2019年01月
2019年01月30日
ケーララのブラックメタルバンド"Willuwandi"が叫ぶ「アンチ・カースト」!
以前特集したケーララの音楽シーンのなかで、また面白いバンドを見つけた。
2009年に結成された同州の都市コチのブラックメタルバンド"Willuwandi"だ。
前にも説明したが、ブラックメタルはヘヴィーメタルをさらに過激にした音楽だ。
ヴォーカルはもはや音程を放棄してひたすら絶叫し、ドラムはブラストビートと呼ばれるやけっぱち的な高速のリズムを叩き、ギターはそれにあわせて不穏なメロディーを奏でるという、大衆性皆無なヘヴィーメタル界の極北ともいえるジャンルだ。
音楽性よりもさらに特異なのはその思想で、ブラックメタルはヘヴィーメタルが演出として取り入れていたオカルトや悪魔崇拝に本気 (マジ)で傾倒することを趣旨とし、なかには教会に放火したり殺人を犯すようなとんでもない連中もいるのだ。
最近はブラックメタラーによる凶悪犯罪のニュースはあまり聞かなくなったし、さすがに馬鹿らしくなったのか、悪魔崇拝をテーマにしたバンドも減っているようだが、今でも多くのブラックメタルミュージシャンが反キリスト教、反宗教のスタンスを表明している。
今回紹介するこのWilluwandi、歴史的にクリスチャンの多いケーララ州でアンチキリスト的な音楽とはおだやかでないが、彼らはいったいどんなことをアピールしているバンドなのか。
インドのなかでは教育がゆきとどき、貧富の差も少ないとされるケーララで、彼らはいったい何を主張しているのだろうか。
これがそのWilluwandiのアーティスト写真。
禍々しくも馬鹿馬鹿しい、ブラックメタル特有の白塗りのメイクは「コープスペイント」と呼ばれ、死体を模したものとされる。
どうして死体を模したメイクで反宗教を歌わなければいけないのかよく分からないかもしれないが、とにかくブラックメタルとはそういうものなのだ。
彼らの音楽性も正統派のブラックメタルのそれだ。
ブラックメタルをよく知らない人からしたら、何が正統派なのか分からないかもしれないが、まあこういうのが正統派なわけである。
(どうでもいいが、テレキャスターでブラックメタルを演奏するバンドを見たのは初めてかもしれない)
彼らのバンド名のWilluwandiとは、ケーララ州の言語マラヤーラム語で「牛車」を意味する言葉だ。
なぜブラックメタルバンドの名前が「牛車」なのかというと、それには少し長い説明が必要となる。
まず最初に「カースト制度」から話を始めることになるのだが、この浄・不浄の概念をもとにした身分制度は、インドの歴史の中で、いつ始まったか分からないほどの大昔から続いてきた。
司祭階級であったブラーミン(バラモン)を最も清浄な存在とし、以下、武士階級(クシャトリヤ)、商人階級(ヴァイシャ)、職人階級(シュードラ)と続くこの4つの階級を、ヴァルナ(四姓制度)と呼ぶ。
この4つの身分の下に、さらに最下層の身分として「アウトカースト」や「不可触民(英語でUntouchable)」と呼ばれる被差別階級が存在している。
汚れを扱うとされる仕事(屠畜、皮革加工、掃除夫、洗濯屋など)を生業としていた人々などがこれにあたり、今日では「抑圧された者」を意味する「ダリット(Dalit)」という名称で呼ばれることが多い。
彼らは共同体の井戸の使用や寺院への立ち入りを禁じられ、カーストヒンドゥーと同じ場所にいることや、ブラーミンの視界に入ることすら禁じられるなどの激しい差別を受け、虐げられてきた。
もちろん現在のインドではこうした差別は憲法で禁止されており、今日では彼らは法のもとで指定カースト(Scheduled Caste)と位置づけられ、進学や就職で一定の優遇枠を維持されるなど保護の対象となっている。
じつは、Willuwandiは、メンバー全員がこのダリット出身のバンド。
そう、彼らは、あの過激な音楽で、この伝統的な身分制度や、その基盤となった宗教に基づく社会制度への反対を訴えているというわけなのだ。
先ほど紹介した"Black God"も、曲の内容はダリットから身を起こし、コロンビア大学への留学を経てインドの憲法を起草した、初代法務大臣にまで登りつめた英雄的人物ビームラーオ・アンベードカル博士を讃えるものだという。
オカルティックなメイクをして悪魔主義的な音楽を演奏してるが、彼らはRage Against The Machineに影響を受けた、極めて真面目な社会派バンドなのである。
せっかくの社会派の歌詞も、あんな歌い方じゃあ何を言っているか分からないじゃないか、という至極まっとうな意見もあるかもしれないが、それはひとまず置いておく。
バンドの創立者でギター&ヴォーカルのSethuは語る。
「インドは俺たちの土地でもある。俺たちはそれを取り戻したいんだ。俺たちの最大の夢は、NagpurのDeeksha Bhoomiで演奏することさ」
カースト制度による差別の由来は諸説あるが、インドにもともと住んでいた色黒のドラヴィダ人をペルシア方面から侵入した色白のアーリア人が支配する過程で生み出されたものだという説がある。
彼らが代弁する「抑圧されたもの」はダリットに限らない。
「俺たちのバンドは闘争そのものだ。ダリットや他のマイノリティー、最近じゃムスリムたちもひどい差別を受けている」
とSethuは語る。
今回紹介した曲からも分かる通り、彼らはインドに蔓延するヒンドゥー至上主義的な空気に異議を唱えているのだ。
とはいえ、彼らは信仰としてのイスラム教や仏教に肩入れしているというわけではない。
「俺たちの音楽はどんな宗教とも関係ない。人々に、自分の神は自分自身なんだと伝えることを目的にしているんだ」とは、宗教を否定するブラックメタルミュージシャンらしい言葉だ。
それにしても、この思想も主義主張も、極めてノイジーな演奏と絶叫ではなかなか社会に伝わらないのではないかと心配になってしまうが(余計なお世話か)、彼らの活動を見ていると「誰が、どんなことを、どんな方法で主張しても構わない」という表現の自由の本質を感じさせられるのもまた確かだ。
それに、長年にわたり被抑圧者として虐げられてきた彼らの絶望や憤りは、このブラックメタルというジャンルこそふさわしいようにも感じる。
今回紹介したWilluwandiは、これまでに紹介してきたアーティストのなかでも極めてマイナーかつローカルで異色な存在だが、富裕層やエリートが多いインドのインディーミュージックシーンで、抑圧された者たちの怒りや苦痛を代弁するという、非常に「ロック的に正しい」姿勢に感銘を受け、紹介してみた次第です。
最後はこの言葉で締めくくりたい。
Jai Bhim!
(「ビームラーオ・アンベードカル万歳!」といった意味で、インドの平等主義者のかけ声として使われる言葉)
参考サイト:
Round Table India 'Willuwandi Band-A Musical Revolt From Kerala Against Brahminism'
Homegrown 'Meet The Black Metal Band From Kerala Fighting Against India's Casteism'
Financial Express: 'A different tune'
凡平自選の2018年度のおすすめ記事はこちらからどうぞ!
2009年に結成された同州の都市コチのブラックメタルバンド"Willuwandi"だ。
前にも説明したが、ブラックメタルはヘヴィーメタルをさらに過激にした音楽だ。
ヴォーカルはもはや音程を放棄してひたすら絶叫し、ドラムはブラストビートと呼ばれるやけっぱち的な高速のリズムを叩き、ギターはそれにあわせて不穏なメロディーを奏でるという、大衆性皆無なヘヴィーメタル界の極北ともいえるジャンルだ。
音楽性よりもさらに特異なのはその思想で、ブラックメタルはヘヴィーメタルが演出として取り入れていたオカルトや悪魔崇拝に本気 (マジ)で傾倒することを趣旨とし、なかには教会に放火したり殺人を犯すようなとんでもない連中もいるのだ。
最近はブラックメタラーによる凶悪犯罪のニュースはあまり聞かなくなったし、さすがに馬鹿らしくなったのか、悪魔崇拝をテーマにしたバンドも減っているようだが、今でも多くのブラックメタルミュージシャンが反キリスト教、反宗教のスタンスを表明している。
今回紹介するこのWilluwandi、歴史的にクリスチャンの多いケーララ州でアンチキリスト的な音楽とはおだやかでないが、彼らはいったいどんなことをアピールしているバンドなのか。
インドのなかでは教育がゆきとどき、貧富の差も少ないとされるケーララで、彼らはいったい何を主張しているのだろうか。
これがそのWilluwandiのアーティスト写真。
禍々しくも馬鹿馬鹿しい、ブラックメタル特有の白塗りのメイクは「コープスペイント」と呼ばれ、死体を模したものとされる。
どうして死体を模したメイクで反宗教を歌わなければいけないのかよく分からないかもしれないが、とにかくブラックメタルとはそういうものなのだ。
彼らの音楽性も正統派のブラックメタルのそれだ。
ブラックメタルをよく知らない人からしたら、何が正統派なのか分からないかもしれないが、まあこういうのが正統派なわけである。
(どうでもいいが、テレキャスターでブラックメタルを演奏するバンドを見たのは初めてかもしれない)
彼らのバンド名のWilluwandiとは、ケーララ州の言語マラヤーラム語で「牛車」を意味する言葉だ。
なぜブラックメタルバンドの名前が「牛車」なのかというと、それには少し長い説明が必要となる。
まず最初に「カースト制度」から話を始めることになるのだが、この浄・不浄の概念をもとにした身分制度は、インドの歴史の中で、いつ始まったか分からないほどの大昔から続いてきた。
司祭階級であったブラーミン(バラモン)を最も清浄な存在とし、以下、武士階級(クシャトリヤ)、商人階級(ヴァイシャ)、職人階級(シュードラ)と続くこの4つの階級を、ヴァルナ(四姓制度)と呼ぶ。
この4つの身分の下に、さらに最下層の身分として「アウトカースト」や「不可触民(英語でUntouchable)」と呼ばれる被差別階級が存在している。
汚れを扱うとされる仕事(屠畜、皮革加工、掃除夫、洗濯屋など)を生業としていた人々などがこれにあたり、今日では「抑圧された者」を意味する「ダリット(Dalit)」という名称で呼ばれることが多い。
彼らは共同体の井戸の使用や寺院への立ち入りを禁じられ、カーストヒンドゥーと同じ場所にいることや、ブラーミンの視界に入ることすら禁じられるなどの激しい差別を受け、虐げられてきた。
もちろん現在のインドではこうした差別は憲法で禁止されており、今日では彼らは法のもとで指定カースト(Scheduled Caste)と位置づけられ、進学や就職で一定の優遇枠を維持されるなど保護の対象となっている。
だが、長年の人々の心に染み付いた汚れの意識、差別意識は簡単にはぬぐえず、今なお差別感情に基づく暴力や殺人事件、嫌がらせの犠牲となるダリットは少なくない。
指定カーストとされる人々は、実にインドの人口の16.6%にものぼる。
指定カーストとされる人々は、実にインドの人口の16.6%にものぼる。
じつは、Willuwandiは、メンバー全員がこのダリット出身のバンド。
そう、彼らは、あの過激な音楽で、この伝統的な身分制度や、その基盤となった宗教に基づく社会制度への反対を訴えているというわけなのだ。
先ほど紹介した"Black God"も、曲の内容はダリットから身を起こし、コロンビア大学への留学を経てインドの憲法を起草した、初代法務大臣にまで登りつめた英雄的人物ビームラーオ・アンベードカル博士を讃えるものだという。
オカルティックなメイクをして悪魔主義的な音楽を演奏してるが、彼らはRage Against The Machineに影響を受けた、極めて真面目な社会派バンドなのである。
せっかくの社会派の歌詞も、あんな歌い方じゃあ何を言っているか分からないじゃないか、という至極まっとうな意見もあるかもしれないが、それはひとまず置いておく。
バンドの創立者でギター&ヴォーカルのSethuは語る。
「インドは俺たちの土地でもある。俺たちはそれを取り戻したいんだ。俺たちの最大の夢は、NagpurのDeeksha Bhoomiで演奏することさ」
カースト制度による差別の由来は諸説あるが、インドにもともと住んでいた色黒のドラヴィダ人をペルシア方面から侵入した色白のアーリア人が支配する過程で生み出されたものだという説がある。
(そのせいか、今もインドでは色白こそ美の条件とされ、ご存知のように美男美女の映画俳優にはかなり色白な人が多い)
「俺たちの土地を取り戻す」という言葉や、"Black God"の冒頭に出てきた"Real History of India is the war between Aryans and Dravids"というフレーズは、このことを念頭においているものと思われる。
Deeksha Bhoomiとは、アンベードカルがヒンドゥーの因習であるカーストのくびきから脱却すべく、60万人のダリットたちと仏教へ集団改修した聖地のこと。
こんな音楽を演奏されちゃあアンベードカルもさぞびっくりすると思うが、彼らはいたって真面目なのだ。
彼らのバンド名、Willuwandi(牛車)は地元ケララのダリット解放の英雄、Ayyakaliへのオマージュとしてつけられたものだ。
かつて、彼らの土地では牛車を使うことができるのは豊かなカースト・ヒンドゥーに限られ、ダリットは彼らが乗る牛車が来ると道を譲らなければならなかった。
その状況に抗議すべく、Ayyakaliはダリットであるにも関わらず、自ら牛車を手に入れて市場などへ乗りつけることで、差別への反対を表明した。
彼の勇気ある行動のおかげで、20世紀初めごろまでには、地元のほとんどの道をダリットも使うことができるようになったという。
このWilluwandi(牛車)こそが高位カーストの無慈悲さへの抗議の象徴であり、社会運動を推進させるものとして、彼らは自らのバンドに命名しているのだ。
「俺たちの土地を取り戻す」という言葉や、"Black God"の冒頭に出てきた"Real History of India is the war between Aryans and Dravids"というフレーズは、このことを念頭においているものと思われる。
Deeksha Bhoomiとは、アンベードカルがヒンドゥーの因習であるカーストのくびきから脱却すべく、60万人のダリットたちと仏教へ集団改修した聖地のこと。
こんな音楽を演奏されちゃあアンベードカルもさぞびっくりすると思うが、彼らはいたって真面目なのだ。
彼らのバンド名、Willuwandi(牛車)は地元ケララのダリット解放の英雄、Ayyakaliへのオマージュとしてつけられたものだ。
かつて、彼らの土地では牛車を使うことができるのは豊かなカースト・ヒンドゥーに限られ、ダリットは彼らが乗る牛車が来ると道を譲らなければならなかった。
その状況に抗議すべく、Ayyakaliはダリットであるにも関わらず、自ら牛車を手に入れて市場などへ乗りつけることで、差別への反対を表明した。
彼の勇気ある行動のおかげで、20世紀初めごろまでには、地元のほとんどの道をダリットも使うことができるようになったという。
このWilluwandi(牛車)こそが高位カーストの無慈悲さへの抗議の象徴であり、社会運動を推進させるものとして、彼らは自らのバンドに命名しているのだ。
彼らのバンドのロゴには、'wagon of justice, freedom and enlightenment'(正義と自由と啓蒙の乗り物)とある。
Willuwandiの楽曲は、全てが差別や迫害に対する強烈なプロテストだ。
激しいアジテーションのあとに演奏されるこの曲"Eat Me Brother"はデリーの名門大学JNU(Jawaharlal Nehru University)で、ヒンドゥー原理主義団体に所属する学生たちとの口論の後、行方不明となったダリットの学生のことを歌ったもの。
Willuwandiの楽曲は、全てが差別や迫害に対する強烈なプロテストだ。
激しいアジテーションのあとに演奏されるこの曲"Eat Me Brother"はデリーの名門大学JNU(Jawaharlal Nehru University)で、ヒンドゥー原理主義団体に所属する学生たちとの口論の後、行方不明となったダリットの学生のことを歌ったもの。
この"From Shadows To Light"は、ハイデラバード大学の研究者として"Caste Is Not A Rumour"を著したのち、やはり同じヒンドゥー原理主義団体からの抗議を受け、自殺したダリットに捧げたものだ。
どこかの公民館のようなところで演奏する映像はあまりに粗く、もともとまっとうな音楽の形態から大きく逸脱した彼らの演奏を伝えるには不十分なものだが、その活動の雰囲気を味わうことは十分にできる。
過激なブラックメタルのライブ映像にいきなり子どもが出てきてびっくりするが、これも彼らの音楽が「既存の倫理や社会に反抗する若者たちのためだけの音楽」ではなく、「コミュニティーの怒りを代弁する音楽」であることの証と見ることができるだろう。
どこかの公民館のようなところで演奏する映像はあまりに粗く、もともとまっとうな音楽の形態から大きく逸脱した彼らの演奏を伝えるには不十分なものだが、その活動の雰囲気を味わうことは十分にできる。
過激なブラックメタルのライブ映像にいきなり子どもが出てきてびっくりするが、これも彼らの音楽が「既存の倫理や社会に反抗する若者たちのためだけの音楽」ではなく、「コミュニティーの怒りを代弁する音楽」であることの証と見ることができるだろう。
彼らが代弁する「抑圧されたもの」はダリットに限らない。
「俺たちのバンドは闘争そのものだ。ダリットや他のマイノリティー、最近じゃムスリムたちもひどい差別を受けている」
とSethuは語る。
今回紹介した曲からも分かる通り、彼らはインドに蔓延するヒンドゥー至上主義的な空気に異議を唱えているのだ。
とはいえ、彼らは信仰としてのイスラム教や仏教に肩入れしているというわけではない。
「俺たちの音楽はどんな宗教とも関係ない。人々に、自分の神は自分自身なんだと伝えることを目的にしているんだ」とは、宗教を否定するブラックメタルミュージシャンらしい言葉だ。
それにしても、この思想も主義主張も、極めてノイジーな演奏と絶叫ではなかなか社会に伝わらないのではないかと心配になってしまうが(余計なお世話か)、彼らの活動を見ていると「誰が、どんなことを、どんな方法で主張しても構わない」という表現の自由の本質を感じさせられるのもまた確かだ。
それに、長年にわたり被抑圧者として虐げられてきた彼らの絶望や憤りは、このブラックメタルというジャンルこそふさわしいようにも感じる。
今回紹介したWilluwandiは、これまでに紹介してきたアーティストのなかでも極めてマイナーかつローカルで異色な存在だが、富裕層やエリートが多いインドのインディーミュージックシーンで、抑圧された者たちの怒りや苦痛を代弁するという、非常に「ロック的に正しい」姿勢に感銘を受け、紹介してみた次第です。
最後はこの言葉で締めくくりたい。
Jai Bhim!
