二人目のヨギ・シンとの対話EDMシーンの世界的大物KSHMRがインドのラッパーたちと共演!

2023年12月10日

二人めのヨギ・シンとの再会


前回の記事で書いた今年2人めのヨギ・シン(本名不明)は、その後も丸の内近辺での「占い」を続けているようだった。
それならまた会いに行ってみよう。
遭遇から1週間後の日曜日、私は自宅から再び東京駅へと向かった。

幻の占い師に簡単に会えるようになった現状を、以前「ツチノコから地域猫レベルになった」と書いたが、結論からいうと、この日もまた簡単に会えてしまった。

今回そのターバン姿の男の姿を見かけたのは、東京国際フォーラム近くの横断歩道だ。
気づかれないように彼の様子を伺うと、クリスマスのイルミネーションに彩られた丸の内仲通りで何人かの通行人に声をかけ、いずれも断られていた。
声をかけた相手は一人で歩いている人ばかり。
二人連れやグループに声をかけると、紙をすり替えるトリックを見破られるリスクがあるからだろう。

彼が他の人に占いをする様子を観察してみたくもあったが、どうやら見込みは薄そうだ。
さりげなく彼の隣を歩くと、案の定、私に声をかけてきた。
この日の第一声は「You have a lucky face」ではなく「You are lucky」。

「私はサイババの弟子なのだが、あなたには来年良いことがある。でも少し考えすぎるところがあるようだ。あなたの仕事は?」

前回とは若干違うパターンだ。

「オフィスワーカーだ」と適当に答えると、ほら当たったと言わんばかりに「だから考えすぎるんだろう」と返してきた。
この「あなたは考えすぎる」はヨギ・シンの定番フレーズだが、彼らは落語の修行みたいに一言一句同じ言葉を伝承されるのだろうか。
サイババの弟子だというのも初めて聞くパターンだ。
前回会った時に彼が見せてきたシルディ・サイババの絵に私が反応したので、サイババが日本でも有名だと思っているのかもしれない。

ShirdiSaiBaba

彼はまず私の手相を調べた。
そういえば、彼は前回も手相を見て「生命線が長いので長寿の相がある」とか誰でも言えるようなことを言っていた。
今回は手相を見てもコメントなし。
ここで気の利いたことが言えると大幅に説得力がアップすると思うのだが、それができないのが彼の至らない点だ。
(とうとう自分はヨギ・シンの批評までするようになってしまった)

今にして思えば、この手相見は、お馴染みのトリックを行うために手を出させる方便なのだろう。
次に彼がした行動は予想通り。
手帳から取り出した紙片に何かを書きつけて、それを私に握らせてきた。
「あなたの好きな花は?」
お決まりの質問である。
1週間前に同じやりとりをしているのだが、彼は私のことをまったく覚えていないらしい。
ここで私は、最も回答する人が多いと言われている「ローズ」と答えてみた。

続いての質問は「1から5の間で好きな数字は?」
これを聞いて、私はもしやと思った。
これは山田真美さんの本『インド大魔法団』に書かれていたトリックと全く同じやり方だ。
「1から5の間で」と言われると、多くの人が無意識に3と答えてしまうというのだ。
あえて引っかかったふりをして「3」と答えると、彼はしてやったりという顔を見せた。

3つめの質問は、「あなたの望みは?」。
「グッドヘルス」と回答すると、彼は前回のように「紙を握った手を額にあてて、その後で息を吹きかけろ」とは言わずに、すぐに紙を広げろという。
つまり、紙のすり替えはしないということだ。

言われたとおりにすると、はたして、そこには、Roseという文字と、3という数字、そして何やらわからないアルファベットの羅列が書かれていた。

「見ろ、好きな花は薔薇、選んだ数字は3」
次に彼は、アルファベットの羅列を指して、「このGはグッドヘルス、Lは長寿(long life)という意味だ」と言った。

GHと2文字だけ書かれているならともかく、どうしていくつかの文字列の中のGがグッドヘルスを意味することになるのか、それにそもそも長寿なんて言っていないじゃないか、とつっこみたいのはさておき、これはなかなかよくできた技法だと思った。
Gと書いておけば、「グッド○○」というときに必ず使えるし、Lもロングライフとかラブとかラックとか、いろいろな言葉に応用できる。
この紙は、このあとすぐ「手帳に挟んでくれ」と言われて回収されてしまったので、手もとに残っていないのだが、そういえば前回もらった紙にも同じような文字が書かれていた。
これは彼らの常套手段なのだろう。
IMG_2023-11-18-17-35-36-690_20231124003545
前回の紙のいちばん下の行にもG'n'Lと書かれているように見える。

