Bloodywood

2020年03月05日

インドのメタル系フェスの最高峰!Bangalore Open Air

たびたびこのブログでも書いている通り、インドでは多くの音楽フェスティバルが開催されている。
もともとお祭り好き、踊り好き、音楽好きの多い国民性に加えて、インターネットの発展にともなって多様なジャンルのリスナーが育ってきたこと、経済成長によって欧米の人気アーティストを招聘できるようになったこと、自国のインディーミュージシャンが増えてきたことなどが、インドのフェス文化隆盛の理由と言えるだろう。

これまでに紹介してきたNH7 WeekenderやZiro Festivalのように、さまざまなジャンルのアーティストが出演するフェスもあれば、大規模EDMフェスのSunburnや古城を舞台にしたMagnetic Fieldsのように、エレクトロニック系に特化したものもある。





さて、インドで根強い人気を誇っている音楽ジャンルとして、忘れてはならないのがヘヴィメタルだ。
ヘヴィメタルに熱狂するインド人を見たのは、この2007年のIron Maidenのバンガロール公演が最初だった。
彼らの全盛期だった80年代にはまったくロックが浸透していなかったにも関わらず、これだけたくさんのMaidenのファンがインドにいることに、ずいぶん驚いたものだった。


インドのメタルファンたちは、海外のバンドに熱狂するだけではない。
ムンバイやバンガロールのような大都市は言うに及ばず、キリスト教徒が多く、欧米の文化への親和性の高い南部ケーララ州やインド北東部にも、数多くのヘヴィメタルバンドが存在しているのだ。
(詳しくは、このカテゴリーで紹介している)


その中には、GutslitやAmorphiaのように、小規模ながらも来日公演を行ったバンドもいるし、Demonic ResurrectionやAgainst Evilといったヨーロッパツアーを成功させているバンドもいる。
そんな知られざるヘヴィメタル大国であるインドには、当然メタル系のフェスも存在していて、その頂点に君臨しているフェスが、今回紹介するBangalore Open Air(BOA)なのである。

このBOAは2012年にドイツの大御所スラッシュメタルバンド、Kreatorをヘッドライナーに第1回が行われ、以降、毎年Iced Earth, Destruction, Napalm Death, Vader, Overkillといった海外のベテランバンドをヘッドライナーに、インドのバンドも多数参加して、大いに盛り上がっている。

これはDestructionがトリを務めた2014年のフェスの様子。
インドからも、シッキム州のハードロックバンドGirish and Chroniclesや、正統派メタルサウンドにスラッシュメタル風のヴォーカルが乗るKryptosらが参加。
ときにモッシュピットも巻き起こるほどに盛り上がっている。


昨年のBOAの様子を見ると、5年間で会場の規模もぐっと大きくなっているのがわかる。


さて、このフェスの'Open Air'という名称にピンと来たあなたは、結構なメタルヘッズですね。
そう、このBOAでは、ヘヴィメタルの本場のひとつ、ドイツで行われている超巨大メタルフェス、Wacken Open Air(通称ヴァッケン、またはW:O:A)に参加するための南アジアのバンドのコンテストであるWacken Metal Battleの南アジアの決勝戦も行われているのだ。

BOA開催に先駆けた2011年から、インドからは毎年W:O:Aにバンドを送り込んでいる。
というわけで、ここではこれまでW:O:Aに参加したインドのバンドたちを紹介してみたい。
(デスメタルばかりなので食傷気味になるかもしれない)

まずは2011年にW:O:Aにインドから初参加を果たしたバンガロールのデス/メタルコアバンド、Eccentric Pendulum.
彼らは2018年にもW:O:A参戦を果たしている。


2012年に参加したのはムンバイのスラッシュ/グルーヴメタルバンドZygnema.


1998年結成のバンガロールのベテランKryptosは、2013年と2017年にW:O:A参戦を果たしている。


2014年のW:O:AにはムンバイのシンフォニックデスメタルバンドDemonic Resurrecrtionと北東部メガラヤ州シロンのPlague Throatの2バンドがインドから参加している。



2015年には同じく北東部から紅茶で有名なダージリンのデスメタルバンドSycoraxが出演。


2018年にはハイデラバードのGodlessが、2019年にはニューデリー出身のパロディバンド的な要素もあるBloodywoodがW:O:Aに参戦している。


同じようなメタルバンドがたくさん出演するフェスだからだと思うが、やはり類型的なデスメタルやメタルコアよりも、インドの要素が入った個性的なバンドの方が受け入れられやすいようで、オーディエンスの反応はBloodywoodが群を抜いて盛り上がっている。
インド国内のメタルファンは、自国の代表として正統派のメタルバンドを推したいのかもしれないが、海外のオーディエンスからすると、いかにもインドらしいバンドのほうが個性的で魅力的に感じられるというミスマッチがあるようにも思えるが、どうだろう。

