Tejas

2022年01月10日

Rolling Stone Indiaが選んだ2021年のベストアルバムTop10!

前回の記事ではRolling Stone Indiaが選んだ2021年のベストシングル10曲を紹介したが、今回特集するのは同誌が選んだ2021年のベストアルバム10選!

これがまた想像をはるかに超えていて、我々が知るインドや今日の音楽シーンのイメージを覆す驚くべき作品が選ばれている!

(元記事はこちら
それではさっそく紹介してみよう。


1. Blackstratblues  "Hindsight2020"



Rolling Stone Indiaが選んだ2021年のベストアルバム第1位は、ジェフ・ベックやサンタナを彷彿させる70年代スタイルのロックギタリスト、Warren MendonsaによるBlackstratblues名義のインストゥルメンタル・アルバム"This Will Be My Year".
世界の音楽のトレンドとまったく関係なく、2021年にこのアルバムを選ぶセンスにはただただ吃驚。
彼は派手なテクニックで魅せるタイプのギタリストではなく、チョーキングのトーンコントロールや絶妙なタメで聴かせる通好みなアーティストで、発展著しいインドの音楽シーンのなかでも、なんというか、かなり地味な存在だ。
今作はちょっとスティーヴ・キモックとか、あのへんのジャムバンドっぽい感じもある。
Warrenはじつはこのランキングの常連で、2017年にも前作のアルバム"The Lost Analog Generation"が2位にランクインしている。(単に評者の好みかもしれないが)
このアルバムでは、日本文化からの影響を受けているエレクトロニック・ミュージシャンのKomorebiが2曲に参加している。
ちなみにWarrenはインド映画音楽界のビッグネームである3人組Shankar-Eshaan-Loyの一人、Loy Mendonsaの息子でもある。




2. Prabh Deep  "Tabia"



軽刈田も2021年のTop10に選出したデリーのラッパーPrabh Deepの"Tabia"が2位にランクイン。
私からの評はもう十分に書いたのでここでは繰り返さないが、Rolling Stone Indiaは、この作品の多様に解釈できる文学性とストーリーテリングを高く評価しているようだ。
確かに彼のリリックは、英訳で読んでも文豪の詩のような、あるいは宗教的な預言のような深みと味わいがある。
そこに加えてこの声とサウンド(トラックもPrabh Deep自身が手掛けている)。
インドのヒップホップアーティストの中でもただひとり別次元にいる孤高の存在と呼んでいいだろう。
高く評価されないわけがない。



3. Shreyas Iyenagar  "Tough Times"



プネー出身のマルチ・インストゥルメンタル・プレイヤーが、新型コロナウイルスのパンデミックにインスパイアされて制作したジャズ・アルバムが3位にランクイン。
こちらもサウンド面での2021年らしさがある作品ではないが、シングル部門で1位のソウルシンガーVasundhara Veeと同様に、インドには珍しい本格志向のサウンドを評価されたのだろう。



4. Tejas  "Outlast"




ムンバイのシンガー・ソングライターTejasのダンスポップアルバム。
優れたポップチューンを作るかたわら、一昨年はコロナウイルスによる全土ロックアウトの期間に、前代未聞の「オンライン会議ミュージカル」を作るなど、アイデアと才能あふれるアーティストである。
今作は、ちょっと80年代っぽかったり、K-Popっぽかったりと、現代インドの音楽シーンのトレンドを押さえた作風になっていて、Tejas曰く昨年解散したDaft Punkの影響も受けているとのこと。
言われてみればたしかにそう感じられるサウンドだ。



5. Second Sight  "Coral"



このムンバイ出身の5人組は、個人的に今回のランキングの中で最大のめっけもの。
その音楽性は、ジャズ、プログレ、フォーク、R&B、ラップ、サイケなどの多彩な要素を含んでいる。
全編にわたってハーモニーが美しく、プログレッシブ・ロック的な複雑さはあるが、とっつきにくさはなく、とにかくリラックスした音像の作品だ。
2018年にEP "The Violet Hour"でデビュー(当時は男女2人組だったようだ)した彼らのファーストアルバム。
意図的にインド的な要素は入れない主義のようだが、このユニークなサウンドはインドでも世界でも、もっと聴かれて良いはずだ。



6. Godless  "State of Chaos"



70’s風ギターインスト、ヒップホップ、ジャズ、ダンスポップと来て、ここにゴリゴリのデスメタルが入ってくるのがこのランキングの面白いところ。
南インドのハイデラーバードとベンガルールを拠点にしているGodlessは、2016年のデビュー以来、メタルシーンでは高い評価を得ていたバンドだ。
サウンドは若干類型的な印象を受けるものの、演奏力は高いし、リフやアレンジのセンスも良いし、インドのメタルバンドのレベルの高さを改めて思い知らされる。
メンバーの名前を見る限り、メンバーにはヒンドゥーとムスリムが混在しているようで、世界のメタルバンドの情報サイトEncyclopaedia Metallumによると、歌詞のテーマは「死、反宗教、紛争、人間の精神」とのこと。
宗教大国インドで、異なる宗教を持つ家庭に生まれた若者たちが、Godlessという名前で一緒に反宗教を掲げてデスメタルを演奏しているところに、どこかユートピアめいたものを感じてしまうのは感傷的すぎるだろうか。
そういう見方を抜きにしても、インド産メタルバンドとして、Kryptos, Against Evil, Gutslit, Demonic Resurrectionらに次いで、海外でも評価される可能性のあるバンドだと言えるだろう。



7. Arogya  "Genesis"



デスメタルの次にこのバンドが来るところがまた面白い!
インド北東部シッキム州ガントクで結成されたArogyaは、Dir En Greyやthe GazettEらのビジュアル系アーティストの影響を受けたバンドとして、すでに日本や世界でも(一部で)注目を集めていた。
彼らにアルバム"Genesis"については、例えばこのAsian Rock Risingのレビューですでに日本語で詳しく紹介されている。


これまでネパールやアッサム州グワハティを拠点に、ネパール語の歌詞で活動していたという彼らだが(シッキムあたりにはネパール系の住民も多いので、もともとネイティブ言語だったのだろう)、今作では英語詞を採用し、よりスケールの大きいサウンドに生まれ変わっている。
これまでも、アニメやコスプレや音楽など、インド(とくに北東部)におけるジャパニーズ・カルチャーの影響については紹介してきたが、彼らはインドに何組か存在する日本の影響を受けたバンドの中でも、とくに際立った存在と言える。
小さなライブハウスよりも、巨大なアリーナでこそ映えそうな彼らのバンドサウンドにふさわしい人気と評価を彼らが得られることを、願ってやまない。

(これまでに書いたインドにおける日本文化の記事をいくつかリンクしておきます。ナガランドのコスプレフェスなぜかJ-Popと呼ばれている北東部ミゾラム州のバンドAvora Records日本の音楽にやたら詳しいデリーのバンドKraken. どの記事もおすすめです)




8. Mali  "Caution to the Wind"



ムンバイ在住のシンガーソングライターMaliが8位にランクインした。
美しいメロディーの英語ポップスを歌うことにかけては以前から高い評価を得ていた彼女のファーストアルバム。
女性シンガーソングライターのなかでは、Sanjeeta Bhattacharyaあたりと並んで、今後もシーンをリードし続ける存在になりそうだ。
アルバム収録曲の"Age of Limbo"のミュージックビデオは、コロナ禍がなければ日本で撮影する予定だったそうで、状況が落ち着いたらぜひ日本にも来てもらいたい。



