スーフィー

2019年11月21日

Faridkotのファンキーでオシャレな「ターバン・ポップ」!


前回まで、「謎のインド人占い師ヨギ・シン」の話題ばかり書いていたので、私自身もすっかり忘れていたのだが、このブログはインドの最近の音楽(ロックとかヒップホップとか)を紹介するブログなんだった。
というわけで、今日からひとまず平常運転に戻ります。
とはいえ今回は前回からの流れでシク教にまつわる話。

シク教徒の男性ってオシャレだなあ、と思う。
体格がいい人が多いせいもあるが、スーツを着ても民族衣装を着ても、だいたいバッチリ決まって見えるし、何よりもターバンの着こなし(かぶりこなし)がとても粋なのだ。

「ターバン」というと伝統的なものという印象が強く、あまりファッショナブルなイメージはないかもしれないが、シク教徒の男性たちは、じつはターバンを含めたコーディネートにとても気を遣っているオシャレさんたちなのだ。
その日のファッションやTPOに合わせて、白や薄い水色みたいなシンプルなものから赤や黄色などのド派手なものまで、いろんな種類のターバンを使い分けているのも素敵だし、額の部分にちらっと見えるターバンの下にかぶるやつ(名前知らない)を差し色にしたりするのなんて、本当に粋だなあと思う。


なぜ急にこんな話をしたかというと、Faridkotというバンドが今年4月にリリースした"Subah"という曲のビデオで見たとてもクールなターバンを、とにかく紹介したかったからなのである。 

私はモノトーンの太いストライプのターバンというものを初めて見た。
このすごく個性的なターバンを、レトロな丸いサングラスと合わせるなんて最高ではないか。
音楽的にも、どこか80年代っぽいエレクトロニックなビートに、ファンキーなギターのカッティングがとても心地良い。
ちょっと"Random Access Memories"の頃のDaft Punkを思わせる雰囲気もある。
そこだけ古典音楽の影響を感じさせる女性ヴォーカルがまたいいスパイスになっている。 
この曲では、衣装も音楽性も、インド人が得意な、伝統的なものを現代的にアレンジするセンスが、素晴らしくクールかつポップな形で結晶しているのだ。
これはまさに、アーバン・ポップ(Urban Pop)ならぬターバン・ポップ!(Turban Pop)

FaridkotはヴォーカルのIP SinghとギターのRajarshi Sanyalのデュオ。
現在は二人組だが、もともとは2008年に5人編成のバンドとしてデリーで結成された彼らは、自身の音楽を、親しみやすいメロディーとブルージーなギターが融合した'Confused Pop'と定義している。
Faridkotというのはパンジャーブ州にある街の名前のようで、アメリカのバンドでいうとBostonとかChicagoみたいなバンド名ということなのだろう。

面白いのは、いくつかの記事で、彼らの音楽を表すときに「スーフィー(Sufi)音楽」という言葉が使われているということだ(彼らは自分たちでもスーフィー音楽の影響を公言している)。
スーフィー/スーフィズムは、「イスラーム神秘主義」と訳され、修行によって神との究極的な合一を目指す思想とされる。
音楽ではヌスラト・ファテー・アリー・ハーンらに代表される「カウワーリー」が有名だ。
 以前からパキスタンなどには、スーフィー音楽とロックを融合した「スーフィー・ロック」というジャンルがあったが、当然ながらそれはムスリムによって演奏される音楽ジャンルだった。
ところが、Faridkotのメンバーは、IP Singhはどう見てもシク教徒だし、Rajarshi Sanyalは名前からするとヒンドゥーのようである。
私は「スーフィー」というのは、音楽のスタイルである前に、ムスリムであることを前提とするものだと思っていた。
だがどうやらそうではなく、たとえ異なる信仰を持っていても、その力強く恍惚的な音楽性から影響を受けたなら、自由に自分の音楽に取り入れて、それを公言しても良いものらしい。
なんともおおらかな、いい話ではないか。

彼らは2011年にリリースしたファーストアルバム"Ek"がラジオで高く評価され、2014年にはユニバーサルに移籍してセカンドアルバム"Phir Se"を発表した。
変わったところでは、スタローンやシュワルツェネッガーが出演した『エクスペンダブルズ3』のヒンディー語版テーマ曲も担当したようだ。
彼らの楽曲のミュージックビデオは、ショートフィルム風で見応えがあるものも多い。
 
少年の淡い恋と友情を描いた"Mahi Ve" 

インドの子どもたちってどうしてこんなにかわいいんだろう。
シク教徒の男の子のおだんごターバンもとってもキュートだ。

貧しい青年の一途な片思いを描いた"Laila"のミュージックビデオは、インド映画でもよくあるちょっとストーカーっぽい純愛もの。

これはちょっとどういう感情になったらいいのか分からない。

というわけで、今回はI.P. Singhのツートンカラーのターバンが印象的なFaridkotを紹介してみました。
シクのミュージシャンのターバン事情については、まだまだ興味深い例が多いので、次回はさらに掘り下げて書いてみたいと思います!

ちなみに、ターバンは教義として着用することになっているシク教徒以外でも、ラージャスターン州などでは伝統的に広く用いられており(デザインや巻き方が異なる)、また王侯や戦士の正装としても使われてきた。
シク教徒でも、最近は若い人たちを中心にターバンを巻かない人が増えてきており、また宗派によっては着用の義務がないこともあるようだ。
…という通りいっぺんのターバンの説明を念のためここにも書いておきます。



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goshimasayama18 at 21:48|PermalinkComments(0)