Zaeden

2021年12月15日

2021年度版 インドのクリスマスソング特集!

もう12月も半ば。
この時期、2018年にはインド北東部ナガランド州のクリスマスソングを、昨年は同じく北東部メガラヤ州のクワイアが歌うクリスマスソングを紹介したので、今年は他の地域の曲を紹介したい。




…と思って調べてみたのだけど、正直に言うと、今のところ、そこまで素敵なクリスマスソングをインドで見つけることはできなかった。
これはどうしてかっていうと、キリスト教徒が多いインド北東部と比べて、メインランド(北東部の人たちは、アーリア系やドラヴィダ系の人々がマジョリティを占め、ヒンドゥー教やイスラーム教やシク教などが信仰されているインドの大部分をこう呼ぶ)にはそこまでクリスマスを祝う習慣が根付いていないからだろう。

なんて言うと、インドに詳しい人から「メインランドにもゴアやケーララ州にはクリスチャンがたくさんいるじゃないか」と言われてしまいそうだが、今回調べた限りでは、いわゆる西洋スタイルのポップミュージックとして聴けるいい感じのクリスマスソングは、ゴアやケーララでも見つけることができなかった。
(代わりに、宗教的なものや、インドの歌謡曲っぽいクリスマスソングはたくさん見つかったが…)
20世期に大々的にキリスト教への改宗が進められた北東部に対して、ゴアにキリスト教が伝えられたのは大航海時代だし、ケーララにいたっては1世紀に聖トマスがキリスト教を伝道したとも言われている。
つまり、ゴアやケーララのキリスト教(主にカトリック)は、長い歴史を持つがゆえに、欧米とは異なるインド独自の伝統を持っていて、それがウエスタン(西洋)・ポップス的なクリスマスソングを生まれにくくしているんじゃないだろうか。

インド北東部でクリスチャンが多いのは、もともとヒンドゥー教やイスラーム教よりもアニミズム(精霊信仰)が盛んだった地域だ。
こうした場所では、19世期から欧米の宣教師たちが入って改宗が進められ、ナガランド州やミゾラム州では、今では9割を超える人々がキリスト教を信仰するようになった。
ナガランド特集の記事でも紹介した、チャケサン・ナガ族の民謡と欧米的ポップスを融合した音楽性で知られるTetseo Sistersは、昨年のクリスマスに"Joy to the World"をリリースした。



顔立ちや伝統的なアクセサリーを見ないで音だけ聴けば、インドのシンガーだと思う人はほとんどいないだろう。

こちらはチャケサン・ナガの伝統的歌唱スタイルのクリスマスソング。


いつの間にかメンバーが一人脱退しているっぽいのが気になるが、ドキュメンタリー映画『あまねき旋律』でも紹介された伝統唱歌'Li'を思わせる素朴な歌声が心地良い。


北東部以外に、欧米ポップス的なクリスマスソングが皆無なわけではない。
ムンバイ出身のGwen Fernandesは、昨年クリスマスアルバム"The Best Christmas Ever"をリリースした。


名前を見る限り、彼女もクリスチャンのようだが、大都市ムンバイのクリスチャン・コミュニティで育った彼女にとって、こうした欧米のスタンダードなクリスマスソングは、慣れ親しんだものなのだろう。

こちらもクリスチャンっぽい名前のデリーのシンガー、Kimberley Rodriguesがリリースしたオリジナル曲。



インドでは、クリスチャン・コミュニティ以外にも、非宗教的なオシャレイベントとしての(いわば、日本的な)クリスマスが都市部を中心に広まりつつあるようで、例えば昨年も紹介したこの曲は、元EDMアーティストで、近年はアコースティックシンガーとしての活躍が目立つZaedenによるもの。



デリーからは、ラッパーのHommie Dilliwalaがインドの売れ線系ラッパーの筆頭格Yo Yo Honey Singhをフィーチャーした"Jingle Bell"という曲を発見。


おそらく宗教的な意味でのクリスマスとは全く関係のない内容だが、都会のパーティーカルチャーの雰囲気がよく伝わってくる。

インドでは、ディワーリーやホーリーといったヒンドゥー教の伝統的なお祭りに合わせてリリースされるポピュラーソングも多く、またなぜか毎年独立記念日に合わせてリリースされる楽曲もある。
そう考えると、インドでは、そこまで季節の風物詩としてのクリスマス・ソングが必要とされていないのかもしれない。
いつかインドからワム!や山下達郎みたいな感じの、ポップなクリスマスソングの名曲が出てくることがあるのだろうか。




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goshimasayama18 at 18:57|PermalinkComments(0)

2020年12月23日

2020年度版 インドのクリスマスソング特集! 古代アラム語で歌われるクリスマスキャロルからバングラーまで



2年前に、インド北東部ナガランド州のクリスマスソングに関する記事を書いた。
典型的な「インド人」とは異なる、モンゴロイド系の民族が多く暮らすインド北東部は、他の南アジアとは異なりヒンドゥー/イスラーム文化の影響が少なく、19世紀以降の宣教によって、今では多くの住民がキリスト教を信仰している。
ナガランドは人口の9割がクリスチャンであり、地元の伝統と西洋のポップミュージックやキリスト教信仰を融合したユニークなクリスマスソングが存在しているのだ。
 
(詳細はこちらの記事で↑)
今回は、ナガランド以外に視野を広げて、あらためてインドのクリスマスソングを調べたので、紹介してみます。
今年リリースされた曲でとくに印象に残ったのはこの2曲。

まず紹介するのは、インドを代表するEDM系プロデューサーからアコースティックなシンガーソングライターへの転身を遂げたZaedenが、女性シンガーNatania Lalwaniをフィーチャーしてリリースした"For Christmas".

