイルを変えてきたが、この"Khoya Sa"は、新機軸のヒンディー語のR&B。
ミュージックビデオのではなんと同性愛者を自ら演じている。
インドでも映画や音楽で性的マイノリティが扱われることが増えてきているとはいえ、まだまだ保守的な要素が強いインドでは、かなり挑発的な作品と考えて良いだろう。
インドのインディペンデントシーンでは、一般的なインド社会と比べてかなり「攻めた」作品も散見されるが、こうした点もまた魅力のひとつである。
9. Kayan "Be Alright"
KayanはロックバンドKimochi Youkaiやエレクトロニック・デュオNothing Anonymousでも活躍する(どちらもかなりセンスいい!)ムンバイの女性シンガーAmbika Nayakのソロ名義。
このミュージックビデオは、インドでも最近目立つようになった80年代〜90年代風の映像が特徴的だが、アナログなノイズやレトロフューチャーっぽい分かりやすいクリシェをあえて使わずに、画面の色味や歌詞のフォントやファッションで往時を現したところにセンスを感じる。
10. Ankur Sabharwar "Better Man"
Ankur Sabharwarはデリーのロックアーティスト。
こちらは50年代〜60年代の洋画の怪奇映画を思わせるモノクロの映像で、サウンドも洋楽ポップス風。
サビで転調するところがいい。
楽曲も映像も、インド人のレトロ欧米趣味の好例といえそうな作品だ。
というわけで、Rolling Stone Indiaが選んだミュージックビデオ10作品を紹介してみました。
ご存知の通り、インドには映画のシーンをそのまま使った映画音楽のミュージックビデオもたくさんあるし、映画音楽ではなくてもより商業的な音楽の豪華絢爛なミュージックビデオだって結構作られている(例えばメインストリーム・ラッパーのYo Yo Honey Singhなど)。
そうした映像作品と比べると、かなり低予算な感じも否めないけれど、それでもインディペンデントなアーティストたちがこうした面白い音楽や映像を作っているということはきちんと押さえておきたい。
今年の傾向としては、1位のAditi Rameshや2位のJBabeのように、インドの現代社会で若者が感じている問題を映像化した作品や、アニメ作品(コマ撮り含む)が多かったのが特徴と言えるだろう。
モノクローム映像を使った映像や、レトロな風合いを感じさせる映像も目立っている。
とはいえ、やはりRolling Stone Indiaらしく、「欧米的洗練」が重視されたセレクトとなっていて、それが悪いわけではないのだが、いつかまた違う視点で選んだ軽刈田によるお気に入りミュージックビデオ特集の記事も書いてみたいと思った。
過去にRolling Stone Indiaが選んだ各年のミュージックビデオも面白いので、よかったらこちらからどうぞ。
2020年はShashwat BulusuとDIVINEとRaghav Meattleが良かった。
2019年は正直あんまり記憶にないが、しいて言えば寿司が出てくるF16sのミュージックビデオが印象に残っている。
2018年の白眉はRitviz.
思えばこの年あたりから、レトロ的表現が目につくようになった。
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goshimasayama18 at 00:08|Permalink│Comments(0)
2021年06月01日
K-pop meets 'I-Pop'! インドと韓国のコラボレーションは新しい扉を開くのか?
