インドのロック

2023年01月05日

(前編)Rolling Stone Indiaが選ぶ2022年のベストシングルTop22 インドのインディー音楽はここまで来た



例年このブログで特集している「Rolling Stone Indiaが選ぶベスト○○Top10」シリーズ。
前回特集したベストアルバム部門が、例年と違って15作品選ばれていてびっくりしたのだが、そのあとに発表されたベストシングル部門はなんと22作品!
例年の倍以上!
もちろんこれはインドのインディー音楽シーンが急成長していることを端的に表しているのだが、いい作品が多かったらその中から厳選して10作品選ぶのではなく、躊躇なく15作品とか22作品とか選んでしまうところがいかにもインドらしい。

というわけで、今年は大盤振る舞い。
2回に分けてその22作品をすべて紹介する。

はじめに結論から言ってしまうと、このランキングに選ばれた曲は、Rolling Stone Indiaという媒体の性格を反映して、洋楽的な意味での「よい曲」が並んでいる。
何も言わずに聴かせたらインドのアーティストだとは思えない曲ばかりで、インドの音楽シーンもここまでグローバルになってきたのかと思うと感慨深い。
いっぽうで、それは海外のアーティストと比較したときに没個性という意味でもあるわけで、今日のポピュラー音楽としての洗練された響きを維持しつつ、インド的な特徴も融合した音楽をどう作るかという点が、今後のインドのインディー音楽の発展のひとつの鍵となるのだろう。
能書きはともかくさっそく紹介に移ります。


22位 BeBhumika, Katoptris  “Pareshaan” 

Ritvizマナーの男女ヴォーカルのヒンディー語EDM(いわゆる'印DM')。
インド的アイデンティティと現代的なポップサウンドの両立という点では、この曲は上位ランクの楽曲よりもがんばっている。
ただインド国内ではこの手のサウンドは珍しくなくなってきており、インドのシーンの中で今後オリジナリティをどう出してゆくのかというまた別の課題がありそうだ。
Ritvizフォロワーにとどまらない次の展開を期待したい。


21位 The Runway "Find Me, Find You"

このブログでも何度も紹介している、インド北東部のナガランド州から登場したバンド。
聴いての通り80年代リバイバル風のポップなロックだが、北東部のバンドにありがちな80〜90年代趣味が、結果的に今の時代の懐古的エモさ嗜好にばっちりはまっているように思える。
2022年は、ナガランドからこれまた80年代趣味全開なAbout Usというすごいハードロックバンドも登場しており、しばらくナガのシーンから目が離せなくなりそうだ。


20位 Mali  “Ashes” 

Maliはムンバイ出身のマラヤーリー系(ケーララ系)シンガーソングライター。
彼女のいつものスタイルであるやわらかいアコースティックなサウンドとやさしいヴォーカルの1曲。
そういえば、彼女はコロナ前に日本でミュージックビデオを撮ることを計画していたようだが、その後どうなったのだろうか。


19位 Kenneth Soares  “Cigarettes”

イントロのパーカッション使いやレイドバックした雰囲気など、70年代アメリカンロックを思わせるインドでは珍しいタイプの曲。
しいて近い雰囲気を挙げるとしたら13位のTejasだろうか。
ムンバイのシンガーソングライターだそうだ。


18位 Tanmaya Bhatnagar  “kyun hota hai?”

ニューデリーのシンガーソングライターによる歌ものヒンディー・エレクトロポップ。
全体的に柔らかめのサウンドが心地よい。
この手のエレクトロポップ勢は本当に増えてきた。

17位 Gaya "Qisse"

品の良いアコースティックなアーバンフォーク。
声質や歌い回しに、北インドっぽい節回しが顔を出すのがチャーミングだ。
ムンバイだろうか、下町を叙情的に撮影したミュージックビデオも美しい。
北インドの人かと思ったら、チェンナイ生まれ、ドバイ育ちとのこと。


16位 Raghav Meattle  “Am I Overthinking This?” 
2020年にリリースした"City Life"が記憶に新しいムンバイのシンガーソングライターRaghav Meattleの新曲は、こちらもアコースティックなフォークだが、英語詞ということもあり、洋楽的なサウンドが印象的。
しみじみと感じ入る曲だが、ややシンプルすぎるようにも思う。


15位 Anoushka Maskey  “So Long, Already. Again.” 

インド北東部シッキム州のシンガーソングライターによる、これまたアコースティックな曲。
彼女の歌声にはなんとも形容し難い寂寥感があって、どこか日本のフォークソングを思わせる雰囲気がある。
インドに数多い女性シンガーソングライターのなかでも、声に個性が感じられるアーティストだ。


14位 Kamakshi Khanna and Sanjeeta Bhattacharya  “Swimming”

デリーのシンガーソングライター2人によるコラボレーション。
これもおだやかなバラードだが、歌声ひとつで空気を変える力があるKamakshi Khannaと実力派シンガーSanjeeta Bhattacharyaの共演となると、さすがに聴きごたえがある。
ミュージックビデオの「女の園」的な世界観も独特だ。
ところで、さいきんのSanjeetaのミュージックビデオは、一昨年の"Khoya Sa"もそうだったが同性愛的なテーマで作られているときが多くてなんかドギマギする。


13位 Tejas  “As I’m Getting Older”

ムンバイのシンガーソングライター(どうでもいいけどこのランキングはムンバイとデリーのSSWばっかりだな)Tejasの新作は、いつも通りのダンサブルなポップチューン。
いつも通りよくできているのだが、ちょっとマンネリ感があるかな。


12位 Aanchal Bordoloi  “Whiskey Blues” 

北東部アッサム州出身、ベンガルールを拠点に活動しているシンガーソングライターによる曲。
タイトル通りアメリカっぽい曲調のアーバンフォークだが、いかに大都市ベンガルールとはいえ、まだまだ保守的なインドで女性がWhisley Bluesというタイトルの曲を発表するのはどういう受け止められ方をするのだろうか。
リベラルな性質の媒体なので、そのあたりの時代性というか先進性もランキングに影響しているのだろうか。


11位 Aarifah  “Now She Knows”

ムンバイ出身の女性シンガーソングライターのデビューシングル。
深みのある声で歌われる洋楽的アコースティックバラード。
歌もメロも後半盛り上がってゆくアレンジも悪くないのだが、ここまでちょっと同系統の曲が多すぎるような気がしないでもない。
選者の好みなのだろうか。


というわけで、ここまで12曲を紹介してみました。
上位10曲はまた次回!


--------------------------------------
「軽刈田 凡平(かるかった ぼんべい)のアッチャーインディア 読んだり聞いたり考えたり」
更新情報や小ネタはTwitter, Facebookで!
Twitter:
https://twitter.com/Calcutta_Bombay

Facebook:
https://www.facebook.com/軽刈田凡平のアッチャーインディア-読んだり聴いたり考えたり



軽刈田 凡平のプロフィールこちらから

2018年の自選おすすめ記事はこちらからどうぞ! 
2019年の自選おすすめ記事はこちらから
2020年の軽刈田's Top10はこちらから
2021年の軽刈田's Top10はこちらから
2022年の軽刈田's Top10はこちら

ジャンル別記事一覧!



goshimasayama18 at 22:53|PermalinkComments(0)

2022年12月29日

Rolling Stone Indiaが選ぶ2022年のベストアルバムTop15

毎年定点観測しているRolling Stone Indiaが年間選ぶベストアルバム
アルバム10枚聴くのって結構大変なんだよなー、と思っていたら、今年はなんと15枚!
例年のことながら、いつもチェックしている媒体にもかかわらず、これまでまったく取り上げられていなかったアーティストのアルバムが入っていたりして、今年も何が何だか分かりませんが、今年も良作揃い!

そして、今年は過去最高に自分のセレクトとRolling Stone Indiaのセレクトが重なっていた!
おかげでアルバムを聴く手間も大幅に省けたので、ついでに1枚ずつの紹介はせずに、何枚かまとめてのコメントとさせてもらいます。

1. Bloodywood "Rakshak"

Rolling Stone Indiaでも1位を飾ったのはBloodywoodだった。
バンド名を含めてステレオタイプをネタにしたような彼らがこのRolling Stoneのテイストに合うかどうか心配していたのだが、杞憂だったようだ。
確かにサウンドの個性とヘヴィロックとしてのクオリティはピカイチだし、他のインド出身のバンドがなし得なかったほどに世界的な注目を集めているという点では、納得の1位だ。



2. Parekh & Singh – The Night Is Clear

ブログでも特集した、そして軽刈田選出のTop10にもピックアップしたParekh & Singhがこの位置にランクイン。
1位のBloodywoodとの落差がすごいが、これが今のインドのシーンの多様性と言えるし、両極端を敬遠せずにきちんと取り上げているRolling Stone Indiaを褒めたい。
Parekh & Singhが新作をリリースした年には、必ずこのランキングの上位に食い込んできている印象。
まあ実際それだけ安定したクオリティの作品を作り続けているし、洋楽的洗練を重視するこの媒体が彼らを高く評価するのも頷ける。
今作では、これまであまり重視してこなかったグルーヴを意識したアレンジが見られる。