シャッフル気味のアコースティックギターに、ファルセットボイスで歌われるポップなメロディー。
インディー音楽とはいえ、とうとう典型的なクリスマスのポップチューンがインドでも作られるようになったと思うと感慨深い。
途中からレゲエっぽいリズムが入ってくる展開も洒落ている。

インドでは、近年の経済成長や海外文化の流入に伴い、都市部を中心に「欧米的なオシャレなイベント」としてのクリスマスが根付きつつある。(一方で、既存の宗教の原理主義的な信奉者や偏狭なナショナリズムの支持者からは反発もあるわけだが)
イエス・キリストの誕生日やサンタクロースがやってくる日としてのクリスマスではなく、愛する人と過ごす日としてのクリスマスが描かれたこの曲は、都市部の現代的な若者たちのクリスマスのイメージを踏襲したものと見てよいだろう。


続いて紹介するのは、人口の75%がキリスト教を信仰するインド北東部メガラヤ州の州都シロンからの1曲。
Shillong Chamber Choirが今年リリースしたクリスマスアルバム"Come Home Christmas"に収録された"Go Tell It On The Mountain"だ。

Shillong Chamber Choirは、2001年に結成された室内合唱団で、人気テレビ番組'India's Got Talent'での優勝(2001年)を含め、国内外で多くの賞に輝いている。
地元の民謡っぽい旋律に続いて、ファンキーにアレンジされた賛美歌/ゴスペルの"Go Tell It On The Mountain"が英語で歌われるが、途中で歌が耳慣れない言語に変わることに気がつくはずだ。
これはなんとイエス・キリストが話していたと言われる「古代アラム語」だそうで、「マルチリンガルなクリスマス・アルバム」として制作された今作に合わせて、今ではほとんど話者のいないこの言語を「救い主が生まれたことを世界に告げよ」と歌うこの曲に採用したとのこと。
多言語社会のインドでは、複数の言語で歌われる曲も珍しくはないが、賛美歌に古代アラム語を持ってくるというのは、クリスチャンの多い北東部ならではの発想だろう。

この"We The Kings"では、ウルドゥー語とペルシア語が採用されている。

非常に美しいミュージックビデオは、イスラエルのサンドアーティストIlana Yahavによるもの。
正直に言うと、私は普段合唱団が歌うような音楽は全く聴かないのだが、このアルバム"Come Home Christmas"に関しては、ファンキーにアレンジされたゴスペルから荘厳な賛美歌まで、さまざまな言語の美しい響きとともに、なんの違和感もなくポップミュージックとして楽しむことができた。
非常にユニークな、長く聴くことのできるクリスマス・アルバムだ。


今年のリリースではないものの、インドならではの面白いクリスマスソングを他にも見つけることができたので、合わせて紹介します。

ムンバイのポップバンドSanamは、いくつかのクリスマスソングをカバーして発表している。
彼らは古いボリウッド映画の曲を現代的にカバーし、YouTubeから人気が出たバンド。
彼らは映画音楽のみならず、100年前のベンガルの詩人タゴールの作った歌などもカバーしており、近代化著しいインドで、歌を通して古き良きものと現代を繋ぐ役割を担っているのだろう。
そんな彼らがカバーしたクリスマスソングは、ポップスではなく、伝統的な聖歌/賛美歌だ。

おそらく彼らはクリスチャンではないと思われるが、彼らのクリスマスソングを聞くと、流行の消費主義的なイベントとしてのクリスマスではなく、信仰こそ違えど、我々よりも大きな存在に帰依する人々への共感とリスペクトが込められているように感じられる。
物質主義的な部分が強くなって来たとはいえ、インドは信仰の国だ。
サンタクロースやクリスマスケーキになじみのない人々も、偉大なGuru、イエス・キリストの生誕を祝う気持ちは十分に理解できるのだろう。

続いて、北インドのポピュラー音楽シーンのメインストリームであるバングラー(Bhangra)のクリスマスソングを探してみたところ、意外にも多くの動画がアップされているのを見つけてしまった。
バングラー・ユニットのGeeta Brothersは、その名も"Punjabi Christmas Album"というアルバムをリリースしている。

陽気な男たちが打ち鳴らすドール(Dhol. 両面太鼓)、コブシの聞いた歌い回し。
彼らはバングラーの故郷パンジャーブ州に住んでいるわけではなく、イギリスに暮らす移民たちらしい。
パンジャービー系の人々は、移民が多く、コミュニティーが世界中に広がっているからこそ、世界中の文化と伝統音楽の融合が行われているのだろう。