(「ビームラーオ・アンベードカル万歳!」といった意味で、インドの平等主義者のかけ声として使われる言葉)
参考サイト:
Round Table India 'Willuwandi Band-A Musical Revolt From Kerala Against Brahminism'
Homegrown 'Meet The Black Metal Band From Kerala Fighting Against India's Casteism'
Financial Express: 'A different tune'
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2019年01月28日
『あまねき旋律』トークショーをやってきました!
かねてからお伝えしていた通り、昨日ユジク阿佐ケ谷さんにて映画『あまねき旋律』の上映後にトークショーを行ってきました!
ユジクさんについて最初に驚いたのが、今回の「旅するインド映画特集」に合わせて、ロビーにこんな素敵な黒板アートが描かれてていたこと。
今回の映画にちなんだ地域の説明がびっしり!
相当勉強になります。
これは写真だとわかりづらいけどものすごく巨大なイラスト!
描くの大変だっただろうなあ。
でもおかげで上映前から雰囲気が高まります。
地元にこんな映画館がある阿佐ケ谷の人がうらやましくなりました。
肝心のトークショーですが、うれしいことに映画を見たお客さんがほぼみなさん残ってくださり、しかもわざわざ事前にユジクさんでこの回の予約をしてくださった方も10名ほどいたとのこと。
たまたまこの回に『あまねき旋律』が見たかっただけかもしれませんが、重ねて御礼申し上げます!
それでは、この映画を配給しているノンデライコの大澤さんとの対談形式で紹介した音楽を改めてご案内します。
まず最初にかけたのはやっぱりこの曲。
ナガランドの"We are the World"こと、Voice of Nagalandの"As One".
ナガの16の部族が交代でヴォーカルを取り、メインランドから移住してきたアーリア系やドラヴィダ系の人々も歌うこの曲。
ユジクさんについて最初に驚いたのが、今回の「旅するインド映画特集」に合わせて、ロビーにこんな素敵な黒板アートが描かれてていたこと。
今回の映画にちなんだ地域の説明がびっしり!
相当勉強になります。
これは写真だとわかりづらいけどものすごく巨大なイラスト!
描くの大変だっただろうなあ。
でもおかげで上映前から雰囲気が高まります。
地元にこんな映画館がある阿佐ケ谷の人がうらやましくなりました。
肝心のトークショーですが、うれしいことに映画を見たお客さんがほぼみなさん残ってくださり、しかもわざわざ事前にユジクさんでこの回の予約をしてくださった方も10名ほどいたとのこと。
たまたまこの回に『あまねき旋律』が見たかっただけかもしれませんが、重ねて御礼申し上げます!
それでは、この映画を配給しているノンデライコの大澤さんとの対談形式で紹介した音楽を改めてご案内します。
まず最初にかけたのはやっぱりこの曲。
ナガランドの"We are the World"こと、Voice of Nagalandの"As One".
ナガの16の部族が交代でヴォーカルを取り、メインランドから移住してきたアーリア系やドラヴィダ系の人々も歌うこの曲。
それぞれの衣装や歌い回しに民族の特性が現れているのが見どころです。
Youtubeで見ると「誇りに思う」といったコメントが多いけど、この歌の理想が美しい背景には、理想とは反対の厳しい現実があるわけです。
かつてはナガの部族間での首狩り合戦もあったし、独立運動では派閥間抗争もあった。
それにメインランドの人々は映画でも描かれていたように自分たちを抑圧する存在でもある(中央に座っている政治家は地元出身ではなく、中央政府から派遣された人)。
だからこそこの曲のような調和を希求しているという背景があります。
あと、いろんな民族の人が出てくる中で、イスラム教徒だけ地域とか関係なくひとくくりに「ムスリム」っていうのはどうなのか、なんていう話をしました。
続いて紹介したのはTetseo Sisters.
『あまねき旋律』の舞台となったペク(Phek)出身の4姉妹です。
美しい4姉妹が歌う民族音楽は、ナガの人々が自らの伝統を振り返るきっかけのひとつにもなったようで、大澤さんが言っていた「ネーネーズのような存在」という例えが言い得て妙。
余計なお世話ではあるんですが、前々から思ってたけど、ちょっと彼女たち、メイクが濃すぎるんじゃないか。
ナチュラルメイクのほうがナガランドの自然な風景に合うのでは、なんていうのは極東の島国からのたわごとなわけですが、こんなところからも日本とナガとの感覚の違いが分かります。
次に話したのは、自然の中で敬虔なクリスチャンが暮らしているような印象のナガランドで、実は若者の間での悪魔崇拝が社会問題になっているんですよ、という話題。(くわしくはこちらの記事をどうぞ)
ナガランドのデスメタルバンド、Aguares。
デスメタルをかけたら、帰っちゃった人がいたのが印象的でした。
ゴメンナサイ。
そしてナガランドの若者の間で流行っているもうひとつの文化、日本のアニメとコスプレ。
(詳しくはこちら)
『あまねき旋律』と同じナガランドの人とは思えないこのコスプレっぷり。
都会の若者になってくると、顔立ちや表情もぐっと日本人に近くなります。
映画の中にも出てきた通り、ペクの村で歌われている伝統音楽も、一度はキリスト教への改宗によって途絶えたもの。
ペクの人々は、改宗や独立運動への弾圧によって途絶えてしまった伝統的な歌唱を復活させ、昔ながらの暮らしを続ける道を選んだ。
それとは対照的に、失われたアイデンティティーに代わるものとして日本のアニメに拠り所を見出す人もいるし、悪魔崇拝に走る若者もいるのかも、なんて話をしました。
最後に紹介したのはナガランドのクリスマスソング。
自分たちの文化ではサンタクロースもクリスマスケーキもプレゼント交換もなじみがないけど、故郷で過ごすクリスマスがやっぱりいちばんさ、と静かに歌うこの賛美歌(?)に、本来のクリスマスのあり方を改めて教えられるような気がします、というお話をしたところでちょうど時間となりました。
トークショーの25分はあっという間で、まだまだお話したいことあったのですが、話したかったことはだいたいこれまでのブログに書いてあるので、改めてリンクを貼りつけておきます。
特集ナガランドその1 辺境の山岳地帯に響く歌声 映画「あまねき旋律」
特集ナガランドその2 神の国となりし首刈りの地に悪魔の叫びが木霊する!悪魔崇拝とブラックメタル
特集ナガランドその3 ナガの地で花開く日本文化 ナガランドのオタク・カルチャー事情とは?
インド北東部ナガランドのクリスマスソング!
以前ブログに書いた以外で最近注目しているのは、ナガのミュージックビデオなんかに出てくる「ナガランドのちょっといい家」に、必ず鹿の頭が飾ってある、ということ。
このAlobo Nagaのミュージックビデオの豪邸なんて、3箇所も鹿の頭が飾られてる!(0:30と0:50と1:50ごろに注目)
日本で鹿の頭が3つも飾られている家なんて、マタギでも住んでないと思う…。
トークショーでも少し紹介しましたが、伝統文化が色濃く残る農村とか悪魔崇拝とかコスプレみたいな極端な話じゃなくて、自然なナガの人々の暮らしぶりが知りたかったら、ナガのボーイフレンドとインドで暮らしている「ナガ族との暮らし」さんのブログとTwitterが超面白くてオススメです。
「ナガ族との暮らし」ブログ
「ナガ族との暮らし」Twitter
日本のアニメが大人気のナガの人々に「この番組はご覧のスポンサーの提供でお送りします」と日本語で言うとウケるとか、有益な情報がいっぱい!
俺もナガの人に言ってみたい!
個人的に大好きなのはナガの昔話で、どんな話か知りたい方はぜひ上記のブログを読んでみてください。
今回のトークイベントにお越しいただいた方、ノンデライコの大澤さん、そしてこのブログを読んでいただいているみなさんにあらためて感謝します!
インド系ポピュラー音楽の研究家の方にもお会いでき、私にとっても非常に楽しく有意義な機会でした。
来られなかった方、会場でお話できなかった方も、下のコメント欄や左側のメッセージ欄に気軽に書いてくださったらうれしいです。
それでは今後ともヨロシク!
★凡平自選の2018年度のおすすめ記事はこちらからどうぞ!
続いて紹介したのはTetseo Sisters.
『あまねき旋律』の舞台となったペク(Phek)出身の4姉妹です。
美しい4姉妹が歌う民族音楽は、ナガの人々が自らの伝統を振り返るきっかけのひとつにもなったようで、大澤さんが言っていた「ネーネーズのような存在」という例えが言い得て妙。
余計なお世話ではあるんですが、前々から思ってたけど、ちょっと彼女たち、メイクが濃すぎるんじゃないか。
ナチュラルメイクのほうがナガランドの自然な風景に合うのでは、なんていうのは極東の島国からのたわごとなわけですが、こんなところからも日本とナガとの感覚の違いが分かります。
次に話したのは、自然の中で敬虔なクリスチャンが暮らしているような印象のナガランドで、実は若者の間での悪魔崇拝が社会問題になっているんですよ、という話題。(くわしくはこちらの記事をどうぞ)
ナガランドのデスメタルバンド、Aguares。
デスメタルをかけたら、帰っちゃった人がいたのが印象的でした。
ゴメンナサイ。
そしてナガランドの若者の間で流行っているもうひとつの文化、日本のアニメとコスプレ。
(詳しくはこちら)
『あまねき旋律』と同じナガランドの人とは思えないこのコスプレっぷり。
都会の若者になってくると、顔立ちや表情もぐっと日本人に近くなります。
映画の中にも出てきた通り、ペクの村で歌われている伝統音楽も、一度はキリスト教への改宗によって途絶えたもの。
ペクの人々は、改宗や独立運動への弾圧によって途絶えてしまった伝統的な歌唱を復活させ、昔ながらの暮らしを続ける道を選んだ。
それとは対照的に、失われたアイデンティティーに代わるものとして日本のアニメに拠り所を見出す人もいるし、悪魔崇拝に走る若者もいるのかも、なんて話をしました。
最後に紹介したのはナガランドのクリスマスソング。
自分たちの文化ではサンタクロースもクリスマスケーキもプレゼント交換もなじみがないけど、故郷で過ごすクリスマスがやっぱりいちばんさ、と静かに歌うこの賛美歌(?)に、本来のクリスマスのあり方を改めて教えられるような気がします、というお話をしたところでちょうど時間となりました。
トークショーの25分はあっという間で、まだまだお話したいことあったのですが、話したかったことはだいたいこれまでのブログに書いてあるので、改めてリンクを貼りつけておきます。
特集ナガランドその1 辺境の山岳地帯に響く歌声 映画「あまねき旋律」
特集ナガランドその2 神の国となりし首刈りの地に悪魔の叫びが木霊する!悪魔崇拝とブラックメタル
特集ナガランドその3 ナガの地で花開く日本文化 ナガランドのオタク・カルチャー事情とは?
インド北東部ナガランドのクリスマスソング!
以前ブログに書いた以外で最近注目しているのは、ナガのミュージックビデオなんかに出てくる「ナガランドのちょっといい家」に、必ず鹿の頭が飾ってある、ということ。
このAlobo Nagaのミュージックビデオの豪邸なんて、3箇所も鹿の頭が飾られてる!(0:30と0:50と1:50ごろに注目)
日本で鹿の頭が3つも飾られている家なんて、マタギでも住んでないと思う…。
トークショーでも少し紹介しましたが、伝統文化が色濃く残る農村とか悪魔崇拝とかコスプレみたいな極端な話じゃなくて、自然なナガの人々の暮らしぶりが知りたかったら、ナガのボーイフレンドとインドで暮らしている「ナガ族との暮らし」さんのブログとTwitterが超面白くてオススメです。
「ナガ族との暮らし」ブログ
「ナガ族との暮らし」Twitter
日本のアニメが大人気のナガの人々に「この番組はご覧のスポンサーの提供でお送りします」と日本語で言うとウケるとか、有益な情報がいっぱい!
俺もナガの人に言ってみたい!
個人的に大好きなのはナガの昔話で、どんな話か知りたい方はぜひ上記のブログを読んでみてください。
今回のトークイベントにお越しいただいた方、ノンデライコの大澤さん、そしてこのブログを読んでいただいているみなさんにあらためて感謝します!
インド系ポピュラー音楽の研究家の方にもお会いでき、私にとっても非常に楽しく有意義な機会でした。
来られなかった方、会場でお話できなかった方も、下のコメント欄や左側のメッセージ欄に気軽に書いてくださったらうれしいです。
それでは今後ともヨロシク!
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2019年01月25日
Rolling Stone Indiaが選ぶ2018年のベストミュージックビデオTop10!
ベストシングル、ベストアルバムと続いた'Rolling Stone Indiaが選ぶ2018年のベスト○○'シリーズ、ひとまず今回でラスト!
今回はミュージックビデオをお届けします。
(元になった記事はこちら:http://rollingstoneindia.com/10-best-indian-music-videos-2018/)
ご存知の通りインドは映画大国ということもあって、映像人材には事欠かないのか、どのビデオもかなりクオリティーの高いものになっている(そうでないものもあるが)。
いずれもベストシングル、ベストアルバムとは重複無しの選曲になっているが、映像だけでなく楽曲もとても質が高いものが揃っていて、インドの音楽シーンの成熟ぶりを感じさせられる。
中世から現代まであらゆる時代が共存する国インドの、最先端の音楽を体験できる10曲をお楽しみください!
Nuka, "Don't Be Afraid"
ダウンテンポの美しいエレクトロポップに重なる映像は、ヒンドゥーの葬送(火葬、遺灰を海に撒く)を描く場面から始まり、死と再生を幻想的に表現したもの。
この音像・映像で内容がインド哲学的なのがしびれるところだ。
本名Anushka Manchanda.