ともかく、これで彼らが使うトリックの全貌がわかった。
彼らが最初に握らせる紙にはRose, 3、そしてGとLを含むいくつかのアルファベットが書かれている。
運良く相手が薔薇と3と回答したときにはそのまま紙を開かせて、違う花や数字を言ったときには、紙をすり替えるのだ。
面白いパフォーマンスを見せてもらった対価として彼に1,000円を支払う。

もう正体をばらしてもいいだろうと思って「前に会ったことがある。覚えているか?」と聞いたが、返事は「ノー」。
「どこで会ったんだ?」と逆に聞き返されてしまった
「向こうのほうの大手町のエリアで、先週の土曜日に会った」と答えて、しばらく会話を続けると、ようやく思い出してくれた。
今回もいろいろな質問を浴びせたが、彼は自分の占いにトリックはなく、プラディープのことは知らないし、自分がやっているのは占いではなくメディテーションだという主張を崩さなかった。

親や兄弟もこのトリックをするのか?と聞いたところ、「自分は天涯孤独だ」とのこと。
これもプラディープと同じ答えだが、仲間に迷惑をかけないように、質問されたらそう答えるという取り決めがあるのかもしれない。

孤児たちが師匠からこの怪しい「占い」の技術を教え込まれてヨギ・シンになり、世界中の都市で集めたお金で寺院(孤児院)を運営し、そしてまた新たなヨギ・シンを育ててゆく。
この話が本当なら非常に面白いのだが、その可能性は限りなく低そうだ。
シク教徒のなかのとあるコミュニティ(シク教にはカーストは存在しないことになっているが、実質上のカーストと考えて良い)が路上での占い師をしている(おそらくヨギ・シンのことを指している)と書かれた論文を読んだことがあったし、大谷幸三さんの『インド通』という本にも、辻占の家系に生まれた占い嫌いの男が、生きるために占い師になって海外での辻占でお金を稼ぐ(ヨギ・シンを想起させる記述が出てくる)というエピソードが書かれていた。
インドの伝統を考えれば、家業は血縁によって継承されてゆくと考えるのが自然である。
(最近はそうではないのだが、よそのコミュニティからわざわざヨギ・シンになりたがる人はいないだろうし、彼らがよそ者を受け入れるとも思えない)

ちなみに今回、彼は「孤児院」の写真を見せてこなかった。
日本では路上でいきなり寄付を募るというやり方は受け入れられにくい。
日本人の反応を見ながら、少しずつやり方を変えているのかもしれない。

「シルディ・サイババはずいぶん昔に亡くなっているけど、今のあなたの師匠は誰?」と聞くと、彼はヒンドゥーの導師を意味するSwamiから始まる名前を挙げた。
(彼に書いてもらったその名前はSwami ParmanandもしくはParmadhanと読めるが、アルファベットのクセが強くて判読不能。前者だとすれば、19世紀に生まれ1940年に亡くなった人物なので、また適当にあしらわれたのかもしれない)
「あなたはシクだけど、導師はヒンドゥーなのか?」と尋ねたところ「師匠は宗教には関係のない精神的な指導者だ」とのことだった。
インドには、古くは15世紀のカビール、2011年に亡くなった自称二代目のサティヤ・サイババなど、宗教にかかわらず崇拝されている導師も多い。
彼らがそうした導師を崇拝しているとしても、あり得ない話ではない。
その信仰が本物なのか、神秘的なキャラクター付けを行うための演出なのかは分からないが、後者の可能性が高いと見ている。
シルディ・サイババのようなまともな人気のある導師が、こういった怪しい組織を抱えているということはないだろう。
もし本当に信奉しているのだとしても、教団のような組織だった形ではなく、彼らが勝手に崇拝しているだけで、この「占い」の継承とは関係がないものと思われる。

話をした後で、「もう1,000円払うから、何か別のことを当てて見せてよ」と言ってみたが、彼は決して占ってはくれなかった。

ターバン姿のヨギ・シンと別れた後、東京駅方面に向かう彼の様子をしばらくみていると、何人かに声をかけ、そしてまた全員に断られていた。
少しだけ話を聞いてくれた人もいたが、紙を握らせるトリックまで持ち込むことができた相手は一人もいなかった。

プラディープとこのターバン姿の初老の男性、二人に会ってみて、分かったことをまとめてみる。
まず、2019年に現れたヨギ・シンも含めて、彼らが全員大手町から日比谷のエリアで活動しているということ。
銀座での報告も稀にあるが(今年の4月にも単発の遭遇報告があった)、おそらく、これは「日本で活動するならこのエリアがベスト」という教訓が彼らに伝わっていることを意味しているのだろう。
今回のヨギ・シンは日英対訳のついた自己紹介の紙を持っていたし、ターバンの男もプラディープも巣鴨に滞在していると言ったのも気になる。
日本で彼らの行動をサポートしている人物がどこかにいるという可能性は高そうだ。

