バングラー演歌

2020年10月18日

どうして誰もバングラー演歌をやらないのか

(最初に断っておくと、今回の記事は完全にたわごとです)

先日来、このブログの記事を書くためにパンジャービー/バングラー系の音楽を聴きまくっているうちに、自分の心と体に思いもよらない変化が起こった。

なんと、演歌が聴きたくなったのである。
自分はこれまで、インドの音楽にはまる前を含めても、ロックとか、いわゆる洋楽的なジャンルの音楽ばかり聴いてきた人間であり、失礼ながら、これまでの人生で一度たりとも演歌を聴きたいと思ったことはなかった。

ところが、パンジャーブ系の音楽をひたすら聴いているうちに、同じようにコブシの効いた日本の演歌(というか吉幾三)が、無性に聴きたくなってしまったのだ。

まさか自分がSpotifyで「吉幾三」を検索する日が来るとは思わなかった。
吉幾三から始まって、北島三郎、細川たかし、五木ひろし、氷川きよし、石川さゆり、都はるみ、etc...知っている名前を次々と入力して、演歌を聴きあさってみた。
聴けば聴くほど、「演歌は日本のバングラーであり、バングラーはインドの演歌だ」という確信は強くなっていった。

そして、演歌とバングラーを交互に聴いているうちに、自分の中に、とても素晴らしいアイデアが浮かんできたのだ。
それは、「バングラー演歌」というジャンルを作ったら、ものすごい金脈になるのではないか、ということだ。


演歌とバングラー/パンジャービー・ポップの歌い回しは、本当によく似ている。
例えば、この曲を聴いてみてほしい。

(参考楽曲:Aatish "Jannat")
念のために言っておくと、演歌っぽいパンジャービーの曲を何曲も探してこの曲を見つけたわけではない。
YouTubeで適当に検索した3曲目がこれである。

2曲目に行き当たったこの曲もかなり演歌っぽかった。
歌い回しだけでなく、イントロのガットギターのトレモロ奏法など、バングラー/パンジャービー歌謡は演歌っぽい要素には事欠かないのだ。


次に、演歌がいかにバングラーっぽいかを聴いてみよう。
この曲を演歌に含めて良いかどうかは意見が分かれると思うが、当人の意志とはまったく関係のないところで、最近のパンジャービー・ポップスの主流であるバングラーラップと演歌を繋ぐミッシングリンクとなっているのは間違いないだろう。



演歌とバングラーの共通点はサウンド面だけではない。
演歌の美学として、紅白歌合戦における北島三郎の「まつり」の演出や、小林幸子の巨大衣装など、祝祭性や過剰さを良しとする考え方がある。
こうした傾向は、パンジャービー・ポップスが持つボリウッド的な華やかさともバッチリはまるはずだ。

というか、こうして見てみると、演歌ってじつはかなりインドっぽいのではないだろうか。
この演出もダンサーも増し増しにしてゆく感覚は、ほとんどボリウッド映画のミュージカルシーンだ。

こんな感じのドール(Dhol)のビートや…


こんな感じのバングラー・ダンスは、

演歌が持つ祝祭感覚とぴったりだ。

「バングラー演歌」という発想が荒唐無稽だと思っていたあなたも、「ひょっとしたら…」と思い始めてきたのではないだろうか。

想像してみてほしい。
和太鼓の代わりにドール(Dhol)が打ち鳴らされる中、パンジャーブの民族衣装の大量のダンサーを引き連れて歌い上げる演歌歌手を。
そこには、マツケンサンバ的な、ミスマッチなのになぜか違和感がないという、不思議な説得力と恍惚感が生まれるはずだ。
そんな曲がヒットすれば、日本の景気も少しは良くなるだろう。

本場のバングラー歌手と共演したりすれば、日本だけではなくインドでも大ヒット間違いなしだ。
粋に着物を着こなした演歌歌手と、ターバン姿に伝統衣装のバングラー歌手の共演なんて、考えただけで心が躍る。
もちろん、バックには着物姿の踊り手とサリーのダンサーたち、そしてフンドシをしめた和太鼓の集団と、パンジャービーのドール奏者たちが華を添えるのだ。

演出のパターンは無限にある。
演歌のジャンルのひとつに「任侠もの」というのがあるが、こんな感じのパンジャービー・マフィア・スタイルと、着流し姿の古式ゆかしい任侠スタイルの共演なんかも見てみたい。

昨今、反社会勢力を扱った芸能への風当たりは強くなるばかりだが、これくらい荒唐無稽なら、馬鹿馬鹿しくて誰も文句は言わないだろう。

もちろん艶やかな女性歌手の共演も素晴らしいものになるはずだ。
日本からは、石川さゆりや丘みどりあたりに出てもらえれば、パンジャービー美人の歌手とならんでも、美しさでも歌唱力でも引けを取らないだろう。

演歌とバングラーのもうひとつの共通点といえば、どちらもラテン音楽への接近が見られることだ。
演歌では、こんなふうに唐突にラテンの要素が導入されることがたびたびある。


純烈、これまでノーチェックだったがこうやって見てみるとかなりボリウッドっぽいな…。

一方のバングラー/パンジャービー勢も、よりモダンな方向性ではあるが、最近こんなふうにラテン要素の導入が目立っている。

若手演歌歌手なら、これくらい現代的なバングラーの要素を取り入れてみても良いだろう。

演歌がバングラーを取り入れるメリットは、一時のブームには終わらない。
バングラーは、これまで何度も書いてきた通り、伝統音楽でありながら、ヒップホップやEDMなど新しいジャンルを貪欲に吸収し、今でも北インドのメインストリームを占めている。
一方、我が国の演歌は、サウンド面の刷新がなかなか進まず(ビジュアル的には、ホストっぽくなったりとそれなりの進化を遂げているようなのだが)、リスナーの高齢化が著しく、ジャンルとしての衰退に歯止めがかからない状態だ。

ところが、演歌はバングラーを経由することで、ヒップホップやEDMのような若い世代の音楽と、ごく自然に融合できるのだ。

例えば、こんなアレンジの演歌があってもいいじゃないか。
演歌がこれくらい斬新な音楽性を示すことができれば話題になること間違いなしだし、若い世代や新しい音楽に敏感な層も飛びついてくるだろう。
バングラーとの融合は、演歌にとって起死回生のカンフル剤となる可能性があるのだ。

と、バングラーと演歌を巡る妄想は膨らむばかりだ。
この記事が演歌関係者(もしくはバングラー関係者)の目に留まることを祈っている。
バングラー演歌、いいと思うんだけどなあ…。

演歌関係者のみなさん、ぜひこのアイデアを実現させてみませんか?





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goshimasayama18 at 20:35|PermalinkComments(0)