デリー出身の彼女は、タミル語、テルグ語、カンナダ語、ヒンディー語などの映画のプレイバックシンガー(ミュージカルシーンの俳優の口パクのバックシンガー)やアイドルみたいなガールポップグループを経て、現在ではモデルや音楽プロデューサーなどマルチな分野で活躍。
プレイバックシンガー出身の歌手がよりアーティスティックな音楽を別名義で発表するのはここ数年よく見られる傾向で、映画音楽とインディー音楽(「映画と関係ない作家性の強い音楽」程度の意味に捉えてください)の垣根はどんどん低くなっている。
映像作家はムンバイのNavzar Eranee. 彼もまた若い頃から海外文化の影響を大きく受けて育ったという。
Prateek Kuhad, "Cold/Mess"
2015年にデビューしたジャイプル出身のシンガーソングライター。
アメリカ留学を経て、現在はデリーを拠点に活動している。
ご覧の通りの洗練された音楽性で、MTV Europe Music Awardほか、多くの賞に輝いている評価の高いアーティストだ。
インドらしさを全く感じさせないミュージックビデオは、それもそのはず、ウクライナ人の映像作家Dar Gaiによるもの。
どこかインドの街(ムンバイ?)を舞台に撮影されているようだが、この極めて恣意的に無国籍な雰囲気(俳優もインド人だけどインド人っぽくない感じ!)は、この音楽のリスナーが見たい街並みということなのだろうか。
ところで、俳優さんの若白髪はインド的には「有り」なの?
ブリーチとかオシャレ的なもの?
Tienas, "18th Dec"
Prabh Deepらを擁する話題のヒップホップレーベルAzadi Recordsと契約したムンバイの若手ラッパー(まだ22歳)で、以前紹介した"Fake Adidas"と同様、小慣れた英語ラップを聞かせてくれている。
Tienasという名前は、本名のTanmay Saxenaを縮めてT'n'S(T and S)としたところから取られていて、いうまでもなくEminem(Marshall Mathers→M'n'M)が元ネタと思われる。
EminemにおけるSlim Shadyにあたる別人格としてBobby Boucherというキャラクターを演じることもあるようだ。
このミュージックビデオはムンバイの貧民街やジュエリーショップを舞台に、全編が女優によるリップシンクとなっている。
Tienasは男性にしては声が高いので、以前このビデオを見て勘違いして女性ラッパーだとどこかに書いてしまった記憶があるのだが、どこだったか思い出せない…。
That Boy Roby, "T"
2018年にファーストアルバムをリリースしたチャンディガル出身のスリーピースバンドが奏でるのはサイケデリックなガレージロック!
ビデオはただひたすらに90年代のインド映画の映像のコラージュで、インド映画好きなら若き日のアーミル・カーンやシャー・ルクを見つけることができるはず。
なんだろうこれは。我々が昔の刑事ドラマとかバブル期のトレンディードラマをキッチュなものとして再発見するみたいな感覚なんだろうか。
Rolling Stone India誌によると「ハイクオリティーな4分間の時間の無駄」。
全くその通りで、それ以上のものではないが、こういうメタ的な楽しみ方をするものがここにランクインすることにインドの変化を感じる。
Gutslit, "From One Ear To Another"
出た!
昨年来日公演も果たした黒ターバンのベーシスト、Gurdip Singh Narang率いるムンバイのブルータル・デスメタルバンド。
フランク・ミラーのアメリカンコミック"Sin City"を思わせる黒白赤のハードボイルド調アニメーションは、バンドのドラマーのAaron Pintoが手がけたもの。
残虐で悪趣味でありつつ非常にスタイリッシュという、稀有な作品に仕上がっている。
カッコイイ!
Kavya Trehan, "Underscore"
ドリーミーなエレクトロポップを歌うKavya Trehanは女優、モデル、宝石デザイナーとしても活躍するマルチな才能を持った女性で、ダンス/エレクトロニックバンドMoskoのヴォーカリストでもある。
(Moskoには以前紹介したジャパニーズカルチャーに影響を受けたバンドKrakenの中心メンバーMoses Koulも在籍している)
ノスタルジックかつ無国籍な雰囲気のビデオはDivineとRaja Kumariのビデオも手がけたアメリカ人Shawn Thomasが LAで撮影したものだそうな。
今回はミュージックビデオをお届けします。
(元になった記事はこちら:http://rollingstoneindia.com/10-best-indian-music-videos-2018/)
ご存知の通りインドは映画大国ということもあって、映像人材には事欠かないのか、どのビデオもかなりクオリティーの高いものになっている(そうでないものもあるが)。
いずれもベストシングル、ベストアルバムとは重複無しの選曲になっているが、映像だけでなく楽曲もとても質が高いものが揃っていて、インドの音楽シーンの成熟ぶりを感じさせられる。
中世から現代まであらゆる時代が共存する国インドの、最先端の音楽を体験できる10曲をお楽しみください!
Nuka, "Don't Be Afraid"
ダウンテンポの美しいエレクトロポップに重なる映像は、ヒンドゥーの葬送(火葬、遺灰を海に撒く)を描く場面から始まり、死と再生を幻想的に表現したもの。
この音像・映像で内容がインド哲学的なのがしびれるところだ。
本名Anushka Manchanda.
デリー出身の彼女は、タミル語、テルグ語、カンナダ語、ヒンディー語などの映画のプレイバックシンガー(ミュージカルシーンの俳優の口パクのバックシンガー)やアイドルみたいなガールポップグループを経て、現在ではモデルや音楽プロデューサーなどマルチな分野で活躍。
プレイバックシンガー出身の歌手がよりアーティスティックな音楽を別名義で発表するのはここ数年よく見られる傾向で、映画音楽とインディー音楽(「映画と関係ない作家性の強い音楽」程度の意味に捉えてください)の垣根はどんどん低くなっている。
映像作家はムンバイのNavzar Eranee. 彼もまた若い頃から海外文化の影響を大きく受けて育ったという。
Prateek Kuhad, "Cold/Mess"
2015年にデビューしたジャイプル出身のシンガーソングライター。
アメリカ留学を経て、現在はデリーを拠点に活動している。
ご覧の通りの洗練された音楽性で、MTV Europe Music Awardほか、多くの賞に輝いている評価の高いアーティストだ。
インドらしさを全く感じさせないミュージックビデオは、それもそのはず、ウクライナ人の映像作家Dar Gaiによるもの。
どこかインドの街(ムンバイ?)を舞台に撮影されているようだが、この極めて恣意的に無国籍な雰囲気(俳優もインド人だけどインド人っぽくない感じ!)は、この音楽のリスナーが見たい街並みということなのだろうか。
ところで、俳優さんの若白髪はインド的には「有り」なの?
ブリーチとかオシャレ的なもの?
Tienas, "18th Dec"
Prabh Deepらを擁する話題のヒップホップレーベルAzadi Recordsと契約したムンバイの若手ラッパー(まだ22歳)で、以前紹介した"Fake Adidas"と同様、小慣れた英語ラップを聞かせてくれている。
Tienasという名前は、本名のTanmay Saxenaを縮めてT'n'S(T and S)としたところから取られていて、いうまでもなくEminem(Marshall Mathers→M'n'M)が元ネタと思われる。
EminemにおけるSlim Shadyにあたる別人格としてBobby Boucherというキャラクターを演じることもあるようだ。
このミュージックビデオはムンバイの貧民街やジュエリーショップを舞台に、全編が女優によるリップシンクとなっている。
Tienasは男性にしては声が高いので、以前このビデオを見て勘違いして女性ラッパーだとどこかに書いてしまった記憶があるのだが、どこだったか思い出せない…。
That Boy Roby, "T"
2018年にファーストアルバムをリリースしたチャンディガル出身のスリーピースバンドが奏でるのはサイケデリックなガレージロック!
ビデオはただひたすらに90年代のインド映画の映像のコラージュで、インド映画好きなら若き日のアーミル・カーンやシャー・ルクを見つけることができるはず。
なんだろうこれは。我々が昔の刑事ドラマとかバブル期のトレンディードラマをキッチュなものとして再発見するみたいな感覚なんだろうか。
Rolling Stone India誌によると「ハイクオリティーな4分間の時間の無駄」。
全くその通りで、それ以上のものではないが、こういうメタ的な楽しみ方をするものがここにランクインすることにインドの変化を感じる。
Gutslit, "From One Ear To Another"
出た!
昨年来日公演も果たした黒ターバンのベーシスト、Gurdip Singh Narang率いるムンバイのブルータル・デスメタルバンド。
フランク・ミラーのアメリカンコミック"Sin City"を思わせる黒白赤のハードボイルド調アニメーションは、バンドのドラマーのAaron Pintoが手がけたもの。
残虐で悪趣味でありつつ非常にスタイリッシュという、稀有な作品に仕上がっている。
カッコイイ!
Kavya Trehan, "Underscore"
ドリーミーなエレクトロポップを歌うKavya Trehanは女優、モデル、宝石デザイナーとしても活躍するマルチな才能を持った女性で、ダンス/エレクトロニックバンドMoskoのヴォーカリストでもある。
(Moskoには以前紹介したジャパニーズカルチャーに影響を受けたバンドKrakenの中心メンバーMoses Koulも在籍している)
ノスタルジックかつ無国籍な雰囲気のビデオはDivineとRaja Kumariのビデオも手がけたアメリカ人Shawn Thomasが LAで撮影したものだそうな。
お分かりの通り、インド人はインドが好きなのと同じくらい、インドらしくないものが好き。
日本人も同じだよね。
Avora Records, "Sunday"
先日紹介した「インド北東部のベストミュージックビデオ」にも選ばれていたミゾラム州アイゾウルのポップロックバンドがこの全国版にも選出された。
アート的で意味深なミュージックビデオが多く選ばれている中で、同郷の映像作家Dammy Murrayによるポップなかわいさを全面に出した映像が個性的。
Mali, "Play"
チェンナイ出身のケララ系シンガーソングライターMaliことMaalavika Manojは、映画のプレイバックシンガーやジャズポップバンドBass In Bridgeでの活動を経て、今ではムンバイで活躍している。
幼い頃に音楽を教えてくれたという、彼女の実の祖父と共演したあたたかい雰囲気のビデオはムンバイの映像作家Krish Makhijaによるもの。
彼女の深みのある美しい声(少しNorah Jonesを思わせる)と、確かなソングライティング力が分かる一曲だ。
あと最後に、誰もが気づいたことと思うけど、このMaliさん、かなりの美人だと思う。
まいっちゃうなあ。
Chidakasha, "Tigress"
ケララ州コチ出身のロックバンド。
聞きなれないバンド名はインド哲学やヨガで使われるなんか難しい意味の言葉らしい。
インスピレーションを求めてメンバーがMarshmelloみたいな箱男になったビデオは、いかにもローバジェットだがなかなか愛嬌がある。
3:50あたりからのフュージョン・ロック的な展開も聴きどころ。
Ritviz, "Jeet"
インド音楽の要素を取り入れたプネーのエレクトロニック/ダンス系アーティスト。
下町、オートリクシャー、ビーチ、映画館(そこで見るのは前年のRitvizヒット曲"Udd Gaye")、垢抜けないダンスといったローカル色満載の映像はこのランキングの中でも異色の存在だ。
この「美化されていないローカル感」をB級感覚やミスマッチとして扱うのではなく、そのままフォーキーなダンスミュージックと癒合させるセンスは、とにかくお洒落な方向を目指しがちなインドの音楽シーンではとても珍しく、またその試みは見事に成功している。
この素晴らしいビデオはムンバイの映像作家Bibartan Ghoshによるもの。
以上、全10曲を紹介しました。
見ていただいて分かる通り、Nukaの"Don't be Afraid"やThat Boy Robyの"T"、Maliの"Play"、Ritvizの"Jeet"のように、インド的なものを美しく詩的に(あるいはおもしろおかしく)映したビデオもあれば、逆にPrateek Kuhadの"Cold/Mess"やGutslitの"From One Ear To Another"、Kavya Trehanの"Underscore"のように無国籍でオシャレなものこそを美とするものもあり、「かっこよさ」と「インド的」なものとの距離感の取り方がいろいろあるのが面白いところ。
ところで、いつも気になっているのは、この映像を撮るお金はどこから出ているのかということ。
例えばNukaやPrateek KuhadはYoutubeの再生回数が120万回を超えているが、LAロケのKavya Trehanでさえ再生回数6,000回足らず、That Boy Robyに至っては3,200回に過ぎない。
(それにあのビデオ、著作権関係とか、大丈夫なんだろうか)
映画音楽・古典音楽以外のほとんどの楽曲が大手レコード会社ではなくインディーズレーベル(もしくは完全な自主制作)からのリリースであるインド。
100万を超える再生回数のものは別として、他は制作費用が回収できていなさそうなものばかりだ。
いったいどこからこれだけの映像を撮るお金が出てくるのだろうか。
おそらくだが、その答えのひとつは「家がお金持ち」ということだと思う。
インドのインディーズシーンで活躍しているミュージシャンは、幼い頃から楽器に触れて欧米への留学経験を持つなど、端的に言うと実家が裕福そうな人が多い。
音楽コンテンツ販売のプロモーションのためにミュージックビデオを作るのではなく、もともと金持ちで、良い作品のために惜しげも無くお金と労力をつぎ込むという、千葉のジャガーさん的なアーティストも多いのではないかと思う。
そんな彼らが発展途上のシーンを底上げしてくれているのも確かなので、もしそうだとしてもそれはそれで有りだと思うのだけど、次回はそんなアーティストたちとは全く真逆のインドならではの音楽を紹介したいと思います!
それでは、サヨナラ、サヨナラ。
★1月27日(日)ユジク阿佐ヶ谷にて「あまねき旋律」上映後にインド北東部ナガランド州の音楽シーンを語るトークイベントを行います
★凡平自選の2018年度のおすすめ記事はこちらからどうぞ!
Avora Records, "Sunday"
先日紹介した「インド北東部のベストミュージックビデオ」にも選ばれていたミゾラム州アイゾウルのポップロックバンドがこの全国版にも選出された。
アート的で意味深なミュージックビデオが多く選ばれている中で、同郷の映像作家Dammy Murrayによるポップなかわいさを全面に出した映像が個性的。
Mali, "Play"
チェンナイ出身のケララ系シンガーソングライターMaliことMaalavika Manojは、映画のプレイバックシンガーやジャズポップバンドBass In Bridgeでの活動を経て、今ではムンバイで活躍している。
幼い頃に音楽を教えてくれたという、彼女の実の祖父と共演したあたたかい雰囲気のビデオはムンバイの映像作家Krish Makhijaによるもの。
彼女の深みのある美しい声(少しNorah Jonesを思わせる)と、確かなソングライティング力が分かる一曲だ。
あと最後に、誰もが気づいたことと思うけど、このMaliさん、かなりの美人だと思う。
まいっちゃうなあ。
Chidakasha, "Tigress"
ケララ州コチ出身のロックバンド。
聞きなれないバンド名はインド哲学やヨガで使われるなんか難しい意味の言葉らしい。
インスピレーションを求めてメンバーがMarshmelloみたいな箱男になったビデオは、いかにもローバジェットだがなかなか愛嬌がある。
3:50あたりからのフュージョン・ロック的な展開も聴きどころ。
Ritviz, "Jeet"
インド音楽の要素を取り入れたプネーのエレクトロニック/ダンス系アーティスト。
下町、オートリクシャー、ビーチ、映画館(そこで見るのは前年のRitvizヒット曲"Udd Gaye")、垢抜けないダンスといったローカル色満載の映像はこのランキングの中でも異色の存在だ。
この「美化されていないローカル感」をB級感覚やミスマッチとして扱うのではなく、そのままフォーキーなダンスミュージックと癒合させるセンスは、とにかくお洒落な方向を目指しがちなインドの音楽シーンではとても珍しく、またその試みは見事に成功している。
この素晴らしいビデオはムンバイの映像作家Bibartan Ghoshによるもの。
以上、全10曲を紹介しました。
見ていただいて分かる通り、Nukaの"Don't be Afraid"やThat Boy Robyの"T"、Maliの"Play"、Ritvizの"Jeet"のように、インド的なものを美しく詩的に(あるいはおもしろおかしく)映したビデオもあれば、逆にPrateek Kuhadの"Cold/Mess"やGutslitの"From One Ear To Another"、Kavya Trehanの"Underscore"のように無国籍でオシャレなものこそを美とするものもあり、「かっこよさ」と「インド的」なものとの距離感の取り方がいろいろあるのが面白いところ。
ところで、いつも気になっているのは、この映像を撮るお金はどこから出ているのかということ。
例えばNukaやPrateek KuhadはYoutubeの再生回数が120万回を超えているが、LAロケのKavya Trehanでさえ再生回数6,000回足らず、That Boy Robyに至っては3,200回に過ぎない。
(それにあのビデオ、著作権関係とか、大丈夫なんだろうか)
映画音楽・古典音楽以外のほとんどの楽曲が大手レコード会社ではなくインディーズレーベル(もしくは完全な自主制作)からのリリースであるインド。
100万を超える再生回数のものは別として、他は制作費用が回収できていなさそうなものばかりだ。
いったいどこからこれだけの映像を撮るお金が出てくるのだろうか。
おそらくだが、その答えのひとつは「家がお金持ち」ということだと思う。
インドのインディーズシーンで活躍しているミュージシャンは、幼い頃から楽器に触れて欧米への留学経験を持つなど、端的に言うと実家が裕福そうな人が多い。
音楽コンテンツ販売のプロモーションのためにミュージックビデオを作るのではなく、もともと金持ちで、良い作品のために惜しげも無くお金と労力をつぎ込むという、千葉のジャガーさん的なアーティストも多いのではないかと思う。
そんな彼らが発展途上のシーンを底上げしてくれているのも確かなので、もしそうだとしてもそれはそれで有りだと思うのだけど、次回はそんなアーティストたちとは全く真逆のインドならではの音楽を紹介したいと思います!