3. Ankit Dayal – Tropical Snowglobe (Side A) 


4. Raman Negi – Shakhsiyat 


5. Girls On Canvas – Frequency


6. Derek & The Cats – Derek & The Cats

媒体のカラーなのか、例年ロック系が強いこのランキングだが、今年の3位から6位も広義のロックっぽい作品が優勢。
3位のAnkit Dayalはムンバイ出身で、ロックバンドSpud in the Boxのメンバー。
この作品に関してはR&Bと呼んだ方が適切だろうか。Phishのようなジャムバンドやダブの浮遊感も感じさせる不思議なサウンド。
4位のRaman Negiは古式ゆかしいハードロックにウルドゥー語?のヴォーカルが乗る。
5位のGirls On CanvasはムンバイのバンドPentagramなどで活躍するギタリストのRandolph Correiaによるプロジェクトで、この並びのなかでは唯一の電子音楽で、ドラムンベース的だったり、歌ものエレクトロニカ風だったりする音楽性はけっこう実験的だ。
6位のDerek & The Catsはまさかのインスト。
これまでのインドにはなかったタイプの音楽だが、これがSeedhe MautやPrateek Kuhadより上かと言われるとやはり疑問符が頭をよぎる。
いずれもセンスの良い洋楽的なスタイルの作品だが、これらを「インドのバンドにしては良作」という以上の評価ができるかというと微妙なところ。
佳作であることは間違いないのだが、世界中のアーティストと肩を並べた上で、手放しで傑作と呼べるほどの作品かと問われるなら、答えは厳しいものになりそうだ。
 

7. Ali Saffudin "Wolivo"

1位から7位までを占めたロック系の作品の中でうならされたのはこのカシミール出身のシンガーAli Saffudin.
70年代ロック風の骨太なリフと民謡風の歌い回しの融合はありそうでなかった組み合わせで、2022年らしさこそないものの、かなり独特で、存在感がある。
ちなみに歌詞は弾圧が続くカシミールの現状を反映したものらしく、そういった意味での現代性は十分にあるようだ。
発売元はなんとデリーのヒップホップレーベルAzadi Recordsで、もちろんロックアルバムのリリースはレーベル創設以来初めてのことだ。
13位にランクインしたAhmer同様に、レーベルのカシミール問題に対する関心の高さがうかがえる。


8. DIVINE "Gunehgar"

ようやくここにきてヒップホップのアルバムが顔を出してきた。
軽刈田のトップ10には入れなかったDIVINE.
最近の彼のスタイルに関しては、以前から書いているように必ずしも好意的に見ているわけではないのだが、こうして聴いてみると、トラックは粒揃いだし、インドのストリートの泥臭さを残した彼のラップもやっぱりいいもんだ、と思えてくる。



9. FILM "FILM" 

ニューデリーのSanil Sudanによるプロジェクト。
ジャンルでいうと若干エクスペリメンタルなエレクトロニカということになるのだと思うが、この手の音楽性のアーティストが多い中で彼が選ばれた理由は、類型的なアンビエントではないという部分が評価されてのことだろう。


10. Seedhe Maut x Sez on the Beat "Nayaab" 


11. Prabh Deep "Bhram"


12. Prateek Kuhad "The Way That Lovers Do"

この辺はブログでも詳しく書いたので繰り返さないが、10位と11位にはデリーのAzadi Records所属のラッパーが続いてランクイン。
音響面でインドのヒップホップを新しくし続けているアーティストたちである。
12位にはインド随一のシンガーソングライターPrateek Kuhadが米エレクトラレコードからリリースした英語アルバムが入った。




13. Ahmer "AZLI"

彼もまたAzadi Records所属のラッパー。
カシミールの社会状況とヒップホップの関わりについては大阪大学の拓徹さんが詳しく、先日オンラインで行われたワークショップでも、Azadi Recordsの紹介のなかで、MC KASHから連なるカシミーリープロテストラップの系譜についても触れられていた。
Azadi Recordsからはこのトップ15に4作品もランクインしていることになる。


14. Rushaki "She Speaks"

ムンバイとプネーを拠点にする女性アーティストによるダークな印象のポップミュージック。
内容は不安との戦いなど、内面的なものだそうだ。


15. The Anirudh Varma Collective "Homecoming"

このランキングで最大の見つけものと言えそうなのが、このThe Anirudh Varma Collective.
デリー出身のピアニストによる古典音楽とコンテンポラリーを融合したいわゆるフュージョンだが、古典部分の腕の確かさと、西洋音楽的な解釈が際立っている(若干ベタなところがあるのはご愛嬌か)。
リズム面のアレンジや楽曲ごとの楽器のセレクトも素晴らしく、心地よさとエキサイティングさが両立している。
自分のような、ふだんからインドの古典音楽に親しんでいるわけではない人間にとっても入りやすい作品。


というわけで15作品を紹介してみました。
同誌が選んだ過去の年間ベスト10と比較してみるのも一興でしょう。






15作品を聴き終えて、ほっとため息をついてRolling Stone IndiaのWebサイトを見てみたら、毎年10曲選出されている年間ベストシングルが今年は22曲もある!
マジかよ…
というわけで次回はたぶんそのネタです。


--------------------------------------
「軽刈田 凡平(かるかった ぼんべい)のアッチャーインディア 読んだり聞いたり考えたり」
更新情報や小ネタはTwitter, Facebookで!
Twitter:
https://twitter.com/Calcutta_Bombay

Facebook:
https://www.facebook.com/軽刈田凡平のアッチャーインディア-読んだり聴いたり考えたり



軽刈田 凡平のプロフィールこちらから

2018年の自選おすすめ記事はこちらからどうぞ! 
2019年の自選おすすめ記事はこちらから
2020年の軽刈田's Top10はこちらから
2021年の軽刈田's Top10はこちらから
2022年の軽刈田's Top10はこちら

ジャンル別記事一覧!




goshimasayama18 at 02:40|PermalinkComments(0)

2022年12月27日

2022年度版 軽刈田 凡平's インドのインディー音楽top10

このブログを書き始めてあっという間に5年の月日が流れた。
始めた頃、どうせ読んでくれる人は数えるほどだろうから、せめて印象に残る名前にしよう思って「かるかった・ぼんべい」と名乗ってみたのだが、どういうわけかまあまあ上手く行ってしまい、この5年の間に雑誌に寄稿させてもらったり、ラジオで喋らせてもらったり、あろうことか本職の研究者の方々の集まりに呼んでいただいたりと、想像以上に注目してもらうことができた。
みなさん本当にありがとうございます。
こんなことになるなら、もうちょっとちゃんとした名前を付けておけばよかった。

「飽きたらやめればいいや」という始めた頃のいい加減な気持ちは今もまったく変わらないものの、幸いにもインドの音楽シーンは面白くなる一方で、まったくやめられそうにない。
これからも自分が面白いと思ったものを自分なりに書いていきますんで、よろしくお願いします。
というわけで、今年も去りゆく1年を振り返りつつ、今年のインドのインディー音楽界で印象に残った作品や出来事を、10個選ばせてもらいました。



Bloodywood (フジロック・フェスティバル出演)

日本におけるインド音楽の分野での今年最大のトピックは、フジロックフェスティバルでのBloodywoodの来日公演だろう。
朝イチという決して恵まれていない出演順だったにもかかわらず、彼らは一瞬でフジロックのオーディエンスを虜にした。
映像では彼らの熱烈なファンが大勢詰めかけているように見えるが、おそらく観客のほとんどは、それまでBloodywoodの音楽を一度も聴いたことがなかったはずだ。
現地にいた人の話によると、ステージが始まった頃にはまばらだった観客が、彼らの演奏でみるみるうちに膨らんでいったという。
これはメタル系のオーディエンスが決して多くはないフジロックでは極めて異例のことだ。
Bloodywoodは一瞬だが日本のTwitterのトレンドの1位にまでなり、おかげで私のブログで彼らを紹介した記事も、ずいぶん読んでもらえた。
(もうちょっとちゃんと書いとけばよかった)

メタル・ミーツ・バングラーという、意外だけど激しくてキャッチーでチャーミングなスタイルは、日本のリスナーに音楽版『バーフバリ』みたいなインパクトを与えたものと思う。
日本だけではない。
BloodywoodのSNSを見ると、彼らがメタル系のフェスを中心に、その後も世界各地を荒らし続けている様子が見てとれる。
一方で、いまやセンスの良いインド系アーティストがいくらでもいる中で、ステレオタイプ的な見せ方を意図的に行った彼らが最も注目を集めているという事実は、現時点での世界の音楽シーンの中での南アジアのアーティストの限界点を示しているとも言えるだろう。


Sidhu Moose Wala 死去

去年まで、この年末のランキングはその年にリリースされた作品のみを対象としてきたのだが、今年はシーンに大きなインパクトを与えた「出来事」も入れることとした。
その大きな理由となったのが、あまりにも衝撃的だった5月のSidhu Moose Wala射殺事件だ。
バングラーラップにリアルなギャングスタ的要素を導入し、絶大な人気を誇っていたSidhuは、演出ではなく実際にギャングと関わるリアルすぎるギャングスタ・ラッパーだった。
彼はインドとカナダを股にかけて暗躍するパンジャーブ系ギャングの抗争に巻き込まれ、28歳の若さでその命を落とした。
音楽的には、バングラーに本格的なヒップホップビートを導入したスタイルでパンジャービー・ラップシーンをリードした第一人者でもあった。
彼の音楽、死、そして生き様は、今後もインドの音楽シーンで永遠に語りつがれてゆくだろう。
彼が憧れて続けていた2Pacのように。





Prateek Kuhad "The Way That Lovers Do"(アルバム)

インド随一のメロディーメイカー、Prateek Kuhadがアメリカの名門レーベルElektraからリリースした全編英語のアルバム(EP?)、"The Way That Lovers Do"は、派手さこそないものの、全編叙情的なムードに満ちた素晴らしいアルバムだった。


彼が敬愛するというエリオット・スミスを彷彿させる今作は、インドのシンガーソングライターの実力を見せつけるに十分だった。
彼のメロディーセンスの良さは群を抜いており、贔屓目で見るつもりはないが、このままだと彼が作品をリリースするたびに、毎年このTop10に選ぶことになってしまうんじゃないかと思うと悩ましい。
リリース後にヨーロッパやアメリカ各地を回るツアーを行うなど、インドのアーティストにしてはグローバルな活躍をしているPrateekだが、観客はインド系の移住者が中心のようで、彼がその才能に見合った評価を受けているとはまだまだ言えない。
要は、私はそれだけ彼に期待しているのだ。