5月21日にリリースされたArmaan Malik, Eric Nam, KSHMRのコラボレーションによる新曲"Echo"の評判が良い。
6月1日の時点でYouTubeの再生回数は1,000万回以上。
ヒット映画の音楽ともなれば億を超えることも珍しくないインドでは決してずば抜けた数字ではないが、映画と関係のない音楽としては大健闘していると言っていいだろう。
この楽曲に関わった人物を整理してみよう。
Armaan Malikはムンバイ出身のシンガー。
代々インド映画の音楽を作ってきた一家に生まれたArmaanは、幼い頃から古典音楽を学び、アメリカの名門バークリー音楽大学で学んだのち、EDM, R&B, そしてもちろん映画音楽などの分野で活躍している。
インド映画のプレイバック・シンガーにはよくある話だが、彼もまた多くの言語で歌っており、ヒンディー、英語、ベンガル語、テルグー語、マラーティー語、タミル語、グジャラーティー語、パンジャービー語、ウルドゥー語、マラヤーラム語、カンナダ語の楽曲をレコーディングしたことがあるという。
この"Chale Aana"は2019年のボリウッド映画"De De Pyaar De"の挿入歌で、作曲はArmaanの兄であるAmaal Mallik. (兄のAmaalは、弟と違って姓のアルファベット表記の'L'が2つある)
この曲の再生回数は1.6億回とケタ違いだ。
彼が歌う他の映画音楽では、5億再生を超えているものもある。
映画音楽以外の活動も見逃せない。
2020年のMTV Europe Music Awardsで、近年勢いづくヒップホップ勢を抑えてBest India Actを受賞した"Control"は、"Echo"同様にインドらしさをまったく感じさせない「洋楽的」なポップソングだ。
Armaanは、映画音楽という大衆音楽と、洋楽的なポピュラー・ミュージックという、対照的なふたつのジャンルの第一線で活躍しているシンガーなのだ。
Eric Namはアトランタ出身の韓国系アメリカ人シンガー。
011年に名門ボストン・カレッジを卒業し、ニューヨークのデロイト・コンサルティングで勤務するというエリート中のエリートだった彼は、YouTubeへのカバー曲動画の投稿や韓国でのオーディション番組への参加を経て、ミュージシャンとしてのキャリアをスタートさせた。
シンガーとしては、韓国語と英語の両方で楽曲をリリースしており、海外ツアーを行うなど、すでに国際的な活躍をしている。
この"Honestly"を聴けば分かる通り、そのサウンドはK-popのイメージを裏切らないきらびやかなダンスポップ。
声の質もArmaanに近く、ヴォーカリストとしての相性がぴったりなのがこの曲からも分かるだろう。
"Echo"のプロデュースを務めたKSHMRことNiles Hollwell-Dharはカリフォルニア出身のインド系アメリカ人のEDMアーティストだ。
名前の通り、カシミール地方出身のヒンドゥー教徒の父を持つ(母親はインド系ではないようだ)。
2003年に高校の友人と結成したヒップホップユニットThe Cataracsで活動したのち、2014年にKSHMRの名義でEDMに転向。
UltrasやTommorowlandなどの大規模フェスでもプレイし、2016年、2017年、2020年にはDJ Magの世界トップDJの12位に輝いているEDMシーンのトップスターの一人だ。
活動の場が違うので簡単には比較できないが、ジャンル内の評価で言えば、このKSHMRが3人の中でもっとも大きな成功を収めていると言えるかもしれない。
(再生回数で言えば圧倒的にArmaan Malikだが)
この曲はインドで行われたアジア最大のEDMフェス'Sunburn'のテーマ曲として作られたもの。
インド国内のマーケットを意識した作品では、このようにビジュアルにもサウンドにもインドらしい要素を取り入れており、最近ではインド国内のアーティストとのコラボレーションも多い。
…長くなったが、要は、この曲でコラボレーションした3人には、非常に多様性に富んだ背景があるということである。
国籍としては、インド、韓国、アメリカ。
音楽ジャンルとしては、フィルミ(インド映画音楽)、インド古典音楽、R&B、K-pop、EDM...
