2023年10月16日
ヨギ・シンふたたび東京に出現!
事態はいつも突然動く。
謎のインド人占い師ヨギ・シンのことである。
詳細は、こちらのリンクを読んでいただくとして(めちゃくちゃ長いのでお時間があるときにどうぞ)、かいつまんで話すと、世界中の都市に、不思議なインド人占い師が出没している。
ときにターバン姿で、シク教徒と思われるその占い師は、街中で声をかけた人にまるめた紙を握らせてから、好きな色や好きな数字などを尋ねる。
答えた後でその紙を開くと、信じられないことに、紙には質問の答えが書かれている。
紙を握ったのは、質問を聞かれる前だったのに。
「彼」は100年ほど前から世界中に出没していて、年齢もさまざまだが、多くの場合 'You have a lucky face.' と声をかけてくることで知られている。
「占い」のあとに寺院への寄付としてお金を要求すること、パンジャーブ出身の「ヨギ・シン」という名前を名乗ることといった共通点がある。
私が調べたところでは、少なくともインターネット上や著名な本でその謎に深く迫った情報はなかった。
21世紀に、誰も正体を知らない謎の集団がいる。
この不思議な事実に、私はどんどんのめり込んでいき、ブログに記事を書いた。
(このリンク先の1本目と2本目)
最初の事態が動いたのは2019年11月のこと。
彼らのことについて書いたブログに、丸の内で同じようなインド人の占い師に会ったというコメントが寄せられた。
その後数日の間に、多くの方から同様の情報が集まり、どうやら3人のヨギ・シンが丸の内付近で例の「占い」をしているらしいことが判明。
何度も足を運び、彼らの出没地帯の捜索を行ったところ、ついにヨギ・シンと思われる人物に遭遇!
しかし、接触方法を誤った私は、この怪しい占い師に思いっきり怪しまれ、逃げられてしまった。
こちらから声をかけてはいけなかったのだ。
私との遭遇以来、連日のように姿を現していたヨギ・シンたちは、二度と現れることはなかった。
痛恨の失敗である。
彼らとの接触の機会を失った私は、書籍やネットでの調査を開始した。
その結果、彼らのトリックは19世紀の本に書かれているマジックの技法で説明がつくこと(しかもそのトリックには「導師のからくり」を意味するインド由来の名前がつけられている)、彼らがシク教徒の保守的なマイノリティ・グループに属していること、インチキ占いでシク教徒の評判を落としていることに対して、同胞からも快く思われていないことなどが分かった。
しかし、そこで手詰まりである。
世界は新型コロナウイルスの蔓延を迎えた。
見ず知らずの人に至近距離で話しかけ、接触する彼らの「占い」は、感染リスクをともなう。
世界中で人の行き来が制限され、海外の都市で活動する彼らには致命的な状況になった。
果たして彼らはパンデミックを生き延びてくれるのか。
大いに心配だったのだが、コロナが一段落すると、昨年11月にパリで、今年の4月15日には銀座でヨギ・シンに遭遇したという報告が私のもとに届き、ほっと胸を撫で下ろしていた。
銀座の事例は、多くの人から報告が相次いだ丸の内の事例とは異なり、たった一人からの報告しかなく、捜索でも姿を見付けることができなかった。
おそらくはグループではなく単独での来日で、本業ではない小遣い稼ぎ的なものだったのかもしれない。
さて、次に事態が唐突に動いたのはつい先日、2023年10月12日。
ブログに「SIさん」という方から、同日に大手町で、同様の手口で占いをするインド人に遭遇したという報告が寄せられたのだ。
SIさんは、さらにX(旧ツイッター)で別にも同様の占い師に遭遇したという報告があると教えてくれた。
リンクを開くと、2日前の10月10日に、こんな投稿がされていたのだ。
丸の内の交差点で急にインド人に占いされて草
— Richard (@richardnotnice) October 10, 2023
変な紙握らされて、年齢、嫁の名前、祖父の名前とか聞かれて、終わった後に紙開いたら解答全部書いてあって草
ちゃんと最後に現金せびられて持ってないって言ったらスタバ奢らされて草 pic.twitter.com/KajZ3we0rl
間違いない。
ヨギ・シンだ。
私はSIさんにメールで遭遇時の詳しい状況を聞くと、快く返信してくれた。
ご本人の了解のもと、その内容を転載する。
遭遇場所は大手町の高層オフィスビル。