こちらはマレーシア、クアラルンプールのパンジャービー・コミュニティー。


クリスマスソングに合わせてバングラー・ダンスを踊りまくっている動画とか、クリスマスソングのバングラー・リミックスもかなりたくさんヒットする。





彼らがクリスチャンなのか、はたまたヒンドゥーやシクなのかは知る由もないが(ターバンを巻いている人たちはシク教徒のはず…)、なんとも陽気で楽しくて素晴らしいではないか。
「お祝いだ!太鼓叩いて踊ろうぜ」って感じのノリが最高だ。

クリスマスを信仰に基づいてお祝いする人も、パーティーとして楽しむだけの人も、今年は例年になく困難な状況を迎えているが、何はともあれ感謝の心を忘れずに、遠く離れた人々との繋がりも感じながら過ごすことができたら素晴らしいことだ。
みなさん、メリー・クリスマス。
素敵なクリスマスをお過ごしください。




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goshimasayama18 at 19:13|PermalinkComments(0)

2020年09月15日

これはもう新ジャンル 「インディアンEDM(もしくは印DM〈InDM〉)」を大紹介!


以前の記事で、無国籍なサウンドで活動していたインドのEDM系アーティストが、ここ最近かなりインドっぽい楽曲をリリースするしていることを紹介した。

これはもうEDMと従来のインディアン・ポップスを融合させた新しいジャンルが確立しているのではないか、というのが今回のテーマ。

その新しいジャンルをインディアンEDMと呼びたいのだけど、長いので印DM(InDM)と呼ばせてもらうことにする。
このジャンルの特徴を挙げると、ざっとこんな感じになる。
  • EDM系のプロデューサーが手掛けており、ダンスミュージックの要素を残しつつも、インド的な要素(とくに歌やメロディーライン)を大幅に導入している。
  • 歌詞は英語ではなく、ヒンディー語などの現地言語であることが多い。
  • ミュージックビデオにも、インド的な要素が入っている。(いわゆる典型的なEDMの場合、インド人が手掛けた曲でも、ローカルな要素はミュージックビデオから排除されていることが多かった)
ボリウッド的メインストリームが新しいダンスミュージックを貪欲に取り入れる一方で、インディーズのEDM系のアーティスト達もインド的な要素を積極的に導入していった結果、もはやジャンルの境目がどこにあるのか分からないような状況になってしまっているのだ。

かつてはゴリゴリのEDMを作っていたLost Storiesの新曲"Heer Ranjha"は、この王道ボリウッドっぷり。
目を閉じると、主人公とヒロインが離れた場所から見つめ合いながら手を伸ばして、届きそうだけど届かない、みたいな場面から始まるミュージカルシーンが浮かんできそうな曲調だ。
ブレイク部分でのEDMっぽいアレンジのセンスの良さはさすが。

もうちょっとダンスミュージック寄りの曲調なのがこの"Noor".
なぜパンダなのか謎だが、たぶん理由は「かわいいから」だろう。
クレジットには同じくインドの人気EDMプロデューサーのZaedenの名前も入っている。

そのZaedenの最近の曲は、もはやエレクトロニック・ミュージックの要素すらほとんどない普通のヒンディーポップだ。
1年前の曲がコレ。

最新の曲は、デリーのシンガーソングライターPrateek Kuhadのカバー。
彼はエレクトロニック系のプロデューサーから、オーガニックな曲調のシンガーソングライターへの転身を図ろうとしている真っ最中のかもしれない。
原曲は今年の7月にリリースされたばかりで、ここまで新しい曲のカバーというのは異例だが、Zaedenがこの曲を大いに気に入ったために制作されたものらしい。
Prateek Kuhadによるオリジナル・バージョンのミュージックビデオも大変素晴らしいので、ぜひこちらから見てみてほしい。



2013年のデビュー当初から印DMっぽい音楽性の楽曲をリリースしているのが、プネー出身のシンガーソングライター/プロデューサーのRitvizだ。
彼は幼少期から古典音楽(ヒンドゥスターニー音楽)を学んで育ち、EDMやヒップホップに加えてインド映画音楽の大御所A.R.ラフマーンのファンでもあるようで、そうした多彩な音楽的背景が見事に結晶した音楽を作っている。
彼のミュージックビデオはインドの日常を美しい映像で描いたものが多く、それがまた素晴らしい。


ラム酒のバカルディのロゴが頻繁に出て来るのは、バカルディ・ブランドによるインディー音楽のサポートプログラムの一環としてミュージックビデオが制作されているからのようだ。
インドではヒンドゥーでもイスラームでも飲酒がタブー視される時代が長く続いていたが、新しい価値観の若者たちに売り込むべく、多くのアルコール飲料メーカーがインディーズ・シーンをサポートしている。

今年に入ってからは、デリーのラップデュオSeedhe Mautとのコラボレーションにも取り組むなど、ますますジャンルの垣根を越えた活動をしているRitviz.
これからも印DMを代表する存在として目が離せない。
ハードコア・ラッパーとしてのイメージの強かったSeedhe Mautにとっても新機軸となる楽曲だ。