こうした多様性のある3人のコラボレーションなのだから、ものすごい化学反応が起きて、斬新なフュージョン音楽が生まれるのではないかと期待していたのだが、誤解を恐れずに言えば、出来上がった作品は、ポップミュージックとしての質は高いものの、音楽的な冒険はせずに、手堅くまとめたという印象だ。
"Echo"には、Armaanの古典音楽的な歌い回しも出てこなければ、KSHMRの得意なフュージョンの要素もない。
ミュージックビデオの映像も、K-Pop的な派手さや伝統的なインドのイメージとは無縁な、率直に言うとかなり地味なものである。
Eric Namは、Rolling Stone Indiaにこう語っている。
「"Echo"は3人のアジア人がグローバルな舞台で団結した重要な例なんだ。僕らの仲間がもっと増えたらいいのにって思ってる。僕たち(引用者注:アジア人)全体を代表してやってのけることができる人たちの、もっと大きなネットワークが欲しいんだ。僕らは、自分たちみたいなカルチャーに関わる人たちを、もっと大きなスクリーンで見たいと思って成長してきた。でも、伝統的に、そういう場所は僕らにオープンじゃなかったんだ。ようやく、少しずつオープンになってきてはいるけどね。それから今、人種間や社会的な緊張がこれまでになく高まってきている。だから、僕らにとって、今こそこういうことをやるのに最高の時なんだよ」
この言葉の中の、「アジア人にもショービジネスが少しずつオープンになってきている」というのはK-popの成功を、「人種間や社会的な緊張が高まっている」というのはコロナ以降のアジア人差別を指しているのだろう。
"Echo"をこのタイミングでリリースしたのは、5月がアメリカ合衆国における「アジア系アメリカ人および太平洋諸島出身者月間」(Asian American and Pacific Islander Heritage Month)であることも意識していたという。
だからこそ、彼らは偏見にもつながるステレオタイプと裏表な典型的なアジアの要素を前面に出すのではなく、あえて無国籍なポップミュージックを作り、音楽の質そのもので勝負しようとしたのだろう。
しかし、無国籍なポップミュージックとは、結局のところ、欧米の白人が作ったジャンルを意味している。
今のところ、インド国内と韓国の一部のファンには高い評価を得ているようだが、この方法論が世界でどこまで通用するのか、応援しつつ見守ってゆきたい。
ところで、記事のタイトルに'K-pop meets "I-pop"'と書いたが、'I-pop'とはこの曲を紹介するにあたり、インドの媒体が多用している言葉。
インドは英語が話せる人材も多いし、最近ではArmaanのようにバークリーなどの欧米の一流の音楽大学に進学する若者も増えている。
I-PopがK-Popのように、世界で評価される日が来るのだろうか。
この曲の再生回数は1.6億回とケタ違いだ。
彼が歌う他の映画音楽では、5億再生を超えているものもある。
映画音楽以外の活動も見逃せない。
2020年のMTV Europe Music Awardsで、近年勢いづくヒップホップ勢を抑えてBest India Actを受賞した"Control"は、"Echo"同様にインドらしさをまったく感じさせない「洋楽的」なポップソングだ。
Armaanは、映画音楽という大衆音楽と、洋楽的なポピュラー・ミュージックという、対照的なふたつのジャンルの第一線で活躍しているシンガーなのだ。
Eric Namはアトランタ出身の韓国系アメリカ人シンガー。
011年に名門ボストン・カレッジを卒業し、ニューヨークのデロイト・コンサルティングで勤務するというエリート中のエリートだった彼は、YouTubeへのカバー曲動画の投稿や韓国でのオーディション番組への参加を経て、ミュージシャンとしてのキャリアをスタートさせた。
シンガーとしては、韓国語と英語の両方で楽曲をリリースしており、海外ツアーを行うなど、すでに国際的な活躍をしている。
この"Honestly"を聴けば分かる通り、そのサウンドはK-popのイメージを裏切らないきらびやかなダンスポップ。
声の質もArmaanに近く、ヴォーカリストとしての相性がぴったりなのがこの曲からも分かるだろう。
"Echo"のプロデュースを務めたKSHMRことNiles Hollwell-Dharはカリフォルニア出身のインド系アメリカ人のEDMアーティストだ。
名前の通り、カシミール地方出身のヒンドゥー教徒の父を持つ(母親はインド系ではないようだ)。
2003年に高校の友人と結成したヒップホップユニットThe Cataracsで活動したのち、2014年にKSHMRの名義でEDMに転向。
UltrasやTommorowlandなどの大規模フェスでもプレイし、2016年、2017年、2020年にはDJ Magの世界トップDJの12位に輝いているEDMシーンのトップスターの一人だ。
活動の場が違うので簡単には比較できないが、ジャンル内の評価で言えば、このKSHMRが3人の中でもっとも大きな成功を収めていると言えるかもしれない。
(再生回数で言えば圧倒的にArmaan Malikだが)
この曲はインドで行われたアジア最大のEDMフェス'Sunburn'のテーマ曲として作られたもの。
インド国内のマーケットを意識した作品では、このようにビジュアルにもサウンドにもインドらしい要素を取り入れており、最近ではインド国内のアーティストとのコラボレーションも多い。
…長くなったが、要は、この曲でコラボレーションした3人には、非常に多様性に富んだ背景があるということである。
国籍としては、インド、韓国、アメリカ。
音楽ジャンルとしては、フィルミ(インド映画音楽)、インド古典音楽、R&B、K-pop、EDM...
