インドのJ-popファン

2019年04月01日

電気グルーヴとインド古典音楽をリミックスして石野卓球にリツイートされたムンバイのJ-popファン


今回の記事は少し個人的な内容かもしれない。
今回紹介するのは、プロのミュージシャンではなく、ムンバイに住んでいる私の友人、Stephenだからだ。
大のPerfumeファン、J-PopファンでPerfume India  🇮🇳 | परफ्यूम インド@prfmindia)という名前でtwitterをやっている彼は、どういうわけかかなり早い段階で私のブログを見つけてくれて、Google翻訳を使ってこのブログを読んでくれていた。
彼はいつも日本の音楽(主にPerfume)について英語でツイートしていて、私はいつもブログに日本語でインドの音楽のことを書いている。
いわば日本とインド、それぞれの国で、正反対に同じようなことをしているのだ。

そんな彼なので、もちろんピエール瀧に何が起きて、日本のレコード会社がそれに対してどう反応したのかも知っている。
なにせ、インドでサービスが開始されたばかりのSpotifyから、彼らの楽曲が全て削除されてしまったのだから。
(ちなみに電気グルーヴの名前はPerfumeと共演したことで知ったらしい)

私も電気グルーヴのファンだったので、今回の逮捕とその後の過剰な自粛に胸を痛めていたのだが、そんなときに彼が電気の初期の名曲「電気ビリビリ」に南インドのリズム「コナッコル」(Konnakol)をかぶせたリミックスをtwitterに投稿してくれた。


コナッコルは南インド古典音楽のラップ的に口でリズムを取る歌唱方法で、とにかくその速くて複雑なリズムがすごい。
似たものに北インドの古典音楽で用いられるボル(Bol)というものもあるので、よってこのmixは名付けて"Denki Biribol".
「このビートが気に入ったから、ガラムマサラをちょっと加えてみた」っていうコメントもイカす!
この曲がPerfumeのあ〜ちゃんのお気に入りっていう彼ならではの情報も面白い(Perfumeのメンバーがこんなヤバい曲が好きっていうのは意外!)が、とにかくアクの強い初期電気の楽曲に、インド古典音楽っていう意外すぎる要素が驚くほどハマっている。


なんというか、このタイミングで外国の電気ファンが、それも彼らがライブを行ったことがあるドイツとかじゃなくて、インドのファンがこういうポストをしてくれたことがすごく温かくて、うれしかった。
それに単純にこのmixがすごく面白くてかっこよかったので、勝手にリツイートしまくっていたら、なんとそれが石野卓球氏の目にとまったらしく、卓球氏が彼のポストをリツイートしてくれたのだ。
スクリーンショット 2019-03-30 14.49.42
瀧の逮捕とそれにともなう活動休止以降、電気ファンにとって唯一の彼らとの接点である卓球氏のtwitterで取り上げてもらえるなんて、私も彼もとてもうれしかった。
このツイートはまたたく間に広まり(2019年3月30日現在7059いいね、1390リツイート)、彼は「Daokoが『いいね』してくれた!うれしくて泣けたよ!」とか、さらにJ-popマニア全開なリアクションをツイートしていた。

というわけで、今回は電気ファンの間でも存在が知られるようになったこのインドいちのJ-popファン(多分)である彼に、日本の音楽のこと、インドの音楽のことをいろいろ聞いてみました!



凡平「Hi Stephen. お願いがあるんだけど、ちょっとインタビューさせてくれる?石野卓球がリツイートしてくれて、大勢の日本人が君の『Denki Biribol』を聴いてくれたことだし、インドにいる日本の音楽のファンとしてぜひ君のことを紹介したいんだ」

Stephen「ハハハ、僕は特別な人間じゃないし、なんか変な感じだけど、ぜひ協力させてもらうよ」

凡平「ありがとう。今じゃ君は日本の電気グルーヴファンにとって特別だよ。それじゃあさっそく最初の質問。そもそもどうしてJ-popを聴くようになったの?」

Stephen「正確に言うのは難しいけど、ほとんどは小さい頃見たアニメを通して知ったって言えるかな。最初の頃聴いたJ-popはアイドル音楽に限られていたけど、後になって他にもいろいろあるのを見つけたんだ」

