2018年02月06日
インドの州別ヘヴィーメタル事情
20年くらい前にインドに行った時のこと。
当時、ロック好きの若者だった私は、インドにはどんなロックバンドがいるのか、少しだけ楽しみにしていた。
ひょっとしたらクーラシェイカーなんかよりかっこいい、まだ見ぬインド風のロックバンドがいるかもしれない。
ところが、当時のインドには全然ロックなんてなかった。
街で流れているのはボリウッドの映画音楽かヒンドゥーの讃歌のみ。
デリーのカセットテープ屋(当時、インドで最も流通していた音楽記録媒体はカセットだった。CDではなくて)で「インドのロックをくれ」と言って買ったテープは、日本に帰って聴いてみるとジュリアナ東京とボリウッド音楽が混ざったようなやつだった。
先日からヴェーディック・メタルとか、インド北東部のデスメタルとか、やたらとインドのヘヴィーメタル事情について書いているが、なんでそんなにこだわっているかというと、そんなインドに、ロックのなかでも非常にエクストリームな音楽である、ヘヴィーメタルのバンドがたくさんいるっていうのが気になってしょうがないからなんである。
なにしろ、当時は首都のカセット屋(日本で言えば東京のCD屋)からしてロックがなんだか分かっていなかったのだ。
「ロック」が若者っぽい激しめの音楽っていうことまではかろうじて理解しているようではあったけど、バングラ的ダンスビートみたいな、まったくもって非ロック的なものまで、ロックの範疇にいれてしまうくらいだ。
もし「ヘヴィーメタルのカセットをくれ」なんて言った日には、「なんだそれは?聞いたこともないぞ」と返されたに違いない。
ジャンル自体が全く知られていないという意味では、「演歌のカセットをくれ」というのと同じようなものだったろう。
大幅に話がそれちゃった。
ここから本題に入ります。
こないだ、インドのメタルバンドをいろいろ調べていた時に、Enciclopedia Metallumというサイトを見つけた。
その中で、各国のメタルバンド一覧が見られるページがあって、インドのページを見ると、2018年1月現在で196ものバンドが登録されていた。
まずびっくりしたのは、そのうちのほとんどがデスメタルかブラックメタルだったっていうこと。
メタルはメタルでも、古典的なJudas PriestとかIron MaidenとかMetallicaみたいなバンドっていうのはほとんどいなくて、とことんヘヴィーなサウンドで死とか反宗教といった不吉なテーマを絶叫しているバンドばかりっていうのに驚いた。
こういう音楽に、インドの一部の若者達を引きつけるものが 何かあるんだろうか。
このEnciclopedia Metallum、ありがたいことに、それぞれの バンドがどこの州のどこの街の出身なのかが全部書いてくれている。
Alien Godsのタナは「北東部のメタルシーンはまだまだアンダーグラウンドだよ」と言っていた。
これまで見てきた印象では、インド北東部はかなりメタルが盛んなようだが、実際のところはどうなのか。
気になってしょうがなかったので、州ごとにどれくらいメタルのバンドがいるのかをエクセルでまとめてみた。
若干、俺、いったい何やってるんだろう、って思わないでもなかったけど。
次に、当然州によって人口が多かったり少なかったりするので、州の人口も付け加えてみた。
さらに、人々が裕福かどうかによっても、楽器買ってバンドできるかどうかってのが変わってくるわけだから、各州の一人当たり GDPなんてのも調べてみた。
インターネットって便利だなあ。
最後に、各州で、1,000万人あたり、いくつのメタルバンドがあるのか、というのを割り出してみた。
なんでキリの悪い1,000万人あたりなのかっていうと、インドには独特の数の数え方があって、10万をlakh(ラック)、1,000万をcrore(クロール)っていうんだけど、よくインドの役所の統計なんかにも使われているのでそれをマネしてみたって次第。
その表がコチラ。
「人口当たりのメタルバンド数」が多い順に並べてある。
インドの地図も載っけときます。
