2023年02月

2023年02月21日

2022〜23インド冬フェスシーズン 最も多くの出演したのは?


夏フェスがポピュラーな日本とは異なり、インドの音楽フェスティバルのシーズンは冬。


インドのインディペンデント系音楽メディアSkillboxに、2022〜23年のシーズンに最も多くフェスに出演したインディーアーティスト・トップ10を紹介する記事がアップされていた。
これがなかなか面白かったので紹介したい。
(元記事はこちら

この記事によると、1位に輝いたのは、プネーのドリームポップバンドEasy Wanderlingsで、8つのフェスに出演したとのこと。

出演したフェスの内訳は、Bacardi NH7 Weekender (プネー), Bloom In Green (クリシュナギリ), Echoes Of Earth (ベンガルール), Idli Soda (チェンナイ), India Bike Week (ゴア), Lollapalooza India (ムンバイ), Vh1 Supersonic (プネー), Ziro Festival of Music (ジロ)。

南インドのチェンナイやベンガルールから、北東部の最果てアルナーチャル・プラデーシュ州のジロまで、まさにインド全土を股にかけたということになる。
クリシュナギリという地名は初めて聴いたが、南インドタミルナードゥ州(州都はチェンナイ)の地方都市だ。
その郊外で行われたBloom in Greenは、人力トランスバンドや無国籍風ワールドミュージックアーティストが出演したオーガニック系の自然派フェスティバルだったようだ。
これまで南インドのフェスはあまり取り上げていなかったが、改めて調べてみると、結構面白そうなイベントが開催されている。

今シーズンのフェス出演映像は見つからなかったので、2017年のNH7 Weekender出演時の様子をご覧いただきたい。


このブログでも何度も取り上げてきたEasy Wanderlingsは、曲良し、歌良し、演奏良しの素晴らしいバンドで、彼らが1位というのは納得できる。
野外で彼らのオーガニックなサウンドを聴けたら最高だろう。
日本でもフジロックか朝霧JAMあたりで見てみたい。

冬フェス出演回数2位には、6組のアーティストが該当している。
それぞれの出演フェスティバルも合わせて紹介すると、
  • Anuv Jain
    Bacardi NH7 Weekender (プネー), Beat Street (ニューデリー), Doon Music Festival (デラドゥン), SteppinOut Music Festival (ベンガルール), Vh1 Supersonic (プネー), Zomaland (ハイデラーバード), Zomato Feeding India (ムンバイ)
  • Bloodywood
    Bacardi NH7 Weekender (プネー), Indiegaga (コチ), Lollapalooza India (ムンバイ), Mahindra Independence Rock (ムンバイ), Oddball Festival (ベンガルール、デリー), Rider Mania (ゴア), The Hills Festival (シロン)
  • Peter Cat Recording Co.
    Gin Explorers Club (ベンガルール), India Cocktail Week (ムンバイ), Jaipur Music Stage (ジャイプル), LiveBox Festival (ベンガルール), Rider Mania (ゴア), Vh1 Supersonic (プネー), Ziro Festival of Music (ジロ)
  • Thaikkudam Bridge
    GIFLIF Indiestaan (ボーパール), Idli Soda (チェンナイ), Indiegaga (ベンガルール、コーリコード), Mahindra Independence Rock (ムンバイ), Rider Mania (ゴア), Signature Green Vibes (ハイデラーバード), South Side Story (ニューデリー)
  • The Yellow Diary
    Beat Street (ニューデリー), Doon Music Festival (デラドゥン), LiveBox Festival (ムンバイ), Lollapalooza India (ムンバイ), Oktoberfest (ムンバイ), SteppinOut Music Festival (ベンガルール), Zomaland (アーメダーバード、ハイデラーバード、ニューデリー)
  • When Chai Met Toast
    India Cocktail Week (ベンガルール), Indiegaga (コチ), International Indie Music Festival (コヴァーラム), North East Festival (New Delhi), Parx Music Fiesta (Mumbai), SpokenFest (Mumbai), Toast Wine and Beer Fest (Pune)