今回の「ヨギ・シン」は身長170〜175センチほどのターバンをしていない、ヒゲのない清潔感のある好青年といった印象だったそうである。
(一部、会社名や建物名については、軽刈田が固有名詞を変えています)
会議の合間の空き時間に上述のベンチで私は電子タバコを吸いながら休憩しておりました。目線はスマートフォンにありましたが、人の気配を感じ隣に目をやったところ、すぐ横にはスーツを着たインド人が。そのオフィスビルには大手商社や外資系IT企業が入っており、インド人が常日頃から出入りがあることはよく見かけておりましたので、なんの疑いもなく単なる人懐っこいタバコミュニケーションとして絡まれたのかと思っておりました。彼の第一声は「You have a lucky face!」(やり取りは全て英語でしたが以下日本語で書きます。)そして続け様に自分の額を指差し、「君の額からいいオーラが出ている。来月良いことが訪れるよ!」と。なんのことやらと思いながら適当に相槌と謝意を伝えると「自分はMeditation studentです」と一礼。どうやらこの類のスピリチュアルなことを学んできたのでオーラを感じることができると言いたいのでしょう。そしておもむろに茶色い革製の手帳を取り出しました。「僕のインドにいる師匠だ」と古びた写真を見せてきました。そこには白髪長髪・白髭の爺があぐらをかいて(座禅を組んで?)座っていました。あぐら姿勢でヒゲが股間付近まで伸びており、まるで印風麻原彰晃のようでした。彼はおもむろに手帳の紙を破き、何かをそこに書き始めました。そしてそれを渡され、「握りしめて一息吹きかけ、それを一度額にかざせ」と言う。とりあえず従ってやってみる。何かが書かれた紙切れは右手に握りしめたままでした。その後、「僕と君は今初めて会ったよね。お互いのこと何も知らないよね」ということを前提としてやたら強調してきます。(確かに1ミリも私はこのインド人のことを知りません)インド人「名前を教えて」私「○○(本名の下の名前だけ)です」インド人「??」(私の名前、長くて外国人にはやや難関なんです…)私「スペルはこうかく」(アルファベット1文字ずつ言う)インド人「次は誕生月を教えて」私「12月です」インド人「最後に1〜50の間で任意のラッキーナンバーを教えて」私「4!」(頭の中で自分の誕生日の4日にするか妻の誕生日の5日にするか少し迷って答えました)インド人「今教えてもらったことと、握っている紙に書いてることが一致してたら、来月いいことが起こるのは確実だよ」そして私は手に握った紙を指示通り開いてみると、そこには「(私の名前)/December/4」と書かれていました。驚きです。ずっと紙切れは私の握り拳の中でしたし、すり替えらにしてもどのタイミングですり替える余地があったのか、また、すり替えのためのミスディレクションもいつ行われたのか全く見当がつきません。私が十分に驚きを見せた後、またまた茶色い革製の手帳を彼は開きました。見せられたのは小学校低学年程度の子どもたちの集合写真。それを見た瞬間すぐに察しがつきました。インド人「僕は52人のインドの貧しい子どもたちを支援している。彼らは学校で勉強をしている。もし、彼らの教材の足しにするためにお金をくれたら彼らは君の幸運のために全員で祈りを捧げます」正直私はそれが本当であろうが嘘であろうが、楽しませてもらったのでその占い代?手品代?としての対価は払ってもいいと思っていました。せいぜい1,000円程度ですが。しかし生憎タバコを吸いに行っていただけなので財布を持ち歩いておらず、キャッシュが今ないことを伝えました。インド人「ATMでおろしてもらえるなら待っている」私「そもそも財布を持ち合わせていない」インド人「お金持ち歩かないでどうやって今日一日ここまで来て過ごしていたの?」私「時代はキャッシュレスでしょ。電子マネーオンリーよ。」インド人「ではPayPalはやってる?もしくは子どもたちのために何か購入して欲しい」私「PayPalはやっていない。購入はいいけど、何が欲しいの?」インド人「彼らが学ぶツールにiPadを使いたいのでそれを買って欲しい。」私「寄付にしては高すぎる。それは買えない。」インド人「それ以上の幸運が来月君には返ってくるから、全然高くないよ。」私「そういう問題ではなく、そもそも価格的にも買えないし、アップルストアに行く時間もない。」インド人「ではもし私があなたのお母さんの名前を答えられたら買ってくれる?」私「なぜお母さんの名前?