FriendsFromMoon

2021年04月26日

驚愕のサウンドトラック・メタル! Friends from Moonの壮大すぎる世界!



インドはメタル大国である。
鉱物資源の話ではない。
音楽のヘヴィメタルのことだ。(音楽ブログなんだから当たり前か)

ボリウッド映画や古典音楽やヨガのイメージからは想像しづらいかもしれないが、経済発展とグローバリゼーションの果実のひとつとして、インドでは多くのメタルバンドが結成されている。
そのなかには、GutslitやGirish and the Chroniclesのように、かなりレベルの高いバンドも存在している。




前述の2バンドや、Kryptos, Systemhouse33, Demonic Resurruction, Amorphiaのように、海外ツアーを行うバンドも出てきているものの、単独で(インド国内においても)ホールやアリーナを埋めることができるようなバンドは、まだ登場していない。


その理由は単純だ。
欧米のバンドがリードしてきたヘヴィメタルシーンでは、インドや日本を含めたアジアのバンドのスタイルは、既存のジャンルの模倣になりがちだ。
どれだけ演奏技術が高く、楽曲が良くても、オリジナリティが低ければ、カリスマ的な人気を得ることは難しい。

ヘヴィメタルシーンにおいてアジアのバンドが注目を集めるためには、欧米のバンドにはない個性を打ち出すことも有効だ。
つまり、自国のユニークな文化をサウンドに持ち込むことで、オリジナルなスタイルを打ち出すことができるのだ。
日本で言えばBabymetal、インドでもSitar MetalやBloodywoodが、その手法で注目を集めることに成功している。


そんな世界とアジアのヘヴィメタルを取り巻く状況のなかで、インドから、ステレオタイプなインドらしさをまったく打ち出すことなく、完全に新しいジャンルを生み出すことに成功したバンドが登場した。

その名は、つい先頃デビューEP "The Spectator"をリリースしたFriends from Moon.
「バンド」と書いたが、Friends from Moonの実態はデリーのヒンディー・メタルバンド(英語ではなくヒンディー語で歌うメタルバンド)AarlonのギタリストRitwik Shivamのソロプロジェクトである。

Friends from Moonの音楽的特徴を一言で表すなら、まるで映画音楽のような壮大なサウンドをヘヴィメタルに取り入れた「シネマティック・メタル」もしくは「サウンドトラック・メタル」と呼ぶのがふさわしいだろう。
これまでも、シンフォニックな要素を効果的に取り入れたメタルバンドは少なからずいたが、それでもFriends from Moonのサウンドが前例のないものであることは、デビューEP"The Spectator"のオープニングトラック、"A Hope Forever"を聴けば簡単に分かるはずだ。


ストリングス、ブラス・セクション、ピアノが織りなすドラマティックなサウンドは、まるでSF映画かファンタジー映画のサウンドトラックを思わせる。
ネタばらしをしてしまうと、この8分にわたる大曲は、なんと最後までメタルの要素が一切ないまま終わってしまう。
これまでもアルバムの1曲目にSE的な「序曲」を入れるバンドは珍しくなかったが、ここまで大仰かつ本格的な「序曲」は50年に迫るヘヴィメタルの歴史上、初めてのことだろう。

満を辞して、2曲めの"Saruman the Black"で怒涛のメタルサウンドが披露される。

シネマティックなイントロに続いて、怒涛のメタルパートに雪崩れ込むが、1曲めからの流れで聴くと、この凶暴なメタルサウンドも、激しさを表現する音楽的演出のひとつとしてすんなりと受け入れられるのではないだろうか。
デス声ではなくクリーンな声で歌われるパートが、典型的なメタルのスクリームではないことも、彼らの音楽の聴きやすさにつながっている。
"Saruman the Black"はトールキンの『指輪物語』("The Lord of the Rings")の登場人物にちなんだタイトルとのこと。
この曲にはイタリアのGabriele Paolo Marraによる一人ブラックメタルプロジェクトHowling in the Fogが参加している。

3曲目の"Salton Sea"はプログレッシブ・メタル的な変拍子を導入した曲。
この曲にはAarlonを含む複数のバンドで活動していたヴォーカリストのPritam Goswami Adhikaryが参加。
Salton Seaとはカリフォルニア州に位置する塩湖の名前のようだ。


EPの最後を飾る"We are the Drifters"は静かなピアノの響きから始まる。

再びヘヴィメタル的の要素を排したこの曲で、彼らのデビューEP、"The Spectator"は幕を閉じる。
4曲のみながら、28分のボリューム。
Spectator(観客/目撃者)というタイトルの通り、リスナーはFriends from Moonのサウンドが紡ぐ物語的な世界にただただ身を浸し、圧倒されることになる。

このあまりにも特異な作品が登場したことに、世界はまだほとんど気付いていないようだが、このアルバムは今後いったいどのような評価を受けるのだろうか(それとも気づかれないまま終わってしまうのか)。
いずれにしても、Ritwik Shivamがこれまでにないジャンルの扉を開いたことは間違いない。
彼らが今後どんなサウンドを展開してゆくのか、興味は尽きない。


参考サイト:
https://www.rsjonline.com/reviews/friends-from-moon-is-excitingly-cinematic-on-debut-ep.html

https://rollingstoneindia.com/reviewrundown-march-2021-project-malabaricus-drastic-naman-winterchild/


 

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goshimasayama18 at 22:19|PermalinkComments(0)