インドからビートルズへの53年越しの回答! "Songs Inspired by The Film the Beatles and India"サウスのロックバンドが相次いでアルバムをリリース! クールかつシュールなF16s

2021年11月16日

サウスのロックバンドが相次いでアルバムをリリース! When Chai Met Toast



南インドを代表する2組のポップロックバンドが、立て続けにアルバムとEPをリリースした。

まず1組目は、このブログで以前にも紹介したことがあるケーララ州のWhen Chai Met Toast.


When Chai Met Toastは2016年にコチで結成されたロックバンドで、これまでも数々の優れたフォークポップ調の楽曲を発表してきたが、10月29日に発表した"When We Feel Young"が意外にも彼らのファーストアルバムとなる。

ケーララ州は、古くからキリスト教の信仰がさかんで、教育政策に力を入れてきた州だからか(つまり英語を自由に操れる人が多い)、ロックなどの欧米のポピュラーミュージックが古くから根付いていた土地である。
今作では、彼らはEDM的な四つ打ちのビートを取り入れた曲にも挑戦しているが、やはり彼らの魅力が最も感じられるのは、どこか懐かしいフォーク風の曲である。

例えば、タイトルトラックのWhen We Feel Young.


"Ocean Tide"はバンジョーの響きに、90年代のイギリスのバンドTravisの"Sing"という曲を思い出した。(褒め言葉のつもり)


When Chai Met Toastという個性的なバンド名は、「インドが西洋に出会った時」を意味しているとのこと。
もちろん、チャイがインドを、トーストが西洋を表しているわけだが、インドの国民的な飲み物であるスパイスの入りミルクティー「チャイ」の歴史はじつはかなり新しく、広まったのはイギリス統治時代である19世紀のことだと言われている。
つまり、トーストと出会うまでもなく、チャイの中にも西洋(紅茶文化)とインド(スパイス文化)が混在しているのだ。
考えてみれば、インド料理にかかせない唐辛子(チリ)も原産は中南米で、大航海時代に海を渡ってインドに伝えられている。
インドの文化は、大昔から世界中のさまざまな文化を受け入れて発展してきたのだ。
When Chai Met Toastというバンド名は、はからずも、そうして発展してきたインド文化が、さらに新しく西洋の文化(例えば、ロックや英国フォーク)を受け入れたことを意味していると捉えることもできる。

彼らのサウンドを聴くと、「西洋の文化を導入しすぎちゃって、すっかりインド的な要素がなくなっちゃったんじゃないの?」と言いたくもなるかもしれないが、例えばこんなふうに洋楽的なメロディーを取り入れながらも、美しいヒンディー語の響きを活かした曲も演奏している。


故郷ケーララ州の言語であるマラヤーラム語ではなく、北インドを中心にインド全体に話者数の多いヒンディー語を選んだのは、やはりマーケットの規模が理由だろう。
(マラヤーラム語の話者数が3,500万人ほどなのに対し、ヒンディー語は5億人以上が話すことができる)

こちらの"Break Free"は英語とタミル語のバイリンガル。



タミル語の話者数は約7,000万人。
南インドでもっとも話者数の多い言語である。
彼らが歌詞に使う言語をどのように決めているのかは分からないが、インドのマルチリンガル・ミュージシャンの言語選択事情というのは、ちょっと気になるテーマではある。


彼らは"When We Feel Young"発表後も積極的にリリースを続けていて、このYellow Paper Daisyは、Prateek Kuhadを感じさせるキャッチーかつ切ないメロディーが素晴らしい佳曲。


冒頭に出てくるタイトルに"Yellow Paper Daisy feat. Kerala"とあるが、このKeralaとはもちろん彼らの故郷ケーララ州のこと。
フィーチャリングのあとにアーティスト名でなく地名が出てくるのは初めて見た。

ここから始まるストーリーがまた独特で、2071年のカップルが、セラピーの最後のセッションのために2016年のケーララの田舎にタイムスリップしてくるところから物語が始まる。
豊かな自然と素朴で優しい人々に触れた二人は、やがて愛情を取り戻してゆく…という、フォーキーなサウンドに似合わないSF仕立てのストーリーで、先月出演した J-WAVEの"SONAR MUSIC"でオンエアした際に、ナビゲーターのあっこゴリラさんも「このサウンドにこの映像!」とかなり面白がってくれていた。
イギリス的なフォークロックとSF的な世界観、そして故郷の大自然という相反する要素があたりまえのように融合しているのが2021年のインドのロックバンドのセンスである。
主人公の二人を演じているのは、それぞれインド北東部とチベットにルーツを持つ俳優たちで、「インドの外ではないけれど、マジョリティとは全く別」という微妙な距離感を表現するために選ばれたのだろう。


彼らはNature Tapesと称して、ケーララの自然の中でアンプラグド・スタイルで楽曲を披露する映像も公開していて、こちらもまた彼らの音楽とケーララの魅力が存分に楽しめる内容になっている。


"Yellow Paper Daisy"のロケ地はケーララ特有の汽水地帯に位置するMunroe Island.


"Ocean Tide"のロケ地は美しい海辺の街Varkalaだ。

気軽に旅に出られるようになるにはもうしばらくかかりそうだが、このNature Tapesは、そんな日々の中でちょっとした非日常が感じられるシリーズになっている。

続いてお隣タミルナードゥのF16sについて書こうと思っていたのだけど、もう十分長くなったので、また次回!



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goshimasayama18 at 18:04│Comments(0)インドのロック 

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