フェスティバル

2020年09月25日

インドの秘境ナガランドの音楽やコスプレのオンライン・イベントのご案内!

「Do you know Cosplay? 知人がコスプレや音楽のオンラインイベントを行うんだ。ぜひ日本からも参加してほしい」
インド北東部で音楽ライターをしている友人から、いきなりこんな連絡があった。

彼の知人だという女性から詳細を教えてもらったところ、その企画は、'Magnum Opus'という名称で、ナガランドの'Act of Kindness'という団体が企画しているものだそうだ。
ナガランドといえば、かつては首狩りの風習があったことでも知られているミャンマーと国境を接するインド北東部の土地。
第二次世界大戦での日本軍の無謀なインパール作戦の激戦地にもなった土地としても知られている。

昨年公開された、田園地帯で歌われる美しい労働歌を描いたドキュメンタリー映画『あまねき旋律』でご存知の方も多いだろう。

もともとは異なる文化や言語を持つ16もの部族が暮らすナガランドは、住民のほとんどがキリスト教に改宗し、激しい独立運動を経て、そしてなぜか今では日本のアニメのコスプレが大流行しているという非常にユニークな土地だ。
 
どれほどコスプレが人気かというと、Nagaland Anime Junkiesというアニメ同好会が毎年開催しているコスプレの祭典Cosfestには、近隣の州からも含めて、毎年1万人近いファンが集まるほどだという。

ご覧の通り、ナガランドに住んでいるのは、典型的なインド人のイメージとは異なるモンゴロイド系の民族。
民族衣装を着ていなければ(とくにコスプレをしていると)日本人と間違えてしまいそうである。

今回案内のあったMagnum Opusは、10月25日の「世界芸術の日(International Artist Day)」に合わせて開催されているアートと音楽の祭典で、今年で6回目を数える。
絵画、写真、オリジナル楽曲、短編ストーリーなどと並んで、「コスプレ部門」があるというのがいかにもナガランドらしい
というか、日本の芸術祭のようなイベントで、コスプレ部門が行われているというのは聞いたことがない。
ナガランドはオタクカルチャーの市民権という点で言えば、もはやとっくに日本を超えているのかもしれない。
すごいぞ、ナガランド。 

このイベントは、例年ナガランド州の中心都市ディマプルで開催されていたが、今年はコロナウイルス禍によりオンライン開催となったことで、ぜひコスプレの本場である日本からも参加してほしい、ということで私にコンタクトしてくれたようだ。

こちらは2年前に行われたイベントの様子。
コスプレ部門の様子は1:30頃から出てくる。

インドの山奥の地方都市とは思えないコスプレっぷりに驚かされるだろう。

ナガランドの人々のジャパニーズ・カルチャーへの情熱には驚かされるばかり。
この動画は、先述の'Cosfest'を取り上げたドキュメンタリー映画だ。
38:20頃から、ナガの人々が日本への思いを告白する部分がある。

なんだか日本人として、こそばゆいような気持ちになるが、ここまで日本のカルチャーに情熱を傾けてくれている人々に、日本のコスプレイヤーの皆さんには是非とも応えてほしい。

エントリー費用はたったの150ルピー(215円程度)。
賞金もベスト・コスチューム賞が10,000ルピー(14,000円程度)、ベスト・パフォーマンスなどの各賞が5,000ルピー(7,000円程度)とごく少額だが、オンラインとはいえ、旅行でもなかなか行けない地域のイベントに参加することは、プライスレスな経験になること間違いなし。

 コスプレ部門の審査員はNaga Anime Junkiesの優勝者らが務めるそうだ。

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審査は、未編集の1分間未満の動画と、未加工の画像3枚(正面・横・後ろから撮影したもの。アクセサリー等にフォーカスした画像1枚を追加可能)で行われる。
評価の対象は、コスチュームのディテールやパフォーマンス、オリジナリティーとのこと。
(詳細はこちら)
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このRegistrationを10月15日までに以下のメールアドレス宛に送り、参加費をGoogle Payで振り込んだうえで、動画や画像を10月20日までに送ればエントリー完了。
(送付先のメールアドレスは、actofkindness.dimapur@gmail.com) 
 
 
もちろん、それ以外の部門も参加大歓迎。
オリジナルソング部門は、英語の曲が望ましいが日本語でも構わないとのこと。
これらの部門の詳細や審査方法については、上記のメールアドレス宛に気軽に問い合わせてほしい。
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それぞれ、ナガランドで活躍しているアーティストが審査を行うようだ。
コスプレイヤーをはじめ、アーティストのみなさんはコロナ禍でなかなかリアルでのイベントに参加できない日々が続いていると思うが、こんな時だからこそ、普段はなかなか接する機会がない地域の人々とも繋がってもらえたらと思う。

日本からの入賞者の知らせを聞くことを、心待ちにしています。


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2020年03月05日

インドのメタル系フェスの最高峰!Bangalore Open Air

たびたびこのブログでも書いている通り、インドでは多くの音楽フェスティバルが開催されている。
もともとお祭り好き、踊り好き、音楽好きの多い国民性に加えて、インターネットの発展にともなって多様なジャンルのリスナーが育ってきたこと、経済成長によって欧米の人気アーティストを招聘できるようになったこと、自国のインディーミュージシャンが増えてきたことなどが、インドのフェス文化隆盛の理由と言えるだろう。

これまでに紹介してきたNH7 WeekenderやZiro Festivalのように、さまざまなジャンルのアーティストが出演するフェスもあれば、大規模EDMフェスのSunburnや古城を舞台にしたMagnetic Fieldsのように、エレクトロニック系に特化したものもある。





さて、インドで根強い人気を誇っている音楽ジャンルとして、忘れてはならないのがヘヴィメタルだ。
ヘヴィメタルに熱狂するインド人を見たのは、この2007年のIron Maidenのバンガロール公演が最初だった。
彼らの全盛期だった80年代にはまったくロックが浸透していなかったにも関わらず、これだけたくさんのMaidenのファンがインドにいることに、ずいぶん驚いたものだった。


インドのメタルファンたちは、海外のバンドに熱狂するだけではない。
ムンバイやバンガロールのような大都市は言うに及ばず、キリスト教徒が多く、欧米の文化への親和性の高い南部ケーララ州やインド北東部にも、数多くのヘヴィメタルバンドが存在しているのだ。
(詳しくは、このカテゴリーで紹介している)


その中には、GutslitやAmorphiaのように、小規模ながらも来日公演を行ったバンドもいるし、Demonic ResurrectionやAgainst Evilといったヨーロッパツアーを成功させているバンドもいる。
そんな知られざるヘヴィメタル大国であるインドには、当然メタル系のフェスも存在していて、その頂点に君臨しているフェスが、今回紹介するBangalore Open Air(BOA)なのである。

このBOAは2012年にドイツの大御所スラッシュメタルバンド、Kreatorをヘッドライナーに第1回が行われ、以降、毎年Iced Earth, Destruction, Napalm Death, Vader, Overkillといった海外のベテランバンドをヘッドライナーに、インドのバンドも多数参加して、大いに盛り上がっている。

これはDestructionがトリを務めた2014年のフェスの様子。
インドからも、シッキム州のハードロックバンドGirish and Chroniclesや、正統派メタルサウンドにスラッシュメタル風のヴォーカルが乗るKryptosらが参加。
ときにモッシュピットも巻き起こるほどに盛り上がっている。


昨年のBOAの様子を見ると、5年間で会場の規模もぐっと大きくなっているのがわかる。


さて、このフェスの'Open Air'という名称にピンと来たあなたは、結構なメタルヘッズですね。
そう、このBOAでは、ヘヴィメタルの本場のひとつ、ドイツで行われている超巨大メタルフェス、Wacken Open Air(通称ヴァッケン、またはW:O:A)に参加するための南アジアのバンドのコンテストであるWacken Metal Battleの南アジアの決勝戦も行われているのだ。

BOA開催に先駆けた2011年から、インドからは毎年W:O:Aにバンドを送り込んでいる。
というわけで、ここではこれまでW:O:Aに参加したインドのバンドたちを紹介してみたい。
(デスメタルばかりなので食傷気味になるかもしれない)

まずは2011年にW:O:Aにインドから初参加を果たしたバンガロールのデス/メタルコアバンド、Eccentric Pendulum.
彼らは2018年にもW:O:A参戦を果たしている。


2012年に参加したのはムンバイのスラッシュ/グルーヴメタルバンドZygnema.