すでに何度も紹介しているが、彼のヒンディー語の楽曲も、言語の壁を超えて素晴らしいことを書き添えておく。




MC STAN "Insaan"(アルバム)他

このアルバムが出たのはもうずいぶん昔のことのように思えるが、リリースは今年の2月だった。
もともとマンブルラップ的なスタイルだったMC STΔNだが、この作品ではオートチューンをこれでもかと言うほど導入して、インドにおけるエモラップのあり方を完成させた。
マチズモ的な傾向が強いインドのヒップホップシーンでは異色の作品だ。
彼の他にも同様のスタイルを取り入れていたラッパーはいたが、彼ほどサマになっていたのは一人もいなかった。
「弱々しいほどに痩せたカッコイイ不良」という、インドでは不可能とも思われたアンチヒーロー像を確立させたというだけでも、彼の功績はシーンに名を残すにふさわしい。
最近では、リアリティーショー番組のBigg Bossに出演するなど、活躍の場をますます広げている。
今インドでもっとも勢いのあるラッパーである。



Emiway Bantai "8 Saal"(アルバム)他


インドでもっとも勢いのあるラッパーがMC STΔNだとしたら、人気と実力の面でインドNo.1ラッパーと呼べるのがEmiway Bantaiだろう。
今年も彼はアルバム"8 Saal"をはじめとする数多くの楽曲をリリースした。
アグレッシブなディス・トラック(今年もデリーのKR$NAとのビーフは継続中)、ルーツ回帰のストリート・ラップ、チャラいパーティーソング、lo-fiなど、Emiwayはヒップホップのあらゆるスタイルに取り組んでいて、それが全てサマになっている。
かと思えば、インドのヒップホップ史を振り返って、各地のラッパーたちをたたえるツイートをしてみたりもしていて、Emiwayはもはやかつての誰彼構わず噛み付くバッドボーイのイメージを完全に脱却して、大御所の風格すら漂わせている。
『ガリーボーイ』にチョイ役(若手の有望株という位置付け)でカメオ出演していたのがほんの4年前とは思えない化けっぷりだ。
もはや彼は『ガリーボーイ』のモデルとなったNaezyとDIVINEを、人気でも実力でも完全に凌駕した。




Seedhe Maut, Sez on the Beat "Nayaab"(アルバム)

昨年も選出したSeedhe Mautを今年も入れるかどうか悩んだのだが、インドNo.1ビートメーカーのSe on the Beatと組んだこのアルバムを、やはり選ばずにはいられなかった。

セルフプロデュースによる昨年の『न』(Na)が、ラッパーとしてのリズム面での卓越性を見せつけた作品だとしたら、今作は音響面を含めた叙情的なアプローチを評価すべき作品だ。
Seedhe Mautというよりも、Sezの力量をこそ評価すべき作品かもしれない。
インドのヒップホップをサウンドの面で革新し続けているのは、間違いなくSezとPrabh Deep(後述の理由により今年は選外)だろう。
インドのヒップホップは、2022年もひたすら豊作だった。


Yashraj "Takiya Kalaam"(EP)


悩みに悩んだこのTop10に、またラッパーを選んでしまった。
ここまでに選出したSidhu Moose Wala, MC STΔN、Emiway Bantai, Seedhe Maut&Sezに関しては、インドのヒップホップファンにとってもまず納得のセレクトだと思うが、この作品に関しては、インド国内でどのような評価及びセールスなのか今ひとつわからない。
YouTubeの再生回数でいうと、他のラッパーたちの楽曲が数百万から数千万回なのに比べて、この"Doob Raha"はたったの45,000回に満たない(2022年12月16日現在)。

だが、過去のUSヒップホップの遺産を存分に引用したインド的ブーンバップのひとつの到達点とも言えるこの作品を、無視するわけにはいかなかった。
自分の世代的なものもあるのかもしれないが、単純に彼のラップもサウンドも、ものすごく好きだ。
若干22歳の彼がこのサウンドを堂々と作り上げたことに、インドのヒップホップシーンの成熟を改めて実感した。


Parekh & Singh "The Night is Clear"(アルバム)


インドのインディーポップシーンでも群を抜くセンスの良さを誇るParekh & Singhのニューアルバムは、その格の違いを見せつけるに足るものだった。
イギリスの名門インディーレーベルPeacdfrogに所属し、日本では高橋幸宏からプッシュされている彼らは、もはや「インドのアーティスト」というくくりで考えるべき段階を超えているのかもしれない。
Prateek KuhadやEasy Wanderlingsら、多士済々のインディーポップ勢のなかで、国際的な評価では頭ひとつ抜けている彼らが今後どんな活躍を見せるのか、ますます目が離せなくなりそうだ。



Blu Attic


ド派手なEDMが多いインドの電子音楽シーンの中で、Blu Atticが示した硬質なテクノと古典声楽との融合は、Ritvizらによるインド的EDM(いわゆる印DM)とも違う、懐かしくて新鮮な方法論だった。
どちらかというと地味な音楽性だからか、このデリー出身の若手アーティストへの注目は、インド国内では必ずしも高くはないようだが、だからこそ当ブログではきちんと評価してゆきたい。
彼がYouTubeで公開している古いボリウッド曲のリミックスもなかなかセンスが良い。
インドのアーティストは、古典音楽と現代音楽を、躊躇なく融合してかっこいい音を作るのが得意だが、Blu Atticによってそのことをあらためて思い知らされた。




Dohnraj 


インドのインディー音楽シーンが急速に盛り上がりを見せたのは2010年台以降になってからだが、それはすなわち、あらゆる年代のポピュラー音楽を、インターネットを通して自在に聴くことができる時代になってからシーンが発展したことを意味している。
まだ若いシーンにもかかわらず、インドにはさまざまな時代の音楽スタイルで活動するアーティストが存在しているが、このDohnrajは80年代のUKロックのサウンドをほぼ忠実に再現している、驚くべきスタイルのアーティストだ。
気になる点は彼のオリジナリティだが、あらゆる音楽が先人の遺産の上に築かれていることを考えれば、インドで80年代のUKサウンドを再現するという試み自体が、むしろ非常にオリジナルな表現方法でもあるように思う。
彼の音楽遍歴(以下の記事リンク参照)を含めてグッとくるものがあった。
インドのシーンの拡大と深化をあらためて感じさせてくれる作品だった。





というわけで、今年の10作品を選出してみました。

気がつけばヒップホップが5作品(というか、5話題)。
ヒップホップを中心に選ぶつもりはなかったのだけど、インドのヒップホップは今年も名作揃いで、他にもPrabh Deepの"Bhram"(これまでの作風から大きく変わったわけではないので今年は選出しなかった)や、Karan KanchanがRed Bull 64 Barsで見せた仕事っぷりも素晴らしかった。

やはりインドのシーンのもっともクリエイティブな部分はヒップホップにこそあるような気がしてならないが、とんでもなく広く、才能にあふれたインドのシーンのこと、来年の今頃は、「やっぱりロックだ」とか「エレクトロニックだ」とか言っているかもしれない。

今年はありがたいことに、仕事のご依頼をいただくことも多く、本業(?)のブログが滞り気味なことが多かったですが、来年もこれまで同様続けて参ります。

今後ともよろしくです。




--------------------------------------
「軽刈田 凡平(かるかった ぼんべい)のアッチャーインディア 読んだり聞いたり考えたり」
更新情報や小ネタはTwitter, Facebookで!
Twitter:
https://twitter.com/Calcutta_Bombay

Facebook:
https://www.facebook.com/軽刈田凡平のアッチャーインディア-読んだり聴いたり考えたり



軽刈田 凡平のプロフィールこちらから

2018年の自選おすすめ記事はこちらからどうぞ! 
2019年の自選おすすめ記事はこちらから
2020年の軽刈田's Top10はこちらから
2021年の軽刈田's Top10はこちらから

ジャンル別記事一覧!




goshimasayama18 at 00:09|PermalinkComments(0)

2022年11月05日

インドが誇る2大ドリームポップバンド Parekh & SinghとEasy Wanderlingsの新作!