それでは、サヨナラ、サヨナラ。
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「軽刈田 凡平(かるかった ぼんべい)のアッチャーインディア 読んだり聞いたり考えたり」
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★1月27日(日)ユジク阿佐ヶ谷にて「あまねき旋律」上映後にインド北東部ナガランド州の音楽シーンを語るトークイベントを行います
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2019年01月20日
バークリー出身の才媛が日本語で歌うオーガニックソウル! Sanjeeta Bhattacharya
その言語でないと表現することが難しい言葉というものがある。
例えば、インドの言葉で代表的なのはサンスクリット語の「シャンティ(Shanti)」。
これは平和・静寂・至福などを表す言葉で、ヨガの世界などで使われる。
例えば、インドの言葉で代表的なのはサンスクリット語の「シャンティ(Shanti)」。
これは平和・静寂・至福などを表す言葉で、ヨガの世界などで使われる。
ピースフルな状態を表すこの言葉は、あのマドンナも曲名にしたことがある。
日本語で代表的なのは、ノーベル平和賞を受賞したケニアのワンガリ・マータイが提唱したことでも有名な「Mottainai=もったいない」だろう。
今回紹介する曲のタイトルも、日本語でないと表現が難しい感覚と言っていいのだろうか。
インドの若手女性シンガー、Sanjeeta Bhattacharyaが先ごろ発表した曲のタイトルは、なんと"Natsukashii(懐かしい)"
ホーリーの粉、サイクルリクシャー、ブランコにシャボン玉。
タイトルの通り懐かしい雰囲気の映像に乗せて、過ぎ去った恋の思い出の甘さと苦さがポップに歌われる。
決して後悔しているわけでもあの頃に帰りたいわけでもないが、束の間、過去を思い返して思い出に浸る。
確かに「懐かしい」はノスタルジックとも違う日本語独特の表現なのかもしれない。
これまで、日本の文化に影響を受けたアーティスト(ロック編、エレクトロニカ編)とか、日本語の名前を持つアーティストというのは紹介してきたけど、冒頭だけとはいえインドではほとんどの人が知らない日本語で歌うアーティストというのは珍しい。
しかも、サウンドは心地よいオーガニックソウルで、曲名以外これといって日本的なわけでもないし。
いったい彼女はどこで「懐かしい」という日本語を見つけたのだろうか。
Sanjeeta Bhattacharyaを語る上で、もうひとつ注目すべき点は、彼女がアメリカの名門音楽学校、バークリー音楽院の出身だということだ。
このブログでなんども書いてきたように、インドのインディーミュージックシーンは2000年代から急速な発展を遂げた。
映画音楽一辺倒だったインドにロックやダンスミュージックなどの新しい音楽を紹介したのは、欧米に暮らす在外インド人や、海外で青春時代を過ごした「帰国子女」たちだった。
今ではそこからさらに発展して、海外の名門音楽学校に留学したアーティストが帰国して活躍する時代を迎えたというわけだ。
インドのウェブサイトIndianwomenblog.orgに掲載されたインタビューによると、Sanjeethaはインドの多くのシンガー同様、幼少期からインドの古典音楽(ヒンドゥスターニー、カタック)を学んでいたそうだ。
バークリーでは世界中の音楽を学んだが、それでも彼女の音楽のルーツはインド古典だと語っている。
最近のオーガニックソウル調の曲からはあまり古典の要素は伺えないが、ヒンディーで歌った曲からは、そんな彼女のルーツが十分に感じられる。
古典音楽風の繊細な節回しとジャズ/ソウル的な抑揚が魅力的なこの曲は、トルコ系イギリス人の女性作家、Elif Shafaqの本'40 Rules of Love'にインスパイアされたもの。
曲のタイトル'Shams'はこの本に出てくるスーフィー(イスラーム神秘主義の行者)の名前で、歌の内容は「私に必要なのは師匠でも弟子でもなく、友であり仲間だ。ともに座ってみれば、私たちの内面には見た目以上に多くの調和があるはずだ」という、現代社会で深い意味を持つメッセージ。
バークリーでは、ジャズだけでなくバルカン音楽やフラメンコ、ラテン音楽など世界中の音楽を学んだという彼女がスペイン語で歌うこの曲は'Menos es mas'
インド人である彼女がスペイン語の歌い回しを見事にものにしているのを聴いて、フラメンコの担い手であるロマ(ジプシー)のルーツはインドのラージャスタン州のあたりに遡るということを、ふと思い出したりもした。
彼女が尊敬するミュージシャンとして挙げるのはエリス・レジーナとビリー・ホリデイ。
日本語で代表的なのは、ノーベル平和賞を受賞したケニアのワンガリ・マータイが提唱したことでも有名な「Mottainai=もったいない」だろう。
今回紹介する曲のタイトルも、日本語でないと表現が難しい感覚と言っていいのだろうか。
インドの若手女性シンガー、Sanjeeta Bhattacharyaが先ごろ発表した曲のタイトルは、なんと"Natsukashii(懐かしい)"
ホーリーの粉、サイクルリクシャー、ブランコにシャボン玉。
タイトルの通り懐かしい雰囲気の映像に乗せて、過ぎ去った恋の思い出の甘さと苦さがポップに歌われる。
決して後悔しているわけでもあの頃に帰りたいわけでもないが、束の間、過去を思い返して思い出に浸る。
確かに「懐かしい」はノスタルジックとも違う日本語独特の表現なのかもしれない。
これまで、日本の文化に影響を受けたアーティスト(ロック編、エレクトロニカ編)とか、日本語の名前を持つアーティストというのは紹介してきたけど、冒頭だけとはいえインドではほとんどの人が知らない日本語で歌うアーティストというのは珍しい。
しかも、サウンドは心地よいオーガニックソウルで、曲名以外これといって日本的なわけでもないし。
いったい彼女はどこで「懐かしい」という日本語を見つけたのだろうか。
Sanjeeta Bhattacharyaを語る上で、もうひとつ注目すべき点は、彼女がアメリカの名門音楽学校、バークリー音楽院の出身だということだ。
このブログでなんども書いてきたように、インドのインディーミュージックシーンは2000年代から急速な発展を遂げた。
映画音楽一辺倒だったインドにロックやダンスミュージックなどの新しい音楽を紹介したのは、欧米に暮らす在外インド人や、海外で青春時代を過ごした「帰国子女」たちだった。
今ではそこからさらに発展して、海外の名門音楽学校に留学したアーティストが帰国して活躍する時代を迎えたというわけだ。
インドのウェブサイトIndianwomenblog.orgに掲載されたインタビューによると、Sanjeethaはインドの多くのシンガー同様、幼少期からインドの古典音楽(ヒンドゥスターニー、カタック)を学んでいたそうだ。
バークリーでは世界中の音楽を学んだが、それでも彼女の音楽のルーツはインド古典だと語っている。
最近のオーガニックソウル調の曲からはあまり古典の要素は伺えないが、ヒンディーで歌った曲からは、そんな彼女のルーツが十分に感じられる。
古典音楽風の繊細な節回しとジャズ/ソウル的な抑揚が魅力的なこの曲は、トルコ系イギリス人の女性作家、Elif Shafaqの本'40 Rules of Love'にインスパイアされたもの。
曲のタイトル'Shams'はこの本に出てくるスーフィー(イスラーム神秘主義の行者)の名前で、歌の内容は「私に必要なのは師匠でも弟子でもなく、友であり仲間だ。ともに座ってみれば、私たちの内面には見た目以上に多くの調和があるはずだ」という、現代社会で深い意味を持つメッセージ。
バークリーでは、ジャズだけでなくバルカン音楽やフラメンコ、ラテン音楽など世界中の音楽を学んだという彼女がスペイン語で歌うこの曲は'Menos es mas'
インド人である彼女がスペイン語の歌い回しを見事にものにしているのを聴いて、フラメンコの担い手であるロマ(ジプシー)のルーツはインドのラージャスタン州のあたりに遡るということを、ふと思い出したりもした。
彼女が尊敬するミュージシャンとして挙げるのはエリス・レジーナとビリー・ホリデイ。
ブラジル音楽とジャズの、伝説的なシンガーだ。
ジャズとインド古典音楽は即興において似た部分があると話す彼女は、今までに触れたあらゆる文化や音楽の影響を、自分なりに咀嚼して表現している。
そのアンテナに、きっと日本語の「懐かしい」もひっかかったのだろう。
おそらくは、世界中からミュージシャンの卵が集まるバークリーで、日本人から耳にした言葉だったのではないだろうか。
ちなみにバークリーで学ぶインド人アーティストは多く、女性シンガーではパティ・スミスを連想させるグランジ系フォークロックのAlisha Batthや、日本で活動しているジャズ/ソウルシンガーのTea (Trupti)などが活躍している。
彼女たちもそれぞれ独特の世界観をもっている興味深いミュージシャンなので、いずれ紹介したいと思います。
それでは!
(追記)
彼女が2020年10月にリリースした"Red"では、なんとラップを披露!
ミュージックビデオもこれまでのナチュラルなイメージからぐっと変わって、妖艶な雰囲気を感じさせるものになっている。
しかもマダガスカルのシンガーNiu Razaとの共演という話題もあり、この曲はRolling Stone Indiaが選ぶ2020年のベストミュージックビデオの1位に輝いた。
凡平自選の2018年度のおすすめ記事はこちらからどうぞ!
そのアンテナに、きっと日本語の「懐かしい」もひっかかったのだろう。
おそらくは、世界中からミュージシャンの卵が集まるバークリーで、日本人から耳にした言葉だったのではないだろうか。
ちなみにバークリーで学ぶインド人アーティストは多く、女性シンガーではパティ・スミスを連想させるグランジ系フォークロックのAlisha Batthや、日本で活動しているジャズ/ソウルシンガーのTea (Trupti)などが活躍している。
彼女たちもそれぞれ独特の世界観をもっている興味深いミュージシャンなので、いずれ紹介したいと思います。
それでは!
(追記)
彼女が2020年10月にリリースした"Red"では、なんとラップを披露!
ミュージックビデオもこれまでのナチュラルなイメージからぐっと変わって、妖艶な雰囲気を感じさせるものになっている。
しかもマダガスカルのシンガーNiu Razaとの共演という話題もあり、この曲はRolling Stone Indiaが選ぶ2020年のベストミュージックビデオの1位に輝いた。
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2019年01月16日
Rolling Stone Indiaが選ぶ2018年のベストアルバムTop10!
前回、Rolling Stone India誌が選ぶ2018年のベストシングルを紹介したけど、今回は同誌が選ぶベストアルバムを紹介!
はっきりいって今回のほうがシングルよりもずっと面白くてかっこいい!
まだあまり知られていないグッドミュージックを探している人は是非ともチェックすべき10枚をご案内します。
こちらも順位はつけられていなかったので、ひとまず同誌サイトで紹介されている順に書いていきます。
アーティスト名とアルバム名のところにアルバム全体が聴けるサイトへのリンクになっていて、収録曲のYoutubeも貼っておいたので聴きながらお楽しみください。
それでは!
Rainburn, "Insignify"
イントロが結構長くて、曲が始まるのは1:53から。
選者の趣味なのだろうが、いきなりコテコテのメタルが出てくるところにこのセレクトの面白さを感じる。
今作はバンガロールを拠点に活動するプログレッシブメタルバンドのデビューアルバム。
インドではDream Theaterの影響下にあるようなこの手の音楽はかなり人気があり、多くのバンドが存在している(詳細後述)が、彼らはその中でもかなりレベルの高いバンドと言えるだろう。
2曲めの"Merchant of Dreams"(1:53〜)の途中にブルース風の進行が出てきたり、6曲めにアカペラ曲の"Purpose"(24:35〜)が収録されているあたりが個性だろうか。
The Local Train, "Vaaqif"
The Local Trainは2008年にインド北部チャンディーガルで結成され、現在はデリーを拠点に活動するヒンディーロックバンド。
はっきりいって今回のほうがシングルよりもずっと面白くてかっこいい!
まだあまり知られていないグッドミュージックを探している人は是非ともチェックすべき10枚をご案内します。
こちらも順位はつけられていなかったので、ひとまず同誌サイトで紹介されている順に書いていきます。
アーティスト名とアルバム名のところにアルバム全体が聴けるサイトへのリンクになっていて、収録曲のYoutubeも貼っておいたので聴きながらお楽しみください。
それでは!
Rainburn, "Insignify"
イントロが結構長くて、曲が始まるのは1:53から。
選者の趣味なのだろうが、いきなりコテコテのメタルが出てくるところにこのセレクトの面白さを感じる。
今作はバンガロールを拠点に活動するプログレッシブメタルバンドのデビューアルバム。
インドではDream Theaterの影響下にあるようなこの手の音楽はかなり人気があり、多くのバンドが存在している(詳細後述)が、彼らはその中でもかなりレベルの高いバンドと言えるだろう。
2曲めの"Merchant of Dreams"(1:53〜)の途中にブルース風の進行が出てきたり、6曲めにアカペラ曲の"Purpose"(24:35〜)が収録されているあたりが個性だろうか。
The Local Train, "Vaaqif"
The Local Trainは2008年にインド北部チャンディーガルで結成され、現在はデリーを拠点に活動するヒンディーロックバンド。
ヒンディーロックとは何ぞやというと、文字どおりヒンディー語で歌われるロックのことだが、このバンドの場合、ヒンディーで歌ってもいかにもインド的な歌い回しは出てこず、完全に洋楽ロック的なメロディーとアレンジになっているのが良さでもあるし、少しもったいなく感じる部分でもある。
(ヒンディー語以外のマーケットにはなかなか届かないだろうから)
Dhruv Visvanath, "The Lost Cause"
ニューデリーで活動するシンガーソングライターで、アメリカのAcoustic Guitar Magazineで30歳以下の偉大なギタリスト30名に選ばれたこともあるというDhruv Visvanath。
このアルバムでも、ほぼアコースティックギターとヴォーカルハーモニーだけでドラマティックな楽曲を構成することに成功している。
Paradigm Shift, "Sammukh"
また出た!プログレッシブ・メタル・バンド!
彼らは最近日本でも注目されているPineapple Express同様、伝統音楽の要素(声楽やバイオリン)を大胆に取り入れた音楽性のバンドだ。
この手のプログレ・ミーツ・インディアなバンドは数多いが、変拍子や複雑なフレーズを駆使するプログレとインドの古典音楽にそれだけ親和性があるということなのだろう(他に注目株としてはタミルのAgam、もう少しグランジっぽいところでデリーのAnand Bhaskar Collectiveなど)。
Enkore, "Bombay Soul"
ムンバイのバイリンガルラッパー(英語とヒンディー)Enkoreが、このブログでも何度も名前が出て来ているデリーの鬼才トラックメイカーSez on the Beatのプロデュースでリリースしたアルバム。
Sezはいつものトラップ色の強いトラックではなく、スムースでチルな質感の音作りを意識している。
ギターを中心にしたメロウなトラックにところどころ顔を出すインド風味が心地よい。
Skyharbor, "Sunshine Dust"
アメリカ在住(インド系米国人?)のメンバーを含むSkyharborは、日本のBabymetalの全米ツアーのオープニングアクトを任されるなど人気上昇中のメタルバンドだ。
このブログではついついデスメタル、スラッシュメタル、正統派ヘヴィーメタルなどのオールドスクールなメタルバンドを中心に紹介してしまっているが、こういった現代的な音像のメタルバンドも多いので、いつかまとめて紹介したいところ。
Swarathma, "Raah-E-Fakira"
インドの伝統音楽とロックを融合したバンガロールのバンドの3枚目のアルバム。
これまで、Anand Bhaskar CollectiveやPineapple ExpressやPakhseeなど、インドの古典声楽とロックを融合したバンドはいくつも紹介してきたけど、このバンドはより土着的・大衆的なインドのフォーク(民謡)とロックとの融合!