2020年のBangalore Open Airは3月21日に開催され、スウェーデンのブラックメタルバンドMardukがヘッドライナーを務めるようだ。
インドからはDown Troddenceが出演する。
BOA2020
BOA2020battle

BOAに先立って、19日にはWacken Metal Battleのインド地区の決勝が、そして20日にはインド亜大陸の決勝が行われる。
果たして今年はどんなバンドがW:O:Aへのチケットを手に入れるのだろうか。

インドでも新型コロナウイルスの感染者が出てきており、デリーではホーリーに合わせて行われるフェスが中止になったりしているが、インドではフェスシーズンの大詰め。
BOAをはじめとするフェスが無事に行われることを願っている。


関連記事:



インドらしいメタルサウンドといえば、シタール・メタルやPineapple ExpressあたりもW:O:Aに出演したら盛り上がると思うんだけど。





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2019年08月04日

世界に進出するインドのメタルバンド!

前回の記事で、ケーララ州のスラッシュメタルバンドAmorphiaの日本ツアーの話題をお届けした。
7月5日付の'Rolling Stone India'電子版の記事によると、今年(2019年)はインドのメタルバンドが今までになく国際的に大活躍している年だそうで、9月までに9つのバンドの海外ツアーが行われるという。

2月のAmorphiaの日本ツアーに続いて、3〜4月には、ムンバイのメタルバンドZygnemaが東欧からフランスまでヨーロッパ9か国、16都市を巡るツアーを敢行した。 
Zygnemaは2006年に結成されたスラッシュ/グルーヴメタルバンドで、これまでにもドイツ(メタル系の巨大フェスティバルWacken Open Airへの出演)やノルウェー、タイ、ドバイなどへのツアー経験がある。

2013年のWackenでのライブ映像

セパルトゥラやパンテラといった大御所バンドを思わせるサウンドで、メタルの本場のオーディエンスを盛り上げている。
新曲の"I Am Nothing"は女性への性暴力を告発した内容。
社会派バンドとしての側面もある。


ところでこのZygnemaというバンド名、重々しくていかにもメタルバンドらしい響きだけど、どんな意味だろうと思って調べてみたら、「ホシミドロ」っていう藻みたいな植物の名前だった。
藻っていうのはどうなんだろうね、メタルのバンド名として。
 

ムンバイのスラッシュメタルバンド、Systemhouse 33は、イスラエルのバンドOrphaned Landと西ヨーロッパ7か国20都市を4月にツアーした。

彼らもまた2003年に結成された老舗バンドで、ボーカリストのSamron Jodeは、以前このブログでも紹介したシタールをフィーチャーしたエレクトロニックメタルバンドParatraのギタリストとしても昨年秋にヨーロッパツアーをしたばかり。
Systemhouse 33はピュアなメタルバンドだが、Paratraではかなりダンスミュージック寄りの全く異なるアプローチを聴かせている。
(参考記事:「混ぜるな危険!(ヘヴィーメタルとインド古典音楽を) インドで生まれた新ジャンル、シタール・メタルとは一体何なのか」


昨年来日した黒ターバンのベーシストGurdip Singh Narangが率いるムンバイのブルータルデスメタルバンドGutslitは、アメリカのベテランバンドDying Fetusのサポート公演を含むドイツや東欧を中心としたツアーを7月に行ったばかり。

王道のデスメタルサウンドを演奏しつつも、見た目に分かりやすいインド人の要素もある(メタルだけにターバンの色は必ず黒!)彼らは、ビジュアル戦略にも非常に長けたバンドだ。
彼らは典型的なメタルバンドの枠に収まらないかなりユニークなセンスを持っていて、例えば彼らの新しいビジュアルイメージは、ピンク色を基調にしたメルヘンチックなテイストの、ツノがチェーンソーになったかわいらしくも残酷なユニコーンのイラストだ。
Gutslit_Unicorn
デザインしたのはドラマーのAaron Pinto.
かつてこのバンドのスタイリッシュなカートゥーン調のミュージックビデオを手がけたこともある、稀有なセンスの持ち主である。


