NobleSaveges
2018年08月27日
インドのインディーズシーンの歴史その3 逆輸入レゲエポップ Noble Savegesをあなたは知っているか
さて、インドのインディーズシーンを形作ってきた72曲(中途半端!)を紹介するこの企画、第3回目にして海外在住のアーティストが初めて登場します。
その名も「上品な野蛮人たち」こと、Noble Savegesで、今回紹介するのは"I am an Indian"という曲です。
このNoble Saveges、調べてみようにもとにかく情報がなくて困った。
なぜかWikipediaのドイツ語版にだけ項目があったのだが、そこからの情報によると、1990年代に活躍したポップ/ダンスグループで、レゲエやインド音楽の要素を取り入れた音楽性で数曲のヒットを残したそうだ。
1996年にシングル"Diggin in the Nose"、続いてアルバム"Indian and can we talk"をインドで製作し、マイケル・ジャクソンのインド公演のオープニング・アクトも務めたということらしい。
今回紹介する"I am an Indian"も96年にリリースされた曲のようなので、同じタイミングで製作されたものなのだろう。
わざわざ「インドで製作」と書かれているが、調べてみるとどうやら彼らはインド系ドイツ人で、(それでドイツ語のwikiに情報があったようだ)ドイツでいくつかのヒット曲を出したのち、インドに凱旋逆輸入ということになったものと思われる。
いつもながら前置きが長くなりました。
それではさっそく聴いてみましょう。
Noble Savegesで"I am an Indian". 1997年にドイツとノルウェーでスマッシュヒットした曲とのことです。
曲調としては1992年に世界的にヒットしたSnowの"Informer"のような90年代風レゲエ・ポップだが、イントロや後半でのタブラやシタールの音がインドフレイバーとして効いている。
この曲のYoutubeのコメントを信用するならば、彼らの父親はパンジャブ系クリスチャン、母親はパールスィー(ゾロアスター教徒)で、1976年のミュンヘンオリンピックの際に、ドイツに来たばかりの移民同士として出会ったとのこと。
姉のShirinは今ではプロデューサー、プロモーター、テレビの司会者としても活躍しているそうだ。
この曲がこのリストの3曲目にリストアップされている理由は、おそらくポップアーティストとして最初に海外で評価されたインド人アーティストであるということ(演歌歌手のチャダを除く)、そして何より、"I am an Indian"というインド系のルーツを真正面から扱ったテーマの曲でヒットしたということが、それだけエポックメイキングな出来事だったからなのだろう。
歌詞でもインドの都市やヒンドゥーの神様、言語の名前などが頻繁に出てくるし、たとえそれがヨーロッパの視点から見たエキゾチシズム的な扱われ方だったとしても、当時のインドの人々を誇らしい気持ちにさせるに十分だったはずだ。
日本人にとっての、「スキヤキ」という奇妙なタイトルでヒットしたあの曲のように。
この曲に関して言えば、ドイツとノルウェー以外でヒットしたという情報もなく、おそらくは世界中のほとんどの人は忘れてしまっているものと思う。
それでも、この"I am an Indian"は、インド経済が開放政策に舵を取り、少しずつ成長を始めた頃、世界に向かって開かれてゆくインド、世界とつながってゆくインドの象徴のような曲として、インド人の心に刻まれているのかもしれない。
また、余談だがここ数年のインド国内のヒップホップでは、"I am an Indian"とか"Are you Indian"という言葉は、インドのマジョリティーであるアーリア系やドラヴィダ系とは異なる東アジア的な容貌を持ち、それゆえに差別にさらされているインド北東部の人々が「俺たちだってインド人だ。それなのにどうして差別するんだ」と主張する場面でよく使用されている。
(このブログでも取り上げたシッキムのUNBや、アルナーチャル・プラデーシュのK4 Kekho、北東部出身ではないが日印ハーフのBig Dealなど。いずれもラッパー)
世界に向かってインド系であることをアピールするにも、インド国内でのマイノリティーとしての存在を主張するにも、同じ言葉が使われているというのもまた多様性の国インドらしいエピソードではあると思う。
それでは今回はここまで!