1998年結成のバンガロールのベテランKryptosは、2013年と2017年にW:O:A参戦を果たしている。


2014年のW:O:AにはムンバイのシンフォニックデスメタルバンドDemonic Resurrecrtionと北東部メガラヤ州シロンのPlague Throatの2バンドがインドから参加している。



2015年には同じく北東部から紅茶で有名なダージリンのデスメタルバンドSycoraxが出演。


2018年にはハイデラバードのGodlessが、2019年にはニューデリー出身のパロディバンド的な要素もあるBloodywoodがW:O:Aに参戦している。


同じようなメタルバンドがたくさん出演するフェスだからだと思うが、やはり類型的なデスメタルやメタルコアよりも、インドの要素が入った個性的なバンドの方が受け入れられやすいようで、オーディエンスの反応はBloodywoodが群を抜いて盛り上がっている。
インド国内のメタルファンは、自国の代表として正統派のメタルバンドを推したいのかもしれないが、海外のオーディエンスからすると、いかにもインドらしいバンドのほうが個性的で魅力的に感じられるというミスマッチがあるようにも思えるが、どうだろう。

2020年のBangalore Open Airは3月21日に開催され、スウェーデンのブラックメタルバンドMardukがヘッドライナーを務めるようだ。
インドからはDown Troddenceが出演する。
BOA2020
BOA2020battle

BOAに先立って、19日にはWacken Metal Battleのインド地区の決勝が、そして20日にはインド亜大陸の決勝が行われる。
果たして今年はどんなバンドがW:O:Aへのチケットを手に入れるのだろうか。

インドでも新型コロナウイルスの感染者が出てきており、デリーではホーリーに合わせて行われるフェスが中止になったりしているが、インドではフェスシーズンの大詰め。
BOAをはじめとするフェスが無事に行われることを願っている。


関連記事:



インドらしいメタルサウンドといえば、シタール・メタルやPineapple ExpressあたりもW:O:Aに出演したら盛り上がると思うんだけど。





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2019年12月16日

ゴアに帰って来たSunburn Festivalと「悪魔の音楽」批判


以前、インド西岸の街ゴアが、西洋人ヒッピーたちの楽園となり、90年代にはゴアトランス発祥の地となったのち、いまではインド人による音楽フェスティバルの一大拠点になるに至った経緯を書いた。

かつての記事はこちらから:




1960年代以降、欧米社会をドロップアウトしたヒッピーと呼ばれる若者たちは、こぞってゴアを目指した。
物価が安く温暖で、かつてポルトガル領だったことから欧米人ツーリストが過ごしやすい文化を持つゴアは、自由とドラッグと音楽を愛するヒッピーたちの理想郷だった。
1990年代に入ると、彼らがビーチサイドで行うパーティーのための音楽として、サイケデリックなテクノに民族音楽を融合した「ゴアトランス」が生まれた。
そのパーティーを目指して集まる者たちは、ヒッピーではなくレイヴァーと自称するようになった。


2000年代以降、無秩序なパーティーに対する規制が強化されるようになると、レイヴァーたちはこの街を去っていった。
そこにやってきたのが経済発展著しいインドの若者たちだ。
レイヴァーの文化的遺産であるパーティー文化はインドの若者たちに引き継がれ、ゴアはインド人たちがもっともクールな音楽フェスを楽しむリゾート地へと変貌した。

その象徴が、2007年に始まったSunburn Festivalだ。
インド人によるEDM/テクノ/ハウス系フェスのさきがけであるSunburn Festivalは、第1回の開催で5,000人の観客を集めると、回を追うごとに動員数を増やし、今では35万人が集う、アジア最大の、そして世界で3番目の規模のEDM系フェスティバルとなった。
世界で3番目ということは、フロリダのUltra Festival、ベルギーのTomorrowlandに次ぐ規模ということだから、その人気ぶりが分かるだろう。

Sunburn Festivalは、2016年以降は、のどかな港町のゴアからマハーラーシュトラ州の学園都市プネーに開催地を移して行われていたが、今年は久しぶりにゴアに戻って来て開催されることとなった。
2月にはSunburn Klassiqueと称して、このフェスティバルがインドの野外パーティーカルチャーの故郷であるゴアへ帰還したことを祝うイベントが行われた。

海外からは、インド系アメリカ人のEDMプロデューサーとして世界的な人気を誇るKSHMR, ベルリンの覆面ハウスDJとして知られるClaptoneらの世界的なアーティストが出演。
インドからも、国内テクノシーンの第一人者であるArjun Vagale、1990年代から活動するインド系クラブミュージックのMidival Punditzなどがラインナップに名を連ねた。

そして、年末の12月27〜29日には、いよいよ本番のSunburn Festival Goa 2019が行われる。
出演者として、マイアミ出身のハウス/テクノDJであるMaceo Plex, ベルギーのハウスDJ/プロデューサーのLost Frequencies、サマソニへの出演も記憶に新しいThe Chainsmokersらの豪華なアーティストたちがラインナップされている。


旅行やビジネスでインドを訪れただけの人には想像しづらいかもしれないが、この映像を見れば、インドにも欧米と同じようなパーティーカルチャーが確実に根付いていることが分かるだろう(とはいえ、こうしたイベントに集う若者たちは、12億人を超えるインドの人口のごく一部でしかないのだが)。
ところが、ゴアに里帰りを果たすSunburn Festivalに対して、宗教的な側面から、かなりトンデモな言いがかりがつけられているのだ。
インド大手紙Times Of Indiaの12月8日付の記事によると、保守的なヒンドゥーの政治家から、フェスの中止を求める声が上がっているという。


トランスミュージックは悪魔の音楽、取り締まるべき:ゴアの前大臣

ゴア最大のEDMフェスティバルが数週間後に迫っている。Siolim地区の立法議会議員で前大臣のVinod Paliencarは、「トランスミュージックはヒンドゥー神話の『乳海攪拌』のときに、悪魔が神々に対して演奏していた音楽である」と主張した。
この立法議会議員は、4ヶ月前までBJP(訳注:インド人民党。ヒンドゥー至上主義的傾向が強いとされる中央政府の現政権与党)内閣の水産大臣を務めており、「ウパニシャッド(ヒンドゥー神話)によると、トランスミュージックがプレイされるときは、常に悪が善を打ち破ることになる」と述べて、トランスパーティーの取り締まりをしようとしていた。
Paliencarの選挙区には、ゴアのナイトライフとゴアトランスで有名なアンジュナとバガトール(訳注:ビーチの名前。前述のレイヴパーティーの動画や今年のSunburnの会場がバガトールであり、アンジュナにはヒッピー向けの宿や店が多い) が含まれている。
(筆者訳、後略) 
若者が熱狂する音楽を「悪魔の音楽」と呼ぶという、1950年代のロックンロールの時代から繰り返された、ずいぶんと古典的な言いがかりである。
「乳海攪拌」とは、ヒンドゥー教における天地創造神話の一部だ。
神と悪魔が激しい戦いの末に、アムリタという霊薬を得るために、ミルクでできた海を攪拌すると、そこから天地のあらゆる存在が湧き出でたきた、という壮大な物語で、インドのみならず東南アジアにも広く伝わっている。
まさかそんな神話が、現代のクラブミュージックに対する批判に使われるとは思わなかった。
さすがにこれはゴアの人口の66%を占めるヒンドゥー教徒の、とりわけ保守的な層に向けた人気取りのための発言だと思うが、もしかしたらこの政治家自身も本気でこのトンデモな理論を信じているのかもしれないと思わせるところが、インドの面白いところでもあり、恐ろしいところでもある。

そもそも、今回のSunburnは決してトランスに特化したイベントではない。
メインはEDMやテクノ/ハウス系の音楽で、いわゆるトランス系のアーティストはSpace CatやLaughing Buddhaなどごく一部だ。
おそらく彼は狭義のトランスというジャンルを批判しているのではなく、クラブミュージック全般を指してトランスと呼んでいるものと思われるが、それはそれでいかにもゴアらしい誤解と言えるだろう。

いずれにしても、以前の記事でも紹介したように、ヒッピー/レイヴァーたちやパーティーカルチャーは、必ずしもゴアの地元民からは歓迎されていなかった。
外国から来た無法者たちによる治安の悪化やドラッグの蔓延は(彼ら自身は「自由を愛する」というつもりだったとしても)、穏やかな暮らしを愛する地元の人々にとっては、むしろ忌むべきものだったのだ。
ポルトガル領時代から暮らすカトリックの住民にとっては、インド併合後のヒッピーやヒンドゥー教徒の流入は歓迎せざるものであり、ポルトガル時代のほうが良かったという声も多いと聞く。
以前の記事では、カトリック系住民からのヒッピー批判をお伝えしたが、今回は、ゴアでも圧倒的多数派となったヒンドゥーの側からの、同様の批判というわけである。
よそ者たちの乱痴気騒ぎを歓迎しないという点では同意見だとしても、あまりにもヒンドゥー・ナショナリズム的なその主張は、異なる信仰を持つ住民たちにはどのように響いているのか、少し気になるところではある。

このVinod Palincarという政治家は、すでに開催が承認されているSunburn Festivalの中止を要求するとともに、「若者たちを守るためには、悪魔の音楽ではなく神々の音楽こそ演奏されるべきだ」とも述べている。
10万人規模のビッグイベントを本気で潰そうとしているのか、それとも人気取りのためのハッタリなのかは不明だが、彼の発言が、あまりにも多くの宗教や主義、価値観が混在する現代インドを象徴したものであることは確かである。


最後に、Sunburn Festival Goa2019にも出演するムンバイ出身のトランスDJ/プロデューサーのDesigner Hippiesを紹介して今回の記事を終わりにしたい。
Designer HippiesはRomeoとDeepesh Sharmaの兄弟によるデュオで、結成は1999年。20年にもわたるキャリアを誇る。
この時期に活動を開始しているということは、おそらくは海外の先進的なカルチャーに触れることのできる富裕層の出身だったのだろう。
20世紀末〜'00年代初頭といえば、イギリスではインド系移民たちによる伝統音楽とクラブミュージックを融合させたエイジアン・アンダーグラウンド・ムーブメント(例えばTalvin Singh, Karsh Kaleら)が勃興し、またインドでもそれに呼応するようにMidival Punditzらが注目され始めた時代。
Designer Hippiesは、彼らのスタイルがいわゆる「インドらしさ」に欠けるものだったからか、こうしたムーブメントに乗ることなく、世界中でコアなファンを持つトランス・シーンを舞台に地道な活動を続けてきた。
彼らは2007年の第1回Sunburn Festivalにも出演しており、他にもオーストラリア、タイ、イスラエル、イビサ、ブラジル、南アフリカ、韓国、日本などでのプレイを経験している。


