ドリームポップ
2022年11月05日
インドが誇る2大ドリームポップバンド Parekh & SinghとEasy Wanderlingsの新作!
インドが誇る2大ドリームポップバンド(だと私が勝手に思っている)Parekh & SinghとEasy Wanderlingsが相次いでアルバムとEPを発表した。
彼らはインドのなかでは、国際的な成功にわりと近い場所にいると言えるアーティストたちだ。
Parekh & Singhは英Peacefrog Recordsに所属していて、Easy WanderlingsはSXSW(South By South West. テキサス州オースティンで開催されるポップカルチャーの巨大見本市)への出演経験がある。
要は、海外からも評価されそうなインディーポップバンドなのだが、以前も書いた通り、インドでは彼らのような英語で歌う「洋楽的」なスタイルのアーティストの人気はさほど高くない。
こうした音楽のリスナーは、インディーズシーンをチェックしている一部の若者に限られ、大衆的な成功を収めるには程遠い状況なのだ。
国内がダメならば、その音楽の質の高さに海外からの注目が集まっても良さそうなものなのだが、我々を含む外国人はインド人にはいかにもインドっぽい音楽を求めてしまう傾向があり、例えばBloodywoodみたいなインドらしさあふれるバンドと比べると、彼らのようなバンドの知名度は高くはない。
であれば、彼らの素晴らしさを大々的に知ってもらおう、というのがこのブログの心意気というやつで、まずはさっそくParekh & Singhが10月にリリースしたアルバム"The Night Is Clear"から紹介してみたい。
Parekh & Singh "Sleepyhead"
彼らはコルカタ出身の二人組で、これまでに日本でもインディーズ系媒体に取り上げられたり、高橋幸宏がSNSで好意的に紹介したりと、局地的に注目されてきた。
このニューアルバムのオープニングナンバーでは、従来に比べてちょっとグルーヴが強調されているのが新基軸のような気もするが、基本的な音楽性はこれまでのスタイルが維持されていて、今作でもベルベットのような質感のサウンドとポップなメロディーを存分に楽しむことができる。
そして今回もミュージックビデオのセンスが良い!
以前はウェス・アンダーソン趣味丸出し(それはそれで良かった)だったが、この曲ではそこまで露骨でなく、ハンドカメラを多用した映像とヨーロッパ映画のような色調がじつにスタイリッシュだ。
Parekh & Singh "Je Suis la Pomme Rouge"
こちらも流麗なストリングスが心地よいポップナンバー。
フランス語で歌うインド人アーティストの曲は初めて聴いた。(サビのみ。意味は「私は赤いリンゴ」)
このリリックビデオはアルバムに先駆けること9ヶ月前、2022年の1月に公開されているのだが、これまでの再生回数はたったの9万回程度。
人口規模のせいか、結構しょうもない曲でも数十万再生くらいされていることが多いインドの音楽シーンでの9万回再生というのは、この音楽の完成度を考えると、率直に言って、かなり少ない。
インド国内での「優れた音楽」の基準が必ずしも欧米目線でないことに関してはむしろ健全だとも思うが(インド国内で大衆的に支持されている音楽が素晴らしいとも思わないけど)、それにしたって、英語で歌ってるんだし、もっと世界中のリスナーが彼らのことを聴いてもいいんじゃないだろうか。
ちなみに彼らを直接知っているという人から得た情報によると、商業的に大成功しているわけではない彼らが、どうして"Sleepyhead"みたいな凝ったミュージックビデオを作れるのかというと、実家がとんでもない裕福ということらしい。
別に否定的な意味で書いているわけではなく、持てるリソースを最大限に活かして素敵なポップアートを作る彼らには、むしろリスペクトの念を抱いている。
今後もこの世界観をとことん追求して、上質な作品を作り続けてもらいたい。
アルバム全編は、Spotifyを使っている人は以下のリンクからどうぞ。
今作は、トールキンの『シルマリルの物語』や、フランク・ハーバートの『デューン』、さらには『ハリー・ポッター』などのファンタジー文学やSF文学にインスピレーションを受けているとのこと。
内省的なテーマの楽曲が多くなっているそうで、ぜひ歌詞にも注目して聴いてほしい。
プネーの8人組、Easy Wanderlingsは10月に5曲入りにEP "Caught In A Parade"をリリース。
彼らのことはこれまでも何度か紹介しているが、ポップなメロディーと優しさの溢れるサウンドは絶品。
今作には、昨年5月にリリースされた60年代ポップ風の佳曲"Enemy"も改めて収録されている。
60年代風のアレンジとメロディーが叙情的な1曲。
Easy Wanderlings "Enemy"
この動画も、ほとんど絵が動かない'official audio'とはいえ、これまで7,000回程度しか再生されていない。
楽曲のクオリティに釣り合う注目を集められていないという点では、彼らも同様なのだ。
"Mayflower"では、彼らが敬愛するシンガーソングライターのNikhil D'Souzaをヴォーカルに迎えている。
Nikhil D'Souzaは映画音楽を手がけることもあるムンバイのアーティストで、このブログでも紹介したビートルズのトリビュート・アルバムでジョンの未発表曲"India India"の秀逸なカバーを披露していたのも記憶に新しい。
Easy Wanderlings "Mayflower"
アルバムのラストを飾る"Makin' My Move"は彼らにしては珍しい80年代っぽい雰囲気のダンスチューンだ。
Easy Wanderlings "Makin' My Move"
彼らはアルバムリリースにともなうインド各地でのツアーを終え、1月にムンバイで初めて開催されるロラパルーザ(アメリカ発祥のオルタナティブロックのフェスティバル)への出演を控えている。
アルバムはSpotifyユーザーの方はこちらから。
いい曲を書いている彼らが、インド国内でも国外でも、もっと高い評価を得られる日が来ることを、願ってやまない。
日本のフェスとかにも来てくれないかな。
参考記事:
https://rollingstoneindia.com/parekh-and-singh-capture-magic-realism-on-the-night-is-clear/
https://rollingstoneindia.com/easy-wanderlings-deliver-celestial-new-ep-caught-in-a-parade/
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「軽刈田 凡平(かるかった ぼんべい)のアッチャーインディア 読んだり聞いたり考えたり」
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goshimasayama18 at 23:38|Permalink│Comments(0)