タージ・マハールで有名なアーグラー出身のUdyan Sagarは、1998年にインド古典音楽のリズムとダンスミュージックを融合したユニットBandish Projektの一員としてデビューしたのち、Nucleyaの名義でベースミュージック的な印DMに取り組んでいる
彼が2015年にリリースした"Bass Rani"は、インドの伝統音楽とエレクトロニック・ミュージックの融合のひとつの方向性を示した歴史に残るアルバム。
この曲ではガリーラップ界の帝王DIVINEとコラボレーションしている。(この共演は『ガリーボーイ』のヒットのはるか以前の2015年のもの)

この2人の組み合わせは2017年のボリウッド映画"Mukkabaaz"(Anurag Kashyap監督、Vineet Kumar Singh主演)で早くも起用されており、インド映画界の新しい音楽への目配りの早さにはいつもながら驚かされる。
ポピュラー音楽のフィールドでの評価や知名度という点では、このNucleyaが印DM界の中でも随一と言って良いだろう。


ベースミュージック的な印DMに、レゲエやラテンの要素も加えた音楽性で異彩を放っているのが、このブログの第1回でも紹介したSu Realだ。


この"Soldiers"ではルーツ・レゲエとEDMの融合という意欲的すぎる音楽性でインド社会にはびこる保守性を糾弾している(興味深いリリックについては上記の第1回記事のリンクをどうぞ)。


この"EAST WEST BADMAN RUDEBOY MASH UP TING"では、映像でもインド的な要素をポップかつクールに編集していて最高の仕上がり。長年、欧米のポピュラー音楽から「エキゾチックやスピリチュアルを表す記号」として扱われてきたインドだが、ここ最近インド人アーティストたちは西洋と自分たちのカルチャーとのクールな融合方法を続々と編み出しており、印DMもまさにそうしたムーブメントのなかのひとつとして位置付けることができる。

新曲"Indian Wine"のミュージックビデオでは、レゲエを基調にしたビートに、レゲエダンサーとインド古典舞踊バラタナティヤムのダンサーが共演するという唯一無二の世界観。
こうした融合をさらっと行ってしまえるところが、インドの音楽シーンの素晴らしいところだ。


このように、ますます加熱している印DMシーンだが、今回紹介した人脈同士でのコラボレーションも盛んに行われている。
この曲はSu RealとRitvizの共作による楽曲。

これはNucleyaがRitvizの"Thandi Hawa"をリミックスしたもの。

世界的にEDMの人気は落ち着きを見せてきているようだが、それに合わせるかのように勢いづいてきている印DMは、「ダンスミュージックにインドの要素がほしいけど、既存のボリウッドの曲はちょっとダサいんだよな…」というような若者たちを中心に支持を広げているのだろう。
インドのメインストリームである映画音楽と、インディーミュージックシーンを繋ぐミッシングリンクと言えるのが、この印DMなのだ。

今後、EDMブームが過去のものになってしまうとしても、このブームが生み出した印DMという落とし子は、今後ますます成長してゆくはず。ヒップホップやラテン音楽への接近など、目が離せない要素が盛り沢山の印DM。
これからも取り上げてゆきたいと思います!




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2020年06月01日

インドのEDM系アーティストがなにかと面白い! KSHMR, Lost Storiesらのインド風トラック!



意外に思われるかもしれないが、ダンスが大好きなインド人の間では、EDM系の音楽の人気がとても高い。
主要なリスナー層は、都市部の中産階級以上の音楽の流行に敏感な若者たちに限られるのだろうが、それでも13億の人口を誇るインドでは、相当数のファンがいるということになる。
インドではアジア最大の(そして世界で3番目の規模の)EDMフェス"Sunburn"が開かれているし、国際的に活躍しているインド人アーティストもいる。


EDMというジャンル自体、すでに人気のピークを過ぎた感もあるし、そもそもコロナウイルス禍でフェスティバルやパーティーが開けない状況が続くと、シーン自体がどうなってしまうのか心配ではあるが、インドにおけるEDM人気の根強さは、今のところ我々の想像をはるかに超えているのである。

今回は、そんな「ダンス大国」インドのEDMアーティストたちが、グローバル市場向けのゴリゴリのダンストラックとは別に、国内リスナー向けにかなりインドっぽい楽曲を製作しているというお話。

以前の記事でも取り上げたムンバイ出身のEDMデュオ、Lost Storiesが、プレイバックシンガーとして活躍するJonita Gandhiと共演したこの"Mai Ni Meriye"は、彼らがこれまでに発表してきたトランス系テクノやEDMとは大きく異なるボリウッドっぽい1曲。
(Lost Storiesがこれまでに発表してきたダンストラックについては、この記事を参照してほしい。"Tomorrowlandに出演するインド人EDMアーティスト! Lost StoriesとZaeden!"