サウンドは紛うことなきゴア・サウンド直系のサイケデリック・トランス。
彼もまた、ゴアでヒッピー/レイヴァーたちが撒いた種から育ったアーティストの一人と言えるだろう。
今回のSunburn Goaは、このフェスだけではなく、彼らにとってもゴアへの里帰りなのだ。
トランス系のアーティストたちは、このDesigner Hippiesの名が冠されたステージに出演することになっているようで、ヘッドライナーはイスラエルの大御所トランスアーティストであるSpace Catが務めるそうだ。

それにしても、いよいよ目前に迫ったSunburn Goaは、はたして無事に開催されるのだろうか。
ゴアのパーティーカルチャーは、ひとつの文化としてポジティブな側面もあるものだと信じたいし、なんとかして伝統文化や地域文化との共存ができると良いのだが…。





(余談というか追記。本文から削った部分なのですが、一応載っけておきます)

Sunburn Festivalは以前もヒンドゥー至上主義者たちの脅迫を受けている。
こうしたダンス系のフェスティバルはなにかと宗教的保守層からの批判の的になりがちだ。
この手のフェスの主な客層は、近年のインドの著しい経済成長(それは富の偏在や貧富の差を助長するものであったが)の結果として誕生した、外国文化を取り入れることに積極的な新しい富裕層の若者たちである。
インドに急速に流入している新しい消費文化、物質文化は、敬虔で保守的な価値観を重視する人たちの批判の対象となっているのだ。

一方で、レイヴ/パーティーカルチャーは、単なる消費文化ではなく、欧米社会の中ではむしろ過度な物質主義への対抗文化として発展してきた一面もある。
野外で夜通しリズミカルな音楽を聴きながら、自然と生命を祝福するということは、おそらくは歴史が始まる前から行われていたであろう、人間の根源的な営みとも言える。
実際彼らは、ヒンドゥー教のみならず、南米の先住民文化のイメージなども積極的に作品に取り入れていた。
トランスミュージックの野外パーティーは、現代社会のなかに突如として現れた、プリミティブな祝祭の場だったのだ。

過度な物質主義からの脱却を目指したかつての欧米の若者たちと、急速な経済成長の発展にともない、新しい娯楽を見つけることに貪欲なインドの若者たち。
トランスミュージックは、ちょうどその二つが交わる位置に存在している。
レイヴ/パーティーカルチャーの本質とは、プリミティヴィスムと消費文化の奇妙な融合であったということもできるかもしれない。
 

その後、自由の名のもとに行われていた無秩序なパーティーは、ドラッグの蔓延や風紀の紊乱を理由に世界中で取り締まりが強化され、運営のしっかりした大規模な商業レイヴ(Sunburnのような)以外は開催できなくなってゆく。
インドの政治の世界では、BJPの躍進にともないヒンドゥー・ナショナリズムが力を増し、欧米の文化やイスラームに対する批判の声が大きくなってゆく。
今回のトンデモなSunburn Festival批判も、こうした大きな流れの中に位置付けることができるのだが、それはまた、別のお話。
どんどん話がややこしくなり、とても手に負えないのでこのへんでやめておく。


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2019年09月18日

バンガロールのエコ・フレンドリーなフェス Echoes of Earth

インドでは、経済成長と音楽の趣味の多様化にともない、ここ10年ほどで急速に音楽フェス文化が発展している。
ゴアで始まったSunburnのようにとにかく大規模で派手なもの、ラージャスターンのMagnetic Fieldsのように異国情緒を全面に押し出したセレブ路線のもの(この2つはEDM/エレクトロニック系のフェスティバル)から、ムンバイのControl ALT DeleteやアルナーチャルのZiro Festival(この2つはどちらかというとロック中心)のようにインディーであることにこだわったマニアックなものまで、インドでは様々なタイプの音楽フェスが楽しめる。

今回紹介するのは、バンガロール郊外で12月に行われる'Echoes of Earth'.
音楽だけでなく、環境問題にも焦点を当てた、非常にユニークなフェスティバルだ。

Echoes of EarthのFacebookページによると、このフェスは「音楽と大地の祭典」であり、「持続的な生活が必要であるということへの気づきを促すためのフェスティバル」で、「インドで最も環境に優しいフェスであり続けている」という。
国内外40以上のアーティストが出演するこのフェスでは、運営側はリユース、リデュース、リサイクルを心がけ、痕跡を残さないことをポリシーにしているそうだ。
このフェスティバルは、Swordfish Events & Entertainmentという地元のプロモーターと、Watson'sというパブが共同で運営しており、2016年以降、毎年11月または12月の2日間にわたって開催されている。 


ご覧いただいて分かるとおり、アメリカの「バーニング・マン」のような、ヒッピームーブメントの流れをくむアート系のフェスティバルの雰囲気を持っている。
ステージや会場じゅうの巨大なモニュメントがとても印象的だが、これらのうち80%がリサイクル品や不要品によって作られているという。
また、会場全体でプラスチックの使用を禁止しており、ステージの電力もソーラーでまかなっているというから本格的だ。

出演アーティストはロック、ジャズ、エレクトロニック、ポップ、フュージョン、テクノ、伝統音楽と幅広く、音楽だけではなく、アートやローカル文化のショーケースや様々なワークショップなどが行われる、複合的なフェスのようだ。

2018年はフランスのマルチ・インストゥルメンタリストFKJを筆頭に、カナダのTennyson、イギリスのIglooghost、 LAのDJのAwesome Tapes of Africaといった海外勢に加えて、When Chai Met Toast、Ape Echoes、Aditi Ramesh、Duelist Inquiry、Malfnktionらの上質で先鋭的な国内アーティストも出演しており、毎年非常にセンスが良いラインナップを揃えている。
EchoOfEarth2018

2000年頃の、会場が苗場に移ったころのフジロック(もしくは朝霧JAM)のような、自然の中でピースフルな雰囲気が楽しめるフェスのようで、その点は以前紹介した北東部アルナーチャル・プラデーシュ州のZiro Festivalにも似ているかもしれない。

2018年のEcho of Earthから、インドのエレクトロニック・バンド、Duelist Inquiryのライブの様子。


2018年のアフタームービー。


どう見たって、これ、最高じゃないか。 
  
インドのフェス文化は、中産階級が趣味にお金を使えるようになったことで発展した典型的な消費文化という側面が強いが、それだけではなく、こうした社会への問題意識やメッセージ性を持ったイベントもあるというのは素晴らしい。

インドの場合、社会意識の高いインディーアーティストも多く、60年代の欧米のように、音楽がカウンターカルチャーとしての使命感をいまだに持っているようだ(世界中の他の地域と同様に、商業主義の音楽は思いっきり商業主義だが)。


また、これまでにも紹介してきたように、例えば、ヒップホップヘヴィメタルのように、ひとつのジャンルのもとに、さまざまな宗教やコミュニティの人々が、垣根を超えてシーンを形作っているというのもインドのシーンの美しいところだ。
資本主義の歯止めが効かなくなり、分断が進む今日のインド(というか、世界)の中で、音楽を通してひとつの理想的なコミュニティーが形成されていると言ったら、ロマンチストすぎるだろうか。
いずれにしても、フェスは、そうした新しい価値観を持つ人々の祝祭の場でもあるのだろう。

またひとつ、行きたいインドのフェスが増えた。
1年くらい休みを取って、インドじゅうのフェスを回ったりできたら最高なんだけどなあ。


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2019年08月31日

インド北東部のロック・フェスティバルは、懐かしのメタル天国だった!

先日、インド北東部アルナーチャル・プラデーシュ州の辺境で行われる究極の音楽フェス、Ziro Festival of Musicについて紹介した。
インド北東部は一般の旅行者があまり足を踏み入れることの少ないエリアではあるが、じつは、Ziro以外にも数多くのロック系フェスティバルが行われるフェス天国なのである。
まずはインド北東部の地理的なおさらいから。
この地図で赤く塗られている部分に注目してほしい。
インド北東部地図NEとシッキム
インド主要部と北東部との間の、南からえぐられているように見える場所にはバングラデシュがあり、北から押しつぶされているように見える場所はブータン、そしてすぐ西にはネパールが位置している。
インド北東部
インド北東部とは、この地図に書かれた7つの州(7 Sisters States)に、ブータンとネパールに挟まれたシッキム州を含めた地域のことだ。

インド北東部には、インドの大部分とは異なりモンゴロイド系の民族が多く暮らしている。
北東部は典型的なインド文化(ヒンドゥー/イスラーム系統の文化)の影響が薄く、クリスチャンの割合が多いこともあって、欧米文化の受容が進んでおり、かなり早くからロックミュージックが人気となっていた地域でもある。
今回は、ここ北東部で行われる音楽フェスティバルが、予想のかなり斜め上をゆく実態だったので、その様子をお伝えしたい。

ほんの数十年前まで首狩りが行われていた秘境、ナガランド州では、毎年12月にHornbill International Music Festivalが開催されている。
これは、ナガランド独自の豊かな文化を継承し広めてゆくことを目的に開催されるHornbill Festivalの一部として行われるもので、毎年多くの観客を集めている。
ちなみにHornbillとは、ナガランドの象徴である大きなクチバシとツノのような突起を持つ鳥「サイチョウ」のこと。