インドが誇る2大ドリームポップバンド(だと私が勝手に思っている)Parekh & SinghとEasy Wanderlingsが相次いでアルバムとEPを発表した。

彼らはインドのなかでは、国際的な成功にわりと近い場所にいると言えるアーティストたちだ。
Parekh & Singhは英Peacefrog Recordsに所属していて、Easy WanderlingsはSXSW(South By South West. テキサス州オースティンで開催されるポップカルチャーの巨大見本市)への出演経験がある。
要は、海外からも評価されそうなインディーポップバンドなのだが、以前も書いた通り、インドでは彼らのような英語で歌う「洋楽的」なスタイルのアーティストの人気はさほど高くない。
こうした音楽のリスナーは、インディーズシーンをチェックしている一部の若者に限られ、大衆的な成功を収めるには程遠い状況なのだ。

国内がダメならば、その音楽の質の高さに海外からの注目が集まっても良さそうなものなのだが、我々を含む外国人はインド人にはいかにもインドっぽい音楽を求めてしまう傾向があり、例えばBloodywoodみたいなインドらしさあふれるバンドと比べると、彼らのようなバンドの知名度は高くはない。

であれば、彼らの素晴らしさを大々的に知ってもらおう、というのがこのブログの心意気というやつで、まずはさっそくParekh & Singhが10月にリリースしたアルバム"The Night Is Clear"から紹介してみたい。

Parekh & Singh "Sleepyhead"


彼らはコルカタ出身の二人組で、これまでに日本でもインディーズ系媒体に取り上げられたり、高橋幸宏がSNSで好意的に紹介したりと、局地的に注目されてきた。
このニューアルバムのオープニングナンバーでは、従来に比べてちょっとグルーヴが強調されているのが新基軸のような気もするが、基本的な音楽性はこれまでのスタイルが維持されていて、今作でもベルベットのような質感のサウンドとポップなメロディーを存分に楽しむことができる。
そして今回もミュージックビデオのセンスが良い!
以前はウェス・アンダーソン趣味丸出し(それはそれで良かった)だったが、この曲ではそこまで露骨でなく、ハンドカメラを多用した映像とヨーロッパ映画のような色調がじつにスタイリッシュだ。


Parekh & Singh "Je Suis la Pomme Rouge"


こちらも流麗なストリングスが心地よいポップナンバー。
フランス語で歌うインド人アーティストの曲は初めて聴いた。(サビのみ。意味は「私は赤いリンゴ」)

このリリックビデオはアルバムに先駆けること9ヶ月前、2022年の1月に公開されているのだが、これまでの再生回数はたったの9万回程度。
人口規模のせいか、結構しょうもない曲でも数十万再生くらいされていることが多いインドの音楽シーンでの9万回再生というのは、この音楽の完成度を考えると、率直に言って、かなり少ない。
インド国内での「優れた音楽」の基準が必ずしも欧米目線でないことに関してはむしろ健全だとも思うが(インド国内で大衆的に支持されている音楽が素晴らしいとも思わないけど)、それにしたって、英語で歌ってるんだし、もっと世界中のリスナーが彼らのことを聴いてもいいんじゃないだろうか。

ちなみに彼らを直接知っているという人から得た情報によると、商業的に大成功しているわけではない彼らが、どうして"Sleepyhead"みたいな凝ったミュージックビデオを作れるのかというと、実家がとんでもない裕福ということらしい。
別に否定的な意味で書いているわけではなく、持てるリソースを最大限に活かして素敵なポップアートを作る彼らには、むしろリスペクトの念を抱いている。
今後もこの世界観をとことん追求して、上質な作品を作り続けてもらいたい。

アルバム全編は、Spotifyを使っている人は以下のリンクからどうぞ。
今作は、トールキンの『シルマリルの物語』や、フランク・ハーバートの『デューン』、さらには『ハリー・ポッター』などのファンタジー文学やSF文学にインスピレーションを受けているとのこと。
内省的なテーマの楽曲が多くなっているそうで、ぜひ歌詞にも注目して聴いてほしい。





プネーの8人組、Easy Wanderlingsは10月に5曲入りにEP "Caught In A Parade"をリリース。
彼らのことはこれまでも何度か紹介しているが、ポップなメロディーと優しさの溢れるサウンドは絶品。





今作には、昨年5月にリリースされた60年代ポップ風の佳曲"Enemy"も改めて収録されている。
60年代風のアレンジとメロディーが叙情的な1曲。

Easy Wanderlings "Enemy"



この動画も、ほとんど絵が動かない'official audio'とはいえ、これまで7,000回程度しか再生されていない。
楽曲のクオリティに釣り合う注目を集められていないという点では、彼らも同様なのだ。


"Mayflower"では、彼らが敬愛するシンガーソングライターのNikhil D'Souzaをヴォーカルに迎えている。
Nikhil D'Souzaは映画音楽を手がけることもあるムンバイのアーティストで、このブログでも紹介したビートルズのトリビュート・アルバムでジョンの未発表曲"India India"の秀逸なカバーを披露していたのも記憶に新しい。

Easy Wanderlings "Mayflower"



アルバムのラストを飾る"Makin' My Move"は彼らにしては珍しい80年代っぽい雰囲気のダンスチューンだ。

Easy Wanderlings "Makin' My Move"


彼らはアルバムリリースにともなうインド各地でのツアーを終え、1月にムンバイで初めて開催されるロラパルーザ(アメリカ発祥のオルタナティブロックのフェスティバル)への出演を控えている。
アルバムはSpotifyユーザーの方はこちらから。




いい曲を書いている彼らが、インド国内でも国外でも、もっと高い評価を得られる日が来ることを、願ってやまない。
日本のフェスとかにも来てくれないかな。



参考記事:
https://rollingstoneindia.com/parekh-and-singh-capture-magic-realism-on-the-night-is-clear/

https://rollingstoneindia.com/easy-wanderlings-deliver-celestial-new-ep-caught-in-a-parade/




--------------------------------------
「軽刈田 凡平(かるかった ぼんべい)のアッチャーインディア 読んだり聞いたり考えたり」
更新情報や小ネタはTwitter, Facebookで!
Twitter:
https://twitter.com/Calcutta_Bombay

Facebook:
https://www.facebook.com/軽刈田凡平のアッチャーインディア-読んだり聴いたり考えたり



軽刈田 凡平のプロフィールこちらから

2018年の自選おすすめ記事はこちらからどうぞ! 
2019年の自選おすすめ記事はこちらから
2020年の軽刈田's Top10はこちらから
2021年の軽刈田's Top10はこちらから

ジャンル別記事一覧!



goshimasayama18 at 23:38|PermalinkComments(0)

2022年11月03日

インド製カントリーポップの世界! (インドは日本の100倍くらいアメリカだった)



前回の記事
で書いた通り、インドではラテン系ポップスがポピュラー音楽としてそれなりに受容されている。
その理由として、インド人の国民性とラテンのノリが共鳴しあっているのではないか、というこれといった根拠のない説を唱えてみたのだが、冷静に考えると、そんな理屈をこねる必要は全くなく、インドでラテン系ポップが人気なのは、単純にインドの音楽シーンが日本の100倍くらいアメリカのシーンの影響を直接的に受けているからだろう。
要は、インドのミュージシャンは、アメリカで売れている音楽ジャンルを模倣する傾向が日本よりもずっと強い、ということである。

ご存知のように、インドでは英語が「準公用語」的な位置付けをされており、いわゆる「ネイティブ」並みに英語を喋れる人が結構いる。
都市圏を中心に英語で教育を行う学校も多く、インドの人口の10%は流暢に英語が話せるそうである。
10%というと少なく感じるかもしれないが、人口を考えればインドの英語話者数は日本の総人口を上回るということになるし、また都市部ではその割合は大幅に高くなるはずだ。

インドで使われている英語は、その歴史的経緯からイギリス式のものだが、音楽シーンに関して言えば、昨今ののヒップホップ人気からもわかる通り、アメリカの影響のほうが強そうだ。

それをとくに強く感じるのが、インドには、日本にはほとんど見られない、カントリーミュージックの影響を受けたポップシンガーが結構いる、という事実である。
さまざまな社会に翻案可能なヒップホップや、人種や国籍に関係なく盛り上がることができるダンスミュージックではなくて、カントリーという非常にアメリカンな音楽をやっているミュージシャンが、文化的背景の全く異なるインドにも結構存在しているのだ。

インド人カントリーミュージシャンに関しては、以前Bobby Cashというアーティストの音楽を「ビリヤニ・ウエスタン」と名づけて紹介したことがあるが、今回は、彼のようなオールドスクール・スタイルではなく、もっとポップな、テイラー・スウィフトとかシャナイア・トゥエインみたいなタイプのシンガーたちを取り上げてみたい。
 


ちょっとハスキーなヴォーカルが心地よい。HuyanaことVarshita Rameshは、チェンナイ出身のシンガー・ソングライター。

Huyana "Nothing Wrong in Not Being Okay"


この曲はパンデミック下でも比較的自由だったゴアに滞在していたときのことを歌ったものとのこと。
彼女の他の曲はチルなエレクトロニック・ポップだったりするので、けっしてカントリーにこだわったアーティストではないようだが、こじゃれた音楽としてこのジャンルが選ばれるということに、むしろインドでのカントリーの定着を感じる。


次に紹介するベンガルール出身のシンガーDisha Reddyはなんとまだ16歳!

Disha Reddy "Rudy"


途中からリズムと共に入ってくるバンジョー(マンドリン?)が心地よい。
まだこの曲しかリリースしていない新人アーティストだが、今後もカントリー路線で行くのか、それとも全然違うスタイルに変わっててしまうのか、気になるところではある。


北インド、ラクナウ出身のVineet Singhは、ハーヴァード・ビジネススクール出身のエリートで、インドの都市部(デリー、ムンバイ、ベンガルール等)で放送されているラジオ局Radio Oneの共同設立者/元CEOでもあるという異色の富豪シンガーだ。

Vineet Singh "City Roads"


このVineet Singhにしろ、先ほどのDisha Reddyの"Rudy"にしろ、YouTubeをチェックしてみると、明確に「カントリーの新曲です」と紹介しているのが面白い。
日本のポップシンガーが、カントリーっぽいアレンジの曲をリリースしたときに「新曲はカントリーです」って言うことはまずないと思う。
日本だと、失礼ながらカントリーやブルースは、「一部の好事家のおっさんたちがやっているジャンル」というイメージがあるが、インドではそうでなく、オシャレな舶来音楽のひとつなのだろう。


デリー近郊のグルガオン出身のAashnaは、アメリカのバークリー音楽大学出身の音楽エリート。
YouTubeの紹介欄を見る限り、ポップ、ロック、R&B、フォーク、カントリー、ジャズの影響を受けているそうなので、要は、非エレクトロニック系の音楽を志しているということなのかもしれない。

Aashna "Wasted"