9. Lifafa  "Superpower 2020"



軽刈田による2021年Top10でも選出したLifafaが9位にランクインしている。
Lifafaはヴィンテージなポップスを演奏するデリーのバンドPeter Cat Recording Co.の中心人物Suryakant Sawhneyによるソロプロジェクト。
そのサウンドのユニークさだけでも十分に評価に値するが、Rolling Stone Indiaは、パスティーシュとウィットに富み、ときに政治的でもある彼の歌詞を高く評していて、Prabh Deep同様、彼についてもその歌詞の内容を詳しく読んでみたいところだ。

(LifafaおよびPeter Cat Recording Co.については、こちらの記事から)



10. Mocaine "The Birth of Billy Munro"




MocaineはデリーのロックアーティストAmrit Mohanによるプロジェクト。
この"The Birth of Billy Munro"は、Nick Cave and  the Bad Seeds(80〜90年代にロンドンを拠点に活躍したロックバンド)のオーストラリア人シンガー、ニック・ケイヴによる小説"Death of Bunny Munro"にインスパイアされたコンセプトアルバムとのことで、もはやこの情報だけで面白い。
サウンド的には、ブルース、ハードロック、グランジ等のアメリカン・ロックの影響が強い作風となっている。
2022年には早くもBilly Munroシリーズの続編をリリースする予定とのこと。




というわけで、アルバム10選に関しても、このサブスク全盛、シングル重視の時代にあっても、ジャンルを問わず充実した作品が多くリリースされていたことが分かるだろう。
昨年の10選と比べても、インドの音楽シーンがますます成熟してきていることが一目瞭然。


2022年にはどんな作品に出会えるのか、ますます楽しみだ。


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goshimasayama18 at 21:32|PermalinkComments(0)

2021年11月07日

インドからビートルズへの53年越しの回答! "Songs Inspired by The Film the Beatles and India"



ビートルズファンならご存知のとおり、インドは彼らに少なからぬ影響を与えた国でもある。
1960年代、若者たちの間では、ベトナム戦争への反対の機運が高まり、西洋の物質主義的な文化に疑問が持たれ始めていた。
インドの文化は、欧米の既存の価値観に変わるカウンターカルチャーとして注目され、ビートルズのメンバーたちも、1968年にヒンドゥー教の聖地リシケーシュにあるヨガ行者にして精神的指導者のマハリシ・マヘシュ・ヨギのアシュラム(修業場)に滞在して過ごした。

(その経緯と顛末は、このRolling Stone Japanの記事に詳しい)



インドに影響を受けたのはビートルズだけではなかった。
当時、The Rolling Stonesは"Paint It, Black"でシタールを導入しているし、インドの服をヒッピー・ファッションに取り入れるミュージシャンも多かった。
当時、ヨガや東洋的な神秘思想は、LSDなどのドラッグと並んで、新しい感覚を覚醒させ、悟りの境地に至るための手段として見られていたのだ。
その後も、90年代のKula Shakerのようなロックバンドや、ゴアトランスなどのダンスミュージックが、サイケデリックやエキゾチックやスピリチュアルを表現する手段として、インド音楽の要素を導入している。
ただ、その多くが、雰囲気づくりのための表面的な引用にとどまっているのもまた事実。
90年代、インドの旅から帰ってきた私は、彼らのサウンドに以前ほど夢中になれなくなってしまい、今でいうところの「文化の盗用」のようなもやもやした感覚を抱いていた。


時は流れて2021年。
いつもこのブログで紹介しているように、インドの音楽シーンもずいぶん進化・変貌した。
経済成長とインターネットの発展により、ヒップホップやEDMやロックといった欧米の音楽の受容が進み、今ではインド国内にもこうしたジャンルの優れたアーティストがたくさんいる。
そのなかには、きわめて優れたポピュラーミュージックを作っている人もいるし、西洋の音楽にインドの伝統的な要素を取り入れた独自の「フュージョン」を作り上げている人もいる。
つまり、20世紀にはインドから欧米への一方通行だった音楽的影響は、今では完全に双方向的なものとなっているのだ。

ビートルズのインド滞在に焦点をあてたドキュメンタリー映画"The Beatles and India"の公開にともなってリリースされた、インドのミュージシャンたちによるトリビュートアルバム"Songs Inspired by the Film the Beatles and India"は、いわばインドからビートルズへの、そして、インド音楽の要素をポピュラーミュージックのスパイスとして使ってきた西洋音楽リスナーへの、53年越しの回答なのである。

これが非常に面白く、そして素晴らしかった。
収録曲は以下の通り。


1. "Tomorrow Never Knows" Kiss Nuka
2. "Mother Nature's Son"  Karsh Kale, Benny Dayal
3. "Gimme Some Truth" Soulmate
4. "Across the Universe" Tejas, Maalavika Manoj
5. "Everybody's Got Something to Hide (Except Me and My Monkey)" Rohan Rajadhyaksha, Warren Mendonsa
6. "I will" Shibani Dandekar, Neil Mukherjee
7. "Julia" Dhruv Ghanekar
8. "Child of Nature" Anupam Roy
9. "The Inner Light" Anoushka Shankar, Karsh Kale
10. "The Continuing Story of Bungalow Bill" Raaga Trippin
11. "Back in the USSR" Karsh Kale, Farhan Akhtar
12. "I'm so Tired" Lisa Mishra, Warren Mendonsa
13. "Sexy Sadie" Siddharth Basrur, Neil Mukherjee
14. "Martha My Dear" Nikhil D'Souza
15. "Norwegian Wood (This Bird Has Flown)" Parekh & Singh
16. "Revolution" Vishal Dadlani, Warren Mendonsa
17. "Love You To" Dhruv Ghanekar
18. "Dear Prudence" Karsh Kale, Monica Dogra
19. "India, India" Nikhil D'souza


ビートルズの曲(一部ジョンのソロ作品)としては、ややシブめの選曲で、なかにはよほどのファンでないと知られていないような曲も入っているが、これらはいずれもインドと何らかのつながりのある楽曲たちである。
そして、いつもクソ長いブログを書いている身としては申し訳ないのだけど、インドとロック好きにとっては、語らずにはいられない要素が満載だ。

というわけで、蛇足とは思いながらも、"Songs Inspired by the Beatles and India"から何曲かをピックアップしてレビューさせていただきます!