詳細はアーティスト名のところからリンクを辿っていただくとして、ここではこれまでこのブログで取り上げたことがない人たちを紹介したい。
Anuv Jainはパンジャーブ出身の主にヒンディー語で歌うアーバン・フォーク系シンガー。
2018年のデビュー曲の"Baarishein"で一気に注目を集め、この曲、まったく絵が動かないシンプルなリリックビデオにもかかわらず、YouTubeで5,000万回以上も再生されている。


歌詞はわからなくても、彼の非凡なメロディーセンスが理解できるだろう。
ヒンディー語がとっつきにくいという人は、こちらの英語曲"Ocean"をどうぞ。

アレンジに関しては、弾き語りというか、最小限のバッキング以外は入れない方針っぽいのが潔くもあるし、少しもったいない気もする。

The Yellow Diaryはムンバイ出身のインド・フュージョンっぽいポップバンドで、2021年にリリースしたこの"Roz Roz"という曲のYouTubeでの再生回数は1,000万回を超えている。



ちなみにこの後には8位タイとして、6つのフェスに出演したParvaaz(ベンガルール出身のヒンディー語で歌うインディーロックバンド)、Taba Chake(北東部アルナーチャル・プラデーシュ出身のウクレレ・シンガーソングライター)、The F16s(チェンナイ出身のロックバンド)、T.ill Apes(ベンガルール出身のファンク/ヒップホップバンド)の4組が名を連ねている。

元記事を書いたAmit Gurbaxaniは、この統計を取るために50以上のフェスティバルを調べたとのこと。
そのうち2つ以上のフェスにラインナップされていたアーティストは70組以上。
オーガナイザーの話では、出演者選定の理由は、
  • 人気があること
  • ストリーム数、動員、ソーシャルメディアの活躍
  • 開催地が地元の場合、しっかりとしたファン基盤があること
  • ヘッドライナーのアーティストとの相性を考慮
だそうで、まあこれは世界中共通だろう。
典型的なメタルバンドはラインナップしづらいけど、Bloodywoodみたいな個性のある面白いバンドは例外とのことで、なるほど、彼らは日本でいうところのマキシマム・ザ・ホルモンみたいな存在なのだろう。
それにしてもBloodywoodは欧米でも日本でも母国でも、フェス人気がかなり高いようだ。

DIVINEPrateek KuhadRitvizといった人気アーティストの出演が少ないのは、独自のツアーが忙しいからだそうで、これも世界共通の傾向だろう。

最後に今シーズンのフェスの映像をいくつか紹介してみたい。

まずは、南インド各地で行われた巡回型フェスティバルIndiegagaから、ケーララ州コチ会場のBloodywoodのライブのアフタームービー。


続いて同じIndiegagaでも、こちらはコーリコード会場から、地元ケーララのThaikkudam Bridgeのライブの模様。


ベンガルールで行われたOddball Festivalのアフタームービー。


プネーの大型フェスNH7 Weekenderから、When Chai Met Toastのライブの様子。



今回紹介したのはロック系のフェスが中心になってしまったが、EDMやヒップホップが優勢に感じられるインドで、ロックも根強い人気を保っていることが確認できた。
インドのフェス、ほんとそろそろ遊びに行きたいんだよなあ。



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2023年02月15日

インドのインディペンデントEDMポップ特集!


またしてもあまり詳しくないジャンルについて書くことになってしまうのだが、という前置きをまずさせてもらうとして…

前回の記事で、「インドでも狭義のEDMは下火になり、云々」と書きましたが、ごめんなさい、ウソでした。
インドではEDMはまだまだ元気です。
(ところで、「狭義のEDM」というのはビッグルーム系と呼べばいいのか、このあたりのサブジャンルの呼称がいまいちよく分からない)



いや、もちろん一時のEDMブームが去ったのは事実で、前回書いた通り、メジャーどころのアーティストは別ジャンルに転向しちゃってるし、かなりEDM色が強かったコマーシャルなラッパーたちも、最近はもうちょっと落ち着いたビートの曲をリリースするようになってきている。
インドでも、EDM人気のピークは確実に過ぎている。