朗々としつつも繊細なニュアンスのある古典声楽と違って、骨太で素朴な歌声のインド民謡とロックの組み合わせは、これまた非常に面白い仕上がりになっている。
ロックの部分がけっこう練られたアレンジになっているので、朴訥としたヴォーカルが入ってくると、その落差にずっこけつつも、だんだん「これはこれでアリかも…」と思わされてくるから不思議だ。
ヴォーカリストは同じくインド民謡歌手のRaghu Dixitの弟、Vasu Dixit.
インドでは古典と現代音楽との融合が当たり前のように行われていて、またそれが普通にリスナーに受け入れられてもいる。
(ヒンディー語以外のマーケットにはなかなか届かないだろうから)
Dhruv Visvanath, "The Lost Cause"
ニューデリーで活動するシンガーソングライターで、アメリカのAcoustic Guitar Magazineで30歳以下の偉大なギタリスト30名に選ばれたこともあるというDhruv Visvanath。
このアルバムでも、ほぼアコースティックギターとヴォーカルハーモニーだけでドラマティックな楽曲を構成することに成功している。
Paradigm Shift, "Sammukh"
また出た!プログレッシブ・メタル・バンド!
彼らは最近日本でも注目されているPineapple Express同様、伝統音楽の要素(声楽やバイオリン)を大胆に取り入れた音楽性のバンドだ。
この手のプログレ・ミーツ・インディアなバンドは数多いが、変拍子や複雑なフレーズを駆使するプログレとインドの古典音楽にそれだけ親和性があるということなのだろう(他に注目株としてはタミルのAgam、もう少しグランジっぽいところでデリーのAnand Bhaskar Collectiveなど)。
Enkore, "Bombay Soul"
ムンバイのバイリンガルラッパー(英語とヒンディー)Enkoreが、このブログでも何度も名前が出て来ているデリーの鬼才トラックメイカーSez on the Beatのプロデュースでリリースしたアルバム。
Sezはいつものトラップ色の強いトラックではなく、スムースでチルな質感の音作りを意識している。
ギターを中心にしたメロウなトラックにところどころ顔を出すインド風味が心地よい。
Skyharbor, "Sunshine Dust"
アメリカ在住(インド系米国人?)のメンバーを含むSkyharborは、日本のBabymetalの全米ツアーのオープニングアクトを任されるなど人気上昇中のメタルバンドだ。
このブログではついついデスメタル、スラッシュメタル、正統派ヘヴィーメタルなどのオールドスクールなメタルバンドを中心に紹介してしまっているが、こういった現代的な音像のメタルバンドも多いので、いつかまとめて紹介したいところ。
Swarathma, "Raah-E-Fakira"
インドの伝統音楽とロックを融合したバンガロールのバンドの3枚目のアルバム。
これまで、Anand Bhaskar CollectiveやPineapple ExpressやPakhseeなど、インドの古典声楽とロックを融合したバンドはいくつも紹介してきたけど、このバンドはより土着的・大衆的なインドのフォーク(民謡)とロックとの融合!
朗々としつつも繊細なニュアンスのある古典声楽と違って、骨太で素朴な歌声のインド民謡とロックの組み合わせは、これまた非常に面白い仕上がりになっている。
ロックの部分がけっこう練られたアレンジになっているので、朴訥としたヴォーカルが入ってくると、その落差にずっこけつつも、だんだん「これはこれでアリかも…」と思わされてくるから不思議だ。
ヴォーカリストは同じくインド民謡歌手のRaghu Dixitの弟、Vasu Dixit.
インドでは古典と現代音楽との融合が当たり前のように行われていて、またそれが普通にリスナーに受け入れられてもいる。
日本で同じようなことをしたら完全にイロモノだし、クールなものとして聴かれることもないだろう。
インド社会は急速に西欧化(ニアリーイコール資本主義化)しつつあるが、その根っこの部分には自分たちの文化や伝統の確固たる基盤があるのだ。
DCF_Shapes, "Live Vol.1"
インドの音楽シーンで活躍する一流プレイヤーによって構成されたファンクバンドのライブアルバムで、これが非常にかっこいい!
終始ファンキーなグルーヴにデジタル的な要素もうまくはまっていて、とにかく聴かせる、踊らせる。
ぜひライブで見てみたいバンドだ。
ちょっと渋さ知らズオーケストラみたいに聴こえるジャジーなところも気持ちいい。
ドラムにバンド名にもなっているDCFの別名を持つムンバイのセッションドラマーLindsey D'mello(2014年にDark Circle Factory名義で出したアルバムもかっこいい。DCFはその略称のようだ).
ギターにムンバイのインダストリアル・メタルバンドPentagramのRandolph.
サックスにインドを代表するジャズ・プレイヤーのRhys Sebastian D'souza.
'Funktastic'でラップを披露しているのはムンバイの老舗ヒップホップ・グループBombay Bassmentのメンバーでケニア出身のアフリカンであるBob katことBob Omulo.
ところで、インドのインディーズシーンの「ベテラン」である彼らの名前を見ると、英語のファーストネームやポルトガル語の苗字がずらり。インドのインディー音楽シーン創成期にクリスチャンのミュージシャンが果たした役割の大きさを再認識させられる。
Gabriel Daniel, "Conflicting"
バンガロールを拠点に活躍するオルタナティヴ系シンガー・ソングライターが、ドラマーとベースのサポートを加えて作ったアルバム。
いかにもシンガー・ソングライターといった叙情的な作風に、ところどころでポストロック的な要素やマスロックっぽい要素が光る。
Raghav Meattle, "Songs From Matchbox"
デリー出身のさわやか系シンガー・ソングライターのデビュー・アルバム。
60年代っぽくも聴こえるし、ちょっとジャック・ジョンソンみたいなサーフ系や西海岸系フォークを思わせる雰囲気もある楽曲は、どこか懐かしくて、そして完成度もとても高い。
インド社会は急速に西欧化(ニアリーイコール資本主義化)しつつあるが、その根っこの部分には自分たちの文化や伝統の確固たる基盤があるのだ。
DCF_Shapes, "Live Vol.1"
インドの音楽シーンで活躍する一流プレイヤーによって構成されたファンクバンドのライブアルバムで、これが非常にかっこいい!
終始ファンキーなグルーヴにデジタル的な要素もうまくはまっていて、とにかく聴かせる、踊らせる。
ぜひライブで見てみたいバンドだ。
ちょっと渋さ知らズオーケストラみたいに聴こえるジャジーなところも気持ちいい。
ドラムにバンド名にもなっているDCFの別名を持つムンバイのセッションドラマーLindsey D'mello(2014年にDark Circle Factory名義で出したアルバムもかっこいい。DCFはその略称のようだ).
ギターにムンバイのインダストリアル・メタルバンドPentagramのRandolph.
サックスにインドを代表するジャズ・プレイヤーのRhys Sebastian D'souza.
'Funktastic'でラップを披露しているのはムンバイの老舗ヒップホップ・グループBombay Bassmentのメンバーでケニア出身のアフリカンであるBob katことBob Omulo.
ところで、インドのインディーズシーンの「ベテラン」である彼らの名前を見ると、英語のファーストネームやポルトガル語の苗字がずらり。インドのインディー音楽シーン創成期にクリスチャンのミュージシャンが果たした役割の大きさを再認識させられる。
Gabriel Daniel, "Conflicting"
バンガロールを拠点に活躍するオルタナティヴ系シンガー・ソングライターが、ドラマーとベースのサポートを加えて作ったアルバム。
いかにもシンガー・ソングライターといった叙情的な作風に、ところどころでポストロック的な要素やマスロックっぽい要素が光る。
Raghav Meattle, "Songs From Matchbox"
デリー出身のさわやか系シンガー・ソングライターのデビュー・アルバム。
60年代っぽくも聴こえるし、ちょっとジャック・ジョンソンみたいなサーフ系や西海岸系フォークを思わせる雰囲気もある楽曲は、どこか懐かしくて、そして完成度もとても高い。
インドのミュージシャンでここまでアメリカっぽい空気を感じさせる人は珍しい。
と、ざっと10枚を紹介してみた。
メタル、ロック、ヒップホップ、ファンク、SSWとジャンルも多岐にわたり、それぞれかなり聴き応えのある作品が揃っているのが分かるだろう。
シングル10選のときは、オシャレ感重視の雰囲気ものが多かった印象だが、このアルバム10選ではよりアーティストの個性が強く出た作品がピックアップされている。
Paradigm ShiftやSwarathmaみたいにいかにもインドといった要素が入ったバンドも面白いし、SkyharborやDCF_Shapesは国籍に関係なくかっこいい音楽を作っている。
Raghav Meattleの普遍的なグッドメロディーを作曲する才能も覚えておきたい。
「音楽とインド」というテーマで記事を書くことが多いため、ついついインドならではの音楽性や背景のあるアーティストを取り上げることが多いのだけど、こんなふうに純粋に優れた音楽を作っているミュージシャンたちもかなり高いレベルにいることが改めて分かるアルバムたちだった。
気に入ったアーティストがいたら、ぜひみなさんのプレイリストに加えてみてください。
2017年のベストアルバムtop10と聴き比べて見るのも一興です。
それではまた!
★1月27日(日)ユジク阿佐ヶ谷にて「あまねき旋律」上映後にインド北東部ナガランド州の音楽シーンを語るトークイベントを行います
★凡平自選の2018年度のおすすめ記事はこちらからどうぞ!
と、ざっと10枚を紹介してみた。
メタル、ロック、ヒップホップ、ファンク、SSWとジャンルも多岐にわたり、それぞれかなり聴き応えのある作品が揃っているのが分かるだろう。
シングル10選のときは、オシャレ感重視の雰囲気ものが多かった印象だが、このアルバム10選ではよりアーティストの個性が強く出た作品がピックアップされている。
Paradigm ShiftやSwarathmaみたいにいかにもインドといった要素が入ったバンドも面白いし、SkyharborやDCF_Shapesは国籍に関係なくかっこいい音楽を作っている。
Raghav Meattleの普遍的なグッドメロディーを作曲する才能も覚えておきたい。
「音楽とインド」というテーマで記事を書くことが多いため、ついついインドならではの音楽性や背景のあるアーティストを取り上げることが多いのだけど、こんなふうに純粋に優れた音楽を作っているミュージシャンたちもかなり高いレベルにいることが改めて分かるアルバムたちだった。
気に入ったアーティストがいたら、ぜひみなさんのプレイリストに加えてみてください。
2017年のベストアルバムtop10と聴き比べて見るのも一興です。
それではまた!
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「軽刈田 凡平(かるかった ぼんべい)のアッチャーインディア 読んだり聞いたり考えたり」
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★1月27日(日)ユジク阿佐ヶ谷にて「あまねき旋律」上映後にインド北東部ナガランド州の音楽シーンを語るトークイベントを行います
★凡平自選の2018年度のおすすめ記事はこちらからどうぞ!
2019年01月14日
Rolling Stone Indiaが選ぶ2018年のベストシングルTop10!
先日の記事でインド北東部の2018年のベストソングスを紹介したけど、今回はRolling Stone Indiaが選んだインド全体の2018年のベストシングルTop10を紹介!
このRolling Stone India、インドのなかではオシャレというか気取っているというかサブカル気質というか、メジャーな映画音楽などではなく、インディーズ寄りの優れた音楽を紹介する傾向が強いメディアだ。
つまり、今回紹介する音楽はインドでは誰もが知っている大ヒットということではなく、売り上げや知名度に関係なく選ばれたグッドミュージックたちというわけ。
このラインナップを知ることで、今のインドのインディーズシーンでどんな音楽がかっこいいのかを把握する手がかりにもなるはず。
10曲が選ばれているけど順位はついていないようなので、元の記事で紹介されている順に書いていきます!
Parekh & Singh, "Summer Skin"
この手のランキングでは常連のオシャレ感が漂うコルカタのカラフルな「ドリームポップデュオ」。
ウェス・アンダーソンのポップな世界観に影響を受けた彼らの今作は、歌詞に出てくるウディ・アレンやビートルズといったモチーフがまた雰囲気づくりに一役かっている。
Calico, "Garnet Eye"
ムンバイのソフトロック・バンドによる洗練された楽曲。
メロウなグルーヴが心地よいアーバンポップ風の仕上がりだが、歌詞は「無常観」がテーマ。
Droolfox, "Descent"
バンガロールのエレクトロニカ/シンセウェイヴ・デュオがヴォーカリストのJitesh JadwaniとJoel Sakkariをゲストに迎えて作成したトラック。
ここまで紹介した音楽同様に無国籍なポップサウンドの楽曲はバンコクのローカルトレインの音から始まる。
ギターのグルーヴとメロウなヴォーカルが効いている、ダフト・パンク的な雰囲気もある曲だ。
Bloodywood, "Jee Veerey"
ニューデリーのメタルグループ、Bloodywoodはギター&プログラミングのKaran KatiyarとヴォーカルのJayant Bhadulaの2人組。
ボリウッドをもじったバンド名からも分かる通り、これまでカバー曲や企画ものっぽい曲を中心にリリースしていたが、今回はラッパーのRaoul Kerrと共演したフォークメタル(民族音楽の要素が入ったメタル)の曲をリリース。
リズムやヴォーカルがここまでメタルだとヨーロッパ的な響きに聞こえるのは必然なのだろうか。
ビデオの後半にもあるとおり、精神的に困難を抱えている人へのサポートに関する真剣なメッセージを伝える意図もあるようだ。
Hanita Bhambri, "Let Me Go"
Hanita Bhambriは世界的なホテルチェーンのAloft Hotelsによるオーディション企画、Project Aloft Starの2018年度アジア太平洋部門で優勝した女性シンガー。
その後ユニバーサルと契約し、コルカタを拠点にRadioheadやFoo Fightersも手がけたエンジニアのMiti Adhikariによるプロデュースでこの曲をリリースした。
Rolling Stone IndiaはAdeleやFlorence Welchのような英国フォークの雰囲気のある曲と書いている。
Prabh Deep and Seedhe Maut, "Class-Sikh Maut Vol.II"
ここまで、インドらしさ皆無の無国籍な英語ヴォーカルの作品が続いたけれど、ここにきてやっとヒンディー語でインドらしいトラックの楽曲が登場。
昨年の同誌が選ぶベストアルバムトップ10の1位に選ばれたデリーの実力派アンダーグラウンドラッパーPrabh Deepが同じくデリーのSeedhe Mautとコラボレーションしたこの作品は、Prabh Deepも所属する大注目ヒップホップレーベルAzadi Recordsからリリースされた。
まず耳に残るのはインド随一の気鋭のビートメーカー、Sez On The Beatの渾身のトラック。
時代の空気を纏いつつインドでしかありえない伝統音楽とのフュージョンになっている。
Seedhe MautはEncore ABJとCalmからなる二人組のバイリンガル・ラッパー(英語とヒンディー)で、この曲のパフォーマンスからはPrabh Deepに匹敵する確かなスキルが伺える。
The Tekina Collab, "Claiming Me"
The Tekina CollabはムンバイのシンガーソングライターAniket Mangrukarによるプロジェクトのようだ。
オサレな雰囲気で聴かせる1曲。
Azamaan Hoyvoy, "Everybody Looking For Love"
ジャズ、ソウル、電子音楽を融合した音楽性で活躍するムンバイのシンガー。
王道のソウルマナーに沿いつつもポリリズム的な展開が心地よいこの曲は、ヴォーカルがちょっと弱い気もするけどやりたいことは分かるし十分にかっこいい。
Takar Nabam, "Recending"
北東部アルナーチャル・プラデーシュ出身のニューデリーで活躍するシンガーソングライターの失恋をテーマにしたこの楽曲は、サウンド的には王道のロックだがブルージーでメランコリックなヴォーカルとグルーヴィーな演奏の妙が心地よい。
Yungsta and Frappe Ash "Nana"
Rolling Stone誌上で「インドからのRae Sremmurdへの回答」と評されているニューデリーの新鋭ラッパー二人組によるヘヴィートラップ。
(Rae Sremmurdはミシシッピ出身の新世代兄弟デュオで近々来日。ご存知ない方は各自チェックを)
派手さのないミュージックビデオにかえって本気が滲む(予算の都合?)。
スケボーとラップというインドではまだ若いストリートカルチャーの熱さがびんびん伝わってくる。
ざっと全曲を紹介させていただきました。
Prabh Deep and Seedhe Maut以外はインドらしさ皆無の無国籍サウンドが並んでいるが、インドもアジアでよく見られる土着的なものからの脱却をもって洗練とみなすという潮流の中にいるのだろう。
クオリティーもおしなべて高くて、洋楽のヒット曲に混じって流れても違和感のないような楽曲が並んでいる。
ここで紹介したような楽曲を聴きながらムンバイやデリーのハイセンスなエリアを歩けば、どこか外国の街角を歩いているような、世界中のどこでもないようなオシャレな街を歩いているような気分が味わえることだろう。
恣意的に洋楽的で都会的で人工的な楽曲たち。
全体的に何かに似ていると思っていたけど、やっと分かった。
それは90年代の日本の音楽シーンを席巻した渋谷系だ。
どこまでいっても歌謡曲臭の拭えないJ-POPやバンドブームを尻目に、潔癖なまでにドメスティックな要素を排して「センスの良さ」を競ったあのムーブメントだ。
あのころ、渋谷系のミュージシャンたちは、古今の洋楽の影響を糧に、古くて新しい自分たちの音楽を作り出していた。
インドのインディーズシーンも、今まさにそんな時代を迎えているのかもしれない。
そしてふだんこのブログで紹介している通り、このランキングには入っていないところで、伝統に目を背けずに、現代音楽との面白い融合に成功している作品がたくさんあるというのもインドの音楽シーンの豊饒さだ。
インドの音楽カルチャーは、日本で何十年もかけて起きた音楽シーンの進化、変化をここ10年ほどで一気に経験してきた。
日本でいうと、歌謡曲(=メインストリーム。インドでいえば映画音楽)が多様化、複雑化してきた80年代、バンドブームが勃興し若者が自分たちの音楽を奏でることがもてはやされた90年代前半、より洋楽的な洗練を目指した90年代後半、DJ文化が一般化しインターネットでより多くの音楽へのアクセスが可能になった2000年代以降、そして今日の世界の同時代的な音楽の流行。
あらゆる事象が一度に起きて盛り上がっているのがインドの音楽シーンの熱いところだ。
これからもインドの音楽シーンのいろんな側面を紹介してゆくのでヨロシクお願いします!
