スケートボード

2021年02月21日

インドのスケートボードカルチャーを追う!

インドのスケートボードカルチャーに興味を持ったのは、この曲がきっかけだった。
この曲は、インドの最西端にあるグジャラート州のシンガーソングライターShashwat Bulusuによるものだが、ビデオの撮影場所は彼のホームタウンとは遠く離れたインドの東のはずれ、バングラデシュとミャンマーに挟まれた場所にあるトリプラ州だ。
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ミュージックビデオに出てくる若者の名前はKunal Chhetri.
人気の少ない街中や、トリプラの自然の中で、大して面白くもなさそうにスケートボードを走らせる彼の姿に、不思議と惹きつけられてしまった。
彼の退屈そうな表情やたたずまいに、強烈なリアルさを感じたのだ
例えば大都市の公園で得意げに次々にトリックを披露するような映像だったら、こんなに心に引っかかることはなかっただろう。
若者のカルチャーを成熟させてきたのは、いつだって退屈だったのではないだろうか。

このミュージックビデオを制作したのはBoyer Debbarma.
自身もスケーターであり、なんとインド北東部でスケートボードを専門に撮影するHuckoというメディアを運営しているという。
BoyerがShashwatの音楽に興味を持ってコンタクトしたところ、ShashwatもBoyerの映像をチェックしており、今回のコラボレーションにつながったそうだ。

BoyerのHuckoによる映像の一例を挙げると、こんな感じである。
異国情緒から始まる映像は、スケートボードを楽しむ若者たちが登場した途端に、見慣れた退屈と刺激が交錯する世界へと変質する。
もはやストリートカルチャーには、国籍もバックグラウンドも全く関係ないことを改めて実感させられる映像だ。
それにしても、ヒンドゥーの修行者で世捨て人であるサドゥーとスケーターの若者がチラム(あの大麻吸引具)を回し喫みするインドって、ものすごくクールじゃないか。

考えてみれば、ヒップホップがかなり定着しているインドなら、同じくストリートカルチャーの代表的存在であるスケートボードがすでに根付いていても不思議ではない。
というわけで、今回はインドのスケートボードカルチャーについて調べてみた。


インドのスケートボードカルチャーの歴史はまだ浅く、2000年代以降に欧米のスケーターたちがバックパッカーとしてインドを訪れたことによって、その種が撒かれたようだ。
そのなかでも特に重要な役割を果たしたのが、イギリス人スケーターのNick Smithだ。
インドのカルチャー系ニュースサイトHomegrownのインタビューに対して、Nickはこう語っている。
「俺が10歳の頃、イギリスにはボードなんてなかったから、スーパーマーケットの裏から盗んだ台車で坂道を走っていた。その頃からスケートボードに夢中なんだ。インドでのスケートボード普及に力を注いできたのは、あの夢中だった頃を思い出すからだよ」

インドで最初のスケートパークは、NickがVansのサポートを受けて2003年にゴアに作った'Sk8 Goa'だった。
温暖な海辺のゴアに、欧米の寒い冬を避けて多くのスケーターが訪れるようになった。
ロックやクラブミュージックと同様に、スケートボードでもゴアが欧米の若者文化とインドとの接点となったのだ。

Nick Smithのインドでの活動は、欧米人スケーターのためのものだけではなかった。
この新しいスポーツ/ストリートカルチャーに夢中になった若者たちのために、彼は2010年にベンガルールでインドで最初のスケートボードチーム'Holy Stoked'を結成する。
彼はベンガルールにもPlay Arena(2011年)、Holy Stoked Epic Build(2013年)という二つのスケートパークを設立した。

その後、Nickは活動方針の相違などからHoly Stokedを離れ、新たにAdvaita Collectiveというクルーを結成したそうで、彼のスケートボード初期衝動を追求するインドの旅は、まだまだ終わらないようだ。

Nickがすでに離れた後だと思うが、'Holy Stoked'が2017年に公開した動画がこちら。
BGMはSuicidal Tendenciesとかのスケーターパンク。
分かってるなあ!