彼らの占いの技法や話す言葉の共通点も確認できた。
「You have a lucky face」や「You are lucky」という声かけ、「あなたは考えすぎるところがある」というフレーズ、紙を使った占いの方法は言わずもがなで、師匠や孤児院の写真を見せること、寺に所属しているという体裁になっていること、アムリトサルから来たということなど、明らかに彼らは同じノウハウに基づいて活動している。

一方で、ターバンのヨギ・シンが独自に思いついたと考えられることもあった。
彼はよく大手町の将門塚に出没していたのだが、ここは高層ビルが立ち並ぶオフィス街のなかで、参拝者が絶えないスポットだ。
オフィス街のなかで小さな祠に手をあわせるビジネスマンたちを、かれらがスピリチュアルなことに関心がある良いカモだと考えたとしても、不思議ではない。

これで、10月のプラディープから11月に現れたターバン姿の男まで、ヨギ・シンが2ヶ月ほど継続して東京で活動しているということになる。
SNSで読んで笑ってしまったのが、近くの「この付近にターバン姿の詐欺師が出没しているので気をつけるように」と朝礼で注意喚起していたいた会社もあったという。
いったい彼らはいつまで東京にいるのだろう。
日本で年を越すつもりなのだろうか?

詐欺被害を肯定するわけではないが、声をかけても誰にも相手にしてもらえない初老のヨギ・シンの後ろ姿を思い出すと、彼が目標金額を獲得して、無事祖国に帰れる日が早く来るよう祈りたくなってしまう。
おりを見て、また彼らが出没するエリアに足を運んでみたい。




--------------------------------------
「軽刈田 凡平(かるかった ぼんべい)のアッチャーインディア 読んだり聞いたり考えたり」

更新情報や小ネタはTwitter, Facebookで!
Twitter:
https://twitter.com/Calcutta_Bombay

Facebook:
https://www.facebook.com/軽刈田凡平のアッチャーインディア-読んだり聴いたり考えたり



軽刈田 凡平のプロフィールこちらから

2018年の自選おすすめ記事はこちらからどうぞ! 


goshimasayama18 at 17:40│Comments(5)ヨギ・シン | インタビュー

この記事へのコメント

1. Posted by かと   2024年03月13日 18:24
5 はじめまして。コメント失礼いたします。もう現在はあまり占い師さんのことは追求されて無いでしょうか?
私はデリー在住で昨日初めてこの手の占い師に出逢い素直にびっくりし(笑)、気になって必死に検索していたらこちらに辿り着きました。まずは真相を教えてくださったことへの感謝と、本件への長きにわたる真相究明に敬意をお伝えしたいです。
(貴殿の記事を大変興味深く拝読し、途中まで読んだ時は、私も卒業旅行がインドでしたので、やはり縁があって声を掛けられたのかしら?と思ったりもいたしました。)
私はニューデリー中心にほど近い、マーケットのある外国人も多い大通りの五つ星ホテルの近くで、シク教徒ではなく、(少なくとも帽子や着衣は)ムスリムの方でしたが、にも関わらず何故かトリガーとなるセリフは「あなたの目はシヴァ神の目だ」で、彼の名も自称Yogiでした。
リッチ/ミドル/プアでUS ドル建ての高額料金の提示がありましたので何度か立ち去ろうとし、最終的には私はルピーしか所持しておらず、専業主婦でインドに口座もないからと値切りました。
私の場合は先方の紙片の文字に乱れもなく、私が母親の名前等紙片に書いているときも、ここに書いて、と指差してこちらを向いていたので、あの時に下も見ず、もう片方の手で私の情報を別紙に書き写していたとしたら…本当にスゴ技です。
いつもここにいるの?と聞いたら、そうだ、と言い、電話番号を教えてくれました。
今思うと、占い内容に少し私が感傷的になる点が含まれており、帰り際に不覚にも少し涙ぐんでしまったところ、なんとなく先方はバツが悪いような顔をしたので、根っからの悪人ではないのかなという心象です。こちらで真相を知れたことが一番の大きな収穫ですが、総じて私もインドやインド人が好きなので、私にとっては良い経験でした。
2. Posted by 軽刈田 凡平   2024年03月14日 01:14
>かと様

とてもうれしいコメントありがとうございます!!
そして本場インドでの出会いを報告してくださって、私も興奮しています。
ヨギ・シンへの興味は継続中なのですが、なにぶん東京在住なので、彼がこちらに出没してくれないことには捜索ができず、ちょくちょく出没していないかSNSをパトロールするくらいしかできていない今日この頃です。
シク教やマジックの専門書などをしらみ潰しに読めば何かわかるかもしれないのですが、さすがに手がかりがなさすぎてちょっと尻込みしてしまっています。

ムスリムと思われる占い師だったという点、とても興味深いです!