原曲はヒマーチャル・プラデーシュ州の伝統音楽のようだ。
Jonita GandhiはYouTubeにアップした歌声がきっかけでA.R.Rahmanに見出されたカナダ在住のシンガーで、2013年以降様々な映画のサウンドトラックに参加している。(昨年11月にNHKホールで行われた「ABUソングフェスティバル」にも、インド代表としてラフマーンとともに来日していた。)
Lost Storiesの洗練されたトラックに彼女の古典音楽風の節回しの歌が乗ることで、あたかも最近のボリウッドの映画音楽のような仕上がりになっている。

Lost StoriesがKSHMR(カシミア)と共演した"Bombay Dreams"のミュージックビデオは、サウンドだけでなく映像も映画のような魅力を持っている。

エスニックなメロディーラインが印象的だが、エレクトロニック系の曲だとこの手の旋律は国籍に関係なくよく使われているので、もはやどこまでがインドでどこからがEDMなのかさっぱり分からなくなってくる。
それはともかく、このミュージックビデオで注目すべきは、音楽よりもマサラテイストかつ甘酸っぱいストーリーのほうだろう。
「イケてない太めの男子」と「古典舞踊を習う女子」というEDMのイメージとは距離のありすぎるキャラクターたちが繰り広げる淡い恋模様は、まるで青春映画の一場面のようだ。

この曲でLost Storiesと共演しているKSHMRはカリフォルニア州出身のインド系アメリカ人で、その名前の通りカシミール地方出身のヒンドゥー教徒の父を持つEDMミュージシャン/DJだ(母親はインド系ではないアメリカ人のようだ)。
彼はもともとCataracsというダンスミュージックグループに在籍しており、いくつかの曲をヒットさせていたが、Cataracs解散後の2014年にKSHMR名義での活動を開始すると、Coachella, Ultra Music Festival, Tommorowland等の主要なフェスに軒並み出演し、2016年にはDJ MagazineのTop 100 DJs of the yearの12位とHighest Live Actに輝くなど、名実ともにトップDJの座に躍り出た。

KSHMRがベルギー人DJのYves Vと共演したこの"No Regrets (feat. Krewella)では、音楽的にはインドの要素はほぼ無いものの、インドの伝統格闘技クシュティをテーマにしたミュージックビデオを製作している。

冒頭で歌われているのはハヌマーン神へを讃えるヒンドゥーの聖歌らしく、こちらもまるでインド映画のような仕上がりになっている。

インドのインディー系ミュージシャンには、インドのポップカルチャーの絶対的な主流であるボリウッドに対して「ドメスティックでダサいもの」という反感を持っている者が多いという印象を持っていたので(かつて日本のロックミュージシャンが歌謡曲に抱いていたような感情だ)、こうしたEDM系のアーティストたちが、ボリウッドっぽさ丸出しの楽曲をリリースしているということに、非常に驚いてしまった。
グローバルな成功を収めている彼らにとっては、ローカルなボリウッドは仮想敵とするようなものではなく、むしろ冷静にマーケットとして見ているということだろうか。
(日本でいうと、石野卓球あたりがJ-Popのプロデュースやリミックスを手がけているのと同じようなものかもしれない)

KSHMRは、2015年から2017年まで、「アジア最大のEDMフェス」Sunburnのオフィシャルミュージックを手がけており、EDMやトランスに開催地であるインドの要素を融合させた楽曲をリリースしたりもしている。




これらの曲を聴けば、彼が自身のルーツであるインドの要素をいかに巧みにダンスミュージックに取り入れているかが分かるだろう。
このどこまでも享楽的なサウンドは、かつて欧米や日本のトランスDJたちが、インド音楽をサイケデリックで呪術的な要素として使ってきたのとは対照的で、長らくインドの音楽をミステリアスなものとして借用してきた西洋のポップ・ミュージックに対するインド人からの回答として見ることもできそうだ。

パーティーミュージックのプロデュースにかけては一流の評価を得ているKSHMRが、そのサウンドに反して極めてシリアスなメッセージを伝えようとしているミュージックビデオがある。
彼の故郷の名を冠した"Jammu"という曲である。
Jammu(ジャンムー)とは、彼の名前の由来になったカシミールとともにジャンムー・カシミール連邦直轄領を構成する地域の名前だ。
この地域は、1947年のインド・パキスタンの分離独立以来、両国が領有権を主張し、たびたび武力衝突が起きている南アジアの火薬庫とも言える土地である。
カシミール地方では、「ヒンドゥー教徒がマジョリティーを占める世俗国家」であるインドにおいて、例外的にムスリムが多数派を占めるという人口構成から、インド建国間もない時期から独立運動も行われており、この地を巡る状況は非常に複雑になってしまっているのだ。
こうした歴史から、かつては「世界で最も美しい場所」とまでいわれていたカシミールでは、テロや紛争、独立闘争やその過酷な弾圧のために、数え切れないほどの血が流されてきた。


戦乱で母を失った少年がテロリストになるまでを描いたストーリーは、欧米やヒンドゥー側から見たムスリムのステレオタイプ的なイメージという印象も受けるが、現実に起こっていることでもあるのだろう。
(ちなみにKSHMRは"Kashmir"という楽曲もリリースしているが、この曲ではミュージックビデオは作られていない)

このミュージックビデオがリリースされたのは2015年。
その頃は州としての自治権を有していたジャンムー・カシミール地域は、2019年8月にインド政府によって自治権を剥奪され、大規模な反対運動にも関わらず、連邦政府直轄領となることが決定した。
これにともなって、ジャンムー・カシミール地域では、混乱や暴動を避けるという目的で、長期間にわたるインターネットの遮断や外出禁止が行われ、外部との連絡が絶たれた中で治安維持の名目での暴力行為もあったという。 
デリーのラッパーPrabh Deepは、コロナウイルスによる全土ロックダウン時にリリースされた楽曲で、外出禁止が続くカシミールに想いを馳せる内容のリリックを披露している。