このHornbill International Music Festivalは、地元のアーティストの演奏だけでなく、K-Popアイドルのライブ(3:52〜)や、なんと珍しいBlues Night(8:32〜)なども行われており、外国籍を含めた多彩なアーティストが出演している辺境らしからぬフェスだ。

他の州にも注目すべきフェスはある。
インド北東部最北端のアルナーチャル・プラデーシュ州Dambukでは、毎年12月にOrange Festival of Adventure & Musicが行われている。
このフェスは、「インドで最初のアドベンチャーと音楽の祭典」と言われており、一時休止していたものの2015年から再び開催されるようになった。
このイベントも、単なる音楽フェスではなく、地元文化の紹介や、さまざまなアウトドア体験なども行われる多彩な内容のものだ。

「アドベンチャーと音楽のフェスティバル」だけあって、ライブの模様の紹介は3:00頃から。
このOrange Festivalにも地元のバンドから海外勢まで、多彩なミュージシャンが出演して大いに盛り上がっているようだ。


「インドのロックの首都」と呼ばれるメガラヤ州のシロンでは、全国のさまざまな主要都市で開催されている音楽フェスのNH7 Weekenderの北東部版が行われている。
このNH7 Weekenderは、他の都市ではサマーソニックのような都市型フェスとして行われているが、ここシロンではフジロックのように山岳部の豊かな自然のなかで開催されている。
'The happiest music festival'のキャッチコピーの通り、こちらもかなり楽しそうな様子のフェスだ。

それぞれのフェスについてはまた改めて紹介しようと思っているのだが、今回注目したいのは、これらのフェスで招聘されている欧米のアーティストについてだ。

まずHornbill Festivalから見ていこう。
このフェスの2015年のヘッドライナーは、なんとジャーマン・メタルの代表的バンドHelloween!
メタル系に絞ったフェスでもないのに、Helloweenがトリを務めるっていうのはちょっとすごいことだ。
その前年には、ヴィニー・ムーア(マイケル・シェンカーが在籍していたことで有名なUFOの現リードギタリスト)を招聘しているというから、これまた驚かされる。

さらに、アルナーチャルのOrange Festivalでは、2016年には、元祖ネオクラシカル系速弾きギタリストの「王者」ことイングヴェイ・マルムスティーンを、2017年には元Poison、元Mr.Bigのギタリストのリッチー・コッツェンをトリに据えている。
北東部はそんなにメタル/ハードロック系ギタリストが好きなんだろうか。

それだけではない。
シロンのNH7 Weekenderでは、2015年にはアメリカの'スラッシュメタル四天王'のひとつメガデスを、2017年にこちらも天才ギタリストのスティーヴ・ヴァイをヘッドライナーにしているというから、もう筋金入りである。
シンコーミュージックの「ヤングギター」(メタル系ギタリストがよく掲載されているギター教則雑誌)が後援で、ウドー音楽事務所が仕切っているんじゃないかというラインナップだ。

フェス以外でインド北東部でのライブを行った海外のアーティストも強烈だ。
年代順にアーティスト名とライブを行った土地を書いてゆくと、

2004年
Firehouse(アメリカのポップなハードロックバンド):メガラヤ州シロン、ナガランド州ディマプル、ミゾラム州アイゾール

2007年
エリック・マーティン(Mr.Bigのヴォーカリスト):シロン、ディマプル
Scorpions(ドイツの大御所ハードロックバンド):シロン

2008年
White Lion(アメリカのメタルバンド):シロン

2009年
Mr.Big(アメリカの技巧派揃いのハードロックバンド):シロン、ディマプル

2012年
Firehouse(2004年に続いて):ディマプル、マニプル州インパール
Stryper(アメリカのクリスチャン・メタルバンド):ナガランド州ディマプル、同州コヒマ

2013年
Hoobastank(アメリカのロックバンド):シロン

みなさん、このバンドたちをご存知だろうか?
いずれも1980年代〜90年代に活躍した往年のメタルバンドで、ついてこれるのはアラフォーの元メタル好きだけなのではないかと思う。(唯一、Hoobastankだけは21世紀のバンド)
インド北東部の人たちは"Burrn!"(日本が誇るヘヴィメタル雑誌。欧米での人気に関わらず、日本での人気の高いバンドを中心に取り上げる)を熟読しているんじゃないかっていうラインナップだ。
っていうか、自分も高校生の頃にBurrn!を読んでなかったら分からない顔ぶればかり。
北東部のロックファンは、FirehouseやWhite Lionの曲をちゃんと知っていて、ライブで盛り上がれるのだろうか。
ひょっとしたらインド北東部では伊藤政則(日本が誇るヘヴィメタル評論家)のラジオ番組が聴けるのかもしれない。

ライブで客席に聖書を投げることで有名な'クリスチャン・メタルバンド'Stryperが入っているのは、キリスト教徒が多い土地柄を反映しているものと思われ、2019年にはWhitecrossというまた別のアメリカのクリスチャン・メタルバンドもディマプルとシロンでライブを行っている。 
 
興味深いのは、これらのバンドがムンバイやデリーといった大都市をツアーしたついでにインド北東部に来ているのではなく、むしろインド北東部をツアーするためだけにインドに来ている例がほとんどだということである。 
FirehouseやStryperはインド主要部の大都市には目もくれずに北東部のみをツアーしているし、日本でも人気の高いMr.Bigも、ムンバイにもデリーにも寄らずに、バンガロールと北東部のみでライブを行っている。
つまり、北東部は、インドのなかでもそれだけ音楽の趣味が特殊ということなのだ。
メタルに関して言えば、インド主要部では、デスメタルのような、よりヘヴィなバンドが人気だが、インド北東部は日本同様に、メロディックでポップなメタルバンドが根強い人気のようで、モンゴロイド系民族としての共通点を感じさせられる。

それにしても、既視感のある光景だ。
90年代のグランジ/オルタナティブブーム以降、欧米では人気のなくなったメタルバンドが、まだ人気を保っていた日本によくツアーに来ていたものだが、それと同じような現象が、いまインド北東部で起きているのだ。 

かつて、日本でのみ人気のあった外国のバンドが'big in Japan'などと呼ばれて揶揄されていたが、それと同じようなことも起きているのかもしれない。
2018年のHornbill Festivalでは、韓国ではまだデビュー前のアイドルグループMONTがコンサートを行ったが、それはもう大変な歓迎っぷりと盛り上がりだった。
北東部の人たちは、国際的に有名かどうかにかかわらず、外国からくる華やかなアーティストにとにかく飢えているのだろう。
このへんも、往年の日本を思わせるような状況だ。
(よく知られているように、QueenやBon Jovi, Cheap Trickなどの世界的人気バンドは、最初は日本から人気に火がついた)

メタル以外の招聘アーティストもなかなかに香ばしい。
Hornbillでは2017年にドイツのディスコ・グループBonny M(「ラスプーチン」などのヒット曲で有名。彼らの「バハマ・ママ」は日本の一部の地域の盆踊りにも使われている)を呼んでいるし、Orange Festivalも同じ年にドイツの電子音楽グループTangerine Dreamを招聘している。
メタルではないが、2015年のHornbillではABBAのトリビュートバンドを呼んでいるのも面白い。

以前、インド北東部のメタル人気の高さを検証する記事や、シッキム州の人とマニアックなロック談義をしたという思い出話を書いたことがあるが、北東部の人々音楽の好みには本当に驚かされるばかりだ。

こうした「旬を過ぎた」バンドが北東部のみを回るツアーをしている一方で、Iron MaidenやBon Joviのような超ビッグネームのバンドは、ムンバイなどの主要部の大都市だけをツアーしており、おそらくギャラやスケジュールの都合だと思うが、北東部には来てくれていない。
そのため、北東部の人たちは、代わりにわざわざ欧米からコピーバンドを呼んで、これまた大いに盛り上がっている。
Hornbill Festivalでは2014年にBon JoviのトリビュートバンドBon Gioviを、Orange Festivalでは2018年にメンバーが全員女性のIron MaidenのトリビュートバンドIron Maidensを呼んでいる。

最後に、北東部でのメタル系アーティストのライブの様子をお届けすることとしたい。
まずは、Hornbill FestivalでのHelloweenのライブ。
不安定なオーディエンス・ショットだが、その分観客の盛り上がりがダイレクトに伝わってくる。

ナガランドのメタルファンたちも『守護神伝 第二章』、聴き込んでるみたいだ。
別の動画だと、"I Want Out"で盛り上がっている様子も撮影されていて、インド中央政府から抑圧的な扱いをされ続けているナガの人々が、彼らの曲に自分たちの境遇を重ね合わせているのかもなあ、としみじみ思ったりもした。

続いてはアルナーチャル・プラデーシュ州のOrange Festivalでの王者イングヴェイのライブ。
こちらもかなりたくさんの人が集まって盛り上がっている。

へー、今キーボードの人がヴォーカル兼任なんだな。
どうでもいいけど、キーボードを弾きながら歌うメタルのヴォーカリストって初めて見た。
久しぶりに見た王者は一時期に比べてずいぶんシェイプアップしていて、ギタープレイも絶好調!

「インドのロックの首都」メガラヤ州シロンでのメガデスのライブも大盛り上がり!



 Steve Vaiのライヴには、最近B'zのツアーメンバーとしても活躍しているインド出身の女性バカテクベーシスト、Mohini Deiがゲスト出演している。



ナガランド州ディマプルでのMr.Bigのライブから、"To Be With You"での大合唱の様子。


より知名度が落ちるはずのStryperでもこの盛り上がり!