女性たちがどんどん殻を破っていくミュージックビデオが面白いが、海外が舞台になっているのは、インドでは女性の逸脱が受け入れられにくいからだろうか。
最初に紹介したHuyanaみたいな、「タトゥー入ってますが何か?」みたいな(インドにしては)超ラディカルな女性もまれにいるが、インドでは男子問わず大多数の人はまあそれなりに保守的に生きているわけで、インドの音楽を聴くうえで、アーティストがどの層に合わせた表現を取っているのかに注目するのもなかなか面白い。


例によってインドにおけるカントリーミュージックの受容は全国にわたっており、このAaryan Banthiaはコルカタ出身のシンガー。(ただし、現在の活動拠点はムンバイとのこと)

Aaryan Banthia "Hey Betty"


ミュージックビデオもカントリーっぽい世界観で作られていて、女優さんも少し白人っぽく見える人が選ばれているところに芸の細かさを感じる。


もうちょっと本格的なところでは、デリーのWinston Balmanが挙げられる。

Winston Balman and the Prophets of Rock "Sense of it All"


彼の英語っぽい名前が芸名なのか、クリスチャンであるためなのかは不明(インドでもキリスト教徒は英語やポルトガル語の名前を付けられることが多い)。


今回紹介したアーティストたちの動画再生回数は、数百回から数十万回。
インドの人口規模を考えれば、けっして「インドでカントリーが人気!」と言える数字ではないが、それでもポピュラーミュージックの表現方法としてカントリー的手法を選ぶアーティストがこれだけいるというのは、なかなか面白い事実だ。

ちなみにインドにはブルース系のアーティストも結構たくさんいる。




今回は、インドのインディペンデント音楽シーンというニッチなテーマのなかでも、さらにニッチなジャンルについて書いてしまったが、何が言いたいのかというと、インドの音楽シーンはそれだけ多様化して面白くなってきているということだ。
ラテンにしろカントリーにしろ、多様に分かれたインドの音楽シーンの枝葉の先端部分が、これからどんなふうに進化・発展してゆくのか、ますます楽しみである。






--------------------------------------
「軽刈田 凡平(かるかった ぼんべい)のアッチャーインディア 読んだり聞いたり考えたり」
更新情報や小ネタはTwitter, Facebookで!
Twitter:
https://twitter.com/Calcutta_Bombay

Facebook:
https://www.facebook.com/軽刈田凡平のアッチャーインディア-読んだり聴いたり考えたり



軽刈田 凡平のプロフィールこちらから

2018年の自選おすすめ記事はこちらからどうぞ! 
2019年の自選おすすめ記事はこちらから
2020年の軽刈田's Top10はこちらから
2021年の軽刈田's Top10はこちらから

ジャンル別記事一覧!


goshimasayama18 at 15:34|PermalinkComments(0)

2022年10月19日

『響け!情熱のムリダンガム』トークの補足! インド・フュージョン音楽特集



ムリダンガム


というわけで、シアター・イメージフォーラムにて『響け!情熱のムリダンガム』上映後のトークセッションをしてきました。
お相手を務めていただいた、この映画の配給をされている荒川区尾久の南インド料理店「なんどり」の稲垣紀子さん、ありがとうございました。

インドのなかでもかなりニッチな分野しか詳しくいない私は何を話そうかと迷ったのですが、今回のテーマは「フュージョン音楽」!

このブログでは何度も書いていることですが、インドでは、古典音楽/伝統音楽と、ロックやジャズのような西洋音楽を融合した音楽のことを「フュージョン」と呼んでいます。

『響け!情熱のムリダンガム』のなかでも、生演奏にこだわるヴェンブ・アイヤル師匠が「テレビ番組の審査員をやってくれませんか?」と言われるシーンで、よく聞くとインタビュアーが「カルナーティック・フュージョン」と言っているのが分かります。
伝統的なスタイルの生演奏にこだわる師匠が、テレビ番組、ましてや純粋な形式から離れたフュージョンの番組に出演するなんてことは当然ありえず、もちろんきっぱりと断る、というわけです。

そんなわけで、映画ではちょっとまがい物扱いされているフュージョンですが、じつはかっこいい音楽がめちゃくちゃ沢山あって、ふだん古典音楽を聴き慣れていないリスナーでも、フュージョンを通して分かりやすくそのすごさを感じることができます。


トークの打ち合わせでまず稲垣さんから名前が上がったのが、Shakti.
イギリス人ジャズギタリストのジョン・マクラフリンを中心にインド人の凄腕古典ミュージシャンが揃ったフュージョン・ジャズの伝説的バンドです。
 

タブラにザキール・フセイン、バイオリンにL.シャンカル(ジョージ・ハリスンのシタールの師匠としても有名なラヴィ・シャンカルとは別人です。念の為)、ガタム(ほぼ壺の打楽器)にT.H.ヴィナヤクラムという凄まじいメンバーが、インド古典音楽の強烈なリズムをジャズと融合して聴かせてくれます。
1997年にはRemember Shaktiという名前で再結成し、ヴィナヤクラムの代わりに、ガタムだけでなくムリダンガムやカンジーラ(トカゲ革のタンバリン)も叩くセルヴァガネーシュが加入。
Shaktiは、「いきなりガチの古典音楽を聴くのはしんどいけど、インド古典音楽がどんなすごい音楽なのか手っ取り早く知りたい」っていう人にはぴったりのバンドです。
(まずは上の映像を6分くらい見てもらえれば、その凄さが伝わるはず)


インド国内では、カルナーティック音楽はジャズよりもプログレッシブ・ロックと融合されることが多い印象で、例えばこのAgamはギター、ベース、ドラムスのロックバンドに、ストリングスやコーラス隊も交えた編成で、古典音楽のダイナミズムを余すことなく表現しています。


変拍子的なキメの多いカルナーティック音楽は、確かにプログレッシブ・ロックと融合するのにぴったりなジャンルと言えそうです。
ちなみにこの歌の原曲は200年ほど前の楽聖ティヤーガラージャなる人物が作った"Manavyalakincharadate"(長っ)という曲だそうで、Nalinakaantiというラーガ(簡単に言うと音階)でDeshadiというターラ(簡単に言うとリズム)に乗せて演奏されているとのこと。
なんだかよくわからないと思いますが、私もよくわかっていないので、ひとまずは「なんか凄そう…」ということだけ感じてもらえれば現時点ではオッケーです。
ムムッと思ったあなたは、ラーガやターラの深い部分まで学べば、インド古典音楽から、一生かけても味わい尽くせないほどの喜びを感じることができるようになるでしょう。(そういうものだと聞いています)
ちなみにこの映画のエンディングで流れる曲もティヤーガラージャの手によるものです。


最近のバンドでは、ベンガルールのプログレッシブ・メタルバンドPineapple Expressが強烈!


古典音楽だけではなく、曲によってはEDMやラップ、ジャズまで取り入れた超雑食性のスタイルは、まさにフュージョンの極地!
強烈です。


映画のテーマであるムリダンガム奏者では、Viveick Rajagopalanという人がTa Dhom Projectと称してラップとの融合を試みています。


古典音楽とラップの融合についてはこの記事で詳しく書いているので、興味のある方はどうぞ。



ところで、私は『響け!情熱のムリダンガム』の冒頭のクラブミュージック的な曲(超カッコいいのにサントラにも入っていない!)がものすごく好きなのですが、こんなサウンドの曲、他にないかなあ、と呟いていたら、南インドパーカッション奏者の竹原幸一さんが教えてくださったのが、Praveen Sparsh.


ローカルな空気感満載の映像を、ドラムンベースというかスラッシュメタルというか、切れ味抜群のムリダンガムが疾走!
超かっこいいです。
映画の冒頭のあの曲は、ピーターが5年後くらいに作った曲だと思って聴くとまた一興ですよ。


さて、チェンナイには、カルナーティックみたいな(ヒンドゥーの)信仰と結びついた古典音楽もあれば、もっと大衆的な伝統音楽もあります。
映画の中では、ピーターのお父さんの故郷で歌い踊られていた"Dingu Dongu"がその系統の音楽です。

映画監督のパー・ランジットの呼びかけで結成されたCasteless Collectiveは、ピーター同様にカーストの最下層に位置付けられた「ダリット」のメンバーによるバンド。


大衆音楽「ガーナ」の強烈なリズムに乗せて、自らの誇りとアイデンティティ、平等を勝ち得るためのアジテーションを叫んでいます。
ファンクやヒップホップなど、アメリカの黒人たちを鼓舞してきた音楽とのフュージョンになっているのも熱いポイント。




まだまだキリがないのですが、映画の中でヴェンブ・アイヤル師匠が言うように、古典音楽は純粋な形式で演奏しないと本質が味わえない厳格な伝統芸術であるのと同時に、さまざまな音楽と組み合わせて楽しむこともできる、まさに「今を生きる音楽」でもある、とも言えるでしょう。

それでは今回はこのへんで。


--------------------------------------
「軽刈田 凡平(かるかった ぼんべい)のアッチャーインディア 読んだり聞いたり考えたり」
更新情報や小ネタはTwitter, Facebookで!
Twitter:
https://twitter.com/Calcutta_Bombay

Facebook:
https://www.facebook.com/軽刈田凡平のアッチャーインディア-読んだり聴いたり考えたり



軽刈田 凡平のプロフィールこちらから

2018年の自選おすすめ記事はこちらからどうぞ! 
2019年の自選おすすめ記事はこちらから
2020年の軽刈田's Top10はこちらから
2021年の軽刈田's Top10はこちらから

ジャンル別記事一覧!
  

goshimasayama18 at 18:00|PermalinkComments(0)