5年くらい前を思い出してみると、パンジャービーのGuru RandhawaからタミルのVandana Voxまで、インドじゅうのポップシンガーがEDMテイストの曲をリリースしていた。
あの頃の狂騒は過去のものになったとはいえ、EDMそのものが死んだわけではない。

というわけで、今回は、巨大フェスでこそ映えそうな華やかな楽曲をベッドルームから発信しているまだまだマイナーなインディペンデント系EDMアーティスト(EDM影響下のダンスポップを含む)たちを紹介してみたい。


Xadrian, AISKA, Julian Black "In The End"


まず1人めは、ハイデラーバード出身のXadrianことVarri Pavan Kumar.
お聴きの通り、これぞビッグルームというサウンドには、インド的な要素はどこにも見当たらない。
共演しているAISKAとJulian Blackはオランダのハウス/EDM系アーティストだそうで、この手のジャンルは海外勢とのコラボレーションが頻繁に行われているのも特徴だ。

Xadrian "Drowning"


ソロ作品のこの曲はちょっと往年のDaft Punkみたいな感じもある。


Shivam Bhatia, Sara Solstice "God In Your Eyes"


Shivam BhatiaはDavid GuettaやChain Smokersらの影響を受けているというデリーのEDM系アーティスト。
彼もまたいろんな国のミュージシャンと共演していて、この曲でコラボレーションしているSara Solsticeはアメリカのシンガーらしい。
曲のテーマはドラッグ。
映画の飲酒シーンにいちいち「アルコールは健康を損ねます」という字幕が出てくるインドでも、クラブミュージック界隈では、ドラッグに関する表現はあまりタブー視されていないのか。
サビでは十字架のモチーフが出てくるが、インドの人たちがこの曲を聴いてどんな'God'をイメージするのか、気になるところではある。


31Stars "Catch A Vybe"


31StarsはAman VanjaniとJay Punjabiの二人組で、どうやらイギリスで音楽活動を始めたのちにインドに拠点を移したようだ。
インドの音楽シーンではよくあることだが、EDMでも、アメリカやイギリス在住のインド系住民や、留学などで欧米生活を経験した者が、欧米の最先端のトレンドを国内に輸入する役割を担っている。
そうして国内に持ち込まれたサウンドが、本場から少し遅れて流行するわけだが、インターネットの普及以降、そのタイムラグはどんどん縮まってきているように思える。
(ちなみにEDMシーンのトップアーティストの一人、KSHMRはインド系アメリカ人)

ここまで読んで分かるとおり、この手のジャンルには国籍や国境というものは基本的に存在しない。
踊れて心地よいサウンドこそが正義というハイパーモダンな価値観が、EDMの面白い部分でもあり、つまらない部分でもあるわけだが、後述の通り、それでもやはりその土地の特徴というものは出てきてしまう。


Judy on the Run ft. Cherish Benhotra "Move To Canada"


これはクラブミュージック的というよりも、もっとぐっとポップな曲調。
サウンドは例によって無国籍EDMマナーだが、注目すべきはその歌詞だ。
男女デュエットになっているこの曲は、カナダへの移住をめぐるカップルの対話という、非常にインド的なテーマの楽曲なのだ。
現実的な理想を追い求める女性と、愛国心の強い楽天家の男性とのやりとりは、まるでインド映画の一場面を見ているようだ。
ミュージックビデオの雰囲気にすごくリアリティを感じるが、この二人はリアルにつきあってるのかなあ、とか下世話なことを勘繰りたくなってしまう。


Rohit Nigam "Baawray"


歌詞がヒンディー語になると、歌の響きが一気にインドっぽい印象になる。
デリーの街並みを舞台に踊りまくるミュージックビデオがいい。
彼は影響を受けたミュージシャンとして、John Mayer, Ed Sheeranにと並んで、インドのシンガーソングライターPrateek Kuhadの名前も挙げている。
この手のミュージシャンが挙げるアーティストは洋楽一辺倒になりがちだが、やはりソングライターとしてもロールモデルとしても、Prateekの存在感は群を抜いているようだ。