1986年リリースのこの曲をリアルタイムで聴いているとは思えない若いお客さんが多いが、この人気はいったいどこからやってくるのだろう。

Firehouseのバラード"I Live My Life For You"もほとんどのオーディエンスはばっちり歌えるようだ。

Wikipediaによると、彼らは全米での人気が失速した後も、日本、タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア、シンガポールなどアジア諸国では高い人気を保っているそうなので、こうしたキャッチーな曲調が東アジア人の琴線に触れるのかもしれない。

MCのときの声色もジョン・ボンジョヴィそっくりなBon Giovi.

完コピ!これはこれで見て見たいかも。

女性コピーバンドのIron Maidensは演奏はいまいちだが、この盛り上がり。


実際にインドでは、Girish and ChroniclesPerfect Strangersのような実力派バンドによる有名バンドのトリビュートイベント(要は、ひたすらカバー曲を演奏する)も頻繁に行われているのだが、やはり本場の欧米から来たバンドは本物っぽさが違うということなのだろう。
このあたりのロックとの距離感は、我々日本人にとってもなんとなく共感できるものだ。
インド北東部、やっぱりものすごく面白い。

それではみなさんまた来週。
See ya! 
(高校生のころ聴いていた伊藤政則のラジオはいつもこんなふうに締められていたのを思い出したもので、つい)


(この後、2019.9.14加筆)
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goshimasayama18 at 12:41|PermalinkComments(0)

2019年08月22日

マサラワーラー × 軽刈田 凡平企画 "第1回Indian Rock Night"を開催しました!

というわけで、8月22日(木)秋葉原Club Goodmanにて、マサラワーラーの鹿島ワーラーこと鹿島信治さんと、"Indian Rock Night"を開催してきました!
鹿島さんと盛り上がって企画してはみたものの、よく考えたら日本中でインドのロック好きは軽刈田と鹿島さんしか存在が確認されていない段階で実施を決定してしまったわけで、いったいどれくらい人が集まってくれるのか、実は結構不安だったのだけど、なんと50名近い方にお越しいただき、感謝感激です。
また、思ったより早く料理が終わってしまったみたいで、お詫び申し上げます。

今回紹介した曲は、こんな感じでした。
(抜けているものがありそうな気もするのですが)
あれが抜けてるぞー、というのがあれば、(覚えてたら)指摘してください。

1.Mute The Saint "Fall Of Sirius"


2.Pakshee "Raah Piya"


3.Anand Bhaskar Collective "Hey Ram"


4.The Local Train "Khudi"


5.Faridkot "Mahi Ve"


6.Dying Embrace "Blood Rites"


7.Bhayanak Maut "Blasted Beyond Belief"



8.Haiku-Like Imagination "Peach of the Seven Skies(Demo)"


9.Kraken "Yooo! It's A Letter From My Koi Fish"


10.Stuck in November  "Swans Reflecting Elephants (Rehearsal)"


11.Skrat "Machete"
 

12.Franks Got The Funk "The Land Of Dreams"


13.Aditi Ramesh "Stuff On Our Mind"


14.Sanjeeta Bhattacharya "Natsukashii"


15.Komorebi "Candyland"


16.Fopchu "Gypsy"


17.Easy Wanderlings "Enjoy It While It Lasts"


18.Ape Echoes "Hold Tight"


19.Parekh And Singh "Ghost"


20.Parekh And Singh "I Love You Baby, I Love You Doll"


21.Demonic Resurrection "Matsya"

今回は、スペシャル企画として、このイベントのためにインドのアーティスト3組、Kraken, Haiku-Like Imagination, そしてEasy Wanderlingsからのビデオメッセージももらっていて、会場でみなさんに披露させてもらいました。

そしてマサラワーラーの美味しいインド料理は、
チキンカレー
サーンバール(豆と野菜の煮込み)
ナスのコロンブ(ナスのタマリンド煮込み)
トウガンのクートゥ(豆とココナッツの和え物)
アヴィヤル(ココナッツヨーグルト和え)
オクラポテト(炒めもの)
パヤサム(ミルク粥)
マサラワダ(豆のカリカリスナック)
でした。

そして、10月中頃には、今度はインドのヒップホップに焦点をあてた企画が間もなく発表できると思います。
こちらも乞うご期待!

ロックに関しても、まだまだ紹介できていないものがたくさんあるので(インド北東部方面とか)、いずれまた!

いつも、いったいどんな方が読んでくれているのだろう、と思いながらキーボードを叩いているので、こうやってみなさんにお会いできる機会は本当にありがたいです。
こんなに多くの方にお越しいただけるとは思わず、あまりお話できず失礼しました!
もちろん、お会いできなくても、読んでくださっているだけのみなさんにも大感謝です!

それでは!

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2019年08月10日

今年も日本のバンドが出演!Ziro Festivalのラインナップが面白い!

昨年も紹介したインド北東部の最果ての地、アルナーチャル・プラデーシュ州で行われる究極の音楽フェスZiro Festival of Musicが今年も面白そうだ。

(昨年の記事↓)

インド北東部の玄関口アッサム州のグワハティから8時間近く鉄道に揺られ、最寄駅からジープで3時間半かけてやっと到着するアルナーチャル・プラデーシュ州のZiro Valleyで行われるこのフェスには、インド北東部を中心に、インド全土、そして世界中の先鋭的なミュージシャンが毎年出演することで知られている。
この辺境の地で行われるイベントがどれだけピースフルで素晴らしいものなのかは、昨年のアフタームービーを見れば分かるはずだ。

大自然のなかで行われるこのフェスティバルは、いまや数々の音楽フェスが開催されるようになったインドでも、究極の音楽好きが集うイベントとして一目置かれている。

先日、今年のラインナップが発表され、日本のサイケデリック・ロックバンドAcid Mothers Templeが出演することが明らかになった。
zirofestival2019

アルファベット順に記載されているようなので、彼らがヘッドライナーかどうかは分からないが、一昨年はジャーマンロックバンドCanのヴォーカリストとして有名なダモ鈴木、昨年はポストロックのMONOがトリを務めており、いずれにしても3年連続で日本人アーティストが出演することになる。


インドからの出演者も非常にユニークで、いずれもインディーズシーンでも知る人ぞ知る存在のアーティストばかりだが、知名度よりもサウンドの面白さを追求して選んでいるようだ。
西ベンガル州北部シリグリー出身のDreamhourは80年代サウンドを追求するエレクトロニックアーティスト。

この楽曲にはKrakenのギター/ヴォーカルのMoses Koulが参加している。

パンジャーブ州のThat Boy RobyはRolling Stone India誌が選ぶ2018年のミュージックビデオ10選にも選ばれたガレージロックバンド。


New DelhiのZokovaはスリーピースのインストゥルメンタル・ポストロックバンド。


ウッタラカンド州のKarmaは歯切れの良いラップを聴かせるラッパー。


エレクトロニック、ロック、ヒップホップといった現代音楽でインドじゅうから個性的なラインナップを揃えたかと思えば、伝統音楽にも目配りが効いており、カルナータカ州のJyoti Hegdeは古典楽器ヴィーナの奏者だ。

HarmoNOniumは、こちらも伝統音楽で使われる鍵盤楽器ハーモニウム奏者兼ヴォーカリストのOmkar Patilが率いるフュージョンロックバンド。


出演者のなかでもっとも知名度が高いのは、カルナータカ出身で、映画音楽なども歌うシンガーのLucky Aliだろう。

地元のインド北東部からは、今年はシッキム州ガントクのベテランハードロックバンドStill Waters(2001年結成)や、ナガランドのポップロックバンドTrance Effectらが出演する。

この曲はAC/DCを彷彿させるナンバー。



海外から招聘しているアーティストも、国際的スターではなくても、面白そうなバンドばかりだ。
リトアニアのAntikvariniai Kašpirovskio Dantysはジプシー的な要素も入ったローカル歌謡ロック。


イスラエルのOuzo Bazookaは、来日経験があり、サラーム海上さんも推している中東サイケデリックロックバンド。


日本から参加するAcid Mothers Temple

いったいZiro Valleyの地でどんなライブを見せてくれるのだろうか。

昨年のZiro FestivalでのMONOのライブを見てみよう。


都会を遠く離れ、インドの山奥の大自然のなかでこの美しい轟音に身を委ねることができたらどんなに素晴らしい体験だろう。

この個性的すぎるラインナップのフェスを主催しているのは、アルナーチャルのプロモーターBobby Hanoと、首都デリーのロックバンドMenwhopauseのギタリストで、かつてはジャーナリストとしても活躍していたAnup Kutty.
きっかけは、Anupがバンドでインド北東部をツアーしたとき、プロモーターをしていたBobby Hanoが故郷のZiro ValleyにAnupを招待したことだった。
自然に囲まれ、独自の文化を保っているこの地に惹かれたAnupは、滞在中にBobbyとZiroで音楽フェスティバルを開催する構想を話し合った。
デリーに戻ってもそのアイデアが頭を離れなかったAnupは、アルナーチャル・プラデーシュ州の観光局に企画を持ち込んだところ、州は全面的なサポートを彼に約束し、この世界でも稀な辺境の地での先進的音楽フェスティバルが開催されることとなった。
(参考記事:https://rollingstoneindia.com/menwhopause-guitarist-anup-kutty-on-setting-up-ziro-festival/) 
第1回Ziro Festival of Musicの開催はは2012年。
当初から全国的な人気を誇るインディーアクトと、開催地に近い北東部諸州のミュージシャンの両方を出演させる方針が取られ、フェスが軌道に乗ってからは、海外のアーティストも招聘されるようになった。
これまでに前述のMONOやダモ鈴木に加え、Sonic YouthのLee RanaldやSteve Shelleyなども出演したことがある。