ミゾラム、メガラヤ、ナガランド、アルナーチャル・プラデーシュ、アッサム、マニプルといった北東部諸州が、見事にトップ10圏内にランクインしている。
トップ10の他の州では、やはりというか、大都市を擁する州が食い込んできている。
カルナータカ州はバンガロール、マハーラーシュトラ州はムンバイとプネー(大学が多い若者の街)、ウエストベンガル州はコルカタといった都市があり、欧米的なカルチャーが育まれているのだろう。
北東部諸州がすごいのは、アルナーチャル以外、一人当たりGDPは決して高くない(むしろ低い)のに、それでもみんなメタルバンドをやってるっていうこと。
何度も言ってきたように、それだけ西洋の文化への親和性が高い地域なのだろう。
いっぽうで、首都デリーを別として、北インドの文化の中心である、いわゆるヒンディー・ベルトと呼ばれる地域(ウッタル・プラデーシュとかビハールとか、ラージャスタンとか)には、人口が多い割に全然メタルバンドがいないっていうことも分かった。
保守的というか、あまりにもインド的な文化が強すぎるのだろう。
GDPを見れば分かる通り、ウッタル・プラデーシュやビハールなんかだと貧困という面も無視できない。
この地域には、タージマハールのあるアグラ、ガンジス河のヴァラナシ、カジュラホにブッダガヤといった街があり、多くの日本人旅行者が訪れる地域と重なる。
何を隠そう、私が最初のインド旅で訪れたルートもほぼ同じである。
今でもこんななんだから、当時インドのこの地域でロックを感じられなかったとしても当然だったというわけだ。
また、大都市チェンナイを擁するとはいえ、文化的には保守的とされるタミル・ナードゥ州のランクが相対的に低いのも、なるほどいった感じがする。
ちなみに同様に日本について調べてみると、人口1,000万人あたりのメタルバンド数は146バンド!
北東部がインドの中じゃメタル銀座だっていっても、やはりシーンがアングラだというのはその通りなのだろう。
同じような統計でラッパーがどの州に何人くらいいるか、とか調べられるとまた面白いかもしれない。
それでは、今回はこのへんで!
当時、ロック好きの若者だった私は、インドにはどんなロックバンドがいるのか、少しだけ楽しみにしていた。
ひょっとしたらクーラシェイカーなんかよりかっこいい、まだ見ぬインド風のロックバンドがいるかもしれない。
ところが、当時のインドには全然ロックなんてなかった。
街で流れているのはボリウッドの映画音楽かヒンドゥーの讃歌のみ。
デリーのカセットテープ屋(当時、インドで最も流通していた音楽記録媒体はカセットだった。CDではなくて)で「インドのロックをくれ」と言って買ったテープは、日本に帰って聴いてみるとジュリアナ東京とボリウッド音楽が混ざったようなやつだった。
先日からヴェーディック・メタルとか、インド北東部のデスメタルとか、やたらとインドのヘヴィーメタル事情について書いているが、なんでそんなにこだわっているかというと、そんなインドに、ロックのなかでも非常にエクストリームな音楽である、ヘヴィーメタルのバンドがたくさんいるっていうのが気になってしょうがないからなんである。
なにしろ、当時は首都のカセット屋(日本で言えば東京のCD屋)からしてロックがなんだか分かっていなかったのだ。
「ロック」が若者っぽい激しめの音楽っていうことまではかろうじて理解しているようではあったけど、バングラ的ダンスビートみたいな、まったくもって非ロック的なものまで、ロックの範疇にいれてしまうくらいだ。
もし「ヘヴィーメタルのカセットをくれ」なんて言った日には、「なんだそれは?聞いたこともないぞ」と返されたに違いない。
ジャンル自体が全く知られていないという意味では、「演歌のカセットをくれ」というのと同じようなものだったろう。
大幅に話がそれちゃった。
ここから本題に入ります。
こないだ、インドのメタルバンドをいろいろ調べていた時に、Enciclopedia Metallumというサイトを見つけた。
その中で、各国のメタルバンド一覧が見られるページがあって、インドのページを見ると、2018年1月現在で196ものバンドが登録されていた。
まずびっくりしたのは、そのうちのほとんどがデスメタルかブラックメタルだったっていうこと。
