Rolling Stone Indiaが選ぶ2017年ベストミュージックビデオ10選(後編)神話炸裂!インドのペイガン・メタル!

2018年01月20日

「バーフバリ」の何に驚いたかっていうと…


なにかと話題になっているバーフバリ2部作の完結編「王の凱旋」。

上映館もだいぶ少なくなってきたようではあるけど、まずは前編の「伝説誕生」で「おおっ!」と思った話をひとつ。

 

この映画、そもそも日本ではマイナーなテルグー語映画だっていうこととか、ハリウッドばりのVFXとか戦闘シーンとか、長すぎる回想シーンとか、気になるポイントはたくさんあって、いろいろ書きたいところなんだけど、個人的にいちばんびっくりしたのは主人公シヴドゥがヒロインのアヴァンティカに一目惚れしてアプローチをかけるこのシーン。

 

川べりに横になり、戦いで傷ついた手を清流の水にひたす女戦士アヴァンティカ。その傷を癒すかのように美しい小魚たちが寄ってくる。そこにシヴドゥが水の中をにやにやしながら泳いでやって来る。シヴドゥは魚たちに混じって、ペンでアヴァンティカの手に美しい模様を描く。アヴァンティカは自分の手に水中で模様を描かれたことをまったく気づかない。

その夜、アヴァンティカは自らが属する軍のアジトで王妃救出作戦に立候補。しかし、彼女の手の美しい模様を見たリーダーは、そんな色気づいてる奴には任せられんとこれを却下する。

ここで初めて模様に気がついたアヴァンティカ。誰だ、こんな余計なことした奴は。やった奴、ぶっ殺す。翌日、アヴァンティカは木の上から件の川に向かって弓矢を構えて不届き者が現れるのを待つ。すると、またしても彼女の背後に全く気づかれずに回り込んだシヴドゥは、竹筒からきれいな色の小さなヘビを出して彼女の腕につたわせる。ヘビは腕から弓をつたって矢にからみつき、首をもたげてアヴァンティカをじっと見つめる。ヘビに気を取られるアヴァンティカ。その隙にシヴドゥはまたしても気づかれぬように彼女の肩に美しい模様を描くのだった…。

我に返ったアヴァンティカは振り返るが、そこにはもうシヴドゥはいない。肩の模様に気がついたアヴァンティカは、描いたものに対する怒りを新たにするのだった…。

 

…何ですかこれ?どうゆうことですか?ちょっと分からなかったんですけど。

手とか肩に絵描かれて気づかないなんてことあるかよ。

水の中で描けるインクはどんな素材なのか。あとあのかわいいヘビ、いつの間に言うこと聞くように仕込んだんだ。

…といった無粋な突っ込みは止めにしよう。

 

だってこれ、神話的表現ってやつなんでしょう。

大昔から伝わる神話だから、こういうありえないようなエピソードも入っているんでしょう。

 

と思ってたら、違った。

この「バーフバリ」は「インドに昔から伝わる伝説の映画化」ではなくて、神話風の世界を舞台にした、言ってみれば「新作の神話」。

つまり、この場面も昔話みたいなやつの映像化ってわけじゃなくて、現代の監督やスタッフが考えて撮ったシーンだった…。

「果敢な女戦士に気づかれないように愛の表現を伝える一枚上手の主人公と、それに反発するヒロイン」っていうシーンを表したいんだったら、いろんな方法があると思う。

でも、これだけ最新のVFXを駆使した映像を撮る洗練されたスタッフたちが、これがベストって考えて、撮ったってことでしょう。

これはいったいどういうことなのか。

 この映画、当然ながら、決してキワモノ的人気を博したわけではなくて、正真正銘のインドの大ヒット映画。

南インド映画にしては珍しく北インドを含めたインド全域でヒットしたって話だし、海外でも非常に良好な興行成績だったと聞く。

ということは、ITやら医者やらで活躍している在外インテリインド人たちも含めて、あらゆる地域、階層のインド人にとって、このシーン違和感なく受け入れられたということ。


きっとインド文化の中で生まれ育たないと分からない、DNAレベルでの詩的かつ神話的な何かが、このシーンにはあるような気がする。

どれだけIT産業が発展しても、どれだけ在外インド人たちが国際的に活躍しても、遺伝子に組み込まれた神話的なセンス。

次回は、そんな神話感がどうしようもなく迸っている音楽の話を書こうと思います。

それでは!



goshimasayama18 at 23:55│Comments(0)インドよもやま話 | インド映画

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