バンガロールで1998年に結成されたベテランバンドKryptosは、7月にいくつかの野外フェスティバルへの出演を含めたドイツツアーを実施。
彼らも2013年と2017年にWacken Open Airに出演したことがある。
彼らのサウンドは、1980年代を彷彿させるのオールドスクールなメタルサウンドに、デス/スラッシュメタル的なヴォーカルが乗ったもの。


こちらは今年発売のアルバム。

意図的にB級感を狙ったこのアルバムジャケットは彼らのサウンドにぴったりで、彼らもなかなかのビジュアルセンスを持っているようだ。


南インドの伝統音楽とメタルを融合したプログレッシブ・カルナーティック・フュージョンを掲げるProject Mishramは、7月にイギリス公演を行ったばかり。
彼らはツインギターにフルートとバイオリン奏者を含むバンガロール出身の7人組バンドだ。

ラップメタル的に始まる楽曲だが、古典声楽風のボーカルが入ってくると空気感が一変して、一気にインドの大地に連れて行かれてしまう。
変拍子や複雑なキメの多いインド古典音楽は、プログレッシブ・メタルとの親和性が高く、彼らの他にもParadigm Shift, Agam, Pineapple Expressらがフュージョン・メタルの世界で活躍している。

ボリウッドをもじったバンド名のBloodywoodsはWacken Open Airでの公演を含むツアーを7月〜8月にかけて実施。
ドイツ、イギリス、フランス、ロシアを巡るこのツアータイトルは、その名もRaj Against The Machine.
言うまでもなく、これは90年代から活躍するアメリカの政治的ラップメタルバンドRage Against The Machineのパロディーだ。
これはインドのフォーク(民謡)メタルを標榜する彼らが、春の訪れとともに色粉をぶっかけあうお祭り「ホーリー」をテーマにした楽曲。

当初はインドの要素を取り入れたパロディ/コミックバンド的なイメージで活動していたが、思いのほか本格的なサウンドが評価されてしまい(日本でもすでにいくつかのブログやメディアで紹介されている)、最近ではメンタルヘルスをテーマにしたシリアスな楽曲も発表している。



インド南東部アーンドラ・プラデーシュ州の港町Visakhapatnam出身の正統派パワーメタルバンドAgainst Evilは、ドイツのDoc Gator Recordsと契約し、8月にドイツ、オーストリア、ベルギー、スイスを巡るツアーを実施する。

このツアーは、おもにドイツのメタルファンによるクラウドファンディングによって実現することになったもので、国境を超えたメタルコミュニティーのサポート力を感じさせられる。


お隣テランガナ州の州都ハイデラバードのデスメタルバンドGodlessは9月にドイツのバンドDivideとともにヨーロッパ8カ国を回るツアーを実施。
彼らも昨年、Wacken Open Airへの出演を果たしている。



と、2019年はこれだけのヘヴィーメタルバンドが海外に飛躍する年になった。
記事にも書いたように、インドのメタルバンドの海外進出は急に始まったものではなく、これまでもフェスティバルへの出演などを含めたヨーロッパツアーはいくつものバンドが行なっている。
2008年にはすでにRolling Stone India紙でインドのメタルシーンの興隆についての特集記事が掲載されており、インドでのヘヴィーメタルブームは一過性のものではなく、完全に定着していると言えるだろう。
世界的には「知られざるメタル大国」だったインドのバンドの実力に、徐々に世界中が気づいて来ているのだ。
今回同誌に紹介されていた以外にも、これまでに海外ツアーを実施したバンドは複数おり、ムンバイのシンフォニック・デスメタルバンド、Demonic Resurrectionは、2014年にWacken, 2018年にイギリスのBloodstock Festivalに出演しており、今年も8月から9月にかけてイギリスツアーを行うなど積極的に海外で活動している。


世界最大級のメタル系フェスティバルであるドイツのWacken Open Airに出演したインドのバンドは多く、バンガロールのEc{c}entric Pendulumや北東部メガラヤ州のPlague Throat(ともにデスメタル)もそれぞれ2011年と2014年に同フェスへの参加を果たしている。




また、インド系アメリカ人を含むSkyharborは、昨年、Babymetalのサポートに起用され、アメリカをともにツアーした。


フェスティバルのヘッドライナーを務めるような大物バンドはまだインドから出て来ていないが、どのバンドも演奏能力が高く、各ジャンルの特徴を余すところなく表現できている。
インドのメタルバンドのポテンシャルは想像以上に高いということがお分かりいただけるだろう