1. "Tomorrow Never Knows" Kiss Nuka


オリジナルは1966年発表の"Revolver"の最後に収録されている、ジョン・レノンによる曲。
ジョンの「数千人ものチベットの僧侶が経典と唱えているような感じにしたい」という意図のもと、ワンコードで同じメロディーを繰り返したこの曲は、結果的にサイケデリックなクラブ・ミュージック的なサウンドをあまりにも早く完成させた楽曲となった。
その"Tommorow Never Knows"を、インドのアーティストが、コード進行のあるエレクトロニック・ポップとしてカバーしているということに、何よりも面白さを感じる。
このような、インド人アーティストによるビートルズの楽曲の「脱インド化」はこのアルバムの聴きどころの一つだ。
この曲をカバーしているKiss Nukaはデリー出身のエレクトロニックポップアーティスト。
映画音楽のプレイバック・シンガーとしてデビューしたのち、アイドル的な雰囲気のヴォーカルヴループ'Viva!'の一員としての活動を経て、ソロの電子音楽ミュージシャンとなった彼女の経歴は、現代インドの音楽シーンの変遷を体現していると言ってもよいだろう。
ビートルズがこの曲を発表した30年後の90年代には、イギリスのテクノユニットのケミカル・ブラザーズが"Setting Sun"や"Let Forever Be"といった曲でオマージュを捧げたが、そのさらに30年後の2020年代にインドのアーティストがこういうカバーを発表したということがこのバージョンの肝であって、アレンジがあざといとかサウンドがちょっと古臭いとかいうことは重要ではない。
優れたポップミュージックは輪廻する。


2. "Mother Nature's Son"  Karsh Kale, Benny Dayal


このアルバムの序盤最大の目玉といっても過言ではないのがこの曲。
原曲は"The Beatles"(ホワイトアルバム)に収録されたポール・マッカートニーによるマハリシ・マヘシュ・ヨギの影響を受けた曲。
カバーしているのはイギリス出身のインド系電子音楽アーティスト兼タブラ奏者で、クラブミュージックから映画音楽まで幅広く活躍しているKarsh Kaleと、インド古典音楽とR&Bという両方のルーツを持つBenny Dayal.
ビートルズのカバーをするならこれ以上ない組み合わせのこの二人は、これまでもKarshのソロアルバムなどで共演している。
インド的な要素とビートルズ的な要素が徐々に融合してゆく様が美しい。
このアルバムの聴きどころは、「脱インド化」だけではなく、こうした本場のアーティストならではの「インド化」でもあるということは言うまでもない。


4. "Across the Universe" Tejas, Maalavika Manoj


1969年に発売されたアルバム"Let It Be"に収録されている楽曲だが、はジョン・レノンによって67年には書かれていたという。
カバーしているのはムンバイを拠点に活動しているシンガーソングライターTejasとMali(この曲では本名のMaalavika Manoj名義でクレジット)。
インドの思想に傾倒していたジョンによる'Jai Guru Deve Om'という導師(または神)を讃えるサビのフレーズゆえに、このアルバムの収録曲に選ばれたのだろう。
ふだんは洋楽ポップス的な楽曲を発表しているTejasとMaliが、ここではニューエイジ的な音使いが目立つ、いかにもスピリチュアルなアレンジを披露している。
欧米や日本のアーティストがやったらこっぱずかしくなるようなアレンジだが、インド人である彼らがやるとなんだかありがたいような気もする。
これを、インド人が欧米目線のエキゾチシズムに取り込まれたと見るか、インド人である彼らがステレオタイプをしたたかに利用していると見るか。


6. "I will" Shibani Dandekar, Neil Mukherjee



ホワイトアルバム収録のポール・マッカートニーによる佳曲。
インドと関係なさそうなのになぜ選ばれたのかと思ったら、これもリシケーシュ滞在時に書かれた曲だそうだ。
プネー出身のシンガーShibani Dandekar(現在はオーストラリア国籍)とコルカタ出身のギタリストNeil Mukherjeeによるカバーで、バーンスリー(竹笛)とタブラが印象的。
これもいかにもインド的なアレンジだが、センス良く聴こえるのはアコースティックなサウンドと原曲の良さゆえか。
おいしいチャイを出す日あたりの良いカフェでかかっていたら素敵だと思う。


8. "Child of Nature" Anupam Roy

これは知らない曲だと思ったら、ジョン・レノンの名作"Imagine"(1971年)収録の名曲"Jelous Guy"の初期バージョンだそうで、これもやはりリシケーシュ滞在中に書かれた曲とのこと。
のちにオノ・ヨーコへの思いをつづった歌詞に改作されるが、当初の歌詞は、ポールの"Mother Nature's Son"と同様に、マハリシ・マヘシュ・ヨギの説法にインスパイアされて書かれたものだろう。
ビートルズのインド趣味は、ビートルズファンに必ずしも好意的に捉えられているわけではないが、こうした一見インドには無関係な楽曲の制作にも影響を与えていると考えると、やはりマハリシの存在は大きかったのだろうなと感じる。
カバーしているのは、映画音楽でも活躍しているコルカタ出身のシンガーソングライターAnupam Roy.
タブラとバーンスリーを使ったアレンジは、やや安易だが、原曲の良さが映えている。



9. "The Inner Light" Anoushka Shankar, Karsh Kale
 
原曲はビートルズのメンバーでもっともインドに傾倒していたジョージ・ハリスンによる曲で、インドの楽器のみで演奏されており、歌詞は老子の言葉からとられているという、東洋趣味丸出しの楽曲。
それでもジョンもポールもこの曲の美しさを絶賛しており、ビートルズによる「インド音楽」の最高峰と言っても良いだろう。
ジョージのシタールの師匠でもあるラヴィ・シャンカルの娘アヌーシュカとKarsh Kaleによるカバーは、「こういうことがやりたかったんだろ?まかしときな」という声が聴こえてきそうなアレンジだ。

 
11. "Back in the USSR" Karsh Kale, Farhan Akhtar

ホワイト・アルバム収録の原曲は、ポールによるビーチボーイズに対するオマージュというかパロディ。
どうしてこのアルバムに選曲されたのだろうと思ったら、どうやらこの曲もリシケーシュ滞在中に書かれたものだったからだそうだ。
当時のリシケーシュにはビートルズのメンバーのみならず、ビーチボーイズのマイク・ラヴも滞在しており、この曲の歌詞には彼の意見も取り入れられているという。
Karshによるドラムンベース的なアレンジは、'00年代のエイジアン・マッシヴ全盛期風で少々古臭くも感じるが、ここはイギリス人がインドでアメリカのバンドにオマージュを捧げて書いたソビエト連邦に関する曲を、タブラ奏者でエレクトロニック・ミュージックのプロデューサーでもあるKarsh Kaleとボリウッド一家に生まれたFarhan Akhtar(『ガリーボーイ』の監督ゾーヤー・アクタルの弟)がクラブミュージック風にアレンジしているということの妙を味わうべきだろう。


15. "Norwegian Wood (This Bird Has Flown)" Parekh & Singh

1965年のアルバム『ラバーソウル』収録のシタールの響きが印象的な曲(主にジョンが書いたとされている)を、コルカタ出身で世界的な評価の高いドリームポップデュオ、Parekh &Singhがカバー。
シタールが使われていてたメロディーをギターに置き換えて「脱インド化」し、いつもの彼ららしい上品なポップスに仕上げている。
前述の通り、このアルバムの面白いところは、典型的なビートルズ・ソングをインド的なアレンジでカバーするだけではなく、インドっぽい曲をあえて非インド的なアレンジにしている楽曲も収録されているところ。
都市部で現代的な暮らしをしているインド人ミュージシャンたちにとっては、むしろこうした欧米的なポップスやダンスミュージックのほうが親しみのある音像なのだろう。