以前、この記事に書いたのですが、
http://achhaindia.blog.jp/archives/20780188.html
デリーにはかつて手品師のコミュニティがあったようで、そこではムスリムの占い師もヒンドゥーの伝統を引用した占いをしていたようです。
シク教の占い師たちも、占いというか手品のグルは特定の宗教には関係ないようなことを言っていたので(インドのマジョリティであるヒンドゥー教徒を取り込むためかもしれませんが)、もしかしたら今回かとさんが会った占い師も、ヨギ・シンも同じルーツがあるのかもしれませんね。
感傷的になるような要素を自然に入れてきたというあたり、きっと(どういう意味かは別にして)腕のいい占い師だったのだと思います。

海外のブログやニュースでは詐欺師のような扱いもされている彼らですが、私はこれも一つのれっきとした占いというかパフォーミングアートだと思っているので、かとさんが良い経験だと思ってくださって、なぜか私もうれしいです。

また彼らと会うことがありましたら、ぜひ教えてください!
3. Posted by かと   2024年03月15日 00:48
5 こんばんは、軽刈田さま。お返事いただけて大変嬉しいです。ありがとうございます!
軽刈田様の、彼らは「「ヨギ・トリック」だけではなく、複数の技法を組み合わせて、「占い」をしている」という文章で思い出したのですが、確かに私の出会った人も手相占いもし、その結果は、私が別途お会いしたことのある、いわゆるれっきとした、大企業のプジャもたくさん執り行っているバラモンの占星術師の占い結果とほぼ同じでした。私の寿命などまだ分からないことがあるので、バラモンの占星術師の見立ても合っていると言いきれないとはいえ、少なくとも正規の?占星術師と同じような手相占いのスキルはあるのかなと思いました。
(私は元々占いはあまり信じないタチですが、生活に占星術が深く関わっているインドで、その文化に触れることには興味があります。)
そういう意味でも“腕のいい”部分はあり、また、軽刈田様の“パフォーミングアート”というお考えに共感です。
辻占いの人たちはあまり身分が高くないとのことでしたが、スキルをマジックやアートとして昇華し、(人を騙したり傷つけたりせずに)収入や地位向上に繋げられたらいいのにと思います、、。辻占いで気分を害した方も沢山いるでしょうし騙すのは決して褒められることではないので、私のように安易に彼らを持ち上げてはいけないですが。。
すみません、この話題に夢中になってしまい、またお返事へのご返信が長くなりました。当方、私事ですが近日日本に一時帰国しますので、日本にも例の占い師いるかウォッチしてみます。私のコメントへのお付き合いありがとうございます。
4. Posted by 軽刈田 凡平   2024年03月19日 20:58
さらに興味深い情報、ありがとうございます!
私が「複数の技法」と書いたのは、占いというよりもマジック的な技術を主にイメージしていたのですが、本物の占いの知識もある可能性がありますね。
じつは、かとさんのコメントのあとに、また東京でヨギ・シンらしき占い師に会ったという報告もあり、また調査を再開できそうです。
また何か分かったらブログに書きますね!
5. Posted by あ   2024年04月19日 16:39
初めまして。本日昼間、佃のリバーシティー下で僕が電話をしながら歩いていると、「You have a lucky face」とこちらが電話中に肌の黒いアジア系の外国人に話しかけられました。彼は自分をインド人だと言っていました。ターバンはしていませんでした。
気になったのでネットで検索したらこちらのページにたどり着きました。
「2人の女性があなたの事をとても好き」
「一人の女性に気を付けろ」
「あなたは考え過ぎる」
「今年12月にでかいハッピーが起きる」
とここに書かれている事そのまんまの事を言われましたwww
彼は40~50代くらいで、フォーチュンテラーだと言っていました。
何をしているか尋ねると
「友達に会いに来たけど、友達は忙しいから自分は散歩をしている」
とリバーシティーのタワマンを指差していました。
彼は、来週は静岡に行き、その後はタイに行くと言っていました。
「これから君が驚くことを伝える」と彼は言っていましたが、僕は急いでいたので、一緒に写真をとり、LINE交換だけして別れました。
一緒に撮った彼の写真は普通に笑顔でした。
彼のLINEに一緒に撮った写真を送ったところ
「Thank you」
と返信がありました。
100年前から変わらない手法ってのが凄いですね。

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
二人目のヨギ・シンとの対話EDMシーンの世界的大物KSHMRがインドのラッパーたちと共演!