こうした多様性のある3人のコラボレーションなのだから、ものすごい化学反応が起きて、斬新なフュージョン音楽が生まれるのではないかと期待していたのだが、誤解を恐れずに言えば、出来上がった作品は、ポップミュージックとしての質は高いものの、音楽的な冒険はせずに、手堅くまとめたという印象だ。
"Echo"には、Armaanの古典音楽的な歌い回しも出てこなければ、KSHMRの得意なフュージョンの要素もない。
ミュージックビデオの映像も、K-Pop的な派手さや伝統的なインドのイメージとは無縁な、率直に言うとかなり地味なものである。
Eric Namは、Rolling Stone Indiaにこう語っている。
「"Echo"は3人のアジア人がグローバルな舞台で団結した重要な例なんだ。僕らの仲間がもっと増えたらいいのにって思ってる。僕たち(引用者注:アジア人)全体を代表してやってのけることができる人たちの、もっと大きなネットワークが欲しいんだ。僕らは、自分たちみたいなカルチャーに関わる人たちを、もっと大きなスクリーンで見たいと思って成長してきた。でも、伝統的に、そういう場所は僕らにオープンじゃなかったんだ。ようやく、少しずつオープンになってきてはいるけどね。それから今、人種間や社会的な緊張がこれまでになく高まってきている。だから、僕らにとって、今こそこういうことをやるのに最高の時なんだよ」
この言葉の中の、「アジア人にもショービジネスが少しずつオープンになってきている」というのはK-popの成功を、「人種間や社会的な緊張が高まっている」というのはコロナ以降のアジア人差別を指しているのだろう。
"Echo"をこのタイミングでリリースしたのは、5月がアメリカ合衆国における「アジア系アメリカ人および太平洋諸島出身者月間」(Asian American and Pacific Islander Heritage Month)であることも意識していたという。
だからこそ、彼らは偏見にもつながるステレオタイプと裏表な典型的なアジアの要素を前面に出すのではなく、あえて無国籍なポップミュージックを作り、音楽の質そのもので勝負しようとしたのだろう。
しかし、無国籍なポップミュージックとは、結局のところ、欧米の白人が作ったジャンルを意味している。
今のところ、インド国内と韓国の一部のファンには高い評価を得ているようだが、この方法論が世界でどこまで通用するのか、応援しつつ見守ってゆきたい。
ところで、記事のタイトルに'K-pop meets "I-pop"'と書いたが、'I-pop'とはこの曲を紹介するにあたり、インドの媒体が多用している言葉。
インドは英語が話せる人材も多いし、最近ではArmaanのようにバークリーなどの欧米の一流の音楽大学に進学する若者も増えている。
I-PopがK-Popのように、世界で評価される日が来るのだろうか。
その時に、"Echo"はエポック・メイキングな楽曲として思い出されるものになるはずだ。
関連記事:
参考サイト:
https://rollingstoneindia.com/exclusive-armaan-malik-eric-nam-and-kshmr-collaborate-on-new-single-echo/
https://www.bollywoodbubble.com/bollywood-news/exclusive-armaan-malik-on-echo-taking-i-pop-global-dabbling-with-wanting-to-breakout-and-fear-of-rejection/
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goshimasayama18 at 20:56|Permalink│Comments(0)
2021年05月10日
次世代の主流になりうるか? インドの「アンダーグラウンド・メインストリーム・ポップ」!