2022年09月22日

早すぎたロックンロールのパイオニア ターバン姿の「インドのエルヴィス」 Iqbal Singh Sethi


インドの ポップミュージック史をひもといてゆくと、まるでオーパーツのような、その時代には存在しなかったはずの「早すぎる音楽」と出会うことがある。
欧米の流行をあまりにも早く導入したがゆえに、あとになって振り返ったときに「なぜこの時代にこんな音楽が?」と思ってしまうような曲のことだ。
ヒップホップ(風の音楽)で言えば、1992年のBaba Sehgalによるスマッシュヒット"Thanda Thanda Pani"や、1994年のタミル語映画"Khadalan"の劇中歌"Pettai Rap"がそれにあたる。
日本でいうと、吉幾三による『俺ら東京さ行ぐだ』(1984年)である。
最新の音楽を取り入れてみたものの、その珍奇さばかりを誇張したために、なんだかコミックソングみたいになってしまっているのも、これらの楽曲の共通点だ。

今回紹介するIqbal Singh Sethiの"Beautiful Baby of Broadway"も、インドのポピュラー音楽史のなかで、そんなオーパーツ的な輝きを放っている曲である。



最近では、サルマン・カーンの主演映画"Tubelight"(2017)でも使用されたこの曲は、もともと1960年のボリウッド映画、"Ek Phool Char Kante"(「ひとつの花、四つの棘」の意味)の挿入歌だった。

しかし、強烈な印象を残すターバン姿のロックンロール・シンガー、Iqbal Singh Sethiは、この1曲のみを残して、オーパーツを生み出した超古代文明のように、インドの音楽シーンから忽然と姿を消してしまう。
(今回、なんでかオーパーツとか超古代文明とか、やたらと「学研ムー」的な表現が多くなってしまっている。よくわからない人は適宜ググりつつ読んでください。わからないままでも何の問題もないですが)

ターバンとロックンロールというコミカルな組み合わせに反して、彼のエルヴィス・スタイルの歌唱、そしてツイストっぷりはかなり本格的だ。
当時インドには、ロックバンドなどまったく存在しなかったにもかかわらず、である。
早すぎたロックンロールを完璧に歌いこなし、踊りこなす彼は、いったい何者だったのだろうか?

「インドのエルヴィス」こと、Iqbal Singh Sethiは、1934年の元日に、現在はパキスタン領であるパンジャーブ地方の街、ラーワルピンディーで生まれた。
プネーの学校を卒業後、若くして海軍に士官。
1953年には、インド海軍の軍艦乗組員として、英ポーツマスで行われたエリザベス女王の戴冠記念観艦式に参加した。
その時に出会ったというイギリス人のガールフレンドから、スイングに合わせて踊る「ジャイヴ」というダンスを教わると、踊り好きのパンジャービーの血のせいか、めきめきと上達。
イギリス滞在中に、ロックンロール・ダンスコンテスト(そういうものが当時あったらしい)で優勝するまでになったという。

帰国後に同郷の女性と結婚。
だが、イギリスでロックンロールに出会ってしまった彼が、一般的なインド人のよう(そのまま落ち着くことはなかった。
ボンベイ(現ムンバイ)のSalome Roy Kapur(現代のボリウッド俳優Aditya Roy Kapurの母)のもとで本格的に歌と踊りを習うと(これはおそらくインドの伝統的スタイルのものだろう)、海軍勤務のかたわら、芸能活動を開始する。
やがて彼は「シク教徒のエルヴィス」として、デリーやカルカッタのナイトクラブやレストランからも呼ばれ、もてはやされるようになったという。
こうした経歴をふまえると、上述の映画のワンシーンは、案外リアルなものだったのかもしれない。
インドでは真新しかった彼の歌とダンスは、海の向こうからやってきた刺激的な音楽に夢中になった上流階級の若者たちに、ばっちりはまったのだろう。


1960年には、ついに"Beautiful Baby of Broadway"で銀幕デビュー。
しかし、スターダムにのし上がったのも束の間、海軍当局から無断で映画に出演したことを問題視され、映画界を去るか、軍法会議かという究極の選択を迫られてしまう。
歌やダンスや映画を崇拝(worship)の対象と呼ぶほどに愛していたが、彼はそれにも増して軍人として国に尽くすことを義務だと感じていた。
Iqbalは、殺到する映画のオファーを断り、軍人として生きることを選んだのだ。

こうして「インドのエルヴィス」の短すぎるキャリアは、あっけなく幕を閉じた。
晩年のインタビューで、彼は「後悔はしていない。海軍は私に多くのものを与えてくれた。1953年のエリザベス女王の戴冠式に出席し、機関士としての訓練を受け、勲章も授与されたんだ」と語っている。

彼の人生のモットーは、「幸せであれ、楽しめ、決して振り返るな。空を見上げていたら転ぶこともあるが、足元を見ていれば前に進むことができる」。
常にポジティブでありつづけたIqbal Singh Sethiは、2021年11月27日、88歳でその生涯を終えた。

歌と踊りが得意で、パーティーライフを愛しつつも、実直な軍人として生きた彼は、パンジャーブ生まれのシク教徒の典型のような人物だったのかもしれない。
(一般的にパンジャーブ人は歌好き、踊り好き、パーティー好きと思われるふしがあり、またシク教徒の男性は戦士であるという教義を持つため、軍隊勤務者が多い)
ヒップホップ同様に、ロックンロールをインドに持ち込んだのもパンジャービーだったと思うと、それもまた感慨深い。


ちなみに、"Beautiful Baby of Broadway"は、当初"Bombshell Baby of Bombay"というタイトルだったそうだが、Bombshell(「爆弾」という意味とは別に「セクシーで魅力的な女性」という俗語でもある)という言葉が問題視されたのか、当局の許可が降りずに改題されたそうだ。

改めて考えてみると、この曲に関しては、インドのインディーミュージック史の「オーパーツ」と解釈するよりも、当時インドのみならず世界中で娯楽の王道だった、ミュージカル映画の潮流に位置付けて考えるほうが妥当なのかもしれない。
日本でも、ロックンロール(ロカビリー)は、1958年の美空ひばり主演のミュージカル時代劇『花笠若衆』でも取り上げられるなど、いわゆる「反骨精神を含んだ若者の音楽」的な解釈とは異なる扱われ方をしていた時代があった。
(趣旨から外れるのでここでは取り上げないが、美空ひばりの「ロカビリー剣法」という曲はなかなかイカすので、興味がある方はYouTubeで検索してみてください)

もうひとつ余談になるが、"Ek Phool Char Kante"には、同じくパンジャーブ出身のムスリムの歌手、Mohammed Rafiによる"O Meri Baby Doll"なるロックンロールナンバーも取り入れられている。


Mohammed Rafiは、Iqbalとは異なり、その後もプレイバックシンガーとしての活動を続けたものの、1980年に55歳の若さで生涯を終えた。
古き良きボリウッドの伝説的歌手として称される彼は、そのキャリアのなかで他にもロックンロールを歌っており、とくに"Gumnaam"(1965)で歌われた"Jaan Pehchan Ho"は、2001年のアメリカ映画『ゴーストワールド』(これもまた名作!)で取り上げられるなど、その後もたびたび注目されている。


(直接動画が貼り付けられなかったので、このリンクからどうぞ)

インドの原始インディー音楽とは異なる、王道エンタメ映画のなかでのロックンロールというのも、今後リサーチしてみたいテーマのひとつではある。


(参考サイト)
https://homegrown.co.in/article/805962/indias-elvis-presley-the-incredible-life-of-iqbal-singh-sethi

https://www.hindustantimes.com/chandigarh/a-sikh-rock-n-roller-from-60s-who-earned-sobriquet-indian-elvis/story-ByBe9NFOyZONECqBlc0OQL.html

https://upperstall.com/features/an-indian-elvis-in-bollywood/






--------------------------------------
「軽刈田 凡平(かるかった ぼんべい)のアッチャーインディア 読んだり聞いたり考えたり」
更新情報や小ネタはTwitter, Facebookで!
Twitter:
https://twitter.com/Calcutta_Bombay

Facebook:
https://www.facebook.com/軽刈田凡平のアッチャーインディア-読んだり聴いたり考えたり



軽刈田 凡平のプロフィールこちらから

2018年の自選おすすめ記事はこちらからどうぞ! 
2019年の自選おすすめ記事はこちらから
2020年の軽刈田's Top10はこちらから
2021年の軽刈田's Top10はこちらから

ジャンル別記事一覧!
 

goshimasayama18 at 22:50|PermalinkComments(0)

2022年09月09日

いまひとつインド国内で人気のない今風かつ欧米風のポップス・アーティストたち



そんなに意識しているわけではないのだけど、考えてみるとこのブログで取り上げる音楽にはだいたい3パターンくらいあって、
  1. インドのインディペンデント・シーンで人気があるアーティスト
  2. いかにもインドらしいサウンドや社会的背景のあるアーティスト
  3. インドらしからぬ欧米的なサウンドや感性を持ったアーティスト
という分類ができそうだ。
取り上げる対象がこの分類のどれかひとつにしか当てはまらないケースは少なくて、ほとんどの場合、この3つがユニークな形で組み合わさっている。
とくに記事にしやすいのが1と2の混合タイプで、人気があるアーティストであれば、媒体で取り上げられる回数も多いのでネタを集めやすいし、そこにインドならではの要素が入っていればさらに紹介する価値がある、というわけだ。
ヒップホップにしろロックにしろ電子音楽にしろ、欧米で生まれたカルチャーがインドでどう需要・解釈され、実践されているかというテーマは、インドのアーティストが奏でているサウンドと同じくらい刺激的で面白い。

で、問題は3だ。
最近のインドでは、洗練された欧米風ポップスを奏でるインディーズ・アーティストは本当に多い。
ブログを始めた2017年頃はいちいち「インドにもこんなアーティストがいた!」と記事にしていたものだが、今ではそのあまりの多さに、感動のハードルが大幅に上がってしまっている。
その結果、ブログのネタ帳には、ひたすら3のタイプのアーティストが溜まっていってしまうのである。

インドのリスナーはいまだに映画音楽をはじめとするドメスティックなサウンドを好む傾向が強い。
こうしたアーティストのほとんどが、ごく一部の音楽ファンに評価されるのみで、成功とは程遠い状況にいる。
つまり、彼らは音楽的にはなかなか質が高いのだけど、音以外、記事にするようなネタがほとんどないのだ。
今回は、そんな不憫な、しかしサウンド面ではけっこういい線行ってるアーティストたちをまとめて紹介したい。
まずは、EDMアーティストのShivam Bhatia.