凡平「日本の若者と同じような感じだね。どんなアニメを見てたの?」

Stephen「最初に知ったのは『ナルト』と『デスノート』。実際のところ、アニメの大ファンってわけじゃないから、すごくたくさん見たわけじゃないけど。『ナルト』『鋼の錬金術師』『Devil May Cry』を少し見てたよ。完全に見たのは2つだけで、『デスノート』と『NHKにようこそ』だね。この2つは大好きだった。実際、『NHKにようこそ』でかなり日本の音楽に興味を持つようになったんだ」

恥ずかしながら、『NHKにようこそ』という作品のタイトルは聞いたことがあったが、英語で"Welcome to NHK"と言われた時にこの作品名の英訳だとすぐに分からず、この時てっきりNHKでアニメを見ていたのだと誤解していた。ちなみにこの作品タイトルの'NHK'は放送局ではなく「日本ひきこもり協会」の略で、青年がひきこもりから立ち直る過程を描いたライトノベルが原作のアニメ。

凡平「NHKの国際放送とかケーブルテレビで見てたの?」

Stephen「いや、うちの地域じゃ見られないから、インターネットで見てたんだ」

凡平「なるほど。インドでも日本のアニメは人気って聞いたけど、インドの人たちもみんなそんな感じでアニメを見ているの?」

Stephen「アニメはインドではびっくりするくらい人気があるよ。アニメファンが集まるためのカフェもあるんだ。ムンバイに'Leaping Window'っていうマンガのライブラリーがあるレストランまであるんだ。さすがにそういう場所は町中でここだけじゃないかな。アニメキャラのタトゥーやなんかをした人を見かけることだってあるよ」

と、思ったより盛り上がっていそうなムンバイのアニメ事情。
これがそのLeaping Windowの様子だ。
日本のマンガ喫茶とは違って、料理もかなり本格的でオシャレなものを提供してくれるお店のようだ。
行ってみたい!
LeapingWindow
(画像は'Things To Do In Mumbai'のFacebookページから)

Stephen「Cool Japan FestivalやComic Conではコスプレイヤーもたくさん集まるよ。かなり真剣にやってるほとんどプロみたいな人たちもいる。」

ムンバイのCool Japan Festivalのコスプレイヤーたちはこんな感じ。
CoolJapanFestivalMumbai
(画像はCool Japan Festivalの Twitterから)
(関連記事:「特集ナガランドその3 ナガの地で花開く日本文化 ナガランドのオタク・カルチャー事情とは?」「日本とインドのアーティストによる驚愕のコラボレーション "Mystic Jounetsu"って何だ?」)

凡平「J-popに話を戻すと、それからPerfumeを見つけたってこと?」

Stephen「それを話すにはちょっと長くなるかな。最初に坂本龍一の音楽を見つけて、彼の音楽にはまったのが日本の音楽を好きになった最初のきっかけだよ。彼の"Seven Samurai"っていう曲があるんだけど、それが今まで聴いた曲で一番のお気に入りだよ。彼の曲を聴き続けているうちに、もっと日本の音楽を聞きたいと思うようになって、ある日Youtubeで'Japanese music'だったか、そんな感じで検索してみた。そうしたら、確か'top 100 Japanese songs'みたいなビデオを見つけたんだ。間違ってなければその最初の曲がPerfumeの『ポリリズム』で、それで一気にはまっちゃって、もっと聴かなきゃって思ったんだ。」

凡平「Perfumeは、君にとってどんなふうに特別だったの?」

Stephen「僕の場合いつも音楽こそが第一なんだけど、中田ヤスタカの音楽の作り方がすごく素晴らしくて大好きになったんだ。彼はシンプルなダンスミュージックをより複雑なものにしている。多くの欧米のアーティストは音楽をよりシンプルなものにしたがるけど、彼は反対のことをやっているんだ。
それに加えて、ライブの映像を見て3人のメンバーがまた素晴らしいことを発見したんだよ」

凡平「お気に入りのPerfumeの曲を教えてくれる?」

Stephen「うーん、ハハハ、お気に入りはたくさんあるからなあ。順序はともかく、僕のトップ5を挙げるとしたら、ポリリズム、シークレットシークレット、NIGHT FLIGHT、Have a Stroll、FAKE ITだね」