Frntflw "Rainaa"


Frntflwはマハーラーシュトラ州内陸部の都市ナーグプル出身の二人組。
古典音楽っぽい女性ヴォーカルをフィーチャーした、いわゆる「印DM」で、過去に戻りたいと願う潜在意識をテーマにしているとのこと。
ムンバイやデリーのような大都市ではなく、大きめの地方都市といった印象のナーグプルからこの手のサウンドが出てくるのは意外だが、それだけEDMがインドじゅうに浸透しているということなのだろう。


Cyrus Berne "Lorna"


こちらは珍しいコンカニ語(ゴア地方の言語)のEDMポップ。
都市部のミドルクラスとはまた違う、ちょっとラテンっぽさの入った解放的なローカル感がこの地域の魅力だ。
かつてはトランスの聖地として海外のトラベラーを惹きつけたゴアは、今ではインドのダンスミュージックの一大拠点である。
"Hide and Seek"という曲ではポルトガルのEDMアーティストTh3 Darpeと共演しているが、かつてゴアがポルトガル領だったことと何か関係があるのだろうか。


Nurav "Get The Vibe"


こちらはコルカタのアーティストによる曲。
ビッグルーム的EDMというよりは、印DMベースといった印象だが、東部のコルカタにもEDMの波が到達して、しっかりローカル化している一例として挙げてみた。



Priyanx, Hellish & Someone Else "Nothing But Time"


Priyanxはまだ二十歳を過ぎたばかりの新進プロデューサー。
共演しているHellishは、インドでは珍しいちょっとゴスな要素もあるダークポップっぽい音楽をやっているまだ10代の女性シンガーで、もうひとりのSomeone Elseはダークなベースミュージックをスタイルとする若手アーティスト。
若干単調ではあるが、きらびやかな中にもちょっと影のあるサウンドは、インドの新世代ダンスポップと言えるかもしれない。



というわけで、今回はインド各地のインディペンデント系EDMアーティストを紹介してみた。
今後もEDMは、世界でもインドでも、トランスのように一部のパーティーフリークから愛され続けるジャンルとして生き延びていくのだろう。
若干ステレオタイプな言い方になるが、ダンスが大好きで派手なサウンドに人気が集まるインドでは、EDMはまだまだ一定の人気を保ってゆきそうだ。
インドのEDMシーンについては、今後もちょくちょく取り上げてみたい。




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2023年02月09日

インドのアンダーグラウンド電子音楽シーンの現在


ここ数年ですっかり耳にすることが少なくなったジャンル名といえば、EDMだろう。
2010年代、ド派手かつキャッチーなサウンドで世界中を席巻したEDMの波は、もちろん踊ることが大好きな国インドにも到達した。
ゴアやプネーでは世界で3番目の規模のEDMフェスティバルSunburnが開催され、数多くの世界的DJが招聘されてインドの若者たちを踊らせた。
インド国内にもLost StoriesやZaedenのように海外の大規模フェスに出演するアーティストが現れ、シーンはにわかに盛り上がりを見せた。




ところが、アヴィーチーが亡くなった2018年ごろからだろうか。
世界中の他の地域と同様に、インドでもEDMブームは下火になってゆく。
Lost Storiesは派手さを排除したポップ路線へと転向、Zaedenに至っては、なんとアコースティック寄りのシンガーソングライターへと転身してしまった。
(どうでもいい話だが、アヴィーチーというアーティスト名はインドと縁があり、「無間地獄」を意味するサンスクリット語から取られているらしい)

一応ことわっておくと、ここで言っているEDMというのは、KSHMR(彼はインド系メリカ人だ)とかアヴィーチーみたいないわゆる「狭義のEDM」の話で、インドを含めた英語圏で使われる「踊れる電子音楽全般」という意味ではない。
広義のEDMはもちろんまだ生きていて、以前も書いた「印DM」(軽刈田命名)のように、インドで独自に進化しているのだが、その話はまた今度。