その名も「上品な野蛮人たち」こと、Noble Savegesで、今回紹介するのは"I am an Indian"という曲です。
このNoble Saveges、調べてみようにもとにかく情報がなくて困った。
なぜかWikipediaのドイツ語版にだけ項目があったのだが、そこからの情報によると、1990年代に活躍したポップ/ダンスグループで、レゲエやインド音楽の要素を取り入れた音楽性で数曲のヒットを残したそうだ。
1996年にシングル"Diggin in the Nose"、続いてアルバム"Indian and can we talk"をインドで製作し、マイケル・ジャクソンのインド公演のオープニング・アクトも務めたということらしい。
今回紹介する"I am an Indian"も96年にリリースされた曲のようなので、同じタイミングで製作されたものなのだろう。
わざわざ「インドで製作」と書かれているが、調べてみるとどうやら彼らはインド系ドイツ人で、(それでドイツ語のwikiに情報があったようだ)ドイツでいくつかのヒット曲を出したのち、インドに凱旋逆輸入ということになったものと思われる。
いつもながら前置きが長くなりました。
それではさっそく聴いてみましょう。
Noble Savegesで"I am an Indian". 1997年にドイツとノルウェーでスマッシュヒットした曲とのことです。
曲調としては1992年に世界的にヒットしたSnowの"Informer"のような90年代風レゲエ・ポップだが、イントロや後半でのタブラやシタールの音がインドフレイバーとして効いている。
この曲のYoutubeのコメントを信用するならば、彼らの父親はパンジャブ系クリスチャン、母親はパールスィー(ゾロアスター教徒)で、1976年のミュンヘンオリンピックの際に、ドイツに来たばかりの移民同士として出会ったとのこと。
姉のShirinは今ではプロデューサー、プロモーター、テレビの司会者としても活躍しているそうだ。
この曲がこのリストの3曲目にリストアップされている理由は、おそらくポップアーティストとして最初に海外で評価されたインド人アーティストであるということ(演歌歌手のチャダを除く)、そして何より、"I am an Indian"というインド系のルーツを真正面から扱ったテーマの曲でヒットしたということが、それだけエポックメイキングな出来事だったからなのだろう。
歌詞でもインドの都市やヒンドゥーの神様、言語の名前などが頻繁に出てくるし、たとえそれがヨーロッパの視点から見たエキゾチシズム的な扱われ方だったとしても、当時のインドの人々を誇らしい気持ちにさせるに十分だったはずだ。
日本人にとっての、「スキヤキ」という奇妙なタイトルでヒットしたあの曲のように。
この曲に関して言えば、ドイツとノルウェー以外でヒットしたという情報もなく、おそらくは世界中のほとんどの人は忘れてしまっているものと思う。
それでも、この"I am an Indian"は、インド経済が開放政策に舵を取り、少しずつ成長を始めた頃、世界に向かって開かれてゆくインド、世界とつながってゆくインドの象徴のような曲として、インド人の心に刻まれているのかもしれない。
また、余談だがここ数年のインド国内のヒップホップでは、"I am an Indian"とか"Are you Indian"という言葉は、インドのマジョリティーであるアーリア系やドラヴィダ系とは異なる東アジア的な容貌を持ち、それゆえに差別にさらされているインド北東部の人々が「俺たちだってインド人だ。それなのにどうして差別するんだ」と主張する場面でよく使用されている。
(このブログでも取り上げたシッキムのUNBや、アルナーチャル・プラデーシュのK4 Kekho、北東部出身ではないが日印ハーフのBig Dealなど。いずれもラッパー)
世界に向かってインド系であることをアピールするにも、インド国内でのマイノリティーとしての存在を主張するにも、同じ言葉が使われているというのもまた多様性の国インドらしいエピソードではあると思う。
それでは今回はここまで!
goshimasayama18 at 00:04|Permalink│Comments(0)