17. "Love You To" Dhruv Ghanekar


ジョージ・ハリスンがビートルズにはじめてインド伝統音楽の全面的な影響を持ち込んだ曲で、原曲は1966年のアルバム『リボルバー』に収録されている。
オリジナルではシタールやタブラといった楽器のみで演奏されていたこの曲を、ムンバイのギタリストDhruv Ghanekarは、ある程度のインドの要素を残しつつ、ギターやベースやドラムが入ったアレンジで「脱インド化」。
結果的にちょっとツェッペリンっぽく聴こえるのも面白い。



19. "India, India" Nikhil D'souza


これも知らない曲だったが、どうやら晩年(1980年)にジョンが書いた未発表曲で、2010年になってデモ音源がようやくリリースされた曲らしい。
よく知られているように、ジョンはリシケーシュ滞在中にマハリシ・マヘシュ・ヨギの俗物的なふるまいに嫌気がさして訣別し、その後"Sexy Sadie"(このアルバムでもカバーされている)で痛烈に批判している。
ソロ転向後の"God"でも「マントラ(神への賛歌)もギーター(聖典)もヨガも信じない」と、インドの影響を明確に否定しており、私は70年代以降のジョンは、すっかりインド的なものには興味がなくなったものと思っていた。
だが、この曲を聴けば、ジョンが、その後もインドという国に、若干ナイーヴな愛情を持ち続けていたことが分かる。
ラフなデモ音源しか残されていなかったこの曲を、ムンバイのシンガーソングライターNikhil D'Souzaが完成品に仕上げた。
ジョンらしいメロディーが生きた、素敵なアレンジで、インド好きのビートルズファンとしてはうれしくなってしまう。


他にも聴きどころは満載だが、(例えば、ジョン・レノンのソロ作品をパーカッシブなマントラ風に解釈したSoulmateによる"Gimme Some Truth"も、「ジョンってこういうアレンジの曲も書くよね!」と膝を打ちたなる)いつまで経っても終わらなくなってしまうのでこのへんにしておく。

インドのミュージシャンによる欧米ロックのカバーは、70年代にもシタール奏者のAnanda Shankarによるものなどがあったが、いかにもキッチュなエキゾチシズムを売りにしたものだった。
ロックをきちんと理解したアーティストによるロックの名曲をインド的に解釈したカバー・バージョンは、実は私がずっと聴きたかったものでもあった。

(その話はこの記事に詳しく書いてあります)


ビートルズへの53年越しの回答であると同時に、私の23年越しの願望にも答えてくれたこのアルバムを愛聴する日々が、しばらく続きそうだ。




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goshimasayama18 at 22:55|PermalinkComments(2)

2021年05月10日

次世代の主流になりうるか? インドの「アンダーグラウンド・メインストリーム・ポップ」!


ご存知の通り、インドのポピュラーミュージックの主流は映画音楽である。

ところが、21世期に入った頃から、少しずつ状況が変わり始めた。
インドの経済成長による衛星放送の普及、そしてインターネットの発展にともなって、人々が様々な音楽を聴く機会が増えてきたのだ。
2010年代になると、そうした音楽を好む若者たちのなかから、多くのラッパーやロックバンドや電子音楽アーティストが登場した…というのは、いつもこのブログで紹介している通りである。

とはいえ、インド全体の音楽シーンのなかでインディペンデント・ミュージックが占める割合はまだまだ少ない。
都市部の若者を中心にファンやリスナーを獲得しているものの、圧倒的な規模や予算で市場を席巻する映画音楽には遠く及ばない。
やはり、いまでもインドの音楽シーンは、映画音楽を中心に回っているのだ。

それでも、桁違いの人口規模を誇るインドのインディーミュージックシーンはびっくりするほど多様だ。
なかには、インドらしさをまったく感じさせない、アメリカやイギリスのチャートの上位を賑わせそうなポップサウンドを作っているアーティストたちもいる。
いわば彼らは「世界のメインストリームの音楽を作っているインドのアンダーグラウンド・アーティスト」というわけだ。

今のところ、彼らの音楽はまだポピュラリティを獲得しているとは言い難いが、質の高い音楽を作っているアーティストも多い。
といわうけで、今回はそんなアーティストたちを紹介したいと思います。


手始めに、先日紹介した「日本語で歌うインド在住のインド人シンガー」Drish Tとも共演していたAnimeshの"Pressure on It"を聴いてみて欲しい。
ファンキーなリズムに乗ったキャッチーなメロディーは、ちょっとBruno Marsのアップテンポな曲を思わせるところもある。
ヴォーカルのFranz Dowlingはオーストラリアのブリスベン在住のシンガーだそうで、国籍を超えたコラボレーションであるという点もとても今っぽい。
AnimeshはDrish Tと同じチェンナイのKM Music Conservatory(A.R.ラフマーンが作った音楽学校)に通う学生とのことで、彼女と同年代なら、まだ20歳くらいということになる。
これから洗練されてゆけば、かなり面白い存在になりそうだ。


続いて紹介するのは、同じくチェンナイのポップアーティストKevin Fernandoが、プロデューサーのAshwin Vinayagamoorthyと女性シンガーのNivedita Lakraと共演した"Foxy".
Kevin Fernandoという欧米風の名前は、おそらく彼がクリスチャンの家庭に生まれたことによるものだろう。
プロデューサーのAshwin Vinayagamoorthyは、ふだんはタミル語映画の音楽を手掛けている人物のようだ。
ラフマーンも然り、いつもは地元のマーケットを意識した音楽を作っていても、こういう欧米ポップス的な引き出しも当然のように持っているというのが現代インドの商業音楽家の強みだろう。


3月にデビュー曲の"Summer Nights"をリリースしたばかりのAneeshは、ムンバイのエレクトロニック・ミュージックのプロデューサー。
ちょっとラテンっぽいリズムを取り入れた楽曲は今の気分にぴったり。
AneeshはAviciiやJonas Blue, KSHMRなどのEDMアーティストの影響を受けているという。
この曲のヴォーカルは、テキサス在住のシンガーソングライターBrandon Chaseで、ここでも国境を超えたコラボレーションが行われている。
インドのインディペンデントシーンには、欧米での生活や留学を経験したアーティストも多く、英語圏のシーンとの心理的・言語的な距離は我々が想像するよりもずっと近い。
他のアジア圏のアーティストと比較して、彼らのこうした点もグローバルな成功へのアドバンテージとなるはずだ。


Chirag Todiはインド西部グジャラート州アーメダーバードのプログレッシブロックバンドHeat Sinkのギタリスト。
ソロ作品の"Desire"ではファンキーな心地よいグルーヴを聴かせてくれている。
男性ヴォーカルはムンバイのバンドSecond SightのPushkar Srivatsar, 女性ヴォーカルはデリーのTania Nambier.
この曲はRolling Stone Indiaが選ぶ2020年のベストシングルにも選ばれていて、こうしたファンキーかつクールなグルーヴはインドの音楽好きに好まれているようだ。


もっとローカルなところだと、例えばこのAdhiraj Mathur.
まだ無名なミュージシャンで、情報はほとんど無いのだが、この曲は「シャワーを浴びているときに思いついて、ベッドルームでミキシングとマスタリングして、iPhoneでミュージックビデオを撮影した作品とのこと。
アナログビデオ風の映像の加工も最近インドのミュージックビデオでよく見られる傾向。
こうした映像が撮れるビデオカメラの時代には生まれていなかった若い世代が、アナログ的な要素を積極的に取り入れているのが興味深い(そもそも、もし生まれていたとしても、当時のインドにはこうした家庭用の映像機材はほとんど出回っていなかったはずだ)。
渋谷系の日本のミュージシャンが60年代や70年代の洋楽の影響を強く受けていたように、自分たちが持ち得なかった過去へのあこがれがひとつの原動力になっているのだろうか。