今回書きたいのは、こうしたポップ路線からは離れたところに存在する、もうちょっとアンダーグラウンドな音楽シーンのことだ。
2000年ごろから活躍するパイオニアMidival Punditzをはじめ、インドは数多くの電子音楽アーティストを輩出した国でもある。
当たり前だが、巨大フェスのメインステージだけがシーンではない。
今回は、インドの面白い「草の根的」電子音楽をいろいろと紹介してみたい。
(古典音楽の要素を融合したフュージョン系エレクトロニカも非常に面白いのだけど、面白すぎるのでこれもまた機会を改めることにして、今回は無国籍なサウンドの電子音楽アーティストを特集する)


Dreamhour "Light"


シンセウェイヴのDreamhourは、インド東部ベンガル州の北のはずれ、シリグリー出身のDobojyoti Sanyalによるソロプロジェクト。
西にネパール、東にブータンがあり、北には1975年まで独立国だったシッキム州をのぞむシリグリーは、私の記憶にある25年前は、これといった面白みのない辺境の田舎街だった。
あの街からまさかこんな拗らせたスタイルのアーティストが出てくるとは思わなかったなあ。

Dreamhour "Until She"


DreamhourはニューヨークのNew Retro Waveというレトロ系シンセウェイヴ専門のレーベルから作品をリリースしていて、この手のマニアックなサウンドになるともう国境も国籍も全く関係ないという好例と言えるだろう。
Sanyalは女性ヴォーカリストをフィーチャーしたDokodokoというプロジェクトでも活動している。


OAFF "Perpetuate"


大阪アジアン映画祭と同じ名前のアーティストOAFFは、ムンバイのKabeer Kathpaliaによるソロプロジェクト。
音のセンスもさることながら、このシンプルながら独特の美しさを持つミュージックビデオが素晴らしい。

OAFF x Lanslands "Grip"


Landslandsなる人物と共演した"Grip"のミュージックビデオもまた強烈で、こちらはフランス人映像作家Thomas Rebourが手掛けている。



Three Oscillators "Hypnagogia"


ムンバイのDJ/プロデューサーBrij Dalviによるソロプロジェクト。
当方ロック上がりにつき、この手の音楽には全く詳しくないのだが、ちょっとドラムンベースっぽくもあるこういうジャンルは何ていうの?IDM?
彼が所属するQuilla Recordsはこの手の電子音楽の要注目レーベルだ。
大都市の喧騒の中からこの静謐かつ知的なサウンドが生まれてくるところに、ムンバイの奥深さを感じる。


Oceantied "Reality"



ベンガルールのKetan Behiratによるソロ・プロジェクト。
彼もまた、ただアゲて踊らせるだけじゃねえぞ、というセンスを感じる音使い。


Cash "Longing"


詳細は不明だが、ボストンとニューヨークとムンバイを拠点にしているらしいCashというアーティスト。
いわゆる典型的なアンビエントだが、とにかく心地よく浸れるサウンドだ。
"Hatsuyuki""Sentaku"といった日本語タイトルの曲もあって、それがまた美しい。


Neeraj Make "Last Taxi"


チェンナイとロンドンを拠点に活動するNeeraj Makeが2021年にリリースした"Art House"の最後を飾る曲、Last Taxiも電子音楽としての美しさにあふれた一曲だ。


この手のエレクトロニカ/アンビエント系の音楽は、インドでも決してメジャーなジャンルではないが、そのわりにかなり多くのアーティストやレーベルが存在している。
若干ステレオタイプ的な話になるが、深淵な音の響きを追求する古典音楽や、瞑想の伝統を持つインドで、こうした「踊らせるだけではない」音にこだわった電子音楽が好んで作られるのは必然とも言えるのかもしれない。
(そう考えると、今回紹介した中ではレトロウェイヴ系のDreamhourはかなり異質だが)




この手のアーティストはインドにほんとうにたくさんいるので、今後もいろんな角度から紹介してみたい。





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