凡平「じゃあ、Perfume以外で好きなアーティストは?」

Stephen「これもすごく難しいなあ、いつも新しいクールな音楽を見つけているから。常に変わり続けてはいるけど、今現在のトップ5を挙げるとしたら、坂本龍一、YMO、中田ヤスタカのソロとcapsule、天地雅楽、吉田兄弟」

凡平「本当にいろんなジャンルを聴いてるんだね。日本の音楽をインドの音楽とか欧米の音楽、K-popみたいな他のアジアの音楽と比べて、どこが気に入ってくれているの?」

Stephen「J-Popとか日本の音楽は一般的に他の国の音楽よりもユニークなサウンドを持っているよね。日本の音楽シーンは新しいことに挑戦することを全く恐れていないみたいだよね。例えばU-Zhaanみたいなアーティストはタブラ(ご存知、インドの打楽器)でダブステップの曲を作ったりする。僕はそんなことができるなんて想像したこともなかったけど、彼はとてもうまくやっていた。日本のミュージシャンやアーティストは世界中のあらゆる要素を最大限に活用して自分たちの音楽を作る方法を本当によく知っている。日本は音楽を融合させることに関しては最高だよ。だから日本の音楽はすごく魅力的なんだ」

凡平「ありがとう。音楽のフュージョンに関しては、インドも素晴らしいセンスを持っているよね。というわけで、"Denki Biribol"の話。本当に気に入っているんだけど、どんなふうにあのリミックスを作ったの?」

Stephen「ハハハ、じつは電気グルーヴを聴き始めたのはピエール瀧のニュースを聞いてからなんだ。インドで電気グルーヴの音楽を探すのは難しかったよ。インドでもSpotifyのサービスが始まったところだったから、彼らのいくつかのアルバムを楽しむことができたんだ。それで『電気ビリビリ』のビートが本当に気に入ったんだ。
そのビートを聞いているうちにおかしなことを思いついて、そこにコナッコルをかぶせてみようと思ったんだよ(笑)。ちょっとクールで面白いとおもったからね。それでYoutubeでビデオクリップを見つけて、一緒にしてみただけだよ。こんなに多くの人が見たり聴いたりしてくれるなんて全然思わなかったよ(笑)」


ちなみに『電気ビリビリ』とmixしたコナッコルのもとの動画はこちら!
完成品を見ると違和感なく電気meetsインドになっているけど、これを電気ビリビリに合わせようと思った発想は凄い!

凡平「日本の電気グルーヴファンはみんな『Denki Biribol』を気に入ったはずだよ。瀧の逮捕以来、辛い時期だったから、インドからこうして応援してくれるのはうれしかったね。知っての通り、レコード会社が彼らの曲を全部ストリーミングサービスから削除してしまった。我々はみんな、こんなのはやりすぎでおかしいと思っているんだけど、君はどう思う?同じようなことって、インドでも起こりうるの?」

Stephen「音楽の販売やストリーミングをやめるのはアンフェアだと思うね。人々が彼らの音楽を見つけることは許されるべきだよ。例え事件をきっかけに彼らを見つけるんだとしても。僕も今回の事件をきっかけに彼らの音楽を聴き始めたけど、もうこれ以上聴くことができなくなってしまった。別に瀧がしてしまったことや、ドラッグを使うことをサポートしようってわけじゃなくて、ただ音楽を楽しみたいだけなんだからね。インドでもドラッグの問題でつかまった有名人はいたと思うけど、ファンたちは彼らを応援し続けるのか、やめるのか、自分たちで決める自由が許されているよ。」

凡平「日本はまったくおかしな状況になってしまっているよ。ところで、石野卓球がリツイートしてくれて、このポストがどんどん広まっていったのはどんな気持ちだった?Daokoみたいなアーティストを含む多くの日本人が『いいね』をしたんだよ」

Stephen「ハハハ、すごく幸せだったよ。信じられなかったよ。実を言うと、ちょと泣いたね。日本のアーティストたちはインドにファンなんかいないと思ってるんじゃないかと感じてた。だから、ここにもファンがいるんだよって分かってもらえてうれしかったんだ」