以前、映画『ガリーボーイ』をきっかけに、ストリートのラッパーたちがメジャーシーンでも注目されるようになり、インドのヒップホップシーンが大いに活性化してきていることを紹介した。
これまで夢や希望が持てなかったスラムに暮らす若者たちが、ヒップホップを通して名を挙げ、スターになることすらできる時代がやってきたのだ。
前回も書いたように、ヘヴィーメタルはヒップホップに比べて、言語よりもサウンドが重視されるため、優れた楽曲と演奏能力さえあれば、インド国内のみならず海外での評価もされやすいジャンルだ。
スラム出身でも、ラッパーとして評価されればインドのスターになれるように、ヘヴィーメタルバンドとして評価されれば、国籍に関係なく世界をツアーできる時代がやってきた。
新たにバンドを結成するインドの若者たちにとっても、これは嬉しいニュースだろう。
インドのヘヴィーメタルの勢いは、まだまだ続きそうだ。



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goshimasayama18 at 14:16|PermalinkComments(0)

2019年01月14日

Rolling Stone Indiaが選ぶ2018年のベストシングルTop10!

先日の記事でインド北東部の2018年のベストソングスを紹介したけど、今回はRolling Stone Indiaが選んだインド全体の2018年のベストシングルTop10を紹介!

このRolling Stone India、インドのなかではオシャレというか気取っているというかサブカル気質というか、メジャーな映画音楽などではなく、インディーズ寄りの優れた音楽を紹介する傾向が強いメディアだ。
つまり、今回紹介する音楽はインドでは誰もが知っている大ヒットということではなく、売り上げや知名度に関係なく選ばれたグッドミュージックたちというわけ。
このラインナップを知ることで、今のインドのインディーズシーンでどんな音楽がかっこいいのかを把握する手がかりにもなるはず。
10曲が選ばれているけど順位はついていないようなので、元の記事で紹介されている順に書いていきます!


Parekh & Singh, "Summer Skin"

この手のランキングでは常連のオシャレ感が漂うコルカタのカラフルな「ドリームポップデュオ」。
ウェス・アンダーソンのポップな世界観に影響を受けた彼らの今作は、歌詞に出てくるウディ・アレンやビートルズといったモチーフがまた雰囲気づくりに一役かっている。


Calico, "Garnet Eye"

ムンバイのソフトロック・バンドによる洗練された楽曲。
メロウなグルーヴが心地よいアーバンポップ風の仕上がりだが、歌詞は「無常観」がテーマ。


Droolfox, "Descent"

バンガロールのエレクトロニカ/シンセウェイヴ・デュオがヴォーカリストのJitesh JadwaniとJoel Sakkariをゲストに迎えて作成したトラック。
ここまで紹介した音楽同様に無国籍なポップサウンドの楽曲はバンコクのローカルトレインの音から始まる。
ギターのグルーヴとメロウなヴォーカルが効いている、ダフト・パンク的な雰囲気もある曲だ。


Bloodywood, "Jee Veerey"

ニューデリーのメタルグループ、Bloodywoodはギター&プログラミングのKaran KatiyarとヴォーカルのJayant Bhadulaの2人組。
ボリウッドをもじったバンド名からも分かる通り、これまでカバー曲や企画ものっぽい曲を中心にリリースしていたが、今回はラッパーのRaoul Kerrと共演したフォークメタル(民族音楽の要素が入ったメタル)の曲をリリース。
リズムやヴォーカルがここまでメタルだとヨーロッパ的な響きに聞こえるのは必然なのだろうか。
ビデオの後半にもあるとおり、精神的に困難を抱えている人へのサポートに関する真剣なメッセージを伝える意図もあるようだ。


Hanita Bhambri, "Let Me Go"

Hanita Bhambriは世界的なホテルチェーンのAloft Hotelsによるオーディション企画、Project Aloft Starの2018年度アジア太平洋部門で優勝した女性シンガー。
その後ユニバーサルと契約し、コルカタを拠点にRadioheadやFoo Fightersも手がけたエンジニアのMiti Adhikariによるプロデュースでこの曲をリリースした。
Rolling Stone IndiaはAdeleやFlorence Welchのような英国フォークの雰囲気のある曲と書いている。

Prabh Deep and Seedhe Maut, "Class-Sikh Maut Vol.II"