★1月27日(日)ユジク阿佐ヶ谷にて「あまねき旋律」上映後にインド北東部ナガランド州の音楽シーンを語るトークイベントを行います
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このRolling Stone India、インドのなかではオシャレというか気取っているというかサブカル気質というか、メジャーな映画音楽などではなく、インディーズ寄りの優れた音楽を紹介する傾向が強いメディアだ。
つまり、今回紹介する音楽はインドでは誰もが知っている大ヒットということではなく、売り上げや知名度に関係なく選ばれたグッドミュージックたちというわけ。
このラインナップを知ることで、今のインドのインディーズシーンでどんな音楽がかっこいいのかを把握する手がかりにもなるはず。
10曲が選ばれているけど順位はついていないようなので、元の記事で紹介されている順に書いていきます!
Parekh & Singh, "Summer Skin"
この手のランキングでは常連のオシャレ感が漂うコルカタのカラフルな「ドリームポップデュオ」。
ウェス・アンダーソンのポップな世界観に影響を受けた彼らの今作は、歌詞に出てくるウディ・アレンやビートルズといったモチーフがまた雰囲気づくりに一役かっている。
Calico, "Garnet Eye"
ムンバイのソフトロック・バンドによる洗練された楽曲。
メロウなグルーヴが心地よいアーバンポップ風の仕上がりだが、歌詞は「無常観」がテーマ。
Droolfox, "Descent"
バンガロールのエレクトロニカ/シンセウェイヴ・デュオがヴォーカリストのJitesh JadwaniとJoel Sakkariをゲストに迎えて作成したトラック。
ここまで紹介した音楽同様に無国籍なポップサウンドの楽曲はバンコクのローカルトレインの音から始まる。
ギターのグルーヴとメロウなヴォーカルが効いている、ダフト・パンク的な雰囲気もある曲だ。
Bloodywood, "Jee Veerey"
ニューデリーのメタルグループ、Bloodywoodはギター&プログラミングのKaran KatiyarとヴォーカルのJayant Bhadulaの2人組。
ボリウッドをもじったバンド名からも分かる通り、これまでカバー曲や企画ものっぽい曲を中心にリリースしていたが、今回はラッパーのRaoul Kerrと共演したフォークメタル(民族音楽の要素が入ったメタル)の曲をリリース。
リズムやヴォーカルがここまでメタルだとヨーロッパ的な響きに聞こえるのは必然なのだろうか。
ビデオの後半にもあるとおり、精神的に困難を抱えている人へのサポートに関する真剣なメッセージを伝える意図もあるようだ。
Hanita Bhambri, "Let Me Go"
Hanita Bhambriは世界的なホテルチェーンのAloft Hotelsによるオーディション企画、Project Aloft Starの2018年度アジア太平洋部門で優勝した女性シンガー。
その後ユニバーサルと契約し、コルカタを拠点にRadioheadやFoo Fightersも手がけたエンジニアのMiti Adhikariによるプロデュースでこの曲をリリースした。
Rolling Stone IndiaはAdeleやFlorence Welchのような英国フォークの雰囲気のある曲と書いている。
Prabh Deep and Seedhe Maut, "Class-Sikh Maut Vol.II"
ここまで、インドらしさ皆無の無国籍な英語ヴォーカルの作品が続いたけれど、ここにきてやっとヒンディー語でインドらしいトラックの楽曲が登場。
昨年の同誌が選ぶベストアルバムトップ10の1位に選ばれたデリーの実力派アンダーグラウンドラッパーPrabh Deepが同じくデリーのSeedhe Mautとコラボレーションしたこの作品は、Prabh Deepも所属する大注目ヒップホップレーベルAzadi Recordsからリリースされた。
まず耳に残るのはインド随一の気鋭のビートメーカー、Sez On The Beatの渾身のトラック。
時代の空気を纏いつつインドでしかありえない伝統音楽とのフュージョンになっている。
Seedhe MautはEncore ABJとCalmからなる二人組のバイリンガル・ラッパー(英語とヒンディー)で、この曲のパフォーマンスからはPrabh Deepに匹敵する確かなスキルが伺える。
The Tekina Collab, "Claiming Me"
The Tekina CollabはムンバイのシンガーソングライターAniket Mangrukarによるプロジェクトのようだ。
オサレな雰囲気で聴かせる1曲。
Azamaan Hoyvoy, "Everybody Looking For Love"
ジャズ、ソウル、電子音楽を融合した音楽性で活躍するムンバイのシンガー。
王道のソウルマナーに沿いつつもポリリズム的な展開が心地よいこの曲は、ヴォーカルがちょっと弱い気もするけどやりたいことは分かるし十分にかっこいい。
Takar Nabam, "Recending"
北東部アルナーチャル・プラデーシュ出身のニューデリーで活躍するシンガーソングライターの失恋をテーマにしたこの楽曲は、サウンド的には王道のロックだがブルージーでメランコリックなヴォーカルとグルーヴィーな演奏の妙が心地よい。
Yungsta and Frappe Ash "Nana"
Rolling Stone誌上で「インドからのRae Sremmurdへの回答」と評されているニューデリーの新鋭ラッパー二人組によるヘヴィートラップ。
(Rae Sremmurdはミシシッピ出身の新世代兄弟デュオで近々来日。ご存知ない方は各自チェックを)
派手さのないミュージックビデオにかえって本気が滲む(予算の都合?)。
スケボーとラップというインドではまだ若いストリートカルチャーの熱さがびんびん伝わってくる。
ざっと全曲を紹介させていただきました。
Prabh Deep and Seedhe Maut以外はインドらしさ皆無の無国籍サウンドが並んでいるが、インドもアジアでよく見られる土着的なものからの脱却をもって洗練とみなすという潮流の中にいるのだろう。
クオリティーもおしなべて高くて、洋楽のヒット曲に混じって流れても違和感のないような楽曲が並んでいる。
ここで紹介したような楽曲を聴きながらムンバイやデリーのハイセンスなエリアを歩けば、どこか外国の街角を歩いているような、世界中のどこでもないようなオシャレな街を歩いているような気分が味わえることだろう。
恣意的に洋楽的で都会的で人工的な楽曲たち。
全体的に何かに似ていると思っていたけど、やっと分かった。
それは90年代の日本の音楽シーンを席巻した渋谷系だ。
どこまでいっても歌謡曲臭の拭えないJ-POPやバンドブームを尻目に、潔癖なまでにドメスティックな要素を排して「センスの良さ」を競ったあのムーブメントだ。
あのころ、渋谷系のミュージシャンたちは、古今の洋楽の影響を糧に、古くて新しい自分たちの音楽を作り出していた。
インドのインディーズシーンも、今まさにそんな時代を迎えているのかもしれない。
そしてふだんこのブログで紹介している通り、このランキングには入っていないところで、伝統に目を背けずに、現代音楽との面白い融合に成功している作品がたくさんあるというのもインドの音楽シーンの豊饒さだ。
インドの音楽カルチャーは、日本で何十年もかけて起きた音楽シーンの進化、変化をここ10年ほどで一気に経験してきた。
日本でいうと、歌謡曲(=メインストリーム。インドでいえば映画音楽)が多様化、複雑化してきた80年代、バンドブームが勃興し若者が自分たちの音楽を奏でることがもてはやされた90年代前半、より洋楽的な洗練を目指した90年代後半、DJ文化が一般化しインターネットでより多くの音楽へのアクセスが可能になった2000年代以降、そして今日の世界の同時代的な音楽の流行。
あらゆる事象が一度に起きて盛り上がっているのがインドの音楽シーンの熱いところだ。
これからもインドの音楽シーンのいろんな側面を紹介してゆくのでヨロシクお願いします!
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「軽刈田 凡平(かるかった ぼんべい)のアッチャーインディア 読んだり聞いたり考えたり」
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★凡平自選の2018年度のおすすめ記事はこちらからどうぞ!
2019年01月10日
1月27日(日)ユジク阿佐ヶ谷にて「あまねき旋律」上映後トークショーを行います!
このブログでもたびたび紹介しているインド北東部ナガランドを舞台にしたドキュメンタリー映画「あまねき旋律」の東京での再上映に合わせて、なんと不肖私こと、軽刈田 凡平がユジク阿佐ヶ谷での上映後にナガランドの音楽シーンについてお話しさせていただくことになりました。
こんなふざけた名前の人間に声をかけていただいた関係者各位に感謝です!
この上映は「旅するインド映画特集」という企画の一環で、近年話題の「きっとうまく行く」「PK」や「マダム・イン・ニューヨーク」そして「バーフバリ」といった映画と合わせて上映されるもの。
ボリウッド(よく誤解されるけどインド映画全般ではなくヒンディー語映画を指す言葉です)やテルグ語などの劇映画作品の中で、この「あまねき旋律」は超異色の北東部を舞台にしたドキュメンタリーだ!
これは燃える!
インド北東部を勝手に代表して(同じモンゴロイドとして)がんばります!
会場のユジク阿佐ヶ谷さんのホームページにもご覧の通り。
カルカッタ ボンベイさんによる「舞台挨拶」!
まったく映画の製作に携わっておらず、登場もしていないのに舞台挨拶とは!
まさか自分の人生で「舞台挨拶」なるものを経験する日が来るとは思わなかった…。
さらにクリックしてみたら…
今度はトークショーと来た!
わしゃただのブログ書きなのに、ありがたいやら恐れ多いやら。
この「あまねき旋律(しらべ)」は、山形ドキュメンタリー映画祭で日本映画監督協会賞と奨励賞をダブル受賞したのち、昨年10月6日にポレポレ東中野で上映されて以来、全国に上映の輪が広がり、このたび東京での凱旋再上映となった非常に評価の高い作品。
この映画の主役は、棚田が広がるナガランド州南部のペク地方でチャケサン・ナガ族に歌い継がれている伝統的な歌唱だ。
労働歌でもあるこの歌は、近年キリスト教への改宗によって途絶えたかと思われたものの、今日までその素朴な暮らしの中で農作業とともにコミュニケーションの手段として歌い継がれている。
農村の労働歌と侮るなかれ、複雑なハーモニーと即興で哲学的な歌詞を乗せたその歌には、単純に形容できない深さと味わいがある。
生活とは?労働とは?
仲間とは?喜びとは?
娯楽とは?生きる意味とは?
決して声高に何かを主張する作品ではないが、この映画はひとびとの根源に関わる問いを静かに、しかしまっすぐに投げかけてくる。
そして、インドでは周縁的な存在であることを余儀なくされているナガの歴史とは?
今回のトークイベントでは、映画で語られている以外の驚くべきナガの側面を紹介するつもり。
実際にナガランドの最近の音楽を聴いてもらいながらお話しします。
改めてご案内すると、軽刈田 凡平トークは1月27日(日)ユジク阿佐ヶ谷にて。
16:40開始の会の上映後にトークを行い、18:30頃に終了の見込みです。
詳細はユジク阿佐ヶ谷さんのホームページからご確認を。
みなさん是非お越しください。
この「あまねき旋律」、インド映画やインド音楽に興味があるとかないとかに関係なく、もちろん私のトークも置いておいて、どんな方にでもおすすめしたい映画です。
ユジク阿佐ヶ谷での上映後もまだまだ都内や全国での上映が続くようなので、この機会に見られない方もぜひ見てみてください!
上映館情報はこちらから!
http://amaneki-shirabe.com/theater.html
若干トークのネタバレになるかもしれないけど、これまでに書いたナガランド関連の記事を貼り付けておきます。
特集ナガランドその1 辺境の山岳地帯に響く歌声 映画「あまねき旋律」
特集ナガランドその2 神の国となりし首刈りの地に悪魔の叫びが木霊する!悪魔崇拝とブラックメタル
特集ナガランドその3 ナガの地で花開く日本文化 ナガランドのオタク・カルチャー事情とは?
インド北東部ナガランドのクリスマスソング!
それでは1月27日(日)、ユジク阿佐ヶ谷でお待ちしてます!
凡平自選の2018年度のおすすめ記事はこちらからどうぞ!
こんなふざけた名前の人間に声をかけていただいた関係者各位に感謝です!
この上映は「旅するインド映画特集」という企画の一環で、近年話題の「きっとうまく行く」「PK」や「マダム・イン・ニューヨーク」そして「バーフバリ」といった映画と合わせて上映されるもの。
ボリウッド(よく誤解されるけどインド映画全般ではなくヒンディー語映画を指す言葉です)やテルグ語などの劇映画作品の中で、この「あまねき旋律」は超異色の北東部を舞台にしたドキュメンタリーだ!
これは燃える!
インド北東部を勝手に代表して(同じモンゴロイドとして)がんばります!
会場のユジク阿佐ヶ谷さんのホームページにもご覧の通り。
カルカッタ ボンベイさんによる「舞台挨拶」!
まったく映画の製作に携わっておらず、登場もしていないのに舞台挨拶とは!
まさか自分の人生で「舞台挨拶」なるものを経験する日が来るとは思わなかった…。
さらにクリックしてみたら…
今度はトークショーと来た!
わしゃただのブログ書きなのに、ありがたいやら恐れ多いやら。
この「あまねき旋律(しらべ)」は、山形ドキュメンタリー映画祭で日本映画監督協会賞と奨励賞をダブル受賞したのち、昨年10月6日にポレポレ東中野で上映されて以来、全国に上映の輪が広がり、このたび東京での凱旋再上映となった非常に評価の高い作品。
この映画の主役は、棚田が広がるナガランド州南部のペク地方でチャケサン・ナガ族に歌い継がれている伝統的な歌唱だ。
労働歌でもあるこの歌は、近年キリスト教への改宗によって途絶えたかと思われたものの、今日までその素朴な暮らしの中で農作業とともにコミュニケーションの手段として歌い継がれている。
農村の労働歌と侮るなかれ、複雑なハーモニーと即興で哲学的な歌詞を乗せたその歌には、単純に形容できない深さと味わいがある。
生活とは?労働とは?