ムンバイのエレクトロニック系プロデューサーChaitxnyaの"You Broke Me First Flip"は女性ヴォーカルもの。
アーティスト名は'Chaitanya'と読むのだと思うが、おそらくは同名異人との混同を避けるために、名前を独特の綴りにするというのは、インドの有名人によく見られる手法だ。


ここまで紹介したアーティストたちは、インドのなかでもまだまだ無名で、YouTubeの再生回数も数百回から数千回、もっとも多いChirag Todiでもせいぜい15,000回程度の、ごくマイナーな存在に過ぎない。
オリジナリティーあふれるサウンドで、インドのインディペンデントシーンでより高い評価を確立しているアーティストたちも、コアなジャンルではなく、現代メインストリーム的な楽曲を手掛けている例が散見される。

例えば、日本にも存在しない和風のトラップ・ミュージックである'J-Trap'というジャンルを開拓し、最近ではヒップホップのビートメーカーとしても大活躍しているKaran Kanchan.
DIVINEのようなビッグネームとのコラボレーションでは、YouTubeで1,000万回を超える再生回数を叩き出している彼は、R&BシンガーRamya Pothuriとコラボレーションして、こんなキャッチーな曲をリリースしている。
ぶっといビートのイメージが強かったKanchanが、ここまでスムースかつポップな曲を手がけるのは非常に新鮮!
彼のビートメーカーとしての引き出しは非常に多く、最近ではDIVINEがコロナ禍で奮闘する人々に捧げた"Salaam"でのメロウなサウンドや、Shah RuleがMass Appeal Indiaからリリースした"Clap Clap"でのピアノを導入したビートが印象に残っている。


インディペンデント・シーンでの評価の高いムンバイのシンガーソングライターTejasは、この"Down and Out"でAviciiの"Wake Me Up"を思わせるカントリーっぽいメロディーと四つ打ちのビートの融合を試みている。
このブログでもこれまでにPrateek KuhadRaghav Meattleといった才能あふれるアーティストを紹介してきたが、彼の楽曲からもインドのシンガーソングライターのレベルの高さを改めて感じさせられる。


今回紹介したような「アンダーグラウンド・メインストリーム・ポップ」はまだ小さな潮流だが、彼らのポップセンスと、英詞での表現が得意という特性がうまく化ければ、インド国内のみならず、グローバルな市場で幅広いリスナーを獲得することも夢ではないように思う。
インドのインディー音楽に注目する立場としては、インドならではのユニークなサウンドを作っているアーティストも大好きが、こうした世界に通用するサウンドを作ろうとしているアーティストたちも応援したい。

彼らの今後の活躍に期待!




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2021年01月12日

Rolling Stone Indiaが選んだ2020年のシングル10選!

Rolling Stone Indiaが選ぶ2020年の10選シリーズ、今回はベストシングルを紹介します!
(もとの記事はこちら)


このTop 10はこれまでのアルバムやミュージックビデオと比べて、かなりカラーがはっきりしていて、いわゆる洋楽ポップス的なものが中心に選ばれている様子。
ご存知の通り、インドのメインストリーム音楽は映画音楽なので、欧米風のキャッチーなポップスは、インドではインディーミュージックということになる。
そのあたりの音楽ジャンルの「捻れ」も面白いのだが、前置きはこれくらいにして、それではさっそく見てみよう。


1. Chirag Todi feat. Tanya Nambiar, Pushkar Srivatsal  “Desire”

インド西部グジャラート州アーメダーバード出身のギタリスト/ヴォーカリストのChirag Todiは、ジャズロックバンドHeat Sinkのメンバーとしても活動している。
この"Desire"はスムースなファンクネスが心地よい一曲で、例によってこれが2020年のインドで最良のシングル曲かと言われると首を傾げたくなる部分もあるが、きっとこのさりげない感じがセンスの良さと評されて選出されたのだろう。
それにしても、aswekeepsearchingといいShashwat Bulusuといい、アーメダーバードはけっこういいミュージシャンを輩出する街だ。
いちどしっかりこの街のシーンを掘ってみないといけない。
共演のPushkar Srivatsalはムンバイの男女ポップデュオSecond Sightの一員、Tanya Nambiarはデリーの女性ヴォーカリストで、ソロでも客演でも活躍している。


2. Tejas  “The Bombay Doors”

コロナウイルスによるロックダウンをという逆境を活かして製作された「オンライン・ミュージカル」"Conference Call: The Musicall!"も記憶に新しいムンバイのシンガーソングライター、Tejas Menonの"The Bombay Doors"はファンキーなシンセポップ。
1位のChirag Todiもそうだが、この手のファンキーなポップスを手掛けるインディーアーティストはインドにも結構いて、Justin Bieberあたりの影響(有名過ぎてだれも名前を挙げないが)が結構あるんじゃないかと思う。


3. Dhruv Visvanath  “Dear Madeline”

ニューデリーのシンガーソングライターDhruv Visvanathは、パーカッシブなフィンガースタイルギターでも知られるミュージシャン。
アメリカのAcoustic Guitar Magazineで30歳以下の偉大なギタリスト30名に選ばれたこともあるという。
2018年には"The Lost Cause"がRolling Stone Indiaによるベストアルバム10選にも選出されており、国内外で高く評価されている。


4. Mali  “Age of Limbo”

ムンバイのマラヤーリー(ケーララ)系シンガーソングライターMaliの"The Age of Limbo"は、コロナウイルスによるロックダウンの真っ只中に発表された作品。
タイトルの'limbo'の元々の意味は、キリスト教の「辺獄」。
洗礼を受けずに死んだ人が死後にゆく場所という意味だが、そこから転じて忘却や無視された状態、あるいは宙ぶらりんの不確定な状態を表している。 
この曲自体はコロナウイルス流行の前に作られたもので、本来は紛争をテーマにした曲だそうだが、期せずして歌詞の内容が現在の状況と一致したことから、このようなミュージックビデオを製作することにしたという。
ちなみにもしロックダウンが起きなければ、Maliは別の楽曲のミュージックビデオを日本で撮影する予定だったとのこと。
状況が落ち着いたら、ぜひ日本にも来て欲しいところだ。


5. When Chai Met Toast  “When We Feel Young”

ケーララ州のフォークロックバンドWhen Chai Met Toastの"When We Feel Young"は、Rolling Stone Indiaによる2020年のベストミュージックビデオ(こちら)の第8位にも選ばれていた楽曲。
私の知る限り、ここ数年でベストシングルとベストミュージックビデオの両方に選出されていた楽曲は初めてのはず。
彼らはいつも質の高い楽曲を届けてくれる、安心して聴くことができるバンドのひとつ。


6. Nishu  “Pardo”

言わずと知れたコルカタのドリームポップデュオParekh & Singhの一人、Nischay Parekhのソロプロジェクト。
Parekh & Singhは英語のアコースティック・ポップだが、ソロではメロディーセンスはそのままに、ヒンディー語のシンセポップを聴かせてくれている。


