AsianDubFoundation

2023年07月07日

Bloodywoodロスを癒せるかもしれないインドの音楽特集!


まだ言うけど、先週のBloodywoodのライブはすごかったなあ。
バンドのパフォーマンスも素晴らしかったが、お客さんもちょっと見たことないくらいの盛り上がっていた。
その熱狂っぷりは、「激しい音楽ジャンルのライブのお約束」というレベルをはるかに超えていた。


東京公演で94ヶ所に及ぶツアーを終えた彼らは、帰国してアルバム制作に入るとのこと。
次作に期待しつつも、しばらくライブや新曲を体験できないことを嘆いているファンも多いことだろう。
というわけで、今回はBloodywoodロスを癒せるかもしれないインドの音楽特集!


まずは彼らと同じメタルバンドから。
…と言いたいのだが、結論から言うと、Bloodywoodのようなやり方でインド音楽(彼らの場合、パンジャーブの伝統音楽バングラー色が強い)とメタルを融合しているバンドは、私の知る限りでは他にはいない。
それでもインドとメタルをクールな形で融合しているバンドを紹介するとしたら、見た目の話になるが、ターバン姿のベーシストを擁するベンガルールのデスメタルバンド、Gutslitが最適なのではないかと思う。

Gutslit "Brodequin"


Bloodywoodとは全く異なり、サウンド面ではインドの要素の全くないオーセンティックなブルータルデスメタルだが、特筆すべきはその演奏力。
ドラムなんてもう人間じゃないみたいだ(もちろん褒め言葉です)。

Gutslit "The Killing Joke"



彼らはじつは小規模会場ながらも来日公演もすでに果たしている。
そのときはドイツのデスメタルバンドのStillbirthとともにフィリピン、台湾、日本と3日連続で別の国でライブを行うという過酷なスケジュールでのツアーだった。
(当初は17日間で10カ国以上の16会場を回るという無謀すぎる計画を立てていた)


Bloodywoodもふだんは完全なインディペンデント体制で自分たちでツアーを回っていると言っていたが、インドのメタルバンドは、みんなこんなふうにタフなのだろうか。
まさかとは思うが、だったらすごいことだ。

ちなみにターバン姿のベーシストGurdip Singh Narangは、なにもインドっぽさを出すためにターバンを巻いているわけではなくて(ビジュアルイメージにターバンを巻いた髑髏を使っていたりするので、狙っている部分もちょっとあるかもしれないが)、リアルなシク教徒。
つまり、彼は宗教上の戒律によってターバンを巻いているのだ。
シク教徒の男性は、その日の服装に合わせてターバンの色もコーディネートすることが多いが、彼の場合、メタルのイメージに合わせてか、いつも黒のターバンでキメている。


続いて紹介するのは、Bloodywoodとは別の方法論でインド音楽とメタルを融合しているPineapple Express.
Gutslit同様にベンガルールのバンドだ。
彼らは、複雑なリズムを持つインドの古典音楽(南インドのカルナーティック音楽)をプログレッシブメタル的に解釈して演奏しているのだが、じつを言うとそういうバンドはインドには結構いる。
Pinepple Expressがすごいのは、古典音楽とメタルを融合したところに、EDMとかラップとかもいろいろぶちこんで、唯一無二のスタイルを確立しているということだ。
もうなんだかわけが分からない。

Pinepple Express "Cloud 8.9"



Pineapple Express "Destiny"


ふつうプログレというと、クラシックとかジャズとか欧州フォークとか、率直に言うとなんかオタクっぽいジャンルをロックに導入したものを指すと思うのだが、彼らの場合はEDMやラップという、まったくプログレらしからぬジャンルを何の躊躇もなく融合してしまっているのがすごい。
気になった方は、2018年のEP"Uplift"あたりから聴いてみることをオススメする。
彼ら独特の浮遊感はBloodywoodとはまったく別物だが、インドとメタルの融合によってのみ実現されるポジティブでエネルギーに満ちた感覚は、どこか共通点があるようにも感じる。



インドっぽさとヘヴィネスを融合しているジャンルはメタルだけではない。
ニューデリーのアーティストSu Realが2016年にリリースした"Twerkistan"は、インド式ベースミュージック/トラップの大傑作!

