武田尋善

2019年05月26日

マサラワーラー武田尋善さんの個展に行く

池ノ上のギャラリーDeepdanで行われている武田尋善さんの個展に行ってきた。

武田さんはミュージシャンの鹿島信治さんとの出張インド料理ユニット「マサラワーラー」でも有名なイラストレーター。
溢れるインド愛にインスパイアされたイラストを発表している。
初めてその名前を聴いたのは、尾久の南インド料理店、「なんどり」のファンキーすぎるテント絵だったか。

武田さんの作品は、インドをモチーフにしながらも、インドのことをよく知らない人が見ても、美しさやかわいらしさや人間らしさや不思議さを感じられる、普遍的な良さがある。
(インド好きの私が言っても説得力がないかもしれないが)


ここで唐突に思い出話的な話題に移る。
インドでよく見る絵といえば、ヒンドゥーの神様の絵。
リクシャーやタクシーの運転席に飾られていたり、マリーゴールドの花が飾られてお香が焚かれていたりするあれである。
青黒い肌や象の頭の神様たちは、インドで見るとすごく生活に溶け込んでいて、なんというかいい感じなんである。
ありがたいと同時にフレンドリー。
哲学的、神話的な存在なのに、現世利益的な祈りもばっちこい。
宗教にこだわりのない日本人は(私のことだが)、寺院の参道でシヴァファミリーとかサラスヴァティ(当時ギターを弾いていたので、ご利益がありそうな気がした)とかの絵を買ってきて、部屋に飾ったりしたものである。

ところが、日本の部屋に飾られたインドの神様は、浮いて見えることこの上ない。
そもそも、一般的な日本の部屋にそこだけ強烈にインドというのはものすごく場違いで、神様本人も居心地が悪そうだ。
遊びに来た友だちにも不審な目で見られること確実だ。
しばらく飾ってはいたものの、とうとう自分でも違和感に我慢できなくなって、そっと外して、インド旅行の写真と一緒に箱にしまったりしたものだった。
残念なことに、ここ日本では、インドの魔法は効かないのである。
日本で飲むチャイが、インドと同じ淹れ方をしても甘ったるくしか感じられないのも、インドで買ってきたスナックが辛くしか感じられないのも、全て魔法が解けてしまうからだ。

前置きが長くなったが、武田さんの絵には、どういう秘密があるのか知らないが、不思議なことに、そのインドの魔法が日本でも生きているのだ。
神様の絵だけでなく、牛や鳥や木をモチーフにした作品にも、天上の世界のような神秘性と同時に、近所の公園のような親しみやすさがある。
 
別に極度にマンガ風だったり、 デフォルメされてたりしているわけではない。
むしろ、その画風は(絵のことはよくわからないけど)ものすごく緻密で、きっと作品を作るのはもう「創作」っていうよりも、「行」って感じなんじゃないかって思うくらいのものだ。

武田さんは今日も個展会場の片隅で絵を描かれていたのだが、驚いたことに、お客さんが話しかけたり、すぐそばでマサラワーラーの鹿島さんと私がインドのロックとプロレスの話題で盛り上がっていたりしても、全く動じずに、ときに話に加わりながら、下書きも無しに白紙にペンで描いているのである。
聞けば、「どんな環境でも描ける」とのこと。
メンタリティーが完全にインド人なのかもしれない。

インド的ソウルと日本人のハート、それにおそらく門外不出のスパイス的な何か。
武田さんの絵の魔法には、きっとそんな秘密があるのだと思う。
もちろん、人知れぬ努力の賜物でもあるのだろうけど、不思議とそれを感じさせないのも凄いことだ。

武田さんの絵はホームページでも見られますが、(https://hiroyoshi-takeda.com)機会があったらぜひ一度生で見ることをオススメします。

最近話題のインド少数民族アートが好きな方にもオススメです。
とまたインド好きに対して勧めてしまったけど、インド好きだけのものにしてはいけない素晴らしさがあります。
個展は池の上Deepdanで、今日(5月26日)まで!

aurora


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goshimasayama18 at 00:09|PermalinkComments(0)