意味がわからないが、そういう問題ではない。もっと手軽に1,000円程度で買えるもの。例えばコーヒー飲みたいとかチョコレートが食べたいとかそういうのだったらビルの中にも店があるし、すぐに買えるよ」インド人「じゃあセブンイレブンに行かないか?」私「OKそれならビルの中に入ってる」やりとりののち、そのビルのB1フロアのセブンイレブンに入りました。そこで彼はポッキーやキットカットなどと言ったチョコレート菓子を中心にセレクト。途中途中で子どもが52人いるのでもう少し買ってもいいかと確認を取りながら図々しくカゴに詰めていきました。最終的な会計は3,400円ほど。会議の時間にすでに遅刻していた私は電子マネー決済だけして袋詰めの時間を待たず、レシートも受け取らぬままインド人をレジ前に残して足早にオフィスへ戻りました。時刻は16:35頃。計15分程度の時間でしたが、最終的な彼の謙虚さのない図々しい振る舞いや、会議までの時間が無いと言っているのに食い下がってくるところにイライラしました。金額は大したこと無いものの、せっかく買ってあげるなら最後まで気分良く買いたかったものです。もしかしたらその後レシートとともに返品し、現金化している可能性もなきにしもあらずですが、真相は不明です。帰り際に、「メールアドレスを伝えるからなにか困ったことがあればまた連絡が欲しい」と言っていたのですが、すでに嫌気がさしていた私は断りをいれました。軽刈田さんのことを知っていれば聞いておけばよかったなぁとも今は思っております。
'You have a lucky face'という第一声、「君の額からオーラが出ている」という言葉、そしてその後の不思議な「占い」。
さらには慈善団体への寄付を装ってお金の請求をすることなど、最後までヨギ・シンとは名乗らなかったようだが、明らかヨギ・シンの手口である。
さらにX(Twitter)に遭遇報告を上げていたRichardさんにも詳細を聞くと、以下のような返信が返ってきた。
— Richard (@richardnotnice) October 14, 2023
・2023/10/10 16:30ごろ
・ターバン有、髭有、40-60代
・丸の内ブリックスクエアのロブションブティック前
です!
これはターバン・ヒゲ無しで清潔感のある好青年だったというSIさんの報告とは明らかに違う人物だ。
今回も彼らは複数で行動しているらしい。
Richardさんのポストにコメントする形で遭遇報告をしていた「かぐばろん」さんからも返信があった。
10/10(火)17:30頃@丸ビル1階
— かぐばろん (@kagbaron) October 14, 2023
20代で普通の青年風(ターバンやヒゲなし)
英語は下手で現地語?も混ざっていたのか、基本的に何言ってるか分かりませんでした。
占いなのか手品なのか一通りして、手帳内に20人くらい写ってる写真を見せてきて、ペンパルがどうたらこうたらで金よこせって感じです。
これはおそらくSIさんが会ったのと同じヨギ・シンだろう。
「ペンパルがどうたら」というのはおそらくSIさんが書いていた「PayPalでお金を払ってほしい」という内容だと思われる。
今回の出没地点も、2019年同様に、大手町から丸の内のごく狭いエリアに限られているようだ。
この地域を重点的に捜索すれば、必ず会えるはずだ。
待ってろよ、ヨギ・シン。
続きはこちら
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goshimasayama18 at 23:51│Comments(2)│ヨギ・シン
この記事へのコメント
1. Posted by 先程会いました 2023年10月27日 20:26
丸の内スタバ前!
お話をして、赤い木の実をもらいました。調べたところ菩提樹の実のようです。
特徴を検索したらここに至りました。ありがとうございます。
お布施もしましたが、よい時間でした。ナマステ
お話をして、赤い木の実をもらいました。調べたところ菩提樹の実のようです。
特徴を検索したらここに至りました。ありがとうございます。
お布施もしましたが、よい時間でした。ナマステ
2. Posted by 軽刈田 凡平 2023年10月29日 01:18
なんと!
てっきり帰国したのかと思ったら、まだいたんですね!
また捜索に出かけねば…
てっきり帰国したのかと思ったら、まだいたんですね!
また捜索に出かけねば…