Shivam Bhatia "God In Our Eyes"


今となっては古典的にすら感じられるポップ系EDMサウンドに乗せて、ものすごく直接的にドラッグのことを歌った曲。
歌っているのはSarah Solsticeなる白人女性シンガーで、おそらくはインターネットを介したコラボレーションと思われるが、インド国内のソングライターと欧米のシンガーの共演は、最近ちょくちょく見かける組み合わせだ。
この曲はYouTubeで12万回近く再生されている。
Shivam Bhatiaについて調べてみると、他にSpotifyで90万回以上再生されている曲もあるので、彼のことを無名アーティスト扱いするのはちょっと失礼かもしれないが、このサウンドの無個性さが一層の泡沫感(≒バブルガム・ポップ感)を掻き立てる。
印DM(勝手に命名したインド風EDM)っぽい路線に転向したりすると面白いと思うが、さて、今後どうなるだろう。


Chrmng, x milo, "DOSHTI"


続いての人たちも詳細不明。
Chrming,(カンマまでがアーティスト名)という人とmilo.という人(こちらもたぶんピリオドまでがアーティスト名)のコラボレーションで、全く情報がないのだけど、見た目的におそらくインド北東部の人だろうか。
Chrming,のインスタのアカウント名にバングラデシュの国旗があったので、バングラデシュのアーティストかもしれない。

インドのウェブメディアで国内アーティストと並んで紹介されていたので、おそらくはインドか、少なくとも南アジアとは関連がある人のはずだが、映像監督は韓国の人のようで、よく分からない。
8月27日に公開されたこのミュージックビデオの再生回数はまだ1,000回未満。
YouTubeのクレジットを見ると、撮影監督はエド・シーランで、主演女優はエマ・ワトソンとのこと。
ふざけてんのか。
サウンド的にはアコースティックギターを取り入れたメロウなポップスで、これまたどこかで聴いたことがありそうなスタイルだ。
ここまで無個性な音楽をやってるのだから、せめて誰がやってるのかくらいはっきりさせようぜ、と思わなくもないが、ヴェイパーウェイヴみたいな匿名的なコンセプチュアル・アートなのか。
謎が多い。


次のアーティストは正体がはっきりしている。
ハイデラバードの女性シンガー、PeekayことPranati Khannaが、ムンバイを拠点に活動しているAndrea Tariangと共演したこの"Sunshine On The Street"は、ソウルフルなヴォーカルが印象的なポップソング。

Peekay & Andrea Tariang "Sunshine On The Street"


昼下がりのカフェやFMラジオに映えそうなさわやかな音楽。
今年2月に発表されたこの曲の再生回数は7万回くらいとそれなりだが、インドの人口の多さを考えると、ヒット曲と呼ぶにはちょっと無理がある。
ちなみにAndrea Tariangは、メガラヤ州出身のベテラン・ブルースロック・バンドSoulmateのギタリストの娘だそう。



Unluv "Tera Jadoo"


メロウかつダンサブルな音楽を奏でるUnluvは、やはり情報が少ないアーティストで、インドを拠点に活動しているが、もしかしたらネパール系?のようでもある。
(彼の場合もインスタグラムにネパール国旗と「今はインドを拠点に活動」の記述があった)
この洋楽っぽい音楽性でヒンディー語詞というのは珍しい(部分的に英語)。
公開5ヶ月でYouTubeの再生回数は19,000回ほど。
インドでは英語詞の曲に比べてヒンディーなど現地語の曲のほうが人気が高い傾向があるが、それを考えるともっと評価されても良い曲なのだが。


最後に紹介するのはロック。
ムンバイ在住、弱冠20歳のDev Makes Musicが演奏するのは、ひねくれてないティーン向けっぽい、極めてポップなロックだ。

Dev Makes Music "Concert Tickets"


ところで、冒頭のシーンで左腕の内側に見えるのは、リストカットの跡?タトゥー?
曲を聞く限りは爽快でポップなロックで、ダークな要素はどこにも見当たらないのだけど。
ふと思い出したのが、以前同様の趣旨で書いた記事で取り上げたAnimeshのことで、彼の"Pressure on It"のジャケット(というか今ではサムネイルというべきか)にもリストカットをした腕が描かれていた。
一時停止して見ると、Devの場合はタトゥーでもリストカットでもなさそうで、なんだかよく分からない。



というわけで、やっぱり全体的によく分からない記事になってしまった。
今回書いた彼らの場合、そもそも人気アーティストではないので、インド国内で紹介されている記事なども見当たらず、SNSでの発信がインスタの画像ばっかりだったりすると、ほとんど書ける内容がないのだ。


率直に言って、今回紹介したアーティストたちの音楽は、ポップミュージックとしてのクオリティこそそれなりに高いものの、オリジナリティには欠けているとしか言いようがない。
知名度もそんなになさそうだし、セールスの面で楽観できるアーティストは一人もいないだろう。
だが、それでも、というか、だからこそ、欧米ポップス的目線で見るとバブルガムでコマーシャルな音楽を、彼らは本気で愛して演奏しているに違いない。

今回は全体的にちょっとナメた感じで書いてしまったが、彼らがもうちょっとたくさんの人に聴かれて「けっこういいじゃん」くらいの評価を得てもいいように思う。
実際、けっこういいと思うし。
また折を見てこのタイプのミュージシャンについても書いてみたい。
なにしろたくさんいるから。





--------------------------------------
「軽刈田 凡平(かるかった ぼんべい)のアッチャーインディア 読んだり聞いたり考えたり」
更新情報や小ネタはTwitter, Facebookで!
Twitter:
https://twitter.com/Calcutta_Bombay

Facebook:
https://www.facebook.com/軽刈田凡平のアッチャーインディア-読んだり聴いたり考えたり



軽刈田 凡平のプロフィールこちらから

2018年の自選おすすめ記事はこちらからどうぞ! 
2019年の自選おすすめ記事はこちらから
2020年の軽刈田's Top10はこちらから
2021年の軽刈田's Top10はこちらから

ジャンル別記事一覧!



goshimasayama18 at 18:10|PermalinkComments(0)

2022年06月04日

インド最高のメロディーメイカーPrateek Kuhad Electra Recordsから新作をリリース



ジャイプル出身のシンガーソングライターPrateek Kuhadが、アメリカの名門レーベルElektra Recordsから全曲英語のニューアルバム"The Way That Lovers Do"をリリースした。

彼がElektraと契約を結んだというニュースが流れてきたのは今から約1年半前。
個人的にインド最高のメロディーメイカーと信じてやまない彼が、いよいよ世界に知られる日が来るのか、と楽しみにしていた。
ところがその後、PrateekはElektraとの契約のことなんて忘れてしまったかのようにヒンディー語の楽曲を立て続けにリリース。
これがまたすごく良かったので(後述)、すっかりElektraとの契約なんてどうでもよくなってしまったんじゃないか、と思っていた。
まあ欧米の名門レーベルからリリースしないと世界のリスナーに音楽を届けられない時代でもないし、別にいいっちゃいいんだけど…と思っていたら、忘れた頃にこの11曲入りのアルバム発表の情報が飛び込んできた。

結論から言うと、今回も内容は素晴らしいの一言。

"All I Need"



繊細で叙情的なメロディーとハーモニー、シンプルながらも旋律を際立たせるアレンジ。
今作でもPrateekの本領が余すところなく発揮されている。

このアルバムは、米ワシントン州のシアトル郊外にある人里離れたBear Creek Studioで録音されている。
ここはFoo Fightersの"The Colour and the Shape"(1997)やSoundgardenの"Badmotorfinger"らのロックの名盤が録音されたことでも知られる伝説的なスタジオで、調べてみたら本当に山奥の小屋みたいなところだったのでびっくりした。
プロデュースはRyan Hadlock.
LumineersやVance Joyといった新世代のフォーク/アコースティックアーティストを手掛けている気鋭のプロデューサーだ。
ElektraがPrateekにかける期待が伝わってくる。

"Bloom"

この曲なんかはちょっと70年代のアメリカのシンガーソングライターみたいな雰囲気がある。

唯一、物足りなかった点を挙げるとしたら、彼が2年前にリリースしたヒンディー語の"Kasoor"みたいなキャッチーな大衆性がある曲が入っていたらもっと良かったかな、ということだ。
アルバムの出来には大満足しているのだけど、せっかく英語で歌っているのだから、彼の才能が分かりやすく世界中のリスナーに伝わる曲が入っていてほしかったのだ。

そんなふうに思っていたら、今作リリースにあたってのインタビューで、 Prateekがソングライティングについてこう語っているのを見つけた。
「このアルバムは、愛と人のつながりっていう、僕がいつも惹かれている2つのテーマについての本格的なストーリーなんだ。僕はどれだけ人気が出るかを考えて曲を作りたいとは思わない。もし誰かが1、2曲だけでも気に入ってもらえたら、それでいいと思ってる」