Anupが所属するMenwhopauseは2001年に結成されたベテランバンドで、これまでに2007年に米国でのSXSW(South by South West)出演や、複数のヨーロッパツアーの経験がある、インドで最も早く国際的に評価されたバンドのひとつだ。




彼らのSNSはここ1年ほどSNSの更新もなく、目立った活動はしていないようだが、彼ら功績は後続のアーティストたちにとって、確かな道標となっている。

Ziro Festival of Musicは、今年は9月26日から29日にかけて開催。
美しい自然の中にすばらしいラインナップのアーティストたちを集めるだけではなく、プラスチックを極力排除し、環境への配慮も意識するなど、様々な面で理想的な音楽フェスティバルだ。
フェスティバルが単なる音楽鑑賞ではなく、特別なエクスペリエンスであることを最大限に重視した、私が今、世界で一番行きたいフェスである。

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2019年03月27日

ヒンドゥー・ナショナリズムとインドの音楽シーン

先日、映画「バジュランギおじさんと小さな迷子」の話題と絡めてヒンドゥー・ナショナリズムの話を書いた。(「バジュランギおじさん/ヒンドゥー・ナショナリズム/カシミール問題とラッパーMC Kash(前編)」
ヒンドゥー・ナショナリズムは、「インドはヒンドゥーの土地である」という思想で、この思想のもとに教育や貧困支援などの慈善活動が行われている反面、ヒンドゥーの伝統に反するもの(例えば外来の宗教であるイスラームやキリスト教)をときに暴力的に排除しようとする側面があるとして問題視されている。
こうした運動は現代インドで無視できないほどの力を持っており、よく言われる例では現在の政権与党であるモディ首相の所属するBJP(インド人民党)は、ヒンドゥー・ナショナリズム団体RSS(民族義勇団)を母体とする政党だったりもする。

このブログで紹介しているようなロックやヒップホップ、エレクトロニックなどの音楽シーンでは、これらのジャンルがもともと自由や反権威を志向するものだということもあって、一般的にこうしたヒンドゥー至上主義的な動きに反対する傾向が強い。
その最もラディカルな例が以前紹介したデリーのレゲエバンドSka VengersのDelhi SultanateことTaru DalmiaのユニットBFR Soundsystemだろう。
彼はジャマイカン・ミュージックを闘争のための音楽と位置づけ、レゲエ未開の地インドでサウンドシステムを通してヒンドゥー・ナショナリズムや抑圧的な体制からの自由を訴えるという、なかばドン・キホーテ的な活動を繰り広げている。

Ska Vengersの痛烈なモディ批判ソング"Modi, A Message for you".
Taruはこの曲を発表したことで殺害予告を受けたこともあるそうだが、命の危険を冒してまで、彼らは音楽を通してメッセージを発信しているのだ。

ヒンドゥー・ナショナリズムについては、地域や所属するコミュニティーや個人の考え方によって、まったく捉えられ方が異なる。
たとえばムンバイのような先進的な大都市に暮らす人に話を聞くと、度を越したナショナリズム的な傾向があるのはごく一部であって、ほとんどの人は全くそんなこと考えずに生活しているよ、なんて言われたりもする。
(ムンバイはムンバイで、シヴ・セーナーという地域ナショナリズム政党が強い土地柄であるにもかかわらず、だ)
こんなふうに聞くと、なーんだ、ヒンドゥー・ナショナリズムなんて言っても、実際は一部の偏屈な連中が騒いでいるだけなんじゃないの?と言いたくなってしまうが、地方では、ナショナリズム的な傾向と伝統的な価値観が合わさって、なかなかに厳しい状況のようなのだ。

昨年8月に書かれたインドのカルチャー系ウェブサイトHomegrownの記事では、インド北部ウッタル・プラデーシュ州の街ジャーンシーの信じられない状況が報告されている。
Homegrown "Communal ‘Hate Songs’ Top The Playlists Of DJs In Jhansi"
さらにそのもとになった記事は、ThePrint "The Hindu & Muslim DJs behind India’s hate soundtrack"

この街では、なんとDJたちがヒンドゥー至上主義や反ムスリム、反リベラル的なリリックの楽曲を作り、大勢の人々が繰り出すラーマ神やガネーシャ神の祭礼の際に大音量でプレイして、住民たちが大盛り上がりで踊っているという。
「シヴァ神がカイラーシュ山からメッセージを送り、サフラン色(ヒンドゥー至上主義を象徴する色)の旗がパキスタンにもはためく」とか「インドに暮らしたければ"Jai Sri Ram"を唱えろ」とか「アヨーディヤーのバブリー・マスジッドを破壊した跡地にラーマ寺院を建てよう」なんていう狂信的で偏見に満ちた曲が流されているというのだ。
"Jai Sri Ram"というヒンドゥーの祈りの言葉は、映画「バジュランギおじさん」では印パ/ヒンドゥーとムスリムの相互理解の象徴として使われていたことを覚えている人も多いだろう。
その言葉が、ここではムスリムに対する踏み絵のような使われ方をしている。
アヨーディヤーというのはイスラーム教の歴史あるモスク、バブリー・マスジッドを狂信的なヒンドゥー教徒が破壊するという事件が起きた街の名前だ。
この事件は現代インドの宗教対立の大きな火種となっており、このリリックはムスリムに対する明白な挑発だ。(Ska vengersを紹介した記事でも少し触れている)

なんだか悲しい話だが、この問題を扱ったこの短いドキュメンタリー映像(6分弱)を見る限り、こうしたヘイト的な曲に合わせてダンスする人々の様子は、憎しみに燃えているというよりもむしろ無邪気に楽しんでいるようで、それがまた余計にやりきれない気持ちにさせられる。

これらのヘイトソングを作成しているDJ達(記事やビデオではDJと呼ばれているが、いわゆるトラックメイカーのことようだ)は、インタビューで「個人的にはムスリムのことを憎んではいない。でも求められた曲を作ることが俺たちの仕事で、こういう曲のほうが金になるんだ」と語っている。
彼らにこういう楽曲を発注して、行き過ぎたナショナリズムを煽動している黒幕がいるのだ。
DJたちもさすがに「モスクの前なんかでこういう曲をプレイするのは問題だね」という意識はあるようだが、保守的な田舎町で音楽で生計を立ててゆくために、てっとり早く金になるヘイト的な楽曲を作ることへのためらいは見られない。

偏見に満ちた思想が音楽を愛するアーティスト自身の主張ではないということに少しだけ救われるが、宗教的な祭礼において、祝福や神への献身よりもヘイトのほうに需要があるというのは、部外者ながらどう考えてもおかしいと感じざるを得ない。

このジャーンシー、私も20年ほど前に、バスの乗り継ぎのために降り立ったことがあるが、そのときはのどかでごく普通の小さな地方都市という以上の印象は感じなかった。
ところが、記事によるとこの地域はリンチや暴動、カーストやコミュニティーの違いによる暴力沙汰などが頻発しているとのことで、インドの保守的なエリアの暗部がさまざまな形で噴出しているようなのである。
地域や貧富による多様性と格差がすさまじいインドでは、ムンバイのような大都市の常識が地方ではまったく通じない。
インドの田舎には古き良き暮らしや伝統が残っている反面、旧弊な偏見が残り、コミュニティー同士が時代の変化のなかで対立を激化させているという部分もあるのだ。

上記のThe Printの記事によると、実際にウエストベンガル州やビハール州では、こうしたヘイトソングがモスクの近くでプレイされたことをきっかけとする衝突が発生しているという。
ふだんこのブログで紹介している都市部の開かれた音楽カルチャーと比較すると、とても信じられない話だが、残念ながらこれもまたインドの音楽シーンの一側面ということになるのだろう。

こうした排他的ヒンドゥー・ナショナリズムの音楽シーンへの影響は、じつは地方都市だけに限ったことではない。
マハーラーシュトラ州のプネーは多くの大学が集まる学園都市で、多数の有名外国人アーティストがライブを行うなど文化的に開かれた印象の土地だが、2018年にはヒンドゥー・ナショナリストたちがここで行われたSunburn Festival(以前紹介したアジア最大のエレクトロニック系音楽フェスだ)をテロの標的としたという疑いで逮捕されている。
(The New Indian Express "Suspected right-wing activists wanted to target Sunburn Festival in Pune: ATS"
この件で逮捕されたヒンドゥー右翼団体'Sanatan Sanstha'のメンバー5人は、ヒンドゥー教の伝統に反するという理由で、EDM系のフェスティバルであるSunburn Festivalや、大ヒット映画"Padmaavat"の上映館に爆発物を仕掛けることを計画していたという。


2018年のSunburn Festivalの様子


"Padmaavat"予告編。主演は"Gully Boy"のRanveer Singhで、彼の奥さんDeepika Padukoneも出演し、大ヒットを記録した映画だ。
こうして並べてみると、もう何がヒンドゥー至上主義者の逆鱗に触れるのか、全くもって分からなくなってくる。