7. Kalika  “Made Up”

KalikaはプネーのシンガーソングライターPrannay Sastryのソロプロジェクト。
ベストミュージックビデオ部門の1位にも選ばれた女性ソウルシンガーのSanjeeta Bhattacharyaと、マルチプレイヤーJay Kshirsagarをヴォーカルに迎えた"Made Up"は、南インドの古典音楽カルナーティックを思わせるギターリフが印象的な曲。


8. Seedhe Maut x Karan Kanchan  “Dum Pishaach”

インドNo.1アンダーグラウンド・ヒップホップレーベルAzadi Records所属のデリーの二人組Seedhe MautがムンバイのビートメイカーKaran Kanchanと組んだ"Dum Pistaach"は、ヘヴィロックっぽいギターを大胆に取り入れた意欲作。
Karan Kanchanはジャパニーズカルチャー好きが高じて、日本にも存在しない「和風トラップミュージック」のJ-Trapを生み出したことでも知られているが、昨今ではヒップホップシーンでも引っ張りだこの人気となっている。
インドとアメコミと日本風の要素が融合したようなビジュアルイメージも面白い。


9. The Lightyears Explode  “Satire”

ムンバイのロックバンドThe Light Years Explodeの"Satire"は、エレクトロファンクっぽい要素を取り入れたサウンド。
タイトルは「風刺」という意味だが、風刺の効いた社会的なリリックの曲も多い彼らはパンクバンドと見なされることもあるようで、かつてインタビューしたインド北東部のデスメタルバンドも彼らのことを優れたパンクロックバンドと評していた。


10. Runt – “Last Breath”

RuntはムンバイのシンガーソングライターSiddharth Basrurによるプロジェクトらしい。
彼はこれまでレゲエっぽい楽曲などをリリースしているが、この曲はインストゥルメンタルのヘヴィロック。
これといって特筆すべきところのない曲で、個人的にはトップ10に選ぶべき楽曲とは思わないが、まあそこは選者の好みなのだろう。


全体的にヒップホップ色が薄く、ロック/ポップスが強いのは媒体の性質によるのかもしれない。
英語詞の曲が目立つ(10曲中7曲)のもあいかわらずで、英語以外ではヒンディー語の楽曲しか選ばれていないのも、Rolling Stone Indiaの拠点がムンバイであることと無関係ではないだろう(ムンバイがあるマハーラーシュトラ州はマラーティー語圏だが、ヒンディー語で制作されるエンターテインメントの中心地でもある)。
全体的に、「ソツなく洋楽っぽい」感じの曲が選ばれがちなのは、日本で言う渋谷系っぽい価値観だと見ることもできそうだ。

いずれにしても、今年もなかなか興味深いラインナップではあった。
それでは今回はこのへんで!



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goshimasayama18 at 20:39|PermalinkComments(0)

2020年12月29日

2020年度版 軽刈田 凡平's インドのインディー音楽top10


2017年末に始めたこのブログも、おかげさまで丸3年。
これまでは、毎年年始めにRolling Stone India誌が選んだインドの音楽年間トップ10を紹介してきましたが(それもやるつもりですが)、今年は、軽刈田が選ぶインドのインディーミュージック年間トップ10を選んでみたので、発表してみたいと思います。


いつも偉そうに音楽を紹介してるけど、広大なインドのインディーミュージックを全て聴き込んでいるわけでもなく、言語も分からず、しばらくインドの地を踏めていない自分の興味や好みによるセレクトではありますが、映画音楽や古典音楽以外のシーンで何が起きているのかを知るきっかけにはなるはず。

ノミネートの条件は、今年インドでリリースされた楽曲、アルバム、ミュージックビデオであること。
選考基準はセールスでも再生回数でもなく、完全に主観!
とはいえ、一応いまのインドのシーンを象徴する楽曲を選んだつもりです。
全10選ですが、とくに順位はありません。


DIVINE "Punya Paap"

今のインドのインディー音楽について書くなら、どうしたってヒップホップから始めることになる。
DIVINEについては何度も書いているのでごく簡単に紹介すると、彼はムンバイ出身のラッパーで、ストリートラップ(いわゆるガリーラップ)シーンの初期から活動していた大御所(インドはシーンの歴史が浅いので、キャリアはまだ10年程度だが)。
2019年に公開された映画『ガリーボーイ』の「MCシェール」のモデルになったことをきっかけに知名度を上げ、今では米ラッパーNasのレーベルのインド部門である'Mass Appeal India'の所属アーティストとして活動している。
かつてストリートの日常をテーマにした「ガリーラップ」で人気を博していた彼は、最近では内面的なリリックやコマーシャルなパーティーラップなど、新しいスタイルに取り組んでいる。
この曲は彼のクリスチャンとしての宗教的な部分を全面に出した作品となっており、ガリーラップ時代とはまた別の気迫を感じさせる意欲作。
同じく今年リリースした"Chal Bombay"や"Mirchi"はかなりコマーシャル寄りな楽曲で、セルアウトと言われようと変わり続けるシーンになんとか食らいついてゆこうというベテランの意地を感じる。
最新アルバム"Punya Paap"では多彩な音楽性に挑戦しているが、どんなビートでも変わらないアクの強い独特のフロウを、彼のシグネチャースタイルと見るか不器用と見るかで評価が分かれそうだ。

DIVINEが音楽性を多様化させる一方で、最近ではBadshahやYo Yo Honey Singhといったコマーシャルラッパーたちは、従来アンダーグラウンドラッパーが使っていたような抑えたビートを選ぶことが多くなっている(これはムンバイ在住のHiroko Sarahさんの鋭い指摘)。
インドのヒップホップ界のメジャーシーンとインディーシーンの垣根はますます低くなってきているようだ。



MC STΔN  "Ek Din Pyaar"

DIVINEがインドのストリートラップの第一世代だとしたら、ヒップホップの新世代を象徴しているのがこのMC STANだろう。
マハーラーシュトラ州プネー出身の21歳。
メディアへの目立った露出もないまま、卓越したスキルとセンスを武器にYouTubeから人気に火がついた(と思われる)。
人気ラッパーEmiway Bantaiにビーフを仕掛けるなど、悪童的なキャラクターが先行していた彼は、2019年末にリリースした"Astaghfirullah"で、イスラームの信仰を全面に出したことでそのイメージを刷新。
内面的なテーマも扱う本格ラッパーという評価を決定的なものにした。
その後、再びこの"Ek Din Pyaar"(自身の悪評もネタにしている)のような不道徳路線に戻って数曲をリリースした後、つい先日また宗教色の強い"Amin"を発表したばかり。
こうした聖と俗の振れ幅、確かなラップスキルとセンス(トラックメイキングも自身で手掛けている)、ビジュアル、そして人気や知名度から見ても、彼こそがインドのヒップホップ新世代を象徴する存在と考えて間違いない。

今年のインドのヒップホップシーンは、他にもMass Appeal IndiaからリリースされたIkkaの"I"(これはコマーシャルラッパーのアンダーグラウンド回帰の好例)や、売れ線を完全に無視してエクスペリメンタルに振り切ったTienasの"A Song To Die"など、佳作ぞろいだった。
インドのヒップホップシーンの変化の激しさと面白さは今後もしばらく続くだろう。


Prateek Kuhad "Kasoor"
今年は世界中の音楽シーンが新型コロナウイルスの影響を受けた1年だったが、かなり早い段階からロックダウン政策が取られていたインドでは、この逆境を逆手にとって優れた作品をリリースするアーティストが目立った。
このPrateek Kuhadの"Kasoor"のミュージックビデオは、オンラインで集めた映像(恋愛にまつわるテーマへのリアクション)を編集して、非常にエモーショナルな作品に仕上げている。
ミュージックビデオの好みで言うなら、個人的にはこの曲が今年のNo.1。
この曲は他のアーティストたちにも響いたようで、インドを代表するEDMプロデューサー/シンガーソングライターのZaedenは、さっそくこの曲のカバーバージョンを発表していた。
Prateek Kuhadはインドのシンガーソングライターを代表する存在で、音楽ファンの支持も厚く、つい先ごろアメリカの名門レーベルElektraと契約したことを発表したばかり。
今後の活躍がもっとも期待されるアーティストの一人だ。



Tejas他 "Conference Call: The Musicall!"