さらに、アルバムリリース後のツアーについてはこう語っている。
「ライブミュージシャンは、観客が喜んでくれるものを書く傾向がある。でも僕は意図的にそういうことをするのはやめようと努めた。自分がプレイしたものをやりたいようにやるっていうのが、少なくとも今のところ守ろうと思っている僕の価値観だよ」
(引用出典:https://www.grazia.co.in/lifestyle/culture/prateek-kuhad-on-the-true-meaning-of-authenticity-in-music-9471.html

どうやら、名門レーベルからリリースするんだから、キャッチーで売れそうな曲を入れたら良かったのに、なんていう俗っぽいことを考えていたのは自分だけだったようだ。
Prateek本人はいたって自然体。
誠実に、自分が作りたい曲を作る。そのことに集中しているからこそ、ピュアで美しい音楽が生まれてくるのだろう。

また別のインタビューによると、彼の転機になったのは、学生時代のニューヨーク大学への留学だったという。

インドの古都ジャイプルから大都市ニューヨークに来たばかりの頃は、環境の違いに塞ぎ込んだこともあったそうが、彼はこの街の自由な環境をすぐに好きになったという。
人との関わりが強く、なにかと干渉されがちなインド社会と比べて、個人が自由に生きられるニューヨークは、彼の価値観を大きく変えたようだ。
彼はこの街で、自分らしく生きる喜びに出会い、音楽の道に真剣に取り組むことを決意したのだという。
(引用出典:https://www.thelineofbestfit.com/features/interviews/prateek-kuhad-on-the-rise

自分に正直に、生きたいように生きる。
やりたいことを追求して、純粋な音楽作品を作る。
彼のこの哲学は間違いなくニューヨークでの経験から生まれたものなのだろう。

今作からは、これまで2本のミュージックビデオが制作されている。

"Just A Word"


この"Just A Word"の映像は、これまでにKhalidやWiz Khalifaといったトップアーティストのミュージックビデオを手掛けてきたAlex DiMarcoによるもの。
幻想的な柔らかい映像が楽曲にぴったりと合っている。


"Favorite Peeps"


こちらはインドのチーム(インドで活躍するウクライナ人映像作家Dar Gaiを含む)による作品。
パーティーで仲間たちから少し離れて、ちょっとだけ孤独そうに微笑む姿はPrateekの繊細な楽曲のイメージにふさわしい。

ちなみに前述のGraziaのインタビューによると、今作でエレクトロニック的な要素がこれまでよりも前面に出ているのは、制作中に彼がヒップホップやポップをよく聴いていたからとのこと。
エヴァーグリーンなメロディーでありながらも、きちんと現代的な音像でもあるところも本作の魅力のひとつだろう。

今後の予定としては、6月2日からテキサス州ダラスを皮切りに、6月28日のニューヨーク公演まで続く全米ツアー、そして9月以降は、ドイツ、オランダ、フランス、イギリス、アイルランドを回るヨーロッパツアーが計画されている。

2019年には"Cold / Mess"がオバマ前大統領のフェイバリットに選ばれるなど、すでに一部では注目を集めていたPrateekだが、いよいよ本格的な世界進出となる。
彼の音楽がどんなリアクションで迎えられるのか、今からとても楽しみだ。



最後に、この記事でPrateek Kuhadのことを初めて知った人もいると思うので、彼の素晴らしいヒンディー語の楽曲も紹介しておく。

"Shehron Ke Raaz"


昨年7月、Elektraとの契約後にインディペンデント作品としてリリースされた"Sheron Ke Raaz"のこの美しいメロディー。
インド版"La La Land"的なミュージックビデオも絶品だ。
歌詞は「二人で過ごす特別な時間はこの街の秘密」といった内容。(別に不倫の歌ではない)


"Kasoor"


2020年にロックダウン下で製作されたがゆえにこのスタイルのミュージックビデオにしたのだろうが、楽曲も映像もじつに素晴らしく、個人的にこの"Kasoor"が2020年のベスト作品だと思っている。
こちらの歌詞は「君にすっかりまいってしまった僕、こんなふうになってしまったのは過ちだったのか」といった内容。

インドではバイリンガル(あるいはトリリンガル以上)で楽曲をリリースするアーティストも珍しくはないが、彼のそれぞれの言語の響きを生かしながらも美しい楽曲を作る才能は頭ひとつ抜けている。
日本でももっともっと評価されてほしい存在だ。


以前書いた彼についての記事も貼り付けておく。





--------------------------------------
「軽刈田 凡平(かるかった ぼんべい)のアッチャーインディア 読んだり聞いたり考えたり」
更新情報や小ネタはTwitter, Facebookで!
Twitter:
https://twitter.com/Calcutta_Bombay

Facebook:
https://www.facebook.com/軽刈田凡平のアッチャーインディア-読んだり聴いたり考えたり



軽刈田 凡平のプロフィールこちらから

2018年の自選おすすめ記事はこちらからどうぞ! 
2019年の自選おすすめ記事はこちらから
2020年の軽刈田's Top10はこちらから
2021年の軽刈田's Top10はこちらから

ジャンル別記事一覧!


goshimasayama18 at 22:20|PermalinkComments(0)

2022年05月08日

インドのアニメーション・ミュージックビデオ特集!(その2・コマ撮り編)


前回お届けしたインドのアニメーション・ミュージックビデオ特集。
 

これまでブログで紹介していなかった作品を中心に、5つの動画を紹介したけれど、まだまだ紹介しきれなかった作品がある。
ということで、今回は、インドのインディー音楽シーンのアニメーション・ミュージックビデオ特集第2弾。
「コマ撮りアニメ編」をお届けします!

デリーを拠点にするヒンディー・ロックバンドThe Local Train"Gustaakh"は、ネオン輝く近未来都市を舞台にした「怪獣もの」という意表を突く設定。


ハリウッドのSFか日本の特撮を思わせるインドらしからぬセンスだが、映像も非常に凝っていてこれがなかなか面白い。
(そのわりに、曲によっては1,000万から2,000万回再生されている彼らの楽曲のなかでは少なめな72万回再生なのがもったいない…)
2018年にリリースされた彼らのセカンドアルバム"Vaaqif"の収録曲で、ミュージックビデオは映画監督Vijesh RajanのシナリオをMosambi Juice Productionsなるスタジオが制作している。
彼らは毎回映画を思わせる凝ったミュージックビデオを作っているが、この作品も30人以上ものスタッフが関わって作られている。
ちなみに曲のタイトルはヒンディー語/ウルドゥー語で「傲慢」を意味しているようだ。


こちらもニューデリーのシンガーソングライターKamakshi Khanna"Qareeb"(アラビア語由来の言葉で「近く」を意味しているらしい)は、フェルトを使ったやわらかな雰囲気が印象的なミュージックビデオだ。



ストーリーは、恋愛に拠り所をもとめていた孤独な若い女性が、音楽を通して自分に自信を取り戻すまでを描いたもの。
監督は実写作品も手掛けている映像作家のArsh Grewal.
彼女のインスタグラムを見ると、Parekh & SinghやSanjeeta Bhattacharya, Lifafaらのインディミュージシャンも数多くフォローしており、次なるコラボレーションに期待がかかる。
Kamakshi Khannaは最近リリースしたSanjeeta Bhattacharyaとのコラボレーション"Swimming"も女性たちだけの幻想的な世界観を美しく描いたミュージックビデオが秀逸だった。


コルカタ出身のシンガーソングライターTajdar Junaid"Ekta Golpo"は、ベンガル民謡っぽい素朴なメロディーをカントリー的なアレンジで歌った曲。


Tajdar JunaidはWhale in the Pondと並んで、コルカタらしい詩的なサウンドのベンガリ・フォークポップを代表するアーティストだ。
楽曲のリリース数は少なく、マイペースに活動しているアーティストのようだが、昨年はムンバイのギタリストBlackstratbluesとのコラボレーションを発表している。
「雲の王国」を舞台にかわいらしい馬たちが繰り広げる民話的ストーリーのアニメーションは、Pigeon and Co.なるプロダクションが手掛けたもの。
こちらも素朴なサウンドに似合う幻想的な作風だ。



前回のアニメーション・ミュージックビデオ特集でも取り上げたTaba Chake"Morning Sun"は、身近なものを活かした、カジュアルながらもアイディアが光っている。


インド北東部シッキム州出身の映像作家Tribeny Raiが完全に予算ゼロで作った作品とのこと。
アコースティックかつポップな楽曲とよく合った映像作品に仕上がっている。


インドを代表するメロディーメイカー、Prateek Kuhad"With You/For You"は、コマ撮りならではの実写を交えた映像が効果的。


ミュージックビデオを手掛けたのは、グラフィックデザイナーのKaran Kumar.
こちらもローバジェットながらも、カラフルでポップな色彩が曲調に合っている。
予算があるならあるなりに、無いなら無いなりに、楽曲に合わせた素敵な作品を作ってくるところにインドの映像作家たちの底力を感じる。

アニメーションのミュージックビデオ、じつはまだまだ紹介したい作品がたくさんあるのだけど、きりがないので今回はいったんここまで。
続きはまたいつか書いてみたいと思います。



--------------------------------------
「軽刈田 凡平(かるかった ぼんべい)のアッチャーインディア 読んだり聞いたり考えたり」
更新情報や小ネタはTwitter, Facebookで!
Twitter:
https://twitter.com/Calcutta_Bombay

Facebook:
https://www.facebook.com/軽刈田凡平のアッチャーインディア-読んだり聴いたり考えたり



軽刈田 凡平のプロフィールこちらから

2018年の自選おすすめ記事はこちらからどうぞ! 
2019年の自選おすすめ記事はこちらから
2020年の軽刈田's Top10はこちらから
2021年の軽刈田's Top10はこちらから

ジャンル別記事一覧!


goshimasayama18 at 16:03|PermalinkComments(0)