ここまで、インドらしさ皆無の無国籍な英語ヴォーカルの作品が続いたけれど、ここにきてやっとヒンディー語でインドらしいトラックの楽曲が登場。
昨年の同誌が選ぶベストアルバムトップ10の1位に選ばれたデリーの実力派アンダーグラウンドラッパーPrabh Deepが同じくデリーのSeedhe Mautとコラボレーションしたこの作品は、Prabh Deepも所属する大注目ヒップホップレーベルAzadi Recordsからリリースされた。
まず耳に残るのはインド随一の気鋭のビートメーカー、Sez On The Beatの渾身のトラック。
時代の空気を纏いつつインドでしかありえない伝統音楽とのフュージョンになっている。
Seedhe MautはEncore ABJとCalmからなる二人組のバイリンガル・ラッパー(英語とヒンディー)で、この曲のパフォーマンスからはPrabh Deepに匹敵する確かなスキルが伺える。


The Tekina Collab, "Claiming Me"

The Tekina CollabはムンバイのシンガーソングライターAniket Mangrukarによるプロジェクトのようだ。
オサレな雰囲気で聴かせる1曲。

Azamaan Hoyvoy, "Everybody Looking For Love"

ジャズ、ソウル、電子音楽を融合した音楽性で活躍するムンバイのシンガー。
王道のソウルマナーに沿いつつもポリリズム的な展開が心地よいこの曲は、ヴォーカルがちょっと弱い気もするけどやりたいことは分かるし十分にかっこいい。

Takar Nabam, "Recending"

北東部アルナーチャル・プラデーシュ出身のニューデリーで活躍するシンガーソングライターの失恋をテーマにしたこの楽曲は、サウンド的には王道のロックだがブルージーでメランコリックなヴォーカルとグルーヴィーな演奏の妙が心地よい。

Yungsta and Frappe Ash "Nana"

Rolling Stone誌上で「インドからのRae Sremmurdへの回答」と評されているニューデリーの新鋭ラッパー二人組によるヘヴィートラップ。
(Rae Sremmurdはミシシッピ出身の新世代兄弟デュオで近々来日。ご存知ない方は各自チェックを)
派手さのないミュージックビデオにかえって本気が滲む(予算の都合?)。
スケボーとラップというインドではまだ若いストリートカルチャーの熱さがびんびん伝わってくる。


ざっと全曲を紹介させていただきました。
Prabh Deep and Seedhe Maut以外はインドらしさ皆無の無国籍サウンドが並んでいるが、インドもアジアでよく見られる土着的なものからの脱却をもって洗練とみなすという潮流の中にいるのだろう。
クオリティーもおしなべて高くて、洋楽のヒット曲に混じって流れても違和感のないような楽曲が並んでいる。
ここで紹介したような楽曲を聴きながらムンバイやデリーのハイセンスなエリアを歩けば、どこか外国の街角を歩いているような、世界中のどこでもないようなオシャレな街を歩いているような気分が味わえることだろう。
恣意的に洋楽的で都会的で人工的な楽曲たち。

全体的に何かに似ていると思っていたけど、やっと分かった。
それは90年代の日本の音楽シーンを席巻した渋谷系だ。
どこまでいっても歌謡曲臭の拭えないJ-POPやバンドブームを尻目に、潔癖なまでにドメスティックな要素を排して「センスの良さ」を競ったあのムーブメントだ。
あのころ、渋谷系のミュージシャンたちは、古今の洋楽の影響を糧に、古くて新しい自分たちの音楽を作り出していた。
インドのインディーズシーンも、今まさにそんな時代を迎えているのかもしれない。

そしてふだんこのブログで紹介している通り、このランキングには入っていないところで、伝統に目を背けずに、現代音楽との面白い融合に成功している作品がたくさんあるというのもインドの音楽シーンの豊饒さだ。

インドの音楽カルチャーは、日本で何十年もかけて起きた音楽シーンの進化、変化をここ10年ほどで一気に経験してきた。
日本でいうと、歌謡曲(=メインストリーム。インドでいえば映画音楽)が多様化、複雑化してきた80年代、バンドブームが勃興し若者が自分たちの音楽を奏でることがもてはやされた90年代前半、より洋楽的な洗練を目指した90年代後半、DJ文化が一般化しインターネットでより多くの音楽へのアクセスが可能になった2000年代以降、そして今日の世界の同時代的な音楽の流行。
あらゆる事象が一度に起きて盛り上がっているのがインドの音楽シーンの熱いところだ。

これからもインドの音楽シーンのいろんな側面を紹介してゆくのでヨロシクお願いします!



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★1月27日(日)ユジク阿佐ヶ谷にて「あまねき旋律」上映後にインド北東部ナガランド州の音楽シーンを語るトークイベントを行います

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