KSHMRによるインド色の強いミュージックビデオは、インド国内のマーケット向けというだけではなく、自身のルーツとなっているカルチャーや歴史を広く世界に知ってもらいたいという意図も持って作られたのだろう。
インド国内のアーティストが、ミュージックビデオでインド文化をできるだけ洗練されたものとして描く傾向があるのに対して、ステレオタイプ的な描写が多いのは、彼が母国を遠く離れた欧米で生まれ育ったこととも関係がありそうだ。
いずれにしても、KSHMRのこうした映像作品は、YouTubeのコメント欄を見る限りでは、インドのリスナーに好意的にはかなり受け入れられているようである。
彼はDJセットにおいてもインドの楽曲をサンプリングすることが多く、それが彼のDJの文字通り巧みなスパイスになっている。

以前紹介したZaedenも、ヒンディー語楽曲をいくつか発表しているが、今回はインド系バルバドス人のRupeeが2004年にスマッシュヒットさせた'"Tempted to Touch"のリメイクを紹介したい。

ほぼ忘れられかけていた一発屋をこうしてリメイクするという取り組みも、世界で活躍するインド系アーティストへの絆を感じさせるものだ。

無国籍なサウンドとなることが多いダンスミュージックに、インド系のアーティストがこれだけ自身のルーツの要素を取り入れているということは、かなり面白いことだと感じる。
これは欧米が主流のシーンに対する自己主張であるだけでなく、全てを取り入れて混ぜ込んでしまうインド文化のなせる業なのだろうか。



エレクトロニックミュージックとインド的要素の融合については、非常に面白いテーマなので、まだまだ書いてゆきたいと思ってます。
それでは今回はこのへんで!




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2019年03月20日

今年のホーリー系フェスとホーリーソング他 インド春のフェス事情

今年もホーリー(Holi)の季節がやってきた。今年のホーリーは明日3月21日。

ホーリーとは、春の訪れを祝うインドの伝統行事で、ヒンドゥー教のヴィシュヌ神の伝説に基づいて紀元前から行われていたと言われている。(興味のある方は各自調べてください)
正確には今日20日の日没後から焚き火を囲んでの歌や祈りの儀式が始まるのだが、有名なのはなんといっても2日目に行われる、色のついた粉や水をぶっかけあうという風習だ。
この日だけは身分もカーストも気にせず、色粉や色水をぶっかけてよいということになっており、いつも以上に無秩序かつ無礼講な、無茶苦茶なお祭りなわけである。

とくにホーリーが賑わう街として知られているヴリンダーヴァン(Vrindavan)のホーリーの様子はたとえばこんな感じだ。
 
車の中に色水を思いっきりぶっかけたりしていたけど、大丈夫なんだろうか。
それにしてもさすが本場の無礼講、誰一人本気で怒る人などおらず(カメラに映っていないところではいるのかもしれないが)、笑顔で楽しんでいるのはさすがだ。
このホーリー、伝統行事とはいえ、旅行者にはハードすぎるのもまた事実。
あまりの混沌、アナーキーっぷりに、あらゆるガイドブックで旅行者に厳重な注意が呼びかけられているという、じつに過激なお祭りなのだ。

例えば「オマツリジャパン」というウェブサイトには、こんなふうに書かれている。
ホーリー祭は楽しいだけのお祭りではありません。それは本当に危険と隣り合わせですので、十分に注意してください。
一人で参加しない!圧倒的に事故・犯罪に巻き込まれる危険が高くなります。
女性はできるだけ参加しない!(痴漢、セクハラ、性暴力など悲しい事件が実際に起きています。インド人女性は絶対に大騒ぎの時間には参加しないので、もともと男性の祭りだと理解してください)
スリや犯罪に注意。貴重品は絶対に持ち歩かない。
泥酔者に注意。(普段お酒を飲まないヒンドゥー教徒が、年に一度お酒を飲む日です。当然、現地の男性は全員が酔っぱらっていると考えてください)。
捨ててもよい服で行く(色がついたら二度と取れません)。
サングラスやゴーグルで目を守る。
危険な時間帯、場所はホテルに避難。遅い時間はもちろん、参加者のテンションが上がった二日目の午後も危険です。
(「過激さ世界一!インド ホーリー祭に参加するには!?2019年は3月20日・21日!行き方や注意点を解説!」https://omatsurijapan.com/blog/holi-festival-india/

もはや普通に楽しめるのかどうかすらも分からないほどの厳重注意っぷり。
コレ、もはや怖いもの見たさか罰ゲームの領域なんじゃないだろうか。
私はインドには何度か行ったことがあるものの、幸いというかホーリーの経験はないので何とも言えないのだけど、ネットで検索すると参加した人のブログも結構ヒットするので、興味のある方は読んでみるといいかもしれない。