コロナによる活動の制限を逆手にとって発表された作品のなかで、もっとも見事だったのが、この"Conference Call: The Musicall!"
インドには、Jugaad(ジュガール)という「今あるものを使って工夫してやりくりする」文化があるが、この曲はコロナ禍で急速に一般化したオンライン会議をミュージカルに仕立て上げ、さらには兼業ミュージシャンが多いインドの音楽シーンを皮肉をこめてテーマにした、まさに音楽的ジュガール。
シンガーソングライターTejas Menonが中心になって制作されたこのミュージックビデオは、ストーリーも面白いし楽曲も良くできていて、ミュージカルとしても純粋に楽しめる作品になっている。
全世界の音楽関係者が絶望したり、大真面目に「逆境に立ち向かおう」と訴えているときに、こういう面白い作品をしれっとリリースしてしまうのがインド人の素晴らしいところだ。



Aswekeepsearching "Sleep"

グジャラート州アーメダーバード出身で、現在はベンガルールを拠点に活動しているポストロックバンドが今年4月に発表したアンビエント・アルバム。
この作品に関しては、楽曲単位ではなくアルバムとしての選出。
ロック色の強かった前作"Rooh"とはうってかわって静謐でスピリチュアルな作風となったが、これがコロナウイルス禍でステイホームを余儀なくされた時代の雰囲気にばっちりはまった。
アンビエントとはいえ、トラックごとに個性豊かで美しい楽曲は飽きさせることがなく、個人的な感想を言うと、夜人気のない道をランニングしながら聴くと不思議な高揚感が感じられて大変心地よく、一時期愛聴していた。
インドには、ポストロックやアンビエント/エレクトロニカのような音の響きを重視したジャンルの優れた才能アーティストが多く、これからも注目してゆきたい。



Whale in the Pond "Dofon"

コルカタの「ドリームフォーク」バンドWhale in the Pondがリリースした"Dofon"は、核戦争による世界の終末を迎えた人類を描いたコンセプトアルバム。
この作品もアルバムとしての選出としたい。
"Aaij Bhagle Kalke Amra Nai"はアルバムの冒頭を飾る楽曲で、ベンガル語の方言であるシレッティ語(Sylheti)で歌われているが、アルバムには"Kite/Loon"のように英語で歌われている曲も多く収録されている。
サブスク全盛の現代に、世紀末的なテーマのコンセプトアルバムとはなんとも前時代的だが、この作品はソングライティング、構成、伝統文化との融合など、あらゆる面から見て大傑作。
昨今のインドのアーティストには珍しく、ウェブサイトを通じてフィジカルリリースをしていると思ったら、なんと「CDは時代遅れなのでついていません」との注釈が書かれていて、アルバムがダウンロードできるリンクのついたブックレット(コンセプトやビジュアルアート、歌詞が掲載されている)のみを販売しているとのこと。
こうしたセンスを含めて、伝統的な部分と革新性を併せ持った、才能あふれるバンドだ。



Heathen Beast "The Revolution Will Not Be Televised But It Will Be Heard"

インドのインディーミュージックの激しい面、政治的・社会的な面を煮詰めたような作品。
Heathen Beastはコルカタの無神論ブラックメタル/グラインドコアバンド。
このアルバムでは、ヒンドゥー・ナショナリズム的な政権や排外主義政策、腐敗した宗教界、警察権力、メディアを激しく糾弾している。
社会性/政治性を抽象化せずに、ここまでストレートにメッセージを打ち出しているアーティストは、いまどき世界的にも貴重な存在。
メンバーは過激すぎる作風から、正体を明かさずに音楽活動を続けている(インドでは反体制的なジャーナリストの殺害事件なども多い)。
正直、この音楽性なのでアルバムを通して聴くのは結構しんどいが、強烈なアティテュードにある種の清々しさを感じる作品だ。




Sayantika Ghosh "Samurai"

もう1枚、コルカタ出身のアーティストから。
シンセポップ・アーティストSayantika Ghoshの"Samurai"は、80年代レトロフューチャー的なサウンド/ビジュアルや、内面的な歌詞、日本のアニメの影響など、昨今のインドのインディーシーンの鍵となるテーマが散りばめられた作品。
ブログでも取り上げた通り、近年インドでは、"Ikigai"とか"Natsukashii"のように日本語のタイトルを冠した曲が散見されており、日本人としては気になる傾向だ。
Sayantika Ghosh現在は活動拠点をムンバイに移しているとのこと。
ソングライターとしての能力も高く、今後もっと評価されて良いアーティストだ。

今年は彼女の他にもNidaの"Butterfly"Maliの"Absolute", ラップに挑戦したSanjeeta Bhattacharyaの"Red"など、女性シンガーソングライターの自然体の魅力あふれる秀作が多い一年だった。




Ritviz "Chalo Chalein feat. Seedhe Maut"

RitvizはSpotifyでも高い人気を誇っているインド風EDM(いわゆる「印DM」)アーティスト。
インド的な要素と現代的なダンスミュージックを融合するだけでなく、ポップな歌モノとしても上質な作品を発表し続けている。
ポップかつノスタルジックな色彩のミュージックビデオは、彼の音楽にも今の気分にもぴったりはまっている。
共演のSeedhe Mautはデリー出身のストリートラップデュオで、この一見ミスマッチなコラボレーションにもインドのヒップホップの多様化・一般化を見ることができる。
Ritvizは"Raahi"のミュージックビデオでは同性カップルを取り上げており、こちらもLGBTQの権利向上に意識が向いてきた昨今のインドのインディー音楽シーンを象徴する作品だった。
ローカルな要素を多分に含んだ彼の音楽が、今後インド国外でも人気を得ることができるのか、注目して見守りたい。

「印DM」には、他にもNucleya, Su Real, Lost Storiesなど、期待できるアーティストが盛りだくさんだ。



Diljit Dosanjh "Born To Shine"