ご存知の通り、インドのポピュラーミュージックの主流は映画音楽である。
ところが、21世期に入った頃から、少しずつ状況が変わり始めた。
インドの経済成長による衛星放送の普及、そしてインターネットの発展にともなって、人々が様々な音楽を聴く機会が増えてきたのだ。
2010年代になると、そうした音楽を好む若者たちのなかから、多くのラッパーやロックバンドや電子音楽アーティストが登場した…というのは、いつもこのブログで紹介している通りである。
とはいえ、インド全体の音楽シーンのなかでインディペンデント・ミュージックが占める割合はまだまだ少ない。
都市部の若者を中心にファンやリスナーを獲得しているものの、圧倒的な規模や予算で市場を席巻する映画音楽には遠く及ばない。
やはり、いまでもインドの音楽シーンは、映画音楽を中心に回っているのだ。
それでも、桁違いの人口規模を誇るインドのインディーミュージックシーンはびっくりするほど多様だ。
なかには、インドらしさをまったく感じさせない、アメリカやイギリスのチャートの上位を賑わせそうなポップサウンドを作っているアーティストたちもいる。
いわば彼らは「世界のメインストリームの音楽を作っているインドのアンダーグラウンド・アーティスト」というわけだ。
今のところ、彼らの音楽はまだポピュラリティを獲得しているとは言い難いが、質の高い音楽を作っているアーティストも多い。
といわうけで、今回はそんなアーティストたちを紹介したいと思います。
手始めに、先日紹介した「日本語で歌うインド在住のインド人シンガー」Drish Tとも共演していたAnimeshの"Pressure on It"を聴いてみて欲しい。
ファンキーなリズムに乗ったキャッチーなメロディーは、ちょっとBruno Marsのアップテンポな曲を思わせるところもある。
ヴォーカルのFranz Dowlingはオーストラリアのブリスベン在住のシンガーだそうで、国籍を超えたコラボレーションであるという点もとても今っぽい。
AnimeshはDrish Tと同じチェンナイのKM Music Conservatory(A.R.ラフマーンが作った音楽学校)に通う学生とのことで、彼女と同年代なら、まだ20歳くらいということになる。
これから洗練されてゆけば、かなり面白い存在になりそうだ。
続いて紹介するのは、同じくチェンナイのポップアーティストKevin Fernandoが、プロデューサーのAshwin Vinayagamoorthyと女性シンガーのNivedita Lakraと共演した"Foxy".
Kevin Fernandoという欧米風の名前は、おそらく彼がクリスチャンの家庭に生まれたことによるものだろう。
プロデューサーのAshwin Vinayagamoorthyは、ふだんはタミル語映画の音楽を手掛けている人物のようだ。
ラフマーンも然り、いつもは地元のマーケットを意識した音楽を作っていても、こういう欧米ポップス的な引き出しも当然のように持っているというのが現代インドの商業音楽家の強みだろう。
3月にデビュー曲の"Summer Nights"をリリースしたばかりのAneeshは、ムンバイのエレクトロニック・ミュージックのプロデューサー。
ちょっとラテンっぽいリズムを取り入れた楽曲は今の気分にぴったり。
AneeshはAviciiやJonas Blue, KSHMRなどのEDMアーティストの影響を受けているという。
この曲のヴォーカルは、テキサス在住のシンガーソングライターBrandon Chaseで、ここでも国境を超えたコラボレーションが行われている。
インドのインディペンデントシーンには、欧米での生活や留学を経験したアーティストも多く、英語圏のシーンとの心理的・言語的な距離は我々が想像するよりもずっと近い。
他のアジア圏のアーティストと比較して、彼らのこうした点もグローバルな成功へのアドバンテージとなるはずだ。
Chirag Todiはインド西部グジャラート州アーメダーバードのプログレッシブロックバンドHeat Sinkのギタリスト。
ソロ作品の"Desire"ではファンキーな心地よいグルーヴを聴かせてくれている。
男性ヴォーカルはムンバイのバンドSecond SightのPushkar Srivatsar, 女性ヴォーカルはデリーのTania Nambier.
この曲はRolling Stone Indiaが選ぶ2020年のベストシングルにも選ばれていて、こうしたファンキーかつクールなグルーヴはインドの音楽好きに好まれているようだ。
もっとローカルなところだと、例えばこのAdhiraj Mathur.