メタルはメタルでも、古典的なJudas PriestとかIron MaidenとかMetallicaみたいなバンドっていうのはほとんどいなくて、とことんヘヴィーなサウンドで死とか反宗教といった不吉なテーマを絶叫しているバンドばかりっていうのに驚いた。
こういう音楽に、インドの一部の若者達を引きつけるものが 何かあるんだろうか。
このEnciclopedia Metallum、ありがたいことに、それぞれの バンドがどこの州のどこの街の出身なのかが全部書いてくれている。
Alien Godsのタナは「北東部のメタルシーンはまだまだアンダーグラウンドだよ」と言っていた。
これまで見てきた印象では、インド北東部はかなりメタルが盛んなようだが、実際のところはどうなのか。
気になってしょうがなかったので、州ごとにどれくらいメタルのバンドがいるのかをエクセルでまとめてみた。
若干、俺、いったい何やってるんだろう、って思わないでもなかったけど。
次に、当然州によって人口が多かったり少なかったりするので、州の人口も付け加えてみた。
さらに、人々が裕福かどうかによっても、楽器買ってバンドできるかどうかってのが変わってくるわけだから、各州の一人当たり GDPなんてのも調べてみた。
インターネットって便利だなあ。
最後に、各州で、1,000万人あたり、いくつのメタルバンドがあるのか、というのを割り出してみた。
なんでキリの悪い1,000万人あたりなのかっていうと、インドには独特の数の数え方があって、10万をlakh(ラック)、1,000万をcrore(クロール)っていうんだけど、よくインドの役所の統計なんかにも使われているのでそれをマネしてみたって次第。
その表がコチラ。
「人口当たりのメタルバンド数」が多い順に並べてある。
インドの地図も載っけときます。
表の中で色のついた州が、インド北東部のいわゆる「セブン・シスターズ」といわれる諸州だ。
これを見れば一目瞭然、なーんだ、やっぱりインド北東部、インドの中ではメタルが盛んじゃん!ミゾラム、メガラヤ、ナガランド、アルナーチャル・プラデーシュ、アッサム、マニプルといった北東部諸州が、見事にトップ10圏内にランクインしている。
トップ10の他の州では、やはりというか、大都市を擁する州が食い込んできている。
カルナータカ州はバンガロール、マハーラーシュトラ州はムンバイとプネー(大学が多い若者の街)、ウエストベンガル州はコルカタといった都市があり、欧米的なカルチャーが育まれているのだろう。
北東部諸州がすごいのは、アルナーチャル以外、一人当たりGDPは決して高くない(むしろ低い)のに、それでもみんなメタルバンドをやってるっていうこと。
何度も言ってきたように、それだけ西洋の文化への親和性が高い地域なのだろう。
いっぽうで、首都デリーを別として、北インドの文化の中心である、いわゆるヒンディー・ベルトと呼ばれる地域(ウッタル・プラデーシュとかビハールとか、ラージャスタンとか)には、人口が多い割に全然メタルバンドがいないっていうことも分かった。
保守的というか、あまりにもインド的な文化が強すぎるのだろう。
GDPを見れば分かる通り、ウッタル・プラデーシュやビハールなんかだと貧困という面も無視できない。
この地域には、タージマハールのあるアグラ、ガンジス河のヴァラナシ、カジュラホにブッダガヤといった街があり、多くの日本人旅行者が訪れる地域と重なる。
何を隠そう、私が最初のインド旅で訪れたルートもほぼ同じである。
今でもこんななんだから、当時インドのこの地域でロックを感じられなかったとしても当然だったというわけだ。
また、大都市チェンナイを擁するとはいえ、文化的には保守的とされるタミル・ナードゥ州のランクが相対的に低いのも、なるほどいった感じがする。
ちなみに同様に日本について調べてみると、人口1,000万人あたりのメタルバンド数は146バンド!
北東部がインドの中じゃメタル銀座だっていっても、やはりシーンがアングラだというのはその通りなのだろう。
同じような統計でラッパーがどの州に何人くらいいるか、とか調べられるとまた面白いかもしれない。
それでは、今回はこのへんで!