仲間とは?喜びとは?
娯楽とは?生きる意味とは?
決して声高に何かを主張する作品ではないが、この映画はひとびとの根源に関わる問いを静かに、しかしまっすぐに投げかけてくる。
そして、インドでは周縁的な存在であることを余儀なくされているナガの歴史とは?
今回のトークイベントでは、映画で語られている以外の驚くべきナガの側面を紹介するつもり。
実際にナガランドの最近の音楽を聴いてもらいながらお話しします。
改めてご案内すると、軽刈田 凡平トークは1月27日(日)ユジク阿佐ヶ谷にて。
16:40開始の会の上映後にトークを行い、18:30頃に終了の見込みです。
詳細はユジク阿佐ヶ谷さんのホームページからご確認を。
みなさん是非お越しください。
この「あまねき旋律」、インド映画やインド音楽に興味があるとかないとかに関係なく、もちろん私のトークも置いておいて、どんな方にでもおすすめしたい映画です。
ユジク阿佐ヶ谷での上映後もまだまだ都内や全国での上映が続くようなので、この機会に見られない方もぜひ見てみてください!
上映館情報はこちらから!
http://amaneki-shirabe.com/theater.html
若干トークのネタバレになるかもしれないけど、これまでに書いたナガランド関連の記事を貼り付けておきます。
特集ナガランドその1 辺境の山岳地帯に響く歌声 映画「あまねき旋律」
特集ナガランドその2 神の国となりし首刈りの地に悪魔の叫びが木霊する!悪魔崇拝とブラックメタル
特集ナガランドその3 ナガの地で花開く日本文化 ナガランドのオタク・カルチャー事情とは?
インド北東部ナガランドのクリスマスソング!
それでは1月27日(日)、ユジク阿佐ヶ谷でお待ちしてます!
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凡平自選の2018年度のおすすめ記事はこちらからどうぞ!
2019年01月09日
Meraki Studiosが選ぶ2018年インド北東部のベストミュージックビデオ18選!
改めまして、軽刈田 凡平です。
Meraki Studiosが選出した2018年のインド北東部のインディーアーティストによるベストミュージックビデオが発表されたので、今回はそのなかでいくつか印象的だったものを紹介します。
このMeraki Studios、正直に言うと私もどんなところかよく知らないのだけど、彼らのウェブサイトによると、どうやらマニプル州インパールを拠点に広告、デザイン、録音、撮影、アーティストのブッキングとマネジメント、服飾販売などを手がけているところらしい。
詳細はリンクを参照してもらうこととして、選ばれた楽曲は以下の18本。
アーティスト名、曲名、ジャンル、出身地(活動拠点?)の順に紹介します。
・Pelenuo Yhome 'Build A Story' フォーク / ナガランド州コヒマ
・Fame The Band 'Autumn' ロック / メガラヤ州(現在はムンバイを拠点に活動)
・Lik Lik Lei 'Eshei' ポップ / マニプル州インパール
・The Twin Effect 'Chasing Shadows' ポップ / ナガランド州ディマプル
・Avora Records 'Sunday' ロック / ミゾラム州アイゾウル
・Fireflood 'Rain' ロック / ナガランド州ディマプル
・Tali Angh 'City Of Lights' ポップ / ナガランド州コヒマ
・Lucid Recess 'Blindmen' オルタナティブ / アッサム州グワハティ
・Featherheadds 'Haokui' フュージョン・ロック / マニプル州ウクルル
・Big-Ri And Meba Ofilia 'Done Talking' R&B / メガラヤ州シロン
・Avora Records '23:00' ロック / ミゾラム州アイゾウル
・Lo! Peninsula 'Another Divine Joke' ポストロック / マニプル州インパール
・Lateral 'Hepaah' ポップ / アッサム州グワハティ
・Sacred Secrecy 'Shitanagar' デスメタル / アルナーチャル・プラデーシュ州イタナガル
・Blue Temptation 'Blessing' ロック / メガラヤ州シロン
・Lily 'Unchained' EDM / メガラヤ州シロン
・Matilda & The Quest 'Thinlung Hliam' ポップ / ミゾラム州アイゾウル
・Joshua Shohe & Zonimong Imchen 'Never Let You Down' ポップ / ナガランド州
まず目につくのはロック系の多さ!
ジャンル分けは独断かつ適当だが、それを差し引いても、ヒップホップ系やエレクトロニカ系はほとんどいなくて、ロック系が大半を占めている。
北東部はもともとロックが盛んな土地で、メガラヤ州シロンは「インドのロックの首都」とも言われている街だ(今回もシロンから3バンドが選出されている)。
ロック系の中でもFirefloodみたいなハードロック系からAvora Recordsみたいなギターポップ系、Blue Temptationみたいなブルースロック系、さらにはポストロックやデスメタルまで多様なタイプのバンドが揃っている。
そしてもうひとつ気になったのはナガランドのバンドの多さ!
州別に言うと、ナガランドが5バンド、メガラヤが4バンド、マニプルが3バンド、ミゾラムとアッサムが2バンドずつ、アルナーチャル・プラデーシュ州が1バンド。
これまでもナガランドについてはいろいろと書いてきたけど(全3回のナガランド特集はこちらから)、改めてナガの地の音楽カルチャーの強さを感じさせられた。
それでは、この18曲を聴いてとくに印象に残ったビデオをいくつか紹介します。
Lik Lik Leiは、日本軍の悪名高いインパール作戦で有名なマニプル州インパールのバンド。
このデビュー曲の'Eshei'はマニプルの映画、その名も'Iriguchi(入り口)'のサウンドトラックからの1曲。
ミュージックビデオを見て分かる通り、日本軍の兵士が残した秘密の箱を見つけた現代のマニプリの若者が主人公の映画のようだ。
映画の背景にある重い歴史(大戦後、マニプル州はナガランドと同様に過酷な独立闘争を経験している)と、ビデオに出てくる現代的な若者、そしてウクレレを使った軽やかな音楽の対比が面白い。
アッサムのLucid Recessは2004年結成のベテラン・オルタナティブメタルバンド。
この曲ではサウンドガーデンやニルヴァーナを思わせるグランジ的なサウンドを聴かせている。
Featherheadsはマニプル州の小さな街、ウクルルのバンド。
ウクルルも日本軍の悲劇的な激戦地となった場所だ。
個人的には、今回のリストの中でいちばん強烈に印象に残ったビデオだ。
音楽的にはおそらく地元部族の伝統音楽とロックとのフュージョンということになるのだろう。
注目すべきは彼らの衣装で、なんと地元の民族衣装にインディアンの民族衣装を大胆に合わせている。
ここで言うインディアンはインド人ではなくアメリカ先住民のいわゆるネイティブアメリカンのこと。
インド人(インディアン)のなかでは周縁的な存在であることを余儀なくされている北東部マニプル州の彼らが、同じ「インディアン」と呼ばれながらも、やはり国家の中で周縁的な立場に置かれているアメリカ先住民の格好をしているというわけだ。
そしてマニプリとアメリカ先住民は「追いやられた先住民族」という点で共通している。
Meraki Studiosが選出した2018年のインド北東部のインディーアーティストによるベストミュージックビデオが発表されたので、今回はそのなかでいくつか印象的だったものを紹介します。
このMeraki Studios、正直に言うと私もどんなところかよく知らないのだけど、彼らのウェブサイトによると、どうやらマニプル州インパールを拠点に広告、デザイン、録音、撮影、アーティストのブッキングとマネジメント、服飾販売などを手がけているところらしい。
詳細はリンクを参照してもらうこととして、選ばれた楽曲は以下の18本。
アーティスト名、曲名、ジャンル、出身地(活動拠点?)の順に紹介します。
・Pelenuo Yhome 'Build A Story' フォーク / ナガランド州コヒマ
・Fame The Band 'Autumn' ロック / メガラヤ州(現在はムンバイを拠点に活動)
・Lik Lik Lei 'Eshei' ポップ / マニプル州インパール
・The Twin Effect 'Chasing Shadows' ポップ / ナガランド州ディマプル
・Avora Records 'Sunday' ロック / ミゾラム州アイゾウル
・Fireflood 'Rain' ロック / ナガランド州ディマプル
・Tali Angh 'City Of Lights' ポップ / ナガランド州コヒマ
・Lucid Recess 'Blindmen' オルタナティブ / アッサム州グワハティ
・Featherheadds 'Haokui' フュージョン・ロック / マニプル州ウクルル
・Big-Ri And Meba Ofilia 'Done Talking' R&B / メガラヤ州シロン
・Avora Records '23:00' ロック / ミゾラム州アイゾウル
・Lo! Peninsula 'Another Divine Joke' ポストロック / マニプル州インパール
・Lateral 'Hepaah' ポップ / アッサム州グワハティ
・Sacred Secrecy 'Shitanagar' デスメタル / アルナーチャル・プラデーシュ州イタナガル
・Blue Temptation 'Blessing' ロック / メガラヤ州シロン
・Lily 'Unchained' EDM / メガラヤ州シロン
・Matilda & The Quest 'Thinlung Hliam' ポップ / ミゾラム州アイゾウル
・Joshua Shohe & Zonimong Imchen 'Never Let You Down' ポップ / ナガランド州
まず目につくのはロック系の多さ!
ジャンル分けは独断かつ適当だが、それを差し引いても、ヒップホップ系やエレクトロニカ系はほとんどいなくて、ロック系が大半を占めている。
北東部はもともとロックが盛んな土地で、メガラヤ州シロンは「インドのロックの首都」とも言われている街だ(今回もシロンから3バンドが選出されている)。
ロック系の中でもFirefloodみたいなハードロック系からAvora Recordsみたいなギターポップ系、Blue Temptationみたいなブルースロック系、さらにはポストロックやデスメタルまで多様なタイプのバンドが揃っている。
そしてもうひとつ気になったのはナガランドのバンドの多さ!
州別に言うと、ナガランドが5バンド、メガラヤが4バンド、マニプルが3バンド、ミゾラムとアッサムが2バンドずつ、アルナーチャル・プラデーシュ州が1バンド。
これまでもナガランドについてはいろいろと書いてきたけど(全3回のナガランド特集はこちらから)、改めてナガの地の音楽カルチャーの強さを感じさせられた。
それでは、この18曲を聴いてとくに印象に残ったビデオをいくつか紹介します。
Lik Lik Leiは、日本軍の悪名高いインパール作戦で有名なマニプル州インパールのバンド。
このデビュー曲の'Eshei'はマニプルの映画、その名も'Iriguchi(入り口)'のサウンドトラックからの1曲。
ミュージックビデオを見て分かる通り、日本軍の兵士が残した秘密の箱を見つけた現代のマニプリの若者が主人公の映画のようだ。
映画の背景にある重い歴史(大戦後、マニプル州はナガランドと同様に過酷な独立闘争を経験している)と、ビデオに出てくる現代的な若者、そしてウクレレを使った軽やかな音楽の対比が面白い。
アッサムのLucid Recessは2004年結成のベテラン・オルタナティブメタルバンド。
この曲ではサウンドガーデンやニルヴァーナを思わせるグランジ的なサウンドを聴かせている。
Featherheadsはマニプル州の小さな街、ウクルルのバンド。
ウクルルも日本軍の悲劇的な激戦地となった場所だ。
個人的には、今回のリストの中でいちばん強烈に印象に残ったビデオだ。
音楽的にはおそらく地元部族の伝統音楽とロックとのフュージョンということになるのだろう。
注目すべきは彼らの衣装で、なんと地元の民族衣装にインディアンの民族衣装を大胆に合わせている。
ここで言うインディアンはインド人ではなくアメリカ先住民のいわゆるネイティブアメリカンのこと。
インド人(インディアン)のなかでは周縁的な存在であることを余儀なくされている北東部マニプル州の彼らが、同じ「インディアン」と呼ばれながらも、やはり国家の中で周縁的な立場に置かれているアメリカ先住民の格好をしているというわけだ。
そしてマニプリとアメリカ先住民は「追いやられた先住民族」という点で共通している。
なにやら非常にややこしいが、おそらく彼らはそこに共感と皮肉を見出してこの格好をしているのではないか。
って、単にファッションとして取り入れているだけかもしれないけど、いずれにしても興味深い一致ではある。
同じくマニプル州のLo! Peninsulaはシューゲイザー、ドリームポップ、サイケロックを標榜するバンドで、曲によってはポストロック的な響きを持つ演奏をすることもある(このへんはジャンルのボーダーが曖昧な部分ではあるけれども)。
さっきのFeatherheadsとはうってかわって、とてもインドの山奥から出てきたとは思えない(失礼!)サウンド!
彼らはシアトルのカレッジラジオ局KEXPで紹介されたこともあるようだ。
ポストロックというジャンル字体はもはや世界中のどこでも珍しいものではなくなっているけれども、それでも今回紹介する北東部のバンドの中で彼らの存在感は群を抜いている。
って、単にファッションとして取り入れているだけかもしれないけど、いずれにしても興味深い一致ではある。
同じくマニプル州のLo! Peninsulaはシューゲイザー、ドリームポップ、サイケロックを標榜するバンドで、曲によってはポストロック的な響きを持つ演奏をすることもある(このへんはジャンルのボーダーが曖昧な部分ではあるけれども)。
さっきのFeatherheadsとはうってかわって、とてもインドの山奥から出てきたとは思えない(失礼!)サウンド!
彼らはシアトルのカレッジラジオ局KEXPで紹介されたこともあるようだ。
ポストロックというジャンル字体はもはや世界中のどこでも珍しいものではなくなっているけれども、それでも今回紹介する北東部のバンドの中で彼らの存在感は群を抜いている。
他にも尖っているバンドはあるが、彼らだけは世界中の別の時空と共鳴しているかのような印象を受けた。
ナガランドのJosua Shohe & Zonimong Imochenの'Never Let You Down'はZonimongのヒューマンビートボックスが全編にフィーチャーされた曲。
歌もちょっと弱いし、とりあえず地元で撮ったみたいなビデオも適当な印象だけど、意欲的な試みではある。
すでに紹介してきたバンドたちもおさらい。
日本のMonoがトリを務めたZiro Festivalにも出演したAvora Recordsは2曲でノミネート。
'Sunday'はどことなく1990年代の日本のバンドを思わせるミュージックビデオだ。
同じくZiro Festivalにも出演していたBlue Temptationはレニー・クラヴィッツみたいなシブいブルースロック!
MTV EMA2018のベストインド人アーティストに選ばれたBig-Ri& Meba Ofiliaも当然ランクイン。
このブログ最初のインタビューにも協力してくれたTana Doni率いるSacred Secrecyが地元イタナガルを強烈にディスっているブルータル・デスメタル'Shitanagar'でノミネート!
少々の荒削りさとびっくりするようなセンスが共存している北東部のシーン、今後も注目していきたいと思います!
そして今年は北東部が先になってしまったけど、メインランドの2018年を代表する曲やアルバムもまた紹介します!
それでは!
凡平自選の2018年度のおすすめ記事はこちらからどうぞ!
ナガランドのJosua Shohe & Zonimong Imochenの'Never Let You Down'はZonimongのヒューマンビートボックスが全編にフィーチャーされた曲。
歌もちょっと弱いし、とりあえず地元で撮ったみたいなビデオも適当な印象だけど、意欲的な試みではある。
すでに紹介してきたバンドたちもおさらい。
日本のMonoがトリを務めたZiro Festivalにも出演したAvora Recordsは2曲でノミネート。
'Sunday'はどことなく1990年代の日本のバンドを思わせるミュージックビデオだ。
同じくZiro Festivalにも出演していたBlue Temptationはレニー・クラヴィッツみたいなシブいブルースロック!
MTV EMA2018のベストインド人アーティストに選ばれたBig-Ri& Meba Ofiliaも当然ランクイン。
このブログ最初のインタビューにも協力してくれたTana Doni率いるSacred Secrecyが地元イタナガルを強烈にディスっているブルータル・デスメタル'Shitanagar'でノミネート!