"Padmaavat"に関して言うと、歴史映画のなかでのキャラクターや宗教の描き方についてヒンドゥー、イスラームそれぞれの宗教団体から抗議を受け、撮影の妨害なども行われていたということのようだ。
こうしたタイプの映画への反対運動は頻繁に行われていて、州によっては特定の映画の上映が禁止されてしまうといったことも起きている。

Sunburn Festivalに関しては言わずもがなで、享楽的なEDMに合わせて踊る人々は伝統を重んじるヒンドゥー至上主義者たちにとっては堕落以外の何ものでもないと映るのだろう。
資本主義・物質主義的な価値観の急速な浸透(インドは90年代初めごろまで社会主義的な経済政策をとっていた)に対する反発は、ヒンドゥー・ナショナリズム隆盛の原因のひとつだが、その矛先はこうして新しいタイプの音楽の流行にも向けられるようになった。

今更こんなことを大上段に構えて言うのもなんだが、音楽や芸術は人間の精神の自由を象徴するものだ。
音楽に合わせて肉体と精神を解放して生を祝福するという行為は、有史以前から人類が行ってきたことのはずなのに、自らの価値観に合わないからという理由でそれを(ときに暴力的に)潰そうとする人々がいる。
音楽が好きな人なら、「特定の価値観を持つ人たちが、音楽表現の場を、音楽を楽しむ場を、奪うなんてことがあってはならない」ということに同意してくれるだろう。

だが、我々もインドの過激な伝統主義者たちのニュースを人ごとだとは言っていられない。
ここ日本でも、アーティストの表現をサポートすべきレコード会社が、特定のアーティストが「容疑者」となったことで、彼が関わった作品の配信を停止したり、CDを店頭から回収したりなんていう馬鹿馬鹿しいことがあったばかりだ。
脅迫に屈したわけでもないのに、事なかれ主義の自粛こそが正義だと考え、とても音楽文化を扱う企業とは思えないような判断をしているということに、開いた口がふさがらない。
坂本龍一が言うとおり、いったい誰のための、何のための自粛なんだろうか。
しかも、同じ会社がオーバードーズで死んだジャニス・ジョプリンやジミ・ヘンドリックス、明らかにドラッグの影響を受けている(コカイン所持で逮捕されたこともある)ジョージ・クリントンの作品は平気で扱っているというから開いた口がふさがらない。
自粛したければ、個々のリスナーが聴かないことを選べば良いだけだ。


話が大幅に逸れたけど、いろいろと考えせられるインドと、そして日本の状況について書かせてもらいました。
それぞれが、それぞれの好きな音楽を楽しむ。そんな当たり前のことができる世の中が日本に無いっていうのが情けないね。
インドじゃ命懸けで表現に向き合っているアーティストもいるというのに。

A-ZA-DI!! (Freedom)
それではまた。

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2019年03月20日

今年のホーリー系フェスとホーリーソング他 インド春のフェス事情

今年もホーリー(Holi)の季節がやってきた。今年のホーリーは明日3月21日。

ホーリーとは、春の訪れを祝うインドの伝統行事で、ヒンドゥー教のヴィシュヌ神の伝説に基づいて紀元前から行われていたと言われている。(興味のある方は各自調べてください)
正確には今日20日の日没後から焚き火を囲んでの歌や祈りの儀式が始まるのだが、有名なのはなんといっても2日目に行われる、色のついた粉や水をぶっかけあうという風習だ。
この日だけは身分もカーストも気にせず、色粉や色水をぶっかけてよいということになっており、いつも以上に無秩序かつ無礼講な、無茶苦茶なお祭りなわけである。

とくにホーリーが賑わう街として知られているヴリンダーヴァン(Vrindavan)のホーリーの様子はたとえばこんな感じだ。
 
車の中に色水を思いっきりぶっかけたりしていたけど、大丈夫なんだろうか。
それにしてもさすが本場の無礼講、誰一人本気で怒る人などおらず(カメラに映っていないところではいるのかもしれないが)、笑顔で楽しんでいるのはさすがだ。
このホーリー、伝統行事とはいえ、旅行者にはハードすぎるのもまた事実。
あまりの混沌、アナーキーっぷりに、あらゆるガイドブックで旅行者に厳重な注意が呼びかけられているという、じつに過激なお祭りなのだ。

例えば「オマツリジャパン」というウェブサイトには、こんなふうに書かれている。
ホーリー祭は楽しいだけのお祭りではありません。それは本当に危険と隣り合わせですので、十分に注意してください。
一人で参加しない!圧倒的に事故・犯罪に巻き込まれる危険が高くなります。
女性はできるだけ参加しない!(痴漢、セクハラ、性暴力など悲しい事件が実際に起きています。インド人女性は絶対に大騒ぎの時間には参加しないので、もともと男性の祭りだと理解してください)
スリや犯罪に注意。貴重品は絶対に持ち歩かない。
泥酔者に注意。(普段お酒を飲まないヒンドゥー教徒が、年に一度お酒を飲む日です。当然、現地の男性は全員が酔っぱらっていると考えてください)。
捨ててもよい服で行く(色がついたら二度と取れません)。
サングラスやゴーグルで目を守る。
危険な時間帯、場所はホテルに避難。遅い時間はもちろん、参加者のテンションが上がった二日目の午後も危険です。
(「過激さ世界一!インド ホーリー祭に参加するには!?2019年は3月20日・21日!行き方や注意点を解説!」https://omatsurijapan.com/blog/holi-festival-india/

もはや普通に楽しめるのかどうかすらも分からないほどの厳重注意っぷり。
コレ、もはや怖いもの見たさか罰ゲームの領域なんじゃないだろうか。
私はインドには何度か行ったことがあるものの、幸いというかホーリーの経験はないので何とも言えないのだけど、ネットで検索すると参加した人のブログも結構ヒットするので、興味のある方は読んでみるといいかもしれない。

昨年も紹介したとおり、近年では大都市を中心に、音楽フェスとホーリーを融合したイベントもたくさん開催されていて、大いに盛り上がっている。
(昨年の記事「音楽フェス化するホーリー」

例えばニューデリーではHoli Moo, Unite Holi Music Festivalといったイベントがホーリーの日に合わせて開催されている。
holi moo lineup 2019

Holi Mooは4つのステージで100以上のアーティストが登場。
伝統音楽からEDM、レゲエ、ヒップホップまで、あらゆるジャンルが揃っている。

UniteHoli2019
Unite HoliにはEDM系のDJが出演。
その模様はこんな感じだ。
もはや伝統的なお祭りの面影はなく、パリピ感満載のイベントに。

インドのテクノ/EDM系オーガナイザーのSunburnが主催するムンバイのHoli Bashにはあの"Taki Taki"のDJ Snakeが登場!
HoliBashDJSnake

同じくムンバイのWeb Of Colorsではヒップホップ映画"Gully Boy"にもカメオ出演したアンダーグラウンド・ヒップホップシーンで人気のラッパーEmiway Bantaiと、世界的に活躍するEDMアーティストのZaedenが出演。
Web-Of-Colors

他にもHoli Reloadedとか、RangRaveとか、EDM系のホーリーフェスはデリーやムンバイなどの大都市でたくさん開かれている。

バンガロールのMaa Holiではインドのストリートヒップホップの英雄Divineが登場。
地元ムンバイじゃなくてバンガロールに出るのか。
maaholi

ホーリーって楽しそうだけど、フツーの道端で色粉、色水をぶっかけあうノリについていけるかなあ、という向きには、ダンスミュージックがガンガンにかかっているこういうホーリー系フェスに参加してみてはいかがでしょう?
音楽で盛り上がりながら色粉をぶっかけ合えば、あなたもきっと普段の自分から解放されて新しい自分にであえるはず。
そこまでしてホーリーを楽しまなくても別にいいやって人も多いかもしれないが(私もだ)、こんなふうに伝統行事にどんどん新しい要素を入れて楽しんでしまうのも、じつにインドらしい傾向だと言える。

ホーリーにあわせて音楽シーンこれだけ盛り上がっているということは、当然ホーリーをテーマにした曲もたくさんリリースされている。
インドのヒップホップシーン黎明期から活躍するKRSNAと、ニューデリー出身のパンジャビ系シンガーDeep Kalsiが昨年のホーリーシーズンにリリースした曲は、その名も"Hip Hop Holi"


こちらはShobi Sarwan Ft. PKという人たちによるトラップっぽいリズムのホーリーソング。


このRapper Nanyoo x Yz SDという人たちはどうやらチャッティースガル州の小さな街ライガール(Raigarh)のラッパーのようだが、強烈なバングラのリズムに乗せてラップ! 

