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2019年03月15日

インドのインディーズシーンの歴史その11 極上のフュージョン・アンビエント Karsh Kale

インドのインディーズシーンの歴史を彩った名曲をひたすら紹介するこの企画
VH1INDIAによるインドのインディー100曲

今回はとりあげるのはまた在外インド人アーティストによる作品で、Karsh Kaleが2001年に発表した'Anja'.

Karsh Kaleはイギリス出身のインド系タブラプレイヤー/エレクトロニカアーティストで、現在は米国籍を取得している。
彼自身はマラーティー系(ムンバイがあるマハーラーシュトラ州がルーツ)だが、この曲のヴォーカルはどうやらテルグ語(南部アーンドラ・プラデーシュ州の言語)らしく、テルグの民族音楽とのフュージョン(もしくはテルグ系シンガーのコラボレーション)ということのようだ。

Karsh Kaleは以前紹介したTalvin Singh同様、 90年代にイギリスを中心に勃興した「エイジアン・アンダーグラウンド」のシーンで頭角を現した。
このエイジアン・アンダーグラウンドはクラブミュージック(電子音楽)と南アジア(インド、パキスタン、バングラデシュ、スリランカ)の伝統音楽を融合したもので、当時、伝統音楽のルーツを持つ多くの移民アーティストが活躍していた。

Talvin Singhがよりドラムンベース的なアプローチだったのに対して、Karsh Kaleはどちらかというとアンビエントっぽい音楽性が特徴。
当時、こういうインド音楽とアンビエントを融合したサウンドは、Buddha Barとかのチルアウト/エスニック系のコンピレーション盤で重宝されていた記憶がある。

タブラ奏者には他ジャンルとの共演で名を上げたプレイヤーがとても多くて、タブラ界の最高峰Zakir HussainはGrateful DeadのドラマーMicky HartらとのDiga Rhythm Bandやジャズ・ギタリストJohn MclaughlinとのShaktiをやっているし、Trilok Gurtuもジャズ系のミュージシャンと共演して多くの作品を残している。
Bill Laswellによるタブラと電子音楽の融合プロジェクトであるTabla Beat Scienceにはここに名前を挙げたタブラプレイヤー全員が参加している。

Karsh Kaleの他の曲も紹介する。'Milan'

アンビエントから始まってストリングスも入って盛り上がる構成は映画音楽的でもあるが、Karshは実際に映画音楽のプロデュースなども手がけている。

先日公開になったGully Boyのサウンドトラックから、"Train Song".

デリー出身の国産エレクトロニカ・アーティストの先駆けMidival Punditzとの共作で、ヴォーカルは人気シンガーのRaghu Dixit.

次回のこの企画で紹介するシタール奏者のAnoushka ShankarとあのStingが共演した楽曲もある。

結果的に非常にイギリス的というか、ロンドン的な空気感のサウンドとなったと感じるが、いかがだろうか。

Karsh Kaleのサウンドを聴いていると、まるくて抜けのよいタブラの音色の心地よさが、音の気持ちよさを追求するアンビエント/エレクトロニカ的な音像に見事にはまっていることが分かる。
00年代初期の時代性を感じるサウンドではあるが、音楽としての質の高さ、心地良さは今聞いてもまったく色褪せていない。

現代では、インド本国にもアンビエント/エレクトロニカ系の優れたアーティストが非常にたくさんいるが、インド音楽と電子音楽の「音の心地良さ」を追究する姿勢には本質的な共通点があるのかもしれない。
いずれにしても、今回紹介したKarsh Kaleは、インド系アンビエントミュージックのさきがけ的な存在と言うことができるのではないかな。

それでは、また!

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