昨年も紹介したとおり、近年では大都市を中心に、音楽フェスとホーリーを融合したイベントもたくさん開催されていて、大いに盛り上がっている。
(昨年の記事「音楽フェス化するホーリー」

例えばニューデリーではHoli Moo, Unite Holi Music Festivalといったイベントがホーリーの日に合わせて開催されている。
holi moo lineup 2019

Holi Mooは4つのステージで100以上のアーティストが登場。
伝統音楽からEDM、レゲエ、ヒップホップまで、あらゆるジャンルが揃っている。

UniteHoli2019
Unite HoliにはEDM系のDJが出演。
その模様はこんな感じだ。
もはや伝統的なお祭りの面影はなく、パリピ感満載のイベントに。

インドのテクノ/EDM系オーガナイザーのSunburnが主催するムンバイのHoli Bashにはあの"Taki Taki"のDJ Snakeが登場!
HoliBashDJSnake

同じくムンバイのWeb Of Colorsではヒップホップ映画"Gully Boy"にもカメオ出演したアンダーグラウンド・ヒップホップシーンで人気のラッパーEmiway Bantaiと、世界的に活躍するEDMアーティストのZaedenが出演。
Web-Of-Colors

他にもHoli Reloadedとか、RangRaveとか、EDM系のホーリーフェスはデリーやムンバイなどの大都市でたくさん開かれている。

バンガロールのMaa Holiではインドのストリートヒップホップの英雄Divineが登場。
地元ムンバイじゃなくてバンガロールに出るのか。
maaholi

ホーリーって楽しそうだけど、フツーの道端で色粉、色水をぶっかけあうノリについていけるかなあ、という向きには、ダンスミュージックがガンガンにかかっているこういうホーリー系フェスに参加してみてはいかがでしょう?
音楽で盛り上がりながら色粉をぶっかけ合えば、あなたもきっと普段の自分から解放されて新しい自分にであえるはず。
そこまでしてホーリーを楽しまなくても別にいいやって人も多いかもしれないが(私もだ)、こんなふうに伝統行事にどんどん新しい要素を入れて楽しんでしまうのも、じつにインドらしい傾向だと言える。

ホーリーにあわせて音楽シーンこれだけ盛り上がっているということは、当然ホーリーをテーマにした曲もたくさんリリースされている。
インドのヒップホップシーン黎明期から活躍するKRSNAと、ニューデリー出身のパンジャビ系シンガーDeep Kalsiが昨年のホーリーシーズンにリリースした曲は、その名も"Hip Hop Holi"


こちらはShobi Sarwan Ft. PKという人たちによるトラップっぽいリズムのホーリーソング。


このRapper Nanyoo x Yz SDという人たちはどうやらチャッティースガル州の小さな街ライガール(Raigarh)のラッパーのようだが、強烈なバングラのリズムに乗せてラップ! 

全くもって垢抜けないが、それだけにインドの田舎町の若者の雰囲気がびんびん伝わってくる。

こちらはボリウッド映画のホーリーソング。
去年公開された"Genius"という映画の挿入歌。
たまたま目についたものをいくつか紹介したが、Youtube等ではホーリー向けのパーティーミックスなどがたくさんアップされているので、日本でホーリーをお祝いしたい人もチェックしてみてほしい。

ちなみにホーリー系フェスは(去年も書いたけど)インドのみならずイギリス、ドイツ、アメリカ、オーストラリアなど多くの国でも開催されている。
外国のこうしたフェスティバルは暦の上のホーリーとは関係なく開催されることも多く、例えば昨年ベルリンで行われたこの"Holi Festival of Colors"は8月24日に開催されたようだ。
 
ご覧のようにインド系の人々ではなく、ほぼ地元のパリピのみなさんで盛り上がっている様子。
日本だと、まあ場所貸してくれるところがなかなかないだろうなあ。

インドで春に行われる音楽フェスティヴァルはホーリー関連のものだけではない。
3月9〜10日にかけてムンバイ郊外のMaladの農場で行われたControl ALT Delete(CAD)は、商業主義を排してクラウドファンディングで集めた資金のみで開催されるフェスで、今年で8年めの開催となる。
ControlALTdelete
入場チケットの代金も、定価ではなく払いたいだけ払えば良いという非常に画期的なこのイベントは、出演者もジャンルを問わず先鋭的かつ純粋な音楽表現を追求しているアーティストが集まっている。
今年の出演者は、これまでこのブログで紹介した中では、北東部の女性R&BシンガーMeba Ofilia, シンガーソングライターのRaghav Meattle, Aditi Ramesh率いるLadies Compartment, ラップユニットのSwadesi, 来日経験もあるデスメタルバンドのGutslitら。

地元ムンバイのエレクトロニックデュオFlex Machinaのステージの様子はこんな感じだ。

こちらはホーリー系の大規模フェスと比べるとぐっと手作り感溢れる感じ。
とはいえこれだけ多くのアーティストを集めながら(テントを張ってキャンプして参加したアーティストもいるらしい)、とことんまでインディペンデントにこだわった姿勢は素晴らしい。
今年はクラウドファンディングで目標額の50万ルピーを大きく上回る65万ルピーを集めることに成功し、近所からの騒音のクレームもあったようだが、無事2日間の日程を終えたということのようだ。

というわけで、今回はコマーシャルからアーティスティックまで盛りだくさんのインド春のフェス事情を紹介しました!
それではまた!