全くもって垢抜けないが、それだけにインドの田舎町の若者の雰囲気がびんびん伝わってくる。

こちらはボリウッド映画のホーリーソング。
去年公開された"Genius"という映画の挿入歌。
たまたま目についたものをいくつか紹介したが、Youtube等ではホーリー向けのパーティーミックスなどがたくさんアップされているので、日本でホーリーをお祝いしたい人もチェックしてみてほしい。

ちなみにホーリー系フェスは(去年も書いたけど)インドのみならずイギリス、ドイツ、アメリカ、オーストラリアなど多くの国でも開催されている。
外国のこうしたフェスティバルは暦の上のホーリーとは関係なく開催されることも多く、例えば昨年ベルリンで行われたこの"Holi Festival of Colors"は8月24日に開催されたようだ。
 
ご覧のようにインド系の人々ではなく、ほぼ地元のパリピのみなさんで盛り上がっている様子。
日本だと、まあ場所貸してくれるところがなかなかないだろうなあ。

インドで春に行われる音楽フェスティヴァルはホーリー関連のものだけではない。
3月9〜10日にかけてムンバイ郊外のMaladの農場で行われたControl ALT Delete(CAD)は、商業主義を排してクラウドファンディングで集めた資金のみで開催されるフェスで、今年で8年めの開催となる。
ControlALTdelete
入場チケットの代金も、定価ではなく払いたいだけ払えば良いという非常に画期的なこのイベントは、出演者もジャンルを問わず先鋭的かつ純粋な音楽表現を追求しているアーティストが集まっている。
今年の出演者は、これまでこのブログで紹介した中では、北東部の女性R&BシンガーMeba Ofilia, シンガーソングライターのRaghav Meattle, Aditi Ramesh率いるLadies Compartment, ラップユニットのSwadesi, 来日経験もあるデスメタルバンドのGutslitら。

地元ムンバイのエレクトロニックデュオFlex Machinaのステージの様子はこんな感じだ。

こちらはホーリー系の大規模フェスと比べるとぐっと手作り感溢れる感じ。
とはいえこれだけ多くのアーティストを集めながら(テントを張ってキャンプして参加したアーティストもいるらしい)、とことんまでインディペンデントにこだわった姿勢は素晴らしい。
今年はクラウドファンディングで目標額の50万ルピーを大きく上回る65万ルピーを集めることに成功し、近所からの騒音のクレームもあったようだが、無事2日間の日程を終えたということのようだ。

というわけで、今回はコマーシャルからアーティスティックまで盛りだくさんのインド春のフェス事情を紹介しました!
それではまた!




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goshimasayama18 at 00:05|PermalinkComments(0)

2019年03月17日

コルカタに凄腕ブルースマンがいた!Arinjoy Trio インド・ブルース事情

90年代に初めてインドを訪れたとき、インド社会の格差や不平等、そして人々のバイタリティーと口の達者さに触れて、インド人がラップを始めたらすごいことになるだろうなあ、と思ったものだった。
あれから20年余り、ようやくインドにもヒップホップが根付いてきて、すごいことになりつつある、というのは今まで何度も書いた通り

あの頃のインドで、「インド人が本気でやりはじめたらすごいことになるんじゃないか」と思ったジャンルがもう一つある。
それはブルースだ。

ブルースは アメリカの黒人の労働歌にルーツを持つ音楽で、その名の通りブルー(憂鬱)な感情をプリミティブかつ強烈に表現してロックなどその後の音楽に大きな影響を与えた。
というのがブルースの一般的な解説になるのだが、 実際のブルースは憂鬱といってもじめじめした暗い音楽ではなく、救いのない日々のやるせなさも恋人と別れたさみしさも痛烈に笑い飛ばしてしまうような豪快な音楽でもある。
ブルースは「辛すぎると泣けるのを通り越して笑えてくるぜ」という悲しくも開き直った感覚と、「俺は精力絶倫だぜ」みたいな下世話さが渾然一体となった音楽なのだ。 
レコードとしてブルースが広く流通し始めた1950年代、Muddy Warters, Howlin' Wolf, Buddy Guy, B.B.King, Lightnin' Hopkins, John Lee Hookerら、幾多の伝説的ブルースマンが登場すると、彼らは人種の枠を越えてやがて白人ロックミュージシャンたちにも大きな影響を与えた。

何が言いたいかというと、インドの下町で出会った庶民たち、例えば人力車夫や道端で働く人夫たちから、そうしたいにしえのブルースマン達に通じる、力強さとあきらめが同居した、シブくて強くて明るくて、でもその根底にはやるせない憂鬱があるんだぜ、みたいな印象を受けたということなのである。 
この人たちにギターを教えてブルースをやらせたら凄いことになるだろうなあ、なんて感じたものだった。

さてその後、インドの労働者の中からとんでもないブルースミュージシャンが登場したかというと、そんなことはなかった。
そりゃそうだ。
だいたい、ブルースは1950年代くらいまでのアメリカの黒人の文化的・社会的なバックグラウンドと音楽的な流行から発生した音楽なわけで、それを全く状況が異なる現代のインドに求めてもしょうがない。
そもそもアメリカの黒人からして、今ではヒップホップに流行が移ってしまったし、遠く離れたインドで、それもアメリカの音楽なんて知るはずもない労働者階級がブルースをやるわけがないのだ。

いつもながら大変に前置きが長くて申し訳ない。
では、これだけ音楽の趣味が多様化した現代インドで、誰もブルースを聴いていないのだろうか。そして、誰もブルースを演奏していないのだろうか。

と思ったら、いた。
それもかなりの腕前のミュージシャンが。
コルカタを拠点に活動する彼の名前はArinjoy Sarkar.
まずはさっそく、彼が率いるArinjoy Trioが先ごろリリースしたセルフタイトルのデビューアルバムから"Cold, Cold, Cold"という曲を聴いてみてほしい。

言われなければとてもインドのバンドだとは思えない本格的なブルース!
タメの効いたギターのフレージングも、決して上手いわけではないがツボを押さえた歌い回しも、ブルースファンなら「分かってるなあ〜」と膝を打ちたくなるのではないだろうか。

弾き語りスタイルの"Don't You Leave Me Behind"


ブルース一辺倒というわけじゃなくて、レニー・クラヴィッツみたいなロックの曲も。
"Who You Are"

2:28あたりからの急にPink Floydみたいになる展開もカッコイイ!

Bo DiddleyのビートにJeff Beckのトーンのインスト"Beyond The Lines"

こうして聴くと、けっこう引き出しの多い器用なバンドだということが分かる。
Arinjoyが影響を受けたミュージシャンとして名前を挙げているのは、Stevie Ray Vaughan, Buddy Guy, Albert Collins, Larry Carltonとのことで、かなりいろいろなタイプのブルースを聴きこんできたようだ。

コルカタのBlooperhouse Studioでレコーディングしたこのアルバムは、Coldplayのクリス・マーティンやJohn Legendとの仕事で知られるSara Carterがマスタリングを行ってリリースされた。
フロントマンのArinjoy Sarkarは、以前はJack Rabbitという地元言語のベンガリ語で歌うバンドのギタリストだったという。


Arinjoy Trioは2018年にムンバイで行われたMahindra Blues Festivalでのバンド・コンテストで優勝したことで一気に注目を集めた。
このMahindra Blies Festival、じつはアジア最大のブルースフェスティバルとして知られており、これまBuddy Guy, John Lee Hooker, Jimmy Vaughan, Keb Mo, John Mayallといったアメリカやイギリスの大御所ブルースミュージシャンが出演してきた。
2018年のフェスの様子はこんな感じ。


Buddy Guyらが出演した2015年のフェスのトリを飾ったパフォーマンスの様子がこちら。
 
さすがにこれまで紹介してきたEDM系やロック系の大規模フェスに比べれば落ち着いたものだが、それでもこれだけのオーディエンスを集めることのできるブルース系のフェスティバルは東京でもなかなかできないだろう。
少なくともインドの大都市では、ブルースのリスナーに関してはそれなりにたくさんいるようだ。

では演奏者のほうはどうかというと、Arinjoy Trioのようなコテコテのブルースバンドは数少ないようだが、ブルースロックに関しては優れたバンドがけっこういるので紹介してみたい。

今年のMahindra Blues Festivalのバンドコンテストで優勝したのは、以前Ziro Festivalの記事2018年インド北東部ベストミュージックビデオ18選でも取り上げたメガラヤ州シロンのBlue Temptation.


同じく「インドのロックの首都」シロンから2003年結成の女性ヴォーカルのベテランバンド、Soulmate.


さらにシロンのバンドが続くが、2009年結成のBig Bang Bluesも渋い。

彼らはブルースベースのハードロックバンドSkyEyesとしても活動をしている。

ムンバイのジェフ・ベックのようなスタイルのギタープレイヤーのWarren Mendosa率いるBlackstratbluesは、インストゥルメンタルながらRolling Stone Indiaが選ぶ2017年ベストアルバムの2位に選出された実力派。


同じくムンバイから、心理学者でもあり、ガンを克服した経験も持つソウルフルな女性ヴォーカリストのKanchan Daniel率いるKanchan Daniel and the Beards.


以前も紹介したジャールカンド州ラーンチーのThe Mellow Turtleはブルースの影響を受けつつもヒップホップなどの要素も取り入れた面白い音楽性。
この曲も同郷の盟友であるラッパーのTre Essとの共演。


と、なにやらほとんどシロンとムンバイのバンドになってしまったが、ざっとインドで活躍するブルースロック系のアーティストを紹介してみた。
こうして聴いてみると、インドのブルースといっても、当初私が期待していたような、「抑圧された境遇から否応なくあふれ出る魂の発露」みたいなものではなく、世界中の他の国々同様、ブルースにあこがれて演奏する中産階級のバンドが多いようだ。
そりゃインドじゃ楽器を買おうにも本当に貧しい層にはなかなか手も届かないだろうし、当然といえば当然なのだけど。
やはりインドでも、「抑圧された人々」の表現は、これからもヒップホップでされてゆくことになるのだろう。

でもなあ。
あれだけの人口がいて、文化の多様性のあるインド。 
アメリカの黒人のブルースとは違っても、どこかにブルースみたいに俗っぽくて憂鬱で楽しい音楽があるような気がするのだけど。
これからも探してみることにします。

それでは今日はこのへんで。
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