凡平「僕ら日本のファンも、インドにもファンがいるって知ることができてうれしかったよ。
それから君のもう一つのremixの"Gully Bully"も気に入ってる。"Denki Biribol"も"Gully Bully"もインド音楽の複合的なリズムがオリジナルの楽曲のデジタルなビートをもっと魅力的にしていると思う。これはどうやって作ったの?」

"Gully Bully"はStephenが作ったPerfumeの"Hurly Burly"と映画Gully Boyでも使われたヒンディー・ラップの名曲"Mere Gully Mein"(「俺のストリートで」の意味)のマッシュアップ。

ミックスしたそれぞれの曲が全く新しい印象になっていてこれまたかっこいい!
ちなみにRemixされた"Mere Gully Mein"の原曲はこんな曲。


Stephen「Perfumeに何かインドの要素をミックスしてみたかったんだよ。音楽的なことはべつに何もしていなくて、"Gully Boy"が大流行していたから、この映画の曲をPerfumeとミックスしたら、インドの人も日本のにとも面白いと思ってくれるんじゃないかと考えたんだ。だから"Mere Gully Mein"を選んで、単なる冗談なんだけど、"Gully"とPerfumeの"Hurly Burly"が似た響きだったから一緒にしてみた。そうしたら、なんとPerfumeの曲に完璧に小節やビートを合わせることができたんだ」

凡平「なるほど。ところでどうやってインドで日本の音楽の情報を得ているの?」

Stephen「おかしな話なんだけど、別にいつも探そうとしているわけではないのに、新しいものに出会ってしまうんだよ(笑)。とくにお気に入りになりそうなアーティストを探すときは、だいたい好きなアーティストのカバーやコラボレーションを探すことが多いかな。それで気がついたらファンになってるんだ。インドでもSpotifyが使えるようになったから、より簡単に探せるようになったよ。」

凡平「インタビューにつきあってくれてありがとう。では最後の質問。ご存知の通り僕はインドの最近の音楽についてブログを書いているんだけど、インドの音楽シーンについてはどう思う?例えばボリウッドとか、インディー音楽とか。」

Stephen「最近のインドの音楽シーンはすごくエキサイティングで、今までで一番いい状況だよ。だから今後についてもすごく楽しみにしている。みんながインドの音楽を思い浮かべる時、それはボリウッドか伝統的な古典音楽だと思う。でも少しずつ、みんながインドの(新しい)サウンドに気付き始めていて、それはいずれ世界中に影響を与える可能性だってあると思うんだ。なにしろフレッシュで新しいものだからね」

凡平「僕もそう思うよ。これからも日本の音楽のサポートをよろしくね!」


Stephenは現在26歳で、10代の頃は家族とともにドバイに暮らしていたそうだ。
その頃はMTVで流れるような音楽を主に聴いており、その後ヘヴィーメタルを聴いていた時期もあったとのこと。
そういう意味では、典型的なインド生まれインド育ちのインド人とは少し異なるバックグラウンドなのかもしれないが、今日のインドでは彼のようにUAEなどの湾岸諸国や欧米で生まれ育って母国に戻ってくる若者も珍しくなく、インド人としてのアイデンティティーと国際的な感覚をあわせ持つ彼らは、インドのユースカルチャーをリードする存在でもある。

彼はプロのミュージシャンではなく、いち音楽ファンに過ぎないから、"Denki Biribol"も"Gully Bully"も技術的には単純なミックスかもしれないが、そのサウンドが新しくて面白いのは否定しようがない事実だ。
インドの音楽シーンでさかんに行われているインド音楽と欧米のポピュラー音楽との融合は、彼のような自由な発想がその源泉となっているのだろう。

こうした「国境なき世代」がこれからどんな音楽を作ってゆくのだろうか(彼のように海外在住経験がなくても、インターネットが発達し英語力も高いインドの都市部では、こういう若者たちがそこかしこにいる)。
そこには何度もこのブログでも紹介しているように、日本のカルチャーが少なからぬ影響を与えることもありそうで、いろいろな意味で非常に楽しみだ。

それでは今日はこのへんで!




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goshimasayama18 at 00:49|PermalinkComments(0)