まだ無名なミュージシャンで、情報はほとんど無いのだが、この曲は「シャワーを浴びているときに思いついて、ベッドルームでミキシングとマスタリングして、iPhoneでミュージックビデオを撮影した作品とのこと。
アナログビデオ風の映像の加工も最近インドのミュージックビデオでよく見られる傾向。
こうした映像が撮れるビデオカメラの時代には生まれていなかった若い世代が、アナログ的な要素を積極的に取り入れているのが興味深い(そもそも、もし生まれていたとしても、当時のインドにはこうした家庭用の映像機材はほとんど出回っていなかったはずだ)。
渋谷系の日本のミュージシャンが60年代や70年代の洋楽の影響を強く受けていたように、自分たちが持ち得なかった過去へのあこがれがひとつの原動力になっているのだろうか。
ムンバイのエレクトロニック系プロデューサーChaitxnyaの"You Broke Me First Flip"は女性ヴォーカルもの。
アーティスト名は'Chaitanya'と読むのだと思うが、おそらくは同名異人との混同を避けるために、名前を独特の綴りにするというのは、インドの有名人によく見られる手法だ。
ここまで紹介したアーティストたちは、インドのなかでもまだまだ無名で、YouTubeの再生回数も数百回から数千回、もっとも多いChirag Todiでもせいぜい15,000回程度の、ごくマイナーな存在に過ぎない。
オリジナリティーあふれるサウンドで、インドのインディペンデントシーンでより高い評価を確立しているアーティストたちも、コアなジャンルではなく、現代メインストリーム的な楽曲を手掛けている例が散見される。
例えば、日本にも存在しない和風のトラップ・ミュージックである'J-Trap'というジャンルを開拓し、最近ではヒップホップのビートメーカーとしても大活躍しているKaran Kanchan.
DIVINEのようなビッグネームとのコラボレーションでは、YouTubeで1,000万回を超える再生回数を叩き出している彼は、R&BシンガーRamya Pothuriとコラボレーションして、こんなキャッチーな曲をリリースしている。
ぶっといビートのイメージが強かったKanchanが、ここまでスムースかつポップな曲を手がけるのは非常に新鮮!
彼のビートメーカーとしての引き出しは非常に多く、最近ではDIVINEがコロナ禍で奮闘する人々に捧げた"Salaam"でのメロウなサウンドや、Shah RuleがMass Appeal Indiaからリリースした"Clap Clap"でのピアノを導入したビートが印象に残っている。
インディペンデント・シーンでの評価の高いムンバイのシンガーソングライターTejasは、この"Down and Out"でAviciiの"Wake Me Up"を思わせるカントリーっぽいメロディーと四つ打ちのビートの融合を試みている。
このブログでもこれまでにPrateek KuhadやRaghav Meattleといった才能あふれるアーティストを紹介してきたが、彼の楽曲からもインドのシンガーソングライターのレベルの高さを改めて感じさせられる。
今回紹介したような「アンダーグラウンド・メインストリーム・ポップ」はまだ小さな潮流だが、彼らのポップセンスと、英詞での表現が得意という特性がうまく化ければ、インド国内のみならず、グローバルな市場で幅広いリスナーを獲得することも夢ではないように思う。
インドのインディー音楽に注目する立場としては、インドならではのユニークなサウンドを作っているアーティストも大好きが、こうした世界に通用するサウンドを作ろうとしているアーティストたちも応援したい。
彼らの今後の活躍に期待!
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goshimasayama18 at 20:14|Permalink│Comments(0)
2020年10月29日
秋深し。女性シンガー特集!
日が落ちるのがすっかり早まり、木々の葉っぱも色づき始めてきた今日この頃、いかがお過ごしでしょうか?
今回は、こんな季節に聴くのにぴったりな、しっとりした女性シンガーの特集をお届けします!
このブログでは、これまで何度か男性シンガーソングライターを紹介してきたけど、インドには素晴らしい女性シンガーソングライターももちろんたくさんいるのです。
最初に紹介するのは、さわやかな秋晴れの日に公園を散歩しながら聴きたい曲。
プネーのシンガーソングライター、Nidaの"Butterflies"をどうぞ。
彼女は昨年"And I'll Love"でデビューしたばかりの期待の若手シンガー。
このブログでも激推ししている同郷のドリームポップバンドEasy Wanderlingsや、ムンバイのシンガーソングライターTejasなどの影響を受けて、ミュージシャンとしてのキャリアを本格的に追求するようになったとのこと。
デビュー曲はウクレレの響きもかろやかなポップチューンで、こちらもとても心地よい仕上がりになっている。
続いてお届けするのは、ムンバイを拠点に活動しているシンガーソングライターMali.