ヒップホップ同様、スケートボードに関しても2010年以降にインド各地で同時多発的にシーンが形成されたようだ。
現在ではあらゆる街にスケーターたちがいるようで、この動画は'Hindustan Times'が2015年にデリーのシーンを特集したもの。

ムンバイのヒップホップクルー、Munbai's Finestが2016年にリリースした"Beast Mode"にもスケートボードやランプが登場する。

インドのスケートボードカルチャーは既に一部で注目されているようで、日本語で検索してもいくつかの記事がヒットする。
とくに、ドイツ人女性がインド中部マディヤ・プラデーシュ州の小さな街ジャンワルに設立した無料のスケートパークJanwaar Castleの取り組みは複数のメディアで取り上げられている。

このJanwaar Castleは単なる遊び場ではなく、子どもたちの教育の普及にも役立てられており、利用の条件は「学校にきちんと行くこと」。
ヨガのレッスンも行われていて、また「女性を大事にすること」も教えられているという。

以前、ムンバイ最大のスラム地区ダラヴィで、ヒップホップダンスを通じて子どもたちに誇りを教えようとする取り組みを紹介したが、ストリートカルチャーがインドでは社会を良くするための運動に組み込まれているというのはとても意義深いことだと感じる。


Amazon Indiaで調べたところ、インドでは(クオリティーは別にして)スケートボードは1,000ルピー(1,500円程度)以下のものもあるようで、若者でも気軽に始められる趣味なのだろう。

文中で紹介したSk8 GoaやHoly Stoked Epic Buildは残念ながらクローズしてしまったようだが、インド各地に大小さまざまなスケートパークが存在しているようだ。

もしあなたがスケートボードを趣味にしているなら、コロナが落ち着いたらバックパックに愛用のスケートを括り付けて、これらの街を旅してみるなんていうのも素敵なんじゃないだろうか。
言葉のいらない趣味で異国の仲間たちと通じ合えるなんて最高だ。

これ以外に、変わったところではジャールカンド州のラーンチーにもスケートパーク(少なくともスケーターのグループ)があるようだ。
本当にインドのあらゆる地域の都市にラッパーとスケーターがいる時代になったのだなあ、としみじみと思う。


最後に、最初に紹介したShashwat Bulusuの曲をもう少し紹介したい。
彼はスケーターのために特化した音楽を演奏しているわけではないが、退屈さと情熱が心地よく融合した彼の歌声は、やはり都市の空気感を感じさせるものだ。

以前紹介したPrateek KuhadRaghav Meattleのように、インドではここ数年、非常に実力のあるシンガーソングライターも育ってきている。
Shashwatもまた注目すべき才能の一人だと言えるだろう。
インドの都市文化は、我々が知らないところで大きく変わりつつあるようだ。
(もちろん、良くも悪くも変わらない部分がどっしりとしているのもまたインドなのだけど)



参考サイト:

https://homegrown.co.in/article/804618/the-sunset-by-vembanad-juxtaposes-north-east-s-beauty-skateboarding-with-folk-pop

https://homegrown.co.in/article/800597/highlight-reel-the-evolution-of-skate-culture-in-india

https://homegrown.co.in/article/51995/meet-an-organisation-that-has-brought-skateboarding-to-rural-india-2

https://homegrown.co.in/article/44424/indias-skate-map-a-look-at-all-17-skateparks-across-the-country

https://homegrown.co.in/article/800809/we-profiled-5-of-india-s-most-interesting-sneakerheads

https://www.redbull.com/in-en/five-surprising-facts-about-indian-skateboarding

https://homegrown.co.in/article/10944/evolving-indias-skateboarding-culture-an-interview-with-nick-smith

http://www.caughtinthecrossfire.com/skate/features/death-in-goa/

https://neutmagazine.com/Ulrike-Reinhard-India





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goshimasayama18 at 15:33|PermalinkComments(0)