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goshimasayama18 at 00:05|PermalinkComments(0)

2018年07月02日

Tomorrowlandに出演するインド人EDMアーティスト! Lost StoriesとZaeden!

7月にベルギーで行われる世界最大のEDMフェスティヴァル、Tomorrowland.
今回は、世界一チケットが取りにくいとも言われるこのフェスへの出演経験のあるインド人アーティストを紹介します。

そのうちの一組はLost Stories.

2015年以来、Tommorowlandへの出演を重ねている彼らはムンバイ出身のPrayag MehtaとRishab Joshiの2人組で、2009年にキャリアを開始してすぐにオランダの超有名DJ、TiëstoのレーベルBlack Hole Recordingsからシングル"False Promises"をリリースしている。
これがその曲。

今聴くと少し古さを感じる楽曲だが(プログレッシブ・トランス?)、なによりもまずインドらしさが全くないことに驚かされる。この曲は、インド人アーティストによる初の国際的な評価を受けたダンスミュージックとしてエポックメイキングなものだったとのこと。
要所要所で聞かれるきらびやかな旋律は、むしろレーベルの故郷であるオランダ色を感じさせるものだ。

古くは60年代Ravi  Shankar、90年代以降もバングラ・ビートの一時的なブームやA.R.Rahmanなど、インドの音楽が世界的な評価を得ることはたびたびあった。
でもそのいずれもが、「インドらしさ」を特徴とした、西洋から見るとエキゾ趣味的なものであったことは否めない。
ところが彼の音楽は、音だけを聴いていたらヨーロッパのアーティストだとしか思えないサウンドだ。
インドでもついにこういう音が作られるようになったかと思うと、うれしいようなさみしいような複雑な気持ちになる(とはいえ、その後もインド国内でインド要素盛りだくさんの面白い音楽が多く作られていることはいつも紹介している通り)。

他の曲は例えばこんな感じ。
"How You Like Me Now"

この曲に関して言えば、ビデオを見続けているとだんだん何がかっこよくて何がかっこ悪いのか、よく分からなくなってくる。
たぶん80年代のB級SFがモチーフなんだと思うが、この微妙な感じを遊び心やダサかっこ良さとして前向きに捉えて良いものなんだろうか。クラブミュージックに詳しい人教えて。

最近の曲では、ブラジル的なリズム?なんかも取り入れてきて、あいかわらずのインド離れっぷり。
"Spread the Fire"

いかに無国籍なサウンドで勝負してきたとはいえ、ダンスミュージックの世界では、ときにインド出身であるということは「売り」にもなる。
イスラエル人とベルギー人によるユニット、Jetfireとの共演曲では満を持してのインド要素炸裂!
その名も"India"!

90年代にアンダーグラウンドなレイヴシーンを席巻した、インド要素をサイケ風味の一部として取り入れていたゴアトランスの現代版といったところだろうか。
まあとにかく、彼の音楽性はインドのインディーミュージックの文脈で捉えるだけでは不十分で、多国籍かつ無国籍な享楽電子音楽の中の一アーティストとして評価するべきものなんだろう。
国籍やバックグラウンドにとらわれずに、単純に心地よいダンスミュージックとして消費するのがこういう音楽の本来の聴き方なのだと思う。

Tomorrowlandへの出演経験があるもう一人のインド人アーティストはZaeden.
彼はデリー近郊の成長著しい都市、グルガオン出身のDJで、なんと1995年出身の22歳という若さ!
幼い頃からタブラとピアノを習い、14歳からDJを始めたという、まさに新しい世代のインド人ミュージシャンだ。
彼もまた本場オランダのEDM系レーベル、Spinnin' Recordsと契約を結んでおり、早くも2015年にはTommorowlandへの出演を果たしている。 

ヴォーカリストをフィーチャーした曲や、コラボレーションやリミックスでの仕事が多く、この曲はアメリカ出身の人気DJ、Borgeousとの共作。
"Yesterday"


Coldplayの"Magic"のリミックス。


Cimo Frankelなるオランダ人シンガーとの共演"City of the Lonely Hearts"
アゲすぎないディープ・ハウス的とも言える音楽性にまたインドらしからぬものを感じる。


Ankit Tiwariというインド人シンガーの曲のプロデュース、"Tere Jaane Se"

ヒンディー語のタイトルを含めて、オールインディア体制でこういう音楽を作るようになったかと思うと、90年代からインドを知っている身としてはとても感慨深い。

今後、インドらしさという武器なしで、国際的なマーケットで評価を受けるこうした新世代のアーティストは今後ますます増えてくるだろう。
 
この規模のイベントががんがんに盛り上がっているところを見ると、インドのEDMシーン、まだまだ勢いを増していきそうな予感。
彼らが今後もこのままの路線で世界的な評価を高めて行くのか、どこかでルーツに戻ってインド的な要素を取り入れて行くのか、これからも注目していきたいと思います! 

goshimasayama18 at 22:34|PermalinkComments(0)