ヨギ・シンとの対話(後編)新たなるヨギ・シンの襲来!

2023年11月18日

ヨギ・シンとの遭遇を終えて


前回の記事:


若きヨギ・シン(そうは名乗らなかったが)ことプラディープとの遭遇を終えて改めて思ったのは、「結局よく分からなかった」ということである。
いろいろなことが聞けたものの、彼が言ったことが真実だったのかどうかは、分かりようがなかった。

最大の収穫は、彼の「トリック」が分かったことだ。
知ってしまえばなんてことのないトリックだが、その手法はじつに洗練されていた。
とくに、ずっと握っていた紙をすり替えたあとに、その紙をまた握らせて額にあてたり、息を吹きかけたりさせるところは秀逸だ。
いかにも不思議な力を発揮しているような印象を与えて、すり替えた時の動きを忘れさせる効果を生み出しているからだ。
ヨギ・シンが「この紙をずっと握っていたね」と一瞬紙を摘み上げたことを記憶していた人は、私の知る限りでは一人もいなかった。
プラディープ以外のヨギ・シンが別のトリックか本物の超能力を使っている可能性も否定できないが、いずれにしても非常によくできた心理学的手法である。


驚いたのは、プラディープが、かつて私が「ヨギ・トリック」(仮名)として紹介したマジックの手法を使わなかったことだ。
このトリックは19世紀のイギリスのマジックの本にも記録されており、その技の名前から、ヨギ・シンと関連がある技術であることはほぼ間違いない。
(誰もが見られるネット上でマジックの種明かしをするのは本意ではないので、テクニックの名前は仮名にしている)
もしこのトリックを使えば、彼はもっと簡単に相手の心を読む(ように見せかける)ことができるのだが、彼はまだ未熟でこの技を使うことが許されていないのだろうか。
それとも、ヨギ・シンは今ではもうこの技は使っていないのだろうか。

もうひとつ驚いたのは、かつてmixiに書かれていたヨギ・シンのテクニックに対する推察がほとんど正しかったということだ。
その内容を改めて抜粋しよう。

占い師は客の答えを、いちいち紙にメモしていきます。答え合わせの時に必要だからというのが建前ですが、目的は別にあります。答えを2回書いて、2枚のメモを作るのです。そのうち一枚を丸めて、客の手の中の紙と、こっそりすりかえます。

これはまさにプラディープが行っていたテクニックだ。
手で握っている紙をこっそりすりかえるなんてできるのか、とその時は思ったものだが、それを可能にするのが、前述の仕掛けである。

この時私は「答え合わせのときに必要だからと言ってヨギ・シンが答えをあからさまにメモするという話は聞いたことがない」と書いているのだが、間違っていたのは私の方だった。
実際、ヨギ・シンが答えを聞きながら紙にメモを取っていたという証言は、私の知る限りではない。
おそらくだが、「占い」が的中した驚きで、紙にメモを取るというあたりまえの行動の記憶はかき消されてしまうのだろう。
ここにも、彼らの巧みな心理的トリックがある。

ちなみにこのmixiに書き込んだ人物は、ヨギ・シンが性格判断として「あなたは考えすぎる」と言うとも書いていた。
これはまさに今回私がプラディープに言われた言葉だ。
2012年にヨギ・シンの秘密に相当迫っていた人物がいたのだ。
どこの誰かは存じ上げないが、ぜひ一度ゆっくり話してみたいものである。




話をプラディープに戻そう。
その後、彼の出身地だという「ファテガル・サーヒブ」を調べてみたところ、そこはシク教の巡礼地となっている有名な寺院だった。

「君が住んでいるのはここ?」とその寺院のページのリンクをつけて送ってみたところ、彼の返事は「No」。
別の街の名前が送られてきた。
鉄工業が盛んな以外これといって特徴のない郊外の街である。
彼は適当な街の名前を言っていたのだろうか。

よくよく調べて見ると、どうやらファテガル・サーヒブというのは寺院の名前であると同時に、その寺院がある街の名前でもあり、さらにその街がある県(district)の名前でもあるようだ。
彼が住んで街はファテガル・サーヒブ県の別の街で、その意味で「ファテガル・サーヒブ在住」と言ったのだろう。
とはいえ、その郊外の街に住んでいるというのが真実だという根拠もない。
結局は何も分からないままなのだ。

そういえば、彼とwhatsappの連絡先を交換した後、それまでほとんどなかった迷惑メッセージが続けて送られてきた。
インドとアメリカから、英語での求人を装ったメッセージと知り合いを装ったメッセージが3件来たのだだが、全てブロックしたところもう届かなくなった。
これが偶然だったのか、プラディープを通じて詐欺師に情報が漏れたのかは分からない。
分からないことだらけだ。

彼が住んでいる街についてのやりとりを終えた後も、プラディープに何度かメッセージを送ったのだが、今の所返事はない。
確かに、金ヅルでもなく、「占い」を信じているわけでもない私と連絡を取り合うメリットは彼にはない。
私が一瞬信じかけた「友情」は気のせいだったのだろうか。
それでも、ダメモトでたまに連絡をするようにしている。
そのうちまた気が変わって、返事が来ることがあるかもしれない。


ところで、最初に情報をくれたSIさんが仲の良いインド人に聞いたところによると、ヨギ・シンは「インド人コミュニティ界隈でも詐欺師として有名で、東京の警察には何度も通報されている」らしい。
東京在住のインド人にヨギ・シンのことを何度か尋ねたことがあるのだが、私のまわりでは誰も知らなかったので、この情報にもびっくりした。
まともに仕事をして海外で暮らしているインド人にとっては、やはり同胞の評判を下げるヨギ・シンは迷惑な存在なのだろう。
こうした評価を彼らがどう受け止めているのか、気になるところではある。



最後に、休日に「ちょっと謎の占い師探してくるわ」と言って外出する私を快く送り出してくれた家族と、プラディープとのアポイントのために早退させてくれた職場(さすがに理由は言ってないけど)のみなさんに感謝します。
直接言えっつう話ですが。


…と、ここで終わるはずが、事態は衝撃の展開を迎えた。
私のブログに、またしてもヨギ・シンらしき占い師と東京で遭遇したという報告が寄せられたのだ。

プラディープがインドに帰国したはずの10月16日から10日以上過ぎた10月27日、そして11月13日、さらにこれを書いている11月16日に、丸の内エリア、そしてこれまでに出没情報のなかった神田でヨギ・シンと思われるインド系の占い師に声をかけられたコメントやメッセージが相次いで届いている。
今度のヨギ・シンはターバンを巻いた中年だそうで、プラディープとは明らかに別人だ。

プラディープはかたくなに「一人で来日した」と言い張っていたが、もしかして彼は嘘をついていたのではなく、たまたま同時期にもう一人(あるいはもうひとグループ)のヨギ・シンが来日していたのだろうか。
それとも、プラディープが帰国してもなお日本で活動している同じグループのヨギ・シンがいるのだろうか。
もしかして、彼らは日本に住んでいる?

ますます謎は深まり、調査は続く。
だんだん音楽ブログであることを忘れてしまいそうになるが、いずれにしても乞うご期待!



(続き)



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goshimasayama18 at 00:34│Comments(0)ヨギ・シン 

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