ハーモニカ奏者であるお祖父さんと共演した2018年のナンバー、"Play"をお聴きください。
歌声同様に涼やかな目もとが美しいMaliは、マラヤーリー(ケーララ系)のシンガー。
今回は、こんな季節に聴くのにぴったりな、しっとりした女性シンガーの特集をお届けします!
このブログでは、これまで何度か男性シンガーソングライターを紹介してきたけど、インドには素晴らしい女性シンガーソングライターももちろんたくさんいるのです。
最初に紹介するのは、さわやかな秋晴れの日に公園を散歩しながら聴きたい曲。
プネーのシンガーソングライター、Nidaの"Butterflies"をどうぞ。
彼女は昨年"And I'll Love"でデビューしたばかりの期待の若手シンガー。
このブログでも激推ししている同郷のドリームポップバンドEasy Wanderlingsや、ムンバイのシンガーソングライターTejasなどの影響を受けて、ミュージシャンとしてのキャリアを本格的に追求するようになったとのこと。
デビュー曲はウクレレの響きもかろやかなポップチューンで、こちらもとても心地よい仕上がりになっている。
続いてお届けするのは、ムンバイを拠点に活動しているシンガーソングライターMali.
ハーモニカ奏者であるお祖父さんと共演した2018年のナンバー、"Play"をお聴きください。
歌声同様に涼やかな目もとが美しいMaliは、マラヤーリー(ケーララ系)のシンガー。
このミュージックビデオは、故郷ケーララに暮らす祖父のもとを尋ねるのんびりとしたロードムービー仕立てになっている。
右利き用のギターをそのまま反対に持って(つまり、太い低音弦が下になる松崎しげるスタイル!)歌うのが彼女の特徴。
どことなく切なさを感じさせる歌声とメロディーは秋の夕暮れにばっちりはまる。
8月にリリースされた彼女のアルバム"Things I Saw in Dream"、そして最新EPの"C.E.A.S.e"はこの季節に聴くのにふさわしいサウンド。
最後に、これまで何度も紹介しているけど、秋のノスタルジックな気分にぴったりな曲といえばやっぱりこの曲。
Sanjeeta Bhattacharyaの"Natsukashii"を紹介して終わりにしましょう。
じめじめと昔を振り返るのではなく、カラッとさわやかに晴れた秋の空のようなSanjeetaの"Natsukashii".
すっかり肌寒くなってきたけれども、こんな音楽を聴きながら過ごすのもまた一興ではないかと思います。
…と、今回はセンチメンタルな気持ちを誘う女性シンガーの作品を特集してみました。
もちろんインドの男性シンガーソングライターたちも、負けず劣らずこの時期にふさわしい深みと切なさのあるサウンドを作っています。
興味のある方はこちらのリンクからどうぞ。
(10月31日追記)
この記事をTwitterで告知したら、Yosh(U.Owl / Vogmir)さんからゴアのシンガーソングライター、Dittyをお勧めいただいた。
改めて聴いてみたら凄くイイ!
