『ガリーボーイ』ラップ翻訳"Azadi"(自由)by麻田豊、餡子、Natsume『ガリーボーイ』ラップ翻訳"Apna Time Aayega"(俺の時代がやって来る)by麻田豊、餡子、Natsume

2019年10月25日

『ガリーボーイ』ラップ翻訳"Asli Hip Hop"(リアルなヒップホップ)by麻田豊、餡子、Natsume


いよいよ大詰めを迎えてまいりました、麻田先生、餡子さん、Natsumeさんによる『ガリーボーイ』リリック翻訳。
今回紹介するのは"Asli Hip Hop"(リアルなヒップホップ)。
ラッパーとして成長したムラードが、ヒューマン・ビートボックスに載せて、ガリー育ちの魂を聴かせてくれる曲だ。
 
AsliHipHop

餡子さんのコメント:
このラップの中でも母親への愛が語られていて、インドらしさを感じます。テンポがスローだからか、正しい文法でリリックが書かれていて比較的訳しやすいです。

ラップはもちろんランヴィール本人。リリックは若干20歳のラッパーSpitfireが書いている。
ビートボックスは、ラッパー、ダンサー、グラフィティアーティストを含むムンバイのクルーBombay LokalのD-CypherとBeat Raw.
インドのストリート(ガリー)ヒップホップシーンでは、ターンテーブルやレコード盤が必要なDJの代わりにビートボクシングが非常に盛んで、ダラヴィでは放課後にビートボクシング教室まで開かれているという。
リアルな雰囲気のアドリブを入れているのは実際のムンバイのシーンのMCたちだ。

リリックは解説する必要がないくらい明確で力強い。
餡子さんの指摘通り「母親への愛と感謝」が入っているのもいかにもインド的だ。
「ヒップホップこそが俺の宗教/どんなカーストにも属さない」という部分もとてもインドっぽいフレーズだ。
ムラードはムスリムとしての信仰も大事にしているが、その信仰は彼に安らぎを与えるだけではなく、彼を縛りつける不自由さとも結びついている。
見下され、抑圧される原因となっているカーストについては言わずもがなだ。
ムラードにとって、いや、実際のムンバイのスラムの若者達にとって、ヒップホップは、既存の宗教やコミュニティとは関係なく、自分を誇り、仲間とつながることができる手段なのだ。
今やヒップホップはアメリカの黒人文化という枠組みを大きく超え、こういった現象は世界中の都市で起きている。
『ガリーボーイ』はインドにおける都市の若者文化のグローバル化と、ヒップホップのローカル化を同時に感じることができる作品でもある。

既に何度も書いてきたことだが、"Asli Hip Hop"が「リアルな(asli)」ヒップホップと強調しているのは、インドにはメインストリームのパーティー音楽として「リアルでないヒップホップ」が既に高い人気を得ていたからだ。
『ガリーボーイ』の中で「リアルなヒップホップ」の対極にあるパーティーラップとして使われているのが、この"Goriye".
 
意図に反して、これはこれで結構かっこよく仕上がっている。
もっとEDM系のダサいバングラ系ラップはいくらでもあるように思うが、そこは日本人とインド人の感じ方の違いかもしれない。

次回はこのリリック翻訳シリーズのいよいよ(ひとまずの)最終回!
もちろん、『ガリーボーイ』を象徴する曲、"Apna Time Aayega"(俺の時代がやって来る)です!
乞うご期待!


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