Su Real "East West Badman Rudeboy Mash Up Ting"


アルバムには、のちにヒンディー語ポップスとEDMを融合させた独自の作風で人気を博すRitvizも参加しているのだが、今ではすっかりポップになった彼も当時はこの尖りっぷり。

Su Rean & Ritviz "Turn Up"


Su Realはこのブログで最初に取り上げたアーティストで、この"Twerkistan"はインド固有のミュージックシーンの面白さを気づかせてくれた作品でもあった。



当時の記事は今読み返すと稚拙で恥ずかしいが、このアルバムの素晴らしさは今聴いてもまったく色褪せていない。




次はかなり古いアーティストになるが、UKエイジアンによるバンド、Asian Dub Foudationの2003年のアルバム"Enemy of the Enemy"から、"Fortress Europe"を紹介したい。
2000年前後にかなり高い人気と知名度を誇っていた彼らはフジロックの常連でもあったので、知っている、見たことがあるという人も多いことだろう。

Asian Dub Foundation "Fortress Europe"


当時、ドラムンベースやレゲエにインド音楽の要素を導入して、南アジア訛りの英語で社会的かつ強烈なリリックをラップする彼らは、ものすごく新しくて、かっこよかった。
彼らはドール(Dhol. Bloodywoodも使っているパンジャーブの両面太鼓)を中心に据えた楽曲も制作していて、思い返してみれば、私がドールのグルーヴの洗礼を最初に受けたのはAsian Dub Foundationのライブだった。

Asian Dub Foundation "Dhol Rinse"(Live)


インドの伝統的なグルーヴが、最新の音楽のなかにおいてさえ効果的に機能することをイギリスから証明した彼らは、当時インド本国しか知らなかった自分にとって、ちょっと眩しすぎるくらいのかっこいい存在だった。

前回も書いた通り、Bloodywoodの楽曲やステージでは、派手なギターソロや巨大なドラムセットのようなメタルの様式美的な要素は完全に排除されていて、彼らのインド的なグルーヴをいかに最大化するかという、むしろダンスミュージック的な方法論が取られている。
そのお手本となったのは、もしかしたらこのAsian Dub Foundationのスタイルなんじゃないか、とも思っているのだけど、どうだろう。

ところで、Asian Dub Foundationはバンド名にエイジアンという言葉を使っているが、イギリスではエイジアンという単語を南アジア(インド、パキスタン、バングラデシュ等)を指して使うことが多い。
これは、かつてイギリスが支配していたこれらの地域が宗教によって対立し、結果として分離独立したことに配慮して、例えば「インド系」といった国名に依拠した呼び方を避けるためでもあるようだ。




Bloodywoodはラップメタルバンドでもあるので、ラップという観点からインドの熱気と勢いが伝わってくる音楽を挙げるとすれば、やはり2010年代中頃のヒップホップ黎明期の作品がオススメだ。

DIVINE "Yeh Mera Bombay"


このブログで何度も紹介しているが、ムンバイのヒップホップシーンの帝王DIVINEの"Yeh Mera Bombay"は、インド的なストリートラップのスタイルを確立した記念碑的な楽曲。
どんどん洗練されてきている今のインドのヒップホップも素晴らしいのだが、この時代の「地元の路地でいつもの仲間とミュージックビデオ撮ってみた」的な空気感は、やっぱり他の何ものにも代えがたい魅力がある。
Naezyと共演したこの曲は、もはやヒンディー語ラップのクラシックだ。


DIVINE feat. Naezy "Mere Gully Mein"


このへんの曲でシビれた方で映画『ガリーボーイ』をまだ見ていないという方は、今すぐ見てみてください。
『スラムドッグ$ミリオネア』の舞台としても知られるスラム街ダラヴィ出身のラッパー、MC Altafの初期作品も、2010年代なのに90年代的なノリが素晴らしい。

MC Altaf "Code Mumbai 17" ft. DRJ Sohail


今回紹介したのはムンバイのヒンディー語ラップのみだが、じつはベンガル語(インド東部のコルカタあたりのバングラデシュで話されている言語)のラップが今どんどんかっこよくなってきているのを最近見つけたので、それはまた改めて紹介したい。


というわけで、今回はBloodywoodとはまた別のやり方でインドの要素を取り入れていて、かつ熱さとカタルシスを感じられるアーティストを厳選して紹介してみました。
インドにはこんなふうに他にも素晴らしいアーティストがたくさんいるので、もっともっと世界的に評価されたらいいと思うし、日本にも来てほしい!




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goshimasayama18 at 22:55|PermalinkComments(0)