とくにこの曲が白眉。
タイトルからもしやと思っていたけど、やっぱりアメリカのロックバンドDeath Cab for Cutieのことを歌った曲。
「思い出しちゃうからDeath Cab for Cutieはかけないで」っていうの、いい歌詞だな〜。
秋のセットリストにぴったりの切ない曲です。
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全編にわたって心地よい秋の風が吹いているような1曲だ。
彼女は映画のプレイバックシンガーやジャズポップバンドBass In Bridgeを経て、現在はソロアーティストとして活動しており、最新曲"Absolute"でも、ヴォーカリスト、そしてソングライターとしての高い実力を遺憾なく発揮している。
記憶に新しいところでは、新型コロナウイルスによるロックダウンの真っ只中にTejasが発表した、前代未聞の「オンライン会議ミュージカル」"Conference Call: The Musical"にも主人公(Tejas)のガールフレンド役として出演していた。(登場は5:30あたりから)
字幕をOnにするとストーリーも追えるので、ぜひじっくりと観賞してみてほしい。
続いて、より都会的なサウンドの秋らしい1曲を紹介したい。
デリーを拠点に活躍しているTanya Nambiarによる"Big City"は1960年代にMarvin Jenkinsがリリースしたジャズの名曲のカヴァーだ。
彼女はクラブミュージックからロックまで、幅広い音楽性の曲を歌っているが、このカヴァーは都会の秋の夜にぴったり。
彼女はシンガー・ソングライターとして活動するかたわら、Su Realらクラブ系のアーティストのゲストヴォーカルとしても歌声を披露している。(この記事の"Soldiers"の女声ヴォーカルが彼女だ)
見た目もサウンドも、どこか懐かしい60年代のフォークソングを思わせるAnoushka Maskeyは北東部シッキム州出身のシンガーソングライター。
彼女は映画のプレイバックシンガーやジャズポップバンドBass In Bridgeを経て、現在はソロアーティストとして活動しており、最新曲"Absolute"でも、ヴォーカリスト、そしてソングライターとしての高い実力を遺憾なく発揮している。
記憶に新しいところでは、新型コロナウイルスによるロックダウンの真っ只中にTejasが発表した、前代未聞の「オンライン会議ミュージカル」"Conference Call: The Musical"にも主人公(Tejas)のガールフレンド役として出演していた。(登場は5:30あたりから)
字幕をOnにするとストーリーも追えるので、ぜひじっくりと観賞してみてほしい。
続いて、より都会的なサウンドの秋らしい1曲を紹介したい。
デリーを拠点に活躍しているTanya Nambiarによる"Big City"は1960年代にMarvin Jenkinsがリリースしたジャズの名曲のカヴァーだ。
彼女はクラブミュージックからロックまで、幅広い音楽性の曲を歌っているが、このカヴァーは都会の秋の夜にぴったり。
彼女はシンガー・ソングライターとして活動するかたわら、Su Realらクラブ系のアーティストのゲストヴォーカルとしても歌声を披露している。(この記事の"Soldiers"の女声ヴォーカルが彼女だ)
見た目もサウンドも、どこか懐かしい60年代のフォークソングを思わせるAnoushka Maskeyは北東部シッキム州出身のシンガーソングライター。
右利き用のギターをそのまま反対に持って(つまり、太い低音弦が下になる松崎しげるスタイル!)歌うのが彼女の特徴。
どことなく切なさを感じさせる歌声とメロディーは秋の夕暮れにばっちりはまる。
8月にリリースされた彼女のアルバム"Things I Saw in Dream"、そして最新EPの"C.E.A.S.e"はこの季節に聴くのにふさわしいサウンド。
最後に、これまで何度も紹介しているけど、秋のノスタルジックな気分にぴったりな曲といえばやっぱりこの曲。
Sanjeeta Bhattacharyaの"Natsukashii"を紹介して終わりにしましょう。
じめじめと昔を振り返るのではなく、カラッとさわやかに晴れた秋の空のようなSanjeetaの"Natsukashii".
すっかり肌寒くなってきたけれども、こんな音楽を聴きながら過ごすのもまた一興ではないかと思います。
…と、今回はセンチメンタルな気持ちを誘う女性シンガーの作品を特集してみました。
もちろんインドの男性シンガーソングライターたちも、負けず劣らずこの時期にふさわしい深みと切なさのあるサウンドを作っています。
興味のある方はこちらのリンクからどうぞ。
(10月31日追記)
この記事をTwitterで告知したら、Yosh(U.Owl / Vogmir)さんからゴアのシンガーソングライター、Dittyをお勧めいただいた。
こんにちは
— Yosh (U.Owl / Vogmir) (@Yosh_U_owl) October 30, 2020
NidaとMali初めて聴きました。
いいですねー。
インドの女性シンガーソングライターほんとすごい人たち多いですね。それでいて自然体
DITTYのPoetry Ceylonも秋にオススメです。https://t.co/D0u24Ow2vB
改めて聴いてみたら凄くイイ!
とくにこの曲が白眉。
タイトルからもしやと思っていたけど、やっぱりアメリカのロックバンドDeath Cab for Cutieのことを歌った曲。
「思い出しちゃうからDeath Cab for Cutieはかけないで」っていうの、いい歌詞だな〜。
秋のセットリストにぴったりの切ない曲です。
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