インドのボブ・ディラン Susmit Boseの50年2020年のインドの音楽シーン総決算!(MTV Europe Music AwardsとSpotify編)

2020年12月10日

インドのアニメファンによるYouTubeチャンネル"Anime Mirchi"の強烈すぎる世界!


これまでも何度か特集しているとおり、インドにおいて日本のカルチャーは一定のファン層を獲得している。
ここでいう「カルチャー 」というのは、主にアニメのことで、インドのインディーミュージシャンの中には、日本のアニメ作品からの影響を公言しているアーティストがたくさんいるのだ。




そんなインドのアニメファンが運営している、かなり面白いYouTubeチャンネルを発見してしまった。
それが、今回紹介するこの'Anime Mirchi'である。
('Mirchi'とはインド料理にもよく使われる唐辛子のこと)


このチャンネルの素晴らしいところは、単にアニメのみを扱っているのではなく、インドのインディペンデント・ミュージックと日本のアニメ・カルチャーの融合にも積極的に取り組んでいることである。

中でも唸らされたのが、この'Indian lofi hip hop/ chill beats ft. wodds || Desi lofi girl studying'と題された動画だ。


Lo-Fiヒップホップは、創成期の代表的ビートメーカーである故Nujabesが、アニメ作品『サムライ・チャンプルー』のサウンドを手掛けたことなどから、アニメとのつながりが深いジャンルとされている。
とくに、パリ郊外に拠点を構えるYouTubeチャンネル'ChilledCow'が、"lofi hip hop radio - beats to relax/study to"に勉強中の女の子のアニメーションを使用してからは、ローファイサウンドと日本風のアニメの組み合わせがひとつの様式美として確立した。

Lo-Fi HipHopについてはこのbeipanaさんによる記事が詳しい。
 
この「勉強中の女の子」(当初はジブリの『耳をすませば』 のワンシーンが使われていたが、著作権の申し立てによってオリジナルのアニメに差し替えられた)は、国や文化によって様々なバージョンが二次創作されており、Anime Mirchiが作成したのはそのインド・バージョンというわけである。
(インド以外の各国バージョンはこの記事で紹介されている)

さらに面白いところでは、「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」をヴェイパーウェイヴ、シンセウェイヴ的に再構築するという狂気としか思えないアイディアを実現したこんな音源もアップロードされている。

ヒンディー語版?のドラえもんのテーマ曲をリミックスした映像は超ドープ!


ここ数年話題となっているヴェイパーウェイヴというジャンルを簡単に説明すると、「80年代風の大量消費文化を、追憶と皮肉を込めて再編集したもの」ということになるだろう。
「シンセウェイヴ」は、同様のコンセプトでシンセサウンドとレトロフューチャー的なイメージが主体となったものだ。
これらの動画のサウンドを手掛けている'$OB!N'というアーティストは相当なアニメファンらしく、あの『こち亀』の主人公の両津勘吉をテーマにしたこんな曲を自身のSoundcloudで発表していたりもする。
$OB!N · Ryotsu
他にも、このAnime Mirchiには、アニメのなかのドラッグ的な効果を感じるシーンを集めた'Anime on Ganja'なんていう想像の斜め上すぎるシリーズの動画もアップされている。

こんなふうに書くと、サブカルチャーをこじらせたマニアックなYouTubeチャンネルのようなイメージを持つかもしれないが(まあ、それは間違いないんだけど)、このチャンネルが面白いのは、アニメだけではなく、ボリウッドやハリウッドなどの王道ポピュラーカルチャーにも目配りができていることである。
例えば、昨年日本でも公開された『ガリーボーイ』や『ロボット2.0』の予告編そっくりの動画を、アニメ映像をマッシュアップして作り上げるなんていう、これまたぶっとんだアイディアの動画もアップされているのだ。
オリジナルの予告編と合わせて紹介してみたい。

これは『DEVILMAN crybaby』の映像で作った、ボリウッドのヒップホップ映画『ガリーボーイ』予告編のパロディ。


こっちがオリジナル。


こちらは『ジョジョの奇妙な冒険』をマッシュアップして作ったスーパースター、ラジニカーント主演のタミル語映画『ロボット2.0』の予告編。


そしてこちらがオリジナル。

映像のシンクロ率は『ガリーボーイ』ほどではないが、こちらもかなりの完成度。もしかすると、『ガリーボーイ』『ロボット2.0』という映画のセレクトも、日本公開された作品を選んでくれているのかもしれない。

同様の発想で、アニメの映像を使って『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の予告編を作ったり、「もしアニメがボリウッドで制作されたら」というシリーズを作ったりと、とにかく独特すぎる動画が盛り沢山。
さらに凝ったところだと、『バーフバリ 伝説誕生』の映像を編集して、アニメ映画の予告編風の動画を作っていたりもする。
 
カタカナ入りの字幕も全てこの動画のために作成されたものだ。
『バーフバリ』はコアなアニメ作品同様、コスプレまでする熱心なファンを持つ映画だが、こうして見てみると、かなりアニメ的なシーンや演出が多いということに気づかされる。
この映像は、『バーフバリ』の日本で大ヒットし、新しいファン層を開拓したことに対するトリビュートとして制作されたものだそう。

インドのインディーミュージックの紹介を趣旨としているこのブログとしては、最近のアーティストの作品に日本のアニメの映像を組み合わせた動画に注目したい。

これはSmg, Frntflw, Atteevの共作によるEDM"One Dance"に新海誠の『言の葉の庭』の映像を合わせたもの。


デリーのラッパーデュオSeedhe MautとKaran Kanchanの"Dum Pishaach"にはHELLSINGの映像が重ねられている。

この2曲に関しては、オリジナルのミュージックビデオも(ほぼ静止画だが)アニメーションで作られており、"One Dance"はSF風、"Dum Pishaach"はアメコミと日本のアニメとインドの神様が融合したような独特の世界観を表現している。


"Dum Pishaach"のビートメイカーKaran Kanchanは大のアニメ好き、日本カルチャー好きとしても有名なアーティストだ。


著作権的なことを考えると微妙な部分もあるが(というか、はっきり言ってアウトだが)、ここまで熱心に日本のカルチャーを愛してくれて、かつ私が愛するインドのインディーミュージックにも造詣が深いこのチャンネル運営者の情熱にはただただ圧倒される。
インドにおけるジャパニーズ・カルチャーと、日本におけるインディアン・カルチャー。
いずれもコアなファンを持つ2つのジャンルをつなぐ'Anime Mirchi'に、どうかみなさんも注目してほしい。


'Anime Mirchi' YouTubeチャンネル


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