個人的な話になるが、2020年は私にとってバングラー/パンジャービー・ポップの面白さとかっこよさを再発見した年でもあった。
これまで、「バングラーは北インドのコマーシャルなポピュラー音楽」という認識でいたので、インディーミュージックをテーマにしたこのブログでは、ほとんど取り上げてこなかった。
なぜか演歌っぽく聴こえる歌い回しが野暮ったく感じられるというのも敬遠していた理由のひとつだ。
ところが、バングラーをパンジャーブ地方のローカルミュージック、あるいは世界中にいるパンジャーブ系移民のソウル・ミュージックとして捉えつつ、新しい音楽との融合に着目すると、これが非常に面白いのだ。
例えばこのDiljit Dosanjh.
ターバン姿でグローバルに豪遊するミュージックビデオは、2020年のバングラー作品として100点満点を付けてあげたい。
派手好き、パーティー好きで、物質的な豊かさを見せびらかしがちなパンジャービーたちのカルチャーが、カリフォルニアあたりのヒップホップのノリと親和性が高いということも再認識。
初期のインド系ヒップホップシーンを牽引したのがパンジャービーのラッパーだったのは、必然だったのかもしれない。



ここに選べなかったアーティストについても、いくつか触れておきたい。
10選の中に南部出身のアーティストが選べなかったのが痛恨だが、あえて選ぶなら、ケーララのフォークロックバンドWhen Chai Met Toastが今年リリースした楽曲は良いものが多かった。
インドのシンガーソングライターは近年本当に豊作で、非常に悩んだのだが、ここに入れられなかったアーティストから一曲選ぶなら、Raghav Meattleの"City Life".
この曲は物質主義的な都市生活への違和感をテーマにしているが、コロナウイルス禍以降にリリースされたことで、ビンテージ調の映像とあいまって、失われた活気ある生活への追憶のようにも感じられるものになった。
また、過去の作品の再編集なので対象外としたが、ベテランシンガーSusmit Boseのキャリアを網羅した"Then & Now"は、史料的な価値が高いだけでなく、初期ディラン・スタイルのウエスタン・フォークとしても上質な作品だった。
テクノアーティストOAFFの"Perpetuate"のミュージックビデオは、音楽的に新しい要素があるわけではなかったが、日常とサイケデリアをシンプルな映像エフェクトで繋いだ手腕に唸らされた。
コロナに翻弄された1年ではあったが、総じて優れた作品の多い1年だったと思う。

私の座右の銘は「好きなときに好きなことを好きなようにやる。飽きたらやめる」なので、このブログも飽きたら躊躇うことなくやめてしまおうと常々思っているのだけど、インドのインディーミュジックシーンますます面白くなってきており、いつまでたってもやめられそうにない。
というわけで、2021年もご愛読よろしくお願いします!




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goshimasayama18 at 14:03|PermalinkComments(0)

2020年10月29日

秋深し。女性シンガー特集!

日が落ちるのがすっかり早まり、木々の葉っぱも色づき始めてきた今日この頃、いかがお過ごしでしょうか?
今回は、こんな季節に聴くのにぴったりな、しっとりした女性シンガーの特集をお届けします!

このブログでは、これまで何度か男性シンガーソングライターを紹介してきたけど、インドには素晴らしい女性シンガーソングライターももちろんたくさんいるのです。


最初に紹介するのは、さわやかな秋晴れの日に公園を散歩しながら聴きたい曲。
プネーのシンガーソングライター、Nidaの"Butterflies"をどうぞ。

彼女は昨年"And I'll Love"でデビューしたばかりの期待の若手シンガー。
このブログでも激推ししている同郷のドリームポップバンドEasy Wanderlingsや、ムンバイのシンガーソングライターTejasなどの影響を受けて、ミュージシャンとしてのキャリアを本格的に追求することにしたとのこと。

デビュー曲はウクレレの響きもかろやかなポップチューンで、こちらもとても心地よい仕上がりになっている。


続いてお届けするのは、ムンバイを拠点に活動しているシンガーソングライターMali.
ハーモニカ奏者であるお祖父さんと共演した2018年のナンバー、"Play"をお聴きください。

歌声同様に涼やかな目もとが美しいMaliは、マラヤーリー(ケーララ系)のシンガー。
このミュージックビデオは、故郷ケーララに暮らす祖父のもとを尋ねるのんびりとしたロードムービー仕立てになっている。
全編にわたって心地よい秋の風が吹いているような1曲だ。
彼女は映画のプレイバックシンガーやジャズポップバンドBass In Bridgeを経て、現在はソロアーティストとして活動しており、最新曲"Absolute"でも、ヴォーカリスト、そしてソングライターとしての高い実力を遺憾なく発揮している。

記憶に新しいところでは、新型コロナウイルスによるロックダウンの真っ只中にTejasが発表した、前代未聞の「オンライン会議ミュージカル」"Conference Call: The Musical"にも主人公(Tejas)のガールフレンド役として出演していた。(登場は5:30あたりから)
字幕をOnにするとストーリーも追えるので、ぜひじっくりと観賞してみてほしい。



続いて、より都会的なサウンドの秋らしい1曲を紹介したい。
デリーを拠点に活躍しているTanya Nambiarによる"Big City"は1960年代にMarvin Jenkinsがリリースしたジャズの名曲のカヴァーだ。

彼女はクラブミュージックからロックまで、幅広い音楽性の曲を歌っているが、このカヴァーは都会の秋の夜にぴったりだ。
彼女はシンガー・ソングライターとして活動するかたわら、Su Realらクラブ系のアーティストのゲストヴォーカルとしても歌声を披露している。(この記事の"Soldiers"の女声ヴォーカルが彼女だ)



見た目もサウンドも、どこか懐かしい60年代のフォークソングを思わせるAnoushka Maskeyは北東部シッキム州出身のシンガーソングライター。

右利き用のギターをそのまま反対に持って(つまり、太い低音弦が下になる松崎しげるスタイル!)歌うのが彼女の特徴だ。

どことなく切なさを感じさせる歌声とメロディーは秋の夕暮れにばっちりはまる。
8月にリリースされた彼女のアルバム"Things I Saw in Dream"、そして最新EPの"C.E.A.S.e"はこの季節に聴くのにふさわしいサウンド。



最後に、これまで何度も紹介しているけど、秋のノスタルジックな気分にぴったりな曲といえばやっぱりこの曲。
Sanjeeta Bhattacharyaの"Natsukashii"を紹介して終わりにしましょう。

じめじめと昔を振り返るのではなく、カラッとさわやかに晴れた秋の空のようなSanjeetaの"Natsukashii".
すっかり肌寒くなってきたけれども、こんな音楽を聴きながら過ごすのもまた一興ではないかと思います。

…と、今回はセンチメンタルな気持ちを誘う女性シンガーの作品を特集してみました。
もちろんインドの男性シンガーソングライターたちも、負けず劣らずこの時期にふさわしい深みと切なさのあるサウンドを作っています。
興味のある方はこちらのリンクからどうぞ。





 


(10月31日追記)
この記事をTwitterで告知したら、Yosh(U.Owl / Vogmir)さんからゴアのシンガーソングライター、Dittyをお勧めいただいた。


以前、数曲聴いたことはあったのだが、今回改めて聴いたら凄くイイ!
とくにこの曲が白眉。

タイトルからもしやと思っていたけど、やっぱりアメリカのロックバンドDeath Cab for Cutieのことを歌った曲。
「思い出しちゃうからDeath Cab for Cutieはかけないで」っていうの、いい歌詞だな〜。
秋のセットリストにぴったりの切ない曲です。

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