少々の荒削りさとびっくりするようなセンスが共存している北東部のシーン、今後も注目していきたいと思います!
そして今年は北東部が先になってしまったけど、メインランドの2018年を代表する曲やアルバムもまた紹介します!
それでは!
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「軽刈田 凡平(かるかった ぼんべい)のアッチャーインディア 読んだり聞いたり考えたり」
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凡平自選の2018年度のおすすめ記事はこちらからどうぞ!
2019年01月05日
インドのインディーズシーンの歴史その10 インダストリアル・メタルバンド Pentagram
インドの音楽専門チャンネル、'VH1 Sound Nation'が選んだ、インドのインディーミュージックシーンの歴史に残る73曲を紹介するこの企画。
久しぶりの今回は記念すべき10回目!
今回紹介するのは、1994年にムンバイで結成されたバンド、Pentagram.
このリストに入っているのは1996年に発表したデビューアルバム'We Are Not Listening'からの楽曲'Ignorant One'だけど、あいにくスタジオ音源が見つからず、楽曲的にもなんかイマイチだったので、ここは独断で同じアルバムから'The Price Of Bullets'をお送りさせていただきます!
Pentagramはヘヴィロックにエレクトロ/インダストリアル的なアプローチも取り入れたバンドで、Wikipediaによると初期にはSeal、Depeche Mode、Prodigyなどのカバーをしたこともあったという。
この曲では、大胆にラップが導入されており、中間部の古典音楽風のパートもなかなかうまく組み込まれている。
90年代のインドのロック事情を考えると、1996年にこの音楽性は「かなり早い」と言える。
当時からちゃんとファンがいたのか心配になるくらいだ。
より大々的にエレクトロ・ロックを取り入れたのは2002年に発表した2枚目のアルバム'Up'からで、2005年にはイギリスのグラストンベリー・ミュージック・フェスティバルにインドのバンドとしては初の出演を果たすなど、2000年代に入ってからはさらに活躍の幅を広げた。
2006年のアルバム'It's Ok, It's All Good'から、かなりエレクトロ色が強い、'Electric'
同じアルバムから、さらにポップなメロディーの'Voice'
2011年のアルバム'Bloodywood'から、ムンバイの有名なお祭り、Ganesh Visarjanで撮影された'Tomorrow's Decided'.
世界的な視点で見たら、とくに新しいことをやっているわけではないかもしれないが、彼らもまたインドのインディー音楽史のなかではインダストリアル・メタルのパイオニアということになる。
それにしても、ここまでインド側(在外インド系アーティストではなく)の紹介してきたミュージシャンはほぼ例外なくヘヴィーロック系。
音楽途上国にさまざまな音楽文化が流入するとき、まずいちばん始めにメタルが入ってくるという話があるが、インドのインディーシーンもそんなふうに発展していったのだと思うとなかなかに感慨深いものがある。
次回の「インドのインディーズシーンの歴史」はまた在外インド系アーティストを紹介します!
それでは、また!
凡平自選の2018年度のおすすめ記事はこちらからどうぞ!
久しぶりの今回は記念すべき10回目!
今回紹介するのは、1994年にムンバイで結成されたバンド、Pentagram.
このリストに入っているのは1996年に発表したデビューアルバム'We Are Not Listening'からの楽曲'Ignorant One'だけど、あいにくスタジオ音源が見つからず、楽曲的にもなんかイマイチだったので、ここは独断で同じアルバムから'The Price Of Bullets'をお送りさせていただきます!
Pentagramはヘヴィロックにエレクトロ/インダストリアル的なアプローチも取り入れたバンドで、Wikipediaによると初期にはSeal、Depeche Mode、Prodigyなどのカバーをしたこともあったという。
この曲では、大胆にラップが導入されており、中間部の古典音楽風のパートもなかなかうまく組み込まれている。
90年代のインドのロック事情を考えると、1996年にこの音楽性は「かなり早い」と言える。
当時からちゃんとファンがいたのか心配になるくらいだ。
より大々的にエレクトロ・ロックを取り入れたのは2002年に発表した2枚目のアルバム'Up'からで、2005年にはイギリスのグラストンベリー・ミュージック・フェスティバルにインドのバンドとしては初の出演を果たすなど、2000年代に入ってからはさらに活躍の幅を広げた。
2006年のアルバム'It's Ok, It's All Good'から、かなりエレクトロ色が強い、'Electric'
同じアルバムから、さらにポップなメロディーの'Voice'
2011年のアルバム'Bloodywood'から、ムンバイの有名なお祭り、Ganesh Visarjanで撮影された'Tomorrow's Decided'.
世界的な視点で見たら、とくに新しいことをやっているわけではないかもしれないが、彼らもまたインドのインディー音楽史のなかではインダストリアル・メタルのパイオニアということになる。
それにしても、ここまでインド側(在外インド系アーティストではなく)の紹介してきたミュージシャンはほぼ例外なくヘヴィーロック系。
音楽途上国にさまざまな音楽文化が流入するとき、まずいちばん始めにメタルが入ってくるという話があるが、インドのインディーシーンもそんなふうに発展していったのだと思うとなかなかに感慨深いものがある。
次回の「インドのインディーズシーンの歴史」はまた在外インド系アーティストを紹介します!
それでは、また!
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2019年01月01日
解題 新作落語「ガネーシャ」
改めまして、新年あけましておめでとうございます。
ちょうど1年ほど前、何をトチ狂ったか、インド神話を落語にしてみよう!という訳のわからないアイデアが降って湧いてきて、この「ガネーシャ」を一気に書き上げました。
(新作落語「ガネーシャ」へのリンクはこちら)
書いてはみたものの、いつもインドのロックだのヒップホップだのと書いているのに急に「新作落語」っていうのもちょっと唐突すぎるよなあ、というあたり前すぎることに気づいたのですが、やはりせっかく考えたものを出さずにいるというのは宿便のような快からぬ感覚があり、「正月に出すんならいいか」というわけのわからぬ理由にかこつけて、1年近くのお蔵入り期間を経てようやくアップしてみた次第です。
落語の筋書きとしても実に拙く、また神話の紹介としても不出来なことこの上ない(この下ないと言うべきか)この「ガネーシャ」ですが、恥ずかしながら出来の悪い子ほど可愛いというような気持ちでいるのもまた確かでして、蛇足どころかムカデにさらに足を加えるような無粋の極みではございますが、噺のはしばしに出てくるインド特有の事柄について、少しばかし解説をしたためましたので、ぜひこちらもお読みいただけましたら幸いでございます。
読んだけどつまらなかった、という方については、別に解説を読んだところで笑えてくるものでもないんですけど、お時間がございましたらどうかお読みください。
七福神:めでたい七福神のうちインド由来の神様は3人。
大黒天は「マハーカーラ」というシヴァの別名が元になっている。
この噺でも分かる通りシヴァはけっこうワイルドな神様だけど、大黒天になると福の神ってことになる。
毘沙門天は「クベーラ」という今のインドではマイナーな神様が原型。
「クベーラ」は富と財宝の神だったが、これは逆に毘沙門天になると武神になるのが面白い。
弁財天のルーツは学問と芸術の神「サラスヴァティー」で、インドでも今も広く信仰されている。
サラスヴァティーが持っているのは、琵琶の原型になったヴィーナというインドの楽器。
(画像出展:Wikipedia)
インドの神様の数:日本よりさらにスケールが大きくて、八百万どころか3,300万の神様がいることになっています。もちろん、本当にそんなにいるわけではなくて、「とにかくたくさんいる」ということの比喩表現なんでしょうけど、「ひょっとしたら本当にそれくらいいるかも」と思わせる何かがあります、インドには。
印度・天竺:落語の舞台となった江戸時代後期のインドは、地域にもよるけどイスラーム王朝のムガル帝国かイギリス統治時代だった。日本における天竺のイメージは仏教の故郷だが、当時仏教はすでにインドでは衰退して久しく、現代同様、大多数がヒンドゥー教を信仰していた。
ちなみにインドの仏教王朝といえば11世紀ごろまで栄えていたガンダーラ王朝が有名だが、ガンダーラの所在地は、現在のインド領の北西にあたるパキスタンやアフガニスタンのあたりだ。
クリシュナ:マハーバーラタに登場する英雄神。プレイボーイのイケメンで笛を持った姿で描かれる(確かに牛若丸的要素が強い)。その後、ヴィシュヌ神の化身の一つという扱いになり、現在もインド各地で高い人気を誇る。
(画像出展:Wikipedia)
サラスヴァティー:上記の「七福神」の欄を参照。
シヴァ:破壊と再生を司る神。ナタラージャと呼ばれる踊りの神でもある。
パールヴァティー:シヴァの妻の女神。金色の肌の美人とされる。
パールヴァティーとシヴァ。三又の鉾があり、首のコブラ、第三の目、ロングヘアーなどの特徴が伺える。頭部には女神ガンガーがガンジス河を口から吹いているのが分かる。手前にあるシヴァのシンボルのリンガ(男根)はインドの寺院でよく見かけられる。
インドの神様についてはまともに説明するとめちゃくちゃ長くなり、またそこまでの知識もないので各自調べて見てください。
ホーリー:春の訪れを祝って色のついた粉や水をぶっかけあう祭り。最近では都市部で音楽フェス化したイベントも見られる。
バラタナティヤム:インドで最古の伝統をもつと言われている南インドの舞踊。
芝浜:芝の魚屋を主人公にした落語。酒好きで借金まみれの主人公が改心して働く人情噺。「また夢になるといけねえ」は、使用人を雇うほどになり借金も返済した大晦日の夜、妻にひさしぶりの酒を勧められたあとに呟く有名なセリフ。
昨年末に見た蜃気楼龍玉師匠のが良かった。
サードゥー:ヒンドゥーの修行者。家と俗世を捨て、最低限のものだけを持って(ほとんど裸の人も!)ほどこしを受けながら放浪して修行する。
悟ったような人も俗物もいて、尊敬されていたり軽蔑されていたりする。
パールヴァティーが怒ったら:パールヴァティーは優しい女神とされているが、別神格としてライオンにまたがり10本の手に武器をの手にした女神ドゥルガー、殺戮を好む戦いの女神カーリーの姿をとることもある。
カーリーは色黒で生首でできたネックレスをし、切り落とした悪鬼アスラの首を手に夫シヴァを踏みつけている姿で描かれる。
元犬:人間になった犬が主人公の落語。当代だと隅田川馬石師匠のがかわいくて面白い。
粗忽長屋:行き倒れを見つけた粗忽者が、「同じ長屋の兄弟分に違いない、死んだことを本人に伝えないと」とわけのわからないことを言い出し、言われた本人も信じてしまうシュールでぶっとんだ落語。
当代だと桃月庵白酒師匠のが爆笑。
例に挙げた落語家が偶然だけど全員五街道雲助一門になってしまいました。
次回からはまたいつものブログに戻ります!
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ちょうど1年ほど前、何をトチ狂ったか、インド神話を落語にしてみよう!という訳のわからないアイデアが降って湧いてきて、この「ガネーシャ」を一気に書き上げました。
(新作落語「ガネーシャ」へのリンクはこちら)
書いてはみたものの、いつもインドのロックだのヒップホップだのと書いているのに急に「新作落語」っていうのもちょっと唐突すぎるよなあ、というあたり前すぎることに気づいたのですが、やはりせっかく考えたものを出さずにいるというのは宿便のような快からぬ感覚があり、「正月に出すんならいいか」というわけのわからぬ理由にかこつけて、1年近くのお蔵入り期間を経てようやくアップしてみた次第です。
落語の筋書きとしても実に拙く、また神話の紹介としても不出来なことこの上ない(この下ないと言うべきか)この「ガネーシャ」ですが、恥ずかしながら出来の悪い子ほど可愛いというような気持ちでいるのもまた確かでして、蛇足どころかムカデにさらに足を加えるような無粋の極みではございますが、噺のはしばしに出てくるインド特有の事柄について、少しばかし解説をしたためましたので、ぜひこちらもお読みいただけましたら幸いでございます。
読んだけどつまらなかった、という方については、別に解説を読んだところで笑えてくるものでもないんですけど、お時間がございましたらどうかお読みください。
七福神:めでたい七福神のうちインド由来の神様は3人。
大黒天は「マハーカーラ」というシヴァの別名が元になっている。
この噺でも分かる通りシヴァはけっこうワイルドな神様だけど、大黒天になると福の神ってことになる。
毘沙門天は「クベーラ」という今のインドではマイナーな神様が原型。
「クベーラ」は富と財宝の神だったが、これは逆に毘沙門天になると武神になるのが面白い。
弁財天のルーツは学問と芸術の神「サラスヴァティー」で、インドでも今も広く信仰されている。
サラスヴァティーが持っているのは、琵琶の原型になったヴィーナというインドの楽器。
(画像出展:Wikipedia)
インドの神様の数:日本よりさらにスケールが大きくて、八百万どころか3,300万の神様がいることになっています。もちろん、本当にそんなにいるわけではなくて、「とにかくたくさんいる」ということの比喩表現なんでしょうけど、「ひょっとしたら本当にそれくらいいるかも」と思わせる何かがあります、インドには。
印度・天竺:落語の舞台となった江戸時代後期のインドは、地域にもよるけどイスラーム王朝のムガル帝国かイギリス統治時代だった。日本における天竺のイメージは仏教の故郷だが、当時仏教はすでにインドでは衰退して久しく、現代同様、大多数がヒンドゥー教を信仰していた。
ちなみにインドの仏教王朝といえば11世紀ごろまで栄えていたガンダーラ王朝が有名だが、ガンダーラの所在地は、現在のインド領の北西にあたるパキスタンやアフガニスタンのあたりだ。
クリシュナ:マハーバーラタに登場する英雄神。プレイボーイのイケメンで笛を持った姿で描かれる(確かに牛若丸的要素が強い)。その後、ヴィシュヌ神の化身の一つという扱いになり、現在もインド各地で高い人気を誇る。
(画像出展:Wikipedia)
サラスヴァティー:上記の「七福神」の欄を参照。
シヴァ:破壊と再生を司る神。ナタラージャと呼ばれる踊りの神でもある。
パールヴァティー:シヴァの妻の女神。金色の肌の美人とされる。
パールヴァティーとシヴァ。三又の鉾があり、首のコブラ、第三の目、ロングヘアーなどの特徴が伺える。頭部には女神ガンガーがガンジス河を口から吹いているのが分かる。手前にあるシヴァのシンボルのリンガ(男根)はインドの寺院でよく見かけられる。
インドの神様についてはまともに説明するとめちゃくちゃ長くなり、またそこまでの知識もないので各自調べて見てください。
ホーリー:春の訪れを祝って色のついた粉や水をぶっかけあう祭り。最近では都市部で音楽フェス化したイベントも見られる。
バラタナティヤム:インドで最古の伝統をもつと言われている南インドの舞踊。
芝浜:芝の魚屋を主人公にした落語。酒好きで借金まみれの主人公が改心して働く人情噺。「また夢になるといけねえ」は、使用人を雇うほどになり借金も返済した大晦日の夜、妻にひさしぶりの酒を勧められたあとに呟く有名なセリフ。
昨年末に見た蜃気楼龍玉師匠のが良かった。
サードゥー:ヒンドゥーの修行者。家と俗世を捨て、最低限のものだけを持って(ほとんど裸の人も!)ほどこしを受けながら放浪して修行する。
悟ったような人も俗物もいて、尊敬されていたり軽蔑されていたりする。
パールヴァティーが怒ったら:パールヴァティーは優しい女神とされているが、別神格としてライオンにまたがり10本の手に武器をの手にした女神ドゥルガー、殺戮を好む戦いの女神カーリーの姿をとることもある。
カーリーは色黒で生首でできたネックレスをし、切り落とした悪鬼アスラの首を手に夫シヴァを踏みつけている姿で描かれる。
元犬:人間になった犬が主人公の落語。当代だと隅田川馬石師匠のがかわいくて面白い。
粗忽長屋:行き倒れを見つけた粗忽者が、「同じ長屋の兄弟分に違いない、死んだことを本人に伝えないと」とわけのわからないことを言い出し、言われた本人も信じてしまうシュールでぶっとんだ落語。
当代だと桃月庵白酒師匠のが爆笑。
例に挙げた落語家が偶然だけど全員五街道雲助一門になってしまいました。
次回からはまたいつものブログに戻ります!
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